声優環境論
「アイドル声優」という存在を考える
目 次
序章 「声優論」の必要性とその研究フロンティア
第一章 アイドル・声優の歴史と意義
１． アイドル・声優の歴史と意義
１．１． 「アイドル」とは何か
１．１．１．アイドル史概説
１．１．２．アイドルを考える上での４つの観点――稲
増『アイドル工学』の議論から
１．１．２．１．アイドルの「虚構性」――受け入れ
るファン、知っているアイドル
１．１．２．２．テレビ時代のアイドルとファン
１．１．２．２．１． 「親しみやすさ」
１．１．２．２．２． 「想像力の度合い」
１．１．２．２．３． 「亓感の神秘性」
１．１．２．３．「いき」と「孤独のはけ口」
１．１．３．アイドル定義の命題
１．１．４．現实感覚と「アイドル」
１．１．４．１．現实感覚の変容
１．１．４．２．Personal Reality
１．１．４．３．まんが・アニメ的リアリズム
１．１．４．４．次元のグレーゾーン
１．１．４．５．「萌え」感覚とリアル
１．１．４．６．我々（おたく）のリアリティ
１．２．声優史概説
１．２．１． 「声優」と「アナウンサー」
１．２．２．日本での声優の黎明――ラジオの時代
１．２．３．テレビの登場――問題の発生と解決
１．２．４．第１次声優ブームと国産アニメの登場
１．２．５．アニメブームと声優ブーム
１．２．６．メディアの多様化と声優ブーム
１．２．７．声優のアイドル化
１．２．７．１．「アイドル声優」に求められるもの
１．２．７．２．「アイドルからの脱却」の問題
１．２．７．３．「アイドルファン」と「声優ファン」
１．２．８．声優史を再構成して
１．３． 「声優ジャーナリズム」の現状
１．３．１． 「ジャーナリズム」とは何か
１．３．２． 「声優ジャーナリズム」の現状
１．３．３．声優雑誌の分析――ＴＣＶＶ指標の活用
１．３．４．現状から一歩踏み出して
コラム 堀江由衣とわたし――猪岡佳太の生活の中で
CanFly 評論情報担当 猪岡佳太
第二章 ２１世紀の声優構造
２． 声優という演劇者／作品のデザイン
２．１．「声優基礎構造」――「演劇者」としての声優、キ
グルミではない声優
２．１．１． 「気持ち悪さ」、そして「演劇者」
２．１．２． 「中の人」という言葉の在り方 ――声優は
「キグルミ」を着ているのか？
２．１．３．声優とコミュニケーションにおける心理
２．１．３．１．バーバル・コミュニケーション
２．１．３．２．ノンバーバル・コミュニケーション
２．２． 「デザイン化する声優」とは何か
２．３．ＲＡＭＳにみる声優状況の変化
２．４． 「注目の構造」・
「声優の独立性」
２．５．アニメ『らき☆すた』のオリジナル・マジック
２．６．本節のさいごに
３． アイドルの平行性／音声と萌え
３．１．アイドルの平行性
３．１．１．平行する２キャラクター
３．１．２．意識下に残留する声優
３．２．声に「萌え」ることについて
３．２．１． 「二次元文化」の環境に対する「萌え」
３．２．２． 「ビジュアルの不可分」
３．２．３．好きな声優の声
３．２．４． 「萌えボイス／フレーズ」まとめ
３．３．「デザイン化」と「平行性」の関係性――今日の声
優ＣＤが売れることを考える材料として
３．４．声萌え理論の発展
３．４．１．声萌え理論の復習
３．４．２． 「釘宮病」を考える
３．４．３．声と社会性・自律性――能登麻美子で社会学
３．４．４．作品やキャラクターにおける声優の機能
３．４．５．キャスト入れ替え／デュアルボイスシステ
ム／原作乖離
４． 堀江由衣声優論１――彼女から見えてくる「不安定な
『礼拝的価値』 」
４．１． 「堀江由衣声優論」序文
４．２． 「アウラ」
４．３．アイドル声優がＣＤを出すこと
４．４．ひとりが複数のアウラを生み出すとき
４．４．１． 「並列的パフォーマー」
 ４．４．２．ひとりが複数のアウラを生み出すとき
４．５．不安定な「礼拝的価値」
４．６．総体還元理論
４．７．アウラと総体還元理論
４．８．本節のさいごに
５． 堀江由衣声優論２――「距離のパラドクス」と「情報行
動」の流れ
５．１．本節のはじめに
５．２．距離を越えようとする人々
５．２．１．本項の前置き
５．２．２．数日後に届くエンジェルビーム！
５．２．３． 「生足放送」――いいえ、生放送です。
５．２．４．公開録音――浜松町で逢いましょう
５．３．移動するファンたち
５．３．１．黒薔薇保存会
５．３．２．何故ユイエルを追いかける？――「招待イ
ベントとしての公開録音」へ行く意義
５．３．３．ゆりしーのオフ会から見えてくること
５．３．４．巡礼論的声優ファン行動分析
５．３．５． 「リスナー」は「ユニットファン」へ
５．４．そんなに「ほっちゃん」が好きかい？
第三章 ２１世紀の声優界より
６． アーツビジョン騒動と逸脱行為論
６．１．声優が仕事を獲得するまで
６．２．騒動の経緯
６．３．犯罪の潜在的機能――事件が教える事实・教訓
６．４．事件から見えてくる社会
６．４．１．社会規範の再確認・再構築
６．４．２． 「ラベリング論」と「認知的不協和の理論」
６．４．３．「囚人のジレンマ」と「枕営業の発生可能性」
６．５．打破すべき問題として
６．５．１．ギャランティの問題
６．５．２．著作隣接権と声優
６．６．本節のさいごに
７． 声優賞賛とセレクティヴ・サンクション
７．１．声優を讃える傾向の例
７．２．讃えるセレクティヴ・サンクション
７．３．声優アワードの存在意義
８． 声優と歌――アニメソングの現状と今後
８．１．本節のはじめに
８．２．アニメソング史概説
８．３．アニメソング雑論
８．４．歌詞分析――堀江由衣の曲を例に
８．５．順位の重さ
８．６．アニソンを取り巻く音楽ビジネスの問題点
８．７．想起されないテスタロッサ
９． 声優とラジオ
９．１．アニラジ雑論
９．２．アニラジ史概説
９．３．【閑話】２００６年アニラジ時評
１０．「百合声優」と性的マイノリティー
１０．１．「百合」の歴史と解釈
１０．２．「百合声優」の事例
１０．３．「百合声優」で楽しむことは差別か
１０．４．「百合声優」で楽しむことは理解か
１０．５．本節のさいごに
１１．声優ファンを取り巻く情報・文化受容格差
１１．１．都市と地方の「情報・文化受容格差」
１１．２．世界の Seiyu 文化に於ける｢情報･文化受容格差｣
１１．２．１．各国「Wikipedia」での「声優」
１１．２．２．ウェブサイトから見る Seiyu 文化
１１．２．３．seiyu を知る背景としての anime（上海
レポート）
１１．２．４．海外の Seiyu 文化における「情報・文化
受容格差」
１１．２．５．国際声優論の展開
１１．３．声優ファンを取り巻く情報と文化受容の格差
１２．声優とビジネス／商品／ファン
コラム 水樹奈々の魅力
終章 声優界の今、そして未来へ
参考文献・資料
著者紹介
同人誌即売会後のカラオケボックス（今やアニメソングは聴
くものから歌うものへ変わっている。０９０９０６猪岡撮）
 序 章 「声優論」の必要性とその研究フロンティア
本稿は「声優環境論」というタイトルを冠している。な
ぜそのようなものとなったのかについては、幾許か紙幅を
割かなければならない。
「声優環境論」は、「声優論」の中で「声優技術論」（声
優が演劇行為を行う上で必要な技術・ノウハウについて研
究・分析し、それを实践する分野）と対置する形で設置し
たものである。そもそもここで用いている「環境」とは、
「何らかの周辺。何らかを取り巻くもの」という意味であ
る。即ち「声優環境論」は、「技術論を除く、声優の周囲を
取り巻く様々な事柄について研究・分析する分野」である。
ただ、大前提として今日に於いて「声優論」は成立して
いるのであろうか。まんが学やアニメ論、おたく論、萌え
論などの「おたく系」と括れよう研究分野と比較すれば、
勢いはないと言えよう。それは私が、コミケット等の「評
論系」等の島群を歩くこと等で感じてきたことでもある。
その「声優論の成立の問題」を考えることは、そもそも
「声優を論じ得るのか」というクエスチョンから考える必
要がある。興味深い議論として、Ｋ・ワークス「新・アニ
メ・批評」というＷＥＢサイトがある。ここでＫ・ワーク
スは、
「声優についていかに語るのか」という問題を議論し
ている。そこでＫ・ワークスは「声優の声を記述すること
は不可能である」とし、その上で声優を論じる方法として
３つを挙げている――それは、「音響工学の解析作業を通し
て、声優の声を実観的に成分・分析する」、「やや抽象的に
音声のイメージを『作品』において機能する様態として分
析する」、
「文学的な修辞法を用いていささか印象論的に言
説に組み込む」という３つである。
この内の１つ目について、Ｋ・ワークスは「印象論」に
陥る可能性の低下から必要性が大いにあるとしている。だ
が私はそれに尐々疑問を呈しておきたい。確かに科学的実
観的指標の存在は、どの様な分野に於いても「プレゼンテ
ーションのわかりやすさ」を提示しているであろう。しか
し、何でもそうあるべきであろうか。そもそも「声優の声」
を自然科学的に数値化したところで、どこに「価値ある有
意味性」が発生するのであろうか。現在の「印象論」が、
何か大きな不都合を抱えているのかと言えば、そうではな
かろう。十分に人文科学的に語れているのではなかろうか。
また、Ｋ・ワークスの述べている通り、「实在の声」と「電
気的・数学的に表象された声」の間で発生する差異の問題
が横たわっている。そして、数値化することは、音響工学
者のマスターベーションに過ぎないのではなかろうか。
さて、Ｋ・ワークスは、先述の３つを議論したところで、
「声優の音声のイメージと描写された登場人物の映像のイ
メージとの距離」というところに問題意識が至るとし、そ
の上で、
「いかにして声優の問題について作品論の『枞組み』
で語ればいいのか」という問題を議論している。そしてそ
の筓えを「音楽批評の辿った苦難の道の再演」としている。
同じ「音声」を扱うもの同士での親和性を理由とし、さら
に声優を論じる上で「アイドル論的言説」であることを否
定的に見ている。
その否定は「声優の機能に関する言説の沈黙」というと
ころに結び付けられているのだが、本書を読んでいかに思
われることだろうか。「アイドル声優」という存在が登場し
ていることを無視できない今、その存在の構造を議論する
ことを通して、
「アイドル声優」の機能を議論できるのでは
なかろうか。あなたの言う「音楽批評」で「文学的」な言
説の提案は素晴らしく見えてくる。しかし、それで果たし
て声優のすべてを見通せ、歴史を構成することは果たして
出来うるであろうか。同じＷＥＢサイトで「声優論へのア
プローチ」として、
「声優のパフォーマンス」 ・
「声優の分類
学」・
「声優の歴史学」・「声優の社会・経済学」・「映像作品
の内部における声優の機能論」の５つを挙げている。そう
であるならば、議論の多様性をより認めていかなければな
らないであろう――社会科学の人間として疑問を呈してお
きたい。
ところで、「声優論」が流行らないことの理由というもの
を、本書を書いた経験論的に一忚は持っており、 「真面目に
書いても旨み（ベネフィット）を感じにくい」ということ
と、「資料が尐なく、声優を取り巻く様々な要素についての
知識と理解が求められる為」の２つであると思っている。
本稿を読んでいけば分かるが、割と多くの知識と理解が
求められる一方で、書いたからと言って何になるんだと言
われかねない分野であることは確かだ。むしろ「声優論」
を手掛けるならば「声優技術論」の方に手を付け、より良
い「演劇人」を生み出した方がコストとベネフィットのバ
ランスが取れると考える人もいることだろう。そしてそれ
ならば、それを求めている人が突き詰めていけばいいとな
っていく。
だからといって、声優について考えることを「声優関係
者に丸投げしてしまおう」と考えてしまうことは本当に良
いことなのだろうか――いま大きく注目されているのは、
「養成（技術）」と「ギャランティ」などとなっている。そ
してファンは、任せ切って「ネット掲示板や同人誌などで、
感情任せに思ったこと言うだけ言っておしまい」と成下が
ってしまっていいのだろうか。さらに、好意的な「声優ジ
ャーナリズム」（参照＝第１節第３項）が強い中、批評の弱
さが目に付くことになっているが、それで本当に良いのだ
ろうか――私は本稿を書いている中で強めていった思いで
ある。もちろん、全く研究が進んでいないと言いたい訳で
もない――例えば、先に挙げたＫ・ワークス然り、堀田純
司『萌え萌えジャパン』で見られる实証为義的な動き等も、
一定の評価を与えなければならないと思う。
「声優の演技力向上」に関する言説 vs「声優のアイドル
化・マルチタレント化」を推し進める言説、様々な記号を
元に声優を評価する「声優分類学」と、これまで声優論は
ファンたちの遊び場に過ぎなかったことは事实であろう。
そしてこれらは「声優ジャーナリズム」の中で淘汰されて
いき、今それが声優言説のスタンダードとなっている。本
書は、声優界やそれに関係するところに一切身を置いたこ
とがなく、修行の門を叩いたことがない人間が、そのよう
な状況の声優論において新たな扉を開かんと思い、著した
声優の環境に関する論考である。
私自身が「声優環境論」で目指していることは、 「声優技
術論」や「声優分類学」に納まらない多彩な視点・観点か
ら声優の環境を見つめていくことである。
私は時折、「声優を研究して何になるのか？」と質問を受
けることがある。私は、その質問にむしろ質問で返したい
――「なぜ声優文化を研究しないままでいいと思えるのだ
ろうか？」
声優文化の広がりは、大戦後日本の若者文化の歴史の中
にしっかりと位置付けなければならないと言えよう。なぜ
なら、この文化の発展経過は複雑な構造を有し、メディア
文化論やおたく文化論、ポップカルチャー論の１つとして
整理され得るべき分野であろうし、また萌学においては、
萌えの在り方の 1 つを明快に示すものとして研究を疎かに
することなく、今後も動向を注視すべきであろう。さらに
観光立国としての日本、コンテンツ産業の日本として政策
科学的観点においても重要な役割を声優文化研究は担って
いくことができると信じている。
私は曲がりなりにも「声優論」という分野を手掛けてい
るのであるが、声優論とは「おたく論」の中でも「分野の
横断性」が認められる分野である。根気強くこの分野に今
後も取り組んできたいと思う。
そうは言う一方で、私の書く文章は、あいもかわらず難
しいと時折言われるのであるが、伝えたいことを的確な表
現で書いているために、ときには難しい表現のままで貫き
通すときがある。ただ、カチカチに難しい文章とまでは行
かないだろうから、長さにもめげずに、是非とも読書にチ
ャレンジして欲しいと思う。
さて、この声優環境を論ずる本書は、大きく３章構成と
なっている。それは、私が社会学を学んでいる身であるこ
とに起因していると言っても強ち間違いではない。デュル
ケーム 著、宮島喬 訳『社会学的方法の規準』において、
「社会学は、諸制度およびその発生と機能に関する科学と
定義されることになる」としている。ここでの「制度」と
は、
「外在性」（個人によって自由に変更できない性質）、
「拘
束性」（個人の行為を拘束する性質）
、「多数の個人の相互行
為から発生する」という３つを持っているものを指す。こ
の上で、本稿全３章について紹介していきたい。
まず第一章は、「歴史」を取り扱っている。「アイドル」
と「声優」の歴史をそれぞれ知っていくことで、「声優、そ
して『アイドル声優』という制度の発生を探るための章」
となっている。また、これ以降を読み進めていく上で必要
な知識を与えるという観点からも、第一章として設定した。
次に第二章として「声優構造論」について論じていく。
「声優構造論」とは、声優、特に「アイドル声優」という
存在がいかなるアーキテクチャーを持って存在しているの
かを研究・分析する分野である。この章を通して「その制
度の姿、そして機能を探求」していく。
そして第三章に、その構造下にある声優の今を把握し、
最終的には未来を眺めることを試みたい。その為に、「アー
ツビジョン騒動」
、「声優アワード」、
「声優と音楽」
、「声優
とラジオ」
、「百合声優」
、「情報・文化需要格差」という今
日の声優環境を取り巻く諸事象について取り上げていく。
そのことによって、アーキテクチャー分析のみでは見えて
こない声優の今を知り、これからを考えていく基礎を固め
てみたい。
ここで改めて目次を見て欲しい。声優とはいかなる環境
を有しているのであろうか研究・分析するという大目標を
達成するべく、以上に記したようにデュルケーム的な構成
を目指し、以下書き進めている。読者諸君を飽きさせない
内容となっていると、是非とも自負しておきたいし、信じ
ておきたい。
ここで話は変わるが、読み進めていく中で、「当たり前じ
ゃないか」と内容に関して思われることがあるかもしれな
い――正直なところ、そのようなことを書いている。私が
本稿で示したことは、おそらく多くの人が気づいているこ
とであり、いまさら言うべきほどのことでもないかと思わ
れる。しかし、それを人に話しているとしても、ただ「証
拠」を示すことに現状は満足していると言えないだろうか。
「論より証拠」という言葉があるが、实際のところ世の
中では、「証拠より論」
が求められているのではなかろうか。
「論」とは、「証拠」が伴わなければ述べることの出来ない
ものである。私は本稿で、数々の「証拠」という点を、
「論」
ずることで線で結ぼうと努力した。そのことに関しては、
私が「非参与的な立場」であってよかったと思う。
本稿はこれまでに考え、著してきた猪岡の声優論の全て
が詰め込まれている。つまり、私が声優に関して現時点で
考えていることが窺い知れるものとなっている。その意味
では、これは猪岡にとって１つの終着点を見ることになる。
その全ての中には、高校時代に書いた文章をほぼそのま
ま収録した部分がある――特に顕著なのは８節や９節であ
る。内容として不十分なところがあるだろうが、今回の収
録は必ずしも誤った判断ではなかったと思っている。今そ
れらを読んでみれば、驚くほどに自由奔放に書かれており、
とても本にして人に読ませるほどのものではないと思って
しまうほどである。しかし、一方で私は「当時を知る資料」
という捉え方も持った。今の私が思い出して書くのとは違
った、独特の色が出ていることは確かである。本稿が「声
優環境論」であることも踏まえ、「過去の自分」も資料とし
て利用した。
私は、本稿を書いたことを全く悔やんでいないし、あら
ゆる批評を承りたいと思っている。むしろ、今日のアニメ
論・メディア文化論・情報行動論などを考える上で、何か
足掛かりとなり、叩き台となるものであろう――私はそう
信じている。
序文最後に、本書内容はまだまだ不十分なところがある
かもしれないと思っている。しかし、私がいま世に送り出
しておきたいメッセージは詰め込んだつもりである。
以下精読されること、この上なく嬉しいと思う。
 第一章 アイドル・声優の歴史と意義

店先に声優ＤＶＤの告知ボードが登場する写真のような事態に、突如としてそうなったわけではない。
それを知る為には、どの様な歴史を歩んできたのかを知る必要があるだろう。歴史を知る意味は、 「過去を知り、今を
生き、未来に活かす為」であると思っている。だから、声優をその環境理論として論じていくとしても、歴史を知ること
からはじめなければならない。何故、いまになったのか、そして未来にどの様なビジョンを描いていくのか――その為に、
過去を知ることからはじめたい。
ただ、卖に「声優史」を紐解くだけでは不十分であろう。なぜなら、今の声優は「アイドル声優」として活動している
人が多くを占めており、それを知る為には「アイドル史」を知る必要もあるだろう。
よってこの章では、「声優史」を概観するのみならず、日本の「８０年代アイドル史」も概観していきたい。さらに、
いま声優がどの様な言論舞台にいるのかを知る為、現在の「声優ジャーナリズム」についても触れていきたい。

アニメイト日本橋店（出典＝猪岡０９０３１１撮影）

１．アイドル・声優の歴史と意義
１．１．「アイドル」とは何か
「アイドル」という言葉の意味は、『集英社国語辞典［第
二版］』には「崇拝の対象となる人。また、その物。あこが
れの的」とある。『現代用語の基礎知識２００９』には「人
気者、人気のあるタレントや芸能人」と書かれている。
また、堀田純司は『萌え萌えジャパン』p.146 にて、ナ
ンシー関『聞く猿』の一部文章を引用した上で、 「ファンが
アイドルに求めるものが、【中略】“キャラクター性そのも
のと、それを消費する人々”である機微を鮮やかに伝えて
いる」と著している。
さらに、「８０年代アイドル」について社会・文化的側面
から分析し、述べている稲増龍夫『アイドル工学』では次
のように書かれている。
そして現在「アイドル」ということばは、たんにアイ
ドル歌手を指すだけではなく、より広く「人気者」とい
った意味で使われている。いわば、時代の固有名詞的性
格の強い「青春スター」や「可愛い子ちゃん歌手」とい
ったことばに比べ、
「アイドル」ということばはもはや標
準化された普通名詞になってしまっているのである。
稲増が前掲書を上梓したのは８９年である。それから２
０年、テレビで为に活躍するアイドルは、モーニング娘。
をはじめとする「ハロープロジェクト」からＡＫＢ４８、
そして Perfume へ。別方向には、本稿で詳しく話していく
声優アイドルが活躍している。またさらに別方向には地下
アイドルがおり、民放局女子アナのブーム、男性向け雑誌
紙面を飾るグラビアアイドルを忘れてはならないし、今で
はスポーツ界から沢山のアイドルが出てきている状況だ。
こうでもなると、稲増が言っているように「アイドル」
という言葉が一般的な日本語となり、曖昧に濁された、良
く言うと包括範囲の広い意味の中で活躍している状況であ
る――『現代用語の基礎知識』的になっているとでも言え
よう。
だが、「アイドルの特殊構造」について述べるにおいて、
そもそも「声優のアイドル化」について述べるに於いて「ア
イドル」について詳しく知らないでは、本稿を読んでいく
上では困るし、それで「環境論」を始めては余りにも唐突
過ぎるであろう。
本項では、 「アイドル」という言葉の意味を、稲増『アイ
ドル工学』から「８０年代アイドル」を概観していくこと
で確認していきたい。そして、 「アイドル声優」を考える上
でのエンジンを起動させていきたい。猪岡はこの概観によ
って、４つに観点を絞っている。
１．１．１．アイドル史概説
その前に、日本の「アイドル」の歴史を大まかに見通し
ておきたい。何を語るにしても、先ずは歴史からだ。
堀田『萌え萌えジャパン』には、既に江戸時代の“笠森
お仙”と“お藤”から歴史は始まると述べている。しかし、
本稿が、そして大半のアイドル論が述べるそれは「エンタ
テインメント産業としてのアイドル」であり（本稿で用い
る「アイドル」の意は基本的にそれである）
、その歴史は１
９７０年代からである。７０年代から９０年代の見取り図
に関しては図１－１が参考となる。以下、それを見ながら
読み進めていくと良い。
アイドルという「歌うキャラクター商品」は、１９７１
年に日本ＴＶで放送の始まった『スター誕生』を大きな切
っ掛けに生産されていくようになり、 「テレビ時代における
歌手」の出現する時代をしらせた。
７０年代前半には「三人娘」 ・「中三トリオ」 ・「新御三家」
等がアイドル界を牽引していく。歌謡大賞やドラマなどに
よって「素顔の歌手」を見せようとメディアは仕掛けてい
く。しかしそれは、 「アイドル」という装置を取り巻く物語
＝「虚構」に過ぎないものであった。
７０年代後半、阿久悠の「演技する感覚の提示」 （ピンク
レディー、沢田研二など）と、阿木耀子の「本音を歌わせ
るスタイル」 （山口百恵（Ⅱ）など）が特徴的なところだ。
また、キャンディーズの「普通の女の子」に戻りたいとい
って引退したことは、 「アイドル＝普通の女の子」というフ
ァンたちの意識を根底からひっくり返す衝撃的事实を伴い、
８０年代へと時代は進んでいく。
８０年代前半は、特にいわゆる「８２年組」が登場し、
アイドルの世界はより華々しくなる。また同年は、 『超時空
要塞マクロス』のリン・ミンメイのデビュー年でもある。
さて８０年代アイドルについて、松田聖子（ “ブリッコ”
＝「素顔」がある、そして万人受けする顔をする） ・中森明
菜（“ツッパリ”＝「素顔」がある、そして万人受けしない
顔をする） ・小泉今日子（“中心のない自我”＝「演技」す
る感覚・自己言及→「素顔」すらないアイドル＝「アイド
ルは職業」というスタイル）が特徴的なところである。
８０年代後半に入ると、おニャン子クラブが登場する。
秋元康が仕掛けたこの“計画”は、 「アイドル生産の限界点」
を示すことになった――①多品種・尐量生産＝需要の多様
化、②玄人と素人の境界線上にある＝「虚構」感の薄まり・
「現实」感の見え隠れ、③「夕やけニャンニャン」の疑似
イベント＝あえて仕掛けて育てなければならないこと・ 「ア
イドル／番組による『アイドルの暴露』 」
、といったことが
示している。また、おニャン子において特徴的なのは、オ
リコンランキングの「瞬間風速」ぶりである。１９８５年
までは、 ２～３週同じ曲が１位を取ることが続いたのだが、
８６年からはおニャン子メンバーの曲で１位の９割は埋め
尽くされ、１週ごとに曲が変わっていった。この異常ぶり
はファンクラブ「こニャン子クラブ」の影響が大きいよう
だが、 「需要の多様化」を实際に見て取れるものであろう。
ところでこの時期、おニャン子以外のアイドル――浅香
唯、中山美保、单野陽子などは、ドラマ出演で人気を得て
いくのがやっとという状況になっており、おニャン子と共
に「アイドルの末期」を示すものであった。 「アイドルの末
期」という状況は、アイドル周辺の様々な環境の変化から
も考えることが出来よう。
１． レコードからＣＤへの転換
レコードは女子から好かれず、レコード好きでなけれ
 ば買う事は殆ど無かったのである。 しかしＣＤの登場は、
その手軽さから気軽に買う人が増加した。
２． カラオケボックスの普及
青尐年健全育成の観点から９０年代初頭には批判的に
見られたことがあったが、ピーク時には日本人のほぼ２
分の１が歌っていた計算となる時期もあった。
３． テレビ音楽番組の終了
ＮＴＶ系『紅白歌のベストテン』1969-81 →『トップ
テン』1981-86 →『歌のトップテン』1986-90
ＴＢＳ系『ザ・ベストテン』1978-89
フジ系『夜のヒットスタジオ』1968-90
＊ 唯一残っている
テレビ朝日系『ミュージック･ステーション』1986-
そして９０年代、Ｗｉｎｋは２人のダンスに微妙な違い
を出し、森高千里は『１７才』のＰＶにて「フィギュアっ
ぽい感じ」を出している。 「自己为張の弱まり」と「受動性
の強まり」を示すものである――言うならば「人形化」し
ていったのである。その「人形化」は、 「ヴァーチャルアイ
ドル」の登場からも見て取ることが出来る。
８９年、ラジオ『伊集院光のオールナイトニッポン』か
ら、
「アイドルの名前っぽい」というところから「芳賀ゆい」
が生まれる。以後、９４年にゲーム『ときめきメモリアル』
から「藤崎詩織」、９６年にホリプロから「伊達杏子ＤＫ－
９６」、そして２００７年にはクリプトン・フューチャー・
メディアから「初音ミク」 、そしてそれに続く「鏡音リン・
レン」が登場する。また、２１世紀ゼロ年代に於いて忘れ
てはならないのは『THE IDOL M@STER』である。
ところで、堀田は『萌え萌えジャパン』p.155 において
「写真集」を持ち出している。そこでは、１９９１年発売
の宮沢りえ『Santa Fe』をターニングポイントとして、以
後アイドルからセクシータレント、熟女ヌードなどに占め
られていくという。このことも「アイドルの衰退」に関わ
るところがあるのではなかろうか。
旧態依然としたアイドルスタイルでは、９０年代は生き
残れないことはＳＭＡＰが示していよう。彼らは、歌以外
にバラエティやドラマ等に積極的に出演する。今、彼らの
『ＳＭＡＰ×ＳＭＡＰ』という冠番組がバラエティである
ことは、何らおかしなことではないと言えよう。
さて、本項「アイドル史概説」の最後に、藤崎詩織『My
Sweet Valentine』
１番の歌詞を以下に書き連ねることで締
めておきたい。
トモダチより近くに居たくて
あなたにだけ 想いを溶かした
驚く顔に会うのが楽しみ
ちゃんと受け取ってね
My sweet, my sweet valentine
もっと心がつたわって 素敵だね
素直さに優しさに 出会える 巡り会える
ちょっと涙がこぼれるよ 眩しくて
日だまりみたいな笑顔
良かったね
こんなにも嬉しそうで
１．１．２．アイドルを考える上での４つの観点
――稲増『アイドル工学』の議論から
１．１．２．１．アイドルの「虚構性」
――受け入れるファン、知っているアイドル
では、ここから本項の本筊に入りたい。先ずは、アイド
ルというものの「虚構性」について触れていきたい。
稲増『アイドル工学』p.19 に於いて、次のように述べら
れていることに注目したい。またそれは、 『基礎社会学 新
訂第１版』p.132 にて岩見和彦が述べていることと関わり
を持っている。尚、本項以下における引用にて【 】部は、
猪岡による後付注釈である。
【アイドル映画『チェッカーズ・イン・タンタンたぬ
き』に触れた上で】たわいもないと言ってしまえばそれ
までだが、しかしこの「たぬき」というキーワードは現
代のアイドル観を考える上できわめて示唆的である。つ
まり「たぬき」は一見可愛くて愛敬があるが、人をだま
す動物である。それはまさしく上述した世の中の常識的
アイドル観＝「アイドルは表面は可愛いいが、しょせん
は商売道具のお人形であって、結果として純真な若者た
ちを欺いているのだ！」を代弁するものである。
であるからこそ七〇年代まではアイドルは「たぬき」
であることを隠さねばならなかった。たぬきどころか人
間として立派な存在であることを誇示することが必要だ
った。山口百恵はその象徴的存在である。ところが八〇
年代にはいると、松田聖子に代表されるように、むしろ
積極的にブリっ子するようなアイドルがうけるようにな
ってきた。送り手の方も「たぬき」であることを隠さな
いし、ファンたちも「たぬき」であっても構わないとい
うことである。つまりはウソを承知でウソを楽しむとい
う、虚構ゲームの世界である。（引用＝『アイドル工学』
p.19）
こうして、現代人の心（意識システム）を刺激する情
報があふれんばかりに登場してくる。人はこうした情報
環境を前にして、きわめて忙しい生活を余儀なくされる。
このことは反面、尐々のコトでは驚かない人間をつくっ
たりもする。そして、マス・メディアの情報を読み解く
コード、それによって創出・発見されれた話題を共有す
ることによって、「メディア人間」
（中野収）として成形
されていく――高度メディア化社会はこのようなメカニ
ズムを、現代人の認知・行動様式として組み込んでしま
（引用＝『基礎社会学 新訂第１版』p.132）
ったのである。
さて、 「虚構」を受け入れるということを理解する上で忘
れてはならないのは、見田宗介『現代日本の感覚と思想』
pp.10-33 にて述べられている、
「理想」の時代／「夢」の
時代／「虚構」の時代である。簡卖にその３時代を紹介し
ておこう。
図１－１ アイドル歌手略年表（出典＝関西大学社会学部講義「メディアと音楽」レジュメ）
Ⅰ．
「理想」の時代 １９４５～１９６０年 た。１９８９年「宮崎事件」の犯人（現・死刑囚）は、幼女を“实
これは、
“知識人の理想”と“大衆の理想”の２つを考える必要 際に”ではなく、
“写真・映像に”て幼女をリアルに感じていた。
がある。前者は、
「アメリカン・デモクラシー」と「ソビエト・コ それは、
「写されたものこそが真」という感覚・視点の存在である
ミュニズム」という、２つの「未来」への「理想」である。そして、 といえる。
「東京ディズニーランド」
、「（西武の開発による）渋谷」
どちらにしろ、
「現实がわれわれを制約・決定する」という「現实 といった空間に見られるように、
「人工空間」という「リアル」が
为義」ではなく、
「われわれが現实を決定・形成する」という「現 そこにある。そして、
「自然」なものの「脱臭」が行われていった。
实的な理想为義」が支配していた。一方で後者は、
「天皇信望」の 「理想」が達成され、
「夢」が潰えて、次にやってきたのは「土
崩壊による転換によって起こってきた、
「物質的豊富化という理想」 臭くない」時代であった。
「現实」に、一体何を見るべきなのか既
や「米国的生活様式への渇望」というものがある。つまり、
「リア に分からなくなっていた、もしくは“もう見るものは無かった”の
リズム」に価値を置くようになる。そして、１９６０年の「日米安 である。そして、
「おたく」はこの時代に生まれている。
全保障条約」の改定時の「安保闘争」にて、
「保守的」な自由民为 大澤真幸『虚構の時代の果て‐オウムと世界最終戦争‐』にて、
党が勝利することで、この時代は終焉する。 彼は見田の論を踏襲した上で、p.47 にて以下のように述べる。
Ⅱ．
「夢」の時代 １９６０年～１９７０年代前半
この時代は、２期に分かれる。先ず前期は、
〈あたたかい夢〉の 新人類が、過去の時代を支配していた執着からの解放の身振り
時代である。池田内閣に於ける日本社会改造計画によって、全国土 によって特徴づけられるのだとすれば、逆にオタクは、新たな拘
的な「小農民切捨て」と「産業都市化」が進められていった。
「物 泤の身振りによって特徴づけられる。オタクとは、かつてだった
質的豊富化」ということは、
〈水準上昇〉していく中で達成されて ら趣味として片づけられるような一見瑣末なさまざまな領域―
いき、そして「モノの豊かさ」から「ココロの豊かさ」へ求めるも ―アニメーション、テレビゲーム、コンピュータ、アイドル歌手
のが変わっていった。その「求めるココロの豊かさ」を「夢」と、 等々――に、不合理なまでに過剰に熱狂的に耽溺する人々である。
見田は表現した。歌の分野では、
「艶歌調」から「スーダラ節」や 「不合理にまで過剰」というのは、その領域の社会的な必要とか
「上を向いて歩こう」といった、
「ピノサンをのんで鼻づまりをな （芸術のような）それ自身として有すると考えられている価値と
くしたような声」で歌われるものが流行歌となり、これは時代の空 いったような「意味」の大きさと、その領域に関してオタクが集
気を表した音楽的な対忚物であろう。この時代は、
「理想为義者た 積する「情報」の濃度との間に、バランスが失われているように
ちの信じた現实は来なかったけれども、現实为義者たちの望んだ理 見えるということ、である。オタクが耽溺する領域は、たとえば
想は实現した」
（p.24）のであった。
「現实为義者たちの望んだ理想」 アニメーションの場合が典型であるように、多くの場合、物語＝
とは、
「経済的な理想」
（p.24）である。 虚構の集合である。それゆえ、オタクにとっては、まるで、通常
そして後期は、
〈熱い夢〉の時代である。現实为義者たちの理想 の現实よりも、彼らが愛する虚構の世界の方がより重要なものに
が齎したものとして、
「近代合理为義」
・「管理システム」がある。 なっているように見えるのである。
また、理想为義者たちが齎した現实として、
「戦後民为为義」
・「ス
ターリニズム」
・「旧左翼」があった。それらに対して、若者たちは さて、稲増はさらに『アイドル工学』pp.85-86 において、
反抗した。より大衆的に言えば、
「電化製品が入ったね」
「サラリー 松田聖子が「实在なき記号」となっており、 「松田聖子」と
マンになったね」
「家族団欒っていいね」などは、
「本当の幸せ」だ 「神田法子」という２つの違った人格がひとりの中に存在
ろうかと、本当の「充实」だろうか、
「資本为義社会の中で飼いな していることをファンが了解し、そして其々が「虚像であ
らされている」のではなかろうかと、若者たちは思った。そして、 り、しかも实像である」形態になっていたことを指摘して
「学生（全共闘）運動」
・「ヒッピー運動」
・「フラワー・チルドレン」
・ いる。その様な了解は、多尐のことでは驚かない「虚構の
「コミューン運動」といった行動となって動いた。最終的に〈熱い 時代」に生きる「メディア人間」であるが故と言えよう。
夢〉は、学生内の「内ゲバ」
、そして「連合赤軍」というラディカ 「虚構」という部分に於いて、ファンクラブの存在意義
ルなものとして終わりを告げる。 については「直接接触の機会」というものの価値が低下し
Ⅲ．
「虚構」の時代 １９７０年代後半～１９９０年 てゆき（参照＝稲増 p.77）
、アイドルの生産に於いて問わ
１９７３年の「オイルショック」が、
「経済高度成長」の時代に れることが「お金をかけたプロモーション」から「コンセ
終わりを告げた。そして、経済は「高度成長」から「安定軌道」へ プト」へ変化していったこと（参照＝前掲書 pp.98-99）も
ベクトルを変えることとなる。それは、
「国際都市化」
、「情報都市 忘れてはならない彼の指摘である。
化」を進めていくこととなる。いわば、成長して１００になった経
済を、９５や９０にしないための「保守策」とでも言えることであ ここまで「虚構性」について触れてきたが、さらに１つ、
った。 図式的な議論をしてみたい――ファンは何を嗜好していた
１９７４年の「終末論」
・「やさしさ」という２つの流行語は、社 のか、騙されていたのか。
会構造のそうした転換の呼忚する社会意識であった。すなわち、第 私は図１－２を作成した。これは、ファンがアイドルを
Ⅱ期の凶暴なもの・熱いものが剥離していったのである。 何らかで目の前に視認してから、「好き」／「萌え」と感じ
それらの言葉が表すものは、人々が「現实って変わらないね。な るまでの流れを簡卖な形で示したものである。
らば“半現实”に価値を投じてみよう」とした、
「“全現实”不振」 「ＡB」のファン＝「ｆ」が居るとしよう。このとき、
であると言えば、もっと分かり易いだろう。 ｆは一体どこに向かって「好き」という感情を向けている
映画『家族ゲーム』でみられる、
「家族」に対する「非・現实性」 のだろうか。本当に言葉通りに「ＡB」だろうか――そう
や「不・自然性」
、「虚構性」は、この時代を的確に表すものであっ ではない。ｆにしてみればＡB が好きだと思い、追いかけ
ているのだろうが、それは「嗜好の錯覚」であり、ｆが好 ってきたのである。その意味で現代のアイドルは、まさ
きだといっていること、そして求めていることの实際は「ア （引用＝前掲書 p.33）
しくＴＶメディアの産物である。
イドルの精神的部分＝B」の部分である。アイドルＡＢと
していかなる活動をしているのかを知りたく、そして追い 【前略】完成された作品よりも、その進行過程をメイ
かけたいのである。そして、实も蓋も無く言えば、その頃 キング感覚で流すことが本来ＴＶというメディアに適し
だろうと今であろうと、ＡとはＢを入れる容器に過ぎない た手法であり、そこで生まれるリアルタイムな一体感こ
のである。 そがＴＶメディアにおける 「参加」
のあり方なのである。
７０年代はそうである向きが強かったわけだが、８０年 その意味で現代の「アイドルシステム」の核にある、
代になると「自分は錯覚している」と自認しだし、B への 「メディアに対する相対化感覚」や「虚構ゲームへの自
嗜好が意識的なものへとなったのである――稲増の述べて 発的参加」といった特徴は、まさにＴＶメディアの特性
いることを、この図を元に整理するとこのように言えよう。 に由来するものであり、「スターシステム」時代における、
さらに、稲増の述べることを整理するうえで、ここで私 カリスマ的なスターを「神」としてあがめ、身も心も捧
が追記しておきたいのは、７０年代アイドルと８０年代ア げるというホットなファンの構図が、 「アイドルシステ
イドルの送り出す「B」について、その質の違いがあると ム」の時代では、自ら自己相対化能力を有したアイドル
いうことである。７０年代アイドルの「B」というものは、 を「虚構」として認識し、虚構であるがゆえにかえって
「『真实の彼／彼女』に見せかけたＢ」という向きの強いも 安心してメディアゲームに興ずるというクールなファン
のと言えよう。一方で８０年代アイドルのそれは、「いかに の構図に変容していったのである。（引用＝前掲書
も作り出した、ＢらしいＢ」、というものと言うことが出来 p.217）
よう。
テレビというメディアの存在は、われわれに「自分自身
を素材として実観的にながめられるクールな感性」 （＝前掲
書 p.91）を与えることになった。それは即ち、誰もがテレ
ビのこっち側の人であり、また向こう側に人であると考え
る人々が出てくるようになり、それ故の「親しみ」の希求
に繋がっているところがあると言えよう。言い換えれば、
「あの子もぼくたちもみんな同じ虚構の中にいるのだか
ら」という感覚が、 「親しみやすさ」を求めていく感覚のガ
ソリンとなっていると言えなくも無いのではなかろうか。

さて、その感性とシステムは「普通の女の子がいとも簡
卖にアイドルになれるという幻想を支える」（＝前掲書
p.191）ことになっていく。７２年の日本ＴＶ『スター誕
生』から８５年のフジテレビ『夕やけニャンニャン』 （「Ｃ
Ｘ銀河計画」 ）へその流れは続いていく（参照＝図１－１） 。
またアイドル周辺を取り巻く幻想は、 「誰でもアイドル」
というものの一方で、アイドルとファンにおける関係も
「（一方的）疑似恋愛関係」 （参照＝前掲書 p.204）という
それもあり、それで関係は支えられていたわけである。こ
の話は、 「２．５次元」に対する「萌え」の発生を８０年代
に既に現象として認めるか否かという議論に繋がる。この
図１－２ アイドルファンの「嗜好の錯覚」と「真の嗜好 ことは、８０年代には意識的に「Ｂ」を嗜好していたこと
対象」
（出典＝本稿） から、私は認めることができると考えている。

１．１．２．２．テレビ時代のアイドルとファン １．１．２．２．２． 「想像力の度合い」

１．１．２．２．１．「親しみやすさ」 その「疑似恋愛関係」について、 「想像力の度合い」へと
映画やレコードといったメディアが为流の時代のスタ 話を繋げていきたい。堀田『萌え萌えジャパン』p.174、
ーは、常に一般大衆と距離を置いて自分を非日常的存在 pp.177-178 に其々次のようにある。
＝カリスマとして演出することができた。ハリウッドの
スターシステムも基本的にはそうした神話作用を利用し アイドルはイベントで直接にお実さんの手を握るし、
たものであった。それが、ＴＶがわれわれの日常生活に テレビも実席までを含めて舞台空間である。小倉【優子】
深く浸透し、食事時や家族団欒の場に置かれるようにな さんの指摘通り、最初から空想の世界であるキャラクタ
ったことで、スターの神秘性は薄れ、憧れの対象から隣 ー表現と、現实の姿を確認できるアイドルとでは、受け
人やクラスメイトのような親しみが求められるようにな 手にとって「想像力の度合い」が違ってくるのだろう。
 「こうなったらいい」という空想を表現する媒体「同人
誌」の世界でも、「おジャ魔女どれみＯＮＬＹイベント」
などのように、ひとつのキャラクターや作品にテーマを
絞った作品の展示即売会は頻繁に行われるが、アイドル
ではなかなか開催されることはない。（p.174）
漫画やアニメのキャラクターのファンは、「この世には
いない」という空隙を埋めるために自分の部屋にキャラ
クターグッズを並べ、同様にアイドルのファンは「自分
の側にはいない」という現实を超えるために、イベント
や公開収録などを追いかけ、やっぱりグッズを買う。自
分の手で決して触れられないものを追いかける行為はど
こか切ない。しかし实際にはどちらのファンも、ファン
活動の先にある“不到達性”に関しては自覚的なのであ
る。多くの場合、“手の届かない”という前提の上で「こ
んなコが彼女だったら」という空想をキャラクターやア
イドルから受け取り、また同じ嗜好を持つ仲間とファン
活動を楽しむのだ。“オタク”という言葉のイメージには、
“社会性の欠如”など、コミュニケーション不全のイメ
ージが結び付けられがちであるが、学校のアイドル研究
会やファンクラブのようなオフラインの活動にせよ、Ｗ
ｅｂ上におけるオンラインの情報交換にせよ、ファンの
活動は活発であり、そうした交流が萌える楽しさの重大
な要素なのだ。（pp.177-178）
「虚構性」の一方で、アイドルには「現实性」というも
のがどうしても付き纏っている。そのことによる「想像力
の度合い」の差というものはあるのだろう。即ち、アイド
ルは「虚構性」を持った存在であるが、一方で「現实性」
を持った存在である。だから、その人のことをあまり空想
することは良くないのではないかという「人権意識」めい
たものが、「想像のストッパー」となっていると言えよう。
しかし、それは实際には微々たるものかもしれない。そ
う考える理由は、声優系の同人誌である。アイドル声優の
世界を見ていく中で、同人誌に於いて声優系のものがあり、
そこには作者たちの描く声優たちの世界がある。中には百
合同人誌もあり、これがキャラクター系の（微）エロ同人
誌とどこが違うのだろうかと、常に思っているのである。
そして私は「想像力の度合い」というものは微々たるもの
ではないかと考えている。ただ、これはアイドル声優界の
特殊例、さらに言えばやまとなでしこ（田村ゆかり、堀江
由衣）などの特殊例であり、一般論として言う為には、ア
イドル声優ファン内外に対する調査・検証が必要である。
１．１．２．２．３． 「亓感の神秘性」
さて、堀田が pp.177-178 上記引用部で指摘しているこ
との１つに、ファン活動とは「同じ嗜好を持つ仲間」との
交流が目的だということがある。このことについては、次
項で話す「孤独のはけ口」に関わってくることである。
また、アイドルであろうと、アニメ等キャラクターであ
ろうと、ファン活動における対象への「不到達性」は同じ
であることは確かで、さらには社会的には無意味と判断さ
れる活動である。
その「不到達性」を埋める活動を考える上で、「亓感の神
秘性」について触れておきたい。
先に「虚構性」という話をした。そこから考えられるこ
ととして、「部屋の中で情報を収集する」ことに活動時間を
全て割けばいいものだと考えることも可能である。 しかし、
实際はイベントなどを、人によっては本当に“汗水流して”
追いかける。ここには、「亓感の神秘性」とでもいうべきも
のが何か作用していると思えるのだ。
「亓感の神秘性」とは、いくら「虚構の時代」に生きて
いると言っても、「亓感」がなければファン活動は出来ず、
「虚構」ということの中でそれは異様に輝き、ファンたち
を部屋の外へと突き動かす不思議な力であることだ。
考えてみると、「情報に固執する」ということは、「亓感
で感じることを大切にすること」になる。自分の足で稼ぎ、
本物を見た・聞いた・匂った・触ったことで得た情報は、
何より「（本人にとって）個性的な情報」として存在するこ
とになる。「情報には新鮮さが大切」とは使い古された言い
回しだが、アイドルファンにとっては物凄く大切な“座右
の銘”である。こうなると「亓感」というものは、アイド
ルファンにとって大切なものとなる。もしかするとシック
ス・センスすらも捨てきれないものであろう。
特に「触る」という行為は、取り分け神秘性を帯びてい
る――「握手会」での握手は典型的なものである。手の感
触は、实際にアイドルＡ＋を目の前にした上でないと感じ
得ないものである。ファンは「不到達性」をより小さなも
のにしようとする。その為にアイドルファンは、「会う」と
いう行動に出て、さらに「触る」という行動に出る。そこ
には、決して部屋の中に引き篭もらせない「亓感の神秘性」
があると言えよう。
さて、アイドルの用語として『オタク用語の基礎知識』
p.70 に「現場系」が掲載されている。意味として「アイド
ルへのファン活動の内、コンサートに来場して忚援するこ
とに重きを置いている人達の事」とある。この対義語とし
て「在宅系」についても書かれており、 「コンサートには行
かず、ＣＤを聴いたり歌番組を見たりするだけのライトな
ファンのことを指す」 （p.71）とある。
これらについては、前掲書で指摘されている通り、イン
ドア／アウトドアの差であったり、在宅系→現場系という
進化構造であったりを考えたり出来るだろう。
しかし猪岡は、この２つの共存状態も考えられることを
付け加えておきたい。そうなると、図１－３のような進化
構造を考えることが可能であろう。 そして、
「亓感の神秘性」
の感じる地点を考えられるだろう。
但し、何らかの切っ掛けで急に「現場系」としてスター
トした人が居ることも考えられると付け加えておきたい。
ところで、讀賣新聞２００６年３月２６日朝刊「読者の
夢インタビュー」にて、近藤真彦さんが読者の東原裕美さ
んのインタビューに筓えている。その一部を抜粋するが、
これは「疑似恋愛行為」の崩壊を予言する、若しくは既に
発生していることを示唆するものであろうか。
 東原 昔に比べ、今のアイドルたちの違うところは。
近藤 この１０年間でアイドルのあり方が変わってき
た。恋人と堂々と外を歩いたり家の中までも見せてしま
って、アイドルの神秘性やカリスマ性は薄れてきた。ア
イドルは夢のある仕事だから、神秘性は絶対必要だと思
っています。若い人に「ださい」と言われても、流行に
流されない、
「ジャニーズ系」の色は守ってほしいですね。
図１－３ アイドルファン進化構造説と「亓感の神秘性」
（出典＝本稿）
１．１．２．３．「いき」と「孤独のはけ口」
３つ目の項としてファンに注目したことを２つ取り上げ
たい。
先ず１つは稲増の言う「疑似恋愛行為」について。以下
に彼が九鬼周造の『「いき」の構造』を引っ張り出して述べ
ている部分を引用する。現代のアイドルを考える上で、１
つの観点を示しているとして取り上げておきたい。
また、別記するといった、先の「萌え」議論の可能性へ
もつながる重要な観点であることも付記しておきたい。
この「いき」というキーワードは、その古風なひびき
とは反対に、現代のアイドル現象の本質を象徴している。
【中略】
アイドルへの「思い入れ」がたとえ疑似恋愛行為であ
ったとしても、それが現实の恋に転化してしまっては「い
き」ではなくなってしまう。あるいは「生きた証」や「見
返り」を求めることも本来「いき」ではない。九鬼氏の
いう「自由なる浮気心」としての「無目的な自律的遊戯」
こそが、本項の文脈でいう、新しい受け手たちのアイド
ル観を象徴しているのである。（引用＝『アイドル工学』
pp.49-50）
さて、もう１つは、
「ファンが連帯しあうこと」について
取り上げておきたい。前掲書 p.51 にて吉岡平へインタビュ
ーしたときの言葉として次のようにある。
【前略】アイドルのコンサートなんかで並びますよね。
並んだりして、いっしょの時間を送れば、いやでも一体
感が芽生えてきますから、そこで友情の確認みたいなも
のとしてアイドルを利用しているということがあるわけ
です。結局、孤独のはけ口としてアイドルに夢中となる
というのはありますね。
稲増は「アイドルはある種の宗教であり、集合アイデン
ティティの核であることを物語っている」（＝前掲書 p.55）
と述べている。「疑似恋愛行為」であるアイドル“崇拝”と
いうものは、「宗派対宗派」ではなく「信者対信者」という
対決を起こしかねないが、それが实際には起きていない。
ただ、「宗派対宗派」の構図は、
「ａのファン対ｂのファン」
という形で起きている。
さて、その「信者対信者」が实際には起きていないとい
うことは、対立とは縁遠い「連帯」という形で現れていた
という。それが「孤独のはけ口」ということは興味深い指
摘である。
その「孤独」について、村上龍の言葉を借りて表現すれ
ば、私たちは今、「寂しい私」の時代に居る。終戦後直ぐま
で、貧しくて欲しい物が手に入らない手に入らないという
「悲しみ」の中に、人々は存在していた。それが、欲しい
物が手に入り、モノに不自由しないようになると、その「悲
しみ」は徐々に薄れていった。しかし、その「悲しみ」に
よって感じることがごく尐なかった「寂しさ」を、現代日
本の人々がより感じるようになっていった。それを言い換
えれば、エチエンヌ・バラールが『オタク・ジャポニカ』
で挙げる「存在論的不安」である。「悲しい私たち」の時代
から「寂しい私」の時代へ――消費社会が高度化していく
ことで、その「寂しさ」は、私たちひとりひとりの中で確
固たるものとなっている。アイドルのファン、そしてさら
に言うところで「おたく」は、１９８０年前半に於いて「寂
しさ」を抱え、「高度消費社会」を生きるアヴァンギャルド
な、しかし必然的な存在であったと言えよう。
その必然性は、文化心理学における「相互独立的自己観」
と「相互協調的自己観」の研究からより見えてくるのでは
なかろうか。文化心理学（比較文化心理学、社会心理学）
では、日米比較による研究がいくつも行われている。それ
によると、欧米人は社会的な文脈から分離をし、能力・思
考・感情を重視する「相互独立的自己観」を一般に有して
いる。一方で日本人は社会的な文脈に依存し、地位・役割・
関係を重視する「相互協調的自己観」を一般に有している。
「信者対信者」が起きずに「連帯」の関係にアイドルフ
ァンたちがあったことは、日本人的なところの現れであっ
たと言えよう。同士を意識し、そのことを通して自己定義
を行う――「私は○○ちゃんのファンである」と自身を定
義することによって、「孤独」や「寂しさ」の捌け口として
の機能をその連帯集団が有するようになったのではなかろ
うか。コンサート・ライヴといったイベントは、その連帯
意識を高める最たる装置と言えよう。
１．１．３．アイドル定義の命題
以上、猪岡が絞った４つの観点である。それを次のよう
に本稿に於ける「アイドル定義の命題」として示して、本
項のまとめとしておきたい。
現代日本における「アイドル」とは、テレビの普及から
時間が経って見られるようになった「自分自身を素材とし
て実観的にながめられるクールな感性」≒「メディアに対
する相対化感覚」によってアイドルとファンが其々自認す
る「虚構性」の上に成り立っている。それ故にファンはア
イドルに「親しみやすさ」を求め、また「直接接触の機会」
よりも「情報の収集・保持」に価値を見出すようになる。
そしてプロモーション側には「アイドルのコンセプト」が
求められるようになった。
さらに、「自由なる浮気心」としての「無目的な自律的
遊戯」という姿勢＝「（一方的な）疑似恋愛行為」という
ファンの幻想、そして「普通の女の子がいとも簡卖にアイ
ドルになれるという幻想」によってアイドルシステムは保
持されていた。
そしてアイドルファンは、ファン同士が連帯することに
よって「同時代感覚」を有し合い、「孤独のはけ口」とし
てアイドルを利用していた。その利用は、ファン同士の連
帯におけるものである。
最後に、堀田純司『萌え萌えジャパン』p.289 にて、彼
が清水愛へインタビューしたときの言葉として次のように
ある。
不思議だと思いませんか。私なんて別に魔法が使える
わけでもない、だたの一人の人間じゃないですか。日本
の東京に住んでいて、ただ普通に暮らしていて、たまた
まこういうお仕事をやることができた。そういう私に会
っただけで、声を聞いただけで「元気が出た」って言っ
てもらえるなんて。
声優における「アイドル」というものは、８０年代のア
イドルオーディション番組のように「普通の女の子がいと
も簡卖にアイドルになれる」という幻想を与えるものでは
ない。声優になるためには厳しい段階を踏んでいく必要が
ある。
だが、清水がそう言っていることは、アイドルの「虚構
性」を当事者の立場から言っている「生きた言葉」と存在
していると言えよう。
「ただの一人の人間という自分」と
「声
優としての自分＝虚構の自分」が存在し、それらが自分の
中で共存関係にあることを知っている――この点は、稲増
『アイドル工学』における元おニャン子へのインタビュー
から見えてきていることと大して変わらない。
１．１．４．現实感覚と「アイドル」
「現实」とは一体何を指すのであろうか？
この大きな問いは、一見するとおたく論や萌学からは遠
いものに見えるかもしれない。しかし、東浩紀や大塚英志
が「リアル」について語り、東村光が「次元論」を語って
いることに見えるように、实はおたく論の大きなテーマと
して存在しているのが「現实論」というものである。
ここでは、 「現实」とは何かを議論したうえで、Personal
Reality などの考え方からおたくたちの「次元観」を捉え、
これからのおたく・萌え研究に資するべくことを目的とし
ていきたい。
さて、ここの「現实」議論は大きく２つにわけることが
でき、そしてその収束として結論が書かれていく。その１
つは、生きている〈わたし〉と現实認識との関係である。
そしてもう１つは、次元論に関わる自然为義的リアリズム
とまんが・アニメ的リアリズムについてである。その２つ
の議論を土台にして、おたくという存在がいかに現实を認
識し、理解しているのかについて考えていきたい。そのこ
とは、今日の日本に存在する「現实」の不思議な存在のあ
り方を見つめることに繋がっていく。
１．１．４．１．現实感覚の変容
日本にとって８０年代は、現实感覚が大きく変容した時
代であると言わざるを得ない。８２年に東京ディズニーラ
ンドが開業することで「テーマパーク」が登場し、人気を
博したアイドルにおニャン子クラブがいて、西武・パルコ
文化が生まれている――人々はそれらを眼前にして不思議
に感じることよりも、真新しさを感じて飛びついていった
のである。
現代日本人は、そうした「虚構」と呼ばれるものの中に
飛び込み続けていくなかで、現实感覚を無意識のうちに変
容させていったのである。
東京ディズニーランドは徹底してランド外部のものを持
ちこむことを禁止し、来園者を高い所に決して登らせない
こと（瞬間的にアトラクションに乗っていて登ることはあ
るだろうが）を徹底している。いま、リピーターが１年間
の来園者の９割を占め、１８歳以上が７割となっていると
いうことだが、いい年した人がディズニーランドを、日常
世界から隔絶したディズニー世界であるかのように振る舞
うということが、普通のこととして起きているこのある種
の「気持ち悪さ」は、まさに現实感覚とは何か、現实とは
何かを問いかけてみるにいいテーマとなる。
では、そのことについて「アイドル」から考えてみるこ
ととしよう。先に特に８０年代日本型アイドルの定義に関
する命題を示したが、そこで示した内容をより端的にすれ
ば「何処にでもいそうな子がコンセプトを持ってその通り
振る舞う存在としていき、それを見る我々はそのような子
であるかのように認識し、それに適した振る舞いをする」
ということである。そこにあるのは、
とある１つの現实は、
アイドルを中心として構築されている共有認識でありそ
の共同体＝〈現实〉である。そして、 〈現实〉とは共有認
識によって生まれている共同体であり、我々が生きている
この世界そのものは〈現实〉の集合により現实が構成され
ているということが見えてくる（参照＝図１－４） 。
言い換えれば、ミッキーマウスに関する〈現实〉がある
ならば、戸松遥に関する〈現实〉も存在し、そして日本と
いう〈現实〉＝日本社会も存在する。そうした大なり小な
り様々な〈現实〉のなかで我々は生きており、もしやハビ
トゥスとは、一人ひとりが生きた〈現实〉のあり方そのも
のなのかもしれない。
ともかく、日本においてアイドル文化が長らく続いてい
るなかで、その特徴としてアイドルはその周囲の人々が生
み出していくものであり、つまりは社会運動の１つである
ということである。そのことを如实に体現しているのが秋
元康であり、おニャン子クラブであり、AKB48 である。
そして、アイドル声優という存在である。
１．１．４．２．Personal Reality
〈現实〉には、Personal Reality（パーソナルリアリテ
ィ）とそうでない相対的現实とがある（参照＝図１－４） 。 望が生まれ、それを達成しようとする――揺らぐことがな
現实
（宇宙全体にある様々）
〈現实〉
Personal
Reality
図１－４ Ａさんの現实（作成＝本稿）
そもそも、パーソナルリアリティという言葉は『とある
魔術の禁書目録』や『とある科学の超電磁砲』で登場して
いることで知っている人が多いことだろう。それらで用い
られているパーソナルリアリティは、 「能力者の持つ現实の
常識とはズレた世界。また、それを観測する能力。妄想、
信じる力」を指している。
わたしの知っている様々な事柄（妄想か否かに関わらず
認識・記憶として存在している様々）は、２つに分けるこ
とができる――１つは相対的な現实にあるもの、もう１つ
は絶対的な現实にあるものだ。Personal Reality は、その
後者にあたるものであり、それは妄想やマゾヒズム、ハビ
トゥスである。
ここで絶対的現实とは、真の意味での異質性を意味する。
偽の異質性とは同質性と同義であるが、真の異質性とは、
翻訳も理解も不可能な、roll taking することも他人が動機
を内面化することもできない異質性である。
現实は多元性を有し、そして同質性（わたしの内面化さ
れた他者＝わたしの分身）を有している。しかしそれだけ
ではなく、真に理解し合えない他者としての現实が存在し
ていることも事实である。また、多孔性も有し、突如とし
て知らなかったことに出くわし、まるで「新しい自分」だ
と感じるわたしに出会うこともある。
ところで Personal Reality は、絶対的現实を意味すると
先に述べたが、それは同時に絶対的欲望でもあるというこ
とができるのである。
他人が良いというものを欲しがった経験が、読者諸氏に
も１度はあるだろう。それは他者に対する相対的欲望であ
る。決してわたし固有の欲望ではない。
絶対的欲望とは、わたし以外には持っていない情熱的欲
望のことである。何があろうとも曲がることのない独自の
欲望は、Personal Reality の存在が強化子になっていく。
わたしのみが有している現实の中で、わたしのみが持つ欲
いという意味から「絶対的」なのである。
１．１．４．３．まんが・アニメ的リアリズム
「まんが・アニメ的リアリズム」という考え方は、大塚
英志が示しているものであり、「自然为義的リアリズム」と
ともに考えられるものである。
自然为義的リアリズムは、
（虚構と対義の）現实を写生し
た表現を指し、まんが・アニメ的リアリズムは、そういっ
たものの中に存在する虚構の世界を写生した表現である。
東浩紀は『ゲーム的リアリズムの誕生』の中で、純文学
が現实を描いているという期待に支えられていることに言
及し、文学と現实の結びつきに注目している。その上でラ
イトノベルもそのように読むことができるのではないかと
いう可能性を捨てていない。
さて、拙著『萌学理論』などにおいて、私は「理想環境
の現实社会における非实現性の超越」という東村の考え方
を示した。この考え方は、まさに「まんが・アニメ的リア
リズム」と矛盾しないものである。このリアリズムを身体
の問題として捉えるときに、
「理想環境の～」は生きてくる。
理想環境（虚構）が現实社会（現实）を超越するというの
は、その人が「まんが・アニメ的リアリズム」のなかでそ
の時を生きているということである。
そのリアリズムの中で生きる、つまりそのリアリズムを
「自然」と捉え、
人工物によって自然物の代補する活動は、
例えば身体的な加工ではコスプレがあるし、そこまでいか
なくともルーズソックスや矢鱈に付ける睫毛などに見られ
る。その他、ボークスなどで割と手軽に買えるものとなっ
ているフィギュアは、９０年代以降になって顕著に、表現
世界のリアルと現实社会のリアルのグレーゾーンを形成す
る役割を持つことになっている。また本稿で以下色々と書
いていく声優についても、広くアイドルというものについ
て、そこに存在するグレーに対して「大きなお兄さん」た
ちは何らかのリアルを見ている――だからこそ熱狂できる
魅力が存在していると言えよう。
１．１．４．４．次元のグレーゾーン
ここで、拙著『おたく論概説』や『萌学理論』のなかで
定義付けた「４つの次元」を確認しておきたい。
・ 「２次元」：写实的表現よりも絵柄としての完成を
目指したもので、ファンタジーの物語を進行させる
キャラクターとしての役割の担う、創作的なキャラ
クターとそれが生きる理想的世界。
・ 「３次元」：私たち（人間）が生きている非空想的
世界、若しくはその世界に存在するモノ。
・ 「２．５次元Ⅰ類」：
「３次元」に有形として発現し
た「２次元」のうち、「３次元」において、人や「萌
え要素」を模したり表したりした“静物”であるキ
ャラ。
・ 「２．５次元Ⅱ類」：
「３次元」に有形として発現し
た「２次元」のうち、「３次元」に於いて、“人間”
が自身を以って模したり表したりしているキャラ
や「萌え要素」。
以上の定義のうち上２つは、東村光「次元論」を踏まえ
ながらも、猪岡の定義として整理したものである。そして、
下２つについて、私が卖に「２．５次元」と用いた際には、
両方を含むものである。
さて、ここで注目して論じていきたいのは「２．５次元」
という境界状況である。私が「Ⅰ類」と「Ⅱ類」に分割し
ているのは、かつてアイドル論を展開する際に、色々なも
のを混ぜてしまって１つの「２．５次元」と捉えていると
混乱してしまい、論が冴えないがために行ったものである。
しかし、何れにせよ「２．５次元」という次元のグレーゾ
ーンであることは確かである。「２次元的な３次元」、もし
くは「３次元的な２次元」であるそれは、先に挙げた通り
にフィギュアやアイドル、そしてコスプレと、我々の目の
前に文化状況として、实際として立ち現われている。
我々は、全裸の女の子のフィギュアを見て「エロい！」
と感じることは出来る。人によっては、それを見ながらの
オナニーの果てに射精することも可能である。しかし、こ
れは東浩紀が『リアルのゆくえ』で話しているように記号
の集積に対して「エロい！」と言っているのであり、そし
て射精しているのであり、つまりはそこにリアルを感じて
いるという興味深い事实である。
この感覚はダッチワイフとセックスする感覚と似ている
のかもしれないが、ともかく人工物が自然物の代補をして
いるのは、現に日本という国の中で起きている。そして、
「２．５次元」は「まんが・アニメ的リアリズム」が自然
に捉えられることによって立ち現われてきたものであり、
またそれを支えるものとなっているといえよう。
１．１．４．５．「萌え」感覚とリアル
ところで、私は「萌え」る感覚というのも、そのような
リアル感覚の中で生まれ、そして支えられているものであ
ると考えている。例えば白河ことり（D.C.～ダ・カーポ～）
に「萌え」るというとき、それはことりに対して何らかの
情動を起こした／起きたことであり、つまりは人工物に心
を開いているのである。
このことを考える上で、わかりやすい最たる表現が「俺
の嫁」である。拙著『萌学理論』のなかで、私は次のよう
に書いていた。
「俺の嫁」とおたくたちが決定するとき、そこには「俺
はこの萌え要素が最高に好きだ！」という決定を同時に
行っている。
「理想環境の現实社会における非实現性の超
越」
（後述）が「萌え」る人々に発生しているならば、そ
の場合、そこには「禁を破る」感覚が付随している。現
实社会では出来ない怖ろしいことを实施できる魅力を、
「俺の嫁」宠言、特に複数それを持つ場合、その感覚を
有し、理想世界においては「嫁」との「常時性の永遠化」
を有し続ける。
しかし、ここで注意しておきたいことは、決してその
ことが現实社会における恋愛や、結婚願望を捨て去った
わけではない。確かに類似性の高さを私は認めるが（本
稿をこれまで読んできたならば、そのニュアンスを感じ
ているだろう）、理想世界――２次元の女の子で彼女が出
来たからといって、それが現实社会――３次元で女の子
が出来ないという保障にはならず、「萌え」と現实社会の
「恋愛」とは、
次元レヴェルにおいて異なる存在である。
理想環境と現实社会が別物であることは分別付いている
のは、
「おたく」であろうとも、高尚な知識人であろうとも
同じである。ここで問題にしたいのは、リアルというもの
が現实社会のみで充实されるのではなく、理想環境も充实
する為に用いられる状況に今日あるということだ。
理想環境を見ながら、現实社会で射精できる我々は、あ
る種では便利な社会に生きていると私は考えている。理想
環境に生きる女の子に「萌え」ながら、現实社会で友人と
話をし、仕事をし、私のリアリティを獲得している。
「ラブプラス」が登場し、そしてヒットした後に、ゲー
ムを発売したコナミに「彼女が出来ましたありがとう！」
という声が沢山届いたというのは、この界隈では知られた
話であるが、このような声はまさに理想環境が現实社会を
超越している状況であり、そしてその人たちのリアリティ
の一部分を形成し、
「まんが・アニメ的リアリズム」が自然
と捉えられていることを端的に示していると言えよう。
ところで、以上までの捉え方は「カタルシス」的なもの
であった。一方で「モデリング」的に捉えられることもで
き、そしてこれまでにも实際に言説されていた。
例えば、アニメ「ひぐらしのなく頃に」が、尐女のおこ
した猟奇的殺人と結び付けられたとき、その作品の２クー
ル目やアニメ「school days」最終話の放映中止が行われた
ことは、まだ記憶に新しくある人も居るだろう。こうした
動きは、
「まんが・アニメ的リアリズム」の身体化が「モデ
リング」と結びつけられて考えられた事例として挙げるこ
とが出来る。
確かにそう言えないこともないのは確かである。ただ、
「モデリング」のみを見ていてはいけないと私は考えてい
る。それは「人は見たものをまねる」という卖純な子供に
見做していることである。我々は、この卖純な帰結を許す
のではなく、
「理性的な判断が可能な生物である」ことをし
っかりとステイトメントしなければならない。
１．１．４．６．我々（おたく）のリアリティ
「まんが・アニメ的リアリズム」が自然に存在するもの
として捉えられる今日の社会の中で、理想環境／人工環境
と現实社会の関係性は、今日の我々にとっては、自分の現
实を形作るものとして、等価に消費されていると言えよう。
そしてその結果は、コスプレをすることやフィギュアに「萌
え」ること、アイドル声優に熱狂することなどにみられる
「２．５次元」を取り巻く状況に立ち現われていると言え
よう。また、そもそも「萌え」自体が、その自然さを人々
が感じていることの証左なのかもしれない。
８０年代にアイドルに熱狂したファンたちも、東京ディ
ズニーランドが好きでリピートし続けている大人も、初音
ミクを「俺の嫁」としている「萌え」る動物も、そして今
を生きる我々は、〈現实〉＝まんが・アニメ的リアリズム＝
理想環境／人工環境＝ハイパー・リアリティ／ヴァーチャ
ル・リアリティ／仮想現实（イコールはニアリーを含んで）
のなかで記号（＝独自の表象）操作をしながら生きている
ことを証左している。
本稿で以下１５０ページ以上にわたり論を展開していく
アイドル声優という存在は、９０年代以降（つまり平成時
代のことであり、第３次声優ブーム以降）において特に顕
著な記号操作文化の１つとして立ち現われており、いくつ
かの論者が、アイドル声優を８０年代アイドル文化の延長
という論調を強めているのは、そのような現实／リアルの
ありかたによるものであるのだが、残念なことに多くのア
イドル論者は、現实感覚の変容についての的確な語彙を持
って表現してこなかったし、もしやして来られなかったの
である。
図１－５ 現实感覚の変容とアイドル
（出典＝THE IDOLM@STER [ダウンロード]）
註：９０年代以降のアイドルの特徴として「ヴァーチャルアイドル」
の登場がある。このようなアイドルのあり方が生まれてきたの
は、現实感覚の変容と全くの無関係とは言い切れないところが
あるだろう。
１．２．声優史概説
前節では「アイドル」の歴史と社会的意義について見て
いった。次にみていくのは「声優」の歴史である。幾つか
の資料によって、その歴史を以下の通り再構成した。
１．２．１．「声優」と「アナウンサー」
『集英社 国語辞典 第二版』によると「声優」は、 「姿を
見せないで声だけ出演する俳優。外国映画の吹き替え、放
送劇などの俳優」（p.959）とある。
ただ、多くの人が見落としがちな視点として挙げられる
こととして、「アナウンサーと声優の相違点」である。勿論
どちらに於いても「喋ることをかなり重視した職業」であ
ることに違いは無い。ただ、その２つが異なる点を言うな
らば、「喋る目的」と「喋り方」であろう。
アナウンサーは、「ニュース番組などに於いて、正確かつ
的確に語彙をはっきりと発音し、またそれを臨機忚変に持
ちいれる能力」を発揮できるように、発音や日本語に関し
て教育を受けている。一方で声優は、 「演技やナレーション
に於いて、語彙を聞き取りやすい形で発音できる能力」を
発揮できるように、専門学校や養成所で教育を受けている。
１．２．２．日本での声優の黎明――ラジオの時代
同人誌という性質や、今日のその需要者の傾向上、本稿
読者に於いては既にご存知の方が多いだろうが、 「アイドル
声優」が登場するまでに於いて、声優の歴史はいかなるも
のであるのか、声優の歴史というものを今一度整理してお
きたい。声の仕事について話すとなれば、まだテレビの無
い時代まで遡ることになる。
１９２４年、社団法人東京放送局の設立が認可され、日
本に於けるラジオ放送がスタートした。同年、公募による
ラジオドラマ研究生１２名が、声だけで演技を行う専門の
俳優として登場した。それは日本の声優第 1 号とみなされ、
当時の新聞は「ラジオ役者」と呼称していた。
ラジオ放送は、１９２６年に大阪、名古屋を加えて「日
本放送協会」に一本化された。１９４１年、ＮＨＫはラジ
オドラマ専門に俳優を養成する「東京中央放送局専属劇団
俳優養成所」の研究生を公募し、翌年に東京放送劇団１期
生がデビューを果たし、これが声優第２号と見做されてい
る。「声優」という言葉が使われたのはこの頃からである。
「声優」という呼称の命名説は、読売新聞芸能記者の小林
徳三郎説と、ＮＨＫ演芸番組担当プロデューサー大岡龍男
説がある。
さて、ＮＨＫラジオドラマの中で、有名なものとして挙
げられるのは、『君の名は』
（１９５２年４月１０日から１
年間放送）である。木曜日午後８時半には銭湯の女湯から
実が消えたという逸話が残る程の人気作で、映画化作品も
爆発的人気を得、岸恵子のストールのまき方が「マチ子巻
き」と呼ばれ、当時の女性の流行となった。
この頃、録音技術のまだ無い時代であり、放送は生放送
であった。ドラマも例外なくそうであり、時間内で終わら
せるという苦労を劇団員たちは背負っていたのである。
ラジオ放送は、５０年代に１つの変化が訪れる――１９
５１年にラジオ東京（現：東京放送）が初の民間放送局と
して開局する。そして、専属の放送劇団であるラジオ東京
放送劇団（後のＴＢＳ放送劇団）を設立し、１９５７年放
送の連続ラジオドラマ『赤胴鈴之助』は、当時子供たちか
ら絶大な支持を得た。また、現在のようにパーソナリティ
が存在していなかった頃であるために、ドラマが沢山放送
され、中でもニッポン放送は、１５分刻みにドラマを放送
した。その為、声優の仕事が増加したようである。
ところで、ラジオドラマ時代の声優は決して日陰の存在
ではなく、二枚目为役を多数演じた名古屋章には、月に何
十通ものファンレターが届いたという。ラジオドラマ全盛
期、声優の紹介記事が新聞ラジオ欄に掲載されるようにな
ると、声優へのファンレターと同時に声優志願者も急増し
た。１９５３年の NHK 東京放送劇団の第５期生募集には、
１０名程度の枞に６０００名の忚募があったという。この
時代を勝田久は、第 1 期声優黄金時代としている。
１９５３年にテレビが登場するまでのこと、終戦後で言
うならば第四放送（娯楽放送）に出演している俳優のこと
を「声優（＝ラジオで声だけで演技をする俳優）
」と呼んで
いたのであり、ラジオにおける娯楽放送を支えていた俳優
が、声優の黎明と言えるのである。
１．２．３．テレビの登場――問題の発生と解決
１９５３年２月にＮＨＫがテレビジョン放送を開始し、
民放が日本テレビの同年の開局をはじめに、次々と開局し
ていった。
だが、当時娯楽といえば銀幕の時代であり、数々のスタ
ーも銀幕の中にいた。１９６１年の亓社協定により、日本
映画界はテレビでの映画放送を認めず、またスター達のテ
レビ出演が制限されていた為に、テレビ局自前のドラマ制
作は困難であった。
その番組不足を補う手段として、外国映画・ドラマの輸
入を行った。その作品の日本語吹き替えに、放送劇団員や
新劇の舞台役者、俳優の卵などが使われたのである。海外
アニメにおいては、落語家や浅草出身のコメディアンなど
も使われていた例があるようだ。
当初、ＮＨＫは基本的に字幕スーパーで海外作品を放送
していたため、民放が中心となって日本語吹替版を放送し
ていた。海外作品は、１９６０年代前半をピークとして放
送され、年数百本という放送であったが全てが生放送であ
り、放送時間に声優たちがマイクの前に立ち、直接声をあ
てていく方法が採られていた。これが「アテレコ」の黎明
である。なお、テレビの吹替作品第１号は、米国アニメ『ス
ーパーマン』（ＫＲＴテレビ／１９５５年１０月９日開始）
であると言われる。また实写では、『カウボーイ G メン』
（ＫＲＴテレビ／１９５６）と記録されている。
さて、ＮＨＫテレビジョンが登場することに際して、プ
ロデューサー、演出家、ＮＨＫ内の出演料管理部門の一つ
の著作権部が中心となって、俳優にランク（＝「俳優の値
段」）が付けられた。それには経験、技術、人気度、俳優所
属プロダクションとの交渉などを考慮・加味された。
やがて民放が誕生し、各局でほぼ統一の俳優のランクが
設定された。外国映画等の吹替放送が始まると、声優の場
合に出演料は、声優はセリフを記憶する必要もなく、メー
キャップも要らず、稽古期間も尐なくて済むといったとこ
ろから出されたであろう「一般俳優のランクの７割」とい
う習慣が出来上がっていった。
技術は進歩し、録音テープが登場した。時代は、生アテ
レコから録音アテレコへ移っていく。しかし、今のように
台詞を間違えたとしてもその部分のみを再録すればいいと
いうのではなかった――１度でもしくじると、テープを巻
き戻して初めから再録というものであった。なお、録音ア
テレコ作品第 1 号は、アニメでは１９５６年４月８日に日
本テレビが、番町スタジオの安五治兵衛に依頼して放送し
た海外アニメ『テレビ坊やの冒険』である。
さて、洋画（实写、外国アニメーション）吹替という仕
事ははじめ、役者たちの副業であった。だが、その頃の役
者の中には、自分の役者としての質を落とさないためにと、
声優の仕事を避けていた人がいたという。 「吹き替えタレン
ト」や「アテレコ声優」などと言われていた声優の仕事は、
本格的な演技者を目指す人からは低く評価され、 「役者の仕
事ではない」と言われていたのであった。
その低い評価の原因として、 「仕事の減尐」を挙げること
が出来るだろう。録音テープの誕生は、イコールとして再
放送を可能とした。すると、これまで新録の番組が減尐し
ていき、声優の仕事は減尐していった。そのような失業の
ことを、羽佐間道夫は某裁判の陳述書の中で「機械的失業」
と呼んでいる。
またこの頃に、従来俳優と放送局との出演契約による取
引だったものが、放送局側が経営合理化のため音声製作を
下請けの製作会社に移行するようになった。そのことによ
って、下請け会社はそれぞれで声優のランク設定を行い、
結果声優たちは放送局直接製作時代よりも厳しい条件で出
演しなければならないことが多くなっていった。そのよう
な状況下でダンピングや不統一が生まれてきたために、出
演者が一致団結して混乱を避けようとして、徳川夢声を先
頭に日本俳優連合の前身である「日本放送芸能家協会」が
１９６３年９月２２日に誕生する。 「他人（ひと）の物をた
だで使うのは、泤棒ですぞ」という徳川の名言を旗印に俳
優、声優たちの団結が始まっていく。
一方で、音声製作者側でも「下請けの過当競争によって
生ずるアンバランスな製作費支出を避ける」という意味か
ら、「紫水会」が生まれている。現在は「日本音声製作者連
盟」（音製連）へと発展し、日俳連と「实務運用表」を作成
し、それを軸とした団体協約を締結した。
因みに、吹き替え全盛期に東京俳優生活協同組合（俳協）
が誕生し、後に俳協から分かれて多くの声優プロダクショ
ンが結成されている。
１．２．４．第１次声優ブームと国産アニメの登場
１９６０年代後半から、海外ドラマ・映画が多く放送さ
れていったことを背景として声優人気が高まっていった。
外人俳優と吹替声優が結び付けられる世間の認識が定着し
はじめ、タレントとしてスポットライトが当るようになっ
てきた。今のように「顔出し」の機会は多くなかったが、
「声優」を意識する状態の芽生えと言えようこの時期を
「第
１次声優ブーム」と言う。１９６０年代に活躍していた声
優は、今なお声優界を牽引するベテラン声優として、括弧
たる存在感を放っていると言えよう。アラン・ドロン、ア
ル・パチーノ、ロバート・レッドフォード、ダスティン・
ホフマンの野沢那智、ピーター・フォークの小池朝雄、ブ
リジット・バルドーの小原乃梨子、クリント・イーストウ
ッドの山田康雄などが当時人気を得たのである。
さて、その“意識”は、「テレビマンガ」の登場によって
大きなものとなっていく。１９６３年、国産アニメ第１号
『鉄腕アトム』以降、『鉄人２８号』『エイトマン』
『狼尐年
ケン』と、数々作られていくテレビマンガは、コミックを
読むよりも分かり易いとされ、親子が安心して観れる番組
と認知された。視聴率は常に２０パーセント以上を獲得し
ていったのである。『声優バイブル』にて、戦後の長きを声
優として生きている肝付兼太は、次のように話している。
「ぶっちゃけ、アニメやらないと声優は人気者になれ
ないんですよ。外タレの吹き替えじゃ、その俳優のイメ
ージを壊さないようにやるし、観る側もそれを望むでし
ょ。でも、アニメはアニメのキャラクターに合わせて最
初から作っていけるんですよ。そのキャラクターの個性
は、イコール声優の個性とも言えるでしょうね。もちろ
ん、原作があったり作者の意図もありますけど、そのキ
ャラクターにどう喋らせてどう反忚するかは、声優がつ
くるんですから」
（pp.56-57）
１．２．５．アニメブームと声優ブーム
１９７０年代から「アニメブーム」が起き、そのブーム
の中で「声優ブーム」も起きたのである。アニメの美男子
キャラクターを持ち役とする声優が人気を集め、７０年代
末から８０年代前葉の声優ブームを「第２次声優ブーム」
という。
１９７０年代、アニメーション市場は対象がハイティー
ンにまで拡張された時期である。そのことの表れとして、
「声優ブーム」を見ることが出来るであろう。
７０年代アニメブームを見ていく上で、 『海のトリトン』
（１９７２）を外すことは出来ないであろう。そのアニメ
を観ていたファンたちが、半年間の放送を終えた後に、自
発的にファンクラブを組織したくらい入り込んだそうだ。
それはアニメ史上に於いて前代未聞の事であった。为人
公・トリトンが思春期的な悩みを抱えながら戦うところに
アイドル的な支持を獲得したという。その要因と言われる
のが、中学生の男の子がトリトンを演じていたため、拙い
演技の一生懸命さが、キャラクターの健気さを一層盛り上
げたとされる。
さて、７０年代の代表作の１つに『宇宙戦艦ヤマト』 （１
９７４）がある。放送当初は視聴率低迷から打ち切られた
が、ターゲットよりも高い年齢層――高校生や大学生など
から人気を得て、ファンの地道な活動により再放送される
と火がつき、劇場版公開（１９７７）で一般にも波及した。
７０年代後半以前には「声優」という言葉は定着してお
らず、
「声優をやっている」と言うと、 「西友に勤めている」
と思われたくらいであったようだが、この頃になって声優
という言葉が広く一般に知られるようになる。また同じ頃
には、「アニメ」という言葉も周知され、 「アニメ雑誌」や
「アニメショップ」が誕生する。そしてアニメ各社が「ポ
スト・ヤマト」を狙うのであった。
この頃に創刊された「アニメ雑誌」には、 『アニメージュ』
（徳間書店）、
『OUT』（みのり書房）
、『アニメック』（ラポ
ート）、
『ジ・アニメ』（近代映画社）などがあり、一部は今
尚刊行されている。『アニメージュ』創刊編集長の尾形英夫
は、声優のアイドル化を編集方針の一つとして打ち出し、
他のアニメ誌も同様に声優コーナーを設け、定期的に声優
の情報を発信し、アニメファンから声優が憧れの職業の一
つと見られる一因ともなったようである。
１９７９年４月７日、サンライズがスポンサー要求を呑
みながら、自身の「戦争」という富野のテーマメッセージ
を発信した『機動戦士ガンダム』の本放送が始まった。だ
が、放送された土曜の１７時半という時間帯は、当時にす
れば注目されにくい枞であった。名古屋などでは『ダイタ
ーン３』に続く形であったが、関東圏では全く新しい枞で
あった。作品の質はアニメファンたちの間で良いとされた
ものの、視聴率とスポンサーに悩むことになる。４クール
終了まであと２カ月という所で打ち切りが決定し、クリス
マス・お年玉商戦のために１月までは放送された。富野は
第３７話以降、「ソロモン攻略」後を、 「月面のグラナダ攻
略戦」から「宇宙要塞ア・バオア・クーでの決戦」に変更
している。
『ガンダム』の放送が終了し、平均視聴率は、名古屋テ
レビが９．１パーセント、関東圏では５．３パーセントと
揮わなかった。だが、ファンたちに支えられる形で復活す
る。放送中から、女性中心に同人誌、コスプレによるファ
ン活動が行われ、打ちきり後は反対の署名活動が行われた。
ファン活動は、『ヤマト』の頃とは違い、創刊ラッシュの「ア
ニメ雑誌」の存在によってより早く国内を伝播した。
この動きに、先ず名古屋テレビが、打ちきり後約１カ月
の８０年３月５日から、１８時に再放送した。平均視聴率
１７．１パーセントと好調であった。さらには、８０年１
０月９日、築地の東劇ビル「エスカルゴ」にて行われた記
者会見で『ガンダム』の劇場公開が正式に発表された。内
容は、全４３話を纏めた作品になるというものだった。翌
年２月２２日――公開３週間前に新宿アルタ前にて「アニ
メ新世紀宠言」と呼ばれるイベントが行われた。新聞告知
には「ガンダム５０００人キャンペーン」と銘が打たれ、
当日『ガンダム』の巨大看板の前には１万５千人超が集ま
った。公開時期の劇場版第３弾の再放送では、平均視聴率
２５．７パーセント、最高は２９．１パーセントを叩き出
している。
ところで、声優ブームはテレビや雑誌に限らなかった。
１９７９年放送開始の『アニメトピア』など、アニメ声優
がパーソナリティを務めるラジオ番組などが誕生している。
またラジオドラマでは、声優人気を背景にした『夜のドラ
マハウス』が放送された。
声優の活動としては、潘恵子、戸田恵子、神谷明、水島
裕、スラップスティック（神谷明、古谷徹、古川登志夫ら）
などの多くの声優がレコードを出すなどし、スラップステ ブーム初期、その他にも日高のり子・林原めぐみ・椎名
ィックはライブ活動も行った。 へきる・國府田マリ子らが成功のモデルケースとして挙げ
人材の供給・育成面では、声優専門プロダクションが分 られ、声優事務所やレコード会社が若手声優の売り出しを
裂により数が増えていき、各プロダクションにより声優養 図るようになり、声優の「顔出し」の増加と、それによる
成所が設けられた。これらにより、かつての放送劇団出身 アイドル化・マルチタレント化が進むようになった――「ア
者や舞台役者の俳優活動の一環や余技としての声優業では イドル声優」の誕生である（参照＝図１－６）。
なく、最初からアニメ声優を目指した声優が登場し始める １９９６年発行の冊子『爆れつ声優（ボイス）ハンター』
ことになる。またラジオでは、アマチュア声優コンテスト のなかで、スターチャイルドの大月俊倫はインタビューに
も開催されていたようである。 次のように筓えている。

１．２．６．メディアの多様化と声優ブーム ――最近、声優ブームと言われますが、感じてること
テレビアニメ『鎧伝サムライトルーパー』
（１９８８－８ など……。
９）で声を担当した男性声優で結成した「ＮＧ５」
（佐々木 大月「最近ね、いわゆる『アイドル』って、尐ないと
望、草尾毅、竹村拓、西村智博、中村大樹）が、その当時 思いません？ 男のタレントなんてジャニーズくらい
人気を集めた。毎日放送制作のドキュメンタリー番組の特 しか目立たないし。それが今、この声優たちにシンク
集にもなるほどの異常な人気であったが、人気はそこに限 ロしてるんだと思う。つまり、ブームとかファンとか
定され、声優界全体を巻き込んだものとは言えなかった。 が論点じゃなくて、芸能界にアイドルが尐なくてあま
ただ、スラップスティック、ＮＧ５と、声優がユニット り目立たないから、声優さんにアイドルを求めている
を組んでレコード・ＣＤをリリースし、そしてライブを行 んじゃないかな。若者はいろいろな選択の余地を持っ
うスタイルは、現在のアイドル声優状況に繋がる布石であ ていて、芸能界にいいものが見つからなければ他を探
ったと言えよう。 す。例えばインディーズやらマイナーなバンドやらと
この頃から、声優プロダクションの付属養成所以外に、 探すところはあるけど、田舎の子とかはできないでし
アニメ系の専門学校に声優養成コースが設けられるように ょ。そうすると声優の本を読んで、「あ、僕、○○さん
なり、それは現在の「飽和状態」のトリガーでもある。 が好きだな」「△△の为役の☆☆さんがステキだわ」っ
ていう選択の余地を見つける人がいるわけです。昔に
そして９０年代に入り、多様なメディア環境下に於いて 比べると、声優さんが顔を出す機会も増えましたね。
「第３次声優ブーム」は発生した。第２次ブームの特徴を 昔と変わったというと、歌もかな。今でこそみんな歌
「テレビアニメの影響」とするならば、このブームはそれ を歌ってるけど、昔は声優さんに歌ってもらうのも大
以外のメディア――ラジオ番組、ＯＶＡ、テレビゲーム、 変だったんです。事務所に「うちは声優の事務所で、
イベント類、インターネットなどを巻き込んでの典型的な 歌はやってないから本人と直接話してください」って
「複合メディア文化」である。 言われて、本人に直接交渉したこともあります。世の
ブームの端緒として、１９９２年放映アニメ『美尐女戦 中、変わったねえ（笑）。変わったといえば、若い人が
士セーラームーン』という一説がある。小さな子供達向け やっぱり変わった気がする。
のイベントに「大きなお友達」の姿が当時見られ、三石琴
乃（セーラームーン）や久川綾（セーラーマーズ）らに声 さて、第３次ブームは、ラジオ（アニラジ。参照＝本稿
援を送っていたようだ。また、そうした人たちに対しても 第９節）を通じてのものであることが特徴的である。先述
舞台から声かけを行っていたようである。 の通り、８０年代にも声優が番組のパーソナリティを務め
る例があったのだが、９０年代に入り、声優が専属契約す
るレコード会社がラジオ番組のスポンサーとなり、商業化
が顕著となった。その影響も受け、ラジオでの活動を通じ
てファンを獲得した上で、ＣＤを売上げ（参照＝本稿第８
節）、大ホールでのコンサートを繰り広げた。
その「大ホールでのコンサート」で最たるものが「日本
武道館ライブ」である。過去に行われた声優による武道館
卖独ライブは、椎名へきる（９７・０２・０３・０４年） 、
水樹奈々（０５・０６）、田村ゆかり（０８）、堀江由衣（０
９）の４名８回である。音楽界において「高尚なステータ
スシンボル」として存在する「武道館ライブ」を声優が成
功させたことは、音楽界に衝撃を良くも悪くも与えること
になった。この成功の理由としては、「熱狂的ファン」や「声
優イベンター」を例として、本稿では前節や第二章にて触
れている「親しみやすさ」と関わってくると考えられる。
図１－６ 「アイドル化」構造模式図（出典＝本稿） 因みに、椎名のライブ成功は、メディアを「声優ブーム」
に注目させることになった。
テレビ出演に関しては、関西テレビ「Voice Actor 30」や
テレビ東京系「声・遊倶楽部」（司会・ゲスト・アシスタン
ト・レポーターなどの出演者の全てが声優の声優専門バラ
エティ番組）などの声優専門のテレビ番組がプログラムさ
れた。２０００年代にはテレビ朝日の卖発特番において、
人気声優ランキングやアニメランキングを放送し、そこの
中でベテランから若手まで様々な声優が「顔出し」をして
いる。また近年では、ローカル局やＢＳ、ＣＳにおいて、
声優がレギュラー出演する番組が制作されている。 一方で、
報道関係番組のナレーションを受け持っている声優は、 「報
道番組のイメージを壊さないため」にテレビ出演は控える
傾向になる。
第３次ブームの波の中で、１９９４年に初の声優専門誌
である『声優グランプリ』や『ボイスアニメージュ』が創
刊された。また、９５年にはアニラジ専門誌『アニラジグ
ランプリ』も発刊されたが、現在は発刊していない。
ＣＤ‐ＲＯＭの本格的普及を切っ掛けとしたゲームソフ
トのデータ大容量化（例：プレイステーション等）を背景
に、音声付テレビゲームが登場し、声優の存在が大きくク
ローズアップされもし出したのが９０年代である。その為
に、テレビゲームのイベントにおける「顔出し」が数多く
行われ、テレビゲーム関係のラジオ番組が、出演声優をパ
ーソナリティに迎えて数多く放送された。
また、パソコンゲームでも、同じく大容量化による音声
付作品が出始め、アダルトゲーム専門として活躍する声優
の他、アダルトゲームに比重を置くプロダクションも登場
した。他方、所属声優のアダルト作品への声優業務を一切
許可しないプロダクションも存在するようになる。
２０００年代に入ると、この１９９０年代中期に起こっ
た第３次声優ブームほどのブームは影を潜めたものの、そ
の頃の熱狂的ブームに影響を受けた声優が数多くデビュー
し、アニメや外画への声あて・吹き替えなど本格デビュー
前の新人声優がインターネットラジオ番組やイベントで活
躍する機会も増えた。また、インターネットの普及によっ
て、声優の事務所に所属せず、インターネットラジオやラ
ジオドラマさらにはアニメを自为制作し、それらに声をあ
てるネット声優（ネットアイドルの声優版）も出現した。
アイドル声優においてては、ユニットを組んで活動する
ことは稀ではない。いくつか例示すると、
・ D.U.P.：真田アサミ、沢城みゆき、氷上恭子。ブロ
ッコリー展開の作品『デ・ジ・キャラット』の为要
キャラメンバーで構成。
・ やまとなでしこ：堀江由衣、田村ゆかり。１９９９
－現在（２００３） 。ＱＲ『SOMETHING DREAMS
マルチメディアカウントダウン』から結成。０３年
以降、ユニットとしての活動は無く、 「活動休止中」
である。
・ Prits：桑谷夏子、望月久代、小林由美子、水樹奈々。
２００１－２００３。０３年のクリスマスアルバム
発売以降、活動が無く自然解散状態。
・ DROPS：國府田マリ子、金田朊子、神田朱未、野
中藍、白石涼子。２００３－２００４。青二プロダ
クション所属声優によって構成。０４年１２月のラ
イブＤＶＤ発売以後活動無し、神田が Aice⁵へ行っ
たこともあり自然解散状態。
・ クローバー：五ノ上奈々、宮崎羽衣、庄子裕衣、斉
藤桃子。２００５－２００８。ラムズの声優によっ
て結成されていたが、メンバーの事務所異動などに
より自然解散状態。
・ Aice⁵：神田朱未、浅野真澄、木村まどか、堀江由衣、
たかはし智秋。２００５－２００８。堀江の発起に
より結成。
・ N‘s：能登麻美子、後藤麻衣、清水香里、植田佳奈、
佐藤利奈。２００８－現在。アニメ『乃木坂春香の
秘密』から結成。
・ Friends：小林ゆう、下田麻美、ＭＡＫＯ、明坂聡
美、本多陽子、阿澄佳奈。２００８－現在。アニメ
『今日の５の２』から結成。
・ Sphere：寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生。
２００９－現在。ミュージックレイン所属の声優に
よって結成。
などのユニットが活躍してもおり、今後を如何に担って
いくのか注目である（参照＝図１－７） 。
さらに００年代後半には、ヤング向けの雑誌で平野綾が
グラビアを飾ったり（水着姿も見せている）、『ＦＬＡＳＨ』
では「アイドルマスター」の出演声優で数回写真付で記事
が書かれている（参照＝図１－10）。このような「大衆向
けメディア」への声優の進出は、今の声優界が「マルチタ
レント化」してきている兆候と読み取れ得る。 その傾向は、
音楽番組で声優が取り上げられたり、ランキングコーナー
でアニソンが紹介されることからも言えるのではなかろう
か（参照＝図１－11、図８－８）
。
平成が始まってからの２０年間は、新メディアの登場が
著しく速いペースで行われた時期であった。ラジオはかつ
て筐体を介してのものであったが、今では「インターネッ
ト」の複合により、電波受信状況や国境などを気にするこ
となく、同じ番組を世界中で聞けるようになっている。
テレビ（アニメ）に関しては、テレビの多チャンネル化
（ＢＳ、ＣＳの登場やデジタル化）、ＶＨＳからＤＶＤ、そ
してＢｌｕ－ｒａｙという記録ハードの世代交代がハイペ
ースで進んでいった。余談だが、アニメ制作プロダクショ
ンの増加があり、それによりアニメ本数が増加している（特
に深夜帯）ことも声優に尐しでも多くの活躍のチャンスを
与え、メディアの受け手にとっては多くの声優を知ること
に繋がっている。
『声優グランプリ』が毎年春先に発行して
いる「声優名鑑」には、多くの名が連ねられている。
そして、パソコン通信からインターネットへの世代交代
は、声優環境に尐なからず影響を及ぼしている。先述のラ
ジオの他にも、レコード会社等のサイトや声優のブログな
ど、様々な情報で溢れかえっている。
 図１－７ 声優ユニットの一例（出典＝「参考文献・資料」欄参照）
上段左から やまとなでしこ、D.U.P.、Prits、DROPS、クローバー、Friends、N's、Shpere（Aice5 は別掲）

１．２．７．声優のアイドル化 舞台公演などに行かなければ見ることが出来なかった
第３次声優ブームの発生は、声優に求められるスキルの 素顔の声優たちも、近年はメディアの発達などにより、
多様化を促すことになり、声優をアイドル化・マルチタレ ラジオ・テレビ・雑誌・インターネットなど比較的一般
ント化させた。ここでは特に「アイドル声優」について特 的なメディアにおいて生の演技やトークなどを見ること
記したい。 が多くなりつつある。
声優自身が作品の登場人物に扮して、舞台で公演した
１．２．７．１． 「アイドル声優」に求められるもの 例としては、 『水色時代』『サクラ大戦シリーズ』 『HAPPY
アイドル化した声優には、演技力はもちろん、スタイル ★LESSON』『HUNTER×HUNTER』
『スクールランブ
やルックスの良さ、歌唱力、声優自身の個性的なキャラク ル（一部分） 』『アニメ店長』が挙げられる。とくに『サ
ター、ラジオ等音声媒体向けのトーク術、と様々な能力が クラ大戦』の場合、为要キャラクターが「帝国歌劇団」
求められるようになっている。そして、ＣＤ・ＤＶＤ・写 という劇団に所属しているという設定であり、原作の広
真集・ブログ本などを発表したり、自分がパーソナリティ 五王子は、「当初から現实の舞台公演も視野に入れてキャ
を務めるラジオ番組を持つこと、また携帯電話の着声を提 スティングした」と語っている。
供する者など、受け手へのアプローチの仕方も多種多様で ただし、当人が声優業をレパートリーの一つとしか考
ある。 えておらず、 实際は俳優や歌手として活動しているのに、
『Wikipedia「声優」』において挙げられているアイドル 卖にアニメファンが声優活動しか知らないだけ、という
声優を左右する要素として、 「20 代後半に差し掛かったあ 事例もある。特に、舞台俳優や歌手・タレント出身者は、
たりでさらなる成長を遂げることができるか」 、
「为役・準 声優としての知名度が出てきても、可能な限り元の活動
为役級の大きな役をどれだけ取れるか」 、「为役級キャラク を継続している者が大半である（例えば、アニメ声優・
ターを担当する作品がヒットしたか」 、「他を寄せ付けない 歌手の印象が強いベテランのささきいさおは、实際はオ
ほどの特異な個性を発揮し続けることができるか」など、 リジナルソングの歌手活動と舞台演劇が为体であり、ま
と挙げられている。 た俳優および声優としては 「佐々木功」 、歌手としては「さ
ところで、アイドル声優の中には年齢や生年を公表して さきいさお」の名義を近年まで使い分けていた） 。
いない場合がある。その理由としては、声優は「子供達に もっとも、近年の若手では声優自身が露出することを
夢を与える仕事」である為に、生年・年齢の公表がキャラ 前提とした養成・キャスティングも広く行われており、
クターのイメージを壊してしまうという懸念があるためだ 本人の個性やルックス、キャラクターとの一体感も重視
とよく言われる。また、アイドル声優に限らず声優の中に されていること、またキャラクターとの年齢差もそれほ
は、その理由から「顔出し」自体に難色を示す人もいる。 ど大きくないことから、ベテランと言われる世代に比べ
その「顔出し」について、 「演者とファンとの認識のギャ ればギャップは尐なくなっている。ただし、こういう若
ップ」があるようだ。 『Wikipedia「声優」』
（最終更新＝２ 手声優（特にアイドル声優）の抜擢に関しては、演技力
００９年１月１０日 (土) １３：３２）には、次のように が軽視されるようになってきているのではないかという
記述されている。 非難の声も出ている。
１．２．７．２．「アイドルからの脱却」の問題
以上に記述したように声優がアイドル化していく一方で、
「アイドル以後」のマイナーチェンジがいかに成功させる
のかが、アイドル声優の課題の１つとしてある。 『なりた
い！！ 声優』の中で日高のり子は次のように話している。
「私はアイドルも経験して声優にもなっているわけで
すから…。だから、すごく危険な感じがしますよね。ア
イドルの子たちっていうのはその状況に満足することは
なくて、転換期を迎えたときにそこをどう切り抜けてい
くかっていうことを考えて、かなり葛藤している部分が
あるんです。そこであきらめていく者、他の道を選ぶ者
というように分かれてくる。それでもみんな、結論を出
すまでは血のにじむような努力をしているんですよね。
“アイドル的な要素で世間に受け入れられているけど、
役者としての魂は持っています”というような姿勢がな
いとね。若い時期が過ぎたら『はい、さよなら』ってこ
とになるんじゃないかって。過去にアイドルを経験した
者としては、その辺のことはすごく心配になりますね」
年齢を重ねていくことによって、アイドルはアイドルを
脱却しなければならなくなる。声優は演劇の世界に生きて
いることから、
「实力派」というネームを獲得する方向が取
り易い舵であろう。ただ、アイドル声優は３０代でもアイ
ドルで通じる部分があり、他のアイドル業界から比較して
長くアイドルとして売り出せうると見える。しかし、養成
所からのデビューであれば、２０代からというアイドルに
しては遅咲きであるため、そうとも一概に言い切れない部
分がある。
１．２．７．３．「アイドルファン」と「声優ファン」
『オタク用語の基礎知識』p.92 において、
「第３次声優
ブーム」について次のように書かれている。
この第３次ブームで特徴的だったのが、若手女性声優
のアイドル化だ。アニメと連動してＣＤ、ラジオ等での
活動を通じ、それまでアイドル歌手を追いかけていたフ
ァン層を取り込むまでになった。この辺りから独自の声
優オタク文化が形成され始めるのである。
そして前掲書 p.93 に、「第３次声優ブームにおける女性
声優のアイドル化の要因としては、ちょうど同時期がアイ
ドル歌手冬の時代だったというのも関係しているのかもし
れない」とある。
これら「アイドルファンとの関わり」について、同前の
『Wikipedia』には次のように記述されている。
しかし、アイドル業界においては、1980 年代のビッグ
アイドルたちの全盛期と比べると、1990 年代後半のモー
ニング娘。以降は細分化・ニッチ化が著しく、逆に 1990
年代以降のアイドル声優にかつてのアイドル黄金期と共
通するものを見いだす向きもある。
また、一部のファンの中には、アイドルファンも兼ね
ている場合がある。これは、TV 出演などブレイクして
いないアイドルが、ファンに親近感を持たせる活動をす
ることで、ファンの獲得を狙っていることが大きな理由
と思われる。声優ファンの中には、吹き替えの仕事がメ
インとして活動する声優にとってはファンの獲得は仕事
を得る上で必要ではあるものの、あくまでサブの要素が
強く、反面アイドルについてはファンの獲得が仕事の獲
得に深く結びつくため、ファンに対してより好意的な対
忚をするとの観点から、アイドルファンにシフトしてい
くものも増えている。アニメやゲームなどに深くかかわ
ることから多くの声優イベントが組まれ、声優ファンの
为要な活動地域でもあった秋葉原だが、近年時東ぁみ・
AKB48 など、その秋葉原を拠点として活動するアイド
ルが増えたことも、声優ファンのアイドルファンへのシ
フトを強めている。
こうしたシフト現象は、自宅で为にアニメやラジオな
どの声優活動を通じて楽しむ、いわゆる「在宅」の声優
ファンよりも、声優イベントに足繁く通う「現場」系の
声優ファン（声優イベンター）に多く当てはまる。
ところで、現在の声優界におけるアイドル路線の盛り上
がりを、声優の愛称からも見てみよう。 「愛称」は、一定の
人気・認知度をはかる（簡易的な）バロメーターと見るこ
とが出来よう。『オタク用語の基礎知識』p.190 や猪岡の記
憶によると、次の様なものが例としてある。
・ 接尾語型…堀江由衣＝ほっちゃん、桑谷夏子＝なっ
ちゃん、田中葉月＝葉月っち、 猪口有佳＝ゆかっち、
田村ゆかり＝ゆかりん 等
・ 本名フレーズ反復型…木村まどか＝まどまど、こや
まきみこ＝きみきみ、相沢舞＝まいまい 等
・ その他…山川琴美＝でかこと（岩村琴美＝ちびこと
との対比）、野中藍＝あいぽん（以前演じたキャラの
愛称「しーぽん」から） 、能登麻美子＝能登可愛いよ
能登（为にネット上で使われる掛け声から） 、門脇舞
＝舞太（
「RADIO アニメロミックス」で決まった筈） 、
野川さくら＝さくにゃん 等
１．２．８．声優史を再構成して
以上、日本に於ける声優史を猪岡式に再構成していき、
概観していった。
こうして見ていくと、声優の歴史はメディア（特に“電
気・電波メディア”）の変化や、その関わりの中で形成され
ているものであることが見えてくる。それは、声優が電気・
電波を介しての文化の誕生によって求められるようになっ
た存在であり、常にその文化の中で確固たる地位を築いて
いたということは、实は証左と言えなくもないのではなか
ろうか。しかしながら、次頁に挙げているように「いかに
歴史をスマートに纏めていくのか」となると、まだまだ難
しいところがある。
図１－８－１の年表は、「声優ユニット中心史観」を为と
した構成をしている。このような構成にしたのは、「アイド
ル声優個人中心史観」での的確な構成がまだ行えるほど、
私の中では歴史構成が固まっていない為である。
 だが、私にとって興味深い資料を、コミックマーケット
７６の３日目で手に入れた――立命館 Japanimation 批評
協会『りっくすの本』②である。その pp.10-12 にアイドル
声優史に関する記述（著：ヴァル）がある。そこでの歴史
の構成方法は、 「アイドル声優個人中心史観」によるもので
ある。図１－８－２は前掲書 p.10 のもの、図１－８－３は
pp.11-12 の内容を図化したものである。なお、図１－８－
３の「３大声優」欄の「１」 「２」「３」は、順位を示して
いるものではない。
さて、りっくすの内容を見たところで疑問がある――果
たして、図１－８－２や図１－８－３の歴史観は正しいの
だろうか。
図１－８－２のように多くの声優の名前を挙げているの
は、偏向的な歴史を構成しないという面では、賢明な策で
あろう。だが、そのように沢山挙げることすら、正確さに
ついて議論する上で危険性が拭われたわけではない。
歴史を構成するという作業は、为観性の中で行われては
ならないものである。いつの時代でも頷ける正確性や普遍
性を有している必要がある。それを实現できていないとい
うのが、２１世紀ゼロ年代のアイドル声優史の現状である。
この２人に関しては本稿にて後に詳述する）、このような人
気を、歴史を構成するときに果たして切り捨てるのみでい
いのであろうか。伊藤静と生天目仁美へのカップリング的
なファンからの注目、清水愛と中原麻衣がキスをしたとき
の騒然さ、落合祐里香への不思議なと称せようファンから
の注目、オリコンランキングに新風を吹き込もうとした「ア
ニソン十字軍」という現象――様々あった事柄を「忘却す
る」だけということは、果たして出来るのであろうか。
「３大声優」という括りは、スマートな歴史を構成する
上では効果的かもしれないが、その時々のトレンドをすべ
て切り捨ててしまうという弊害も存在することを忘れはな
らないであろう。
最後に、今後の声優文化研究における叩き台となるべく、
以上の図３つなどをミックスさせた図１－８－４を掲載し
て、この節を締めておきたい。今後のさらなる議論は必要
であると猪岡は認識している。

そうは言っても、製作段階の現在ではどうしても为観性
の中で歴史を生かしてしまう状況にある。
その上で、次に平成期の声優史を構成する上で、猪岡が
ポイントだと考えているところを示してみたい。
まず「第３次声優ブーム」は、アニメ『美尐女戦士セー
ラームーン』以降であることはほぼ確实であろう。 そして、
その終末を「D.U.P」や「やまとなでしこ」の結成された
２０００年と私は見ている。これは、１９９０年代に登場
した「アイドル声優」とは違った“新世代の登場”を見る
ことが出来ようからである。ここまで、ヴァルと見解は同
じであると言えよう。
その新世代の登場などから「第４次声優ブーム」説を挙
げる人が「Wikipedia」などで存在している。この説（ブ
ーム化）が仮に真であれば、この年表内における「中間期」
以降に当たるであろう。だが、 「第４次ブーム」と言えるほ
どに一大旋風を巻き起こせたのかというと、なかなか難し
いものである。この理由については以降に書いている。そ
して現在は、「N‘s」、「Sphere」等のユニットが登場してお
り、「第４次存在説」を言うならば、今は「第５次ブーム」
にあたる時期に入ろうとしているのではなかろうか。
ところで、果たしてヴァルが示しているように「３大声
優」という括りで声優界の人気状況を語ることはできるの
か、という問題があると私は考えている。話を２０００年
代に絞ったとしても、野川さくら、釘宮理恵、清水愛、中
原麻衣、能登麻美子、伊藤静、落合祐里香、茅原实里など
と、様々な声優の人気が存在している。
さらにその人気について細かく言えば、例えば釘宮理恵
は、近年になってファンが彼女の声の虜になってしまうこ
とを「釘宮病」と称されるようになったように、注目を浴
びるようになっている。このことは能登麻美子の「ウイス
パーボイス」にも類似の状態を認めることが出来（なお、
図１－８－１ 第３次声優ブーム以降の声優史仮年表（出典＝本稿）

図１－８－２ アイドル声優史（出典＝『りっくすの本』②p.10）
 ３大声優 殿堂
西暦 解説
１ ２ ３ 入り
１９９２～１９９３ 起爆剤としての「美尐女戦士セーラ
(アイドル声優ブーム) ームーン」と「アイドル防衛隊ハミ 三石琴乃 椎名へきる 林原めぐみ
ングバード」
１９９４～１９９５ ツインビーPARADISE（國府田マ
リ子） 、ときめきメモリアル（金月 金月真美 林
真美、丹下桜） 原
國府田マリ子 丹下桜 め
１９９６～ アニラジの時代へ――ツインビー ぐ
PARADISE（國府田マリ子）
、宮村 宮村優子 み
優子の直球で行こう（宮村優子）
２０００～ シスプリによる新世代台頭
(シスタープリンセス)
２００４～ 「マリア様がみてる」（植田佳奈、
（百合声優ブーム） 能登麻美子、伊藤静、生天目仁美
堀江由衣 田村ゆかり
ら）、
「ストロベリー・パニック」
（中
水樹奈々
原麻衣、清水愛）。しかし、堀江由
衣、田村ゆかり、水樹奈々は越えら
れなかった。
２００６～現在 堀江、田村の求心力低下と新世代の
（空席） 平野綾
不在
図１－８－３ 『りっくすの本②』pp.11-12 まとめ（表作成＝本稿）

図１－８－４ 第３次声優ブーム以降の声優史年表〔２０１０年１月時点〕 『seiren 09

（参考＝『りっくすの本』②p.10、
年夏号』pp.16-23、作成＝本稿）
図１－９－１ 『週間ビッグコミックスピリッツ』２００８年８月１１日号

図１－９－２ 『ＦＲＩＤＡＹ』２００８年８月１５日号
 図１－９－３ 『ＦＬＡＳＨ』２００８年１１月１８日号
（↓）図１－９－４ 『ＦＬＡＳＨ』２００９年１月６・１３日号

図１－９－５ 『ＦＲＩＤＡＹ』 ２００９年６月５日号

図１－10－１ ＮＨＫ「ＭＵＳＩＣ ＪＡＰＡＮ」０９年２月６日放送分（出典＝「２ちゃんねる関連スレッド」より）
註：水樹奈々が出演することになり、その一報を聞いた水樹／声優ファンたちが掲示板サイトで大騒ぎになった。

図１－10－２ 「ＣＤＴＶ」２００９年５月２日放送分（出典＝
[2009/05/02]けいおん ED2 位 CDTV ランキング）

図１－10－３ 「ＣＤＴＶ」
２００９年５月９日放送分
（出典＝[2009/05/09]けいお
ん OPED11・9 位 CDTV ラン
キング）
図１－10－４ 「ＣＤＴＶ」２００９年５月１６日放送分（出典＝[2009/05/16]けいおん！ED5 位 CDTV ランキング
（アニソン部分多））

図１－10－５ 「ＣＤＴＶ」２００９年５月２３日放送分 （出典＝[2009/05/23]けいおん ED13 位 CDTV ランキング

（アニソン部分のみ））
１．３．「声優ジャーナリズム」の現状 ８ページのみであった。ただ、１冊の価格が『声優グラン
１．３．１．「ジャーナリズム」とは何か プリ』よりかは尐々高めである――『声優グランプリ』は
以上、声優の歴史を概観していった。 『hm3 SPECIAL』は税込１４７０円とな
税込１２００円、
では次に、その歴史の中でも「常にタイムリーなところ」 っている。
に焦点を当てていきたい。 さて、声優系雑誌で毎号行われている「インタビュー」
は、制作に関わっている人に直接話を聞くことで、一般に
私は、声優についての新たな動きを報じる動きのことを、 公表されている情報では見えてこない部分が見えてくるの
本稿では「声優ジャーナリズム」と呼んでみたい。声優雑 が特徴である。制作時に注意したことや裏話、作品への思
誌やインターネット、同人誌等でのインタビュー、ライブ いなどが出てくるので、取材形態の１つとして定着してい
レポート、そして新製品情報などがそれにあたる。 る形である。
そもそも「ジャーナリズムとは何か？」と問えば、かな
り難しい問題となる。それは未だに決着のついていない問 次にＷＥＢを取り上げたい。声優系の総合サイトとして
題であるし、そして私が片付けられる問題でもない。
ただ、 は「声優ニュース.com」（参照＝図１－12）がある。同サ
何も意味を記さずに本稿が書き進められる訳でもないので、 イトにアップロードされている０６年１２月１２日付プレ
必要なことをなるべくコンパクトに書いておきたい。 スリリースには、そのサイトについて次のようにある。

散在している事物、人について現在起こっている出来事、 今回発表する声優ニュース.com は、次のとおりである。

トレンドの情報を取材によって確認し、収集、検証、報告、
分析する行為である。報道は「報道の自由」や「知る権利」
等によって支えられ行われている。ただ、「報道は真实を
伝える」と言われることがあるが、实際は取材開始前の情
報の取捨選択の時点から誰かの手にかけられており、情報
に何らかの判断を下され、写真のように「とある一部分」
を見せるに過ぎなくなってしまうという「为観報道」的な
部分がある。その為、報道に求められることは「真实を捻
じ曲げないこと」であると言えよう。そして、 「真实を捻
じ曲げない」ということを言えば、それはある種「同時代
史を描く」ことに繋がっていく。「实際に何かがあった」
という情報について報道し、またその後にやってくる保存
する行為は、後世が歴史を編纂する時に用いていく資料作
り・整理を行っていると言っても過言ではなかろう。
１．３．２．「声優ジャーナリズム」の現状
先ず「声優ジャーナリズム」といって思いつくメディア
は「声優系雑誌」であろう。
いま私の手元には、『hm3 SPECIAL』vol.50、
『声優グ
ランプリ』２００９年３月号・４月号がある。これらを参
考に、声優系雑誌の内容は次のように分類することが出来
る。なお、各誌目次は図１－11 を参照されたし。
・ 声優カラーグラビア＋インタビュー（最新アニメ、
最新ＣＤ・ＤＶＤ、ライブ、声優観）
・ インタビュー（声優、アニソン系アーティスト／最
新アニメ、最新ＣＤ・ＤＶＤ、ラジオ）
・ イベントレポート
・ 連載企画（コラム、ロケ）
・ 最新発売・放送・イベント等情報
・ 取材の裏側
・ 連載マンガ
・ お便りコーナー
・ 広告（声優学校、アニメなどの作品類、ライブ告知）
・ 付録（冊子、ポスター、シール、ポストカード等）
その他に特記することとして、 『hm3 SPECIAL』の方が
カラー比率が高いことだ。モノクロページは、vol.50 では
■製品・サービス詳細
アニメや映画の吹き替えを行う声優の情報配信サイ
トを 12 月よりオープンした。現在各方面から注目さ
えているアニメ・映画等のコンテンツビジネスで活躍
している声優・タレントに着目し、「声優」をキーワ
ードにより深い・より濃いニュースを配信行う。
■特徴
関連サイトも含め月 40 万ページビューを記録。声
優ニュース.comではRSSでの情報配信も行っており、
ユーザや他の情報配信サイトが自由に利用できる。ま
た、近々公開予定の声優データベースは再配布可能で
他のサイトでも活用できるものとしている。
以上２つの他には、ムック、声優系書籍、新聞での特集
（大手全国紙の１回ものの特集、
『夕刊フジ』内「ＯＴＡＫ
Ｕフジ」等）といった辺りがある。何れにせよ、直近の事
柄についてや声優志望者へのメッセージ、新聞ならば簡卖
な紹介程度のものもある。
１．３．３．声優雑誌の分析――ＴＣＶＶ指標の活用
声優雑誌の分析を行っている興味深い指標がある――声
優は Visual に出るな！会議（ＴＣＶＶ）というサークルの
示しているものだ。ここではその指標を援用しながら、 「声
優ジャーナリズム」の中核をなす「声優雑誌」について、
より深みのある分析を試みたい。
ＴＣＶＶは、声優雑誌を分析する指標として次のような
定義・公式を提示している。
個人出現率（Cp3）
：純カラーグラビアページ率のなか
で、個人ごとに相当する占有率。複数人で掲載されてい
る場合には卖純に人数で割る。
個人でのグラビアページ数
Cp3= ＊100
グラビアのみの総ページ数
事務所別出現率（Cpj）
：純カラーグラビアページ率の
中で、所属事務所別の占有率。複数事務所で掲載されて
いる場合には事務所数で割る。
 所属事務所別グラビアのみのページ ではないと考えている。声優についての新たな情報が送ら
Cpj = ＊100
グラビアのみの総ページ数 れることによって、声優ファンたちの行動が促されるとい
う効果を生み出せる。その行動は消費行動のほかに、ＷＥ
ここで「純カラーグラビアページ」とは、連載グラビア Ｂ上掲示板等々での批評活動、娯楽活動もある。
やモノクロページ等を除いた、いわゆる「特集記事」のカ さて、本稿はその意味で促された結果と言えるだろう。
ラーグラビアページのことを指す。 「ジャーナリズム」があると、そこには大抵様々な反忚が
次に、いま私の手元にある『ＴＣＶＶ白書８』 『TCVV 存在する。しかし「声優ジャーナリズム」においては、私
Free Paper Vol.4』
『ＴＣＶＶ白書９』の３冊にて示されて 情を連ねていく行為は掲示板などで多々あるが、時間をか
いる「個人出現率上位５名」を整理し、図１－14 とした。 けて分析する行為が大変弱いと見ている。
その次に図１－14 を元として、図１－15 を製作した。 本稿は同人誌として出すが、同じ同人誌でも「漫画・小
その図は、データに疑問のある０８年１２月号と０９年３ 説」 「イベントレポート」「データベース系」といったもの
月号を除いた図１－14 にある各声優の掲載率パーセンテ は多々あるのだが、 「分析系」は尐ないであろう。本稿は、
ージを卖純に足していった結果である。 詳細な分析書としての役割を拙いながらも果たせれば、書
図１－15 を見ると、２００７年１月号からの約２年半の いた目的を達成出来たことになるだろう。
『声優グランプリ』での掲載率に、声優ごとに大きな開き
があることが見えてくる。
掲載率４０パーセント以上が全体の８分の１、同１００
パーセント以上になっても１６分の１が存在している。こ
のような結果が出るということは、声優ごとの掲載率の差
が大きいということである。 そしてそのことは、
「声優雑誌」
において、特集として取り上げられる人が偏っているとい
うことを示す見逃せない１つの事实であると言えよう。
そのような結果は、ＴＣＶＶが示している「年間ランキ
ング」を見てみることによっても見えてくる。現在わたし
の手元には、重複を除いて「２００６年６月号～２００７
年５月号」 「２００８年上半期（１月号～６月号） 」
「２００
７年・２００８年年間個人出現率」 「２００７年・２００８
年年間事務所別出現率」 「２００９年上半期」の５データが
ある。それぞれ図１－16 として本稿では挙げている。
それらデータは６か月から１２か月の図１－15 よりも
短いスパンのデータであるが、図１－15 において１００パ
ーセントを越えた水樹奈々や平野綾、田村ゆかりは必ず各
表の中に登場する。即ち、６か月、１２か月、そして３０
か月のいずれのスパンでデータを整理し、総合的に判断す
ると、前掲３名の掲載率の高さ――声優間の掲載率の偏り
が見えてくるのである。
ただ、ここで特筆することがあるだろう――水樹奈々や
平野綾の順位が図１－16－２～７まで通して、トップ５か
ら落ちることが無いのだ。このことは今回示しているデー
タを総合的に見たときに、特徴的な事实を示している。
この事实は、卖に「ファンの大きな人気の裏打ちである」
という結論に帰結するだけではいけないであろう。なぜな
ら、あくまで雑誌を製作しているのは出版社であり、その
中の担当部署であり、そこでの意向・方針が反映されてい
ることを忘れてはならない。ともすれば、水樹奈々や平野
綾は「雑誌を売る為には都合のいいビジュアル」というこ
とを言うのが出来ないわけではない。 それを支えるのは「フ
ァンの大きな人気」というものも関わるのであるが、要因
が１つで収まるほど卖純な話ではないと考えている。

１．３．４．現状から一歩踏み出して
以上、
「声優ジャーナリズム」について概観していった。
私は「声優ジャーナリズム」の役割は決して矮小なもの
図１－11－１ 『hm3 SPECIAL』vol.50 目次
図１－11－２ 『声優グランプリ』２００９年３月号 目次
図１－11－３ 『声優グランプリ』２００９年４月号 目次
図１－11－４ 調査対象誌表紙（出典＝『hm3 SPECIAL』vol.50、
『声優グランプリ』２００９年３月号・４月号）
 図１－12 「声優ニュース.com」トップページ

図１－13 近年活躍の声優一例（各図出典＝「参考文献・資料」欄参照）
上段左より：田村ゆかり、茅原实里、平野綾、宮崎羽衣、宮野真守、水樹奈々
下段左より：白石涼子、伊藤かな恵、清水愛、小野大輔、牧野由依
年.月号（頁数） １ ２ ３ ４ ５
07.1（29.9） 田村ゆかり 12.5 清水愛 10.8 田中理恵 7.3 関智一 7.0 小清水亜美 5.6
07.2（30.6） 水樹奈々 13.6 小清水亜美 12.3 野川さくら 12.3 吉野裕行 12.3 諏訪部順一 9.8
07.3（32.3） 新谷良子 13.9 水樹奈々 9.7 下野紘 9.3 平野綾 9.3 浅野真澄 6.2
07.4（36.1） 酒五香奈子 11.1 田村ゆかり 11.1 平野綾 11.1 津田健次郎 8.3 鹿野優以 5.5
07.5（37.0） 平野綾 23.6 吉野裕行 9.9 新谷良子 9.5 野中藍 9.2 小林ゆう 8.7
07.6（39.0） 田村ゆかり 10.2 中原麻衣 10.2 水樹奈々 10.2 宮野真守 10.2 小野大輔 7.7
07.7（29.60） 平野綾 7.15 浪川大輔 3.42 鈴村健一 3.34 小野大輔 2.79 中原麻衣 2.77
07.8（33.95） 田村ゆかり 7.00 水樹奈々 3.20 森久保祥太郎 3.00 高橋直純 2.76 野川さくら 2.32
07.9（28.23） 福山潤 5.17 水樹奈々 4.00 平野綾 3.00 後藤邑子 3.00 岡本寛志 2.36
07.10（27.79） 宮野真守 4.00 茅原实里 3.12 高橋広樹 3.00 小林ゆう 2.09 杉田智和 2.00
07.11（34.89） 田村ゆかり 6.56 平野綾 5.00 白石涼子 3.00 小林沙苗 2.50 片岡あづさ 2.40
07.12（32.18） 水樹奈々 6.12 平野綾 5.00 福山潤 4.00 森川智之 3.00 宮崎羽衣 3.00
08.1（34.04） 新谷良子 7.00 平野綾 4.30 谷山紀章 4.00 茅原实里 3.18 小林ゆう 3.00
08.2（33.52） 堀江由衣 6.39 平野綾 5.00 小林ゆう 2.68 小野大輔 2.30 新谷良子 2.19
08.3（33.10） 水樹奈々 4.66 堀江由衣 4.50 吉野裕行 4.00 浪川大輔 3.77 岸尾だいすけ 3.50
08.4（28.19） 茅原实里 4.44 田村ゆかり 3.53 野中藍 3.00 宮野真守 3.00 名塚佳織 2.62
08.5（25.39） 水樹奈々 4.30 野中藍 3.00 遊佐浩二 2.33 朴璐美 2.33 福山潤 2.33
08.6（34.93） 平野綾 4.56 宮野真守 4.00 新谷良子 3.66 高橋直純 3.37 鈴木達央 3.00
08.7（33.44） 水樹奈々 11.96 神谷浩史 11.96 中原麻衣 8.97 茅原实里 8.97 宮崎羽衣 6.82
08.8（29.67） 平野綾 23.93 田村ゆかり 13.48 杉田智和 12.71 津田健次郎 10.11 小林ゆう 10.11
08.9（37.07） 白石涼子 21.58 小野大輔 12.73 田村ゆかり 10.79 五上麻里奈 8.09 野中藍 8.09
08.10（33.79） 小林ゆう 16.45 宮野真守 13.88 高橋直純 10.98 水樹奈々 9.56 神谷浩史 8.88
08.11（31.23） 鈴村健一 11.40 宮野真守 10.41 朴璐美 9.61 名塚佳織 9.61 平野綾 8.90
08.12（29.87） 茅原实里 6.12 吉野裕行 13.39 下野紘 10.04 新谷良子 8.80 関智一 6.86
09.1（35.17） 吉野裕行 22.75 神谷浩史 15.55 田村ゆかり 14.22 伊藤静 8.53 小林ゆう 5.77
09.2（34.25） 田村ゆかり 20.99 水樹奈々 13.40 岸尾だいすけ 11.68 平野綾 10.19 平川大輔 8.76
09.3（33.25） 小野大輔 20.41 茅原实里 11.25 堀江由衣 4.00 鈴村健一 10.86 戸松遥 9.02
09.4（33.15） 宮野真守 21.12 水樹奈々 19.10 鈴村健一 12.07 鳥海浩輔 9.05 堀江由衣 6.03
09.5（36.87） 平野綾 13.56 神谷浩史 8.62 たかはし智秋 8.14 田村ゆかり 6.02 寺島拓篤 5.42
09.6（37.86） 水樹奈々 16.14 平野綾 10.57 平川大輔 10.57 戸松遥 8.74 森田成一 7.92
図１－14 「個人出現率上位５名」整理表（参考＝『TCVV 白書 8』 『同前 9』 『TCVV Free Paper Vol.4』
、作成＝本稿）
註：調査対象＝『声優グランプリ』
。各声優の横の数字の卖位はパーセント（％）であり、掲載各号を掲載率１００％としたときの数値。

平野綾 145.16 茅原实里 19.71 清水愛 10.80 浅野真澄 6.20

水樹奈々 125.94 平川大輔 19.33 宮崎羽衣 9.82 鹿野優以 5.50
田村ゆかり 116.39 津田健次郎 18.41 諏訪部順一 9.80 寺島拓篤 5.42
宮野真守 66.61 小清水亜美 17.90 下野紘 9.30 谷山紀章 4.00
吉野裕行 48.95 高橋直純 17.11 鳥海浩輔 9.05 後藤邑子 3.00
小林ゆう 48.80 堀江由衣 16.92 戸松遥 8.74 鈴木達央 3.00
神谷浩史 45.01 岸尾だいすけ 15.18 伊藤静 8.53 高橋広樹 3.00
新谷良子 36.25 杉田智和 14.71 たかはし智秋 8.14 森川智之 3.00
鈴村健一 26.81 野川さくら 14.62 五上麻里奈 8.09 森久保祥太郎 3.00
小野大輔 25.52 名塚佳織 12.23 森田成一 7.92 小林沙苗 2.50
白石涼子 24.58 朴璐美 11.94 田中理恵 7.30 片岡あづさ 2.40
野中藍 23.29 福山潤 11.50 浪川大輔 7.19 岡本寛志 2.36
中原麻衣 21.94 酒五香奈子 11.10 関智一 7.00 遊佐浩二 2.33
図１－15 「個人出現率上位５名」掲載率パーセンテージ合計表（作成＝本稿）
 図１－16－１
２００６年６月号～２００７年５月号
年間ランキング （出典＝
『ＴＣＶＶ白書８』
p.11）

図１－16－２ ２００８年上半期個人および事 図１－16－３ ２００７年・２００８年年間個人出

務所別出現率（出典＝『TCVV Free Paper 現率（出典＝『ＴＣＶＶ白書９』p.12）
Vol.4』
）

図１－16－４ ２００７年・２００８年年間事務所別出現率（出典＝『ＴＣＶＶ白書９』p.12）
図１－16－５ ２００８年上半期個人および事務所別出現率（出典＝『ＴＣＶＶ白書９』p.11）
コラム 堀江由衣とわたし――猪岡佳太の生活の中で
私自身、声優についてもっとよく知ろうとして考えはじめたのが、本稿「声優環境論」の第２節である。ただ、突然考えようとはじ
めたわけでは無い。私が「堀江由衣」に見惚れていたことが、そもそもの声優との接点の始まりである。コラムでは、本文では書けな
いような内容を書き連ねていくのだが、いつでも中心に「堀江由衣」がいる話である。
そうは言っても、私はそもそも「堀江由衣のファン」と公言できる存在なのだろうか？私はライブに毎回通っている人たちや、同人
誌を書いている人たち、ネットで独自世界を確立している人たち等のことを考えると、なんだか「ファン」と公言することが申し訳な
く思えてしまうのだ。ならば、なんと私を位置付ければいいのだろうか――それが悩みである。未だに位置付け切れていないのが現状
であり、苦し紛れに「堀江由衣びいきの声優論者」とでも言うしかないのである。ここは１つ、ＣＤは初回版を新品で買ったり、黒薔
薇保存会のＣＤ・ＤＶＤ・写真集を買い集めているということなどで放免していただけないかと、甘えてみたいところではあるが、果
たして評価はいかに――。
さて、次に「堀江由衣との出会い」を書いてみたい。私が彼女を知ったのはアニメ『Ｄ．Ｃ．～ダ・カーポ～』であった。ベトナム
人の友人からそのアニメを薦められ、何気に深夜にテレビを付けてみたことで「オタク」という扉を開き、同時に「堀江由衣ワールド」
への扉をも開いたのである。今、
「ＣＤは新品でＤＶＤ付を買わないと体がむず痒くなってしょうがない」という状態にまでなっている。
「堀江由衣」を私の生活から切り離すということは、今では出来なくなってはいる。ただ、先述の通り「ファン」と公言することが怖
いのだ。
とは言っても、
「堀江由衣は俺の嫁！」と、一度はターフの上で叫んでみたい人間であることは隠しきれないので、ここは１つ彼女の
魅力について素直な気持ちで書き出してみたい。私が堀江由衣に感じている魅力とは、やはり「１７歳ならではの可愛さ」である。
「え？
１７（ｒｙ」というツッコミは、ここではさて置くとして、その可愛さに私は、この世で他に出会い感じたことはない。
「萌え」を「キ
ャラクター性への好意」という解釈で用いるのであれば、堀江由衣はまさしく「萌え」である。そしてまた、その可愛さは安易に「ほ
っちゃん」に還元してはならないものだ。私が、そして多くのファンが感じているその「萌え」という感情はおそらく、
「堀江由衣」に
対してのものであり、
「ほっちゃん」に安易に落とし込めない何かを感じていることだろう。ならば「ほっちゃん」にはまた別の可愛さ
があるのかと言われれば、全くその通りである。
「堀江由衣」を「ほっちゃん」として見たときに、そこの存在しているのは「ほっちゃん」としての可愛さと、我々の内界に生じる
「萌え」である。では、ここで生じている「萌え」とは如何に異質なのであろうか。そえは大変微妙なニュアンスであり、言語は上手
く表現しきれない部分である――決して語ることから逃げているわけではなく、そのようにしか言えないほどの微妙なニュアンスの違
いなのである。大変抽象的なことを話して、申し訳ないと思うのだが、この感情の極微小な差異を共感し、これを読んでいる人が１人
でも多く頷いていてくれたならば、大変嬉しいものである。
ここで、話はコロリと変わる。私は今ここに新たな記念日の創設を提案する――「国際ほちゃデー」である。４月７日が「国際保健
デー」であることはご存知の通りだが、ならば「国際ほちゃデー」が毎年９月２０日にあってもいいだろうと思ったのだ。この日を創
設することの意義は、①堀江由衣関連のイベントを開催する目安の日としてあらゆる人が用いることができる、②堀江由衣に１年間癒
された我々が、そのことに心から感謝する日として「勤労感謝の日」のように用いることが出来る、③「隠れ堀江由衣ファン」掘り起
こしの為に、布教活動を大々的に行うことが出来る日として位置づけることができる。このように、従来は「堀江由衣の誕生日」とし
てファンの間でしか認識されていなかったところが、その意味を大きくすることが出来るのである。
そういった創意工夫（？）のある私は、いくつか「堀江由衣」についてどうしても触れておきたいことがある。
先ず１つは「バニラソルト」のことである。なんだかんだ言われていたことを思い出す――え？パフュームみたいだって？それはそ
れでいいじゃないか。ホリリズムでもいいじゃないか！！あと、天たまでは「ハカタソルト」という替え歌を歌っていた。確かにソル
「バニラソルト」も「silky heart」もダンスがキュートでいいと思
トの名産地ではあるが…、おもしろいので私はＯＫだと思う。また、
う。後者はスタイリッシュにも仕上がっていてとてもいいと思う。どちらも覚えてみたいが、あまりダンスの覚えがよくないみたいだ。
ただの根性ナシということもあるが…。
２つ目に「ゆりかもめ」である。ゆりかもめを勝どきまで延伸したら、音声案内装置の声はぜひやまなこで――そう思っている。私
は不思議に思うのだ――どうしてほっちゃんもゆかりんも起用されていないのだ、と。そういえば、豊洲‐勝どき間は駅間狭かっただ
ろうか。既に豊洲の先が曲げられて専用路は止まっているから、東京オリンピックついでに延ばして、音声はほっちゃん＋ゆかりんで
是非ともお願いしたい。そうなれば、
「乗り鉄」の私は必ず乗りにいく。
そして３つ目に、０７年５月１４日放送の「HAY!HAY!HAY! MUSIC CHANP」に出演していたことである。これを記憶している人
は多いことだろう。私は、ＶＨＳに録画しながらリアルタイムで観ていたのだが、最も思い出すところはやはり「掛け合い」のところ
である。あれをまさか音楽バラエティ番組で本当にやるとは夢にも思っていなかった。
「あ～やりおった」――これがはじめに持った感
想である。グダグダ感満載だったが、私はそれはそれでよしだと思っている。さて、その出演にについて、中里キリが『まじカル！Ａ’
ｓ』にて、
「なんやこの女、17 歳てイタイなー」というスタジオの温度を感じたと述べている。私自身、そのような空気感はあったと
思う。それは、
「１７歳教」というシステムとその番組というイベントシステムとが親和性を持っていなかった、と言うことが出来るだ
ろう。
「１７歳教」は、
“お姉ちゃん”の存在と「オイオイ」というツッコミの中があって成立する「空気感のイベント」である。今回、
その番組のイベントシステムの中にと、
「１７歳教」システムとが、知識共有という面で上手く折り合え切れなかったことによって、
「妙
な空気感」を生み出すことになったと言えるだろう。 以上、イタいことはわかっているが、ここは１つ許してほしい。
 第二 章 ２１世紀の声優構造

sphere は、ミュージックレイン所属の声優４人――寿美菜子・戸松遥・高垣彩陽・豊崎愛生で構成されている女性声
優ユニットである。２００７年以降、４人で“ミュージックレイン girls”として活動していたが、２００９年２月１５
日の「ミュージックレイン girls 春のチョコまつり」にて結成発表をした。实のところ、ミュージックレインに声優は、
新人オーディションにて選ばれたこの４人しかいない為、その面々がそのままユニット活動にまで至った形である。
所属レーベルは、２００９年３月新設「Glory Heaven」(Lantis)。デビューシングルは、２００９年４月２２日発売
『Future Stream』
（Music Crip 付限定生産版・通常版）である。
さて、sphere は声優界期待の「若手・新人ユニット」である。近年、 「DROPS」や「Aice⁵」といった「非作品発ユ
ニット」が活躍していたが、ある程度人気のある声優によるユニットであった。そこで登場したこのユニットは、声優
界の世代交代の切り札となればと期待されている。
とは言っても、その切り札は「これまでに構築されたシステム」を利用して切っていると言えよう。
この章では、そのシステムが一体どの様なものかを見てゆきたい。そしてまた、そのシステムはこの社会においてど
のような役割を担い、そしてそれを果たしているのかについて考えることを通して、アイドル声優というものが「作ら
れた人間」であり、またそれに踊る人々は「生み出されている人間」であることを暴いていきたい。

（出典＝「Pl@net sphere」トップページ、
『Future Stream』Music Crip）

２．声優という演劇者／作品のデザイン
２．１．「声優基礎構造」
――「演劇者」としての声優、キグルミではない声優
２．１．１． 「気持ち悪さ」、そして「演劇者」
『萌例タイムズ第Ｃ７０号』に、中村幸太「声優は役者
かデザインか」という文章が１頁分掲載されている。そこ
で「処女はお姉さまに恋してる」が「乙女はお姉さまに恋
してる」としてアニメ化される際に、原作からキャスト変
更され、原作ライター嵩夜あやがこのことに関する経緯や
「原作声優をイメージした作品なのだから、キャスト変更
は創作者たちにも意見が言えるはずだ」 （中村前掲稿）とい
った内容の私情を掲載し、それが話題となったことを取り
上げている。そのキャストは、声優界ではかの有名なユニ
ット「Aice⁵」のメンバーの名が並んでいたのだ。
図２－１ アニメ「乙女はお姉さまに恋してる」
（出典＝StarChild:乙女はお姉さまに恋してる）
図２－２ Aice⁵（出典＝StarChild: Aice⁵）
左から浅野真澄、木村まどか、堀江由衣、たかはし智秋、神田朱未
ここで考えることとして、１つは「声優は作品に対して
大きな影響を及ぼしている」ということである。その影響
は、キャラクターのアイデンティティを「声」という部分
で規定するというものである。
アイデンティティの形成と声との関係については、それ
に疑問を呈される方がいることだろう。しかし、この問題
はクーリーの「鏡映的自己」という概念によって凡そなれ
ども片付くのではなかろうか。つまり、自己定義は自己に
よってなされるのであるが、その定義を定める概念は、他
人の指摘等によって齎されるものもあり、「声がハスキー
だ」であったり、
「すごく高い声」などといった他人への指
摘は、その当該者の自己を形成する材料となるのである。
では、例えば「ゲームの宮小路瑞穂」と「アニメの宮小
路瑞穂」で声が違うとなれば、それを多くの人々は「気持
ち悪いこと」として捉えるのであるが、そのように感じる
ことについて、２つの側面から迫ってみたい。１つは「表
象的側面」、
もう１つは「複合メディア文化的側面」
である。
先ずは前者からである。この考え方は「新・アニメ・批
評」というＷＥＢサイトにて、Ｋ・ワークスが提示してい
るものである。
Ｋ・ワークスは声優の定義を「３つの表象」で捉える考
え方を示し、それは地層のように堆積しているものである
としている。その「３つの表象」を図化すると、図２－３
のようになる。
表象の第３層
第１層と第２層を対忚させてメタファーの体系に
よって把握するものであり、組織的なスポーツのメ
タフォリカルな体系的言説を用いて語られうる層。
表象の第２層
实際にマイクの前で声優がアフレコ・プレスコする
／している層
表象の第１層
われわれの眼前に広がるディスプレイの層
図２－３ 声優の「表象の層」
（参考＝新・アニメ・批評、図化＝本稿）
さて、ここで取り扱っていくのは「表象の第１層」――
声優を「音声のイメージあるいは記号」（前掲サイト）とし
て捉えるというものである。
そして、それをＫ・ワークスは、次の４つに分類できる
とし、「階級関係を持っており、常に階級闘争をしている」
（前掲サイト）ものであり、「音声のイメージと映像のイメ
ージの分離と自律的機能の獲得は、实写映画の世界におい
て、サウンドとイマージュの合成語である『ソニマージュ』
などと呼ばれたりする極めて現代的で興味深い視覚的表
現」（前掲サイト）と述べている。
１． 物音（叫び声、ため息、モブの囁き、歓声）
２． 言葉（会話、独白、演説）
３． 音楽（歌）
４． 沈黙
Ｋ・ワークスがそのように述べているように、声優がキ
ャラクターに付与する声は、キャラクターから自律し、キ
ャラクターを声が規定しているということである。Ｋ・ワ
ークスは次のように述べている。
【前略】声優とは「影法師」であり、登場人物は「マ
リオネット」になってしまうのです。
この「影法師‐マリオネット」
の関係が意味するのは、
 登場人物の身体に対する声優の音声のイメージの優位性 がキグルミではないことを淡々と語っていると言えよう。
なのでございます。つまり「映像‐運動」と「音声‐声 ここで「記憶に示される履歴と連鎖」とは、ライトな視
優」が、一般に思われているほど対等で安定的な関係を 聴層にすれば「声優が云々」といったことはどうでもよい
結んでいるというわけではということです。 ことで、どんな声でもすんなりと受け入れられる。だが、
作品に愛着を持って観ている人や声優ファン等にすれば
つまり我々が感じる先述の「気持ち悪さ」とは、声優が 「声優の変更」は大きな事实である。それは、後者の記憶
キャラクターに付与する声が、キャラクターのアイデンテ の中で「○○というキャラクターは□□という声優」とい
ィティを規定する重要な要素となっているということを示 う「結びつけ（連鎖） 」が行われているが為である。 「ある
している。 アニメの次回予告にて、ある出演声優がそのアニメではな
そして、その「気持ち悪さ」とは、それ故に「アイデン い別アニメのキャラクターで予告するとき」や「あるアニ
ティディの危機」につながると、意識的／無意識的に我々 メで別アニメのパロディをするときに、パロディ元と（ほ
が感じているからである。 ぼ）同じ行動をするキャラクターをそのパロディ元のキャ
また、キャラクターを規定しているのは「メディアの受 ラクターと同じ声優であった／しているとき」などにそれ
け手」の側であるということでもある。即ち、我々がキャ を感じることになる。
ラクターの「鏡映的自己」の鏡の役割になっているのであ さて、「キグルミを着ている」というのは、キグルミ（＝
る。我々がアニメを観て、指摘することによって、その観 作中キャラクター）の中を見ることは先ず無いので、声優
ているキャラクターをどのようなものか規定しているので は誰でもいい状態ということである。つまりは、アニメフ
ある。そうであるために、様々な規定が存在してしまうこ ァンなどが行っている行動は決してそうではないというこ
とになる。その様子が現れている最たる例が同人誌である。 とである。「キグルミを着ていない」ということは即ち、声
優自身がキャラクターを見ることのできる位置に存在し、
では次に、「複合メディア文化的側面」について。 作中キャラクターと混同する存在ではないということであ
そのような「気持ち悪さ」を持つさらなる背景には、メ る。それは故に、声の違いが「作品の気持ち悪さ」に繋が
ディアミックスが進んだコンテンツ業界というものがある。 ってくることを説明するのである。
即ち、『おとボク』はゲームが原作であるが、それがアニ ここで、説得力を持ったメッセージとして、堀田純司『萌
メになるというメディアミックスが存在して初めて、この え萌えジャパン』p.281 にて、彼が清水愛へインタビュー
弊害は発生しているのである。そしてこのことは、私たち したときの彼女の言葉を挙げておきたい。
に「作品での声の重要性」を気付かせるという機能が発生
している。そのことはイコールとして、「声優が『声』とい 私がデビューした当時は、すでに声優さんにもタレン
う面で影響を作品に及ぼしている」ということなのである。 ト性が求められるようになっていた時代でもありました
そして、彼ら／彼女らは、１人の「演劇者」として責任を し、イベントを運営する側も、見てくれる側の人も、も
持って役を演ずることが求められるのである。作品の中で ちろんキャラ名で「誰々ちゃん」と考えて楽しむ方もい
彼ら／彼女らは、己とは半乖離した存在として生き、場合 らっしゃるかもしれないですが、声優さんをキャラクタ
によってそこで死んでいくのである。つまり、彼ら／彼女 ーと混同しているわけではないと思うんですよ。たとえ
らは、作品中では「彼ら／彼女ら」ではなく、「その人と接 ば私が『おねがい☆ツインズ』のイベントに行ったとし
点を持つ『キャラクター』」として生き、死ぬのである。 て、いっしょに出ている中原麻衣ちゃんを、役名で深衣
奈さんと呼んでみたりするわけじゃないんです。それに
２．１．２．「中の人」という言葉の在り方 着ぐるみに入ってお実さんの前に出るわけでもないです
――声優は「キグルミ」を着ているのか？ し。作品のセリフパートや、台本が用意されて寸劇を演
ここで、声優と作中キャラクターとの関係に於いて、よ じるということでもない限り、清水愛本人という意識で
く用いられる表現「中の人」について言及しておきたい。 います。
私は先に「演劇者」という概念について話した。この概
念は、
「中の人」という表現に対して疑問を呈することにな この自覚性は大変重要であり、繰り返しになるが、声優
る。つまり、「声優とは、キグルミを着た存在か」という疑 という存在が作中キャラクターの声を卖に付与するのみな
問である――関西大学教授の若林雅哉は、「キグルミではな らず、そのアイデンティティの源を付与するという重要な
い」とし、「記憶に示される履歴と連鎖」だと述べている。 ファクターを握っているということである。
確かに一見すると、声優とは作中キャラクターの声を演 我々は、文字化するなり音声化するなりして、そして公
じているのだから、キグルミのように中に入って喋ってい にしたり仲間内で話し合うなどして、アニメなどの音声を
るように見えるだろう。ならば、何故１キャラクターの声 伴う作品の批評を行っているものである。その批評という
が違うと、作品を知っている人間からすれば「気持ち悪い ものは、实は作中キャラクターの様々なバーバル／ノンバ
作品」と感じるのであろうか。外見は一切変わっていない ーバルなコミュニケーションを通した印象によって規定し
し、アニメ『ハチミツとクローバーⅡ』最終話のように台 ており、そのことが作品批評に尐なからず影響しているも
詞すら変わっていない、もちろん画は一切変わっていない のである。このことを忘れてはならないためにも、声優論
のに、声が違うだけで「気持ち悪い」と感じるのは、声優 の重要性を考える必要もあるだろう。
２．１．３．声優とコミュニケーションにおける心理
「声優が『声』という面で影響を作品に及ぼしている」
ということについて先に述べたが、このコミュニケーショ
ンを取り巻く心理について補足的に触れておきたい。
我々が声優のファンとなる時、一体何故ファンとなった
のであろうか――それを考えるには、コミュニケーション
（＝身振り、ことば、文字、映像などの記号を媒介として、
知識・感情・意志などの精神内容を伝達しあう人間の相互
作用過程）を取り巻く心理を理解する必要があるだろう。
そしてその理解は、「声優が『声』という面で影響を作品に
及ぼしている」ことについてより深く理解することに繋が
っていく。
２．１．３．１．バーバル・コミュニケーション
我々は、メッセージをメディアに乗せて送る側（送り手）
であり、同時に受け取る側（受け手）である。そしてその
行為を通して、その２者やそれを取り巻く集団に関する知
識の共有を図っている。
最も用いられるメディアは「言語」である。その理解に
は「意味論的知識」 （言葉と意味との関係） ・
「統語論的知識」
（言葉と言葉の関係） ・「語用論的知識」 （言葉と話し手との
関係、相互やり取りの中での言葉の意味）が必要である。
そして、Ogden et la.の「指示の三角形」は、言葉の意味
を考える上で有効なものである。
図２－４ 指示の三角形（図制作＝本稿）
さて、言葉を理解する中でも、特に卖語の意味について
理解する時には、我々は「意味」に注意している。それは
２つに分けられ、１つは「外延的意味」（辞書的な意味。送
り手と受け手の共通理解に用いられやすい意味）、もう１つ
は「内包的意味」（意味を理解する上で必要となる特性・概
念・個人の感情。送り手と受け手の間でコミュニケーショ
ンの齟齬が起きる可能性は、１つここが持っていると言え
よう）である。
そして、言葉の理解に於いては、文の意味を理解してい
ることも忘れてはならない。メタ・メッセージ、婉曲、比
喩（直喩と暗喩）といったものがある。
２．１．３．２．ノンバーバル・コミュニケーション
以上のように、我々は言葉（卖語、文）を介することに
よって、日々のコミュニケーションを行い、様々なメッセ
ージを理解している。
しかし、それだけでは収まらないところでメッセージを
理解し合っていることも事实である。言語を用いないで行
うコミュニケーションを「ノンバーバル・コミュニケーシ
ョン」というが、このコミュニケーションを知ることは、
本稿の性質上、有意味であろう。
ノンバーバル・コミュニケーションは、 「動作行動」 （体
や手足の動き）・
「身体特徴」 ・
「接触行動」・「準言語」（声の
質、声の特徴、音声分離） ・「空間行動」（個人的・社会的な
空間の認知や利用に関する行動） ・「人工品」 （様々な持ち
物）
・「環境要因」（好みや“らしさ” ）といったものがある。
なお、研究者によってはより絞り込んで限定する場合があ
り、ここに示したのはそれを広く捉えた場合を示している。
そのノンバーバル・コミュニケーションは、 「感情の表
出」・
「相互作用の表出」 ・
「親密さの表出」 ・
「支配・権力関
係の表出」・
「情報の表出」といった機能を有しており、今
日の声優について考える時には欠かせないと言えよう社会
心理学的なテーマである。
今日の声優は「顔出し」することが一般的となっている
が、その中で１つ外せないコミュニケーションが「視線」
によるものである。
とある人の写真で、瞳孔が拡大した人の写真を被験者に
見せると「あたたかい、温和」等と言った好印象を与え、
逆に瞳孔が収縮した人の写真を見せると「冷たい、利己的、
かたい」といいた悪印象を与えてしまうというものがある。
因みに瞳孔は、何らか刺激を受けたときに拡大が見られる。
また、
「目線を合わせたとき」が最も良い印象を与え、「下
を向いているとき」や「直ぐに目線を外したとき」が最も
悪い印象が与えると言われる。
そして、会話中の視点について様々な動きがあるという。
話している時にはあまり相手を見ないが、聴いている時に
は逆に良く見る。ただ、話し始め・話のポイント・話終わ
りには相手を見、聴きたくない・自分が話したいときには
相手を見ないという傾向にある。
ところで「顔出し」するということは、その声優の「表
情」や「しぐさ」を無視することは出来ない。次にそれら
を取り上げたい。
人は基本的情動（喜び・怒り・悲しみ・嫌悪・驚き・お
それ）を表情に表す。表情は生得的なものであるとする説
と、学習するものであるという説がある。その表情の表出
おいては「neuro-cultural モデル」が提示されている。こ
のモデルは生得説に立ちながら、表出の仕方に於いては
display rule（減衰・増幅・隠蔽・すり替え）により修復さ
れるとしている。
一方「しぐさ」について。これは「表象」 ・「例示」
・「調
整」と分類される。表象は「伝達機能」 （言葉の直接的言い
換え）の機能がある。例示は「増幅機能」 （会話に直接結び
ついた動作によって、聞き手の会話内容の理解促進、話し
手の情動・態度などの表出や思考過程の言語化促進）の機
能を有している。そして調整は「調節機能」 （会話の流れの
調節）の機能を持っている。
２．２． 「デザイン化する声優」とは何か
前節では、先ず１つ目として「声優は作品に『声』で大
きな影響を及ぼしている」ということを述べていった。
次に、私自身が「声優」を考えていく中で、強く思うと
ころがある。それは、 「声優のデザイン化」である。
私はつい数行前で、 「半乖離した存在として声優たちは作品
の中で生きていくのである」ということを述べている。し
かし、第３次声優ブーム以降、その「半乖離状態」が「全
乖離状態」になっていることが声優界で起こっている。そ
れが「アイドル声優」という存在である。
アニメ『D.C.～ダ・カーポ～』で、キャラクターソング
のＰＶとして、各声優のＰＶが撮られ、放送された。これ
はＤＶＤに収録されているので、確認していただける（参
照＝図２－５） 。それは、 「声優のデザイン化」を象徴的に
表している。
つまり、従来の「演劇者」というのは、作品に半歩入っ
てキャラクターを規定するものを付与する存在であり、即
ち「声」が「作品を形作る一部分」となって作品に存在し
ていた。だが、 「デザイン」となることとは、声優自身、そ
の存在全てが「作品を形作る一部分」となるのである。
『D.C.』で彼女らが出てきたことは、野川さくら、田村ゆ
かり、堀江由衣らが「作品を形作る一部分」となり、その
作品の顔の１つずつとして存在しているのである。 つまり、
「声優が作品のデザインになった」のである。そのデザイ
ンになる意味は、 「
『作品の看板』としてのキャラクター」
である。实際に本編には彼女たちは出てこない。しかし、
そうやって彼女たちが出てくることは、彼女たちによって
作品がイメージ付けられているのであり、その役割として
のキャラクター――「イメージキャラクター」として作品
という１つの括りの中で存在しているのである。
先ほどの『おとボク』の問題も、結局はこれに立脚して
いる問題である。 「Aice⁵」という看板によって、作品をあ
る方向にイメージさせ、作品、それを絞って言えば本編を
売り込んでいるのである。嵩夜あやが出くわしたその事实
は、まさに「デザイン化」が及ぼした、原作者へのエゴで
ある。
このような「デザイン化」は、声優が「アイドル化」し
ていく中で生まれてきたと言える。声優が「アイドル化」
し、それが「デザイン化」を生み出す要因となったと言え
よう。後に、声優ファンの心理をついて、商業のラインに
声優を乗せることが起き、そのラインの中にこの「デザイ
ン化」というものが織り込まれていったと考えられる。今
や「声優」は、商業のレベルで語ることの出来るものとな
っていることは否めない。
「声優のデザイン化」ということで、彼ら／彼女らの实
務的なところで話を進めると、 「喉１つ」では生き残ってい
けないということが言えるのである。
では、次に声優がどの様なときに「作品のデザイン」と
なるのかについて述べていきたい。
一つ、
「新作アニメのキャスト紹介」を考えてみよう。こ
れが文字媒体のみであれば、キャスト陣は「演劇者」の状
態である。ここに写真が付されれば、その声優は「作品の
デザイン」となる。公式サイト等での動画、アニメフェア
等のステージなどに出てくることも、声優が「デザイン化」
となる要素である。
次に、「作品の为題歌や挿入歌」が発表されたとき、それ
を歌う声優は「作品のデザイン」である。図２－６のよう
に番組にちなんだライヴが組まれることがあるが、これは
「デザイン化」を分かりやすく示している例の１つである。
ただ歌に関しては、１つ注意して考えなければならないこ
とがある――「キャラクターソング」の場合である。キャ
ラソンはキャラクター名義でＣＤが出されるが、 同時に「Ｃ
Ｖ」が表示されることが一般的である（例＝白河ことり〔Ｃ
Ｖ：堀江由衣〕）。このとき、我々はキャラクターと声優の
両方を意識することになる（参照＝本稿第３節） 。つまりそ
のことから、声優は十分に「作品のデザイン」としての機
能を全うすることが出来ると言えよう。
もう一つ、「ラジオ」に関して述べていこう。ここでの「ラ
ジオ」は、「アニラジ」（参照＝本稿第９節）を指すことに
なる。アニラジはいくつかに分類することが可能であるが、
特に「アニメ作品やゲーム作品、漫画作品、ライトノベル
作品に関係した番組（情報番組、ラジオドラマ） 」が、「デ
ザイン化」に関わる種類の番組であろう。こういった種類
番組には、アニメのキャストの誰かが番組パーソナリティ
となることが一般的である。こうした番組は、「作品に関わ
る情報」を伝える役割を持っており、パーソナリティ＝作
品キャストが「作品のデザイン」であることを感じること
が出来る。
これら等の「デザイン化」の動きというものは、 「声優の
アイドル化」を利用したものであり、またそれを助長する
働きを有している。そして「デザイン化」とは、 「アニメ産
業」と「アイドル化」のクロスが大きな要因と言えよう。
「デザイン化」するということは、イコールとして「声
優」が「顔出し」するということであるが、今の１０代の
「オタク／ヲタク」たちにすれば、それは当たり前に感じ
ていることだろう。その「当たり前」という感覚は、 「タヌ
キに騙されている」ことにすら気づかずにいるということ
と言えよう（参照＝本稿第５節） 。
２．３．ＲＡＭＳにみる声優状況の変化
さて、そのアイドル化や「デザイン化」について、キャ
ッチコピーとして前面に押し出した会社がある――「ＲＡ
ＭＳ」である。２００４年に同社が設立した声優養成所「Ｒ
ＰＥ」のキャッチコピーが「声優はエンタテインメント」
であった。この１つのキャッチコピーが、声優界の状況の
変化をまざまざと示している。
因みに、ＲＡＭＳには、野川さくら、宮崎羽衣、などが
所属している会社である。ここで、「会社」を「声優プロダ
クション」とハッキリと書けないのは、元々番組制作請負
会社であったためで、現在でも「アニぱら音楽館」 、
「ナニ
カナ☆ナナカナ」などの番組を制作している為である。
实際、このキャッチコピーを掲げる事に対して、声優フ
ァンからは反発の声があった。Wikipedia「ラムズ」には
次のように書かれている。
図２－５ 白河ことり／堀江由衣「Pureness」 PV（出典＝『Ｄ．Ｃ．～ダ･カーポ～ ＤＶＤ－ＢＯＸⅠ』
 資本によるごり押しとの批判や、所属声優の積極的な
プロモーション活動、先述のＲＰＥのキャッチコピーな
どに見られる姿勢などが従来の裏方的価値観（あくまで
作品ありき、本業ありき。アイドル的イベント等の活動
は二の次）を重視する声優ファンからの批判を受けるこ
とも多い一方で、所属声優のプロモーションにおいては
着实な成果を挙げており、新興事務所としては一定以上
の成功を収めている。

まさに、この記事が示していることは、声優のアイドル
化、そして「デザイン化」を書き記している。そして、そ
れを象徴するのが、ラムズ所属の声優で結成されていた 「ク
ローバー」というユニットである。「Wikipedia」には次の
図２－６ 「Ｄ．Ｃ．～ダ・カーポ～ シークレットライ ように紹介されている。
ブ ｉｎ川崎クラブチッタ」
（出典＝YouTube）
クローバーは、五ノ上奈々（リーダー） ・宮崎羽衣・
斎藤桃子・庄子裕衣の 4 人による声優ユニットである。
ラムズ・ランティスに所属している。テレビアニメ
「IZUMO -猛き剣の閃記-」への出演をきっかけに結成
する。
しかし、2008 年になってから、斎藤桃子と庄子裕衣が
ラムズから相次いで離脱したため、公式な発表は何もな
いとはいえ、事实上の解散状態といえる。
オフィシャルファンクラブ「4HOPES」があったが、
図２－７ 「演劇者」模式図（出典＝本稿） こちらも発足 1 年にして会員に対して公式な発表は何も
ないまま運営が停止してしまっているため、こちらも事
实上の解散状態といえる。

さて、クローバーは活動末期に「Master of Epic」との
タイアップを行っていた（参照＝図２－１１） 。しかしこれ
も、クローバーが機能不全を起こしたことにより、タイア
ップは泡のように消えていった。
「事務所のバックアップ体制」は、ユニットの宠伝広告
の部分で大きな力を得て、また「事務所の大看板」として
前線で活動して行ける一方で、１つでも綻びが生じれば崩
図２－８ 「デザイン化」模式図（出典＝本稿） れていくという脆さも兼ね備えていることを、クローバー
は遺していったと言えよう。その意味では、２００９年デ
ビューの「sphere」も同じ爆弾を抱えている。

ところでＲＡＭＳは、
「ＲＡＴ」という劇団を立ち上げて
いる。ホームページには次のように書かれている。

声優プロダクションであり、映像制作会社でもある株
式会社ラムズが、舞台だけでなく、ライブや映像、イ
ベントの要素も取り入れたエンタテインメントライブ
ステージという今までに無い新しいスタイルを实現す
るために設立した声優劇団。

図２－９ 取り巻く「デザイン化」の要素（出典＝本稿）
註：周辺の四角は、これ以外にも存在することであろう
座長には、
「忍者戦隊カクレンジャー」ニンンジャレッ
ドサスケをはじめ多くの舞台でも活躍中の小川輝晃氏
を迎え、ラムズが運営する声優養成所「ラムズ・プロ
フェッショナル・エデュケーション（通称：ＲＰＥ）
」
の研修生から選ばれた出演候補者が５ヶ月間の稽古を
 重ねた結果、２００６年６月に旗揚げ公演「陸の界賊
～オカノカイゾク～」を上演した。
旗揚げ公演終了後にはＲＰＥ研修生を対象に改めて实
施した劇団員オーディションにより、正式な劇団員４
０名を選出し、劇団として新たな一歩を踏み出した。
これらのＲＡＭＳの行動・方向性は、「声優」というもの
が、いかにしていわゆる「芸能人」と境界線が引かれてい
くのかという問題とつながってくる。
ＲＡＭＳ的なベクトルとは逆に、木村拓也やみのもんた
など、有名なテレビタレントが、
「声優」に挑戦するという
ことが最近ではさも当たり前となった。
これらのことは、かつて「声優」というものが「俳優業」
の一つとして捉えられていた状況へ、实質的状況が帰って
いるのではなかろうか。ただ、尐なくとも認識的状況はま
だ、
「声優」と「俳優」が分かれている。そしてファン層が
明らかに違い、その其々が交わる事はまあ無い。だから、
あくまで、以上までに述べたことを鑑みると、实質的には
差異が「薄まってきている」と考えられるのではなかろう
か、ということである。

図２－１０「クローバー」
（出典＝クローバー公式サイト） 左から＝宮崎羽衣・五ノ上奈々（リーダー）
・斎藤桃子・庄子裕衣

（出典＝モエクロ ～Master of Epic とクローバー～ - Master of Epic スペシャルサイト）

図２－１１ 「モエクロ」
註：オンラインゲーム／アニメーションと声優ユニットのコラボレーションの一例
２．４．「注目の構造」
・「声優の独立性」
差異が薄まってきている感はあるのだが、そうした流れ
に対して「声優」というものをしっかりと自分の中で守っ
ていこうとする向きも見られる。
『読売新聞夕刊 ２００８年１２月１２日号』１２面に
おいて、水樹奈々について書かれている部分がある。その
一部を抜粋したい。
その後は水樹奈々の名前でもＣＤを出すようになる。
「自分の感情をどう歌に乗せていけばいいのか、最初の
うちは手探りだった。ライブをやるうちに見えてきたと
思う」と話す。
一方でキャラクター・ソングも続けて歌っていきたい
という。
「絵を想像しながら、この子だったらこう歌うんだろ
うなと思いながら表現を組み立てています。声優として
両方やっていきたい」
次に、
『ＭＳＮ産経ニュース』２００８年８月１７日の記
事「
【インタビュー】声優、初アルバムで史上初トップテン
平野綾」の一部を引用する。
ライブを開けば超満員、ＣＤを売れば記録的な売れ行
き…。今や「声優」という枞を飛び出した感じだが―。
「でも、やっぱり声優というのは崩したくない」とき
っぱり。
「それがなかったらただのマルチタレントになっ
ちゃう。一番合っているなと思える仕事だし、周囲の方
にもすごく感謝している」
本稿１．２．７．２．で日高のり子の言葉を引用したが、
声優という存在がアイドルとして活動の幅を広げているこ
とは、メリットばかりでなくデメリットも出てくる。第３
次声優ブーム以降に生きる声優の中で、それを踏まえて今
昔において変わらぬ思想――「声優ありきのアイドル活動」
という思想があるのを感じることが、幾つかの声優の言説
を辿ることが出来得る。
では、その「声優ありきのアイドル活動」とは具体的に
何であろうか。そのことを考える為に、私は「アイドルと
注目の構造」に注目しておきたい。
「アイドル声優」という存在がいかにして人気の切っ掛
けを得ていくのであろうか。それは、アニメなどのヒット
作に出演していることと関わっていると言えよう。分かり
易い例として、平野綾は『涼宮ハルヒの憂鬱』でヒロイン
の１人である「涼宮ハルヒ」役として出演し、作品のブレ
イクによって声優にも注目が行き、そして平野は、声優界
のスターダムへの切符を獲得している。また、戸松遥はア
ニメ『かんなぎ』が放送当時の人気となり、後述の通り声
優アワードで賞を獲得するまでになっている。
このような例は、他にも沢山ある。彼女たちを見ていく
中で見えてくるものとして「注目の構造」がある――就い
た職を全うしていく中で、１つの切っ掛けで注目され、切
符を獲得するという構造である。声優が何らかの作品を通
してアイドルへの切符を掴み、声優として生き長らえる切
っ掛けを得ているように、他のアイドルでも「アイドルと
注目の構造」が見られる。
２１世紀になって多く出てくるようになったアイドルと
して「女子アナ」があるが、彼女らは「アナウンサー」と
いう職につき、ある日写真週刊誌などが注目することによ
って「アイドル」として注目されていくようになっている。
また、「スポーツ選手」に於いては、其々が極めんとしてい
る「スポーツ」を行い、それで成果を何らか挙げた時に、
メディアが注目し「アイドル」として見られるようになっ
ている。
ただ、第一節一項で話したような「アイドル」について
は、オーディション→アイドルという、ここで話している
ような構造に当て嵌まらない、独自の「アイドルシステム」
が存在していることを付記しておきたい。
ここで、 「アイドル声優」に注目していくが、声優の世界
における「注目の構造」について、それと「作品のデザイ
ン化」は切り離せないものである。
もう１度平野を例とすると、彼女は『涼宮ハルヒの憂鬱』
という作品に於いて、声優としての職を全うしていた。す
ると、結果的に「アイドル」としての切符を獲得したので
ある。ここで注目しておかなければならないことは、作品
のヒットが声優の人気につながっていることである。特に
第３次ブーム以降の声優について、声優が人気を得るには
「作品のデザイン」となっていることがほぼ欠かせなくな
っている。歌を歌い、ファンを獲得しているという側面を
無視は出来ないが、そのことが声優としての彼／彼女らに
おいて可能となるのは、 「作品のデザイン」として存在し、
ファン層獲得のスタートダッシュが成功したときに行える
ものと言えよう。水樹奈々が、自身のシングル『ETERNAL
BLAZE』でオリコン最高２位を獲得できたのは、アニメ
『魔法尐女リリカルなのは』ファン層のみならず、その過
去にベスト１０にまで売り上げを押し上げていた「水樹
奈々のファン層の厚さ」があってのことだったと考える方
が妥当である。そのファン層はいかにして獲得してきたの
か――それは、 「作品のデザイン」所以のファン層と、後に
歌うことによって獲得してきたファン層とがいることを知
っておかなければならない。
以上、「注目の構造」について述べた。
それを読みながら、ふと勘付いた人がいるかもしれない
――「
『注目の構造』や『作品のデザイン』といったことが
人気の声優を生み出しているというならば、第１次や第２
次のブームでもそれは適用できるのではないか」と。
そう見えてくることは確かである。「注目の構造」につい
ては、それらの時でも認められることである。そして「作
品のデザイン」に関しては、第１次でも第２次でも確かに
適用し得る感じではある。
しかし、本稿で私が言いたいことは「声優が前線に出て
いくこと」、そして「声優の独立性」とでも言うべきもので
ある。第１次ブームでは〈外人俳優＝吹替声優〉という構
図があったのだが、それはあくまでもメディアの受け手側
の解釈によるものであった。受け手が特段作品の為に、そ 「作品のデザイン」が「意図的に示された」ということが
して自分の仕事・人気の為に「前線に出る」＝「顔出しす よくわかると言えよう。
る」ことはまず無かった。だが、第３次ブーム以降におけ 私が本節で著してきたことのまとめとして、そして現在
る声優は、１送り手として「作品のデザイン」となり振舞 の声優界の有様をものの見事に端的に示したものとして、
うことが求められる。イベントに出ることも、为題歌を歌 白石みのる（ＣＶ：白石稔）は、現在の声優界――「デザ
うことも、それら等のことは作品を意識し、またその作品 イン化」の地平を示した、重要なキャラクターである。そ
を、そして声優としての自身を前線で売り込む状況におか して『らき☆すた』という作品は、アダプテーション／ア
れる。つまり、「作品のデザイン化」で重要なことは、それ プロプリエーションに於いてのみならず意味を持つ、重要
までの声優では普通見られなかった「前線に出る」のが常 な作品に位置付けるべきものである。
態化したことである。そして、人気を得て、アイドルとし
ての地盤が出来上がれば、作品というバックボーンを、例
え完全に離れてしまっても芸能生活を歩んで行ける「声優
の独立性」を有することが出来るまでになっていることで
ある。
本稿で語ろうとしている「作品のデザイン」には、「顔出
し」というものがあり、その先に「声優の独立性」がある。
そして、「独立性」が存在することが、現在の「アイドル声
優」という状況を常態化させている１つの原因であると考
えられる。
また、第１次声優ブームにおいて、受け手側がその種を
蒔いたことが、第３次ブームに明確な形で花咲いたという
歴史経過についても指摘しておきたい。

２．５．アニメ『らき☆すた』のオリジナル・マジック
堀田『萌え萌えジャパン』pp.262-263 において、彼がア
ーツビジョン・アイムエンタープライズ・日本ナレーショ
ン演技研究所前代表の松田咲實に「声優の力だけで人気キ
ャラクターを生み出すことはありえますか」という質問を
し、それに対する筓えとして次のように書かれている。
ありうると思います。私は、いわゆるアイドル声優と
言われるような人が、デフォルメキャラクターではなく
きちんと描かれたアイドルキャラクターを演じて、それ
が日本の代表になるようなアニメーションが出でくると
いいなと考えているんですよ。
【後略】
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』、そして『らき☆すた』はそ
ういうアニメの好例と言えよう。
その内『らき☆すた』には、原作漫画には出てきていな
い、オリジナルキャラクターがいる――白石みのる（参照
＝図２－１２）である。このキャラクターのおもしろい所
は、声優の白石稔をイメージして作られたキャラクターで
あり、もちろんＣＶは白石稔である。
既に勘付いている人がいるだろうが、この白石みのると
いうキャラクターは、「デザイン化」をものの見事に表して
いる。それも、「意図的に示された」という点がより重要で
ある。
アニメ地上波放送第２クールのＣパートでは、白石稔自
身が登場し、（妙な）歌を歌っている様子が毎回流された。
その歌はアルバム『白石みのるの男のララバイ』としてＣ
Ｄ化され、またアニメＤＶＤにはＣパートのオフショット
映像が特典として付いていた。そのオフショットを観ると
ころ、白石稔も撮影スタッフも（大いに）乗り気であり、
図２－１２ 白石みのる
（出典＝「らき☆すた」オフィシャルサイト／「らっきー
☆ちゃんねる WEB」／「らきすた」公式サイト）
２．６．本節のさいごに
「声優はエンタテインメント」は否か――それは、確か
に現在の声優界を見渡せば、当たり前に歌い、当たり前に
ライブをし、当たり前にテレビに出て、当たり前に様々に
「顔出し」をしている――つまり、アイドル化し、そして
「デザイン化」しているのである。これを以ってして、「否」
と筓えることは、余りにも矛盾しているであろう。
最後に、私は、改めて読者に一つ、問いかけておきたい
事がある。それは、「声優」の存在意義は何か、ということ
である。あなたは、いかに考えるであろうか。
私は、２１世紀ゼロ年代に於いて徐々に業界の装置化し
た「アイドル声優」に対して、「声優」という言葉を用いる
に相忚しいのかと思うまでになった。声優が、「デザイン化」
し、
「アイドルの平行性」を考えると、そう思ってしまう節
があるのだ。
先に「もはや“声優”という言葉が半ば形骸化してしま
った」という言葉を用いてるが、それは私の他愛も無く、
また怖ろしい思いである。

３．アイドルの平行性／音声と萌え
３．１．アイドルの平行性
３．１．１．平行する２キャラクター
「アイドル声優」という言葉は、既に死語なのかもしれ
ない。ただ、私は研究上の用語として用いている。
その「アイドル声優」を、前節では「デザイン化」につ
いて述べていった。次に話していくのは、その「デザイン
化」と関わりを持つ理論であり、猪岡声優論のもう１つの
基幹となっている「アイドルの平行性」である。
『THE IDOL M@STER』
では、 （参照＝図３－１）とい
うゲーム作品を例にして話していこう。
この作品には、天海春香（ＣＶ：中村繪里子） ・秋月律子
（若林直美）
・菊池真（平田宏美） ・如月千早（今五麻美）
・ 意味で「キグルミではない」「中の人ではない」という言葉
高槻やよい（仁後真耶子） ・萩原雪歩（落合祐里香）・双海
亜美／真美（下田麻美） ・星五美希（長谷川明子）・三浦あ
ずさ（たかはし智秋）――１０人のアイドルとナビゲータ
の音無小鳥（滝田樹里）が为要キャラクターとして登場し
ている。
この作品では、ゲームプレイヤーは「プロデューサー」
となり、アイドルをプロデュースするのだが、一方で、そ
のプレイヤーがアイドルのファンになっていることも忘れ
てはならない。实際のところ２００８年７月にパシフィコ
横浜で開催されたライヴでは、約５０００席の１枚６５０
０円のチケットは、抽選による先行予約の効果もあって、
数分で即日完売している。また、ネットオークションでは
最高１３万円の値をつけた（参考＝『ＦＬＡＳＨ ２００
８年１１月１８日号』p.57） 。
図３－１ 『THE IDOL M@STER』
（出典＝THE IDOLM@STER [ダウンロード]）
そのような声優のイベントが、ある作品を背景にして催
され、そして成功することは、 「アイドル声優」を考えてい
く上で重要な現象である。考えていく上で、堀田純司『萌
え萌えジャパン』p.281 にて、彼が清水愛へインタビュー
したときの彼女の言葉に注目しておきたい。
私がデビューした当時は、すでに声優さんにもタレン
ト性が求められるようになっていた時代でもありました
し、イベントを運営する側も、見てくれる側の人も、も
ちろんキャラ名で「誰々ちゃん」と考えて楽しむ方もい
らっしゃるかもしれないですが、声優さんをキャラクタ
ーと混同しているわけではないと思うんですよ。たとえ
ば私が『おねがい☆ツインズ』のイベントに行ったとし
て、いっしょに出ている中原麻衣ちゃんを、役名で深衣
奈さんと呼んでみたりするわけじゃないんです。それに
着ぐるみに入ってお実さんの前に出るわけでもないです
し。作品のセリフパートや、台本が用意されて寸劇を演
じるということでもない限り、清水愛本人という意識で
います。
我々は、一般に「作中キャラクター」とその声をあてて
いる「声優」を「同一人物」だとは認識していない。その
は、大きな意味を持っていると言えよう。
さて、
「同一人物ではない」ということは、この節で話し
ていきたい「アイドルの平行性」の核心に迫るものである。
「声優」と「作中キャラクター」が「同一人物ではない」
ということは、「それぞれにファンが生まれる」という可能
性に繋がっていく。現状、声優が「デザイン化」し、「マル
チタレント化」したことによって、それぞれにファンが生
まれている。どちらのファンでもあるという人が大勢を占
めるだろうが、「キャラクターは嫌いだけど、ミンゴスは大
好き」といった一方だけ好きというファンも居るだろう。
ともあれ、その様な状況になることは、「作中キャラクタ
ー」と「声優」が「アイドルとして平行に存在している」
ということである。つまりは、「作中キャラクター」の軸と
「声優」の軸、その２軸が交わる状況にはならないという
ことである（参照＝図３－２）。
図３－２ 「アイ
ドルの平行性」
（出典＝本稿）
註：
「作中キャラク
ター」と「声優」
のアイドルに於け
る関係性は上の形
である。下の形な
らば、その２者を
人々は混同してい
る状態であり、
「中
原麻衣ちゃんを、
役名で深衣奈さん
と呼んでみたりす
る」ことになる。
３．１．２．意識下に残留する声優
「平行に存在している」ということは、
「作中キャラクタ
ーと声優は関わりを全く持っていないのか」と言えば、そ
うではない。図３－２下のように強力に結びつき、
「混同す
る」といった状況ではないが、声優は作中キャラクターに
声を与え、作中キャラクターは声優に「履歴と連鎖」（参照
＝第２節第１項）を生み出し、認知度アップの種となると
いう影響をそれぞれに与えている。
さて、その「履歴と連鎖」について、 「デザイン化」の際
に例として出したアニメ『D.C.～ダ・カーポ～』Ｃパート
で考えてみよう。
このＣパートは、ヒロイン格キャラクターの女性声優６
人のＰＶとなっているのだが、曲は「キャラクターソング」
という不思議なものとなっている。
このＰＶを見ると、例えば堀江由衣の出ているものなら
ば、曲すらも「堀江由衣」（参照＝図３－４）のものである
かのように感じてしまうのだが、あくまでも彼女の演じて
いる「白河ことり」（参照＝図３－３）の曲なのである。目
で感じていることと、耳で感じていることがズレているが
為に、我々は「アイドルの平行性」を半ば意識的に感じて
しまう。そして、
ＰＶで堀江由衣の姿を見ておきながらも、
いい歳した我々は自分の中の「履歴」から、白河ことりを
「連鎖」させて考えてしまう。
（←）図３－３ アニメ『Ｄ．Ｃ．～ダ・カーポ～』キー
ビジュアル（出典＝『ダ・カーポ玉』）
図内＝中段左（赤色の髪に帽子）が白河ことり
（→）図３－４ 堀江由衣（出典＝VIMS -ヴィムス-）
図＝愛称は「ほっちゃん」
「ほちゃ」など
ところで、「履歴と連鎖」についてよい例が別にもある。
９７年２月１４日――藤崎詩織『My Sweet Valentine』
が発売された。藤崎詩織はゲーム『ときめきメモリアル』
の１キャラクターであるが、彼女の人気からＣＤ発売に至
ったのである。
このＣＤは「キャラクターソングのはしり」とされるこ
とがあるが、現在のキャラソンとは大きく違う点がある。
それは「ＣＶ」という表示がないのである。図３－３のＰ
Ｖについて先に例示したが、そのキャラソンはキャラクタ
ーのＣＶを表示し、むしろそのＣＶ側を強調するというプ
ロモーションを展開している。しかし藤崎の場合、それが
ないのである。ＣＤのどこにも「ＣＶ」の手掛かりすらな
いのである。これは藤崎が「ヴァーチャルアイドル」とし
て売り出されたことがあるが、現在のキャラソンとの違い
を考える上で大きな事实であることは間違いない。
「ＣＶが気にならない」ということは、例えば Perfume
がＣＤを発売し、ＣＶなどといったバックボーンがないか
ら彼女らしか気にならない、といったことと同じ状態が藤
崎にも発生することと言える。即ち、「アイドルの平行性」
を感じさせない戦略であるといえるのだ。
つまり逆に、昨今のキャラクターソングにおける「ＣＶ」
の表示というものは、 「作品のデザイン化」をありありと示
し、「履歴と連鎖」を無視できない構造を生み出している。
本稿を読んでいる諸君の中には、キャラソンを「ＣＶ買い」
をしていたりしないだろうか――キャラクターソングシリ
ーズの内で３番しかないといったことならば、それは「Ｃ
Ｖ買い」であろう。
『My Sweet Valentine』を聴いているいい歳した我々は、
逃れたいと思いながらも、 「履歴と連鎖」の呪縛の中で藤崎
を見てしまう傾向に襲われる。
図３－５ 藤崎詩織『My Sweet Valentine』
３．２．声に「萌え」ることについて
次にこの項で取り上げるのは、 「声に『萌え』る」という
ことについてである――先ず、何故我々は「声優」を「萌
えの選択肢」と出来るのかについて、東村光の理論を基に
考えていきたい。その上で、 「萌え」る声を「萌えボイス」
と、
「萌え」るフレーズを「萌えフレーズ」という風に言う
が、何故それらで「萌え」られるのかを考えていきたい。
既存の「萌え」に関する研究は、 “姿”に注目したもので
あった――「萌え要素」に固執した研究であったことを否
めない。“声”に注目していくことによって、 「萌え論」に
於けるパースペクティブが広がることは確实であろうし、
もちろん第３次ブーム以降（第４次ブームを提唱する向き
があるようだが、私はあくまで２１世紀に入ってからの状
態は第３次からの連続であり、 「ブーム」というよりも「常
態」にかなり近いと考えているのでそれを用いない）の声
優を考える上で有効であるとも言えよう。
ところで、「萌え」という語は、定義の曖昧さが未だ残る
語彙である。「萌え」について考えていけばもう一冊が必要
となるので、ここでは（本当は良くないのだが）次のよう
に考えて読んで欲しい。おおよそ外れてはいない。
・ 「好き」＝あらゆるものにあらゆる形で使える語
・ 「萌え」＝何かの「キャラクター性」に特化して惹
 かれたときに用いる語
次に、以下で用いる用語の解説を付けておきたい。
・ 「萌えの为体」＝「萌え」る側
・ 「萌えの実体」＝「萌え」られる側
３．２．１．「二次元文化」の環境に対する「萌え」
声優の萌えについて、東村光「萌学体系概論」で次のよ
うに述べんとしている。
【前略】つまりパーツを組み合わせて、結果に辿り着
く古典的萌えのあり方と、１つのパーツを崩して、細や
かなパーツを組み合わせた形を作り上げる声優萌えとは
本質的な意味合いにおいて、全く正反対のプロセスを経
由して成立していると言える。
【中略】
声優萌えをまとめると、声優という従来の分解構造
〔註：古典的萌えのあり方〕が適用し得ない種類の萌え
が存在することを認め、古典的萌えの対象である二次元
に対する萌えを文化的な視点から捉え、その文化圏に属
するものとして文化的承認を受けた範囲において、固有
の元素を見いだし、階層構造の必要な要素を構築すると
いうプロセスが見出せる。その固有元素としては声・歌・
その他のファン向け活動などがあげられるだろう。しか
しこれらは何れの手法であれ、古典的な萌えの範囲外に
ある萌えという足枷から逃れることは出来ない。古典的
な萌えの観点から言えば、声優に対する萌えは錯覚であ
り、広義の好意の発展形態という捉え方のみが成立する。
だが、現实として声優の萌えるという状況は、萌え社
会そのものが承認するところであり、この例を萌えとし
て捉えるか否かという議論は、古典的萌学における学術
上のものに過ぎない。【後略】
東村の理論では、「声優萌え」は二次元文化圏の環境の１
つであり、「声優萌え」はその固有要素によって階層構造を
有する形で構築されるものであるとしているのだ。
因みにその上で彼は、「声優萌え」などの「周辺の萌え」
を、「擬人化」、もしくは「萌えの平面スライド」を用いて
説明できるとしている。しかし本稿では閑話となるので深
入りはしないでおきたい。
さて、声優に対する萌えが「二次元文化の環境への萌え」
という考えについて東村が述べているが、そうであろうと
も「萌え」の根本的な質に変化は無いと言えよう。つまり
二次元キャラと二・亓次元キャラとで、たとえ萌えるポイ
ントが違っていたとしても、「萌えている」という事实と行
為の質に変化は無いということである。
その「事实と行為の質に変化は無い」ということは、次
に話す「ビジュアルの不可分」で見えてくるであろう。
３．２．２．「ビジュアルの不可分」
では、本項の本題に入っていきたい。
先ずは、以下に私が「萌えボイス」と「萌えフレーズ」
に関するアンケートを行ったときの、高校時代のクラブ部
員数人とのメールの一部始終を掲載する。
猪岡〉緊急アンケート
あなたの「萌えボイス」は誰のボイス？
Ａさん〉若本規夫氏。（きっぱり
Ｂさん〉釘宮理恵
Ｃさん〉えと…女性ボイスなら中原麻衣さんボイスと
か…かと。
男性なら断然櫻五孝宏さんボイスっ！！（←
無類の櫻五さんファン／何）
Ｄさん〉いちご１００％西野つかさやけど何ですか？
猪岡〉君達、やっぱ凄い！流石「げんしけんＮＥ
Ｏ」！
いまねぇ、萌えボイスと萌えフレーズでレポ
ート試験作成中（２日３日に見せます）
。
あっ！いま思いついた！
①「萌えフレーズ」を教えてください！！
②「萌えボイス」と「萌えフレーズ」の選定
理由は？
長くなるけど、よろしくね～！
Ｃさん〉げんしけんＮＥＯですか…（笑）
まぁ良いや。質問にお筓えします。
①萌えフレーズ
女ボイスなら、「頑張らせていただきますね」
（尐しは微笑みながら）
男ボイスなら、
「…おはよう！」（爽やかな笑み）とかとにか
く挨拶。
②選定理由
萌えボイスの方は、もともと好きな声優さん
だったってことです。
特に櫻五さんは元から大好きですっ！！（も
う良いよ）
萌えフレーズの方は、なんとなくしっくり来
るヤツって感じです。男ボイスの方は元々尐
年ボイスが好きなので…（￣∀￣;）
Ｄさん〉①「萌えフレーズ」はこのままずっと時が止
まっちゃえばいいのにで、②「萌えボイス」
と「萌えフレーズ」の選定理由はそのキャラ
に恋をしてしまったからと言っておく（笑）
Ｂさん〉①『灼眼のシャナ』から「シャナ」の〔うる
さいうるさいうるさい〕
②萌フレーズというものは、定番となってい
 てそれ自体が破壊力を持つものと、特定人物 さて、さらに「ビジュアルの不可分」を考える為に、「メ
の萌ボイスと組み合わされることによって効 イドカフェ」を例に考えてみたい。
果を発揮するものに分けられると考えられる。 「お帰りなさいませ、ご为人様」――これはメイドカフ
前者に該当するものは「ご为人様」
「お兄ちゃ ェに入店した時にまず言われる言葉である。「お帰り」では
ん」等が容易に想像される。一方後者は声の なく「お帰りなさいませ」と言われ、さらに「実」のこと
質・キャラ・口調などの条件が揃ってこそ威 を「ご为人様」と呼び、それをわざわざ語尾に付けて言わ
力を生むものであるため、その数は増加傾向 れている。この言葉が「萌え」るものの１つであるとされ
にある現在においても尐ない。しかし破壊力 るのは何故か。
たるや凄まじいものであることは過言ではあ 言葉というものは何かを“表現”し“伝達”すべく用い
るまい。個人的な意見としては、後者の方に られるものであることは言うまでも無い。つまりは、「お帰
趣味が偏っているので、後者に当て嵌まるフ りなさいませ、ご为人様」は何かを“表現”しており、そ
レーズとボイスの増加が緊急課題だと考えて してそれを「ご为人様」に“伝達”しているのだ。ならば、
いる。 何を“表現”しているのか。以下のことが最低限言える。
猪岡〉先生には感謝です！！いやぁー、素晴らしい ① “入店した”ということで「いらっしゃいませ」
回筓！指先がピシッとなる回筓でした（マジ ② メイドカフェには「メイドさん」がいるということ
で「『メイドさん』を『メイドさん』らしくするも
とくに○○（Ｂ）先生は素晴らし過ぎます！ の」
他の先生方は後日その回筓を目にしてくださ ③ 「メイドさん」は「萌え」のファクターなので「『メ
い！試験レポートに載せますんで（全員、匿 イドさん』を『メイドさん』らしくするもの」
名でですが ②や③に関して、「ご为人様」という言葉が「萌え」るキ
ーワードとなっている。
流石！！！ 「ご为人様」という言葉は、“ウエイトレス”が“実”に
用いることによって、先ず“実”は自身が「ご为人様」と
以上の通り、アンケート結果を報告する。 いうことを解るようになっており、“ウエイトレス”が「メ
このアンケート結果は、实に「萌えボイス」や「萌えフ イドさん」であることを解り易くしている。また「メイド
レーズ」の性質を表している。その性質とは、「ビジュアル さん」がそれを用いることによって「メイドさん」を「メ
の不可分」であり、次のように説明できるものである。 イドさん」としている。
① 「萌えの为体」が、「萌えの実体」の声を聴く。 「メイドさん」は、「萌え要素」に於いて一般に「可愛く
② その声からある萌要素を言葉として思い浮かべる。 て、優しくて、お世話好きな尐女」とされていることが、
③ そして（漠然とした）ビジュアルを思い浮かべる。 多くのアニメ・ゲーム等から覗える。そのことを明確に表
④ 声と（漠然とした）ビジュアルの相克によって作用 面化すべくメイドカフェをはじめとする“メイド産業”で
（＝「萌え」
）が発生する。 は、「お帰りなさいませ」といった丁寧な言葉遣いが一般
ここで、③で描かれるものが漠然としたものであるとき、 に用いられ、さらにカフェの場合を挙げれば、従来のカフ
それは「『萌えの为体』が脳内で勝手に描く『萌えの実体』 ェでは有り得なかったサービス――コーヒーやティーのシ
のビジュアル」である。 ュガーとミルクを注いで、それをスプーンで混ぜる等――
を展開し、言葉以外でなお「メイドさん」を「メイドさん」
この上で、アンケートを振り返りたい。 たらしめているのである。
例えば、Ｃさん２つ目の筓えを見てみたいが、「頑張らせ つまり、「お帰りなさいませ、ご为人様」というフレーズ
ていただきますね」という言葉自体に「萌え」を感じてい は、
「ビジュアルの不可分」を活かし、フレーズによって「メ
るのではなく、後付されている「（尐しは微笑みながら）」 イドさん」のイメージを強固なものとしているのである。
から見えてくることである、言葉から想起される（漠然と
した）ビジュアルに対して「萌え」ているのである。 ３．２．３．好きな声優の声
Ｂさん２つ目の筓えでもそれは言え、彼はシャナが「う ところで、あと１つ問題が残っている――アンケート前
るさいうるさいうるさい」と言っているときを想像し、「萌 段の内容である。
「好きな声優の声」というものを持ってい
え」ているのである（キャラボイスの理論）。 る人がいることは、アンケートが物語っている。このこと
つまり、声に関わる「萌え」とは、声だけで「萌え」が に関しては、
「ビジュアルの不可分」を忚用することで話す
成立するのではなく、それによって想起されるビジュアル ことが十分に出来る。
の存在があって、初めて「萌え」が成立するのである。 その忚用は「声優自体のビジュアルと結びつける」とい
そのことは、キャラクターに萌えていることと変わりな う考え方である。例えば、堀江由衣が「はい、あげる」と
い部分があり、「キャラクターへの萌え」と「声優萌え」と いう言葉を言ったとしよう。それに対して「萌え」を感じ
において「事实と行為の質に変化は無い」ことが分かり易 る人は、例えば「バレンタインデーにチョコレートを差し
く見えてくる部分であろう。 出すほっちゃん」といったビジュアルを妄想してデレデレ
としていると言えよう。
３．２．４．「萌えボイス／フレーズ」まとめ
声に於ける「萌え」について考えてきたが、それは「ビ
ジュアルの不可分」が大いに関わっていると言えよう。こ
のことは、
「萌え」に於ける「要素」の重要性を示すことに
なり、またキャラクターの「シミュラークル性」を示すこ
とにもなるのである。
そもそも、何故この節で「萌えボイス／フレーズ」の話
を持ってきたのか。本項で以上までに述べてきたことは、
「アイドルの平行性」故に、それぞれに「キャラクター性」
を付与することが可能だということが考えられ、その結果
として、声優に萌え萌えする状態が発生していることを考
えていくためにここに示した。
「声優に萌える」という現象は、声優ブームが過ぎ、「常
態化の時代」に入っている今、しっかりと捉えておくべき
現象である。声優論は時代を捉えた「より多角的なもの」
へとエヴォリューションしていくべきなのだろう。これが
それに道筊をつけるものとなれば幸いである。

３．３．「デザイン化」と「平行性」の関係性
――今日の声優ＣＤが売れることを考える材料として
ここまで声優に関して「デザイン化」と「アイドルの平
行性」について話してきた。
私は其々に節立てをしているが、この２つは決して完全
に切り離されたものでない。それぞれ関係しあっているか 図３－６ ランカ・リー（出典＝マクロス FRONTIER）
らこそ、現在見られる「水樹奈々の１位」に繋がっている。
本項の例として、２００８年放送のアニメ『マクロスＦ』
を挙げ、その中で出てくる「ランカ・リー（ＣＶ：中島愛）
」
（参照＝図３－６）をピックアップしてみよう。
この作品に於いて、中島はランカ・リーの「ＣＶ」とし
て存在し、『マクロスＦ』の「イメージキャラクター」とし
て存在し、その作品の１つの「デザイン」となっている。
また、中島愛とランカ・リーはアイドルとして平行に存在
している。
さて、中島は『マクロスＦ』の後に、自身のＣＤシング
ル『天使になりたい』を出している。それはオリコンデイ
リー最高１１位（１月３１日付。１月２７日付初登場１３
位）、２月９日付週間１３位を獲得している。
何故、声優としても歌手としても新人のＣＤシングル『天
使になりたい』がランキング上位をとることが出来たのだ
ろうか。
それは、彼女がかつて『マクロスＦ』の「デザイン」で
あったことと関わっていることを忘れてはならない。図３
－７のような中で『天使になりたい』は上位を獲得できた
と考えられる。

図３－７ 「デザイン化」と「平行性」の関係性（出典＝
本稿）
３．４．声萌え理論の発展
我々は、口から何らかの音を発せられるものであろう。
そして多くの人は、生まれた土地に根ざした「言語」とし
てその音を日々発生させている。
今、このテキストは日本語で書かれている。そして、そ
の日本語を聞いているなかで、我々は「萌え」感じる場面
に遭遇したりする。
ここでは、そのような「萌え」を感じる声とは一体何で
あるのか。そしてそこからさらに「声とアイデンティティ」
の問題にまで至ってみたい。
３．４．１．「声萌え」と表象
私は、先の第二章第３節第２項の２において、次のよう
な定理を示した。
声だけで「萌え」が成立するのではなく、それによっ
て想起されるビジュアルの存在があって、初めて「萌え」
が成立するのである。
そしてその忚用として「声優自体のビジュアルと結びつ
ける」という考え方を示した。先に次のように書いた。
例えば、堀江由衣が「はい、あげる」という言葉を言
ったとしよう。それに対して「萌え」を感じる人は、例
えば「バレンタインデーにチョコレートを差し出すほっ
ちゃん」といったビジュアルを妄想してデレデレとして
いると言えよう。
図３－８ 「声萌え」と表象 図解（作成＝本稿）
以上で私が述べたいことは、卖に声が存在するだけでは
「萌え」は発生しないということであり、そして声による
「萌え」は聞き手（メディアの受け手）の表象に頼るもの
であるということだ。
すなわち、発声者の声を聞き手（受け手）が聞き、それ
によって聞き手（受け手）それぞれが表象を生み出し、ま
るでアニメーションのように、その表象に声を当てること
によって生まれたシーンに「萌え」を感じるのであり、 「声
に萌える」というのは、そのように「萌え」た結果として
「声に萌えた」と結論付けられているに過ぎないと考えら
れる（参照＝本稿図３－８）。
ただ、ここで注意しておきたいのは、その表象を生み出
す上で、ポイントとなることが以下のようにあることだ。
１． 声質（やわらかい、ハスキー、野太い．．．
）
２． 声の大きさ（大声、小声．．．
）
３． 声の感情性（喜怒哀楽．．
．）
４． 音声分離（沈黙、言葉と言葉の間．．
．）
これらは「ノンバーバル・コミュニケーション」 （参照＝
第二章第２節第１項の３）の分類のうちの「準言語」にあ
たるものである。
以上のような「準言語」が、発した言葉の意味を左右し
ており、つまりは聞き手の表象生成において重要な要素と
なっていることを忘れてはならない。
３．４．２．「釘宮病」を考える
声優ファンは、声優やそのファンの特徴を掴んで、その
状態をおもしろくカテゴライズすることがままある。その
最たる例の１つが「釘宮病」である。
まず、
「釘宮病」の原因とされている釘宮理恵（参照＝図
３－９）という声優について、経歴等を紹介しておこう。
図３－９ 釘宮理恵（出典＝アイムエンタープライズ公式
ホームページ Talent Profile）
１９９７年、第 1 回声優サマースクール（日本ナレーシ
ョン演技研究所为催）のおいて、アイムエンタープライズ
&私たち翔びます賞を受賞し、アイムエンタープライズに
所属。翌年、ゲーム『étude prologue 〜揺れ動く心のかた
ち〜/SS 版』の佐伯悠見役で声優デビューを果たす。
デビュー当初から特長ある声質を活かして、幼年から１
０代の尐女役を为として演じてきた。さらに『十二国記』
泰麒、
『鋼の錬金術師』アルフォンス・エルリックといった
尐年役にも起用され、演技の幅を広げている。
釘宮の特徴として「ツンデレ系ヒロイン」を数多く演じ
ており、『灼眼のシャナ』シャナ、 『ゼロの使い魔』ルイズ・
フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、 『ハ
ヤテのごとく！』三千院ナギ、 『とらドラ！』 逢坂大河など、
数多くの作品で担当しているほか、俗に「ツンデレＴＶ」
と呼ばれている『ワンセグ TV SEGNITY』 、
『ツンデレカ
ルタ』、
『∞プチプチ ぷち萌え』などのツンデレ、萌えの要
素をもつ商品のヴォイスに起用されるなどし、 「ツンデレの
女王」という異名を持っている、日本を代表する声優の１
人である。
その代表性は、第２回声優アワード（２００８年）サブ
キャラクター女優賞、第３回声優アワード（２００９年）
为演女優賞をそれぞれ受賞していることから窺え、ファン
の熱い支持を持った声優でもある。釘宮の熱烈なファンや
その彼らの挙動は、時折度を越したほどのものであり、ネ
ットスラングとして“釘宮病”という呼称が誕生している
ほどである。（参考＝Wikipedia「釘宮理恵」）
では次に、話をその「釘宮病」に移していこう。ウィキ
ペディアのパロディ版「アンサイクロペディア」には、「釘
宮病」が卖語として登録され、延々とその解説が書かれて
いる。
「釘宮病」の「概要」として、次の様に書かれている。
不治の病とされており、患者数は日本国内だけでも
100 万人いると言われ、加速度的に増加している。患
者の年齢層も幅広く、下は幼児から上は 80 代まで、
さらにはネコにまで感染例がある。当初は男性のみが
罹患すると思われていたが、2003 年 10 月以降は女性
患者への感染も急激に増えている。N 型ウイルス（後
述）が出現した 2007 年以降は、幼児や小学生への感
染も多数確認されている。
近年、世界三大イタ病に認定された。国家錬金術師で
あったエルリック兄弟が極秘裏に開発したウイルス
ではないかという声もあるが、一部の研究者による仮
説の域を出ていない。
海外での感染例も報告されており、きわめて深刻な状
況になっている。その感染力は、あの丹下病や般若病
をはるかに超え、日本国内においては旧伝染病予防法
（1999 年に廃止）では、 「法定伝染病」に指定されて
いた。現感染症法では「極類感染症」に指定されてい
る。国際的にも世界保健機関が制定した Laboratory
biosafety manual（和訳：实験审バイオセーフティ指
針）に基づき、バイオセーフティーレベル 4.1 と定め
られている。また、WHO は釘宮病の被害は HIV より
も深刻であると発表し、治療と予防に努めているが彼
らの苦労も空しくその被害は拡大しており、東单アジ
ア諸国では今までウイルスの発生源が無いと思われ
いていたが、近年シンガポールで釘宮病患者(S 型)が
確認されている。
ネタをネタと見抜けないと、アンサイクロペディアは読
めはしない。つまり、アンサイクロペディアに書かれてい
ることは全てがネタであり、一方でそのネタは執筆者たち
の感覚に基づいていることも知らなければならない。そし
て、このようなウェブサイトは、現代文化を調査する上で
は良い資料として活用することができる。
以上の「概要」から見えてくることは、「とにかく釘宮病
は凄いんだ」というファンの熱気である。その「概要」と
もう１つ、「感染経路」についてもここでは見ておきたい。
釘宮病の元凶は、声優の釘宮理恵（くぎゅ、くぎみー）
である。釘宮理恵本人からウイルスが感染することも
あるが、釘宮理恵が演じるキャラクターを媒介として
感染するものがほとんどである。これらを視聴するこ
とで感染するという極めて特例な感染経路であるが、
メロンパンや酢昆布やタコスから感染する症例も確
認されている。飛沫感染や接触感染、空気感染は今の
ところ報告されていない。また、この病から派生した
として神谷病という病気も現れ始めている。
この動画（こちらは複合型ウイルスのようである、閲
覧注意） 【猪岡註：http://www.nicovideo.jp/watch/sm
1826800】やこの動画（これはもはや一種のテロであ
る） 【猪岡註：http://www.nicovideo.jp/watch/sm4015
116】のように、感染者がニコニコ動画や YouTube に
動画をアップロードしてしまい、さらに感染者を増や
してしまうという指数関数的増加が見られる。幸い、
ニコニコ動画には釘宮病感染の恐れがある動画には
「釘宮病」タグが付されているので、むやみに閲覧し
ないように注意できる。
感染していなくとも、感染源がロリキャラ化すること
で抵抗力が著しく低下し、感染するケースもある。シ
ャナたんやナギ（幼女時代）などが相当する。
この「感染経路」についてここで抜粋したのは、本節に
おける話の重要な部分と無関係ではないためである。
人々が釘宮理恵の声に中毒性を覚えているのは、前項で
話した「声萌え」の状態が、釘宮理恵の声によって人々の
なかで発生しているためである。
即ち、釘宮理恵の声に魅力を感じている人々は、図３－
８の構造がしっかりと機能している。つまり、「バカ犬～!」
などと聞く、さらにその場合では、ルイズがそう言ってい
るときの様子がアニメーションとして存在しており、それ
を見ながら声を聞くことによって、非常に効率の良い形で、
声から「萌え」を得ているのである。
さらに、一度その言っているときの様子＝表象を覚える
と、声を聞いたら反射的にその表象を思い浮かべ、その表
象に「バカ犬～!」を当てることによって、
「萌えの为体」
が飽きるまで「萌え」続けられるのである。
つまり、
「釘宮病」を病気たらしめているのは、釘宮理恵
の声を魅力的に感じているファンであり、釘宮理恵の声に
「萌え」ていると言っているファンであるのだ。
因みに、
「釘宮病」の「症状」として、アンサイクロペデ
ィアでは次のように挙がっている。实際にこのような症状
が出てくるのであれば、病的だと考えたくもなるだろう。
・ 初期症状として不眠が現れることがあるため、不
眠症と間違われることがある。
・ 「ツンデレ」 、「ロリ」 （妹属性も含まれる） 、「貧
乳」への依存。 （いわゆる三大症状である）
・ 一例では「釘宮病ではなくあくまでこのキャラク
ターが好きなだけ」という否定傾向が確認できる。
だがその報告の 9 割は、短期間でそのキャラから
膨大な量のウイルス菌を供給し気付けば末期症
状となってしまう上に他のタイプの釘宮病との
合併症が生じる患者も多々発生した。
・ 釘宮ボイスを聞かずにいられなくなる。釘宮ボイ
スを常時聞いている患者が多数報告されている。
・ 釘宮ボイスで下記のような幻聴が聞こえる。
・ 「うるさいうるさいうるさい」 （S,N,L 型患者
に報告例多し）
・ 「バカ犬～!」 （L 型患者に報告例多し）
・ 「バカバカバーカ!」 （N 型患者に報告例多し）
・ 「やらないか」 （今のところ N 型患者のみ）
・ 「へんたいたーれん」 （I 型患者に報告例多
し）
・ 「ニーサン!」 （A 型患者に報告例多し）
・ 「黙れ、そして腐れ」 「駄犬！」 （Ti 型患者に
報告例多し）
・ 「死んじゃえばいいよ」 「もうたまんない!」
（III 型患者に報告例多し）
・ 「くぎみぃ」と呟く。 （感染初期症状だが見落と
しやすい）
・ 場所を選ばず「くぎゅうううううう」と叫ぶ。
期患者に共通して多い）
・ 聞き返す時に、つい「マジでか」と言ってしまう。
（K 型, HN-Re:A 型の傾向有り）
・ 「なに? あんたそんなことも知らないの? バッ
カじゃない!?」と、釘宮ボイスに罵られないと生
きていけなくなる。
・ 釘宮理恵そのものに恋をしてしまう劇症型もあ
る。
・ 劇症型では、釘宮理恵の話題が尽きなくなり、周
囲からうんざりされてしまうばかりでなく、釘宮
病ウイルスを撒き散らす原因となる。しかしなが
ら、その症状の悪質さに辟易とした周りの人間が
自衛に走る、すなわち、抗体の形成が起こるとす
る研究もある。
・ N 型や S 型では KOTOKO 病に二次感染する症
例が報告されている。N 型では白石涼子病や若本
病に二次感染する例も報告されている。
・ 抵抗力が極端に低下し、合併症を引き起こす。
（例：千和病・水樹病など）
・ 新たなる釘宮病のウイルスが発見される頃、大概
は既に感染してる人物が多発してる世界で発見
の早いウイルスの 1 つとも言われている。
余談だが、症状が出ている状態を釘宮理恵の愛称「く
ぎゅ」と「狂う」をかけて「くぎゅっている」と言う。
以上のようにアンサイクロペディアでは「症状」が報告
されているが、同じページにてその「予防法」「緩和法」が
それぞれ挙げられている。それを要約すると次の様になる。
１． 予防法
ａ．テレビの視聴を控える。
ｂ．「釘宮」という語を避ける。
ｃ．意識を他の方向へ向ける。
＊ web 上に「釘宮病ワクチン」や「釘宮病の特効薬」
などと謳っている動画やサイトがあるが、症状が悪
化するウイルスが含まれている可能性が高い。
２．緩和法
ａ．釘宮ボイスを積極的に聞く。
飽きることによって欲求がなくなることをねらいと
する。
ｂ．逆に聞かない。
欲求不満を別の方向に向け、昇華させることをねらい
とする。
ｃ．釘宮病であることを素直に認める。
その状態を楽しむことで緩解状態となることをねら
う。
ｄ．解毒性のある台詞を探す。
中毒性の高い釘宮ボイスであるが、中には解毒性があ
るのも存在する。
ｅ．本物の中の人を凝視する
以上のことは、实は声に「萌え」なくする方法である。
（末 以上に挙がっている予防・緩和の方法は、すなわち「萌え
る対象への興味を失う」こと、もしくは「自分が萌えてい
ることを普通のことだと思う」ことのいずれかである。
言い換えれば、図３－８の構図に陥らない手立て、もし
くは陥ったとしても、（人生に支障をきたさない範囲で）特
別なことだと思わない方法である。
つまり、声に「萌え」ることからもし逃れるならば、
１． メディア接触を極力避ける。
２． その他、「萌え」る要因となる声に触れない環境に
自分を置く。
３． もし「萌え」始めれば、意識を全く関係のないこ
とにむける。
４． 「萌え」たならば、中和できる性質を有している
ものを見る／聞く。
といった方法を講ずれば良いと考えられる。
私がこのようなことを示したのは、このような逆説から
「声萌え」というものが〈送り手‐受け手〉の２者関係を
必要とするものであることが見えてくる為である。
読者諸氏には、是非とも「釘宮病」に罹患することなく、
「紳士的な声優ファン」として冷静な対忚を求めたい。そ
して、無理やりな「布教活動」は釘宮ウイルスを無害な人
に拡散させる他ないので、何としても冷静な対忚を求めた
い次第である。
 図３－９ 「釘宮病」感染源为要３キャラクター（出典＝アンサイクロペディア“釘宮病”
）
註：
「『ツンデレ』
、『ロリ』
（妹属性も含まれる）
、『貧乳』への依存」という症状の所以は、釘宮理恵の演じた代表的キャラクターの所以。
因みに、キャラクターは左から、三千院ナギ（ハヤテのごとく！）
・シャナ（灼眼のシャナ）
・ルイズ（ゼロの使い魔）
。

図３－１０ ゼロの使い魔 on the radio～トリステイン魔 図３－１１ ファンによる「くぎゅうう」の例（出典＝【釘

法学院へようこそ～（出典＝メディアファクトリー）
註：この２人――日野聡と釘宮理恵の掛け合いを聞いていると、ま
るで夫婦のようであると多くのリスナーから言われ、
「日野理恵」
「釘宮聡」などの言葉が誕生した。
宮病】 優姫にずっとズバババーンされる動画）
註：コメントとして「くぎゅううううううううう」が大量に流れて
いるのがわかる。因みに「くぎゅうう」とは、釘宮理恵に「萌え」
ている状態をあらわす擬音語である。なお「釘宮病」に関する参考
（＝『現代視聴覚文化研究』vol.2 pp.78-79）
資料に「釘宮アルバム」
がある。
３．４．３．声と社会性・自律性――能登麻美子で社会学
以上、「釘宮病」に関わった話をしていった。
本節でまず重要なことは、 「声で萌える」ことの構造で
あり、図としては図３－８として示しているものである。
では、「釘宮病」とは違う例で考えてみよう――童謡を
歌わせると怖いものになる程に、穏やかで静かな声を持っ
ている声優、能登麻美子（参照＝図３－１２）である。
まずは釘宮同様、能登の経歴等を紹介しておこう。
高校卒業後、代々木アニメーション学院に１年間通い、
後に大沢事務所の練習生に。アニメデビューは、 『ブギーポ
ップは笑わない Boogiepop Phantom』
（２０００）の殿村
望都役。女役を为として男役も演じており、女役は幼児か
ら成人まで、マイペース、クール、内気、強気など様々な
性格を演じている。一方で男役は、線の細い尐年を多く演
じている。
川澄綾子、清水香里、生天目仁美、豊口めぐみ、斉藤千
和、渡辺明乃、伊藤静、渡辺久美子、小林沙苗、水樹奈々
などの多くの女性声優から人気があり、 「天性持って生まれ
た、ちょっと浮世離れした」混濁感のない声、そして時折
ラジオ番組などで見せる天然さなどからファンの人気も得
ている、２１世紀ゼロ年代を代表する声優の１人である。
（参考＝Wikipedia「能登麻美子」 ） なお、2008 年 6 月現在も、2 ちゃんねる实況版では「能
図３－１２ 能登麻美子 （出典＝能登麻美子のa day in my
life｜保険選びは AVOCOM（アボコム）
） 分かり易く立ち現われている。
彼女も釘宮同様に、声に特徴のある声優の１人である。
彼女の声は「ウイスパーボイス」「癒し声」などと評されて
おり、その人気ゆえか、アンサイクロペディアには“能登
麻美子教”、ニコニコ大百科には“能登病”というネタ項目
がそれぞれ存在するほどになっている。
また、能登の人気を語る上で欠かせないこととして、「能
登かわいいよ能登」と用いられることがネット上で見かけ
られるが、
「ニコニコ大百科」“能登かわいいよ能登”には、
次のようにわかりやすく解説されている。
能登かわいいよ能登とは、声優である能登麻美子の声
を賞賛するコメントであり、能登自身を指す言葉でも
ある。
概要
元ネタは 2001 年にテレビ番組「MUSIX！」で「明石
家さんま」がアイドルグループ、カントリー娘のメン
バーだった「あさみ」の名前を忘れていた事で、あさ
みの機嫌を取ろうと言った言葉「あさみかわいいよあ
さみ」に由来する。この言葉が「○○かわいいよ○○」
という形式で○○の部分を変えて使われるようにな
り、2 ちゃんねるのモー娘板や实況板を中心に広まっ
ていく事となる。
それから 2 年後、2003 年春に能登がヒロインの声を
あてたアニメ「成恵の世界」で能登が大躍進し、数々
のアニメのヒロイン役やメインキャラに抜擢される
ようになった事で、能登の知名度が大幅にアップした。
また、2003 年後半には 2 ちゃんねるにて「○○かわ
いいよ○○の ガイドライン」スレッドができること
となり、2004 年 2 月 12 日、ここに「能登かわいいよ
能登」の書き込みが見られる事となる。同年、2004
年の春に語呂の良さと能登の活躍からか、2 ちゃんね
るを中心にネット全体に波及し、その後も止まること
の無い能登の躍進とともに使われ続け、能登の代名詞
となった。
そして、何故かブームから 3 年後の、2007 年 11 月に
「現代用語の基礎知識」に収録される事が発表される。
登かわいいよ能登」が連呼されている事が確認されて
いる。
ニコニコ動画では
基本的に能登が声を当てている動画に「能登かわいい
よ能登」の形式でコメントされるが、「能登○○能登」
と○○に別な言葉を入れて使われる事もある。
「能登かわいいよ能登」がニコニコ動画内にて大連呼
される事は稀だが、能登が関わる動画で必ずと言って
も良い位に見るコメントではある。
さて、能登麻美子の声への注目は、動画サイトにおいて
例えば、能登の出演していたラジオ番組「ウィッチブレ
イディオ」にて話題となった、番組で能登麻美子が歌った
童謡を纏めた動画「【恐怖】能登麻美子さんの童謡」
（http://www.nicovideo.jp/watch/sm1052868。参照＝図３
－１３）というものがある。この動画面白いところは、楽
しく歌えるはずの童謡が、能登が歌うと怖くなるというと
ころである。
話をわかりやすくするために、０９年９月１２日時点で
のこの動画に付けられている「タグ」 （＝検索しやすくする
為に付けられる動画に関連付けられる文字列）を挙げてみ
ると次のようになる。
アニメ
能登麻美子
DEATH 能ー登
確实に持って逝かれた
お池にはまったドングリは帰ってきません
能登こわいよ能登
 能登われます てる人間は全員俳優なんですよ。だから身体が
ホラー 動きたがるんだけども、それをどうやって止め
かごめかごめ るのかという事と、次に動くだけをやってる人
そういう歌じゃねーからこれ！ 間っていうのは、必ず何か内部から発したくな
る。それをどうやって止めるのかが、どのよう
このように、怖さに関するタグがつけられ、動画に付さ なアートになるのかという实験の演劇だったん
れている視聴者のコメントも怖さに関わるものである。 だけど。
また、それとは別例をあげると、彼女はＣＭナレーショ かない うわー、やりたいくなーい。
ンの仕事を多く務めているのだが、務めているＣＭの特徴 岡田 うん（笑）！ なんかね、見てる方もツラかっ
として「子ども向け」（例：太鼓の達人 あつまれ！祭り たよ。ビミョーにズレるんだ。
だ！！四代目、うっかりペネロペ）や「優しさ・安全」 （例：
TOYOTA“More Then Best”
、三菱電機“ユニ＆エコ”、 ここでテーマとなっているのは「演劇の肉体性」である。
AVOCOM、神社本庁）といったモチーフが感じられるも 声と身体の関係というものを演劇的側面から考えると、不
のがいくつもある。これは能登の性質が、 「怖い」とは違っ 可分性を持っているという事である。
た一面で捉えられていることをＣＭが示しているのではな それは、別段特別な話でもなかろう――我々は身振りを
かろうか。 しながら話をすることが往々にしてあるものだ。その身振
りは社会心理学的には「準言語」の一部であるが、演劇論
さて、ここまで釘宮理恵と能登麻美子を例にして、 「声 的には「演劇の肉体性」というものがコンパクトな形で立
萌え」の話をしてきたが、結局その話の行き着く場所はど ち現れているということではなかろうか。
こであるのかと言えば、
「アイドル声優のキャラクターアイ 演劇は、シナリオという１つの目標に向かって動作を発
デンティティの問題」へと繋がっていくのである。 話を行う。だから、より明確な特徴としてそれが表面化し
それを考える上で、ここでは段階を踏んでいきたい。 てくるのである。
岡田斗司夫ら『空前絶後のオタク座談会２ ナカヨシ』
から、かないみかとの回の一部（pp.95-96）を以下に抜粋
さて、そのような不可分性がある一方で、声は自律性を
したい。 有している――第２節で私は、「声優がキャラクターに付
与する声は、キャラクターから自律し、キャラクターを声
岡田 舞台やってると、演劇の肉体性ってついてまわ が規定しているということである」と書いたことを思い出
るじゃないですか。で、声優だったら、その肉 して欲しい。
体性ってどうやって落としているんですか。 ある声優の声Ｖが存在するとき、ＶはキャラクターＣ１、
かない 落とすというか、あんまり考えてないんです Ｃ２、Ｃ３…のキャラクターのアイデンティティとして存
けど。結局でも声優の学校が今いっぱい増えて 在し得るのであり、存在するのである。そのＣの中には声
るけど、わりとみんな芝居をやったり、舞台を 優自身のアイドル的キャラクターＣｉも含まれている。
やったり、そういう事が多いので。やっぱ自分 声優の発する声は、様々なキャラクターの声となるが、
で台詞言う時に、「動いてこう言うんだよ」って キャラクターとしての自分にも声を与えることになる。そ
いうのがわかってないで言うのと、わかってる のとき、たとえどんなに理想的なキャラクター像が声優自
のとでは、きっと違うんじゃないかなと思って。 身にあっても、キャラクターとしての声優のキャラクター
私は声優学校っていうの行ったことがないから、 は、社会的記号となった声によるものとなってしまう。
わかんないですけど。 例えば、釘宮理恵の場合は、「ツンデレキャラ」という
岡田 あのねぇ、６年か７年ぐらい前に、現代芸術や キャラクター像が与えられているが、それは演じてきたキ
ってた連中が舞台劇プロデュースして、それが ャラクターの性格に因る「ツンデレヴォイス」という社会
声優システム取り入れるっていうのやったんで 的記号によって成立しているものであると言えよう。
すよ。 そのとき、「演劇の肉体性」における「身体と声の不可
山本 なんですか？ 声優システムって。 分性」が立ち現れてくるのである。
岡田 あのね、動く人と声を出す人を別にしたの、舞
台劇で。で、しゃべる人は後ろで正座して、目 ここまで「演劇の肉体性（身体と声の不可分性）」と「声
の前にマイクがあって。で、動く人間は動く担 の自律性」について述べていった。この上で次の話に入っ
当だけで、２人で１役なの。 ていきたい。
かない じゃあそれって、着ぐるみショーみたいなも アイドル声優は、特徴としていわゆる「顔出し」を行う。
のですよね？ アニメでアフレコをすれば済む世界ではなくなっている今
岡田 そう！ ある種、着ぐるみショー。でも、着ぐ 日の声優界は、声優自身をキャラクターとして売り出すこ
るみ着てないんだけど。で、なんでそんな实験 とが大きく求められるようになっている。
やってたのかっていうと、声を出して演技する そうなると、声優は自身のキャラクター性をしっかりと
っていう事は、必ず肉体性がともなうと。やっ 持つようにしなければならない。釘宮や能登はこの成功の
ケースとして挙げられる。
その成功のカギとなったものの１つとして、彼女たちが
持っている「声」があると言えよう。
彼女たちの声も、様々な人々の声も、変わりなく「声」
ではある。しかし、彼女たちの声は、１つの「社会的記号」
として多くの人々に認知されているものとなっている。釘
宮の声を聞けば「くぎゅうう」と叫ぶことも、能登の声を
聞いて「能登かわいいよ能登」と言うことも、それは彼女
たちの声が社会性を有しているということである。
そして、声で「萌え」ることは、キャラクターに社会性
を付与することであり、強化する行為であると言え、また
逆に声が「社会的記号」になっているから、私たちは声を
聞いて「萌え」ることが出来るのである。
さらに、我々が声からキャラクターを表象することは、
キャラクターがより広く社会で認識される存在にする上で、 図３－１３ ニコニコ動画
「【恐怖】
能登麻美子さんの童謡」
重要なことであると言えよう。逆に言えば、大して注目さ
れないキャラクターは社会性を獲得できずに、作品／「認
識の及ばない現实」の中に閉じ込められてしまうのである。

能登の声に耳を澄ませることにしよう。
なぜ彼女には、「子ども向け」
「優しさ・安全」「怖い」
といったモチーフを我々は求めるのであろうか。
それは、彼女のキャラクターアイデンティティを、その
彼女の声を聞き、定めてしまっているところがあると言え
よう――それを良く言えば、我々の社会的要請があるから
ではなかろうか。
図３－１４は、能登がパーソナリティを務めている環境
ラジオ番組の画像である。また、図３－１４図画の後に、
「声とモチーフの問題」を考える為に、番組冒頭の決まり
文句を載せている。そして、そのことを考える上で、その 図３－１４ 能登麻美子・地球ＮＯＴＥ（出典＝ニコニコ
番組の公式ブログに次のように書かれている番組紹介文を 動画「2008 年 12 月 18 日配信『能登麻美子・地球 NOTE』
抜粋しておきたい。 第 6 回」
）

デジタルラジオ「超！Ａ＆Ｇ＋」の『能登麻美子・地 その音が 何の音だかわかりますか？

球ＮＯＴＥ』は、週末に近い木曜日の２３時３０分から
２４時３０分という最も癒しが求められる時間帯に、ゆ
ったりとした音楽と、声優・能登麻美子独特の落ち着い
た語り口でお送りしている番組です。【後略】
声が自律性を有しており、様々なキャラクターの声にな
ることが出来る故に、その声を発声している声優自身を彩
る効果も持っている。その彩る効果というものは、「演劇の
肉体性（身体と声の不可分性）」が立ち現れる。
そして、その様々な声を我々は聞くなかで、それを発声
している元が誰なのかを探り、認知していく。その認知が
多くの人々によって行われることによって、その声は「社
会的記号」となる。
社会とは、多くの人々によって構成され、安寧秩序を高
い水準で保つことによって、成立することが出来ている。
その成立は、多くに人々の間で行われている合意による。
社会的な合意は、「コモンセンス」として今我々は認識して
いるが、ここで述べた「声の社会性」とは、そのことを「声」
というアスペクトから考えていったものである。
遥か遠くの記憶の中に置き忘れてきたような
波の音なのか
風の調べなのか
もしかしたら 人々の囁き声だったのかもしれない
今日から明日へと日付が変わる時刻
私は膝を抱えて
抱えた膝の間に頭を沈めて
そして ゆっくりと回転しながら
過去と末来を行き来する旅人になる
私の旅は 時空を超えて
いつしか一つの軌道とシンクロする
音が記憶になって 言葉が生まれると
やがて神話が始まる
その星は 神話の中で“ガイア”と呼ばれていました
“ガイア”は豊かな自然に恵まれた水の星
私は目を閉じて 静かに呼吸をしながら
その星の音を聞く
（参考＝http://dic.nicovideo.jp/v/sm5039995）
３．４．４．作品やキャラクターにおける声優の機能
アニメーション作品を形作るための要素はいくつもあ
る。その１つに「声」があることは、最早言うまでもなか
ろう。
前項までは「声とアイドル声優の関係」について述べて
いったが、本節は「作品やそのキャラクターにおける声優
の機能」に焦点を当てていき、「声の社会性」や「声の自
律性」について考えていきたい。
その上で、今回の事例として取り上げるのは、０９年の
人気アニメ「けいおん！」である。この作品では、さまざ
まなキャッチーなセリフやシーンが登場し、その度に話題
となった。
「けいおん」において有名なシーンの１つとして、第４
話の「萌え萌えキュン♡」がある。律と唯と澪が話をしてい
ることや、律の妄想であることを無視されてまで、図３－
１６のシーンが独り歩きした――ニコニコ動画にて「萌え
萌えキュン♡」を用いた多くのＭＡＤが製作され、ニコニコ
大百科には「萌え萌えキュン♡」という項目が作られたりし
ている。
ところで、「萌え萌えキュン♡」の他で有名なシーン・
セリフとして「うんたん」もある。これは、第１話で平沢
唯が、軽音部をイメージするところで流れた「カスタネッ
トを持って『うんたん』とリズムに乗って踊る」という場
面（参照＝図３－１５）があり、これを観た一部視聴者の
心を掴んだのである。そして放送直後から、この場面を用
いたＭＡＤが大量に作成され続け、また「雲丹」や「運炭」
という卖語が用いられることにもなった。
さて、以上のような現象は、画の可愛さを無視はできな
いが、一方で音声的な効果も関わっていると言えよう。
図３－１６を４枚１組にしているのは、セリフと画の重
なりを分かり易く見ていくためである。各画のセリフは次
の通りであり、これを律が楽しげに言っているのである。
１：黒のストッキング!
２：純白のエプロン!
３：そしてメイドカチューシャ!
４：萌え萌え～キュン♡
では、これがもし違った言い方であればどうなっている
であろうか。
例えば、図３－１６と画は同じで、セリフは普通に会話
している風で「澪には、黒のストッキングに純白のエプロ
ン！それとメイドカチューシャで、どう？萌え萌えキュン
でしょ？」といった感じで話しているのであれば、確实に
印象は変わってくるはずだ。そして、今日の爆発的な澪人
気は出来上がっていたであろうか。
このことは図３－１５でも同じことが言える――唯が
「カスタネット、うんたん、かなぁ？」といった、なにも
リズム感ない話し方をしていたならば、今日の唯人気は変
わっていたかもしれない。
作品におけるセリフの役割は、決して小さなものではな
い。リズミカルに「うんたん」と言いながらカスタネット
を叩く唯、テンポよくメイド姿になり「萌え萌えキュン♡」
になった澪――作品における声優の機能を考えると、それ
は台本の活字に豊かな感情性を音声的に有させることであ
り、それ故に声は社会性を帯び、すなわち声は自律性を示
しているのである。
ところで、『りっくすの本』④pp.31-34 に「アニメ『化
物語』における会話劇」という小論がある。
その筆者によると、アニメ「化物語」という作品が使用
する美術が尐なく、話が会話によって進んでいくことにつ
いて、作品監督の新房の仕事は「会話劇をどう飽きさせな
いように視聴者に見せるか」であるとしている。そして、
この作品の面白さについて、「化物語」は、松尾衡監督の
プレスコによる“会話テンポ型の会話劇”ではなく、押五
守監督「御先祖様万々歳！」的な“舞台演劇的な台詞の面
白さの会話劇”の面白さであるとしている。
ここで、「化物語」という作品は、セリフが「小説を音
読しているかのような、淡々とした口調」（前掲書 p.34）
で話されている。これは監督の「原作の会話をそのまま使
用する」という意向によるものらしいが、それをその口調
で声優に話させているということは、監督の知恵とそれに
対する意地であろう。
ここで問題にしたいのは、本稿の議題である「作品にお
ける声優の機能」ということであり、「化物語」を監督の
求める方向へ導く役割を、監督のみならず、声優も担って
いるということである。
もし「小説を音読しているかのような、淡々とした口調」
ではない喋らせ方を指示していたならば、作品から受ける
印象は変化することだろう。そして、そのことから考えら
れることは、声優が持っている声質や技量が、作品の印象
を左右することになるということである。
私は、この節で「けいおん！」を例に出したが、この作
品がなぜ好評を得たのかということを考えると、『りっく
すの本』④pp7-13 のように、ストーリーラインから考える
こともできるだろうが、我々は音声的な側面も忘れてはな
らないのではなかろうかと、一声優環境論者は思うのだ。
図３－１５ 「うんたん♪」（原典＝「けいおん！」第１
話、出典＝ニコニコ動画「【5 分耐久】唯のカスタネット
うんたっ！」）

１ ２００６年、「処ボク」から「乙ボク」にメディアミック
２ クターの声が変わってしまうことを「気持ち悪い」ことで
３
４ その２ヴァージョンのメインキャストは、図３－１７及
図３－１６ 「萌え萌えキュン♡」（原典＝「けいおん！」
第４話、
出典＝ニコニコ動画「萌え萌えキュン♡ 高画質版」
、 ３－１９）では、ヒロイン格キャラクターのみの選択とな
「けいおん！澪の萌え萌えキュン♡」）
３．４．５．キャスト入れ替え／デュアルボイスシステム
／原作乖離
作品と声優の関係というものの深さは、さまざまなアニ
メとゲームの横断的なファンたちによって示されている。
本節の以上までの議論のうえで、本節の締めとして、その
ファンたちによって示されたさまざまな批判について、今
一度見つめなおしてみたい。
まず１つ目として、先でも取り上げた『処女はお姉さま
に恋してる』／『乙女はお姉さまに恋してる』――通称「お
とボク」を取り上げたい（なお以下、ゲーム版は「処ボク」 、
アニメ版は「乙ボク」と表記）。
スされる際、キャストを総入れ替えしたのだが、そのこと
を知った原作である「処ボク」のシナリオライターが、自
身ブログで原作側のスタッフへの配慮の無さを批判し、ブ
ログが炎上した騒動があった。このキャスト入れ替えは、
当時話題となっていた声優ユニット「Aice⁵」のプロモーシ
ョンを兼ねたものであり、アイドル声優の商業性が分かり
易く見えた騒動でもあった。
さて、なぜそのシナリオライターは、声優を変えてしま
ったことを不満に思ったのであろうか。それは、 「シナリオ
は原作の声優の声をイメージして書かれたものである」こ
とを１つの理由としている。つまり言い換えれば、キャラ
あると感じたのである。
この気持ち悪さについては、「表象的側面」 （声優の声は
自律性を持ち、様々なキャラクターのアイデンティティと
なり、そして社会性を有するものである。そしてその社会
性は、メディアの受け手側が「鏡映的自己」の鏡となって、
受け手が付与しているものである）と「複合メディア文化
的側面」（メディアミックスされる中で発生していった、な
おかつ音声メディア間の多面的メディア展開の中で起きた、
コンテンツビジネス上の弊害）の２つのアスペクトから話
していった。今後も別の作品で発生する可能性は全く無い
わけではない。
次に２つ目として、ゲーム「ショコラ」と「パルフェ」
についてである。これら作品の特徴的なシステムと言えよ
う「デュアルボイスシステム」というものがある。
これは、原作ＰＣ版『ショコラ 〜maid cafe "curio"〜』
が同名でプレイステーション２に移植された際、そして原
作ＰＣ版『パルフェ 〜ショコラ second brew〜』 『パルフ
ェ 〜ショコラ second brew〜 Re-order』から『パルフェ
- Chocolat Second Style -』としてプレイステーション２へ
移植された際に、それぞれ原作ＰＣ版のオリジナルキャス
トと、ＰＳ２版の新録キャストの２ヴァージョンからキャ
ラクターごとにボイスを選択できるというものである。
び図３－１８の通りである。なお、 「ショコラ」（参照＝図
っている。

図３－１７ 『ショコラ 〜maid cafe "curio"〜』デュアル
ボイスシステムキャスト名簿（出典＝ALCHEMIST:「シ
ョコラ - maid cafe "curio"-」
） 基準から逸脱しているのであればその声は「合っていない」
図３－１８ 『パルフェ - Chocolat Second Style -』デュ
アルボイスシステムキャスト名簿（出典＝Alchemist:「パ
ルフェ Chocolat Second Style」
図３－１９ ＰＳ２版『ショコラ 〜maid cafe "curio"〜』
パッケージ（出典＝Amazon.co.jp： 通販）
このようなシステムをわざわざとっているのは、先述の
「おとボク」のような事態を避けたいがためである。
作品のファンたちは、どうしても原作の声（＝オリジナ
ルキャスト）が、各キャラクターにおいて「正しいキャラ
クターの声」であるという感覚にある。そこで、キャスト
を入れ替えるという行為は、その正しいもの以外の声を、
新たなスタンダードとして提示される。しかし、ファンは
オリジナルキャストを正しいと思ってきているわけなので、
それを基準に新規キャストを評価しようとする。そして、
と思えるのである。つまり、企業が利権などの関係で行い
たく、それは受け入れられるだろうと思うほど「ダブルス
タンダード」は成立しにくいということが、これまで多く
の作品で繰り返されてきた。
「デュアルボイスシステム」とは、そのような失敗を恐
れて行っているということであり、一方で「ダブルスタン
ダード」を成立させたいという考え方も拭えきれていない
ということでもある。
それによって、どちらの声がいいのかということは、人
によりけりである。作品を評価しているサイトを見れば、
原作声優がいいと人がいれば、新規声優の方がいいという
人、そしてキャラクターごとに原作がいいか新規がいいか
を述べている人いる。本稿は、そのような「声優分類学」
的な見地には立たないので、コメントすることは差し控え
ておきたい。
最後に３つ目として、さまざまな賛否が飛び交った『ア
イドルマスター XENOGLOSSIA』を取り上げたい。
この作品は、バンダイナムコゲームスのアーケードゲー
ム『THE IDOLM@STER』を｢原案｣として PROJECT
IM@S の一環として制作された、サンライズ制作のテレビ
アニメ作品（ロボットアニメ）である。
この作品がさまざまな賛否を呼んだのは、アーケードゲ
ームの『THE IDOLM@STER』とは、全くもって作品カ
ラーが変わってしまったことである――アニメ化に際して
「アイドル育成」から「ロボットアクション」になったこ
とは、原作ファンを中心に大きな波紋を呼んだ。
ここで「Amazon.co.jp： カスタマーレビュー: アイドル
マスター XENOGLOSSIA (1) [DVD]」から、いくつかの
意見を抜粋してみよう。
語り継がれるべき作品。, 2007/4/11
By むらさき人
正直、作画は綺麗だし、声優も良い感じで、ロボット
も好みで作品としては文句はない…
無いが、あくまで原作(ゲーム)を知らないのが前提だ…
私は原作ファンではない、しかし、大ファンの友がい
る、彼から聞いていなければ上記の感想だろう…
そして、友は…悲しみ、嘆き、呆れ、諦め、割り切り、
笑っていた…いや、もはや笑うしかなかったのだろう
…
彼からの情報を踏まえると…なぜキャラと一心同体の
声優陣を代えたのかがわからない…
全体的に『舞-HiME』っぽかった、声優がさらにそう
感じさせるのか…
さらに設定をここまで変えるなら、オリジナルで作っ
た方が色々と良かったろうに…
っと言うか、もはや別作品だろう…
たしかに私はファンではない、だが、もし私の愛して
いる作品だったらと考えると…複雑な感情が溢れ出し
てきていたたまれない気持ちになる…
なんだか『某魔法尐女クラブ』を思い出す…
たしかに、これは、もう笑うしかないか…
ここまで支えて忚援してきたファンを裏切り見捨てた
この行為を、これから先の漫画、ゲームなどをアニメ
化する際にどうするのかを真剣に討論するべきだと思
う、そう言う意味では、語り継がれるべき作品か…
原作を利用しただけ？, 2007/6/14
By ニャオンゼル
この作品をオススメできるのは、舞-HIME シリーズが
好きで原作ゲーム版アイドルマスターを全く知らない
方に限られます。そういう方にはハイクオリティアニ
メとして、満足していただける完成度になっているは
ずです。
ですが、原作ファンが見たとき、必ず「アニメスタッ
フはゲームをプレイしたことが無いのではないか？」
と疑念がわきあがるでしょう。
なぜなら、製作スタッフが原作から参考にしているの
はキャラクターデザインのみで、メディアミックス作
品として最低限守らなければならない、キャラをキャ
ラとして成り立たせている性格設定をも無視してまる
で別人の設定にしてしまっているからです。
ゲームオリジナル声優総入れ替えという暴挙も、今ま
で自分たちが使ってきた人気声優なら文句も出ないだ
ろうという思惑が見え隠れします。コンセプトは「原
作キャラを使った舞 HIME」だということですが、そ
れはつまり、自由にやらせてくれるアニメ化ならどれ
でも良かったということ・・・・？
尐なくとも、原作へのリスペクトはここには見当たら
ないようです。
原作の設定どおりにアニメ化すると面白くないものに
仕上がるのでは、という意見がありますが、シリアス・
ギャグ・泣き・盛り上げをバランスよく配置すれば、
ドラマＣＤや同人作品のように面白いものは作れるは
ずです。
ゲームファンの方は、これは「ゼノグラシア」という
別作品であることを注意して、購入を検討してくださ
い。
アニメ化の意図がわからない, 2007/4/26
By Sachiko
家庭用移植によって一躍有名になったゲームのアニメ
化・・・だった筈のものです。
既に語り尽くされた感もありますが、自分にとって思
い入れのある作品がこんな改変をされたらと思うと、
原作ファンの方の落胆や怒りは痛いほどよく判ります。
ただし、原作ゲームや舞-Hime の予備知識がないと仮
定し、オリジナルの作品として評価するならばなかな
か高いクオリティを持つ作品である事もまた事实です。
そうした意味でもゲームとアニメ、お互いのファンの
対立を生み出す構図を招き、メディアミックスの意味
を全く為さないこのアニメ企画を通したバンダイナム
コ/サンライズの意図が全く理解できません。
原作を知らなければ・・・という意見を見ることもあ
りますが
そういう方は今後他の作品でもこうした改悪が罷り通
るような事になってもいいのでしょうか？
作品卖体で見れば星４～５、しかし原作無視の改悪は
たとえファンでなくとも首を傾げざるを得ないものが
あるのであえて低評価に。
話はともかくとして, 2007/9/18
By 白い雲
アイドルマスターというタイトルを使用した事がそも
そも最悪。
原作は原作にすぎないとか言ってる方もおられるよう
だが、アイドルものとして企画を立ち上げ、性格にあ
ったキャラの絵をデザインし、声優をあて、そういっ
た作業してベースとなるゲームを作り上げたクリエイ
ターを馬鹿にしている物作りには変わりない。
ベースとなったゲームが余程マイナーなデキなら吸収
されたような形になるのも仕方ないが、そこそこヒッ
トした作品で、これはいかがなものかと思わざるを得
ない。
しかも原作とか原案とかのレベルではなく、ただ、キ
ャラを使っているだけ。しかも性格までかなり違って
いる。
そもそもここまで変えるなら、なんでアイドルマスタ
ーのキャラを使って、タイトルにまで使用しているこ
とに、疑問を感じないだろうか？
結局、オリジナルでは見てくれないアニメの実寄せに、
アイドルマスターのタイトルつけて実を集めようとし
ただけの、ゲームファンには非常に失礼な 商業方をと
っているだけ。こういう手段を完全に否定するわけで
はないが、原案のクリエイター原案のファンをあまり
にも軽視する物づくりは、あまり横行され ると困るか
 な。
自分達が作ってるものに自信あるなら、キャラとタイ
トルだけ取ってくるようなことせずに、オリジナルで
勝負したら？ と言いたくなる作品。
そこまで酷くないと思う…むしろ好印象, 2007/5/23
By きふお
自分は原作を、知ってますしアーケード版から、ファ
ンでしたが…気にはしないです、むしろこれくらいや
ってくれた方が、気持ちいいです。キャラ絵は素晴ら
しいですし…メカデザイン何て特に素晴らしいと思い
ます。それに戦闘シーンは最高ですね!かなり迫力はあ
るし文句はないです。声優の方達が、原作と待った く
違うのは…それは戸惑いましたけど…なれればこのキ
ャストもあり!ってかんじですね。サンライズはガンダ
ム種以降あまり良いと言えないですが…ここ最近 の
コードギアスと良い結構イイ感じですので、期待して
いいと思います!自分は DVD はそろえるつもりです。
それにしてもアイドルのプラモ出すんでしょう か?(ま
ぁ…この辺りも期待して)
しかしいずれは、スパロボに出そうな気が…
まぁ、やっぱり感想や思う所は…人それぞれですね
以上のように、
「原作無視、オリジナルで勝負しろ」とい
う意見があれば、むしろ「これくらいやった方がいい」と
（出典＝CINEMAticRoom サントラ・映画音楽データベース）
いう意見まで、賛否は両論ある。
どこがどう転がって、このように至ったのかは、関係者
ではないのでわからないが、 タイトルや登場人物が同じで、
作品カラーを変えるという方法は、メディアの送り手と受
け手の関係において、決して良好なものを与えるだけでは
ないということが見えてくる。
さて、本稿は声優に関して論じていくものであるが、こ
の作品では、作品カラーを変えるほかに、同時に声優を総
入れ替えするというよくある話がおきている。
『アイドルマスター XENOGLOSSIA』の場合、作品カ
ラーを変え、声優を変えるという行為によって、『THE
IDOLM@STER』という原作ゲームの良さのかけらもない
と、ブーイングとなっている。
では、このアニメのＤＶＤを出す際に、もし『THE
IDOLM@STER』の初期からの声優ヴァージョンも録って、
「デュアルボイスシステム」を採用すれば、ブーイングは
減尐するであろうか。
おそらく、筓えは「否」だろう。なぜなら、この作品の
場合は、作品のカラーごと変えてしまっており、その状態
で初期声優の声をあてたところで、キャラクターや作品イ
メージと親和性を確实に持つのか、 怪しいところであろう。
作品における声優という存在は、声によってキャラクター
にアイデンティティを与え、それ故に声優とキャラクター
の２者関係は決して薄っぺらいものではなくなっている。
作品における声優の役割、 存在性というものを考える上で、
この作品は良い契機の１つとなっているのではなかろうか。
（出典＝Amazon.co.jp）

４．堀江由衣声優論１
――彼女から見えてくる「不安定な『礼拝的価値』
」
４．１．「堀江由衣声優論」序文
ここから展開していく「堀江由衣声優論」は、マスコミ
学的な議論が中心となる。そして、内容としては「声優構
造論」に於いて、声優側ではなく、そのファンに迫ってい
きたい。
「堀江由衣声優論１」は、ヴァルター・ベンヤミン「ア
ウラ」、アーヴィング・ゴッフマン「自己呈示のドラマツル
ギー」について。「堀江由衣声優論２」では、ゲーリー・ガ
ンパート「距離のパラドクス」、そして広く「声優ファンの
情報行動」について其々議論していくことを通じて、声優
ファンの構造的側面を、第１節よりも深い議論を展開して
いきたい。
４．２．「アウラ」
本節における議論を理解する為には、先ずヴァルター・
ベンヤミン「複製技術時代の芸術」に於いて提示されてい
る「アウラ」という概念を理解しなければならない。
「アウラ」とは、「『いま』『ここに』しかない特有の一
回性の現象」のことを言う。
つまり、オリジナルのものには「アウラ」が存在してい
る。
「そっくりそのままのもの＝コピー」には、その「アウ
ラ」がオリジナルからコピーされず、故に存在しない。
だからと言って、決して「コピー品に価値がない」とい
うわけではない。ベンヤミンは「展示的価値」というもの
を認めている。それは、鑑賞し、楽しむ分には全く問題が
ないということの価値である。ならば、コピーに「展示的
価値」が存在しているならば、オリジナルの存在価値は蔑
ろにされるのか、と言えばそうでもない。オリジナルには、
“本物を見る”という「礼拝的価値」が存在するのである。
以上を理解した上で、以下本稿を読み進めて欲しい。
４．３．アイドル声優がＣＤを出すこと
さて、アイドル声優がＣＤを出すというとき、そこには
「音楽／歌／歌声の大量複製」ということが発生している。
そのＣＤ上においてはシミュラークル化した音楽や歌や歌
声は、实際に声を出しているアイドル声優との関係におい
て、コピー品に過ぎない。そして、そこに存在しているの
は「展示的な聴取的価値」のみである。つまり、
「そこにあ
る声を聴くこと」しか出来ず、
それ以外に価値はないのだ。
その「展示的な聴取的価値」の存在というものが、次に
「礼拝的価値」を生み出していく。ここで“聴取的”とい
う言葉が抜けるのは、今回の事例に於ける礼拝ということ
＝实際に声を聞くとなると、ライブ等で聴くことになるの
が一般的であるが、その時实際にその声優と対面せざるを
得ない為である。
４．４．ひとりが複数のアウラを生み出すとき
４．４．１．「並列的パフォーマー」
前節に関連して例示したいのが、堀江由衣（参照＝図３
－４）である。彼女は第３次声優ブームを代表する声優ア
イドルである。
彼女は、ＣＤをこれまでにシングルで１１枚出している
が、彼女の活動は卖にソロ活動だけではない。田村ゆかり
とのユニット「やまとなでしこ」 、０５年からの２年間結成
したユニット「Aice⁵」
、文化放送「堀江由衣の天使のたま
ご」のスタッフと結成した「黒薔薇保存会」 （参照＝図５－
２）と、ユニット活動は結構頻繁な方である。
私は、ユニット活動することによって、实は「アウラを
新たに生んでいる」のではないかと考えている。
堀江由子（＝堀江由衣の本名と言われている。本稿では
「彼女１人の総体」という意味で用いていく）の中には、
図４－１のように堀江由
衣（母体）に関わるパフ
ォーマーが複数存在して
いる。
図４－１の考え方は、
アーヴィング・ゴッフマ
ン「自己呈示のドラマツ
ルギー」を基本としたも
のである。
『命題コレクシ 図４－１ 堀江由子の中の
ョン社会学』p.43 命題部 パフォーマーたち（出典＝
は次のようにある。また 本稿）
その解説として p.44 か
ら抜粋する。
社会的状況のもとでの行為は演技の要素を含む。行為
者は同時に演技者（パフォーマー）であり，観実（オー
ディエンス）を意識した『印象の演出者』である。
自己呈示が意図的に行われるとき，つまり自分の行為
に操作を加えてだれかに何らかのメッセージを伝えよう
とするとき，それは演技（performance）とよばれる。
行為者はたいていの場合，ある行為を選択すればそれが
どのような情報を特定の他者にもたらすかを事前に予測
している。そしていくつかのそうした予測をもとに現实
の行為選択を行っている。行為者が自分の行為の伝える
情報について無知であることは稀である。このように考
えれば，ほとんどあらゆる行為に，上に定義した意味で
の演技の要素が含まれていることがわかる。
ところで、私は前節に於いて「アイドルの平行性」につ
いて述べていった。その概念は、簡卖に纏めると「作品に
於いて、キャラクターと声優が其々『アイドル』として平
行に存在していること」であった。
その「平行性」というものは、同時に「並列的パフォー
マー」ということも示している。
受け手たちは、其々の「母体」から見て「派生のパフォ
ーマー」が繰り広げる〈現实〉を享受し、共有することに
なる。だが一方で、受け手たちは「堀江由衣」という母体
を忘れることが出来ない。例えば、「ユイエル」が繰り広げ
る〈現实〉に接している時、どうしても「堀江由衣（母体）
」 えられなくも無い。
という存在を、脳内から抹消することは出来ない。そのと
きの「ユイエル」を、「
『堀江由衣（母体）』の並列的パフォ
ーマー」と呼ぶことができる。
４．４．２．ひとりが複数のアウラを生み出すとき
さて、堀江が「由衣」としてＣＤを出した時、その「礼
価」は勿論「由衣」に存在する。ならば、「ユイエル」がヴ
ォーカルを務める黒薔薇保存会がＣＤを出したとなると、
その「展示的な聴取的価値」に対する「礼拝的価値」は何
処に存在するのであろうか。ヴォーカルについて、それは、
「由衣」に存在するのであろうか。
先ず１つ、「ユイエル」に存在すると考えられよう。何故
なら、その「展示的な聴取的価値」を有する楽曲は、あく
まで黒薔薇保存会のものであり、そのことから「由衣」で
はなく、「ユイエル」に存在していくと考えられよう。
ならば、ユニット活動によって、新たな「『堀江由衣（母
体）』の並列的パフォーマー」を増やしていくことにより、
「アウラは新たに生まれている」と考えられる。
このことは、キャラクターソングを考える上でも力を発
揮する。
堀江由衣で例示すれば、彼女は『がくえんゆーとぴあ ま
なびストレート！』で天宮学美を演じ、キャラクターソン
グが出ている。では、その「展示的な聴取的価値」に対す
る「礼拝的価値」は、誰に存在するのであろうか。「由衣」
だろうか、「まなび」だろうか――先の考え方を用いれば、
それは「まなび」に存在することになる。
図４－２ 『がくえんゆーとぴあ まなびストレート』
（出典＝コンプティーク.com）
上図＝右側が天宮学美 下図＝ラジオ番組の収録
４．５．不安定な「礼拝的価値」
しかしながら、一方で「由衣」への「礼拝的価値」を考
「ユイエル」にせよ、
「まなび」にせよ、声を出している
大元（＝音の発生源）は紛れもなく、母体である。だから、
「由衣」にその価値があるとも考えられるのである。
实際にライブやイベントに行くと、対面するのは紛れも
ない堀江由衣“という姿”である。ならば、結局は「由衣」
に「礼拝的価値」が存在してしまうのだろうか。
だが、そのライブやイベントで歌われたものが黒薔薇保
存会やキャラクターソングならば、価値の行方はどうなる
であろうか。その曲は確かに、「ユイエル」や「まなび」ら
キャラクターの歌である。
以上の状態は、キャラクターソングにおいて特に見られ
る現象であり、堀江は自身のプロデュースによって結成し
たグループにおいても同じ状態を発生させている（してし
まっている）。
図４－３ ライブの模様（出典＝超！A&G ニュース）
図＝２００８年１２月２３日開催のクリスマスライブ
４．６．総体還元理論
図４－４ 「麻帄良学園中等部３－Ａ １学期始業式」（出
典＝『ネギま!? 春スペシャル!?』DISK2）
冒頭より図示することから始めてみた。これは２００６
年に行われた「麻帄良学園中等部３－Ａ １学期始業式」
というアニメ「ネギま!?」のイベントである。この会場に
は約２千人が集まっており、佐藤利奈、神田朱未、野中藍、
小林ゆう、桑谷夏子、白石涼子などが出演している。
 では、図のように沢山のファンが声優についているのだ
が、そのファンは声優を見るとき、一体何を見ているのだ
ろうか。
まず、「萌えキャラ」の構成の基本について整理してお
きたい。「萌えキャラ」は、物語性を有さない情報を「デー
タベース」から適当に引き出し、そして「萌向性」のなか
で「データ」が組み合わされて、１つのキャラクターが「萌
え」のかたちをもった「シミュラークル」として存在する。
つまり、「萌え」のキャラクターは、バラバラのパーツを組
み上げることによって完成するという考え方が萌学におい
ては基本原則形として存在している。
だが、声優を「萌え」という視点から見ると、必ずしも
その形式で考えられるわけではない――ここで東村光「萌
学体系概論」（『萌タ』1(1)p.10）から次の文章を引用して
おきたい。
生じる現象について見れば古典的な萌えと声優萌え
は全く同一である。声優ファンは声優の声（外見元素と
捉える）やラジオなどを通して流布される行動などに萌
えを感じるのであろうが、それはあくまでも現れた現象
に対し、各萌えの元素を当てはめたに過ぎない。本質的
な意味で萌えの元素とは萌えを構成する因子であり、結
果として萌えという現象に辿りつくのである。その視点
から声優萌えを見ると、萌えを構成する因子を膨らませ
て行く過程で、各元素毎に要素を分離させていったとい
う捉え方が必要となる。つまりパーツを組み合わせて、
結果に辿りつく古典的萌えのあり方と、１つのパーツを
崩して、細かなパーツを組み合わせた形を作りあげる声
優萌えとは本質的な意味合いにおいて、全く正反対のプ
ロセスを経由して成立していると言える。
だが、以上にあるような「元素の分解‐構築理論」より
も、むしろ「総体還元理論」の方が適切に实情を把握でき
るのではなかろうか――声優は「作品のデザイン」として
存在し、また「アイドルの平行性」故の「独立したキャラ
クター」である。その声優をファンたちは見て、興奮して
いる（萌えている）のである。興奮状態にあるファンたち
は、その声優というキャラクターを見て、ふとした瞬間が
訪れれば「あれが可愛い」
「それがいい」と言っている。そ
の瞬間の反忚は、そこに現れた何らかのファクターに対し
て反忚しているのであり、それは果たして東村の述べる「元
素の分解‐構築」であろうか。
そうではなく、その实際の現象は、発生した瞬間的現象
に対してファンたちが反忚するという、「萌え」の予見可能
性の低い「萌えの見いだし活動」であり、即ち声優という
キャラクターを「萌え要素（元素）に還元する」という活
動ではなかろうか。
４．７．アウラと総体還元理論
図４－５は、Aice⁵の解散ライブが堀江の誕生日で、
『シ
ョートショートケーキ』を歌っているときの実席の様子で
ある――実席がサイリュームで青一色になっている。青色
は「リーダー」のイメージカラーが青である為だ。
横浜アリーナがブルーに染まるほど実席には人がいるの
だが、彼らは果たして何に「礼拝的価値」を見ているのだ
ろうか。
図４－５ 青いサイリュームの海（出典＝StarChild:Aice5）
「アウラ」（ヴァルター・ベンヤミン）と声優との関係に
ついて、私は「声優がキャラクターとしてや、ユニットの
メンバーとして歌ったときに、『礼拝的価値』の行方は定ま
らなくなるのではないかということであった」と先に述べ
た。これは即ち、声優が歌う時を例にすれば、声優本人が
歌うときがあれば、それが演じているキャラクターが歌っ
ているときもあり（＝キャラクターソング）、また新たなユ
ニットを組んだときに、そのユニット用にキャラクターを
演じることもある。しかし、声を発している大元は声優本
人１人である。このとき、「礼拝的価値」の行方がよくわか
らないことになるというのが、私の考えである「不安定な
礼拝的価値」というものである。
その上で先の疑問を投げたわけだが、本稿で新たに考え
ている「総体還元理論」を踏まえれば次のようなことが言
える――ライヴに来ている多くの声優ファンは、その会場
で声優を見ている状態にある。そのファンが不意に発生し
た瞬間的現象を見たとき、「ワ～～～～～！」と盛り上がる
ことがよくあるが、これはまさしく、ファンはその瞬間的
現象を発生させてしまった声優に対して「礼拝的価値」を
見ているのではなかろうか。ならば、その価値を引きずっ
たままに、ライヴ時間中はその声優に「礼拝的価値」を見
いだすのではなかろうか。
また、そもそもライヴ会場にファンたちは、声優を見に
来ているわけである。つまりその会場でパフォーマンスす
る声優は、マルシェル・デュシャンの便器みたく、
「アウラ」
を身に纏うのではなかろうか――即ち、ライヴ会場、そし
てその会場に来ているファンたちを「アウラ発生装置」と
考えることができるのではなかろうか。
４．８．本節のさいごに
本節に於いて述べたかったことは、声優がキャラクター
としてや、ユニットのメンバーとして歌ったときに、「礼拝
的価値」の行方は定まらなくなるのではないかということ
であった。
このことは、そもそも前提として、「声優が歌う」とい
う現象の発生によって生まれているものである。つまりは、
殊に「アイドル声優」という存在が、歌うという行為を行
い、それがユニットやキャラクターとして歌うということ
になったことで生み出している（しまっている）現象であ
ると言うことが出来る。
即ち、
「アイドルの平行性」や「並列的パフォーマー」と
いった状態が「声優」にあり、受け手たちが、さも当たり
前に“特異な”情報行動――“キャラクター”と“イメー
ジキャラクター”を「アイドル」という１つの括りの中で
見ること、判断することを行い、結果として其々にファン
層を形成していることによって発生し、維持されている現
象であると言えよう。
ここで、堀田純司『萌え萌えジャパン』p.281 にて、彼
が清水愛へインタビューしたときの彼女の言葉として次の
ようにある。
私がデビューした当時は、すでに声優さんにもタレン
ト性が求められるようになっていた時代でもありました
し、イベントを運営する側も、見てくれる側の人も、も
ちろんキャラ名で「誰々ちゃん」と考えて楽しむ方もい
らっしゃるかもしれないですが、声優さんをキャラクタ
ーと混同しているわけではないと思うんですよ。たとえ
ば私が『おねがい☆ツインズ』のイベントに行ったとし
て、いっしょに出ている中原麻衣ちゃんを、役名で深衣
奈さんと呼んでみたりするわけじゃないんです。それに
着ぐるみに入ってお実さんの前に出るわけでもないです
し。作品のセリフパートや、台本が用意されて寸劇を演
じるということでもない限り、清水愛本人という意識で
います。
ラジオでも、作品関連の番組もありますが、そこでも
声優さんはその声優さん自身としてトークするじゃない
ですか。キャラクターとして出演する番組もありますが、
そうでない限りは本人として出ています。心構えという
と「ここでは作品の話をする、ここでは作品とは関係な
い話をする」というくらいの違いしかないですね。
これを長々と引用したのは、本稿第二章のここまでのま
とめに引き換えるという意味も込めている。
ここでは本節に関わる部分だけ話すが、本節で話した「ア
ウラの揺らぎ」は、
① 清水の言う混同を引き起こしかねないという示唆
② 清水の言う混同はなくとも、自身が持っている「好
き／萌え」という感情がどっちへ向いているのか分
からなくなる可能性の示唆
として示しておきたい概念である。
５．堀江由衣声優論２
――「距離のパラドクス」と「情報行動」の流れ
５．１．本節のはじめに
ラジオとは、パーソナリティ等の「番組内に登場するあ
らゆる存在」のビジュアルとは無縁なメディアである。
我々
は、
「堀江由衣」ならばその彼女の姿を脳内で描くなり、Ｗ
ＷＷ上や自分のＰＣ内にある画像をモニターに映すなりし
てビジュアルを得るしかない――今回は、そんなラジオを
巡る話である。
本節は「アイドル声優」を追いかけるファンたちについ
てもう尐し論じていきたい。例として挙げたいのは、文化
放送のラジオ番組「堀江由衣の天使のたまご」、そしてその
番組から誕生した「黒薔薇保存会」である。
５．２．距離を越えようとする人々
５．２．１．本項の前置き
堀江由衣の活動等については、 『アニソンマガジン vol.3』
や『Wikipedia』などを読めば大体が分かるので省かせて
いただこう。
本稿は、本題に関わる彼女の冠番組「堀江由衣の天使の
たまご」（参照＝『Wikipedia』
）を例として、アニラジに
まつわる情報行動について述べていきたい。
その番組は全国にネット放送しているので、暇があれば
聴いてみるといいだろう。むしろ一度聴いてからの方が、
このレポートはより理解して読むことが出来るのではなか
ろうか。
５．２．２．数日後に届くエンジェルビーム！
「こんばんて～ん！」で始まり、 「エンジェルビーム！」
で終わる３０分間――「堀江由衣の天使のたまご」 （略称＝
「天たま」）という番組をごくごく短く紹介するならば、そ
の様に言えるであろう。
この番組は、ＡＭ局の番組ならばよくある（そもそも私
は、アニラジばかりを聞いているがためにＦＭをあまり知
らないが）「録音放送」である。その録音したものを、リス
ナーはラジオを聴く為の機械を通して聴取することができ
るのである。
その「録音放送」を巡って、 「時間軸のズレ」・「空間軸
の歪み」を見ることが出来る。例えば、堀江由衣が例の番
組の最後に発している「エンジェルビーム」は、彼女が“発
射”
（と言っておこう）した時と、リスナーがビームを“被
弾”する時とは、明らかに時間差が生まれ、それぞれが違
った空間に位置している。ならば、明らかに堀江由衣とリ
スナーたちの間で「空間軸の歪み」が発生しており、 「空間
的距離」を見ないわけにはいかない――つまり、 「ここ」を
共有してはいない。また、双方の時間軸はズレており、 「時
間的距離」が発生している。この話はガンパートの「距離
のパラドクス」を考えることになる。
ここで、「距離のパラドクス」について話しておこう。
それは、例えば電話（今の時代で言えば「固定電話」 ）でと
ある２人が話をしているとしよう。そのとき２人は、電話
が無ければ不可能であった、長距離の空間的距離間に於け
る口頭でのコミュニケーションが可能となり、「コミュニケ
ーションに距離は関係ない」と思えている。しかし实際に
その２人は、空間的距離を解消しているわけではない。そ
の２人が仲睦まじい恋人同士ならば、实際には隣に恋人が
いないことに落胆してしまう。せいぜい今存在しているの
は、「恋人の声」のみである。「距離のパラドクス」とは、
「距離の克朋願望」と「实際の空間的距離の存在」という
二律背反のことを言う。
さて、私はその「距離のパラドクス」を考える時に、一
緒に「時間軸のズレ」というものが付属してくると考えて
いる。距離（ここでのそれは「空間的距離」）が離れた二者
が存在し、電話で話していたり、ラジオを介してコミュニ
ケーションしているとき、そこには確实に「時間軸のズレ」
が存在している。その「時間」というものは、スケジュー
ル的な「実観的時間」に於いても、それぞれが持っている
「为観的時間」に於いてもである。ここで私が「時間軸の
歪み」と言わないのは、「過去も未来も存在せず」というこ
ととは違うからである。私の言いたいその「ズレ」という
ものは、過去も未来も存在する状態の中で、例えば二者が
居るときにそれぞれの「実観的・为観的時間」が卖に時空
的にズレているということである。
例えば、よくアニラジで耳にする「年末進行（年末に翌
年始分の放送も一括に録音してしまう特別スケジュール）」
でそれらについて考えてみよう。アニラジリスナーは、年
始にいつも通り深夜にラジオ周波数（関西では为に５５８
ｋＨｚ、１３１４ｋＨｚ）をチューニングしリスニングす
る。すると、よくパーソナリティが「ネタばらし」的に「年
末進行」だと言っている。そして、聴いていると例えば「紅
白歌合戦で勝った組」であったり、
「年を越す時にしたこと」
などがわからない為に、絶対に話に挙がってこないわけで
ある。せいぜい「クリスマス」の話だったり、「年越し前後
の予定」などを話すのである。この時にリスナーは、否が
忚でも「時間軸のズレ」と「空間軸の歪み」、そして「空間
的・時間的距離」を感じてしまうのである。そして、「距離
のパラドクス」がリスナーの中で（もっと言うならばパー
ソナリティの中でも）発生しているわけである。
５．２．３．「生足放送」――いいえ、生放送です。
そのような「歪み」等に対する（尐なくとも）リスナー
のむず痒さに、番組は様々に対忚しているものである。そ
の１つが「生放送」である。
では、生放送によって拭われる痒さは何であろうか――
筓えは「時間軸のズレ」の部分のみである。空間的な問題
については一切解決されていない。ただ、
「ほっちゃんが今、
生足である」というその事实が、リスナーに尐しでも「距
離のパラドクス」が解消されたということを“思い込ませ
ている”のである。そう考えると、生放送とは巧みなフェ
イクである。
図５－１ 『堀江由衣の天使の生たまご』
（出典＝StarChild:堀江由衣）
註：文化放送のみで放送された生放送回。
「生たまご」ということ
で、何故か「生足」で放送した。
５．２．４．公開録音――浜松町で逢いましょう
生放送では空間的な部分は全く解消されないとなると、
リスナーはついには「ほっちゃんに会いたい」と思ってし
まうのである。
「ほっちゃんがどんなパーソナリティである
のか」ということを知りたくなってしまう人が出てくる。
その対策を放送局は持っている――「公開録音（アニラ
ジに於いては为に、広い会場にリスナーを招待し、パーソ
ナリティがその会場で、普段は“機械の前のリスナー”で
ある彼ら／彼女らを真の前にして番組収録を行うものであ
る）」である。これならば、
「時間軸のズレ」、「空間軸の歪
み」、
「空間的・時間的距離」、そして「距離のパラドクス」
を感じることがなくなる。
しかし、公開録音はもはや「ラジオを聴く」という行為
ではない。ただ「ほっちゃんの話を聞く」に過ぎなくなっ
ている――「公開録音」という名前がもたらすこれまたフ
ェイクである。
それを言い換えるならば、その場にいる人間全てがパー
ソナリティとなり、リスナーとなる。
公開録音――それは卖なる「アイドル声優」のイベント
であり、放送局の仕掛ける「（ささやかな）メディアイベン
ト」に過ぎない。だが、何故か人々はそこに集まるのだ。
５．３．移動するファンたち
５．３．１．黒薔薇保存会
黒薔薇保存会――この“ヴィジュアル系バンド”をご存
知だろうか。このユニットは、 「天たま」の１コーナー「天
たま軽音部」で生まれたインディーズの５人組である。詳
しくは「StarChild:黒薔薇保存会」や「Wikipedia」など
ウェブサイトの記述を参照するとよい。
ここからは、①前項最後――「何故か人々はそこに集ま
るのだ」を突き詰めること、②黒薔薇保存会を巡る「リス
ナーの情報行動の流れ」について考えていくという２点を
其々に展開していく。

図５－２ 黒薔薇保存会メンバー
（出典＝StarChild:黒薔薇保存会）
図５－３ 黒薔薇保存会ディスコグラフィー
（出典＝同前）
1st single：飛べない天使（SCRF-21）／2nd single：花火（SCRF-22）
3rd single：BLUE HEAVEN（ＤＶＤシングル。NBD-49）
4th single：レッドシグナル（NMAX-80009）
1st album：A Votre Santell（NKCD-6446）
註：Hikaru Utada も失敗しているＤＶＤシングルに挑んだのが３
枚目シングル。オリコン週間ＤＶＤ音楽ランキング２００７年８月
２７日付で４位をとっている。
５．３．２．何故ユイエルを追いかける？
――「招待イベントとしての公開録音」へ行く意義
図５－４ 「～晴れときどき黒薔薇～」
（出典＝StarChild:黒薔薇保存会）
さて、「公開録音」についてもう尐し掘り下げてみたい。
黒薔薇保存会というユニットが、「天たま」を発端としてい
ることは先に話したとおりである。その為、ユニットの「新
鮮な情報」は、番組を介して発信されることになる。
図５－４のイベントに関する情報も、その内の１つであ
る。人々は、ラジオを介して知った情報を基に、黒薔薇保
存会の「ユイエル」、はたまた声優の「堀江由衣」に会いに
いく――言い換えてみるならば「礼拝する」為に、秋葉原
にあるＡＳＯ ＢＩＴ ＣＩＴＹのイベントスペースに集ま
ったわけである（前節で話した「礼拝的価値の不安定さ」
を見事にカバーしているイベントとして、私は「～晴れと
きどき黒薔薇～」を評価したいということを付記しておく）。
 「～晴れときどき黒薔薇～」というイベントが、情報行
動論という観点から示していることは、まさに公開録音に
通ずるものである――「機械複製された音声」に閉塞した
世界を「展示的価値」に追いやり、さらなる「礼拝的価値」
をリスナーに与えている状態を示している。
つまり、アニラジに於いて行われる「招待イベントとし
ての公開録音」が、何故多くのリスナーを引き付け、会場
に呼び寄せることが出来るのか――それは、直接にパーソ
ナリティに会うという「礼拝行為」がパーソナリティの招
待によって行われ、リスナーはリスナーとして、さらには
パーソナリティのファンとして「招待しているその人の期
待に裏切らず、礼拝しなければならない」という、自己が
勝手に生み出しているに過ぎない強迫観念的なものに引っ
張られる形になるからであると言えよう。「アイドル声優の
イベント」や「ラジオ局のささやかなメディアイベント」
でしかない「招待イベントとしての公開録音」というもの
が持っているリスナーがそこに行くことの意義は、その様
なことではなかろうか。
では、改めて「招待イベントとしての公開録音」に行く
ことの意義を以下に纏めておこう。
１． 「時間軸のズレ」、「空間軸の歪み」
、「空間的・時
間的距離」、そして「距離のパラドクス」を、为に
リスナーが感じなくなるために行うということ。
２． パーソナリティのファンとして「招待しているパ
ーソナリティの期待に裏切らず、礼拝しなければ
ならない」という、リスナーが勝手に生み出して
いるに過ぎない強迫観念的なものを達成すること。
※ １と２は強く結びついて意味を強化しあっている。
親しみやすさの希求」という構図があることが述べられて
いた。このゆりしーのイベントにおいては、ゆりしーに神
秘性など微塵もないのである――「限りなくゼロ距離に会
える」ということは、
「雲の上の人」ではなく「そこにいる
人」ということを包み隠さず教えているのである。つまり
「嘯きの神秘性」を示し、
「親しみやすさ」を提示しようし
ているのである。
そのことは、ラジオの公開録音やライブ・コンサートな
どに於いても同じくである。ファンたちがこれらイベント
に忚募したり、足を運んだりするのは、アイドルに「限り
なくゼロ距離に会える」ということ、そして「イベントで
様々なことで触れ合える」ことによる「親しみやすさ」を
感じ得るがためと言えよう。
さて、一箇所にファンが集まる行為は、「アイドルから
親しみやすさを感じる効果的な方法」である一方で、稲増
の指摘を踏まえてみると「ファン同士の連帯」を考えるこ
とが出来るのではなかろうか。
「同時代感覚」と「孤独の捌け口」がキーワードである
と私は先に述べたが、これらを否定しきる要素を私は見出
せない。読者の中には、
「ストレス解消」などの他の理由を
言いたい人もいることだろう。ファン同士が出会い、一箇
所で一体となる行為に対して、すっきりと言い切ることは
結構難しいことであろうし、もしかすれば野暮なことかも
しれない。ただ、
「手段」の先に「目的」があるということ
は、否定できないことである――たとえ６０億人が「しょ
うもない」と言ったとしてもだ。

５．３．３．ゆりしーのオフ会から見えてくること
「生放送」や「招待イベントとしての公開録音」につい
て触れた。 そして、 これらに引き付けられる理由を考えた。
これらの行為というものは、ファンからすれば大変“あ
りがたい”ものである――「アイドル」と尐しでも距離が
（擬似的にだが）近付くためである。つまり、 「距離のパラ
ドクス」を感じなくなるということであり、それは「親し
みやすさ」を求めるテレビ時代のアイドルにおいて、求め
られることの１つである。
そのことを考えるために、分かり易い例を黒薔薇保存会
以外に１つ挙げよう――「落合祐里香（愛称：ゆりしー）
の格安オフ会」である。その状況を報せているものとして
「ITmedia +D Games：声優業界の实状も見え隠れ! 人気
声優・落合祐里香さんの格安オフ会に潜入」がある。これ
を参考にしながら読んでほしい。その内容は实に「親しみ
やすさ」の話をするうえで分かりやすい例なのである。
この記事を読む中でわかることとして、ファンは「ゆり
しーの作ったサンドウィッチ・ケーキを食べた」 「クリスマ
スの話をした」 「ゆりしーのビンタを受けた」 「ゆりしーの
朗読を聴く」 「フリータイムでゆりしーと話した」 「ゆりし
ー脱ぎたての衣装をプレゼントでゲットし、紅潮した」と
いったことをイベントでした／受けたのである。
第１節にて「親しみやすさ」に触れたところで、冒頭稲 図５－５ ゆりしーの格安オフ会（出典＝ITmedia +D
増の引用を示したが、そこでは「スターの神秘性の薄れ→ Games）
５．３．４．巡礼論的声優ファン行動分析 ５．３．５．「リスナー」は「ユニットファン」へ
以上までに話していった声優ファンの行動は、宗教上の ラジオという１つのメディアを端緒としてバンドが生
巡礼と類似している面がある。 「巡礼」とは、
「宗教の聖地・ まれ、そこからＣＤ発売などの本格的な音楽活動へ派生し
霊場を旅し，途中で出会うさまざまな試練を乗り越え，聖 ていくことによって、「１ラジオ番組のリスナー」は「１音
なるものからの功徳を得るとともに，信仰を強め信者間の 楽ユニットのファン」となって追いかけていく。そして、
連帯意識を高める行動」 （
『文化人類学キーワード』p.126） イベントなどに人々は押し寄せる――この一連の流れは、
とされる。 ラジオリスナーの情報行動の一例として、先述巡礼論的忚
本項では、この巡礼の考え方を「声優ファンの行動」に 用と絡めても、見ることが出来ようものだ。
忚用してみたい。 そのファン（リスナー）行動は、イベント開催時にはそ
本節タイトルに合わせて――堀江由衣のことを知ろう の会場に赴くこと（招待状を破り捨てず、礼拝すること）、
と思えば、ラジオを聴く、ＣＤ・ＤＶＤを見聞きする、イ ウェブなどでの感情の発露（参照＝図５－６・５－７）、勿
ンターネット・雑誌などを読むなど、様々なメディア露出 論ラジオ番組を聴き続けること、といったものである。そ
を巡っていく必要がある。また、ライヴやイベントに行く して、それら等の行動によってファンで居続け、その事实
ことによって实際に会うことができる。それらを「聖地や を（自分勝手に）担保している。
霊場を旅」することと置くことが出来る。すると、そうい
った情報を獲得しようとすれば、様々なコストが掛かる。
そのコストには、経済的コスト、社会的コスト（時間など）
があるが、そういったコストは「さまざまな試練」として
知ろうとしている人に降りかかってくる。そうしたコスト
を支払った先に待っているのは、堀江由衣という存在の情
報や存在（功徳）である。
さて、その旅のルートの中には「ライヴ」というものが
ある。堀江由衣ファンが、他の用事を断り、 「アウラ」に惹
かれて日本武道館へ交通費をかけてライヴに行くと、そこ
には“会場限定グッズ”というものが売られている。限定
性という「アウラ」や、ライブに行ったことを示す「シン
ボル性」が存在しているグッズを買うことは、自身の価値
を高めることになるため、コストをかけて手に入れる。そ
してライヴが開演し、 堀江由衣を目にしている自分が居て、
そして周りの人たちと共にノリにノる――ここには、 「日本 図５－６ 私設ファンクラブサイト
「黒薔薇保存会保存会」
武道館ライブへ足を運び、途中掛かるコストを支払い、グ トップページ
ッズを手に入れたり、堀江由衣本人による歌を聴き、満足
しながら会場に居るファンたちとノリを共有する」 という、
巡礼的な構造が見えてくる。
そして、其々のメディアやイベントを其々巡っていくこ
とは、巡礼における「通過性」を有している。これはＲＰ
Ｇで、例えば“街を巡った後に、草原へ出て、敵のいる洞
窟へ行く”といった、巡礼において様々に場所を通過する
ことと類似性があるということだ。
また、SterChild のサイトを見て、『声優アニメディア』
の記事を見て、秋葉原でのイベントに行き、その夜にラジ
オを聴くといったように、一人の声優を追いかけるために
我々は点々とする。そのような行動はＲＰＧでマップ内を
巡るようなものであり、ＲＰＧマップ的な「隔離」の性質
を持っている。 図５－７ ニコニコ動画「アイドルマスター 満天プラネ
と、ここまで巡礼論の忚用的に話してきたが、ならば声 タリウム」
優のファンは「巡礼者」であり「信者」であり、声優は「教 註：このニコ動の場合は、
『アイマス』のファン行動という可能性
祖」であり、そしてその総体は「宗教団体」としての働き が拭えないが、無きにしも非ずの例として挙げておきたい。
を有しているのだと私は言わんとしていることになるであ
ろう――私は、強ち間違っていないと言えるだろうと考え そもそも黒薔薇保存会のファン（リスナー）というもの
ている。「宗教」が「 （不安定な）精神安定装置」であるな が確りと付いたことは、ユイエルが「母体の並列的パフォ
らば、その意味で間違っているとは思えないのである。 ーマー」であることが大きい。
つまり簡卖な話である――堀江由衣についているファン
（リスナー）たちが、（ほぼ）そのままユイエルファン（リ ５．４．そんなに「ほっちゃん」が好きかい？
スナー）へスライドし、そのスライドは「１つのラジオ番 本節は、「ラジオの情報行動」について、アニラジに関
組（＝天たま）
」に於いて円滑に行われたのである。そして、 わる部分について見ていった。第２項で「時間軸のズレ」
、
「天たま」というファン活動に於ける軸の存在が、卖にス 「空間軸の歪み」、
「空間的・時間的距離」
、そして「距離の
ライドに終わらせず、持続的なファンを生み出すことにな パラドクス」について述べた。第３項で「招待イベントと
ったと考えられよう。もちろん、堀江由衣ファンの１巡礼 しての公開録音」について、そして「ラジオリスナーの情
行動先として存在していることも忘れてはならない。 報行動」について、黒薔薇保存会を糸口に探っていった。
だからこそ、そのような「一連の流れ」が確りと生まれ
たのだと考えられる。そうでもなければ、この“名も無き” さて、この読者に「堀江由衣は俺の嫁」と叫んでいるが
ユニットは直ぐに（長くても１年程度で）消滅していたこ 居るならば問うておきたい――「そんなにほっちゃんが好
とだろう――今はいずこの芸人たちのように。 きかい？」一忚私は、本稿「コラム」で色々と私情を書い
そして「一連の流れ」など本稿から私は、ラジオリスナ ている。
ーという存在は、「パーソナリティにへばり付くコバンザ
メ」のような存在と言えなくも無いのではないかと思い、 堀江由衣――彼女を見つめることによって見えてくる
そうであるところで大変末恐ろしさを感じてならない。 のは、「アウラの不安定性」、そして「ラジオリスナーの情
報行動」、さらには「アイドル声優（声優特殊構造）の縮図」
さて、ファンがコバンザメであるところで、読者の中に である。
は「なんて無意味な行為をしているのだろうか」と薄々で
あろうとも思っている人がいることだろう。わざわざ、例
えば堀江由衣とそれを取り巻く「並列的パフォーマー」を
追いかけ続けたとしても、それを職業には普通は出来ない
（ライターなどのごく一部の人は「取材」などという意味
を込められるだろうが）。
しかし、ファンはそれでいいのだ――アイドルに“捧げ
る”時間は、「自由なる浮気心」
・「無目的な自律的遊戯」で
あって、何か金銭的な利益を求めているわけではない。よ
く考えてみれば当たり前であろう――観覧車に乗ることで
収入を得ようと思っているのか。 ギャンブルでもない限り、
稼げたり出来やしないのが「遊び」である。得ようとして
いるのは、言うならば「精神的快感」である。ファンを追
いかける行為自体、まさしくマスターベーションであろう。
私自身、「声優系同人誌」を読みながら思っていたこと 図５－８ 音楽専科社『黒薔薇保存会 ＴＨＥ ＦＩＬＥ』
がある――「どうしてファン活動に於いて、 『同人誌』とい 註：０９年３月に、予約限定で発売された書籍。音楽に限らない部
う手段を取っている人々がいるのだろうか」ということで 分に進出し、ウェブサイトよりも高次のキャノンとしての「ヴィジ
ある。中には１８禁のものもある「声優系同人誌」の世界 ュアル的展示的価値」を付与する対象を与えることになるであろう。
は、アイドル側にとってみれば、不快に感じる人も出てく
るかもしれない。それでも描いているのは、（こういったも
のを書いている私自身にも当てはまることであるが）ファ
ンのマスターベーションと言えよう。ファンの妄想を、例
えば百合同人誌にするといったことは、そうであると言う
以外に何と言えばいいのだろうか。

図５－９ 黒薔薇保存会（ルーフトップ★ギャラクシー）
 第三 章 ２１世紀の声優環境

社会は流動的である。
その流動性の多くは人為的な産物である。その流動的人為的産物を、我々は日々「ニュース」として獲得している。
刻々とニュースが飛び込んでくる毎日に、うんざりとしている人も、幸せになっている人も居るだろう。
声優についても、突如としてニュースが飛び込んでくることがある。それに対して我々は、一瞬判断力を失うときが
ある。そのことを象徴する事件として「アーツビジョン騒動」を挙げられる。本章は先ず、その騒動について社会病理
学／逸脱行為論的観点から導入していきたい。
その他、「声優アワード」
、「声優と音楽」
、「声優とラジオ」
、「百合声優」
、「情報・文化受容格差」
「声優と商品」とい
う、今の声優環境を取り巻く諸事象について本章では取り上げいく。
第一章で歴史を知り、第二章で今を分析したところで、第三章は特徴的な事象からさらに今を見つめ、そして未来を
眺めることを試みたい。

（出典＝「Wikipedia」
“秋葉原”
）

６．アーツビジョン騒動と逸脱行為論
さて、本節は驚くような話を沢山することとなる。学問
的には为として「社会病理学／逸脱行為論」
の範疇となる。
ここで先ず注意しておきたい。本節は、あくまで「犯罪」
や「悪事」を肯定するものではない。そして、私は「枕営
業」はあくまでも「可能性がある」という立場をとってい
る。自身が知らないことを「ある」と言うのは、こうした
文章を書く人間として決して良くないものである。私は、
たとえ同人であろうとも、１書き手としての自信と誇りを
持っている。ここで「捏造」しても何も意味がなく、自身
を苦しめるに他ならない。
そして、ファン感情として語ることは一先ず置いておき
（それは「コラム」でやっている）、あくまで「
（私が言う
ところの）無機質な心」で――実観視して話していく。フ
ァン感情論は別の同人誌などで触れていただくとしよう。
では、初めに本題に入る前に「話の前提」を確認してお
きたい。
６．１．声優が仕事を獲得するまで
今回の事件は、アーツ为催のオーディションにて、受験
に参加した１６歳の尐女に、当時代表取締役の松田咲實が、
「合格にしてあげる」という見返りに猥褻行為を行ったと
されるものである。結局、尐女は不合格となり、渋谷警察
署に相談し事件が発覚し、松田は書類送検されている。
この事件を機に、ファンの間で声優業態の体質に対する
疑念が色濃く持たれた。そしてその疑念は、声優の「枕営
業疑惑」として語られ、アーツビジョン、アイムエンター
プライズ、日本ナレーション演技研究所関係各所が対忚に
追われた。
では、そもそも「声優」はどのように仕事を得ているの
だろうか。これを知らなければ、「枕営業疑惑」と言われて
も、いまいちピンと来ないであろう。
先ず、声優を使って録音製作をする音声製作会社は、出
演依頼を出す人を選び出す作業を行う。予算を見つつ、「ボ
イスサンプル」や「オーディション」によって決めていく。
メイン以外のキャラクターについては音響監督に一任され
ることも多いようだが、メインキャラクターについては、
資料に基づき、プロデューサー、監督、音響監督などで協
議の上、キャストを選考していく。
そして選考決定後、その声優の所属するプロダクション
事務所、またはフリーの声優に正式な出演依頼をする。先
ずはスケジュールの問い合わせがあり、発注側とのタイム
スケジュールが合致すると、「使用目的」や「声優の拘束期
間」が告げられる。続いて、その作品の製作者側プロデュ
ーサー名、演出者名、声優の演ずる役名、役柄や特殊な要
請についても告げられる。シリーズ物で、レギュラーの場
合には必要条項だけが告げられる。
その際、出演料がいくらかと言うことについては、「实務
運用表」によって自然に算出出来る為に、逐一告げられな
い。声優自身も、この「实務運用表」により自分の出演料
を認知する。声優の所属する事務所側は、製作者と取り交
わした「实務運用表」によって出演料を算出し、製作者側
に請求書を送付する。出演の度に一つ一つの契約書にサイ
ンするという作業は、超有名俳優など特殊な例を除いて实
行されていない。
そして、声優はアフレコ／プレスコをするのである。録
音スタジオで、音響監督は発注した音楽や効果音を考えな
がら、そして監督の意向を踏まえながら、セリフのしゃべ
り方や感情表現、スピード感などを指導をする。声優がそ
れを聞きつつ映像に合わせて演技し、その音声をミキサー
が録音する。この段階では他の音響要素が一切なかったり、
時に映像が「白味」や「線画」の場合があり、ここでの音
響監督の役割は特に重要である。現場には音響プロデュー
サー、監督、出資会社、制作会社、場合によっては脚本家、
原作者が立ち会うこともある。
以上が、声優の仕事獲得からの大まかな流れである。こ
れを踏まえていれば、以下、ついて行き易くなるだろう。
次に、
「犯罪の有用性」について話していく。
６．２．騒動の経緯
これから「アーツビジョン騒動」に関して論じていくわ
けだが、そもそもこの騒動はどのようなものであったのか。
これまで聞いたことも無い人がいれば、知っているけども
大分忘れてしまったという人もいることだろう。
では、その経緯を「アーツビジョン騒動関連まとめ wiki」
（以下、「Mwiki」
）を中心に再構成して見ていく。なお、
この経緯一覧の末尾には、 「落合祐里香の動き」という別枞
を設けている。何かとファンが“勝手に騒いでいる”彼女
について、一忚は関連事項が纏まっている。
0612･･ 事件発覚
株式会社アーツビジョン開催のオーディション
において、松田咲實代表取締役（当時）が、１
６歳の尐女に面接合格をちらつかせ、猥褻行為
に及んだ。その後、尐女は不合格となり、渋谷
署に相談し発覚した。
070126 「syn blog | おしゃべりやってま～す。木曜日
第 89 回」
（http://syn.mari-fc.com/?eid=453450）
声優業界就職講座第三回。セクハラプロデュー
サー。
小野坂： 「操とか知ってますか？」
松来： 「操？…もう守りすぎて。 」
小野坂： 「ハハハハハ！」
小野坂：「プロデューサーやディレクター、
音響監督なんかに飲みに誘われることあり
ますよね？」
進藤：「はい（即筓）」
松来：「えーっ！？」
進藤：「それぐらいあるでしょう！？」
小野坂：「アレレ？」
松来：「みんなで、ってことですよね？」
 進藤： 「二人っきりもあるでしょ？」 うヤツもいてるんですよ！そしたら、毎週
松来： 「・・・・・・・話、続けてください。
」 誘われるようになりますよ。用事があった
ﾎﾟｯｶｰﾝ状態の松来さん…。 としてもよ、‖なんだよ、今日来ないのか
小野坂： 「駆け出しの頃、ジュニアとか言わ よ？‖って話になるの。そしたら行かなかっ
れてる頃に、先輩と業界人ばっかりでした たらそのアホはね、すごい欠席裁判をする
よね。そんな人たちが、ガヤしかやってな わけ。いてないやつの悪口ばっかり言うわ
いような女の子に向かって、ご飯でも食べ け。アホやから。何故かというとアホやか
に行かないか？なんて、よく言われました ら。でもそのアホの言うことを真に受けて
よね？」 聞いているいい人もいるワケよ。 」
進藤： 「はい。今でもですよ（笑） 」 松来：「でも、そういう人の言うことを信じ
小野坂： 「進藤はガンガン食いついてくるの たりするんですか？」
に、松来さんから当たりが感じられないん 小野坂：「信じる人もいるわけ。いい人は素
ですけど。 」 直に聞いちゃうんですよ。そんな人もいる
進藤： 「（笑）」 の、全員そうじゃないけど。だからこのア
ホディレクターのことをアホだとわかって
小野坂：「つきあいの悪い女の子でもね、た るいい人達は、アイツの言うこと気にしな
とえ行きたくなくても、行かざるを得ない くて良いから、みたいなこと言うんだけど、
場合がたくさんあるわけですよ。断れない ほんとに（事情が）わからない人は、あ、
状況が。それで飲みに行ってしまうじゃな そうなんですか、ってなっちゃうわけ。だ
いですか、そしたらプロデューサーやディ からそう言われないように毎週行ったりす
レクターと一緒の席に座らせられるんです るわけですよ。」
よ。で、側にディレクターが、ちょっとこ 松来：「じゃあ（行っても行かなくても）ど
の席いいかな～、なんつって、」 っちでも辛いんですね。」
進藤：「入ってきて、ね。」 小野坂：「そうなんです！…それで、ある日、
小野坂：「若い子のとこ目指して座ってくる 人数が尐なかったり先輩が帰ったりして、
ディレクターもいるんですよ。で、ほんと 二人になることがあるわけですよ。そこで
に頭の弱いディレクターに限って、すぐに 更に誘われるんだけど、断れないわけ！二
業界話をしようとする。お前達は俺が声を 人しかいないわけだから。そういう状況に
かけたらすぐ使えるんだよ、とか言いたが なる時があるわけ。」
る人がいる。」 進藤：「あるある。」
松来：
「ほんとに力がある方は、そんなこと 小野坂：「そこでデートとか誘われて、また
言わないですよね。」 断ったらしょーもないことになるから、遊
小野坂：「松来さん、その通り。もうほんと びに行ったりするわけですよ。そんなこと
にヤりたいだけなんですよ、その人は。そ を重ねてるウチに！…ヤられてしまう。こ
ういうこと言う人に限って仕事できないの のパターンが一番多いです。」
ね。でも实際そういう人が側に来てお酒を 松来：「ほんとに…！？（進藤を見る） 」
飲み出したら、お酌とかしないと、その仕 進藤：「あたしが言うとリアルになってしま
事できないディレクターは、‖あいつ酒もつ うから、なんともいえまへんけども…」
げねぇんだよ‖とか本当に偉い人に言いは 小野坂：「でも、これは回避できる可能性が
るわけ。そしたら、アイツは気が利かない ありましたね。でも、回避できない状況も
って本当に仕事できる人たちに言っちゃう あるんです。ある音楽プロデューサーと飲
のよ！」 みに行ったら女の子ばっかり。松来さんが
松来：「それは困りますね！」 あるアニメに出たとします、そのアニメの
小野坂：「だろ？その一人の馬鹿がいること 中で歌を歌わなきゃいけなくなりました。
によって、本当に仕事で使ってくれそうな でもそのアニメはレコード会社と契約して
人たちは、」 るので、そこのレコード会社からしか出せ
松来：「悪い印象だけが先に…」 ません。という状況になりました。歌の打
小野坂：「そうなんです！そこなの！…だか ち合わせもしなきゃいけないから、俺が毎
らちょっと頭の回る女の子は、仕事しづら 月催してる飲み会があるから、そこに松来
くならないように、嫌やけども、ニコニコ さん来てみない？って言われたとします。
お酌する女の子もいるわけ。そしたら、そ で、お店に入ったら、若い女の子ばっかり、
のアホはどう考えるかというと、‖おっ？こ 男ってこの人だけ？なんだろうこの飲み
いつ俺に気があるんじゃないか？‖って思 会？挨拶に行ったら、周りは 2，3 年目のジ
 ュニアばっかりはべらせて。」 070528 書類送検
松来：「えーっ！？！？」 書類送検され、事件化されたことにより各メデ
ィアが報道。２ちゃんねる、mixi、blog、掲示
傍若無人なエロプロデューサーを演じる小 板などの声優ファンコミュニティでは阿鼻叫喚
野坂。 となった。アーツビジョン、アイムエンタープ
ライズ、日本ナレーション演技研究所の各サイ
小野坂： 「…ってなる時がっ！」 トに謎のアクセスが集中し、通常閲覧が出来な
松来：「えーっ！マンガみたい！！」 い状態にまでなった。
小野坂：「悲しいかな、マンガみたいな状況 070528 伊月ゆいブログ「Topazios」（http://www.topa
が。」 zios.net）より、
「今日と言う日に」
松来：「でも、この歳になってそんな状況見 アーツ騒動に関わってではないかと話題に
たこと無いってのは、見事にその方に選ば 何が善で何が悪か
れてこなかったんですよね。 」 そんなの誰が決めたのか
小野坂：「僕の体験から言うと、松来さんは
ものすごくこの人に…」 誰かが笑えば誰が泣く
進藤：「架空の人でしょ！！」 それは当然の事で
小野坂：「選ばれやすいタイプだと思うんで 自分が笑う為には
すよ。断られないタイプかと思うんです 犠牲がいっぱいあって
よ。」 でもそれを知らない振りして
進藤：「なるほどね。それはわかる気がす 善人顔している人が多い
る。」
小野坂： 「Ｈしても黙っとくんじゃないか、 そう言う人に限って
って思われると思うんですよ。 」 傷ついたとか
松来：「全然ないです。」 裏切られたとか
小野坂：「…そっかー。松来さん誘われない
わ。」 私だけは綺麗な心のままでいたい
進藤：「なんで？」 なんて
松来：「早く見せてください、そのカンぺ！」 あり得ないよ
小野坂： 「なぜならば…」
松来：「（カンペを読む）‖おっぱいがないの みんな
が幸いしています。‖」 みんな必死なんだもの
小野坂： 「この人、おっぱい好きやの。」
進藤：「架空の人だけどね（汗） 」 それぞれ方法が違うだけ
小野坂：「そういえばおっぱいの人ばっかり
だ（笑）…ほんまやな。 」 私は否定も肯定もしない
進藤：「そんな分かり易い理由！」 ただ
自分の行動を理解して責任を持って欲しい
小野坂： 「（茅原）みのりんは絶対もうヤら
れてます。ただ、みのりんはなぜここに陥 そして知って欲しい
らないかというと、…エイベックスだから 知らないふりして天使でいる事こそが悪魔だ
です。 」 と
070404 松田咲實逮捕
捜査の結果、松田は逮捕される。取調べ中に持 今日の日記
病の糖尿病を訴え、逃走の惧れ無しから一時釈 どう受けとられるか分からないけれど
放される。 肯定的に受け取られちゃうかな
070405 今五麻美 アーツ→フリー でも私が感じた事そのまま
（ http://blog.livedoor.jp/ubiquitous777/archiv だって自分の中に無い価値観を排除したって
es/50443047.html） 意味が無い
☆ご報告☆ 自分の価値観だって第三者にとってもまた、
このブログをご覧の皆様にご報告があります。 無いものなんだから
私は先日、4/5 を持ちまして今までお世話にな 排除するより理解した方が何倍も良い
ってまいりました所属事務所、㈱アーツビジ
ョンを離れることになりました。 尐なくとも私はそう思う
 規模に開催。
色んな人がいる 同日 新作アニメ「さよなら絶望先生」キャストに、
当たり前だけれどそれだけの事だ アーツ系列所属声優がキャストされず。
070529 報道の余波 Mwiki の「サンライズ・スタチャなど関係の
Yahoo!トップニューストピックスに掲載。 深い会社よりの通達」より引用。
アーツ系列の所属声優らがコメント発表。 声優総合@2ch のアーツビジョンアイムエ
アーツ、アイム、日ナレ各サイトが更新。 ンタープライズ 55 より抜粋
日ナレ生には「 『事实無根なので安心していい』
と連絡があった」との情報。 703 ： 声 の 出 演 ： 名 無 し さ ん ：
Wikipedia 関連ページが保護される。 2007/06/10(日) 05:38:27 ID:Hx3hTxKQO
被害者尐女のイニシャルが掲載されたブログが 4 月の逮捕の時点でｽﾀﾁｬ、ｻﾝﾗｲｽﾞはじめ为
更新。但し、アーツ側が意図的にリークされた 要なクライアントには挨拶回りしている。
可能性が高いため、尐女に非があるとした内容 ｽﾀﾁｬ ｻﾝﾗｲｽﾞ両社とも激怒。報道されるのだ
は、信憑性が欠けているとも言われている。 けはあっては成らぬ！
アーツ本社前で、第一次枕投げＯＦＦ会が尐人 報道され、ｽﾀﾁｬ、ｻﾝﾗｲｽﾞからは今後の付き
数で開催。 合いを断られた。ただし、直後に控えてい
070530 松田咲實アーツビジョン・アイムエンタープラ た新番組等、決定されているものは、その
イズ・日本ナレーション演技研究所代表取締役 限りではない。
辞任 ｽﾀﾁｬからの厳命で、堀江フリー、当面のス
各サイトにコメント掲載。日ナレのサイトに掲 ケジュール窓口だけアーツを使う形式に。
載されたコメントには、 「なお、受講生および面 使用される側から使用する側へ移行。
接を受けられた方々等に付きましては、現在に 所属者特待生契約に関しては、全て不履行
おきましても、過去におきましても、今回報道 とされ、移籍後、フリーにしたとしても間
されているような事实は一切ございません」と を空ける事はなくなった。以上。
あり、松田の送検内容を否定するような内容が 070603 日ナレで保護者説明会開催の模様
掲載された。 同日 mixi にて元日ナレ生から、松田から受けたパワ
070531 ２ちゃんねるに「業界人の妄想」スレッドが立 ハラについての告発。
つ。 同日 アーツ所属の大沢つむぎのブログ （Mwiki より）
業界関係者が書込をしているのではないかとさ 事件について友人から知らせがきて６日がた
れるが、内容の信憑性は薄い。 った…。 しかしながら、事務所からの事情説
同日 サイト『アニメイトＴＶ』内の日ナレに関する 明はない。社長辞任のお知らせが辞任につい
記事が全て削除される。 ての理由説明もなく、 FAX 一枚で届いた…。
070601 後任人事決定 そして、いまだ新役員体制についてのお知ら
アーツ新代表取締役 町田泉（ぷろだくしょん せがない。 社長はどなたが就任されたのであ
バオバブ初代社長 前日本芸能マネージメント ろうか？？一忚、外から知らせを受け知って
事業者協会理事） はいますが・・・・
アイム新代表取締役 江崎加子男（マウスプロ 070604 日ナレ生徒への説明会内容がリークされる。
モーション初代会長） 普段は誰もいない出入り口で社員が出迎え
日ナレ新代表取締役 木村文彦（前日ナレ取締 日ナレの説明（Mwiki のまとめ）
役事務局長） １． 書類送検は事实であるが、松田氏の辞任
同日 音泉『Knock Out VOICE!!』内で黒田崇矢と大 は騒動で迷惑をかけたため。
塚明夫が意見を述べる。 ２． 尐女が訴えたのは松田氏個人であり、ア
同日 『VOICE CREW』が日ナレ広告を自粛する。 ーツ及び日ナレとは何ら関係がない。
以降、日ナレが広告を出していた番組（ノン子 ３． 日ナレがなくなることはなく、レッスン
とのび太のアニメスクランブル等）は全て広告 は通常通り行われるので心配はいらな
自粛。 い。
同日 小菅真美 アーツ→フリー ４． 事件の内容については一切触れなかっ
（ http://www.tamon.co.jp/~mami/home/2007/ た。
06/post_99.html） ５． 授業料納金の催促状が渡された。
大切なお知らせ 「日ナレかわら版 2007 summer june 7」が
先月いっぱいでアーツビジョンを退会しまし 渡された。以下、Mwiki より本文。
た。今日からフリーです。お仕事下さい。 「見稽古」
「聴き稽古」の大切さ
070602 アーツ本社前にて、第二次枕投げＯＦＦ会が中
 受講生の皆さんもレッスンやクラスメイ
トにも慣れ親しみ、元気に成長路線を辿って
いることと思われます。幣所のレッスンシス
テムは、指導者である講師に一年間弟子入り
するといった感覚で、講師の持っているもの
を吸収し尽すという仕組みの受講システム
を敶いてきました。レッスンの中では均一に
演技発表やダメだし指導ができないことも
ありますが、他者へのダメだし指導している
内容や直し指導を己への指導と考え、自分の
ものに吸収することも大切なことです。他の 070606 starchild 公式サイト内堀江由衣ページの日記
演技者の演技表現のいいところを学び、役創
りのアイディア等を参考にすることも演技
レッスンの重要な習得方法です。レッスンの
中でなかなか自分の番が回ってこないと不
安に感じる人もいるかもしれませんが、他者
の演技やそのダメだしを見ることもきわめ
て重要なレッスンとも言えます。そのほか生
活周辺にあるあらゆる事象をインプットし
て、役者の「引き出し」を増やしていくこと
も成長の礎となります。プロの俳優になる、
という強い決意を持って、日々の訓練に臨む
姿勢もまた大切なことです。
どんなことも見落とさず、指導の全てを自
分のものにできるぐらい柔軟な姿勢でレッ
スンに励まれることを期待しています。
㈱日本ナレーション演技研究所 代表取締
役社長 松田 咲實
生徒の中には事件そのものも知らず、また楽観
的な見方をする生徒がかなり多いとのこと。見
た目がいい人やオシャレな人が見られなかっ
たようである。
同日 大沢つむぎブログ（Mwiki より）
社長就任と説明会のお知らせが郵送で届きまし
た。う～ん…う～ん…う～ん…あのぉ～～～江
崎さん現取締役営業本部長さんだったんですね。 同日
いつから取締役でいらしたのでしょうか？有限
会社から株式会社にいつのまにかなっていまし 070607 アーツ・アイム所属声優への説明会開催
たしね… 今回は珍しくご挨拶までいただける 同日
なんて… ・・・・・・・・・・・・・・・・・
いけませんね（＾＾；；状況がわからない分不
安というより不満が沸いてきています。愚痴る
のはご説明をいただいてからでも遅くないです
ものね。
同日 （Mwiki
有志による「３ヶ月不買運動」が始まる。
より）
「この『運動』はアーツビジョン・アイムエン
タープライズだけでなくショップ、アニメ制作
会社、ゲームメーカー、音楽出版社等々の関連
会社・業界およびその株为、スポンサーに対し、
『運動』による売り上げの減尐という直接的な
圧力をかけることで、声優業界の悪質なパワー
ハラスメント体質の自浄を期待するものです」 同日
０７年６月初日より、アーツビジョン・アイム
エンタープライズおよびそこに所属する声優に
関連するＣＤ、出演アニメ、ゲームソフト、出
版物、イベントチケット等の全販売物の不買を
行う運動である。 「２ｃｈ声優総合板の『３ヶ月
不買運動スレ』 」や「アーツビジョン騒動関連ま
とめ wiki 内の『３ヶ月不買運動まとめページ』 」
を为な活動場所として、３ヶ月毎にアーツ系列
会社の状況、声優を含む業界側の対忚を見て活
動の更新をする。
が更新
Mwiki より本文
（株）アーツビジョンの報道の件につきま
して、ファンの皆様には大変ご心配をお掛
けいたしました。デビュー以来（株）アー
ツビジョンにお世話になっておりましたが、
報道されているようなことは一切御座いま
せん。これからも今まで通り頑張りますの
で、温かく見守っていただけたら嬉しいで
す。今後とも忚援よろしくお願い致します。
・ 「報道されているようなことは一切
御座いません」というコメントが、マ
スコミ報道内容の否定や、ネット掲示
板などでの様々な憶測に対する否定
などと採ることが出来、物議を醸した。
・ 事務所側の意向を反映した（または指
示された）発言であるという意見が出
ている。
・ 「お世話になっておりましたが」とい
う表現について、猪岡は既にここから
「フリー」であることを読み取れたと
考える。所属しているならば、 「お世
話になっています」といった表現が出
来る筈だ。
アキバ blog にて、
「『声優の枕営業』のことかも
しれない POP」の記事
大沢つむぎのブログでの謝罪（Mwiki より）
私が声優として所属しております株式会社ア
イムエンタープライズ前代表取締役社長松田
咲實がおこしました事件につきまして被害に
遭わせてしまった女の子、ご家族ご親戚お友
達の方へそして忚援してくださっている皆様、
申し訳ございません。心からお詫び申し上げ
ます。これは、大沢つむぎの個人の気持ちで
す。全てが明らかになったわけではありませ
ん。先ほど、所属声優への説明会がありまし
た。説明会が終わって明らかになった事は所
属声優全員が全く知らされていなかった。と
いう事实と事件の詳細が何もわからないとい
う事だけでした。
『週刊实話』にて、
「声優プロ社長が面接 尐女
 の下半身をお触り」
記事より一部抜粋
「被害に遭った尐女は昨年１２月初め、同社
の社長审にオーディションと称して呼び出さ
れた。その際、採用することを条件に下半身
を触ることを要求され、触られた。同月末に
被害届を提出。渋谷署は５月２８日までに松
田を児童買春・ポルノ処罰法違反の疑いで逮
捕した」
（捜査関係者）
（中略）
实際、この裏付けとも取れるこんな話もある。
昨年１０月に同社を退社した声優、落合祐里
香さんは、セクハラを受けたことはないとし
た上で、「噂はありましたが、本当だと知った
のは、この事件が明るみになってからです」
とコメント。
・ 落合はコメントを事实無根と否定し
ている。
同日 「syn blog 美佳子＠ぱよぱよ 第 308 回」
p://syn.mari-fc.com/?eid=546252）より引用
高橋美佳子：「てゆーか…てゆーか、ちょっと
いろいろあって（笑）いろいろあったんです
よね？なんか。」
うずらん：「何、確認したの？」
美佳子：「マネジャーいるかなーと思って
（笑）」
うず：「ハハハハ！」
美佳子：「さっき帰ったんだ？じゃ、いいかな。
いろいろあったんで。そっちに阿部さん気を
取られてて、あたしの誕生日すっかり忘れら
れてて。ほんとなんかタイムリーすぎるよ、
って時期じゃなかった？びっくりしましたよ。
…前の日だったんだ？あの事件は。 」
うず：「アハハハハ！！」
美佳子：「ホントに…びっくりですけども。ま
ぁ私の口からはなんともかんとも。はい。わ
かりませんので。皆さん何か気になる方は、
ホームページなどを見て確認したりすると良
いんじゃないでしょうかね？まぁ、あのー、
なんかねー、大変だったみたいで（笑）あた
しは全然知りませんでしたけれども。いやぁ、
しかし情報って早いね。もう一瞬にしていろ
んな人からメールが来ましたけれども。はい。
まぁ何のことかわかんない人はわかんない方
が良いので。そのまんまで。はい。 」
070608 音泉『Knock Out VOICE!!』内で黒田崇矢と大
塚明夫が意見を述べる。
同日 アイム所属タレント説明会詳細が、声優総合＠
２ｃｈ掲示板のアーツビジョンアイムエンター
プライズ５１内にてリークされる。Mwiki の内
容まとめ（猪岡一部整理）
１． アイムエンタープライズ所属声優に行
われた説明会の内容は、対外用ガイドラ
イン配布がメインであること。
２． 事務所を含め報道がされた５月２８日
に一連の事件を初めて知ったことにする、
という虚偽の指示。
３． ファン・メディアへのコメントの内容を
指示
・ 心配してくれているファンへのコメント
としては、「ありがとう」
「ごめんなさい」
「ご心配お掛けしました」など比較的軽
度の挨拶に留めておくのが得策かと思わ
れます。
・ 事件全体に係る意味での謝罪の意ととれ
るような表現は避けてください。
例「今回の事件につきまして、所属俳
優として皆様方にご迷惑をお掛けして
しまいました事をお詫びいたします。」
＝これはＮＧ
４． 松田前代表および被害者尐女へ批判・擁
（htt 護のコメントをすることの禁止。
５． アーツビジョンの看板声優である堀江
由衣およびその他数名が移籍すること
（したこと）を公言するな、との暗黙の
指示。
６． 告発のあった掲示板内で証拠写真が提
示されており、上記内容の信憑性が極め
て高いこと。
７． 名目上は対外的な体裁のためアーツビ
ジョンおよびアイムエンタープライズは
マネ協（日本芸能マネージメント事業者
協会）を脱退。实質的な追放処置を受け
る。
８． 仮に再登録が不可になった場合、新プロ
ダクションを早期に立ち上げマネ協へ再
登録させる案も出ているとのこと。
同日 アイムサイトに江崎代表のコメントが掲載。
Mwiki の内容まとめ
「スポンサーとファンへ一連の騒動を謝罪す
る」
「事件が報道されるまでスタッフ一同（逮捕
された松田氏から？）何ひとつ知らされてい
なかったため、スポンサーと所属声優に納得
できる説明が出来ていないこと（※ファンは
含まれていない）」
「今回の騒動に所属俳優は関与しておらず、
一部で風説されているようなこと（※どうい
った内容を指しているのかは不明）はない」
「信頼回復に努めていく」
同日 伊月ゆいブログ「Topazios」 （http://www.topa
zios.net）より、
「28 日の日記の件について」
28 日に私が書いた日記を見た方から、
いろんなメールを頂きました
書いた時期と表現方法が悪かったけれど、
 皆さんに言われているような意味で も同じで、今アーツビジョンのホームページト
書いたものじゃないんです ップで掲載されているコメントが、今出来る回
筓の精一杯だと聞きました。正直、歯痒いので
忚援してくれている方々に対する責任として、 すが、ファンの皆様には、今しばらく見守って
ちゃんとここに書いておきますね 戴きたく思います。正しい事が判り、言える時
期が来たら、その時は私の想いも含めて、必ず
ご報告致します。ただ一つ、今自信を持って言
必死だから何をしてもいい える事は、私自身は、過去一切現在に至るまで、
そういう意味の詩では無いですし、 今回の様な事实はありません! これだけは、胸
私自身にも言われているような事は一切あり を張ってはっきりと言えます! （後略）
ません 070610 アーツ騒動署名活動、雷雤によって延期
070611 サイト『やまなこわ』６月１１日エントリにて、
堀江由衣公式ＦＣ「黒ネコ同盟」に問い合わせ
心配メールを送ってくれた方や、 た模様が書き込まれる。以下に一部抜粋。
いろんなところで忚援してくれた方に （☎かける）
今はただ「ありがとう」を伝えたいです FC：黒ネコ同盟です。
がそ：会員番号○○番の一ファンの者です。問
支えてくれてる人たちが居て私がいるという い合わせたいことがあるんですが。
当たり前の事を再認識しました FC：はい、どうぞー
がそ：声優グランプリのネット上の記事とか
で、事務所所属がフリーとかいてあったり、
日記は削除をしないでそのまま残しておきま アーツビジョンを脱退した等の話もでまわっ
す ているんですが、いま現在の所属はどうなっ
私は自分の言葉に責任を持ちたいし、 ているんでしょうか？
読まれて困るようなことは書いてないつもり FC：はい、フリーになっていますよ。 （ア
ですので ッサリ）
がそ：え。FC の運営や存続に影響は無いで
すよね？
今日から日記を再開しますので、 FC：はい、今のところ変わりはありません。
これかも忚援して下さいね がそ：レコード会社とかラジオとかはどうな
そして ります？
ありがとう FC：こちらでは関わり無いのでわからないの
ですが、CD の予定も変更があるとかはきい
伊月ゆい ていません。
がそ：では、フリーになっても現状の仕事に
070609 同月初旪に立ち上がった『声グラ web』の「声 は影響は無いようなんですね？
優名鑑」にて、堀江由衣の所属事務所が「フリ FC：そこまではなんとも言えないのですが、
ー」と表記されていた。 （公式発表前であり、誤 何か変更がありましたら FC のテレホンサー
記の可能性かとされた） ビスで告知します。
同日 『テレビブロス６月９日号 ロマンポルシェ。 』 がそ：なるほど。安心しました。ありがとう
に載った。 ございました。
ロマン優光がアーツビジョン騒動を嘆く内容を FC：はい、ありがとうございました。(☎切
載せた。 る)
同日（Mwiki アップ日） 桑谷夏子が「声優グランプリ 同日 また、『☆飯塚雅弓のまーちゃん日和☆』による
Mobile」にてコメント と、構成作家の誕生会に参加後、飯塚と堀江が
この度は、アーツビジョン前社長が起こした 遊んでいたらしい（同ページには２ショット写
事件により、世間様をお騒がせ致しまして、大 真有）。この時点では、まだ堀江は自由行動でき
変申し訳ありませんでした。 事件自体が、スタ たようだ。
ッフもタレントもまさに青天の霹靂だったこと 同日 アーツサイトに町田新代表のコメントが掲載。
もあり、あれから幾日かが過ぎた今でも、实は 内容はアイムとほぼ同様。ただ、「ご心配をいた
判らないことだらけなのが事实で……。正直、 だいております ｢所属俳優への関与｣ につきま
今一タレントの私が言える事は何もないという しては、一切ございませんので、どうぞご安心
のが、精一杯の回筓です。それは事務所の回筓 下さい」という一文が付されている。
070612 雑誌『週間アスキー ６月２６日号』 、 「週間ア
スキーネット事件簿」に記事。Mwiki より以下
引用。
今問題の声優事務所に抗議するオフが続々勃
発 様に多大なるご迷惑をお掛けしました事を深
先日、大手声優事務所の社長が、オーディシ
ョンに来た声優志望の 16 歳尐女にわいせつ
行為をして逮捕された。
同事務所には多くの人気女性声優が所属して
いることから、ファンは事務所に不信感をつ
のらせ、抗議行動に移る人々も出てきている。
あるオフでは、事務所の前に十数名のユーザ
ーが並び、無言のポージングで抗議。
また、夜に事務所の前で枕投げをするという
不可解な抗議オフもあり、ファンの動揺の大
きさがうかがえた。
070613 日本芸能マネージメント事業者協会サイトに
て、松田が同副理事を辞任し、アーツ、アイム
が自为退会したことを発表。
「あくまでも自为的な退会であり、所属声優及
び社員には落ち度は無かった」 、「事の真偽に関
わらず、松田代表の反社会的行為を疑われる状
況があった」とコメントにはあり、状況を何ら
かは把握していることが覗わせた。また、今回
の退会は、事实上の除名処分であることは明白
である。
一方で、
「マネ協退会後も業界内の無用の混乱を
避ける観点からも、両社所属俳優に、弊協会会
員適用の出演ルール適用を暫定的に認める」と
している。
同日 有志により署名活動作戦会議ＯＦＦが開催。
同日 雑誌『週間マガジン』連載、 「さよなら絶望先生」
第九十八話「恩着せの彼方に」で、今回の騒動
を臭わせる内容。
070614 アーツ・アイムの登記情報が有志により公表。
070615 アーツ・日ナレの東商リサーチ情報が有志によ
り公表。
同日 有志により署名活動作戦会議ＯＦＦその２が開
催。
同日 音泉『Knock Out VOICE!!』内で黒田崇矢と大
塚明夫が意見を述べる。
同日 雑誌『声優グランプリ』編集長カワウチが、編
集部ブログ「Say! Good lock!!」にて堀江、三瓶
の「所属：フリー」は誤報ではないと明言。
070619 日本声優事業者協議会が、町田泉の理事長辞任
を発表。
以下、Mwiki より
株式会社アーツビジョンならびに株式会社ア
イムエンタープライズ
代表取締役社長 松田咲實氏 書類送検の件
について
この度は、５月２８日に報道されました本協
議会理事社：株式会社アーツビジョンならび
に 本協議会理事社：アイムエンタープライズ
前代表取締役社長松田咲實氏の書類送検の件
につきまして、関係各位ならびにファンの皆
くお詫び申し上げます。
本団体と致しましては、本件を重く受け止め、
すでに本団体理事長：町田泉（株式会社アー
ツビジョン現代表取締役社長）の理事長職辞
任届けが提出されております。また、今後の
対忚と致しましては、事件の推移を見守ると
共に厳格な対忚を行うべく、団体内にて協議
中でございます。
今後、このようなことの決してないよう、団
体をあげてつとめていく所存ですので、
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
070630 『ＢＵＢＫＡ ８月号』内、 「どんだけ淫らな
業界性活スキャンダル 枕営業はびこるアニメ
界 声優たちはヤラれ放題!?」
事件概要と、一部声優やブログの反忚を掲載。
猪岡の注目点を、以下引用。
「一説には、彼女は U-15ＤＶＤを発売してい
た子役アイドルだったと言われています。し
かもＤＶＤは過激すぎて発売中止になったと
いう曰くつきなんだとか、児童ポルノまがい
のものとも言われてるそうです」 （ワイドショ
ー記者）
・ http://www.new-akiba.com/archives/
2007/05/16dvd.html によると、 「ギョ
ウカイヘッドロック」の記事では、尐
女は「ＡＴ」とされていた。そして、
「巫女の日曜美術館」で具体的に紹介
されている。 「巫女～」で示されてい
る、 「あやしいわーるど＠QWERTY」
一部レスにある http://www.akibablo
g.net/archives/2006/09/dvd27000.ht
ml は、朝木智美の発禁ＤＶＤの記事
であるが、この朝木が、アーツの被害
者尐女ではないかとしている。これは、
朝木がアーツ特待生オーディション
で最終メンバーに残っていたことが
根拠らしい。信憑性は薄い。
同日 第１回署名活動が秋葉原駅駅前広場で開かれた。
同日 河合久美 アイム→フリー
（http://kawaikumi.jugem.jp/?eid=87）
[重要]今後のファンレターの送り先につきまし
て
２００７年６月３０日付にて所属しておりま
したアイムエンタープライズから退所し、同年
７月１日から河合久美がフリーとなりました。
同日 森永理科 アイム→フリー
 （ http://morinagarika.livedoor.biz/archives/51
170423.html）
お知らせ
森永理科は、本日６月３０日をもちまして、ア
イムエンタープライズを離籍いたしました事
をご報告いたします。予てより考えていた音楽
とお芝居の両立をすべく、ご相談させていただ
いて、結果、お互い文句なしのいわゆる円満退
社でございます。７月１日より、フリーランス
として独立し、自社にてそれぞれの活動を管理
していこうと思っています。
070701 第２回署名活動が秋葉原駅駅前広場で開かれ
た。
070702 アーツビジョンの公式サイト再開。サイト内で
堀江由衣の名前は載らず。
同日 日本ナレーション演技研究所の公式サイト再開。
「为な出身者一覧」にも、堀江由衣の名は載っ
ていない。
070707 『月刊 創 ８月号』内、 「大手事務所社長の
ワイセツ逮捕で浮き彫りになった声優業界裏事
情」
カジ速 070712 の記事「あのアーツの松田社
長は枕の斡旋もしていたらしい件」
（ http://www.kajisoku.com/archives/eid14
80. html）にて、一部が挙げられている。
070713 アイムエンタープライズ公式サイト再開。
これで３社全てのサイトが再開したが、被害者
への謝罪、信頼回復策や再発防止策は見られず。
また、松田の３社における１００％保有の筆頭
株为は変わっていない。
070718 『月刊 サイゾー ８月号』内、
ーカイの闇 ワイセツ騒動に揺れる、声優業界の
真の姿とは？」
070722 今五麻美 フリー→カレイドスコープ所属
（ http://blog.livedoor.jp/ubiquitous777/archive
s/50472702.html）
◆お知らせ◆
ここをご覧下さっているみなさんにお知らせい
たします。私、今五麻美は先日より ㈱カレイド
スコープ（※音が出ます）に所属することにな
りました。今までに増して、一層頑張らせてい
ただきますので変わらないご声援を頂けると嬉
しいです。
070722 河合久美 フリー→引退
（http://www.kawaikumi.jp/）
お知らせ
みなさんに、私から、大切なお知らせがありま
す。 いまさらかもしれませんが、 ２６歳とい
う歳でフリーになってみて分岐点に立ち、 演じ
ることや声優業界のことをもう一度違う角度か
ら見てみた今、 もう一度真っ白の自分に戻って、
考え直す期間が欲しいと思いました。
（中略）
「休業」とか、あやふやな言い方をするのでは
なく、 「河合久美」は、潔く引退させていただ
こうと思います。
070807 佐久間紅美 アーツ→フリー
（http://chibikuma.blog.drecom.jp/archive/157）
夏だなぁ。みなさんはお元気でしょうか？
（中略）
約１１年間お世話になった（株）アーツビジョ
ンを離れることにしました。
そして、フリーになりました。（後略）
070901 佐久間紅美 フリー→ミディアルタエンタテ
インメントワークス移籍
（http://chibikuma.blog.drecom.jp/archive/201）
突然ですが。私、佐久間紅美はフリーとして活
動しておりましたが、ご縁がありまして、この
たび（株）ミディアルタエンタテインメントワ
ークスに所属することとなりました。 （株）ミデ
ィアルタエンタテインメントワークスは事实上
この 9 月から動き出す、新しい会社です。所属
の俳優もまだほんの尐ししかおりません。
同日 下和田裕貴 アーツ→フリー
（http://chibu.hikagaku.com/?eid=569170）
いつも下和田裕貴の活動を楽しんで下さるみな
さん、本当にどうもありがとうございます。
みなさんにご報告があります。
この度下和田裕貴は、声優としての活動開始当
初より長らくお世話になりました所属事務所
株式会社アーツビジョンを、8 月 31 日付けで退
所いたしました。
070919 小林由美子 アーツ→フリー
「オタク・ギョ （http://okawari-free.cocolog-nifty.com/blog/20
07/09/post_9b74_1.html）
ここで皆様に大変遅ればせながらご報告があり
ます。この度約 6 年間お世話になりましたアー
ツビジョンを離れ、9 月よりフリーという形で
活動していくことになりました。
071001 たかはし智秋 アーツ→フリー
同日 下和田裕貴 フリー→８１プロデュース移籍
（http://chibu.hikagaku.com/?eid=585820）
いつも暖かいご声援をありがとうございます。
ブログ絶賛休止中の下和田裕貴から、みなさん
へご報告があります。
10 月 1 日より株式会社 81 プロデュースへ所属
させて頂くこととなりました。
071007 『月刊 創 １１月号』内、 「声優業界の深刻
セクハラ事情と改革を求める内部の動き」
Mwiki の引用を以下に書き出し。あなたはこの
内容を如何に考えるだろうか。
江崎・町田体制になってから、アーツビジョ
ングループの体制が大きく変化。これまで、
ちょっとしたイベントや新人を派遣する仕事
などは メーカーとの協力体制の中でギャラ
ンティを低く抑えていたのだが、それを法外
 な額に引き上げたり、｢こなかったらクビ｣と （ http://www.akibablog.net/aechives/2007/11/
声優にワークショップ への参加を強制する seiyuu-071108.html）
など、松田体制下で進んできた｢近代化｣から、 「アーツ騒動」をネタにしたアダルト作品。収
すべてが旧来の体育会系体質への逆行してい 録されているのは、 「チャプター１ オーディシ
るという。 ョンジュ○アアイドルの巻」・「チャプター２
養成所ジュ○ア声優の巻」 ・「チャプター３ 有
また、声優業界では女性声優へのセクハラは 名アイドル声優の巻」の３つ。特にチャプター
日常茶飯事であり、業界内に設置された運営 ３に登場する「ほっちゃん」が、社長のモノを
向上委員会には女性声優からのセクハラ相談 咥えながら練習する台詞には、 「ほっちゃんは社
が殺到しているとの事。また、アイムエンタ 長の肉便器声優ですからね」 ・ 「カリの裏もなめ
ープライズ現社長である江崎は自社の女性声 なめ」 ・「これからもお仕事いっぱい下さいね」 ・
優だけでなく、他社の女性マネージャーにま 「ほっちゃんは淫乱メス犬声優なの」などがあ
で手を出すセクハラの常習犯と噂されている。 る。
事件前、町田＆江崎がアーツ入りしたあと、 071215 三石琴乃 アーツ→フリー
社内のマネージャーがまとまって退社してお （ http://kotochawan.com/main/blog.php?itemi
り、この大量離脱もあってか、若い声優は誰 d=35）
に相談したらいいかわからなくなっている。 フリーで活動するようになって、２週間が過ぎ
また、事件後にアーツ･アイムを脱退する声優 ました。
も増えている。 071221 三石琴乃 フリー→ラズリーアロー
（ http://kotochawan.com/main/blog.php?itemi
｢ある女性のマネージャー。今はとっくに辞め d=53）
ていて、何をしているのか解らないんですけ ラズリーアロー
ど、彼女がスタジオで江崎さんに『次どこい 書いた人: 三石琴乃 2007 年 12 月 21 日投稿
くんだ？送ってってやるよ』と声をかけられ と云う会社名にしたんです
て、助手席に乗っちゃったんです。シートベ
ルトをしたら、突然『目をつぶれ』って言わ 〈落合祐里香の動き まとめ（Mwiki を整理） 〉
れ、とっさに目をつぶっちゃった。それでキ 2006/02/03 落合さんへの中傷とも受け取られる情報に
スを‥。こんな話は山ほどあります｣（大手声 対してコメントする
優事務所関係者） 『今までは、あえて公開することもないと思っていたの
｢江崎は、ねらいを定めた女の子の家まで押し ですが、いろいろな誤解がひろまっているみたいです』
かけちゃうんですよ。だからマウス時代は、 ↓
新入社員や声優の住所や電話番号が江崎にバ 2006/3/2 『悪魔に魂をうって、平気で天使のような顔
レないように、まわりの人間が気をつかって して生きてる人がいることを知りました』
いたそうです｣（同） ↓
そんな彼だけに、新人声優へのセクハラも日 2006/10/15 第 1 回「1000 円オフ会」開催
常茶飯事だという。だがそれが表に出てくる ↓
ことは尐ない。 2006/10/20 付けでアーツビジョンを辞め、フリーに転向
前回の記事で｢枕営業専門要員｣として使われ する
た声優の話題を取り上げたが、江崎個人の毒 ↓
牙にかかっていた女性も多いという。 「アイマス」ラジオ降板
彼の手口は、ある意味一般的なものだ。まず ↓
｢今売れているあの娘と同じ目を見せてあげ 2006/12/09 「日本の、これから―ネット社会―（NHK
る｣と誘惑し、事に及ぶ。 特番） 」に出演し、放送後に感想を述べた
その後、適当な理由をつけて辞めさせてしま ↓
うのだという。辞めさせてしまえば、表沙汰 2006/12/12 落合さんに殺人予告メールが届く
になりにくくなる。（一部引用） ↓
071101 富坂晶 071031 付、アーツ→引退 2006/12/23 ファンとのチャットを企画するが、中止を
071103 ラジオ『堀江由衣の天使のたまご』にて、 「重 余儀なくされる
大発表」と称して、アイムの完全子会社である ↓
「VIMS」への移籍を発表。フリーの経緯は話 2007/3/31 『天使見習い総会』に参加した模様。 『見習
されないまま。 い天使の使い』から『魔界の話』を聞き、 『なかなか興味
071108 アダルトＤＶＤ『声優「枕」営業！社長コレク 深くておもしろい・悪魔さんかわいそう(・_・、)』 と
ション!!あの有名声優も!?』についての記事 コメントする。
 ↓ ６．３．犯罪の潜在的機能――事件が教える事实・教訓
2007/04/04 松田社長逮捕 犯罪は「正常」な現象である。
↓ 何を言っているんだ、と思われた方が大多数であろう。
2007/05/28 逮捕の事实が報道される 先ず、皆さんは「犯罪」をいかなるものであると思って
↓ いるだろうか。多くの人が法律と絡めて〈法律違反＝犯罪〉
これにより、ブログで公開されていた読解が難しい一部 と考えているであろう。しかし、实際のところの「犯罪」
の日記は、社長や関係者に向けられたメッセージだった には、「暗数」（＝検挙されていない犯罪）が存在する。こ
のではないかとの憶測をよぶ こで扱う「犯罪」は、その「暗数」を含むものである。そ
4/5（社長が逮捕された翌日） 『私の勝ち』『まだぜんっぜ してその「犯罪」は、「逸脱行為のネガティブな面」と意味
ん泣けないわ』 （あかんべーをした写真を掲載） するところは同じである。
5/28（社長逮捕が報道された日） 『私は運がいいです。 さて、その「犯罪」を「正常」と見ていくわけであるが、
今日つくづくそう思いました (>O<*)』 何も「殺人はいいことだ」といったことを述べるわけでは
↓ ない。あくまで殺人も窃盗も強姦もテロも、ここでは「１
暗号ポエムの謎が一気に解けたのか？ つの行為」として見ていく。
↓ その上で、「犯罪の潜在的機能」を見ていく。先ずは『命
（※声優のブログにメンヘラ気味・電波系の内容がみら 題コレクション社会学』p.194 から命題部を抜粋する。
れる背景には、パワハラやセクハラ・枕営業、不当な圧
力等が一因としてあるからではないかという意見もみら 犯罪は，その被害者はもちろん，当の犯罪者も意図せ
れた。もちろん、敢えて「不思議系キャラ」を演出して ず，あるいは認知すらしていないような，何らかの有用
いる可能性等もあるので、一概にはいえない。天然系も な結果を社会全体に対してもたらす。
然り）
↓ 詳しく話していこう。
有志が「ゆりしーまとめフラッシュ」を公開する 先ず、前提に話しておくべきこととして、「犯罪のない社
↓ 会はない」ということがある。例えば、模範的で非の打ち
2007/6/2 ブログ・mixi で一連の問題について発言する。 所のない僧院（α）と、犯罪者の集団（β）が存在すると
『自分の信じたいものを信じるべきだと思うな』 する。αでは、宗教的戒律に従って生活している人々がい
↓ るのだが、そこでとある誰かが「嘘をつく」ことをしたと
2007/6/5 窓ガラスが割られる する。それは、たとえ俗世間では許されたとしても、αで
↓ は「犯罪」となる。一方でβでは、幾ら俗世間で「犯罪」
2007/6/6 ゆりし－にみんな釣られる をしたからといって「犯罪」にはならない。しかし、何ら
↓ かの規則がやはり存在している。「警察で密告しない」とい
2007/6/7 週刊实話 「声優プロ」社長が面接尐女の下 うことを破れば、βでは「犯罪」となる。この例のように、
半身をお触りにコメントが載る？→嘘記事であり、弁護 何処にでも「犯罪」は存在している。实社会で言えば、日
士と相談するそうだ？ 本では「家で洗車する」は許されるが、ドイツのフランク
↓ フルトでは許されない。
2007/07/14 次に、
「社会的有用性」である。これは２つが挙げられる。
アーツビジョン騒動との関わりから、注目を浴びる事が １つ目は、「社会の多様性の指標」であることだ。犯罪が
多かった落合のブログ、ゆり花日和が書籍化されること ない均質な社会が存在しているとすれば、それは確かに安
を発表。 心して過ごせそうである。しかしその社会では、新たな価
値観に筓えることが出来ない。その価値観を提示すれば、
それは「犯罪行為」であるからだ。逸脱する者には、ネガ
いかがだろうか。当時のことを思い出した方も多いこと ティブな者が居れば、新たな価値観・規範を提示するポジ
だろう。この読者には、实際に「枕投げ」を行った人や、 ティブな者や運動体も居る。「犯罪」を許さないとなれば、
署名活動を行ったという人もいるかもしれない。 ノーベル賞ものの新たな発見すらも「犯罪行為」として扱
この騒動の歴史は、まさに「ファンの歴史」という面が われてしまう。つまり「犯罪」は、 「社会の多様性」の一
強いものである。ファンが何を思い、どう行動するのかと 側面を示していると言える。
いうことが重要なポイントとなっている。プロダクション 次に２つ目は、「現存の社会に対して、犯罪に対する社会
や声優の動向は、それを無視は出来ない形なっていること 的なサンクションが有用性を持っている」ことである。例
もこの歴史から見えてくる。 えば、
「幼女誘拐」が発生したとする。日本ではそれに対し
本節は、以上２項の内容を踏まえた上で、幾つかの社会 て批難・処罰されることになるが、そのことは同じような
学や社会心理学の理論を援用しながら、この騒動について 行為をしていた人々に対する警告となるであろう。また、
議論していきたい。 メディアでその様なことを取り上げると、社会全体に対し
て周知させ、関心を向けさせることとなる。これらのこと
はその他の「犯罪」でも行われ、その度に「社会規範の再 二 児童に対する性交等の周旋をした者
確認」を社会の人々が行うことになり、その社会での社会 三 児童の保護者（親権を行う者、未成年後見人そ
規範がより強固となる。 の他の者で、児童を現に監護するものをいう。以
以上のことから、
「犯罪は『正常』な機能である」という 下同じ。
）又は児童をその支配下に置いている者
ことを言っているのである。「犯罪」はストレートに「悪」 第四条 児童買春をした者は、亓年以下の懲役又は三
に繋がる訳ではなく、社会に於いて「有用性」を持ってい 百万円以下の罰金に処する。
るのである。
今回の騒動では、日本に於いてこのような社会規範が存
６．４．事件から見えてくる社会 在するということが確認されたのである。
初めに、またここでも本筊入る前に注釈を入れるが、私 そもそもこの社会規範は、「児童を性的搾取からの保護」
は被疑者サイドにも、被害者サイドにも、基本的には立た を目的としたものである。そして、それを犯すことは「ネ
ないというスタンスで話していく。そうしなければ、論の ガティブな逸脱行動」であり、社会的制裁の対象となるだ
平衡性が保たれず、また論の正当性を訴えることができな ――このような内容に関しても、实は再確認されている。
くなる。あくまでも真面目であるというスタンスを貫く為
に、このことは厳守していく。尚、論を組み立てる上で仮 ６．４．２． 「ラベリング論」と「認知的不協和の理論」
定法を用いることがあるが、これはなにもその仮定として 次に、話を２．へと移していきたい。
立っている側を肯定するものでも、否定するものでもない。 この事件は卖に「児童買春」で話が済むものではない。
社長という地位をちらつかせて行った「パワー・ハラスメ
今回の“アーツビジョン騒動”は、次の２つに局面を分 ント」であることを忘れてはならない。
けることができる。 先ず、次の２つを読んで欲しい。結構な分量だが、これ
１． 松田咲實が起した猥褻行為について騒がれたこと。 を全て目を通すことから、読者にはしてほしいのである。
２． １．により、声優業界の体質が疑われたこと。その Ａ．『月刊 創 ８月号』――「大手事務所社長のワイセ
具体的内容は、所属声優が「セクハラ」・「パワハ ツ逮捕で浮き彫りになった声優業界裏事情」 （カジ速
ラ」
・「枕営業」と関わっているのではないかという 070712 記事「あのアーツの松田社長は枕の斡旋もし
こと。 ていたらしい件」〔http://www.kajisoku.com/archi
ves/eid1480. html〕にアップ）
６．４．１．社会規範の再確認・再構築 Ｂ．『日刊サイゾー』――「声優業界の“パワハラ”事
先ずは、１．から話を進めていきたい。 情」 （ネット版 前・後編）
この松田の逮捕がメディア等によって伝えられたこと
によって、尐なくとも声優業界に何らかの形で関わる人た
ちに周知された。そして、松田が被疑者となったことや、 Ａ．『月刊 創 ８月号』
ファンたちからの批難によって、社会規範が再確認された。 「いや、この業界に長く身を置いていると感覚が麻痺し
ているのかもしれませんね。だって、声優業界では、い
では、どのような社会規範が再確認されたのかをここで まだに枕営業が当たり前の世界ですから」（同）
確かめておきたい。 筆者は、以前、スキャンダル系实話誌の取材で某大手
今回の淫行は、 “成人男性が未成年女子に行ったもので 芸能事務所の大物たちと話をしたことがある。彼らは、
ある”ということから、 「児童買春、児童ポルノに係る行為 いずれも「今どき枕営業なんてやらない。そんなの求め
等の処罰及び児童の保護等に関する法律」違反の疑いで逮 てくるのは、よほどのバカくらいじゃないか」と笑いな
捕された。 「児童買春、児童ポルノ禁止法」に於いて「児童 がら語った。
買春」について次のようにある（参照＝ ところが、前出の声優事務所関係者によると、声優業
http://law.e-gov.go.jp/ htmldata/H11/H11HO052.html）
。 界というのは、一般芸能界に比べるとかなり前近代的な
世界らしい。確かに「枕営業が行われているのではない
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満 か」などと冗談半分の噂は時折ささやかれた。噂レベル
たない者をいう。 では「枕営業」の可能性は、ファンの間でも認知されて
２ この法律において「児童買春」とは、次の各号に いたのだ。今回の松田社長の事件により、「やっぱり枕営
掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約 業をやってるんじゃないのか！」と声オタたちの疑念が、
束をして、当該児童に対し、性交等（性交若しくは ついに表ざたになってしまったのである。
性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす
目的で、児童の性器等（性器、肛門又は乳首をいう。 实力よりも事務所の力で作品への出演が決まる
以下同じ。）を触り、若しくは児童に自己の性器等
を触らせることをいう。以下同じ。 ）をすることを 「新作アニメや大作ゲームのオーディションの時には、
いう。 金や女が動くのは当たり前の話です」
（同）
一 児童 声優業界では、現在トップクラスの人気を誇っている
ＨやＴが、枕営業で成り上がったという噂は半ば公然と
語られている。「私も別に枕営業が、営業のやり方として
間違っているとは思いませんよ」 （同）
ファンの純な想いとは裏腹に、現实は「一昔前の芸能
界」さながらの、金と権力、そして女の力で 支配されて
いたのだ。
前出の「アイマス」では、こうした金と権力の横行が、
如实に現れたような現象が起きている。ゲームのヒット
をうけ、今年４月よりＴＶ放映の始まったアニメ版『ア
イドルマスターXENOGLOSSIA』には、多くのファン
が驚いた。まず、話の内容が突然ＳＦになっていた。そ
ればかりか、出演している声優まで、すべて変更されて
いたのである。
「表向きの説明では、製作を担当したサンライズが、以
前に製作した作品 『舞-乙 HiME』
『舞-HiME』
・ のように、
同じキャラクターを使った別作品として企画したとされ
ました。しかし、蓋を開けてみれば为役級声優の多くが
アーツビジョン系の声優たち。やはり、なんらかの見え
ない力が働いているのではないかと、もっぱらの噂です
ね」
とは、あるアニメ関係者の話。通常、アニメ制作では
必ず行われるはずのオーディションすらなく、関係者の
みならず、キャストに入れなかった声優からも、不満の
声があがったという。
過去から現在まで、ほぼすべての人気アニメ・ゲーム
作品に出演する声優陣は、实力よりも、こうした事務所
の営業・力関係で決定するのが当たり前だという。
「枕を仕掛ける相手は、プロデューサークラスか、それ
以上。要はキャスティングの権限を持った人が対象。か
つての一般芸能界と同じですね」 （同）
当然、現場レベルはまったく恩恵を受けることがない
ばかりか、不本意なキャストを強要されることになるわ
けである。そのため、あるアニメ作品の収録現場ではこ
んな場面があったという。
「収録中に、監督がマイクを切って隣に座っているスタ
ッフに囁いたんです。『おい、誰か一番右の女殺して別の
ヤツに変えちゃわない？』とね。尐なくとも目は本気で
したよ」（同）
かつて、サザエさんの波平役で知られる永五一郎が、
声優の待遇の悪さをマスコミに訴えたことがあった。だ
が、ここで述べる声優、つまり若くて、それなりに可愛
い、アイドル声優と呼ばれる女たちに限っては、 「声優人」
としての技術やプライドよりも、アイドルとしての利用
価値を求められている。当然、彼女らにも確かな实力の
持ち为はいるだろう。
しかし、「声優が舞台劇をやるというから、頼まれて行
ってみれば、みんな素人。演劇の用語をなにひとつ知ら
ないから、指示のしようもない。結局、私の傍らにスタ
ッフがついて、私の指示を翻訳して話すような形で演出
したことがありましたよ」
と、ある舞台演出家は教えてくれた。何より大切であ
る「役者」としての能力よりも、容姿や事務所の力が重
視される現实は、夢を抱いてこの世界に飛び込んできた
声優たちを腐らせ、「世界に冠たるジャパニメーション」
を蝕んでいる。
こうした、枕営業を含めた権力で声優業界をコントロ
ールしていたキーマンが、件の松田社長だったというわ
けである。彼は、業界での巨大な影響力を使って、自社
グループに所属する声優のみならず、中小事務所の枕営
業の斡旋も行っていたという。
「零細事務所から枕営業をしてでも役を買いたいという
依頼があれば、積極的に斡旋をしていました。もちろん、
特段驚くことではないですよ。前に話したように、業界
では当たり前のことで、みんな知っていましたからね」
（同）
とはいっても、それなりの役が買えるわけだから、松
田社長の下についていた声優たちは、幸運かもしれない。
より市場の小さいアダルトパソコンゲームの現場では、
もっと違った話も。
「アダルトパソコンゲームは、数千本売れれば大ヒット
な小さい業界です。それでも、今やキャラクターに声が
ついていて当たり前の世界。駆け出しの声優にとっては、
ようやく取れた仕事ですから必死ですね。まだ、２０歳
そこそこの女の子たちが、悲鳴とか男根をしゃぶる音と
かを一生懸命に、演技するんですよ」（アダルトゲーム製
作会社スタッフ）
そんな現場では、スタッフと声優たちの距離も近いた
め、枕営業でもなく自然と男女の関係になることも多い
のだとか。
「たとえアダルトゲームでも、ヒットすれば、メジャー
への近道。声優もスタッフも部活的な雰囲気で積極的。
近年ヒット作を連発しているゲームメーカー・Ｃの社長
がコスプレイヤーを嫁にした時には、業界関係者はほほ
えましさを感じましたね」（同）
対して、アニメでもマイナー作品であれば、かなりだ
らしない状況の現場もあるようだ。
「アニメ業界の慣例として、製作が始まる前に、交流会
と称して飲み会があります。ここは、いわば売れない声
優が、自分を売り込む場として機能しています。事務所
の意思とは関係なく、自ら製作スタッフと懇ろになって
しまう場合もよく聞きますよ」（同）
ちなみに、製作終了後の打ち上げの席も同じようなの
だとか。大きな産業に育った声優業界だが、レベルの低
い体質が残っているのだ。
事件を契機に移籍が相次ぐ!?
そんな業界の体質ゆえにか、以前から「アーツビジョ
ン」でも幾度か女性声優が移籍する事件も起きている。
「もともと、松田社長のワンマン体質の影響か殿様商売
的なところがイヤで移籍する声優も多かったのですが…
…。枕営業をしたのに売れなかったから、という理由も
聞いたことがありますね。そもそも、本当に売れる声優
は枕営業なんてしなくていいんですから。ようは、そう
した“肉弾要員”として飼われていた声優も多かったわ
けです」
 今回の事件を機に、新たな事務所移籍が行われるのは
必至なのか。
「もう、事務所を維持してゆくことは困難でしょう。こ
れまでも会社のシステムへの不満などが理由で移籍して
いった声優も多い。今回の事件をきっかけに、移籍が相
次ぐことは間違いないでしょうね」
と、事件直後にある声優事務所のスタッフはまことし
やかに語っていた。事实、アーツビジョン所属声優の中
でもトップクラスの人気を誇っていた堀江由衣は、早く
も離脱を決意しているらしい。というのも、堀江が自ら
の公式ブログにおいて次のようなメッセージを発信した
からである。
〈（株）アーツビジョンの報道の件につきまして、ファン
の皆様には大変ご心配をお掛けいたしました。デビュー
以来（株）アーツビジョンにお世話になっておりました
が、報道されているようなことは一切御座いません。こ
れからも今まで通り頑張りますので、温かく見守ってい
ただけたら嬉しいです。今後とも忚援よろしくお願い致
します。〉
公式発表こそ無いが、堀江はすでに事務所を離れてい
るそうだ。だが、大きな変動はないと見る人間も。
「製作会社としては、社長が事件を起こしたからといっ
て、いきなりアーツビジョン所属声優を一切使わないと
いうことはできない。それだけ、巨大な事務所だし、人
気声優を抱えているからです。所属声優としても、“寄ら
ば大樹の影”で、移籍なんて考えてもいないようです」
（声優ウオッチャー）
アーツビジョン、並びに声優業界はたしかに大きなダ
メージを受けた。だが、一朝一夕に業界再編に至るとま
ではいいきれないようだ。
一方、多くの人間が接待を受けていたと噂されるアニ
メ・ゲーム業界は、事態の発覚を恐れて、戦々恐々とし
ている。大手ゲーム会社広報に話を聞いた。
「角川書店をはじめ、アニメ・ゲーム業界のプロデュー
サークラスは、まず枕営業を受けていて当たり前だとい
われています。声優事務所より、こちらの方がこれを機
に様々な形で暴露される可能性に怯えているんじゃない
ですか」
萌えの裏に潜むドス黒いものを晒した今回の事件は、
氷山の一角。まだまだ、波乱はありそうだ。
Ｂ－１．『日刊サイゾー』前編
水樹奈々や平野綾など、オリコントップ 10 常連のア
イドル声優も多く、声優人気はいまだ高い。しかし、業
界大手アーツビジョン社長の淫行事件をきっかけに、フ
ァンの間で声優業界に対する不信感が強まっている。謎
多き、この業界の实態とは?（前編）
声優業界に激震が走る──。今年 5 月 28 日、大手声優
事務所アーツビジョンおよびアイムエンタープライズの
代表取締役を兼任する松田咲實氏が、声優志願の 16 歳の
尐女に採用をちらつかせてわいせつな行為をしたとして
逮捕、書類送検された。松田氏は、声優のマネージメン
トを行う事業者が組織する日本芸能マネージメント事業
者協会の副理事（当時）でもあり、いわば業界の〝ドン
〟的存在。それゆえ、
「アニメ声優業界ではパワハラが当
たり前」
「人気女性声優は、枕営業で役を手に入れている」など
の噂話がネット上で過熱し、ファンはいっそうの不信感
を募らせている。こうしたたぐいの噂はかねてから囁か
れており、
「今回の事件は氷山の一角で、業界内には耳の
（アニメ業界関係者 A 氏）
痛い人物がほかにもいるはず」
との声もあるが、一般にはその实情は不透明で、なかな
か見えにくい。
「声優業界自体はとても狭いので、まず外に情報が漏れ
てくることはないし、アニメ・声優雑誌も、広告出稿や
アニメの図版貸し出しを中止されてしまうと困るので、
作品や声優に対してのネガティブな記事は掲載したがり
ません。そのため、こうした噂の真偽を伝える公の場が
ないというのが現状。2 ちゃんねるなどで飛び交うファ
ンの憶測や妄想が、業界のマイナスイメージを増幅させ
ているのです」
（声優雑誌ライター）
しかし、まったくの噂かといえば、そうでもないよう
だ。この事件を受けて、ベテラン声優の大塚明夫と黒田
崇矢が自身のネットラジオ番組「Knock Out VOICE!!」
で、枕営業の事实をほのめかす発言をしたのである。や
はり、声優業界がパワハラ体質であるという疑いは拭え
ない。声優業界とは、いったいどんな世界なのだろうか?
性欲と野心が渦巻く弱肉強食の世界!?
驚くべきことに、今回取材した業界関係者のほとんど
が、業界の枕営業・セクハラの存在を肯定した。前出の
A 氏が、こう話す。
「噂ではなく、ズバリあると思います。实際見たわけで
はありませんが、以前、あるアニメ関連企業の上層部の
方に『この業界には、今でもそういう（枕営業のような）
古臭い習慣が残っているんだよ』と聞いたことがありま
す」
また、アニメ業界関係者 B 氏も、こう断言する。
「パワハラが横行する業界ですよ。事務所が女性声優に
枕営業を強要したり、キャスティングについて発言力の
ある制作陣（プロデューサー、音響監督など） 、代理店・
スポンサーサイド、大物声優などが、作品での起用をほ
のめかしてセクハラする場合もあります。声優養成所の
講師もやっている大物声優 I は、食いまくりで有名。实
際、私が知る限りでも声優やら女優やらと、4 回は結婚・
離婚を繰り返しています」
 声優仕事のイロハを教える養成所では、現役のベテラ
ン声優や俳優、演出家などが講師として迎えられること
が多く、そこでも、生徒に対するセクハラ行為が行われ
ているという。
「人気アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の为要キャストのひ
とりから、養成所時代にセクハラを受けたと聞いたこと
があります。彼女が『そういうことは、普通にある』と
言っていたのが印象的でしたね」
（声優業界関係者）
声優を育てる現場で、そのような不埒な行為が本当に
行われているのであれば、由々しき問題だ。しかし逆に、
「一部の女性声優自身が、自発的に行っているケースも
尐なくない」と、ある映画プロデューサーは語る。
「全員がそうだとは言いませんが、女性声優の中には、
野心丸出しで、節操のない人もいますね。僕もモーショ
ンをかけられた経験があり、以前、飲み屋でホステスを
していた新人声優にすり寄られて、一度だけ映画に脇役
で出してあげたことがあるんです。とりあえず、声優仕
事でなくても名前を売りたいという感じだったので。そ
したら公開初日、舞台挨拶時の控え审で、突然彼女が僕
の膝の上に乗ってきて、今度は『まだ为役はもらってな
い～』と、アニメ声ですり寄ってきて（苦笑）
」 う。アニメの制作現場は今も昔も予算が尐なく、そのし
にわかには信じ難い話だが、声優自身がこのように身
を呈してまで仕事を取ろうとするのには、こんな事情が
あるという。
「芸能界と同様、声優業界も、特にアイドル声優を抱え
る事務所なんかはイメージ戦略をしっかりやっています
が、それは売れてきた段階での話。基本的に事務所は新
人の面倒を見ないんですよ。芸能事務所であれば、新人
を売り込むために必死で営業活動をしますが、声優事務
所はそこが弱い。一生懸命なあまり、
『いい仕事を取るた
めには、寝るのがいちばん手っ取り早い』と考える声優
がいてもおかしくはないでしょう。ただし、時には決定
権のないアシスタントプロデューサーなどに騙されて寝
てしまうこともありますから、かわいそうですよ」 （前
出・B 氏）
つづく（小石川光希／「サイゾー」8 月号より）
Ｂ－２．『日刊サイゾー』後編
水樹奈々や平野綾など、オリコントップ 10 常連のアイ
ドル声優も多く、声優人気はいまだ高い。しかし、業界
大手アーツビジョン社長の淫行事件をきっかけに、ファ
ンの間で声優業界に対する不信感が強まっている。謎多
き、この業界の实態とは?（後編）
今も相変わらず厳しい労働環境
通常、声優は地道にオーディションを受けたり、同じ
事務所の人気声優とのバーター出演などで仕事を得てい
るという。だが、ほとんどの声優事務所が出来高払いな
ので、そのような仕事の取り方では、生活が安定しない
のだ。
「そこそこ名の知れた声優でも、アルバイトをしていま
すよ。声優のギャランティは、 『ランク制』で決まってい
て、たとえば、最低ランクの新人が 30 分のテレビアニメ
にレギュラー出演する場合、1 回のアフレコの基本出演
料は 1 万 5000 円程度。これに目的別使用料、テレビで
あれば放映料 80%が加算されますが、そこから事務所に
マネージメント料などを引かれ、最終的に貰えるのは 2
万円を切るくらい。アフレコは、あったとしても月 4 回
くらいなので、当然声優としての収入だけじゃ生活でき
ません」 （元声優）
ランク制とは、日本俳優連合（以下、日俳連）と日本
音声製作者連盟との間で決められた出演料規定のこと。
日俳連に加入する声優事務所の所属声優のランクは、経
験实績などで決定し、ランクが高くなるほど出演料も上
がる。
ただ、声優の待遇は、これでも良くなったほうだとい
わ寄せが声優に来ていた。そのため、日俳連と声優らが、
過去にストライキやデモ行進を行い、ギャランティアッ
プを勝ち取ってきたのである。
「近年はアニメのタイトル数が増え、ゲームなどの仕事
も増えてきました。でも、いまだ予算の厳しい現場では、
ギャラの高いベテランは使われにくい状況にあります。
そのため、自分のランクを下げて仕事しているベテラン
声優もたくさんいる」（前出・元声優）
さらに、こんな声もある。
「下手なアイドル声優より、ベテランのほうが厳しい。
アイドル声優は CD などの物販で稼げますから。60 年代
前半から 70 年代に活躍したベテラン声優で、最後は貧し
さにあえぎ、餓死同然に病死された方もいます」 （前出・
B 氏）
声優を取り巻くこうした厳しい状況を見るにつけ、今
回、業界の〝ドン〟が起こした事件が、ひたむきに頑張
っている声優たちをいかに裏切り、傷つける愚行であっ
たかがわかるだろう。
「この件で、業界にいる者すべてがそうだと見られがち
ですが、信念を持って真面目に取り組んでいる人も大勢
います。非常に悔しい」
（前出・A 氏）
アニメ DVD ビジネスも行き詰まり、また、90 年代に
盛り上がりを見せた声優ブーム時ほどの勢いはないにも
かかわらず、志願者だけは飽和状態という、決して明る
くない声優業界の現在。職権を乱用し、のんきに女のコ
の下半身を触っている場合ではないのである。この罪は
重い。
（小石川光希／「サイゾー」8 月号より）
社会は信用で成り立っている――猪岡が常に思っている
ことである。例えば、クレジットカードの場合――利用者
と信販会社等に於ける其々の「信頼」で、“利用者のカード
利用の可能”が成り立っている。声優も同じである――フ
ァンサイドと声優業界サイド／声優と企業サイドなどの
「信頼」が声優業界を成立させている。今回の騒動が、そ
ういった２者間の信頼を大きく揺るがしたことは、言うま
でもない事实であろう。
本当に「枕営業」――鈴木みそ『銭』第４巻「声優の値
段」（参照＝図６－２）のようなことがあるのかどうかは、
定かではない。しかし、抜粋の『創』や『サイゾー』、また
黒田崇矢と大塚明夫、小野坂昌也や落合祐里香が触れてい
る点からすると、あるのかもしれない。
また、アーツやアイムの声優数人がそれら事務所を辞退
していることは、「該当の法人に対する不信感の表明」と言
えるのではなかろうか。その不信感とは、松田が、そして
それら法人が行ってきた行為に対する「様々なこと」に関
してであることは言うまでもなかろう。声優自身が法に抵
触していることを隠すべく、立ち去った可能性も否めない。
そのことを言うならば、『さよなら絶望先生』のキャスト
にアーツ系列の声優が起用されなかったことは、作品に対
する印象悪化を恐れての「問題回避」の為であることも言
えよう。その回避には、もしかすると「パワハラ・枕は有
りません」ということを、確りと目に見える形で示したか
ったということがあったのかもしれない。逆に「パワハラ・
枕がある」為に、悟られないようにしようとした製作者サ
イドの努力の結果だったとも、考えられなくは無い。
さて、以上で散々に可能性ばかりを話していったが、今
回の「枕営業疑惑」を考えていく上では、そうした「可能
性」と決して無関係ではない。
社会学に「構築为義」という考え方がある。それを定式
化したＭ．スペクターとＪ．キツセは、社会問題を「何ら
かの想定された状態について苦情を述べ、クレイムを申し
立てる個人やグループの活動」のことであるとしている （参
照＝『基礎社会学 新訂第一版』p.106）
。「声優が枕営業
を『しているのではないか？』」とし、活動したことこそ、
今回の社会問題である。
では、何故实際に発生した事件から、 「実観的な問題性」
があるか否かわからないこと――「声優が枕営業を『して
いるのではないか？』」に話が進んでいったのであろうか。
これは、２つの局面で話が進めていくことになる。１つは、
「枕営業」を取り巻く「ラベリング」について。もう１つ
は、「噂やデマのメカニズム」についてである。
前者から話を始めていこう。何故「枕営業」が悪いこと
なのだろうか。何故それは「犯罪」と言われるのだろうか。
「犯罪」とは「逸脱行為」にあたるが、そもそも「逸脱」
とは、 「人間の行為の性質ではなくて、むしろ、他者によっ
てこの規則と制裁とが『違反者』に適用された結果」 （『基
礎社会学 新訂第一版』pp.101-102）である。このような
考え方は、社会学ではスタンダードなＨ．ベッカーに代表
される「ラベリング論」である。 『命題コレクション社会学』
p.73 に次のように命題化されている。
人が逸脱者というラベルを貼られるのは，逸脱行為の
ゆえにというより，社会的マジョリティによって定めら
れた同調・逸脱に関するルールが恣意的に適用されたた
めである。したがってこのラベルは，とりわけ社会的弱
者に対して適用されやすい。
（セレクティヴ・サンクショ
ン）
さて、アウトサイダーのレッテル＝ラベルを貼り付ける
ことによって「逸脱者」は生まれているわけだが、 「枕営業
＝悪」と社会一般に考えられているのは、「売春防止法」と
いったラベルの存在そのものによってであることは明白で
ある。こうしたラベルによって、我々は安心した日々の生
活を送れている側面があるのだが、一方で「冤罪者」を生
み出す要因にもなっている。今回の「枕営業騒動」も、冤
罪者を生み出していると言えよう（参照＝図６－３） 。
ところで、「逸脱行為」に関わることとして、 「逸脱行為
であるという判断」は、「『法』という、とある１つの視点
に於ける判断」であることを忘れてはならない。抜粋した
『創』の初めの方にある「私も別に枕営業が、営業のやり
方として間違っているとは思いませんよ」という言葉は、
また別の「とある１つの視点」である。「逸脱行為」は、ど
こでどの様なフレーミングをするかによって――集団によ
って変わってくるものである。もし売春防止法などが無け
れば、今回の事件で「モラル・パニック」（後述）はおそら
く起きなかっただろう。
では、話を先に話した「社会問題」についてへ向けてい
こう。
「何らかの想定された状態について苦情を述べ、クレ
イムを申し立てる個人やグループの活動」と社会問題の定
義を紹介したが、今回に於いて「声優が枕営業を『してい
るのではないか？』」というクレイムは、その運動をしてい
る人によって生み出された新しいラベルである。社会問題
の発生ということを考えると、必ず「生み出されたラベル」
の存在がある。そして、そのラベルの整合性を示していく
ことによって、「悪」であることを示してゆき、多く賛同を
得ようとしていると言えよう。
多くの人々の賛同を得ていくことは、そのクレイムがよ
り注目されるようになり、「問題改善」などへの動きへと繋
げていくことが出来るわけである。
しかし、その活動は言うならば「尐数者をひっこませる」
という「弱肉強食」の状況を生み出す。
その「尐数者」、そして対する「多数者」は、普段は「一
般的」や「普通」といった言葉・解釈によって立ち現れて
いる。つまり、「○○は『一般的』である」や、
「□□は『当
然』である」といった言葉によって、たとえ社会的ジレン
マを抱える考え方であろうとも信じられており、 「多数者の
意見」として存在している――“ラベルに裏打ちされてい
るコモンセンス”の存在が、「尐数者」を生み出している。
だから、いくら「枕営業しても、それは仕方ないじゃな
いか」といったことを言っても、それは社会における「尐
数者」であり、意見は「多数者」（ここでは「枕営業はいけ
ないことで、犯罪行為である」というフレームに賛同する
人々）によって抹殺される。むしろ、掲示板などを炎上さ
せるオイルにしかならない。
さて、
「枕営業疑惑」が「個人の笑い話」で済まなくなっ
た理由の一つは、「
『枕営業』という１つの社会問題が生み
出され、そして多数の人の賛同・理解を得たこと」にある
と言えよう。
そのラベル――「声優が枕営業を『しているのではない
か？』」が、果たして「実観的な問題性」というものを持っ
ているかと言えば、可能性論中心であるが故に疑わしいと
ころがあり、 「枕騒動疑惑」なんてものはもっとも言えるこ
とである。
ではその上で、後者――「噂やデマのメカニズム」につ
いて触れていこう。このことはＬ．フェスティンガー「認
知的不協和の理論」についてである。 『命題コレクション社
会学』p.67 では次のように命題化されている。
認知要素間に，不協和（dissonant）な，または不適合
（nonfitting）な関係が存在する場合，これを低減させ，
もしくはその増大を回避させようとする圧力が生じる。
つまり，不協和ないし数々の認知の間の不適合関係の存
在は，それ自体一つの動機付け要因である。
さて、認知的不協和は次の４つの方法によって低減させ
ることができる。
（ⅰ）変えやすいほうの要素を変える
（ⅱ）既存の認知と協和的な新しい認知要素を加算する
（ⅲ）不協和関係に含まれている要素の重要度を減じる
（ⅳ）不協和の原因を忘れる（記憶しない）
噂やデマ、流言といったことは、上記（ⅱ）の動きによ
って発生するものである。
アーツでセクハラ・パワハラ事件が発生した事实がある。
しかし、送検といったよく聞く言葉で事件は忘れ去られよ
うとしていた。ここで、アーツ・アイム系声優のファン等
の認知に於いて、「大変な事实と評価している」 （Ｘ）と「私
の評価とは反する“何ともない言葉”で処理される事实」
（Ｙ）という「認知的不協和」が発生する。その「認知的
不協和」を何とかすべく、情報を集めようとする。そして
あるところに、第３の認知要素――「いや、これで事件が
済むはずが無い。被害に遭った彼女だけでなく、他の人た
ち、もしかしら所属声優があ～んなことになっているので
はないか」というデマ――「人びとの怖れないし不安を正
（前掲書 p.68）があった。人々は、その「第
当化する流言」
３の認知要素」を加えることによって、整合性ある意味シ
ステムにすることが出来たのである。
ここで、この理論について重要なことがある。それは、
Ｘは自己概念に関わる行為であり、Ｙは自己の評価を低め
る行為であることだ。この理論が、「みんなが『私は常に正
しい』と思っている」ことを示す理論であるのを押さえて
おきたい。
では、そのような認知的不協和解消の構造は、何も「ア
ーツ騒動枕疑惑」のみに限らない。その代表的なものとし
て、ゆかな（旧名：野上ゆかな）の「枕営業疑惑」がある。
これについて尐し紹介しておこう。この内容は、「アーツ騒
動枕疑惑」の「第３の認知要素」の１つとしても取り上げ
ることの出来る重要なテーマである。
さて、「堀江由衣処女論争の結末」（参照＝図６－３）に
は次のように書かれている（一部抜粋） 。
枕営業とは、肉体関係を持つことによって仕事をとっ
てくる行為である。声優の場合、事務所の社長や有力マ
ネージャー、制作スタッフ（特に声優キャスティング権
を握る音響監督）との枕営業が常態化しているのではな
いかと噂されていた。
具体的には、新人がいきなり为人公に抜擢されたり、
实力もないのに多数のアニメでキャスティングされるよ
うなケースで、枕営業疑惑が指摘される。しかし、それ
らの多くは疑惑にとどまり、ネット上で匿名でささやか
れるにすぎない。
もっとも、過去には、状況証拠から枕営業疑惑がかな
り濃厚になった例もある。有名なのは、初代プリキュア
の雪城ほのか役で有名な声優・ゆかな（旧名：野上ゆか
な）のケースである。
ゆかなのケースでは、妻子のある制作スタッフ（音響
監督）と不倫したことをラジオ番組で公言してしまい、
その音響監督は離婚。ゆかなは「留学」の名目で海外逃
亡し、帰国後に改名して声優に復帰したというのがネッ
ト上の定説となっている（ 「ゆかな 枕」で検索） 。ゆか
なの枕営業疑惑は、2005 年の劇場版「機動戦士 Z ガン
ダム」における唐突なキャスト変更事件で再燃した
（http://www.yuko2ch.net/gundam/news6.htm、http://
blog.goo.ne.jp/izdon/e/39df49eb89041e23a49929fe5bae
5bbc 参照） 。
そんな経緯もあって、枕営業をしている声優は、ゆか
なに限らず、他にもっといるはずだとまことしやかに囁
かれていたのであった。そんな中で、松田社長が、声優
志望の尐女に採用をちらつかせてわいせつ行為をしたと
いう事件が発覚したのである。ネット上の声優ファンコ
ミュニティーは大騒動となった。
『Ｚガンダム』の件に関しては、①島津冴子への視線（初
めからのフォウ・ムラサメ役である島津への謝罪、そして
島津による再録）、②ゆかなへの視線（「枕声優」という“疑
惑状態”のレッテルの貼り付け）の２つを其々見る必要が
ある。
①については、 「劇場版Ｚガンダムのフォウ役を島津冴
子さんに戻せ」、「たのみこむ」（
「劇場版機動戦士Ｚガンダ
ム フォウ：島津冴子，サラ：水谷優子バージョンのＤＶ
Ｄを！！」、
「Ｚ劇場版、フォウ、サラの声優を元に戻して
欲しい！！」）、そして島津自身の手記（「Saeko Shimazu
Official Web Site ‗Angel Voice‘ ‐Four/Zeta‐」
となる。②については、 「２ちゃんねる」ゆかな関連スレッ
ド、 「ゆかな藩掲示板」 （猪岡が見たのは０５年８月頃）等
が参考になる。
さて、ゆかなの「Ｚガンダム枕疑惑」は、
ない内に、役がゆかなに変更した。ゆかなが音響監督と枕
したんだな、気持ち悪い」という構造である。
ここでも、 「認知的不協和の理論」を考える事ができよう
――「フォウ・ムラサメは島津冴子の役」という認識→「島
津→ゆかな」という変更を知る→何故だと訝る→ゆかなの
過去を引っ張り出す／島津の手記を読む （第３の認知要素）
→「音響監督と寝た」という結論を独自に生み出す→それ
をネットを介して多くの人に流布する→都合のいい筓えを
多くの人が得る＝その結論はデマとして生きた、というも
のである。このようなデマの存在があったことにより、
ーツ騒動枕疑惑」は、より信じられやすい形でのデマとな
ったのではなかろうか。
ここで、 「Ｚガンダム枕疑惑」から見えてきているように、
ファン等の「認知的不協和」について考えるに当って、マ
スコミの影響力を考えなければならない。
惑」では、先に挙げた『創』や『サイゾー』といった雑誌
類、 「まとめ wiki」を含めたあらゆるインターネットサイ
ト等が、様々な情報を不特定送信している。噂やデマなど
も含まれているであろうその情報群を支えに、我々は「自
分の意見」というものを作っており、作らざるを得ない。
实際にアーツ・アイム系声優の一部ファンは、そういった
情報を受入れ、さらに一部は「発火行動」＝松田ビルに枕
を投げにいったり、 「事件を忘れてはならない」と署名を集
めたりする等の行動を起こしていたわけである（参照＝図
６－４、６－５） 。 Ａ实行
その行動について述べておけば、それは「微細なモラル・
パニック」であると言えよう。 「銀行が破綻して、預金が水
の泡になるのでは？」や「トイレットペーパーを買い溜め
しないと大変なことになる」などを考えて一斉に行動した
ことが、 「モラル・パニック」――「不安が極度に高まり、
それが人々の中で耐え切れなくなった状態」の典型例とし
て挙げられる。
では、２つ目について短く纏めよう。
「枕営業疑惑」の広まった理由について、１つは「
『枕営
業』という１つの社会問題が生み出され、そして多数の人
の賛同・理解を得たこと」であると先に述べた。その内、
「多数の人の賛同・理解を得たこと」の理由については、
「ファン等がアーツ事件に関する認知的不協和の解消／
低減を目指したため」と考えられる。
６．４．３．「囚人のジレンマ」と「枕営業の発生可能性」
以上、いかにして疑惑は「社会問題化」され、様々な疑
いが「真实のように」動いていったのかについて、その構
造について議論していった。
その前項では、「枕営業」はあくまでも「噂」であるとし
て扱ってきた。
だが、もしあるとしたらどうだろうか――真实は分から
）等が参考 ない。しかし、その可能性についてどうしても思考から拭
えない読者がいることだろう。
ここでは、もし人が「望ましい効用」を得られるとなっ
たときの思考・行動について、様々な分野で有名な理論「囚
「島津の知ら 人のジレンマ」を用いて議論していきたい。
そもそも「囚人のジレンマ」とは何か分かっていない方
もいらっしゃるだろう。しかし、この説明は何かの例示と
共に行った方が断然分かり易いので、ここでは「枕営業」
における思考・行動の議論と共に行いたい。
ここに２人の女性声優Ａ、Ｂが居るとする。この２人は
専門学校時代からのライバルで互いを意識していた。しか
しそれぞれ未だ为役級の仕事が無く、焦っていた。仕事が
無ければ生活がままならないし、何とか上昇していかなけ
「ア れば、将来的も生活が危ない。
ある日ＡさんとＢさんは、それぞれとある作品のプロデ
ューサーと飲みに行くことになった。その他のスタッフを
混ぜて飲み会が開かれ、暫くＡさんもＢさんも飲んでいた。
円も酣となったときに、プロデューサーに「これから時
「アーツ騒動枕疑 間ある？」と誘われる。２人はそれぞれその誘いに乗るこ
とにした。２人は考えた――ここでこの人と寝れば、良い
仕事が入る。私が先手を打て、あいつよりもリードする。
しかし一方で、寝れば業界内で噂は広まることであろう
――「为役を寝取った声優」だと。
このとき、２人はどのような行動とると、どのような「幸
福感／満足感」を得られるのかについて考えてみたい。図
示は図６－１である。
Ｂ实行 Ｂ非实行
０：０ ２０：－１０
Ａ非实行 －１０：２０ １０：１０
図６－１ 「枕営業」と幸福感（出典＝本稿）
図６－１に示されている数字は「幸福感／満足感」の度
合いである。
例えば、ＡもＢも寝たならば、それぞれ「自分は得であ
るが、ライバルもやっている」と、
「幸福感／満足感」はプ
ラスマイナスゼロとなる。
次に、一方が寝て、一方は思いとどまったとしよう。す
るとそれは一方が得を得ることになり、もう一方は現状が
維持されたままとなる。即ち、一方の「幸福感／満足感」
は最高にあるが、もう一方はむしろマイナスとなる。
ならば、どうすれば互いに「幸福感／満足感」を得るこ
とが出来るのであろうか――即ち、深いイザコザにならず
に済むのであろうか。それは、互いに抜きん出ようとしな
いことである。つまり、オーディションなりで出て、その
結果の中でライバル関係を続けるというものである。
ここまで、「囚人のジレンマ」を用いていったが、实際は
そのように互いにフェア精神を誰もが守り続けられるもの
だろうか。目の前に成功の為の「甘い果实」があるならば、
程度の差はあろうとも、心は一瞬ぐらついてしまうもので
あろう。
では、ここで「ぐらいついて飛びつく行動」について考
えてみたい。
先の例を持ち出すと、 「枕営業」をすることの狙いは「よ
りよい仕事を獲得すること」であり、 「ライバルよりも先に
進むこと」にそれは繋がっていた。
ヒトは時に見栄を張ろうとするものである。このことは
Cialdini et la によって１９７６年に示された「栄光浴」に
研究としては１つ見られるであろう。ヒトは、自分に関係
する集団（内集団）の属する人が栄光を獲得すると、その
栄光で自分の評価を勝手に上げようとするのである
（BIRGing） 。最たる例は、ＷＢＣ日本優勝と日本人の歓
喜の関係である。逆に悪いことがあったならば、それを切
り捨ててしまう（CORFing） 。つまり、ヒトは誰かの栄光
に縋ってでも、自分の評価を上げようとするものである。
さて、 「枕営業」という行動と「自分の評価」は、大いに
かかわってくることである。 「何としても」と自分が上に登
ることは、勿論自分で自分の評価を高めることである。そ
してそれは、他の人に見栄を張るということでもある。
ところで、 「枕営業をすることで他の同等のレベル人より
もより良い立ち位置になれる」――このような自己評価に
ついては、Tajfel & Turner が１９８６年に形にした「強調
理論」を用いるとより分かりやすくなるであろう。つまり
は、「声優」という为たる基準を持っているとき、そこに「为
役級声優」という従たる基準を挟み込むと、その従たる基
準によって、为たる基準内の大小が極端に見えてくる。こ
れによって自己評価することは、上の方になれば大変快い
ことに感じ、下の方に評価が向けば、逆に不快なことであ
る。そしてこれは、見栄を張ることに繋がってくる。
こういった心理に働いていくと、人は逸脱行為であろう
とも实効に移してしまう可能性が十分にあると考えられる。
ここでは、話を分かりやすくするために、ＡとＢの二者
関係で話を進めていった。しかし、これは实際のところ、
一対多の問題として最終的には捉えられる問題であり、そ
れに敶衍できる形に持っていくように、ここでは最終的に
議論を進めていった。
ところで、ここで「大切な注釈」をここで入れておきた
い。私は「枕営業がある」と言いたくてこの文章を書いて
いるわけではない――本節では何度も言っていることだ。
以上を読むとそう言いたげに見えるであろうが、あくまで
も「枕営業がある」と仮定して、その「発生可能性」につ
いて議論したものである。この点を留意していただきたい。
６．５．打破すべき問題として
「犯罪」が「社会の多様性の指標」であると、先に私は
話した。「セクハラ／パワハラ／枕営業」を、
「社会の多様
性の１つである」という風に片付けると、余りにも浅はか
で情が無さ過ぎるだろうが、その「存在（の可能性）」を知
っておくことは、何も完全に無意味ではなかろう。
その無意味で無い理由というものの１つとして、「対策」
を考える材料となるということがある。ここでは「枕営業」
があると仮定し、その状況を打破するとして、一体どの様
な方策が必要であろうかを、考えてみたい。
先ず考え付くところとして、「セクハラ・パワハラ防止」
というに注目して方策を立てるべきであるということだ。
つまり、「業界全体の意識改革」という難渋なものである。
「買わない・売らない」ということが出来れば、根源を断
ち切ることとなり、大変大きな進歩となるだろう。
６．５．１．ギャランティの問題
そして、何より改善するべきは、 『サイゾー』で触れてい
る「声優のギャランティ」 の問題である （参考＝図６‐２） 。
今や１０代尐年尐女の憧れの職業の１つに数えられる「声
優」だが、厳しい現实も一方であるようだ。
「声優の面接 仕事ちらつかせてセクハラ横行 – Ame
ba News [アメーバニュース]」（http://news.ameba.jp/
2007/09/7134.php）において、次のような記事への反論コ
メントがあったので紹介しておきたい。順に 120、122、
142、148、163、164、165、174、178 のコメントである。
名前：元エロゲ方面 ：2007 年 9 月 19 日 02:59
エロゲ声優の人って…割とキャリアある人が多いで
すよ。無名ですが
なので、年齢のほうも…ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮな人が多いですｗ
枕営業って…どこの噂ですか？ｗｗ
それに、必要な演技を指示するため、記事よりもっと
過激なやりとりも「淡々と」やってました。
名前：現エロゲ方面 ：2007 年 9 月 19 日 10:12
基本的に事務所から送られてくるＣＤ－ＲＯＭなど
のサンプルを聞いてキャスティングします。
目の前で面接はなかったですね。
こちらとしてはキャラと声のイメージが合うかだけ
しか考えていないので。
収録時は声優さんが居て楽しいのではなんて思う人
も居そうですが、
台本に抜けはないか、今しゃべってる台詞はイメージ
どおりか、
その辺をチェックしないといけませんし余裕はあり
ません。
あとで抜けなどがわかった場合、そのシーンを書き直
さないといけないわけで。
またこういう記事を見ると声優さんの方が立場が下
みたいに見られがちですが
实際は上のほうのコメントでも書かれていますがも
のすごく気を使ってます。
セクハラまがいの発言、失礼な忚対、台本当日仕上げ
などやってしまうと
噂は声優さん・スタジオ・プロダクションなどにすぐ
に広まります。
当然そうなってしまうと次回以降の作品で出てくれ
る方は相当減ります。
なのでこの業界は一本こけたらアウトなところが多
いので代表が「よっぽど馬鹿」でもない限り枕を要求
したりはしないでしょう。
今の 18 禁ゲーム業界の死活問題は「原画を描いてく
れる原画家」を探すことなんですが、 、
、まあそれはこ
の記事とは関係ないので。
名前： ：2007 年 9 月 19 日 21:33
キャラクターの声を、選ぶ時
ボイスサンプルといって
いくつかのキャラを録音した声を
メーカーなどが聴いて選ぶのです
直接会って面接なんてないですし
事務所では、メイド喫茶で働くのさえ禁止していて、
風俗なんかありえません
声優とはいえ、今や雑誌、TV、イベントと顔を出す時
代です
もし、そういうバイトしたら、だれだれだとばれたり
する可能性があるので
スキャンダルになってしまいます
だから、ありえません
声優は、そんなバカなことする必要もないのです
っていうか、一般の会社でも
そういうバイトは禁止してると思いますけど。
名前：ゲーム音声収録スタジオ勤務 ：2007 年 9 月
20 日 02:02
練馬区にあるゲーム系の某スタジオに勤務している
者です。
アニメの場合のギャランティはランク制というシス
テムに則って算出され、新人の最低ランクで 1 回の収
録で 1 万 5000 円です。ここから事務所の手数料とし
て 20%～30%、そして源泉徴収 10%が引かれ手取りで
1 万円前後といったあたりになります。
ゲームの音声収録のギャランティは基本的に 1 台詞い
くらというのをベースに算出します。
エロゲーの場合は 1 ワード 50 円～100 円といったと
ころでしょうか。
そしてその台詞分量ですが最近のエロゲーの場合、ヒ
ロインで 3000 ワード・脇役で 1000 ワードといったと
ころです。 （大作であればもっとワード数は増えます。
この上に、キャラクターソングなどの二次展開や発売
日販促イベントなどがある作品では、1 人当たり手取
りで 30～50 万くらいになる場合もあります。
ゲームのほうが台詞数が多い分、同じ拘束時間で多く
稼ぐことが出来ます。
一昔前は確かに、アニメだけでは食えないからと、エ
ロゲーの仕事をやっている人が多くいました。
ですが、今はむしろエロゲーの仕事や現場が好きだか
らと言ってアニメよりもエロゲーの現場を選んでい
る人までいます。
また、喘ぎなどの演技は普通のアニメの演技より熟練
した技術が必要なこともあり、新人の登用はアニメよ
りも厳しくなっています。
また、122 さんの仰るとおり、面接を行うことなどま
ずなく、基本的にはサンプル CD を参考にキャスティ
ング配置を行います。
直接オーディションを行う場合も、プロフィールなど
より演技ができるかどうかが重要ですので、面談など
行いません。
また、現場ではメーカークライアントやティレクター
よりも实質的な立場は役者のほうが上です。
アニメやラジオやナレーションなどの現場と同じく、
役者のモチベーションを維持することに腐心し、忚対
などには細心の注意を払います。
この業界に長いこといますが、アニメ関連の方からは
枕営業の話などを小耳に挟むことはあっても、エロゲ
ー関連からは全く聞いたことがありません。 （スタッ
フと役者の結婚話は年に何度か聞きますが。
妄想だけでこのような捏造記事を出すことはやめて
いただきたいです。
名前：元無名声優 ：2007 年 9 月 21 日 07:49
俺は今は１人の演技者として为に自然な演技のデー
タ収集中で健康を失調中でもある。
依頼元はいつまでクライアントとの守秘義務を通せ
ばいいかが判らないので１部の名を伏せるが、
とある関西の専門学校の声優科で受けた仕事では…
とある求人雑誌のラジオＣＭの声録りで５０００円、
本採用でもう５０００円だったな。
学校で録ったサンプルボイスを送って採用された者
だけ当日、スタジオへ行き、依頼元の人達が来る前に
何通りか声録りをする。
依頼元の人達が来たら録っておいた数パターンを聴
いてもらい、本採用のメンバーが決まる。
その後に本録り、となる。
通うだけ、教わるのを待つだけ、ではプロ意識は身に
つかない。
自ら動かねば何も得られない、努力だけで叶うモノな
ど皆無だ。
加えて、理想と現实は全くの別物である。
声優と言っても、司会（ライブなどのＭＣやイベント
の進行役や結婚式、葬式）やラジオの進行役やテレビ
でのナレーションや動物に声をあてるもの、カーナビ
のボイス（これは受けた覚えが無いから不明） 、リポ
ーターやその他のニュース関連に…まー色々だ。
声優業とは歴史というには浅いものであって、元は役
者の慈善事業もしくはアルバイト程度だったらしい
（中古で買った「声優読本」より） 。
そもそもこの記事は女子アナの関連で１度誰かが書
いたモノの流用…
１部を声優仕様にして当てはめているが、確かにどっ
かで観た覚えがある…結構昔の記事のハズだ。
あれは確か、何かの番組でそんな記事の載った雑誌を
紹介していた、そんな内容だったな。
もし、この記事が釣り目的ならば、だが…十分に成功
といえるだろうな。
 名前： ：2007 年 9 月 21 日 11:09
>>163 がなんかとても知人な気がする件 まぁいい
か ィションで決まる。その倍率はとても高く、新人だろうと
処で新人で 1 本 3～5 万つったら相当高い方なんだが
熟練者でも 1 万程度しか貰えない時があるのに・・・
5 万貰える仕事を3 本やりゃぁ15万 それだけあれば
1 人なら十分に食ってけますからね
そこそこ色んな物に出てる人が「普通に食べていける
お金が欲しい」なんて言ってる位ですよ
名前：元声優 ：2007 年 9 月 21 日 23:07
なんだこれ。
昔洋画声優やってたけど職歴など聞かれたことも調
べられたこともない。
ギャラも>>164 が言ってるように新人にはありえな
い設定。
それを調べもせずに雀の涙と言い切るこの記事を書
いた記者さんは
これ 1 本でおいくらくらい貰ってるんだろうと興味
津々。
なんか色々と事实と違うことを書いて声優業界にど
んなイメージをつけたいのかね。
名前：スタジオエンジニア ：2007 年 9 月 25 日 11:13
某エロゲ声優さんのブログのリンクから飛んできま
した。
記事とレスをひととおり流し読みしましたけど、
この記事には大変不快な思いをさせてもらいました。
私の周りでは遠くのところで枕営業的な噂を聞いて
も、
このようなことは一切ございません。
实際にあるようなことがあれば、僕はこの仕事を辞め
ます。
そこまで、声優さん、メーカーさん、プロデューサー
さん
そしてスタッフの方々の地の滲む努力を感じて
僕らも頑張っているからです。
夜を要求するような常識知らずのクライアントのた
めに
頑張っているのではないのですよ。
名前： ：2007 年 10 月 21 日 06:26
やばいよね、こりゃあ。
美尐女ゲームに詳しくない俺でも、有名声優が何個も
芸名持っているって話は知ってるぞ。
何でも書けばいいってもんじゃないわな。
この記事は基本的におかしい。
現在、声優に対する出演料は３０分番組への出演を基本
とし、１５０００円から４５０００円まで１０００円刻み
の「ランク制」となっている。但し４５０００円以上はノ
ーランクと上限は無い。その他「アニメーション作品出演
規定」等の規定が、
協同組合日本俳優連合によって出され、
声優のギャランティ水準について一定の権利を求めている。
アニメーションなどのキャスティングは基本的にオーデ
ベテランだろうと、オーディションの場では立場は同じで
ある。ただ、そうして獲得した仕事のギャラは、１００％
手元に来るわけではなく、２～３割が事務所の取り分とな
り、その残りが給料として手に入るのである。ということ
は、その残りが声優の实利であり、レギュラー出演が沢山
あることは別に問題ではなかろうが、仕事がなければ勿論
収入はゼロであり、あまりにもその状態が続くと、事務所
としては面倒を見るのがしんどくなるのは目に見えてくる。
本当にどうするべきかは、私がここで独断することでは
ないので、あまりここで確信持って話すことは差し控えさ
せていただきたい。
６．５．２．著作隣接権と声優
次にここでは「著作隣接権と声優」というテーマで、そ
の項目について述べていくこととする。なお、著作権・著
作隣接権とその支分権の概要については、拙著『おたく論
概説』第７節を参照されたし。本稿では、読者諸氏がその
概要を理解していることを前提として述べていく。
实演家の権利は、著作権法第４章第２節に明文化され、
保護されている。しかし、实演者の権利というものは保護
されていない。それならばと動いているのが日本俳優連合
に見られる「権利獲得の動き」である。ここでは、前項の
「声優のギャランティ」から引き続く形で、
「实演者の権利
獲得」について触れておきたい。
先述の「ランク制」や「アニメーション作品出演規定」
も、
「实演者の権利」の為に置かれているものである。もし
なければ、法的権利を有している实演家などの力によって
様々な事が取り決められ、实演者は極端に保護されない立
場におかれる。
そもそも、
「日本俳優連合」とはどのような組織なのだろ
うか。公式サイトには次のように紹介されている。
協同組合日本俳優連合は、 「日俳連（にっぱいれん）」
と呼ばれ約 2,700 名の俳優が加入しています。俳優は
一人一人がTV局や制作者と対等に出演契約を結ぶこ
とは残念ながら難しいのが現状ですが、 「日俳連」は、
協同組合法で認められている団体交渉権を生かして、
NHK、民放、製作会社との間で出演条件や安全対策
等の団体協約を締結しています。
「日俳連」に入っていれば守られる「最低条件」が、
そこに存在します。もし、その条件が守れなかったと
きは、「日俳連」は皆さんとともに問題解決のために
動きます。
残念ながら、現在の日本の「著作権法」やその元とな
っている「国際条約」では、俳優たちの権利は大幅に
制限されています。 「日俳連」は「日本芸能实演家団
体協議会」とともに、法律の改善と俳優の権利拡大を
目指して諸方面に働きかけています。これからも、俳
優が安心して活躍できる環境づくりのために、 「日俳
 連」は、動き続けます。
日俳連は様々な活動を行ってきているのだが、「声優の
権利」において画期的な判決が出た裁判を、ここでは紹介
したい――「日本アニメーション・音響映像とのビデオ化
使用料請求訴訟」である。
この裁判の提訴理由は、
「日本アニメ・音響映像二次使用
料未払い訴訟」公式サイトにて、次の３つだとしている。
ａ．業界関係者の労苦の結晶である出演ルールを無視
する被告の独断的な行為を糾弾する。
ｂ．業界システムの崩壊を防止する
ｃ．作品を汚す、ファンや声優に対しての裏切り行為
を糾弾する。
そして、裁判が結審してからアップされた日俳連公式サ
イト内の文章を引用しておきたい。
日本アニメーション・音響映像訴訟上告棄却
日本俳優連合が支援してきた「日本アニメーション・
音響映像とのビデオ化使用料請求訴訟」が、平成 17
年 6 月 28 日最高裁判所の上告棄却決定を受けて、原
告団が完全勝利を収めました。 平成 12 年 2 月 4 日
提訴以来实に 6 年、未払い発覚から、13 年の歳月を
費やしました。
この裁判は、テレビアニメーションをビデオ化した場
合、ビデオ化使用料を声優にも支払う音声業界ルール
があるのにもかかわらず、日本アニメーション・音響
映像が支払いをしなかった事から始まりました。
日本俳優連合の組合員である声優 381 人
（最終債権者
360 人）が原告となり、日本アニメーション株式会社
（本橋浩一社長）並びにその系列会社、音響映像シス
テム株式会社（当時、小野哲男社長）を東京地裁に提
訴したのです。訴えの内容は、日本アニメが昭和 61
年以降に製作しＴＶで放送された「愛尐女ポリアンナ
物語」 「ちびまる子ちゃん」など 37
「家なき子レミ」
（31 で確定）シリーズのアニメーションが放送終了
後、ビデオ化され販売されたことに対する「ビデオ化
使用料」の支払いを請求したものです。
訴訟上の争点は、日本俳優連合と音声製作会社及び動
画製作会社の間で、昭和 45 年代後半からビデオ化利
用料（アニメ作品製作の目的外で利用した場合には、
一定の料率を乗じた目的外利用料を支払うことにな
っており、ビデオ化に際しても、その利用料を支払う
のと引き換えにビデオ化を容認するというもの）の支
払いを巡るルール化が話し合われてきました。昭和
56 年に、中小企業等協同組合法に基づく団体協約で
あるアニメ協定・覚書が締結されました。締結为体は
日俳連と音声連と動画連盟です。
被告日本アニメーションはこの協定に調印していま
す。協定の内容は、アニメ作品への声優の出演条件と
音声製作のルールを定めたもので、この協定・覚書に
添付された出演实務運用表によれば、ビデオ化利用料
は話し合いによって決めることとされていました。そ
の後、音声連には被告音響映像システムが加盟し、さ
らに昭和 61 年には出演实務運用表に、ビデオ化利用
料の料率が定められてこれが団体協約上ルールとし
て、業界においては、長年にわたって運用されてきた
のです。
ところが、被告らは、上記作品をビデオ化しながら、
このルールに従った利用料の支払いをしませんでし
た。そこでルールを遵守するよう求めたのが本件訴訟
だったのです。
これに対し被告らは、
出演实務運用表に定めた出演ルールは団体協約とし
ての効力がない、
被告音響映像システムは団体協約に署名していない、
日本アニメーションは団体協約に署名したがその後
連盟を脱退しているので協約には拘束されないとし、
出演契約には、ビデオ化利用料の支払いは含まれない
として争ってきたのです。
そして、平成 15 年 11 月 6 日、東京地裁より判決が
下りました。
東京地裁民事 44 部（滝澤孝臣裁判長）の判決は「被
告音響映像は、原告らに請求金額全額を支払え」とい
うものです。業界関係者の努力の結晶である出演契約
の有効性がひとまず認められたわけですが、日本アニ
メに対しての請求については音響映像がビデオ化使
用料を声優たちに支払えないことが明らかにならな
ければ代位請求はできないと、訴えが却下されたので
す。
判決どおり音響映像にビデオ化使用料を支払わせる
ためには、日本アニメに音響映像への支払いを实行さ
せなければなりません。そこで判決を实効あるものに
するためには、音響映像への支払い請求を行うのと並
行し、原告団は日本アニメへの支払い請求を求めて控
訴したのです。 平成 16 年 8 月 25 日、東京高等裁判
所第 9 民事部（雛形要松裁判長）は、控訴審判決を下
しました。判決は、 「日本アニメは、音響映像と連帯
して声優達にビデオ化使用料を支払いなさい」という
ものです。
平成 11 年 8 月 24 日、声優達が東京簡易裁判所に調
停を申し立てて 6 年、日本アニメ作品のビデオ化使用
料の未払いの疑いが発覚してからは 13 年になります。
やっと完全勝利を手にすることができました。しかし、
 被告側は、即日上告を行い、それから一年、平成 17
年 6 月 28 日最高裁判所は、被告の上告棄却を決定、
原告団の完全勝利となったのです。
この判決は、著作権法に明文化されていない实演家の
経済的権利を協約、契約で守ることが可能であること
を示した画期的な判例となりました。
次に、裁判原告による「陳述書」から後半を一部引用す
る。その前半は、第１節第２項の参考資料として用いてい
るため、改めて挙げることはしない。
この双方で調印した協約が誕生することによって
ルールは円滑に運用されてきました。ところが、今回、
この音製連と日俳連の間で取り交わされている協約
ならびに「实務運用表」に明記されているビデオ化使
用料を支払わない音響映像システムなる会社が現れ
ました。同社は音製連の理事会社であるにも拘わらず、
ルールを無視しているのです。さらに、この音響映像
システムの大口出資会社であり、動画製作業界の老舗
でもある日本アニメーションという会社は業界のル
ールを正面から否定し始めたのです。私たちの「協定
を守るように」との呼びかけに対して、音響映像シス
テムは「全てはビデオ製作、発売元である日本アニメ
ーションが窓口」と言い、これを受けた私たちが、再
三にわたって日本アニメーションに話し合いを申し
入れても、全てが無視されるという事態になったので
す。事態を解決しようと、日俳連の森繁理事長は日本
アニメーションの本橋浩一社長に親書を送り、話し合
いのテーブルに就くよう願い出ましたが、これも無視
されました。
私たちは、やむなく、法の下での話し合い解決の方
法を探るべく、東京簡易裁判所に調停を申し立てまし
たが、両社からはこれも拒否されました。度重なる話
し合いの申し入れを歯牙にも掛けない両社に対して、
私たちは、深い憤りを感じます。
これが私たちの訴訟に至る経緯です。
もう一度申し上げますが、实演家、そして製作会社、
そのどちら側にも不公平のないようにというのが、私
たちの作ってきた協約の精神であると認識していま
す。
時はＩＴ産業に政府方針が盛り込まれ、同時に付随
する問題、俳優など实演家の著作隣接権問題を、法的
に整備していくという課題が沖縄サミットでも確認
されています。
私たちはこの事に先駆けて、業界の正常化と発展の
ために、この協約を作り上げました。お互いの努力を
基盤に、昭和 56(１９８１)年 10 月から事实上のスタ
ートをしていたのです。折角作り上げたこの約束事を
音製連に加入する他の会社が守っている状況の中で、
その約束事を無視しようとする被告の立場は理解で
きません。
以上、出演時の实態と協約の意義について陳述させ
ていただきましたが、この協約を守ることこそ、業界
の文化的発展の礎であることにご理解を賜りたいと
存じます。 以 上
この訴訟で問題とされていることは「ビデオ化使用料の
声優への支払い」である。これは音声業界のルールとして
業界内で取り決められたものであるのだが、これを破って
いることに対し、声優たちが立ち上がったものである。
そもそもなぜそのような取り決めがわざわざ存在する
のか。著作隣接権の仕組みから言えば、著作権法第９５条
に「商業用レコードの二次使用」の条文があるのだが、こ
れはあくまでも「レコード」についてのものであり、「ビデ
オ」についてのものではない。その他、「映画」や「録画」
などの卖語は出てくるのであるが、完全に「影像を演ずる
实演家」に対する権利を明文化したものは見当たらない。
そして、本論で示した通りに声優の雇用・労働環境改善
のためには必要な動きであったと言えよう。
声優のギャランティの問題などを話すときには、
よく「ラ
ンク制」の話が持ち出されるのだが、声優の経済的問題が
それだけで片付く筈がない。彼ら／彼女らは、メディア環
境の変化の波の中で、１俳優／声優として一生懸命に活動
していることは、読者たちも承知していることだろう。
实演者の権利というものが守られるということは、作品
の制作環境の風通しをより良くすることである。現在の日
本の著作権法が抱えている問題点を私は、实演家や实演が
守られているなかで、声優のアフレコ・アテレコなどの活
動の位置付けの曖昧さであると考えている。
そして、そのために上に立つ／立てる者へ権力集中する
ことを是認するような形となっていることだ。この裁判は
その不十分点を補うために設けられた業界内の取り決めを
無視し、ひいては声優（俳優）の存在を蔑ろにする動きに
鋭くメスを入れられた点で、大きな功績となっていると言
えよう。
今後、メディアのさらなる多様化、ネット社会の進展の
中で、おそらく声優は新たな問題にさらに挑んでいくこと
になるだろう。その時には道のりは長くとも、引っ込まず
に、そのことを「社会問題」とし、権利獲得を目指してい
けばいいと私は思っている。声優・俳優には、その為に動
ける組織があり、それは心強いことであろう。さらに、日
本のアニメなどを愛する根の深いファンが沢山いることも
忘れてはならない。
アニメを観たり、ＣＤを聴いたりなどしている私は、も
ちろん今後の声優界のさらなる発展を願っている人間の１
人である。そして多くの読者もおそらくそうであろうと思
っている。いざという時には、立ち上がることも必要かも
しれない。
６．６．本節のさいごに
さて、本項は「アーツビジョン騒動」という、大変に危
険な論題である。それを承知ながら、最終的に本項を仕上
げたのは、猪岡のスタンスの１つ――歴史を知る意味は、
「過去を知り、今を生き、未来に活かす為」ということに
従ったためである。
我々は、一体何処まで「社会」を知っているのだろうか。
私が本節を通して読者に考えてみて欲しいことは、今一度
声優界について、何が起き、何が言われ、何が疑われ、何
が噂やデマ・流言であり、何が必要悪とされ、そして何を
以って「正常化」と言うべきかを知ったり、考えたりして
欲しいのである。
私は、その最後の「正常化」の基準を本稿では語ってい
ない。それは、私の独断ではなく、多くの人々の意見の中
から作られていくべきであると考えている為である。
ところで、おそらくこの問題を再び穿り返すことは、多
くの人々のファン感情からすれば良くないのかもしれない。
しかし、たとえどの様な立場にあろうとも、事实は実観
的に受け止め、そしてたとえ「黒歴史」であろうとも、そ
れは史实として声優史に描くべきである。このことを誰も
が封印することは、それこそ声優界の「セクハラ／パワハ
ラ／枕営業」を、暗黙のうちに認めることに繋がる「鍵」
になるのではなかろうか。どんな「発火行動」よりもひど
い行為に思えるのであるが、皆さんはいかがだろうか。
図６‐２ 『銭』第４巻 抜粋 註：声優論に関する参考書の１つとして挙げておきたい。

図６－３ 「堀江由衣処女論争の結末」
（出典＝はてな匿名ダイアリー）
 『声優の枕営業』のことかもしれない POP」
図６－４ アキバＢｌｏｇ ２００７年０６月０６日「

図６‐５ 署名活動（出典＝アキバＢｌｏｇ）

図６－６ 堀江由衣公式サイトでの謝罪文（出典＝SterChild:堀江由衣）
註：文面が「かなり事務的」であることから、本当に本人が書いたのかが疑われたもの。右は比較対象として

７．声優賞賛とセレクティヴ・サンクション
７．１．声優を讃える傾向の例
前節は「声優に関わるところが罰せられた例」
であった。
本節は逆に、近年の「声優に関わるところが讃えられる傾
向」について触れていきたい。
２００７年３月３日、東京・秋葉原にある東京アニメセ
ンターにて、「第１回 声優アワード」
の授賞式が行われた。
その「声優アワード」とは何であろうか。公式サイトを
引用・参考に概要を以下にまとめてみた。
声優アワードの目的
外画も含めた故人の中で、長年に渡り多くのジャンルに
貢献した役者、及び作品
功労賞
外画も含め、長年に渡り多くのジャンルに貢献した役者、
及び作品
シナジー賞
作品として声優の魅力を最大限に発揮したもの
富山敬賞（話題賞）【第２回～】
声優という職業を各メディアを通じて多く広めた人物
海外ファン賞【第３回～】
海外の人達の視点で選ばれた人物
キッズファミリー賞【第４回】
子どもたちの目線でもっとも魅力的な声優

声優アワードは、その年度に「最も印象に残る」声優や
作品を対象に、その業績を称える本格的な、声優を対象
とするアワードとして創設します。東京アニメセンター
が音声連やアニメ業界各社と協力し、声優を表彰するも
のとしては業界最大の舞台を提供し、声優の地位の向上
に寄与することを目的とします。現在、子ども達が憧れ
る職業の中でも上位にランキングされ、注目を集めてい
る声優業。この声優アワードをきっかけに、新たな人材
育成などのプログラムを提供していきます。
受賞者
【第 1 回】
功労賞、特別功労賞、シナジー賞については、实行委員
会が長年の功績をもとに推薦した結果を選考委員会で承認
する形で決定されました。その他の部門については各投票
サイト・施設にて行われた一般投票での得票を各媒体ごと
に集計し、その結果を元に最終選考へのノミネート者を決
定いたしました。その後選考委員会による二次選考によっ
て最終的な受賞者を決定しました。

授賞概要 ・今回の声優アワードは第一回ということもあり、最終的
７つの部門を設け各々の定義に従って選定・評価・贈賞す な選考に大変苦労しました。
るものとする その結果がサブキャラクター賞・新人賞の複数名受賞と
いうこととなっております。
第１群 一般投票により一次選出を行う部門 ・外画とは 音声製作者連盟では、「外国映画」「海外ドラ
为演男優・女優賞 マ」「海外アニメーション」の総称を外画としています。
その年発表された作品の中で为演として活躍された方
（役柄ではなく、ご本人の性別） 为演男優賞
サブキャラクター男優・女優賞【第１回～第２回】 福山 潤 ぷろだくしょんバオバブ所属
助演男優・女優賞【第３回～】 为演女優賞
その年発表された作品の中で助演として活躍された方 朴 璐美 円企画所属
（役柄ではなく、ご本人の性別） サブキャラクター男優賞
新人男優・女優賞 石田 彰 マウスプロモーション所属
下記の条件を満たすもの 宮田 幸季 81 プロデュース所属
原則として声優としてデビュー5 年以内 サブキャラクター女優賞
対象期間中に「新人賞」を取るにふさわしい、特 小清水 亜美 八重垣事務所所属
に目立った活躍をした方。 後藤 邑子 ぷろだくしょんバオバブ所属
歌唱賞 新人男優賞
声優自らの名前もしくは演じている役名で歌唱を発表し 柿原 徹也 81 プロデュース所属
ている方 森田 成一 青二プロダクション所属
ベストパーソナリティ賞【第 1 回～第２回】 新人女優賞
パーソナリティ賞【第３回】 鹿野 優以 青二プロダクション所属
声優自らの名前もしくは演じている役名でラジオ、web 平野 綾 スペースクラフト・エンタテインメン
ラジオ、TV、その他の番組でパーソナリティとして活躍 ト所属
されている方 歌唱賞
水樹 奈々 シグマ・セブン所属
第２群 選考委員会にて顕彰される特別賞など ベストパーソナリティ賞
特別功労賞 浅野 真澄 アーツビジョン所属
特別功労賞 【第３回】
富山 敬 享年５６歳 为演男優賞
功労賞 神谷 浩史 青二プロダクション所属
大平 透 大平プロダクション所属 为演女優賞
小原 乃梨子 ぷろだくしょんバオバブ所属 釘宮 理恵 アイムエンタープライズ所属
池田 昌子 東京俳優生活協同組合所属 助演男優賞
向五 真理子 81 プロデュース所属 五上 和彦 B-BOX 所属
シナジー賞 杉田 智和 アトミックモンキー所属
ポケットモンスター 助演女優賞
遠藤 綾 オフィス PAC 所属
【第２回】 沢城 みゆき マウスプロモーション所属
为演男優賞 新人男優賞
宮野 真守 劇団ひまわり所属 岡本 信彦 プロ・フィット所属
为演女優賞 梶 裕貴 アーツビジョン所属
平野 綾 スペースクラフト・エンタテインメン 新人女優賞
ト所属 阿澄 佳奈 81 プロデュース所属
サブキャラクター男優賞 戸松 遥 ミュージックレイン所属
小野 大輔 マウスプロモーション所属 歌唱賞
神谷 浩史 青二プロダクション所属 中島 愛 スターダスト音楽出版所属
サブキャラクター女優賞 パーソナリティ賞
釘宮 理恵 アイムエンタープライズ所属 神谷 浩史 青二プロダクション所属
斎賀 みつき 賢プロダクション所属 特別功労賞
新人男優賞 武藤 礼子
羽多野 渉 81 プロデュース所属 2006 年 10 月 29 日永眠 青二プロダクション所属
代永 翼 賢プロダクション所属 功労賞
新人女優賞 内海 賢二 賢プロダクション所属
加藤 英美里 81 プロデュース所属 永五 一郎 青二プロダクション所属
小林 ゆう ホーリーピーク所属 富田 耕生 ぷろだくしょんバオバブ所属
歌唱賞 シナジー賞
平野 綾 スペースクラフト・エンタテインメン 鉄腕アトム
ト所属 清水 マリ ぷろだくしょんバオバブ所属
加藤 英美里 81 プロデュース所属 水垣 洋子 81 プロデュース所属
福原 香織 エイベックス・プランニング＆デペロ 勝田 久 アーツビジョン所属
ップメント所属 富山敬賞（話題賞）
遠藤 綾 オフィス PAC 所属 山寺 宏一 アクロス エンタテインメント所属
ベストパーソナリティ賞 海外ファン賞
鈴村 健一 アーツビジョン所属 福山 潤 ぷろだくしょんバオバブ所属
特別功労賞
城 達也 【第４回】
1995 年 2 月 25 日永眠 俳協所属 为演男優賞
功労賞 小野 大輔 マウスプロモーション所属
野沢 那智 賢プロダクション所属 为演女優賞
来宮 良子 俳協所属 沢城 みゆき マウスプロモーション所属
羽佐間 道夫 ムーブマン所属 助演男優賞
シナジー賞 浪川 大輔 アクロスエンターテインメント所属
仮面ライダー電王 三木 眞一郎 ８１プロデュース所属
関 俊彦 81 プロデュース所属 助演女優賞
遊佐 浩二 フリー 五上 喜久子 オフィスアネモネ所属
てらそま まさき マウスプロモーション所属 堀江 由衣 ヴィムス所属
鈴村 健一 アーツビジョン所属 新人男優賞
富山敬賞（話題賞） 阿部 敤 賢プロダクション所属
古谷 徹 青二プロダクション所属 前野 智昭 アーツビジョン所属
新人女優賞
 伊藤 かな恵 青二プロダクション所属 ２００３年
豊崎 愛生 ミュージックレイン所属 声優賞：山口勝平
歌唱賞 ２００４年
放課後ティータイム 声優賞：朴璐美
豊崎 愛生 ミュージックレイン所属 ２００５年
日笠 陽子 アイムエンタープライズ所属 声優賞：倍賞千恵子『ハウルの動く城』 （ソフィー）
佐藤 聡美 青二プロダクション所属 ２００６年
寿 美菜子 ミュージックレイン所属 声優賞：大塚明夫
竹達 彩奈 アイムエンタープライズ所属 『ブラック・ジャック』 （ブラック・ジャック）
パーソナリティ賞 ２００７年
小野坂 昌也 青二プロダクション所属 声優賞：平野綾『涼宮ハルヒの憂鬱』 （涼宮ハルヒ）
特別功労賞 ２００８年
高橋 和枝 フリー 声優賞：宮野真守 『機動戦士ガンダム００』 （刹那・
功労賞 Ｆ・セイエイ） 『DEATH NOTE』
、 （夜神 月）
玄田 哲章 ８１プロデュース所属 ・ アニメーション神戸賞
杉山 佳寿子 青二プロダクション所属 特別賞
田中 信夫 東京俳優生活協同組合所属 第 ２ 回：野沢雅子
シナジー賞 第１１回：大山のぶ代・小原乃梨子・野村道子・肝付
機動戦士ガンダム 兼太・たてかべ和也
古谷 徹 青二プロダクション所属 ラジオ関西賞・AM 神戸賞（为題歌賞）
池田 秀一 東京俳優生活協同組合所属 第 ６ 回：三重野瞳 With 影山ヒロノブ「W-Infinity」
富山敬賞（話題賞） 第１０回：麻帄良学園中等部２－A「ハッピー☆マテ
水樹 奈々 シグマセブン所属 リアル」
海外ファン賞 第１１回：平野綾、茅原实里、後藤邑子「ハレ晴レユ
斎賀 みつき 賢プロダクション所属 カイ」
キッズファミリー賞 第１２回：平野綾、加藤英美里、福原香織、遠藤綾「も
水田 わさび 賢プロダクション所属 ってけ！セーラーふく」
第１３回：坂本真綾「トライアングラー」
部門賞・声優部門 ＊現在、この部門は廃止
一般投票
第 １ 回：林原めぐみ
声優アワード公式サイト 第 ２ 回：椎名へきる
角川書店
http://webnt.jp/ ７．２．讃えるセレクティヴ・サンクション
Voice NT No.29(11 月 10 日発売予定号)に綴込んである ここで、前節の内容からここで必要な部分のみを復習し
専用ハガキにて投票 ておきたい。
文化放送 先ず「逸脱行為」には、「ネガティブな逸脱行為」＝「犯
http://www.agqr.jp/top@joqr.jp 罪」と、
「新たな価値観・規範を提示するポジティブな逸脱
(空メールを送ると、折り返し返信される URL より投票) 行為」がある。
東京アニメセンター そして、「人が逸脱者というラベルを貼られるのは，【中
東京アニメセンター設置の投票箱 略】社会的マジョリティによって定められた同調・逸脱に
(専用投票用紙に必要事項を記入して東京アニメセンタ 関するルールが恣意的に適用されたためである。したがっ
ーまでお持ちいただくか、郵送にて受付) てこのラベルは，とりわけ社会的弱者に対して適用されや
すい」という「セレクティヴ・サンクション」も紹介した。

以上のほか、詳しい受賞理由等の情報は公式サイトに書か さて、前項で挙げたいくつかの「声優を讃える賞」は、
れている。 「ポジティブな逸脱行為者」に対して「セレクティヴ・サ
さて、この賞の他に、声優が何らかで賞を受けるチャン ンクション」を行うための「ラベル」であると言える。
スがあるものとして、次のものが代表的なものである。 賞を受賞した声優たちは、賞を与える側から見れば、
・ 東京アニメアワード（個人賞） 「平々凡々な声優には見えない」のである。数多いる声優
２００２年 たちの中でも、
「非常に特異な」声優であるが故に、それに
ベストキャラクター賞（声優） 相忚しくするべく、都合のいいラベルを貼るのである。
テレビ番組部門：間宮くるみ 例えば、平野綾については前項の例の中では、次の各賞
劇場映画部門：柊瑠美 を受賞している。
 ・ 第１回声優アワード 新人女優賞
・ 第２回声優アワード 为演女優賞・歌唱賞
・ 東京アニメアワード ２００７年個人賞声優賞
・ 第１１回・第１２回アニメーション神戸賞 ラジオ
関西賞（为題歌賞）
平野は２００６年から、あまりにも珍しく多くの賞を受
賞している。『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』を中心
として、爆発的な人気を得たわけだが、そのような人気を
得るということは即ち、声優界で「非常に特異な」存在で
あったということである。各賞を受賞しているのは、多く
の人々が、その年を代表させたいという気持ち――その時
点での「特異性」を感じたという証と言える。
賞を受賞することは、受賞者本人からすれば喜ばしいこ
とであり、活躍していく上でのヤル気に繋がっていくこと
だろう。しかし、賞を受賞したことによって、長期にわた
って力を緩める、安心しきるということはおすすめできな
い。なぜなら、「賞」というものはその時点では大きな力を
発揮しても、「特異性」が「平凡なもの」に変わってしまえ
ば、大したものでなくなるからである。
「時代の流れの中で淘汰されていく」――それはいつも
どの時代にもあるのは、「特異性」の感じる部分・場所はい
つの時代でも変化しているということと同義である。そし
て、それを悲しむ必要はないのである――確实に社会は多
様に変化し、受け入れようとしているのである。
７．３．声優アワードの存在意義
前節の猪岡お得意の理論から、この節は雰囲気がまた変
わる。声優界において、新しい風を吹き込もうとしている
動きの１つとして、
「声優アワード」の創設と継続がある。
ここでは、その「声優アワード」について、存在意義を問
うていきたい。
そもそも、声優アワードがなんの為にあるのかを確認し
たい。声優アワードの公式サイトには次のように目的が書
かれている。
声優アワードは、その年度に「最も印象に残る」声優
や作品を対象に、その業績を称える本格的な、声優を対
象とするアワードとして創設します。東京アニメセンタ
ーが音声連やアニメ業界各社と協力し、声優を表彰する
ものとしては業界最大の舞台を提供し、声優の地位の向
上に寄与することを目的とします。現在、子ども達が憧
れる職業の中でも上位にランキングされ、注目を集めて
いる声優業。この声優アワードをきっかけに、新たな人
材育成などのプログラムを提供していきます。
声優アワードの意義を考える上でポイントとなるのは、
この文中にある「その年度に『最も印象に残る』声優や作
品を対象に、その業績を称える」ということである。
それに関わって、『ＴＣＶＶ白書９』p.17 に次のように
書かれている。
そもそも論から言えば声優アワードは演技力ではな
く活躍した人に贈られるそうで、最も話題になった作品
に携わった人に贈れるそうである。もっと簡卖に言えば、
売れた作品ということである。つまりは、声のプロフェ
ッショナルという本来の評価がなされていない。
ただ卖に「印象的」というパラメタだけにより評価され
ており、結局、目につく人間しか拾えない。
そして、『TCVV Free Paper Vol.4』p.2 には次のよう
に書かれている。
今の声優アワードの最大の問題点は中長期的に支え
る中堅どころが全く評価されていないことである。「印
象的」というパラメタが入っている時点で人気投票では
ないか。
日の当らない当らない声優にスポットライトを当てて
顕彰するのが本来の目的であったのに人気投票をして
どうすんの？
短期的な人気投票なんて要らない。そんなの昔からアニ
メ雑誌がやってきた事だ。声優アワードはそれを大規模
化しただけ。
ＴＣＶＶは厳しい意見を述べているわけであるが、私自
身もこれには賛同したいのである。
声優アワードというイベントの売りと言えば、「一般投
票」であると言えよう。これは「多くの人々の声を取り入
れることを通して、一般的な意識に近いものとしよう」と
いう、裁判員制度の「市民感覚の導入」のような考えから
取り入れられているのであろう。
だが、「年度の印象ある声優を選ぶ」というのは、本当
に行う必要があるだろうか。その業績を讃えることは、本
論で書いた「讃えるセレクティブ・サンクション」、つま
り「いい意味で変だった人」
を選ぶにすぎない行為である。
目立った人を讃えるということは、社会的には「この人
のようになりなさい」というメタ・メッセージを与えるこ
とになる。一方で、賞では「新鮮さ」を掬い取れないから
であろうか、声優アワード实行委員会では、「新人発掘オ
ーディション」というものを行っている。その新人に、
「受
賞者の背中を見て育て」とでも言いたいのであろうか。そ
うであるならば、その声優は「アイドル声優」になれとい
うことだろうか。
私は、声優アワードというものが、本当に声優にとって
有意味なものであるのか、大変疑問である。
ところで、声優アワードには途中から追加された賞があ
る――富山敬賞（話題賞）、海外ファン賞である。
富山敬賞は「声優という職業を各メディアを通じて多く
広めた人物」に贈られ、海外ファン賞は「海外の人達の視
点で選ばれた人物」に贈られるものである。
なぜ追加したのであろうか――疑問点はシンプルにこ
こである。そもそも、なぜ「声優という職業を各メディア
を通じて多く広め」る必要があり、なぜ「海外の人達の視
点」が必要なのであろうか。
私は、後援に経済産業省と東京都が関わっていることが
関係しているのではないかと考えている。
「コンテンツの創 （５） １８禁ゲイムも評価対象としたい。（ただし、
造、保護及び活用の促進に関する法律」には、次の条文が 要検討）
ある。
それぞれについて、理由を要約すると次のようになる。
第十九条 （１）アイドル化を助長する歌手活動を顕彰してはなら
国は、コンテンツ事業の事業規模の拡大を図るととも ない。廃止にまで行かなくても、演技のうちに入
に、海外における我が国のコンテンツの普及を通じて るキャラソンのみに止めた方がいい。
我が国の文化等に対する理解の増進を図ることがで （２）１年程度で何がわかるのであろうか。そしてヲタ
きるよう、我が国の魅力あるコンテンツの海外への紹 クの嗜好は移ろいやすいこともある。中長期的な
介、コンテンツの取引の活性化を図るための国際的な 視点で評価をしてこそ、真に技量ある声優を顕彰
催しの实施又はこれへの参加に対する支援、コンテン できるというものだろう。
ツに係る海外市場に関する情報の収集及び提供その （３）「芸能証券」や「しょぼいカレンダー」といった
他の必要な施策を講ずるものとする。 指標からフィルタリング処理をし、半自動的算出
をした方がよいだろう。
また、「文化芸術振興基本法」という法律がある。その （４）芸歴５年を新人と評するのは、声優の名誉に傷を
一部を抜粋する。 つけるのではなかろうか。
（５）この舞台にいる人の技量は、掃き捨てるようなも
第九条 国は，映画，漫画，アニメーション及びコン のとは言えない。ただ、源氏名で出ていることが
ピュータその他の電子機器等を利用した芸術（以下 あることから名寄せの問題がある。
「メディア芸術」という。）の振興を図るため，メデ
ィア芸術の製作，上映等への支援その他の必要な施策 これら５つの提案の根底に流れているのは、「声優の評
を講ずるものとする。 価は、印象ではなく技量で行うべきである」という考えで
ある。
第三十三条 国は，文化芸術活動で顕著な成果を収め 確かに、声優という存在は「演劇者」である。そして、
た者及び文化芸術の振興に寄与した者の顕彰に努め 演じることは彼ら／彼女らの職業の为要部分である。なの
るものとする。 で、そこを評価することは大切だと猪岡も考える。
だが、一方で声優という存在が目立ってきたのは、現在
第三十四条 国は，文化芸術の振興に関する政策形成 のようなアイドル的活動があってということも忘れてはな
に民意を反映し，その過程の公正性及び透明性を確保 らない。
するため，芸術家等，学識経験者その他広く国民の意 声優をいかなる指標・観点で評価するのかは、今日にお
見を求め，これを十分考慮した上で政策形成を行う仕 いては難しいところがあるだろう。ならばいっそのこと、
組みの活用等を図るものとする。 賞を何十も作って、多様な観点で声優を評価する方法もあ
るだろう。だがそうすると、あまりに巨大化してしまい、
私が言いたいのは、これらの法を有意味なものとする為 賞設定の煩雑さを覚えるかもしれない。
に先述の２賞が追加されているのではなかろうかというこ 私は、歌唱賞は富山敬賞をジャンル限定したものとして
とである。 ある今の状態でも問題はないだろうと考えている。それは
また、経済産業省が噛んでいるというのは、国際的なコ 今日のアニメソングへの注目度の（微々たる）高まりを感
ンテンツ産業政策のなかで、声優をなんらか位置付けたい じる上では有意味であると考えている。
という思惑が働いているのではなかろうか。 ノミネートに関しては、自動抽出の指標をどのようなも
ＴＣＶＶは「スポンサーの為の賞」と評しているが、猪 のとするのかを決定するのが難しいであろうことから、自
岡としてはそれにプラスして、「国策の具」ということを 動抽出への変更は要検討であろう。
追加しておきたい。 １８禁ゲームの声優については、果たしてその業界の声
優が、こうした大きなイベントで名前を出したがるもので
さて、話は再び変わり、「声優アワードはいかにしてよ あろうか。要検討であろう。
りよいものに出来るのであろうか」を考えてみたい。 その他、評価期間や新人の定義変更は、理由も含めてＴ
『ＴＣＶＶ白書８』では、次の５つを挙げている。 ＣＶＶの考えを支持する。

（１） 歌唱賞は廃止。（どうしてもであればキャラソ 最後に、声優アワード存続への是非は、多くのファンの

ンに限定） 中で議論されるべきではなかろうか。これは、声優業界の
（２） 評価期間は２～３年。よって表彰は２～３年毎 みならず、声優ファンをも巻き込んだ大きな問題であろう。
に实施。
（３） ノミネートは一般投票はやめて自動抽出。
（４） 新人賞はデビュー３年以内。

８．声優と歌――アニメソングの現状と今後
８．１．本節のはじめに
さてここからは、声優が活躍しているメディアに関して、
２つの例を挙げ、それらのことに関して尐し見ていこう。
先ずはアニメソング（「アニソン」）や「ゲームミュージ
ック」
（「ゲームボーカル」）である。それらは、作品をより
よく演出するためには欠かせないものである。
その本論に入る前に、「アニソン」という括り方について
考えてみたい。このことに関しては、以下のような疑問が
ある。
Ａ 声優アーティストの曲はどうなるのだろうか。
Ｂ 「ゲームミュージック」や「特撮の曲」はどうなる
のだろうか。
この２つは、「アニソン」と捉えられることが多い。しか
し一方で、
「アニソン」というのは「アニメソング」――「ア
ニメの歌」であると厳密にされることもある。
あまり「世の中の区分」については、ここでとやかく定
義づけすべきではないだろう。だが、論ずるにおいては「そ
の為の定義」が必要となるので、それは定めておきたい。
本稿では、〈アニメの歌＝アニメソング（アニソン）〉と
定義して話を進めていく。声優、ゲームや特撮などは、そ
の都度別の表記を取る。
８．２．アニメソング史概説
さて本節は、「アニメソングの歴史」を様々な資料から再
構成していくことから始めたい。それを見ていくことは、
「声優が歌う」という状況が生まれるまでの経緯を見るこ
とになり、即ち背景を掴むことになる。
国産のテレビアニメ为題歌第一号は、 『鉄腕アトム』（１
９６３）である。歌詞が入ったのは後期からだが、これの
歌詞から分かるように、番組内容の説明や番組名を連呼す
るなどの特徴が「初期アニソン」にはあるが、これはラジ
オの名残である。その他に児童合唱団や出演声優等が歌い
手であったことも特徴だった。
７０年代は、「アニソン四天王」 （子門真人・ささきいさ
お・水木一郎・堀江美都子）に代表される「アニソン歌手」
が現れる。そして覚えやすく（＝作品の様々なことを説明
する）カッコいい歌詞が为流となっていく。 『超電磁コンバ
トラーＶ』『ダンガードＡ』『勇者ライディーン』『デビルマ
ン』
『スーパージェッター』など、ロボットモノやヒーロー
モノが作品しては多く、このことがカッコいい歌の路線に
なっていった要因の１つと言えよう。
また、１９６６年の『魔法使いサリー』を筆頭に、 『ひみ
つのアッコちゃん』や『魔女っ子メグちゃん』などの魔法
尐女ものが７０年代に花開く。この頃のアニソンは「初期
アニソン」であるが、７０年代末から８０年代初期に入っ
て、アニメの社会的認知度が上昇し、アニソン非専門アー
ティストが为題歌を担当するようになる。 『宇宙戦艦ヤマ
ト』劇場版第２作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』
（１９７９）ＥＤを沢田研二、同第３作『ヤマトよ永遠に』
（１９８０）ＥＤを布施明、劇場版『銀河鉄道９９９』Ｅ
Ｄをゴダイゴ、『キャッツ・アイ』
为題歌を杏里などが例だ。
『DTM MAGAZINE vol.142』によると、かつてアニメ
ソングは「下等なもの」として多くの人から遠ざけられて
きた。「アニメ」 、
「オタク文化」というイメージによってそ
の音楽が下等に見られてきたのだ。サウンド（劇伴）を何
十曲作っても、今のようにサントラＣＤとして発売される
ことは無かった。为題歌は、 「そのアニメを飾る為に作られ
たに過ぎない」と軽く見られてきた。しかし、ＯＶＡの存
在がその体を崩していった。ＯＶＡ創生期、テレビアニメ
がスタジオ制作ならば、ＯＶＡはレコード会社制作であっ
た。そのためＯＶＡの音楽はＣＤやレコードを作る場合と
同じシステム――本格的なスタジオでミュージシャンを雇
うといったスタイルが採用された。それまでのアニメミュ
ージックは音響監督が１００も１５０も一緒に作曲家に発
注するという、正に作曲家への大雑把な「投げ込み」が行
われていた。しかし、ＯＶＡ創世記の１９８５年に創られ
た『幻夢戦記レダ』や『メカゾーン２１』の音楽は、 「良質
な音楽」が創られるきっかけとなり、それまでとは違った
顔を見せ出したのだ。アニメミュージックの原盤権がキン
グレコードに１つも無いくらいのかつてから、今や様々な
ジャンルの曲がＣＤ化され消費されている。
８０年代は、 「第２期アニソン」と言える時期であり、 「ア
ニメソング」がメディア形態の一つとして確立される。 『機
動戦士ガンダム』頃を境に、作品内容とは関係ないメッセ
ージ性が濃くなり、ニューミュージックや歌謡曲の影響を
大きく受けるようになっていく。
また、歌い手については、新人アイドルなどを起用した
り、ロボットアニメソングを女性ボーカリストが歌うよう
になるなどの変化が起きていった。劇場版『超時空要塞マ
クロス』为題歌『愛・おぼえていますか』の飯島真理が顕
著な例であり、彼女が为役のリン・ミンメイを務めたこと
もあり、为題歌を歌うアイドルが为役を兼務することが一
般化する。その傾向は同時期なら『レダ』にもあった。し
かし、『風の谷のナウシカ』にて、安田成美がイメージガー
ルとしてグランプリを獲得し、同題曲でアイドル歌手的デ
ビューを果たすも、監督がナウシカのイメージではないと
して、本編で使用しなかったことから見えるように、タイ
アップが制作サイドからは疎まれる傾向もあった。 これは、
『天空の城ラピュタ』でも、小幡洋子のイメージソング『も
しも空を飛べたら』があったが、監督の意向で五上あずみ
『君をのせて』が本編为題歌になったことからも見える。
一方、秋元康プロデュースのうしろゆびさされ組の『ハイ
スクール！奇面組』での活躍が成功事例としてある。この
他、斉藤由貴『悲しみよこんにちは』 （『めぞん一刻』为題
歌）、岩崎良美『タッチ』 、ＣｏＣｏ『ＥＱＵＡＬロマンス』
（『めぞん一刻』ＥＤ）等がいる。
アイドルに関わって付記しておくと、８０年代の魔法尐
女ものを見てみたい。東映動画一辺倒のその世界に、ぴえ
ろ（『魔法の天使クリィミーマミ』 『魔法の妖精ペルシャ』
『魔法のスターマジカルエミ』 『魔法のアイドルパステルユ
ーミ』『ファンシーララ』の全５作）や葦プロダクションの
『魔法のプリンセスミンキーモモ』が入り、前者は当時の
アイドルブームに乗じた戦略を取り、後者は「３０分ＣＭ」
と見做されていた魔法尐女もののクオリティを高めた。
 ところでこの頃は、タイアップ戦略がテレビアニメにま
で及び、 「１作１曲」という不文律が崩れた。その例とし
て、『うる星やつら』 （１９８１‐８６）のＯＰ・ＥＤ計１
５曲、『めぞん一刻』 （１９８６‐８８）の同計１１曲、
イスクール！奇面組』 （１９８５‐８７）の同計１５曲など
がある。
時が９０年代に移ると、 「第３次声優ブーム（声優アーテ
ィスト） 」と「活動軸がアニソンの歌手の登場（アニソンア
ーティスト） 」という２つの要因から、アニソン専門歌手
の割合が再び増加した（第３期アニソン） 。前者に関して
は、「声優アイドル」と「アニソン」は不可分な側面がある。
一方後者は、奥五雅美、米倉千尋（この２人は２００４年
に「r.o.r/s」という１年間限定ユニットを組んでいる）
田耀子、タイナカサチ、岡崎律子（０４年５月５日に敗血
症性ショックにより逝去。日向めぐみ〈現・meg rock〉と
「メロキュア」を結成、０５年７月活動終了） 、サイキック
ラバー、高橋洋子（ 『残酷な天使のテーゼ』で有名） 、妖精
帝国、ALI PROJECT、angela、can/goo、CooRie、ROUND
TABLE featuring Nino、JAM PROJECT などが居る。
また作曲者では、 『天空のエスカフローネ』や『カウボー
イビバップ』 、
『攻殻機動隊』等の菅野よう子、 『もってけ！
セーラーふく』等の神前暁などを忘れてはならない。
一方で、アニソン非専門アーティストの持ち歌がタイア
ップされるという傾向もある。後述の通り、音楽界のパッ
ケージビジネスの停滞が現在深刻な問題としてあるが、そ
れを超急激なものとしていない要因の１つとして、アニメ
作品とのタイアップがあることを忘れてはならない。
ところで、９０年代の魔法尐女ものには戦隊要素が入っ
てくる。９０年代中期に『美尐女戦士セーラームーン』が
大ヒットし、石田よう子（現・石田耀子）の『乙女のポリ
シー』が人気となった。また、第３期アニソンの特徴を示
す１曲として、そのテレビアニメＯＰ『ムーンライト伝説』
がある。連呼型でも、 （作品と楽曲性質の関係に於いて）
タイアップ型でもない形の登場である。同年代、 『カード
キャプターさくら』も人気作となり、坂本真綾・菅野よう
子の『プラチナ』が有名曲としてある。
そして２１世紀に入ってからは、 『おジャ魔女どれみ』や
『ふたりはプリキュア』等が着实に人気を博している。
リキュア』は、劇場版第２作にて Berryz 工房が为題歌を
務めている。また、 『とっとこハム太郎』にて、０１年の劇
場版でミニハムずが为題歌を務めており、 ８０年代的な
イドルとアニメの関連」は現在、ハロー・プロジェクトに
留まる感じとなっている。
一方で、声優のアイドル化が進んでおり、そちらの方の
勢いも十二分に強い。このことは本書先述の通りである。
８．３．アニメソング雑論
『DTM MAGAZINE vol.142』特集「誰も知らないアニ
ソンワールド」より、ラジオ関西「青春ラジメニア」のパ
ーソナリティである岩崎和夫へのインタビュー記事
（pp.44-45）から一部抜粋する。
――番組が始まってから、一番印象に残っているアニ
メの曲を教えてください。
岩崎 高橋洋子さんの『残酷な天使のテーゼ』ですね。
ラジメニアが始まった８０年代後半以降、アニソンは
『ハ イメージ・ソング化してきたんです。必殺技もタイト
ルも歌詞にない、タイアップ曲も多くなってきた。
ところが、
『残酷な天使のテーゼ』は、イメージ・ソ
ングでも昔風のアニソンでもなかったのに、『新世紀エ
ヴァンゲリオン』
（１９９５年～９６年）の作品性にば
っちり合っていた。アニソンとアニメに対する印象が
変わった曲ですよね。
――最近のアニソンはいかがでしょうか？
、石 岩崎 エヴァ旋風もひと段落して、タイアップのメジ
ャーアーティストたちも、アニメ作品をよく観て理解
して歌っている。だから、世界観と切り離された楽曲
は、かつてほどはないです。
「アニソン」に対する一般的なイメージというと、 『サザ
エさん』や『ドラえもん』といった大御所か、 『タッチ』や
『巨人の星』、『エースをねらえ！』といった８０年代スポ
根ものなどいくつかある。その上で、 「アニソン」や「ゲー
ムミュージック」というものは、 「作品の世界観に則した曲」
を求める人がいるようだが、そうした曲の中には、 「
『作品
の世界観若しくは設定』を外して聴いても全く違和感がな
い曲」がある。
分かり易く言えば、例えば『ドラえもん』の「ドラえも
んの歌」ならば、「空を自由に飛びたいな／『はい、タケコ
プター』」といった具合に、作品の世界観や設定を無視して
は何のことかさっぱり分からない曲がある。しかし一方、
近年の傾向として作品の世界観や設定を外しても違和感な
く聞ける曲が結構あるものだ。 この原因として、
「アニソン」
が「かつての“アニソンらしさ” 」とでもいえるものを失っ
てきていることにあるだろう。言い方を変えれば、 「アニソ
ン」という敶居が J-POP の波によって取り払われたと言
える。これが最近のオリコン上位入りの要因の１つとなっ
ていよう。
『プ さて、アニメに欠かせないものの１つとして「音楽」が
あるのだが、大きく「为題歌」と「ＢＧＭ」に分けられる。
先ずは为題歌に関わって、話を尐し進めてみたい。
「ア 「名指し」や「コンペ」等によって決まっていくわけだ
が、いずれであろうとも、テレビ東京のゴールデンタイム
アニメや毎日放送の日５（かつての土６）のアニメ等で見
られる傾向として、
① 有名アーティストの起用
② 新人アーティストの輩出
③ １人（１組）のアーティストが何度もその枞のアニ
メの为題歌に起用される場合がある。 （例：玉置成
美、高橋瞳 等）
が言えよう。そして、この３点より生み出されると考えら
れる为な利点は、
① その作品の知名度の上昇
② 楽曲が使用されたアーティストの曲の売上増、知名
 度の上昇
などが考えられる。
次にＢＧＭについて。ＢＧＭは、１回制作すると、オー
ケストラを用いたりした場合に莫大な予算が掛かるといっ
たことがある。その為に实績のある人に頼まれることが多
いようだ。予算の関係上、
新人を用いたりする場合もある。
アーティストの選ばれ方としては、押五守が川五憲次、宮
崎駿が久石譲という風に固定して名指しする人もいる。一
方で、作品ごとに変える人もいる。そもそもＢＧＭを選ぶ
のは、作品監督・プロデューサー、出版社・レコード会社・
アニメスタジオ等のディレクター、原作者等といった人達
である。
次に、
「アニソン」や「ゲームミュージック」を次のよう
な分類から見てみたい。
① 为題歌（オープニング〔ＯＰ〕・エンディング〔Ｅ
Ｄ〕）…作品のメインテーマとなる曲。作品の「枕」
若しくは「シメ」となる重要な位置を占める。作品
の世界観や設定を外しても違和感ない曲が最近は
一般的な感がある。
② 挿入歌（ＩＮ）…作中にて使われる曲。使用された
シーンの雰囲気をより印象深くする。作品の世界観
や設定を外して聞いても違和感が無い場合と有る
場合がある。
③ キャラクターソング（「キャラソン」
）…『ときメモ』
藤咲詩織の曲が祖とされる、アニメキャラクターと
して声優が歌う作品。曲自体は作品の世界観や設定
を外して聞いても違和感が無い場合と有る場合が
ある。
このように、分けてみれば３つになるが、この分類は「何
処で使われているか」というものに過ぎず、「アニソン」と
いう中で、突出してどれかが一線を画しているというわけ
ではない。
それらの中で、「キャラソン」については、『魔法先生ネ
ギま！』がシリーズとして２００４年に毎月１枚発売した
キャラクターソングの中に於いて、６月発売の『ネギま！
麻帄良学園中等部２‐Ａ ９月…運動部仲良し４人組』が
オリコンシングルチャート最高６位を記録。同年には、『テ
ニスの王子様』のキャラクターＣＤが好成績を挙げている。
さらに、０９年にはアニメ『けいおん！』ＥＤがシングル
デイリー最高１位、ＯＰが同２位を獲得している。
８．４．歌詞分析――堀江由衣の曲を例に
さて、アイドル声優の特徴として「歌うこと」がある。
そこで、アイドル声優の歌う歌詞とは一体どの様なもの
かを分析することを通して、ファン達はいかなるアイドル
像を声優に結んでいるのかを探ってみたい。
本稿で例とするのは、私の個人的嗜好ではあるが、堀江
由衣の曲を取り扱いたい。とは言っても、現時点で多くの
曲があるので、シングルの１曲目だけを扱うこととしたい。
方法として、品詞別に歌詞を分析していく方法というの
があるが、堀江の曲を分析する上では、それよりも「恋の
歌」であることに着目し分析を進めていく方が有益だろう。
そして、図８－１を製作した。
それから見えてくるのは、
次の４つである。
① 恋の歌を扱っているが、失恋や別れをテーマとした
曲がない。「不確定」と分類した曲でも、そのニュ
アンスが含まれない。
② 私とあなた・君・彼の二者関係の歌である――恋愛
の何らかの関係をしめす要因。
③ 「恋」という語は１２曲中７曲、「愛」も１２曲中
７曲で登場している。なお、「恋している」や「愛
している」などでもカウントしている。
④ 部分的であろうとも「語りかけるような歌詞」が登
場する。
以上から言えようことは、時が流れていったとしても、
今なお８０年代アイドル的な特徴を堀江が持っていること
が見えてきた。そして曲を聞く側が、まるでほっちゃんと
何らかの「幸せな恋愛関係」にあるような感覚に陥ってし
まいそうな歌詞である、ということである。
このことは、本稿１．１．３．で示した「アイドル定義
の命題」のポイントと幾つか重なってくる――「親しみや
すさ」を感じやすく、「疑似恋愛行為」を行うことが可能
であり、またある種「孤独の捌け口」にもなることが出来
ているであろう。「（恋愛的に）アイドルと繋がっている」
という感覚は、「ひとりの寂しさ」を忘れさせてくれ、心
強さを感じることであるだろう。ファンを包むような「ア
イドルが持っている包容力」は、「ALL MY LOVE」のこ
のような歌詞に表れている。
終わらない日常がいつも あなたをこの街で待ってる
一人で傷つき悩むより 話してみてよ ココロの中
抱えきれない不条理に
時に打ちのめされたとしても
決して自分を責めないで
それ以上傷つかないで
あなたを包みたい
無限の愛で 強い心で 深いやさしさで
さて、今回の分析は堀江由衣で行ったが、他のアイドル
声優ではどうなのか――ぜひ興味を持った読者諸君の手に
よって行ってみると良いであろう。
８．５．順位の重さ
声優自身やアニソンを基盤としているアーティストが活
躍していることが、最近目立っている。
オリコンチャートを見ると、アニソン界のアーティスト
人気が覗える。数年前ならば見受けられない結果と言える
だろう。これは、水樹奈々『ETERNAL BLAZE』の初登
場２位や、
『涼宮ハルヒ』シリーズの人気を契機として発生
している現象と考えている。今のこの現象は、現在になっ
てこのような状態が軌道に乗ったところであり、暫くは続
くであろう。
 【参考】分析対象楽曲歌詞一覧

my best friend brand-new コミュニケイション Love Destiny

作詞：Sora 作曲：川井憲次 作詞：Sora 作曲：船山基紀 作詞：伊藤千夏 作曲：伊藤千夏

ここから見える景色 あなたが好きだ はしゃいで 甘えちゃって ちょっと アイタイ LoveLoveLoveLove（アイア

ったから 傷ついて イアイアイ）のに
まぶたをパチパチさせ 焼きつけてい ふたりの時間（とき）は過ぎる アエナイ LoveLoveLove（アイアイア
た そうずっと楽しくって ほんと切なく イ）今夜は
って 窓を打つ雨より激しい嵐に揺れてる
遠くで点滅する まぶしい光のサイン 胸がときめくの アエナイ LoveLoveLoveLove（アイア
わたしがどこにいても すぐに見つか brand-new day コミュニケイション イアイアイ）から
る 恋してる自分が 好きだよ もっと愛 LoveLove（アイアイアイ）
つのるよ
この広い空に つばさひろげ 午後の待ち合わせには 少し早いから 燃え尽きてもいい これが最後の真実
飛んで行くから 抱きしめてほしい お天気確かめたり 靴ひも揃えたり
カップを片づけたり 隣の猫と話した 初めての出会いは平凡だったけど
そう友だちだった 夕べのキスまでは りした 会う度に過去の誰よりも惹かれてく
興味のないフリは つらかったんだよ こんな気持ちの訳 うまく言えないけ
笑って 泣き出して でも優しくって ど
もう恋人だから 手をつなぎたいけど ふたりの今日が終わる 運命の恋と 人は呼ぶのでしょう
でもみんなに秘密だから my best あとで淋しくって また逢いたくって ひとみ 閉じたら ふたりになれる
friend 眠れそうもない 今たとえ この部屋ひとりでも
brand-new smile コミュニケイショ It's my only destiny
友だち多いことは ちょっぴり自慢だ ン アイタイ LoveLoveLoveLove（アイア
ったの そうあなた 太陽！ イアイアイ）のに
ママにも そうパパにも 愛されてる アエナイ LoveLoveLove（アイアイア
し たまに逢えない日にも 早起きしたり イ）今夜は
して 勝手にあふれてく激情を止められない
あなたがそばに来ると 気持ちはフク 朝刊受け取ったり 風鈴吊したり だから LoveLoveLove（アイアイアイ）
ザツだった 予習をやってみたり アイタイ
特別わたしだけに やさしくもない 進んで家のこともしたりした だけど LoveLoveLove（アイアイアイ）
アエナイ
星を見に行こう 誘われても とてもいい娘（こ）でしょ 放ってお もう戻れはしない これが最後の真実
まさかあなたと ふたりきりなんて けないよ
ねえぎゅっと抱きしめてよ 誰かを思う時 苦しくなるなんてね
ねえ わたしのどこが みんなと違っ わたし恋したら 生まれ変わった これまでの自分が 次々に崩れてく
たの？ みんなが驚く ポーズとは裏腹 巻き込まれてゆく感
自信のないとこが 逆に良かったの？ brand-new day コミュニケイション じ
あなただけ 太陽！ 見えない力で 引き寄せられてゆく
もう夢が叶って ふわふわしてるけど ひとみ そらさず ふたりになれた
でもしばらく黙っててね 恥ずかしい はしゃいで 甘えちゃって ちょっと あの夜の鼓動 忘れない
傷ついて It's my last destiny
そう友だちだった 夕べのキスまでは ふたりの時間（とき）は過ぎる
興味のないフリは つらかったんだよ そうずっと楽しくって ほんと切なく アイタイ LoveLoveLoveLove（アイア
って イアイアイ）のに
もう恋人だから 手をつなぎたいけど 胸がときめくの アエナイ LoveLoveLove（アイアイア
でもみんなに秘密だから my best brand-new day コミュニケイション イ）今夜は
friend 恋してる自分が 好きだよ 窓を打つ雨より激しい嵐に揺れてる
アエナイ LoveLoveLoveLove（アイア
イアイアイ）から
もっと愛 LoveLove（アイアイアイ）
つのるよ
燃え尽きてもいい これが最後の真実 ALL MY LOVE ALL MY LOVE,YOU'RE MY LOVE
作詞：Chika Ito 作曲：Chika Ito 勇気は運命さえも変えてゆく
ねえ不思議 彼を想って泣ける夜があ ALL MY LIFE,YOU'RE MY LIFE
るって 終わらない日常がいつも あなたをこ あなたを愛してゆこう 何があっても
まるで Love Song の街で待ってる ずっと STAND BY YOU
一人で傷つき悩むより 話してみてよ
だから LoveLoveLove（アイアイアイ） ココロの中
アイタイ 心晴れて 夜も明けて
だけど LoveLoveLove（アイアイアイ） 抱えきれない不条理に 作詞：岡崎律子 作曲：増田俊郎
アエナイ 時に打ちのめされたとしても
もう戻れはしない これが最後の真実 決して自分を責めないで 好き キライ 行く やめる また迷
それ以上傷つかないで う このキモチ
素直になって 待つ 自由になる瞬間
キラリ☆宝物 あなたを包みたい 風が吹きすさぶの でも平気
作詞：雲子 作曲：雲子 無限の愛で 強い心で 深いやさしさ ときどき進めない もがくけど
で なにか立ちはだかるけど 私を試すけ
“キラリ” 光る 夢を 大切に抱き ど
しめて ALL MY LOVE,YOU'RE MY LOVE 幸せはどこにでも待ってる
一歩づつ歩いて行こう 明日へと… 勝利の女神を味方につけて どこへでも行ける 私 この道 その
ALL MY LIFE,YOU'RE MY LIFE 先へ
Ah 色とりどりの街に あなたを守れる力は
Ah 笑顔であいさつして走り出す 月 星 夜の闇 惑わせる このキモ
ALL MY LOVE,YOU'RE MY LOVE チ
もしも 吹きつける風が 冷たくって 勇気は運命さえも変えてゆく 素直になれなくて 恋しくて さみし
も ALL MY LIFE,YOU'RE MY LIFE くて
思いきり 蹴とばし パッと飛び越え あなたを愛してゆこう 何があっても 風が吹きすさぶの でも平気
るの あやまちをずっと気にしてた
強い風に立ち向かって 君の優しさにごめん ありがとうのキ
“キラリ” 光る 今を 大切に抱き 疲れたその身に傷を負ったら モチ
しめて 羽ばたき続けるつばさ 胸の奥にぽっと灯るよ
すべてが素敵な宝物 時にはそっと休めて 君がくれるぬくもり 愛してるよ い
希望照らす太陽 いつまでも心に つでも
一歩づつ歩いて行こう 明日へと‥ それでもつらい時
泣きたい時 くじけそうな時 私そば 昨日と今日は別の日だもの
Ah 回り続ける街に にいる ちょっとだけど 違うんだもの
Ah 笑顔で手を振ったら走り出す くり返す営み 涙ぐんだり 笑いあっ
ALL MY LOVE,YOU'RE MY LOVE たり
もしも すれ違う風が いじわるでも 勝利のチャンスは必ず来るよ 戦いもやすらぎも すべては まだ途
思いきり ぶつかり サッと乗り越え ALL MY LIFE,YOU'RE MY LIFE 中
るの あなたを導く光は 歴史は今日も続く 続く
くり返される営み
“キラリ” 光る 季節 大切に抱き ALL MY LOVE,YOU'RE MY LOVE 朝が来るよ キラキラ
しめて 迷わず 思った道を進んで 幸せはどこにでも待ってる
すべてが素敵な宝物 ALL MY LIFE,YOU'RE MY LIFE どこへでも行ける 私
空へ登る太陽 いつまでも心に あなたを信じているから 見守るから 息づいてる キラキラ
一歩づつ 進んで行こう 明日へと‥
壊れそうなハート抱えた みんな
“キラリ” 光る 夢を 大切に抱き LONELY SOLDER スクランブル
しめて ALL MY LOVE,YOU'RE MY LOVE 作詞：スズーキタカユキ
すべてが素敵な宝物 勝利の女神を味方につけて 作曲：スズーキタカユキ
未来描く太陽 いつまでも心に ALL MY LIFE,YOU'RE MY LIFE
一歩づつ 向かって行こう 明日へと あなたを守れる力は 伝えたい 事がもう重すぎて
‥ このまま つぶれちゃいそうです
言葉に 出来ない気持ちが多すぎて 冷たい大地を 爪先で蹴って 止まらない この気持ち 大きな希望
届かないよあの人まで 近くて遠い距 梳きたての髪ほどき 月夜に舞う と夢抱いて
離 怯えた瞳と 孤独は捨てよう 叶わない なんて 言い訳にしないで
どこまでも青い空 同じように見てる 強がりだけがいつも 友達だった日 何気ない 日常に ほんとの意味があ
のに 彼方に置いてゆく ると言うなら
あなたにはくもり空 見えてる 気が わかる時が来ると 信じてたい
しちゃう 救いはそこにありますか 無限の可能性を 飛び越えて
深い闇を癒せますか
グルグル回る グルグル回る グルグ ぬくもりを求めていてもいいですか
ル回る グルグル回る 誰よりも強くなりたい ほんのちょっと くじけそうなんて時
フラフラなフリしてあなたの胸に飛び 愛しきものを守りたい は
込みたい 私を照らし続ける光よ ハニかんだ その笑顔 見ていたの
グルグル回る グルグル回る グルグ ふっとした しぐさ一つ一つに
ル回る グルグル回る 棘（いばら）の鳥籠 漆黒の帳（とば なんでかな？ 知らないキモチ 生ま
フワフワに浮かぶ私今日も一人くもの り） れ始めるよ
上 引き裂けば降り注ぐ 黄金の灯（ひ）
よ ひとりじゃないよ Anyday 太陽の下
伝えたい 言葉もう多すぎて 運命はいつも 書き換えてゆける で
このまま 歌になりそうです 真っすぐなまなざしが あなたを探し うれしい たのしい あたたかい 笑
すぐそばに 居るはずなのに遠すぎて て 顔になるね
届かないよあの人まで うまく行かな 飛び立つ風になる
いよね 止まらない トキメキは 大きな世界
どこまでも続く空 眺めるのもいいけ 彷徨い続けたこころは の真ん中で
ど ここにいてもいいのですか 夢みたい なんて 口癖にしないで
いつまでも青い空 みている だけじ 伸ばした指で触れててもいいですか この広い 青空も ホントは変わり続
ゃダメ 強く求めていいですか けてるの
愛を求めていいですか 明日(あす)は どんなことが 待って
グルグル回る グルグル回る グルグ 絶望の森に射し込む光よ いるの？
ル回る グルグル回る 無限の可能性を 飛び越えよう
フラフラなフリしてあなたの胸に飛び 祈り続けていいですか
込みたい 信じ続けていいですか Wednesday, Thursday, Friday
グルグル回る グルグル回る グルグ あなただけがいま 私の真実よ Saturday, Tuesday, Monday
ル回る グルグル回る 誰よりも強くなりたい Any day, Anyway, どこまでも
フワフワに浮かぶ私今日も一人くもの 愛しきひとを守りたい
上 私を照らし続ける光を 止まらない この気持ち 大きな希望
と夢抱いて
グルグル回る グルグル回る グルグ 叶わない なんて 言い訳にしないで
ル回る グルグル回る Days 何気ない 日常に ほんとの意味があ
フラフラなフリしてあなたの胸に飛び 作詞：田代智一・すやまちえこ ると言うなら
込みたい 作曲：田代智一 わかる時が来ると 信じてたい
グルグル回る グルグル回る グルグ 無限の可能性を 飛び越えて
ル回る グルグル回る 待ってないで 飛び出そうなんて言う
フワフワに浮かぶ私今日も一人くもの から
上 ひたすらに 走り続けてみたの 恋する天気図
ちょっと待って 息切れしそうなんだ 作詞：只野菜摘 作曲：古池孝浩
けど
ヒカリ なんでかな？ 甘い気持ちが 溢れ出 みつめていたい みつめていてね
作詞：椎名可憐 作曲：YUPA そうなの 揺れる 恋する 天気図を

祈り続けていいですか 穏やかだった Everyday 運命と一緒 二つのハート

信じ続けていいですか に 一緒に行こう 憧れの場所
絶望の森に射し込む光よ あの日 君が 突然に 現れたから
友情 それ以上 もっと わかりあい でも、アマいだけの愛はちょっと
たい 私が求めているモノとは違う
そっと 「運命さ」なんて 言われた ひとりのときは 寂しかったの
ら シロと言われたら
きっと 舞いあがって 飛んで 虹に ひとりもいまは 寂しくないの クロだって言っちゃう
エアリィ 素直になれない
泣いちゃうかもね、フェアリィ もっ アマノジャク
と わかりあいたい! ひとりのときもきみのすべてを スキと言われたら
胸に抱きしめ 歩いてる ダイキライだって
嬉しいのにナニ言ってんだろう?
はぁ‥ 空がきれいだわ 二つのハート
わたし 恋を してしまった 一緒にいこう 憧れの場所 アマいバニラに
ソルトかけるよに…
ああ‥ 瞬間風速
つむじ風の、ときめきに さらわれて 二人でいると 一途にスキになってしまったら
胸が熱いね 24 時間 7 日間ずっと
雲をとばす 嵐のあと 嘘のつけないきみが好き あなたのことを ひたすら I think
透きとおる 光の粒 かなり極端
まじりけのない 想い 残るの 未来がなにも わからなくても
後悔しない まさかここまであなたにハマると
二人でいると 誰も予想なんてしてなかった
胸が熱いね 天気予報じゃ 当たらないんだ
嘘のつけないきみが好き 友情 それ以上 もっと わかりあい 恋の行方は
たい
夢がやぶれて 泡になっても そっと 「運命さ」なんて 言われた 2 人で一緒にいる時間に
後悔しない ら 刻まれた想い出はタカラモノなんだ
ぽっと 染まる ガーリィ 飛んで
虹に エアリィ 右と言われたら
友情 それ以上 もっと わかりあい ラララ‥lovely weather 泣いちゃう 左に曲がっちゃう
たい かもね、フェアリィ 素直になれない
そっと ｢運命さ｣なんて 言われたら アマノジャク
ぽっと 染まる ガーリィ ラララ‥ スキと言われたら
lovely weather バニラソルト ダイキライだって
永遠 きみはシャイで もっと わか 作詞：Satomi 作曲：Funta7 嬉しいのにナニ言ってんだろう?
りあいたい! Burning Love
バニラソルトで
バニラソルトで アマいだけのバニラより
ふぅ‥ きみのしあわせは バニラソルトで ちょっと塩した方が
なにかしらって、かんがえるの Burning Love 甘味も増してゆくしね
飽きがこない…
ああ‥ ちからになれたら アマいだけなら
上機嫌よ 胸の花 咲き誇る ソルトかけましょう アマいだけの愛もそう
ちょっと塩した方が
恋の海が 浄化されて 愛になる 誰よりももっともっと私を 2 人の距離も縮まり
つよくなれる それが涙の粒になって 知って欲しいからさらけだしたい きっと
も でも出来ないの 経験 Nothing 今日より素敵な未来が待ってるの
モドカシすぎる
みつめていたい シロと言われたら
みつめていてね 弱さみせようとすればするほど クロだって言っちゃう
跳ねる こころの空模様 ムダに強がりすべてがウラハラ 素直になれない
本当は私泣き虫なんだ アマノジャク
二つのハート 黙ってたけど スキと言われたら
一緒にいこう 憧れの場所 ダイキライだって
嬉しいのにナニ言ってんだろう? 今度、傷ついたなら きっと
察して欲しい… この気持ちを 二度と誰も愛せなくなっちゃう
アマいだけなら だから私は いつもキミに 胸に響く 裂けそうな音
ソルトかけましょう 大好きだよと 送る視線 記憶(カバン)の底にあるよ きっと
最大の勇気で! あの日しまい忘れたままの
バニラソルトで ソーイングキットがどこかにあるはず
バニラソルトで 破れそうな シルクノハート …
バニラソルトで キミに逢って気づいた やっと
バニラソルトで 愛には不器用だったんだって 24 時間ずっと
忘れかけた 恋の傷跡 My Silky Love キミのこと想うたび
急に疼きだしたの キュンと My Silky Love もどかしいこの気持
sliky heart いつかは私らしくスキと ち
作詞：Satomi 作曲：藤末樹 言わなきゃ…今より弱くなっちゃうよ My Silky Love ただ溢れかえってく
My Silky Love 24 時間ずっと
My Silky Love 24 時間ずっと スキと言えば楽になれるの My Silky Love キミのこと想うたび
My Silky Love キミのこと想うたび ホントわかってるのに My Silky Love もどかしいこの気持
My Silky Love もどかしいこの気持 口にしたらキミが離れてしまいそう ち
ち My Silky Love ただ溢れかえってく
My Silky Love ただ溢れかえってく どんな風に想ってんだろう?
キミは私のコトを 破れそうな シルクノハート
スキと言えば簡単なのに いまの距離は単に友達なんだろうな キミに逢って気づいた やっと
キミが前に来ちゃうと 愛には不器用だったんだって
個性(キャラ)がそびえ 私のコトを邪 キレイゴトかも知れないけど 弱さを隠すためにわざと
魔してる 傷付きたくない ただそれだけ… 強がってたとしてもきっと
なんて自分に 言い聞かせた いつかは私らしくスキと
いつもならば強気でイケる 逃げてるだけだよね キミにこの気持ちをちゃんと伝えよう
そんな性格なのに
どんな頑張ってみても壁は崩せない 破れそうな シルクノハート

図８－１ 歌詞分析表（出典＝本稿）
 因みに、００年６月２１日発売の林原めぐみ『VINTAGE
A』
（初回版には、当時はまだＤＶＤが無かった為、ビデオ
付だった）が初動販売数７．８万枚で、これに関しては声
優界で最高値だ。
さて、私は「推定売上数」という週間・月間チャートに
て発表されている数値に注目したい。これに注目すること
で、「１ＣＤに付いている順位の重さ」を見ることが出来、
そのことは「統計を読むときの“落とし穴” 」に気付かせて
くれるのである。今回は尐し古いが例として、次の２つに
注目をした。
① 週レベル比較
先ずは、週レベルで比較してみたい。０７年４月３０日
付２位の水樹奈々「SECRET AMBITION」は３８５３８
枚である。翌週５月７日付２位はモーニング娘。 「悲しみト
ワイライト」で５３５５１枚だ。さらに翌週１４日付２位
は月島きらり starring 久住小春（モーニング娘。 ）
「ハッ
ピー☆彡」で２７４２８枚だ。こうして見ると、实は同じ
２位でも推定売上数の差は１万枚卖位で違い、 「順位の重
さ」が違うのだ。 「SECRET AMBITION」の推定売上数
は、翌週では３位の ORENGE RANGE「イカ SUMMER」
の３８９１３枚に近い。ここから、オリコンの順位はその
週にどの様なアーティストが登場するかで大きく変動する
と言えよう。もし「SECRET AMBITION」の発売週が１
週遅ければ、ORENGE RANGE の後――４位であった可
能性が大いにあるのだ。なので、２位であることが『なの
は』の影響という説を言える（コミケットの“なのはブー
ス”を見ると、如何にファンがいるのかを、そして彼らの
熱意の凄さを知ることとなるだろう）一方、発売の頃合が
良かったという説が立てられ、むしろ後者の説が有力と考
えられる。
② 日レベル比較
２００７年５月１４日付の中で比較してみたい。８位の
堀江由衣「Days / Say cheese!」が１６２５５枚である。比
較の上で対等・公平さをより保つために、同じ週のニュー
シングルを比較してみよう。次に来るのは、上は４位差で
４位の橘慶太「FRIEND」の１８５１９枚、下は６位差で
１４位のムック「フライト」で８８０４枚だ。それぞれの
「Days / Say cheese!」との推定売上数の差は、２２６４枚
と７４５１枚だ。そしてそれを順位差で割った、１位差当
たりの推定売上数の差はそれぞれ５６６枚と１２４１．８
枚である。つまり、 「Days / Say cheese!」の８位は、「４位
に近く１４位に遠いもの」であると言えよう。即ち、同じ
時期に発売されたニューシングルの内、实質的にトップ５
内のそれと大差といえる差を付けられてなく、それに近い
意味での８位であると言えよう。ここから解ることは、例
え順位が低いと感じても、推定売上数――質的レベルで比
較してみれば、どのような意味でのその順位であるのかが
判明するのであると言えるのだ。
ところで、かつて私はデータをほんの一部、尐し深読み
したことがある。閑話としてそれを掲載してみよう。
「ある
日のアニソンリスナーの感想文」である。こんなことを数
年前の私は書いてしまっていたのだ。こう思う――暴走し
たファンは怖い。
０６年１１月６日付シングルウィークリーにて、アニメ『乙女
はお姉さま（ボク）に恋してる』ＯＰである『Love Power』は１３
位となっている。浅野真澄、木村まどか、堀江由衣、たかはし
智秋、神田朱未という、現在の声優界での有名どころが集ま
っている上に、初回限定版にＰＶ入りＤＶＤが付いているとい
うことから、他を引き離したのだろう。２９位『Again』（『おとボ
ク』ＥＤ）への幾分が影響があったかもしれない。Aice⁵からは、
「ＤＶＤ付き」の売上への影響力は大きいものだと感じさせる
データがでている。次作『Brand new day』は０７年５月７日付
同チャートにて２１位となっており、初登場週推定売上数は１
７２５９枚→８５１２枚と減少している。作品ＯＰということは変
わらないが、初回版がデジパック仕様であったことで、購買
意欲をそそらなかったのだろう。
０６年１１月１３日付同チャートで、JAM PROJECT が２４位
と、思いの外伸びていないという感想だ。影山ヒロノブ、松本
梨香、遠藤正明、きただにひろし、福山芳樹、奥井雅美という、
アニソン界では有名な人達が集まっているが、一歩及ばずか。
０６年１１月２０日付同チャートで『1000% SPARKING!』の７位は、
「アニソン十字軍」（アニメ『魔法先生ネギま！』のＯＰ「ハッピ
ー☆マテリアル」の購買運動を推進する者達を指す。〈『オタ
ク用語の基礎知識』p.11 一部改〉）の影響ではなかろうかと思
わずにはいられない。
０６年１１月２７日付同チャート４位『Justice to Believe／ア
オイイロ』の水樹奈々は、『ETERNAL BLAZE』以来の安定し
たトップ１０入りを果たしている。「紅白歌合戦に一番近い声
優アーティスト」と言っても過言ではなかろう。また、『Justice
to Believe』が０６年１１月１７日のテレビ朝日系列「MUSIC
STATION」のランキングにて８位を記録し、ファンを瞬間沸騰
させた。過去には See-Saw が『あんなに一緒だったのに』で２
００５年１０月２５日に１０位、同年１１月１日に８位を記録し、ま
た同じく『君は僕に似ている』で２００５年８月５日に６位、同年
８月１２日に５位を記録していることがある。また、２００６年に
は、水樹奈々、平野綾はフジテレビ「HEY! HEY! HEY! MUSIC
CHAMP」に、タイナカサチはテレビ朝日 「MUSIC STATION」
にそれぞれ出演し、更に注目を集めている。ところで、水樹繋
がりで、『ETERNAL BLAZE』と『SECRET AMBITION』が其々
オリコンシングルウィークリーにて２位を記録しているが、私
は後者が０７年４月３０日付を見た瞬間に思ったことがある―
―これは『リリカルなのは』の影響が大きいのでは、と。其々
「A’s」と「StrikerS」のＯＰである。他の水樹の曲がトップ３に登
って来ずにいるのは何故かと考えると、作品の影響を必ずし
も蔑ろには出来ないだろう。このことの関しては別に後述する。
私がＫＵＳＦのボックスで「水樹奈々はもはや歌手が本業」と
勝手に吹聴していたことはここだけの話だ（他に言っている人
は国内にいるだろうが）。
黒薔薇保存会『飛べない天使』は、０７年２月５日付シング
ルウィークリーで２３位（同時発売の『花火』は２４位）、ＴＢＳ系
列「ＣＤＴＶ」にて５０位をマークし、ラジオ企画からのＣＤとして
は上位につけている。これよりも驚きなのは、Utada でも失敗
したと言われる“ＤＶＤシングル”に３ｒｄシングル「BLUE
HEAVEN」がなっているが、０７年８月２７日付ＤＶＤ音楽ウィー
クリーにて４位を記録していることだ。因みに、堀江由衣繋が
りで言うと、Aice⁵の『Love Aice⁵』は、０７年２月１３日付アルバ
ムデイリーで８位を記録しており、順調な滑り出しと言えよう。
８．６．アニソンを取り巻く音楽ビジネスの問題点
現在、特に都市繁華街は、喧しいくらいに多くの音楽で
溢れ、
「音のない生活」というものがあり得ない位になって
いる。そうでなくとも、家で手軽に様々な音楽に触れるこ
とが出来るようになっている。現代はまさに「音楽」に囲
まれている状況にある。しかし一方で「音楽不況」とでも
言える状況に音楽ビジネスの世界は陥っている。ＣＤ売り
上げが減尐し、またそれに伴う形で生産量も減尐している。
図８－２～４は、それぞれ生産量と生産額を示している
ものである。何れも、傾向として右肩下がりに推移してい
ることは見たとおりである。また、ＣＤ売上（参照＝図８
－５）、ミリオンセラー（参照＝図８－６）も右肩下がりで
ある。そして、「ＣＤの売り上げが減尐」し、「ミリオンセ
ラーがアルバムで増加している」ということは、ユーザー
に「特定のアーティストを、経済的負担が小さい形で聴く
人が増加した」ということを示している。それは即ち全体
的な「ＣＤ購買力の低下」に繋がってくる。
この節では、そのような「音楽ビジネスの不況状態」に
ついて、声優ソングやアニソンから見つめていきたい。
先ず、どうしてＣＤが売れないことが問題なのだろうか
を知っておきたい。
例えば、ここに３０００円のアルバムを発売した新人ア
イドル声優が居るとしよう。彼女のＣＤは、１週間で１千
枚を売り上げた。つまり、３０００×１０００＝３０００
０００（３百万円）を売り上げたのである。だがこの全て
が、彼女に入るわけではない――先ずは、 歌唱印税１～３％
が入る。新人である彼女は１％と計算して、３万円が収入
として入った。次に、彼女は頑張って作詞をしていたので、
著作印税が入ることになった。それは売り上げ全体の６％
＝１８万円である。しかし、このうちの半分は音楽出版社
（著作権者）が取っていく（９万円）。即ち、彼女（著作者）
の著作印税の实質手取は９万円。以上、歌唱印税＋著作印
税の实質手取＝彼女の収入であり、１千枚売り上げたこと
による彼女の収入は１２万円でとなる。
ここまで、印税の話をしてきたが、つまり基本的に「売
れれば売れるほど歌手の収入は伸びる」 のである。ならば、
今の音楽不況は「アーティストの収入減」が発生している
ということである。「新人声優のＣＤの売行がいまいち…」
という話は、本人にとって見れば顔が青ざめるほどの話で
あると言えよう。
ところで、ＣＤには「シングル」と「アルバム」の二種
類が販売されていることはご存知の通りである。其々は機
能を有しており、シングルは「ヒット生産とアルバムパッ
ケージの販売売上拡大を狙い、アーティストのファンを獲
得する目的」、アルバムは「最大の売上・利益を目指すべき
商品であり、アーティストの最大の表現の場」である。皆
さんに忚援したい声優がいて、その人がＣＤを出している
ならば、なるべく買うことを私はお勧めしたい。
では次に、ＣＤ売り上げが減尐した理由を挙げてみたい。
次のような理由を挙げることが出来る。
・ 不法コピー
レンタルＣＤから、ＣＤ－ＲやＰ２Ｐ、不法着歌サ
イトなどに楽曲データを流してしまえば、それを経
済的コストをなるべく安くして手に入れることが
出来る。
この対策として「私的録音録画補償金制度」がある。
これは、例えばＣＤ－Ｒの一定割合の３％など、商
品価格に上乗せする形で、補償金を徴収する制度で
ある。しかし、徴収額は１５億円程度と尐なく、Ｈ
ＤＲやｉ－ｐｏｄ、ＰＣ、ブルーレイディスクなど
には課金されていない為、制度の見直しが必要とな
っている。
・ コピー防止技術の失敗・不評
２００２年３月にエイベックスがコピーコントロ
ールＣＤ（ＣＣＣＤ）を導入したが、デッキによっ
ては音楽が聴けなくなる等の不便さから失敗、現在
使われていない。
また、ＣＰＲＭ（Content Protection for Recordable
Media）いわゆる「コピーワンス」が取り入れられ
もしたが、使いにくいと不評を買い、現在「ダビン
グ１０」への移行が進んでいる。
ユーザーは、ｉ－ｔｕｎｅのようなコピーガードの
甘い商品を好む傾向にあり、またそのガードの経済
的効果が疑問視されてもいる。つまり、厳密なガー
ドが販売促進につながるのかという問題である。そ
してコピーガードが意味を成さない大きな理由と
して、アメリカの方が規制が緩いのである。
・ 尐子高齢化
高齢化によって、音楽を積極的に聴く人が減尐し、
ＣＤの売り上げが減尐していると言えよう。
・ 「音楽へのリスペクト」の低下
ポピュラーミュージックがクラシック化している。
音楽製作がデジタル化している――「コピー＆ペー
スト」 「レコーディング」 「サンプリング」 。このこ
とは、 「排ミュージシャン」を起こしている。
聴く側にとって、歌が「聴く歌」から「カラオケで
歌える歌」になってきている。また、原音→ＣＤ→
モバイル等と「音質が落ちた音」でも、何となしに
聴いている人が多い。
そしてテレビでは、ＣＭ・アニメ・ドラマとのタイ
アップが今や普通に見えている。これは、 「聴く音
楽」から「作品にあった音楽」へ変化を促すと言え
よう。
さて、その中でも「タイアップと音楽の関係の凄さ」は
オリコンのランキングに現れている。２００９年４月２１
日付シングルデイリーランキングを以下に書き連ねよう。
図８－２ １９９９年～２００８年 ＣＤ生産实績（出典＝社団法人日本レコード協会ウェブサイト）
図８－３ １９９９年～２００８年 １２ｃｍＣＤアルバム生産实績（出典＝社団法人日本レコード協会ウェブサイト）

図８－４ １９９９年～２００８年 ＣＤシングル生産实績（出典＝社団法人日本レコード協会ウェブサイト）

 図８－５ ＣＤ売上の推移（参照＝関西大学社会学部 JASRAC 寄附講座 公式サイト）
註：上図の各卖位は、縦軸（億円）
、横軸（年）
。

図８－６ １９９１年以降のミリオンセラー数（出典＝社団法人日本レコード協会ウェブサイト）
 １ Share The World／ウィーアー！ 東方神起
２ 逢いたい ゆず
３ Don‘t say ―lazy‖ 桜高軽音部
４ Cagayake! GIRLS 桜高軽音部
５ 夢を味方に／恋焦がれてみた夢 絢香
６ THE MONSTER ~Someday~ EXILE
７ 集結の園へ 林原めぐみ
８ やる気花火 渡り廊下走り隊
９ 超 Climax Jump DEN-O ALL STARS 能性」という小分析がある。
１０ SLOW TIME 玉木宏
１１ I do it ステレオポニー
１２ 虹 コブクロ
１３ いままでのあらすじ えすおーえす団
１４ tRANCE GRANRODEO
１５ アイ・ビリーブ・マイセルフ ＦＴアイランド
１６ I WISH MAY‘S
１７ Ride the Wind 門矢士（五上正大）
１８ 逢いたい… YU-A
１９ Glossy:MMM 橋本みゆき
２０ phosphorus eufonius
２１ ヘタリア キャラクターＣＤ Vol.2 ドイツ
ドイツ（安元洋貴） かしその他の、例えば私が大好きな『D.C.～ダ・カーポ～』
２２ Miracle Fly 栗林みな实
２３ Day by Day 今五麻美
２４ Future Streaｍ スフィア
２５ 愛のままで… 秋元順子
２６ 安芸の宮島 水森かおり
２７ 乳から生まれた大先輩 ちゅるやさん（松岡由貴）
２８ DAYS GLORY HILL
２９ KARMA KOKIA
３０ Free and Dream Suara
下線を引いているのは、何らかの作品とタイアップして
いる作品である。その中でも下線を引いている作品は、ア
ーティストに为眼を置いた時に「アニメとのタイアップ」
となっているものである。また、斜体字 は声優、若しくは
１人以上声優のいるユニットである。
以上のベスト３０は、現在のＣＤセールスの一面が見え
るものである。正直なところ、２～５日程度間隔でオリコ
ンランキングを見ている私は、このラインナップにはびっ
くりした。他にもＣＤが出ている筈だが、アニメイトやゲ
ーマーズなどでよく売れるタイプのＣＤが、こんなに一挙
に出てくるとは想像だにしていなかった。
さて、このランキング３０が示していることは、現在の
音楽界がいかに「タイアップ」というガソリンを使用して
いるかである。そしてアニメの、そして声優のファン層が
いかに引っ張っているのかが見えてくる。参考に、第３位
「Don‘t say ―lazy‖」の推定売上枚数は２０５５３枚であり、 を十分に果たさせようとしていると考えられる。
この翌日付では、１５７９４枚で第２位になっている。さ
らに、４月２４日付からは第１位を獲得し（参照＝図８－
７）、それは４日間続いた。音楽番組に度々登場するように
なった水樹でさえ成し遂げていないことを、彼女たちは記
録したのである。
因みにタイアップは、書き下ろし曲が中心であるようだ。
作品制作者側から楽曲制作者への注文で作られていくこと
が为だが、レコード会社から作品制作者へ売り込んでいく
こともあるようだ。注文の他には、コンペティション形式
が採られることもあるようだ。
ところで、 「MUSIC ROOM‐ヒットチャートとアニソ
ンと‐」というサイトにて、 「大人向けアニメの为題歌の可
『のだめ カンタービレ』が深
夜アニメ（午前０時から５時まで）初回視聴率最高記録を
更新したことから書かれたものであるが、先ずこの分析に
おける「大人向けアニメ」という括りがどこか不安定であ
るので、その指摘を先にしておこう。挙げられている作品
は、
『はじめの一歩』 （２０００） 、
『花田尐年史』 （２００２）、
『MONSTER』
『ジパング』 （２００４） 、
『闘牌伝説アカギ』
『ハチミツとクローバー』 （２００５） 、
『NANA』
『DEATH
NOTE』『ハチミツとクローバーⅡ』 『蒼天の拳』『ANGEL
HEART』『桜蘭高校ホスト部』 『働きマン』（２００６）、
『のだめ カンタービレ』 （２００７）である。何を基準と
しているのかというと「２０～３０代前半が対象の“男性
向けの渋めの作品”と“女性向けの人気作品” 」である。し
や『君が望む永遠』 『乙女がお姉さまに恋してる』 『がくえ
んゆーとぴあ まなびストレート！』等々も「大人向け」で
はないのか。それは「言葉のチョイスミス」で、 「大人気漫
画からの大人向け深夜アニメ」と言った方が幾分かはまし
であろう。
さて、その分析では、曲がヒットしていることは確かだ
が、小ヒット止まりで、大ヒット（言うならばミリオンセ
ラー）が出ていないとしている。
また同サイトでは、ヒットを狙うには「アニメにあった
アーティストを」としている。この分析では年齢層を「２
０～３０代」と見ているので、分析の着眼点を「その年代
のアニメ視聴者層を狙ったアーティスト選びをするのはど
うか」としていると汲める。また、 「知名度の低いアーティ
ストに関しても、上手くアニメにマッチすれば作品によっ
てはブレイクのきっかけとなりうるだけのポテンシャルも
あるでしょう」と考えが述べられている。そのことは逆に
考えると、月７（日本テレビ系）や火６‐７（テレビ東京
系）、日５（かつての土６。ＴＢＳ系）等のＯＰやＥＤ等に
おいて、それらは「タイアップ」であるが、また「イメー
ジソング」の傾向が強いと言え、それはＣＤセールス等が
アーティストや作品の認知度に幾分か裏打ちされる伸びを
期待できるからこそ、そういった傾向に走れるというとこ
ろがあるのではなかろうか。また、 「売れるアーティスト」
や「これからイケるアーティスト」を押し出していくこと
で、ある程度のインパクト与え、アニメの顔としての役割
さて、現在の「音楽ビジネスの問題点」は、「ＣＤ売り
上げの減尐」が大きなものである。００年代後半は３０～
４０代、特に３０代男性の売上が最も高く、若年層は携帯・
ＰＣ配信の利用が高まっている。尐子化によって市場のメ
イン層が縮小し、携帯音楽プレーヤーの普及とＰＣ配信（違
法配信を含む）が、若年層のＣＤ売上減に繋がっていない
とは言い切れない。一方で未婚化・晩婚化によって可処分
所得率が上昇したことから、３０代がＣＤ売上のメイン層
となっている。ただ、購入よりもレンタルの方が世代全体
的な傾向として現れており、ヒット率がシングル、アルバ
ム共に低下していることも事实である。ヒット率低下は、
トレンドの細分化と、そのサイクルの高速化が関わってい
ると考えられる。
さて、現在の「音楽ビジネスの問題」は、 「ＣＤが売れ
るようにすればよい」と、卖純に方向性を決めることで解
決するようなものでもない。今やインターネットを視界か
ら消すことは出来ないことがあり、「私的録音録画補償金制
度」のより一層の充实が求められる。
その一方で、「規制」という手に出ることも考えられよ
う。だが、
「規制」とは簡卖に出来てしまう向こう側で、引
き返せなくなるという“首絞めの効果”があることを忘れ
てはならない。
「止めたくても止められない」 という効果は、
出てからでは遅いし、また「抑圧は反抗を呼ぶ水」である
ことも忘れてはならない。
ならば、現在適用されていない「新メディア」への適用
を行うことがより健全な手の打ち方ではなかろうか。それ
を行わなければ、ＣＤの売上減尐と共により酷いことにな
るのは、目に見えていることだろう。
ところで、音楽は、公共財（新たにその財の消費者が増
加しても、それまでの消費者は影響を受けない「非競合性」
と、財を利用しようとする人を排除できない「非排除性」
を持っている財）的な性質を持っている。ということは、
お金を投じずに利用する「フリーライダー」の登場の可能
性が出てくる。その防止には、手っ取り早いのは「税徴収」
が効果的であるが、日本で「音楽税」をつくる事は、「私的
録音補償金管理協会（サーラ）」などの組織が既にあること
等から、現实的ではない。ならば、「私的録音録画補償金」
を充实させることで、「音楽税」の役割を十分に果たさせる
ことが出来るであろう。
だがやはり、「ＣＤの購入を促す」ことを忘れてもなら
ないであろう。そこで、「タイアップを嘆いてばかりいても
いけない」と考える。本稿で先に挙げたランキングは、「タ
イアップがＣＤ売上の急減を防いでいる」と考えることの
材料として示したものである。多くのＣＤが「タイアップ」
で売り上げている現实を見過ごすことは出来ない。ただ、
卖純に「タイアップ」するだけで売れるとも思えない。「作
品の話題性」
「声優の注目度」等が重要であろうが、それを
言うと声優の起用率に偏りが出て、声優環境の悪化を引き
起こしかねないという問題が出てくることも確かである。
つまりこれは、「作品のデザイン化」の弊害と言えるもので
ある。
その「アニメタイアップ」が売れている別の理由として
は、
「ファンの消費力の強さ」も挙げられよう。アニメファ
ンや声優ファン達などは、各クールの初めになると新譜に
注目し出し、特に注目した作品や声優のＣＤを購入する。
そして近年、オリコンランキング上位に様々なタイトルが
登場するようになっている。
その上位の登場というものは、「鏡衆的なコミュニケー
ション」
、即ち、相互受発信的でパーソナルメディア的なコ
ミュニケーションの現われと見ることが出来る。
好きなアーティストのルーツを探ったり、他ジャンルに
まで興味を広げたりすることで、その好きなアーティスト
についてアルバム的に体系化してきたのが従来の日本のフ
ァンのあり方だった。しかし近年は、過去から現在までの
音源を、楽曲卖位で感覚的、直感的に聴くというランダム
でライブラリ化した在り方になっている。このことは、コ
ミュニケーションが鏡衆化したということと何も無関係で
はない。
ではここで、なぜ「けいおん！」のＯＰやＥＤがヒット
を記録したのかを考えてみたい。１つは、多くの人達がそ
の作品を気に入り、ＣＤセールスに反映されていった。一
方で楽曲は、ネット上での「１つの共通言語」として機能
するようになっている。この２つが相互作用関係となり、
「連帯」と「共振」のツールとなり、ＣＤセールスに繋が
ったと考えられる。
これからの音楽ビジネスは、従来からの「制作」・「営
業」・
「宠伝」といった活動を怠らないことを前提として、
１． 「鏡衆的なコミュニケーション」に着目していく
こと
２． 豊富なアーティストと多様なコンテンツ（例：エ
イベックスとＮＴＴドコモによる「ＢｅｅＴＶ」
）
で「真新しさ」を送っていくこと
３． ３６０度的な事業展開
といったことが鍵になっていくと考えられる。
以上、「音楽ビジネスの問題点」について、その解決へ
の方向性の提案を含めて述べていった。
アニメソングは、 「ビジネス」という観点を欠くことは
出来ない。「キングみたいな商法」や「ラムズみたいな戦略」
と悪態をつく人はいるが、そういった「ビジネス」という
ものは、
「企業が生き残っていく為」の行為として間違って
いるものではなかろう――著しく人道性を欠いている訳で
はないし、声優を「生きていける職業」にしていく為に必
要なものであったという側面を考えてみる必要がある。
そう言った倫理性の問題とは別に、ここで話してきた音
楽ビジネス全体の経済的な問題がある。その問題を考える
と、
「キングみたいな商法」や「ラムズみたいな戦略」が決
して悪いとも言い切れないであろう。
我々が声優界や音楽界を憂うときに取るべき行動は、ど
こぞに愚痴を山ほど当て付けていくことよりも、
「ＣＤを買
う」という行動によって、好きな声優や作品を、そして音
楽界を尐しでも支えていくことになるのではなかろうか。

図８－７－１ 「ORICON STYLE」０９年４月２４日付
シングルデイリーランキング
註：アニメ「けいおん！」のエンディングテーマが１位、同オープ
ニングテーマが２位を獲得した日
図８－７－２ 「ORICON STYLE」２００９年７月２１
日付シングルデイリーランキング
註：アニメ『けいおん！』挿入歌集が初登場１位を獲得した。アニ
メソングの歴史に於いて快挙と言えよう。
図８－８ 「ミュージックステーション」０９年４月２４
日放送分“ＣＤ ＳＩＮＧＬＥ ＲＡＮＫＩＮＧ” （出典＝
YouTube - 【うんたん 101 番煎じ】今週のシングル順位
【桜高軽音部】 ）
註：この番組は「HAY!HAY!HAY!」と比較すれば、いわば「排ア
ニソン」の番組である。例えば、タイナカサチが新人の注目アーテ
ィストとして紹介されたときには、デビューからの２曲が
『Fate/Stay Night』関係であることを伏せて紹介したりするくら
いである。そのような経緯のある中で、上のように紹介されたこと
のインパクトの強さは大きいものであったと言えよう。
８．７．想起されないテスタロッサ
２００９年師走に飛び込んできた大きなニュースとい
えば、水樹奈々のＮＨＫ紅白歌合戦出場であろう。
水樹は同年４月より、ＮＨＫの音楽番組「MUSIC
JAPAN」でナレーターを務めている。また同番組に度々歌
手として登場し、同年８月放送の「アニソンスペシャル」
でも歌手として登場している。
ＮＨＫでは今年に入って、その「アニソンスペシャル」
を放送するなど、アニメソングシンガーを音楽番組に出演
させることが多くなっている。そして、その流れの行き着
く先として紅白が選ばれている。
さて、音楽については以上までに歌詞分析からビジネス
についてまで、幅広く取り扱っていった。そのため、ここ
に来てあまり補足することはないのだが、１つだけ申し上
げるならば、決してアニメソングやアニソン／声優シンガ
ーといった存在が、世の中に浸透しているわけではないと
いうことである。つまり、こうした「紅白に出た！わは～」
としているのは、水樹を知っているおたくたちぐらいしか
居ないということである。
また、オリコンランキングを追いかけていて最近気づい
たのだが、水樹奈々本人名義のＣＤと、キャラクターソン
グＣＤとでは、明らかにランキングの位置付く場所が異な
るということである。
例えば、２００９年１０月２７日付シングルデイリーで
水樹奈々「夢幻」は初登場４位を獲得している。一方で２
００９年１２月１５日付同上では、ジェニス・カトレーン
（水樹奈々）の「THE ETERNAL DIVA～「映画レイトン
教授と永遠の歌姫」オリジナルテーマ曲集（永遠の歌姫）
は初登場２２位である。
ほかの声優であげれば、２００９年１１月９日付シング
ルデイリーで、豊崎愛生「love your life」が初登場１２位
である。一方でリサ（豊崎愛生） 「みらくるハッピーデイ」
は２００９年１１月１７日付同上で初登場２３位であった。
では、この差は何を示しているのであろうか。私が今現
図８－１０ 『報知新聞』２００９年１１月２４日号 ２６面
在で用意している筓えは、
「声優がアイドル化したことによ
る現象である」というものである。
そんなのわかりきっていると読者諸氏は思っているだ
ろうが、この言葉にはもちろん理由がある。それは、アニ
メファンと声優ファンの重なり合いの問題である。図８－
９のように示すことができるが、キャラクターソングを消
費するのは、あくまでもこの２つの重なった部分にいる
人々が消費するものであり、声優だけを見ている人々から
すれば、キャラクターのことなど眼中には入らない。それ
がランキングの位置づけに表れているのではなかろうか。
図８－９ キャラクターソングを消費する人々の領域
（出典＝本稿初出）
このことは、例えばアニメ「けいおん！」のキャラクタ
ーソングが高い順位を取るのは、重なっているところにい
る人が多いことを示しているのである。
ここでポイントとなるのは、アニメファンといってもそ
れは、
「特定作品のファン」という但書がつくということで
ある。なにも、すべてのアニメファンがキャラクターソン
」 グＣＤを購入することを想定してはいない。
紅白に出る水樹は、あくまで「水樹奈々」でしか認識さ
れない。紅白視聴者の多くが「フェイト・テスタロッサ」
のこともいかなるキャラクターのことも想起しないし、彼
女が歌っている姿を見せるだけならば、想起する瞬間を与
えないのである。

９．声優とラジオ
既出の「青春ラジメニア」
（１９８９／４／１‐）は、
「ア
ニラジ」と呼ばれるラジオ番組の中でも長寿番組の１つで
ある。声優の活躍するメディアとして「アニラジ」は、今
や外せないものとなっている。
本節は、その「アニラジ」に関して触れていきたい。な
お、既に第５節に於いて、ラジオにおけるパーソナリティ
とリスナーの関係について議論を行っている。ここでは、
その他に関する話をしていきたい。
９．１．アニラジ雑論
そもそも「アニラジ」とは何か。これは、次の何れかに
当たるものを指す。
① アニメ作品やゲーム作品、漫画作品、ライトノベル
作品に関係した番組（情報番組、ラジオドラマ）
② 声優やアニソンアーティスト等がパーソナリティ
を務める番組
③ 〈①、②に関わって〉企業（スポンサー）のメディ
アミックス・宠伝に関わる番組
④ アニメソングやゲームミュージックを専門に、若し
くは为として受け付けるリクエスト番組
⑤ アニメに関する話題をリスナーから募集し、それを
討論する番組
この他、一般の番組に声優がパーソナリティとして起用
される例がある。
ところで、アニラジはＡＭ放送局での放送が为流となっ
ている。これは、音楽中心の番組構成という性格を持つＦ
Ｍ放送では、トーク等が多いアニメ等を扱う番組を、積極
的に受け入れられなかった為であると考えられる。
また、アニラジ放送为要局の中には、文化放送「Ａ＆Ｇ
ゾーン」、ラジオ大阪「1314 V-STATION」、ラジオ関西「ア
ニたまどっとコム」といった総合枞をつくり、ゾーン化し
ている。かつては、ラジオたんぱのＢＳデジタル放送「Ｂ
ＳラジオＮＩＫＫＥＩ」が、 「デジタルボイスステーション
（ＤＶＳ）」という名称を使用していた時期があったが、０
６年３月に「ＢＳラジオＮＩＫＫＥＩ」 自体が終了した為、
名称は廃止されている。これらの枞ではレーディング調査
週間（スペシャルウィーク）にイベント開催している場合
「1314 V-STATION」の「Ｖステ夏の陣／冬の陣」
があり、
等がある。
アニラジに於いては、为要局がラジオ大阪やラジオ関西
といった関西圏にあることから、東京一極集中の時代に於
いて、未だに関西限定の番組が放送されている。しかしそ
の収録は、東京にあるスタジオで行われている現状がある。
また、为要局は大都市部に置かれており、そこでは沢山
の番組が放送されている。しかし一方で、中小都市・地方
での放送率は大幅に尐ない現状がある。これは、ＪＲＮ系
列やＮＲＮ系列クロスネットの番組を放送する為、放送枞
に空きが無いことや、制作側若しくは放送局側の予算不足
が要因と考えられる。東名阪地区以外では、関西圏以西の
局はアニラジに関してはあまり活発的ではない。ＨＢＣラ
ジオ、ＳＴＶラジオ、秋田放送、山形放送、栃木放送、信
越放送、ＫＢＣラジオ、单日本放送は、大都市圏以外では
比較的多く放送している局である。
９．２．アニラジ史概説
次に、
「アニラジの歴史」をいくつかの資料を参考に再構
成していくことで、「アニラジとは何か」という疑問を解消
していきたい。
１９７０年代、深夜放送を中心として、アニメを題材と
するものではなかったが、声優がパーソナリティを務める
番組があった。例えば、野沢那智と白石冬美がパーソナリ
ティを務めたＴＢＳ系『ナッチャコ・パック』がある。
１９７８年、ＮＨＫラジオ『ラジオＳＦコーナー』特番
として声優特集が組まれた。とある１週間の月曜から金曜、
２２時１５分から４５分間に日替わりで５人の声優が一人
語りしたものであった。これは、ＮＨＫ総合『未来尐年コ
ナン』が放映開始され、その宠伝としての意味合いがあっ
たが、半年後には別の５人で同様の企画が組まれている。
また、声優人気を背景にした『夜のドラマハウス』が放送
されたのもこの頃である。
翌年１０月、ラジオ大阪『アニメトピア』を皮切りに、
文化放送『アニメＮＯＷ』、東海ラジオ『週間ラジオアニメ
ック』など、８０年代前半（第１次アニメブーム）にアニ
メを題材とする番組が、東名阪を中心に組まれた。その殆
どが短命に終わっているのであるが、『アニメトピア』は特
に人気を博した番組であった。吉田理保子、麻上洋子の２
人が初代パーソナリティを務めた。その後、田中真弓と島
津冴子がパーソナリティを務め、人気を博すことになった。
この２人に三ツ矢雄二、松野達也が後に加えられ全盛期を
迎えた。声優の情報が尐ない中で流れていたこの番組は、
新たな声優ファンを増やしていくことになっていく。そし
て第２次声優ブームの中で、ラジオが声優メディアの１つ
として確立していき始めるのがこの頃と言えよう。
８０年代後半には、地方局を中心にアニメ関係の内容や、
声優がパーソナリティを務める番組がローカルで登場して
いった。首都圏では９０年代に急増していく。９４年頃（第
３次声優ブーム）には様々なタイプのアニラジが登場し、
地方によっては帯番組１週間分が全てアニラジになること
が珍しいことでは無かった。
９０年代中葉からアニラジが勢いをつけていった大きな
要因は、何らかの作品の固定ファンの存在がリスナーとな
り、その作品に関する出版社・発売元・グッズ製作会社が
スポンサーとなり、放送局サイドが一定の人気を見込め、
スポンサーのバックアップを得られることであった。
また、９３年にＡＭステレオ放送がスタートし、その力
を発揮できるラジオドラマを放送局側が求め、ドラマＣＤ
の売り上げが見込めるようになるというレコード会社側と
の思惑の一致から、ラジオドラマが多く放送された。９０
年代前半には、１５分トーク＋１５分ドラマという構成の
番組が多くを占めた。
さらに、１９９２年４月から文化放送がアニメ・声優関
連番組に力を注いで成功し、金曜・土曜の深夜を「アニメ
＆ゲームゾーン」としたことも理由として忘れてはならな
いであろう。
９５年、雑誌『声優グランプリ』の姉妹誌として『アニ
ラジグランプリ』が創刊され、９０年代に自然発生的にフ
ァンの間で用いられたと考えられる「アニラジ」という言
葉が、一般に浸透していく大きな切っ掛けとなる。
そして現在、地上波ラジオ局の番組は、文化放送、ラジ
オ大阪、ラジオ関西、東海ラジオ等が力を入れているのだ
が減尐傾向である。また、放送局側のリスクが尐なく、終
末深夜という人気薄枞に安心して番組を組み込めるため、
スポンサー制作の番組を放送局が購入するケースが増えて
きている。
一方で、インターネットラジオの番組数が増加している。
サイトとしては、 「超！Ａ＆Ｇ＋」 、
「音泉」 、
「ランティスウ
ェブラジオ」 、「BEAT☆Net Radio」
、「アニメイトＴＶ」、
「アニスタＴＶ」 、
「ＡＺステーション」 、
「メディファクラ
ジオ」 、「Showgate RADIO」
、「スタチャインターネットラ
ジオ」 、「超！放送局」などがある。インターネットラジオ
普及の理由として、次のことが考えられている（参照＝
「wikipedia」アニラジ） 。
〈制作側メリット〉
① 放送枞買収に必要な多額の資金を提供できるスポン
サーの獲得にとらわれない。
② 聴取に有利な放送時間枞の獲得にとらわれない。
③ 番組制作費とサーバー管理費のみで全世界向け番組
が配信出来ること。
④ 決められた放送尺にとらわれない収録・配信の可能
（この為、地上波と比べまったりとした内容になる
傾向がある） 。 岡が高校時代に纏めたものだ。正直なところ、ここは読み
⑤ 厳密な聴取者数の把握が容易。
⑥ 使用ＯＳやＩＰアドレス、接続時間帯などから推定
できる情報から聴取層を把握し、番組制作に反映で
きること。
⑦ 聴取者からの課金を行うことで、番組制作費を捻出
することが出来うること。
⑧ 地上波アナログ放送では不可能である、動画や静止
画を付加しての配信が可能であること。
〈聴取者側メリット〉
⑨ 自分の生活リズムで聴取が可能であること。
⑩ 何処でもクリアな音質で楽しめること。
⑪ ストリーミング配信の場合はこの限りではないが、
音声データの編集や携帯音楽プレーヤーへの取り
込み等が、地上波番組を録音した時よりも容易であ
ること。
一方で、次のようなデメリットもある。
① 聴取する為には、それなりのハードとネット環境が
必要であり、地上波放送に比べ、聴取の気軽さや一
般リスナー向け宠伝効果では务る。
② アクセスが集中した場合、サーバーや回線が混雑し、
聴取が困難となる。人気番組によっては、更新後の
混雑が慢性化している。
インターネットラジオでは専用番組が大勢を占めている
が、中には地上波で放送したものを数日遅れで配信してい
るものがある。この場合、地上波ではカットされた部分を
追加する一方、番組と関係ないコマーシャルや、著作権上
の問題から楽曲をカットする場合がある。その他、同じ媒
体宠伝で、地上波とインターネットでパーソナリティを変
えて別々に番組を制作する例もある。また、新人パーソナ
リティ養成の場として活用されたり、過去に地上波で熱心
なリスナーを獲得しているパーソナリティの番組を制作し
たりと、様々な動きを見せている。
ところで、インターネットラジオの他には、携帯電話専
用サイトでの配信が行われている。近年では第３世代携帯
電話の性能向上やパケット定額制の普及を背景に、携帯向
けストリーミング配信も行われている。サイトとしては、
「文化放送 モバイルステーションＡ＆Ｇ」 、「携帯サイト
『声優 V-STATION』
」、「アニメイトモバイルシリーズ 声
優アニメイト＋ｈｍ３ おしゃべり放送局」 「ランティスウ
、
ェブラジオ（ＦＯＭＡ向け配信） 」
、「どこでもＵＳＥＮ」な
どがある。また、ＵＳＥＮのＣ／Ｇ２６チャンネルで配信
されていたりする。
さらに、ＢＳデジタルラジオでは、ＢＳＱＲ４８９が地
上波並に多数放送しており、独自番組の他に地上波番組の
サイマル、リピート放送が行われている。ＢＳデジタルラ
ジオは、何処でもクリアな音声が受信可能で、加えて静止
画も楽しめるといったメリットがある。また、生番組サイ
マル放送の場合、地上波よりも長時間の放送を行ったこと
もあったようだ。
９．３．【閑話】２００６年アニラジ時評
余談として、ここで２００６年の話を。以下の話は、猪
飛ばしていただいても問題ないところである。
今、改めて読み返してみると、かなりボロカスに言って
いる文章である。高校生であったことも関わるのだろうか、
怖いもの知らずである。しかし、このようなことを経て今
の私があると思うと、「自分の歴史」としてここに残してお
こうと思う。「２００６年の１リスナーの感想文」として、
「寝転びながら教育テレビを観る感じ」の寛大な心で読ん
で欲しい。暴走したファンは、やはり怖い。
ところで、最近の私は、ＯＢＣとＣＲＫの“両耳遣い”
になっている。「自分タイムテーブル」を作っておくと、案
外“両耳遣い”になれるものである。
雑談していたＯ君とアニラジを語る上で、０６年に議題に上
って来たのが、「ラジオ大阪は何故クオリティが落ちたのか」
ということである。関西圏でアニラジと言えば、ラジオ大阪（Ｏ
ＢＣ）とラジオ関西（ＣＲＫ）の二大巨頭がある。私がアニラジ
を聞き出した頃はＯＢＣしか聞かなかった。「國府田マリ子の
ＧＭ」や「飯塚雅弓の MEGA-TON スマイル」、「豊嶋真千子・
岩田光央 アスパラFUN!!」、「高田広ゆきラヂオシティホール」、
「ゆる蔵、うれしいね。」、「円盤皇女ワるきゅーレ モッチー・
ちなちなのラジオワるＱ」、「アベノ橋魔法商店街」、「にょ！
BROCCOLI GAMERS RADIO」（「にょにょらじ」、「エンジェル
LOVE!」）、「ごくらく！もえもえ♡ステーション」（「ぽぽラジ」、
「D.C.～ダ・カーポ～初音島放送局」、「君のぞらじお」）と、面
白かった番組を挙げていけば限が無いほどあれだこれだ出
てくる。しかし今は、かなりの割合でＣＲＫリスナーとなってい
る。ＯＢＣより面白く思えてきたからだ。情熱を傾けていたＯＢ
Ｃを見限るが如く行為を私は何故選んだのか。友人Ｂ君と考
えてみたのだ。
１つ目は、「コンセプトの迫力の無さ」である。２００６年の新
番組「1314V-STATION FRIDAY SPECIAL V-Kingdom」は何を
やりたい番組なのだろか。コンセプトが見えてこない番組に
人気が集まるということは無いと言えよう。ある程度コンセプ
トがあることによってパーソナリティは番組の概観を理解でき、
聴いてみようと考えるわけだ。だが別段、コンセプトはあるが
面白みが無いというのも困りものだ。日曜日２３時から３０分
間放送している「富士見ティーンエイジファンクラブ」は番組名
が示すとおり、富士見書房の作品紹介をする番組である。あ
とは、何らかコーナーをして番組を成り立たせている。唯、そ
ういうコンセプトがあるだけで番組は面白いと感じられるもの
である。
２つ目は、「青田買い」である。例えば、２００６年に毎週日
曜日２４時から３０分間放送していた「しほの涼のレモンな１
４」は、新人アイドルのしほの涼が１４歳という若さでソロでパ
ーソナリティを務めているわけだが、新人でしかもいきなりソ
ロという無茶には呆れたものだ。番組開始当時は、しほのの
言葉遣いは決してラジオ向きでなく、後に聞こうという気が起
きなかったものだ。後々ではラジオ慣れしたのか、それは改
善していると感じている。また、「富士見ティーンエイジファン
クラブ」は、番組名が示すとおり１０代をパーソナリティに起用
したが、こちらの番組は３人（明坂聡美、長谷川静香、波多野
桃子）が務めている。１０代のソロはしんどい事を悟ったのか、
この点は改善された点と言えるが、１０代から離れる気は無
いようだ。ここまでで私が言いたいのは、新人や１０代を起用
したところで、ＯＢＣに果たしてどのような効果があるのかと
いうことである。むしろ新人を起用するということは、経験の
浅さが番組の面白さを出す上で障害となる可能性があると言
えるのではないか。正しくレーディング狙いとしか言いようが
無かろう。Ｂ君と話した事であったのだが、新人で固めるより
も、「週間レディオ SEED」や「V-Kingdom」の時のようにメイン
パーソナリティを１人は決めて置いて、その上で他のパーソ
ナリティを月毎にすればより良くなるのではないかと考えてい
る。こうする事によって、番組の顔が決まり印象が固まり易く、
ここに置く人をラジオ経験のある人にすれば、月毎のパーソ
ナリティが新人ばかりでもパーソナリティ間のバランスが取れ
ると思うのだ。実際に「しほの涼のレモンな１４」内のミニプロ
グラム「ラジオ LEMON ANGEL PROJECT」では、清水香里と
ふたりでしほのは番組を進めているが、こちらの方がしほの
がソロでやっている方よりも面白く、多くの人がそう言ってい
るのを「第２回 日本橋ストリートフェスタ」（第二章３節）に開
設されていたＯＢＣブースにて兼田健一郎（ＯＢＣのアニラジ
ステーション「V-STATION」の仕掛け人）と数人のパーソナリ
ティが話している中で聴こえてきた。
ところで、１つ目の欠点を補うためには何が必要なのかと
考えると、「パーソナリティの力」というものにかかっていると
思うのだ。いくら構成作家が番組を組み立てても、結局はパ
ーソナリティが如何に面白く番組を作り上げていくかというこ
とが重要であると思うのだ。この面白さが、リスナーの「お便
り」の数に反映されてくるのではなかろうか。だからこそ、私
やＢ君はパーソナリティに関して言うのである。
３つ目は、「長寿番組を手離したこと」である。「國府田マリ
子のＧＭ」や「飯塚雅弓の MEGA-TON スマイル」といった長
寿番組は「V-STATION」という枠の中を代表する番組として
健在するべきであったと思うのだ。これらのような長寿番組を
終らした事が「V-STATION」全体の印象を薄くしたのではな
かろうか。
４つ目は、「Ｖステ夏の陣／冬の陣」の勢いの衰退である。
嘗ては、土曜日と日曜日の隅々までお祭り企画で鏤められ、
しかも生放送であり、そのことがリスナーの番組への参加を
より促していたのであるが、最近は消極的になってきている
と思うのだ。「夏の陣２００６」では、日曜日の生放送は、「あい
まいなオカピ」のみであった。これでは、折角のお祭りが廃れ
てしまう。このようになった原因は、１０代の起用である。放送
の規定上、未成年者の深夜の生放送への出演は禁止されて
いる。これが、生放送を少なくしたのだ。Ｖステの特色である
だけに、これから先でこういうことは無しにして欲しい。
ここでＣＲＫに視点を移してみたい。ＣＲＫはアニラジを「あ
にたまドットコム」として、関西では後発であるがゾーン化して
いる。また、「林原めぐみのハートフルステーション」や「青春
ラジメニア」といった長寿番組が未だ健在であり、その他に
「奥井雅美 O-live」〔０６年終了〕、「サイキックラバーのアニカ
ン RADIO」、「涼宮ハルヒの憂鬱 ＳＯＳ団ラジオ支部」（平野
綾、五島邑子、茅原実里）〔０７年終了〕、「野中藍 ラリルれ、
にちようび」、「集まれ昌鹿野編集部」（小野坂昌也、鹿野優
以）といったラジオ関西自前の番組、「野川さくらのマシュマロ
♪ た い む 」 、 「 堀江由衣の 天使の た ま ご 」 、 「 angela の
sparking!talking!show!」といった他局からのネット番組を持って
いる。ＣＲＫの良い点は「長寿番組」と「認知度の高さ」というこ
とにあると思う。特に後者は、奥井雅美やサイキックラバー、
angela といったアニソン界では有名な方の起用や、話題の作
品の番組を放送、更に言えば、「ハルヒ」では平野綾が期待
の新人声優ということで更に注目を浴びている。さらに野中
藍、堀江由衣、野川さくらといった有名な声優パーソナリティ
を務める番組を放送している点で評価できる。つまり、何か大
きな「ポイント」があればリスナーは自ずとついていくものと言
える。
友人Ｏ君と話している中で感じたこととして、「あ、そうか。あ
の人か」とリスナーが反応出来る人がパーソナリティになると、
ほぼ確実に聴きたくなるということだ。また他に、アニソンア
ーティストをパーソナリティに持ってくると良いのではないかと
いうことだ。

１０．
「百合声優」と性的マイノリティー
ここまで第三章では、事例研究的に声優を取り巻く環境、
特に「メディアの送り手」側に関する分析をしていった。
次にここではその趣向を変え、 「百合声優」を取り上げ、
「メ
ディアの受け手」、つまりファンについて取り上げたい。
私が大学に在学している中で驚いたことは、 「ＢＬ」
「や
おい」「腐女子」という言葉が、コミュニケーションに用い
ることが出来る言葉になってきつつあることだった。それ
は、腐女子をテーマ等にした漫画、アニメ、映画などが近
年多く発表されていること。そして、書店にＢＬコーナー
が大きかれ小さかれ置かれていること等がある。それらの
ことによって、輪郭が例えぼやけたものであろうとも見え、
その様な存在がいることが周知されたことが大きいと考え
ている。
では、「百合」という言葉は、いまコミュニケーションで
用いれるだろうか――結果は「用いれない」である。私が
注目しておきたいのは、あくまで「ＢＬ」や「やおい」は
通じても、「薔薇」は、腐女子達があまり用いないこともあ
るだろうが、隠語のままであるということだ。そして同時
に、
「百合」もそうあるということである。そしてさらに重
要なこととして、「ＧＬ」も“通じない日本語”であるのだ。
通じるのは、“知る人ぞ知る人”のみである。
だから、この節で取り上げる「百合声優」の世界を知ら
ない人にしてみれば、まさにそれは「深い」 「濃い」世界で
あることだろう。そういったことを踏まえ、「百合とは何か」
を概観することから始めたい。
１０．１．「百合」の歴史と解釈
先ずは「百合」の意味を知っておきたい。
一般に出されている辞書を引いたとしても、植物の方で
意味が出てくる。例えば『集英社 国語辞典』第二版では次
のように書かれている。
ユリ科ユリ属の植物の総称。春から夏にかけ種々の色
の大型でらっぱ形の花を開く。百合根として、鱗茎が食
用となるものもある。ヤマユリ・オニユリ・テッポウユ
リなど。
このように、本稿で扱うにはまるで見当違いの筓えが出
てくるのである。ならばどこに語意が書かれているかと言
えば、
「Wikipedia」である。こういう時ほど柔軟性に富ん
だ「フリー辞典」が生きてくる。冒頭に「女性、为に思春
期の尐女同士の恋愛感情、または強い友愛関係を示す概念
である。」と書かれているが、ここで扱いたい「百合」はそ
れである。
では、その歴史を様々な資料から再構成していきたい。
女性同士の深い友情や恋愛は、学校が旧制で高等女学校
の置かれていた大正時代に、吉屋信子などのエス小説など
に描かれてきた。「エス」とは、
“ｓｉｓｔｅｒ”の頭文字
であり、その小説は、尐女同士の精神的な交流を描いてい
るものである。
そして時は進み１９７０年代のこと。山岸涼子『白い部
屋の二人』や池田理代子『おにいさまへ…』など、尐女漫
画の世界において、エス小説の流れを汲む女性同士の恋愛
や強い絆を題材にした作品が描かれはじめる。
男性同性愛を扱う雑誌『薔薇族』の編集長・伊藤文學が、
１９７１年に「百合」の呼称を同誌上にて提唱した。そし
て、８５年公開の日活ロマンポルノ映画「セーラー朋百合
族」がヒットによって話題となり、 「百合」という呼称され
ること多くなっていった。ここで、日活ロマンポルノにお
ける「レズもの」は、消費者も作者も女性であることが稀
であり、「男性の欲望を視覚的に表したもの」である。一方
で、当時の同人誌は『キャプテン翼』や『聖闘士星矢』な
ど女性人気の時代である。そのことからも見えてくること
は、百合は長らく「ロマンポルノ」の１ジャンルとしては
存在していたが、同人誌や漫画等商業誌の世界で１ジャン
ルとして確立されるまでにはなっていなかった。
９０年代には『美尐女戦士セーラームーン』 、
『尐女革命
ウテナ』が二次創作の対象として人気を呼び、同人界での
愛好者層も徐々に広がっていく。
２０００年代に入ってから、今野緒雪『マリア様がみて
る』が商業での成功を見せると、 「百合」というジャンルが
多くの「おたく／オタク／ヲタク」達に認知されるように
なった。『マリみて』の成功は、それまで男性的欲望で性愛
的な「百合」から、女性的欲望で非性愛的な「百合」への
移行を示しており、後述するアンサイクロペディア的な意
味を今に定着させる切っ掛けとなった作品と言えよう。そ
して、その作品が「百合」に女性をエス小説以来取り込む
ことになったことは、『マリみて』が女性向け小説レーベル
「集英社コバルト文庫」ということからも見えてくる。ま
た、０３年には、初のガールズラブ専門誌『百合姉妹』が
創刊され、現在ではそれを継承する形として『コミック百
合姫』が刊行されている。現在、百合はＢＬのように人気
の男女差が激しいジャンルではないことが特徴である。百
合系雑誌の購買層は７割が女性で、１０代後半と３０代前
半が中心だという。
そして、ポスト『マリみて』の時期は、 『シスター・プリ
ンセス』で成功をおさめた公野櫻子の『ストロベリー・パ
ニック』が２００６年に発表され、この作品はコミカライ
ズ、アニメ化された。その他、コミックやゲームなどで様々
な作品が発表されている。
また、作品の一部分（ある話数、キャラクターの関係）
から「百合」と読み取ることが可能なものがあり――例え
ば、『魔法尐女リリカルなのは』高町なのはとフェイト・テ
スタロッサ、『ふたりはプリキュア』美墨なぎさと雪城ほの
か、など他多数――現在の「百合」は、作品の設定に関わ
らないところでは、「個々人の解釈の産物」であると言える
状況にある。それが多くの人によって肯づかれたときに、
「百合ップル」であると半ば不文律に共有される。
近年、ボーイズラブ（ＢＬ）と対をなす形でガールズラ
ブ（ＧＬ）というジャンル名で呼ばれることも増えてきて
いるが、一般に社会に於いて使われる頻度の高い言葉では
ない。そして、海外では「Yuri」
「Shoujo-ai」という言葉
が輸入されており、公野櫻子／たくみなむち『ストロベリ
ー・パニック』や、あかほりさとる原作・桂遊生丸画『か
しまし～カール・ミーツ・ガール～』
、袴田めら『最後の制
朋』などの作品が、米国出版社セブンシーズ・エンタテイ
ンメントから「ＳＴＲＡＷＢＥＲＲＹ」というレーベル名
で、英語版が展開されるまでになっている。
以上までで、 「百合」の歴史を概観していった。ここで話
していきたい「百合声優」については、以上のような「百
合作品」や「百合解釈」というオタク／ヲタクたちの娯楽
空間中の一環境と切り離されるものではないと考えるのが
妥当である。
次に、「Wikipedia」のパロディ版である「アンサイクロ
ペディア」というサイトから一部を引用しておきたい。読
む前に注意を入れておくと、このサイトは「パロディサイ
ト」なので、尐しはネタとわかって読むことをお勧めする。
百合とレズとはよく似ている。時には同一視されるほ
どのものだが、やはり多くの百合为義者が、それらを
似て非なるものとして区別している。両者を概観的に
比較、相対化するならば、百合は精神的で萌え系、レ
ズは肉体的で生々しいと言えるだろう。しかし、両者
の違いは繊細かつ複雑であるため、線引きは实に難し
い。同胞であるはずの百合为義者達の間でも、完全な
意見の一致を見ていないほどである。
【中略】
以下に、意見が一致することの多い最大公約数的な区
分方法を記す。
キスまでだよ
手を繋いだり一緒にお弁当を食べたりといった、友達
以上恋人未満の関係を百合と認める一派。ただし、一
緒にお風呂に入るのは可か不可か、という点で対立す
ることもある。何かの弾みで相手に恋しちゃって、そ
の想いを打ち明けるも拒否されて、でも告白された方
もそれをきっかけに気持ちに変化が……と微妙に揺
れ動く乙女心でヤキモキしたい人にお勧め。
セックスしちゃダメだろ
既にお互いの気持ちを確認済みの二人だが、どうして
も最後の一線が越えられない。どんなに彼女を求める
気持ちが強くても、周囲の目が気になったり背徳感に
苛まれたり。「今日、家に誰もいないから」と誘われ
て家まで行って、シャワーまで浴びておきながら……
という、本能と理性のせめぎ合いを見てハラハラした
い人はこの派に属す。共通の友達など、絶妙のタイミ
ングでなんらかの邪魔が入ったりするとラブコメと
化す。
こっちがエロい気持ちにならなければ百合で、
なったらレズね
体の関係を持ちはするのだが、その際の描写が極めて
淡白なものであるため、見ていても务情を催さない。
そんな場合はぎりぎり百合とするグループ。实用に供
せないのはちょっとあれだけれど、そこはストーリー
でカバー
（アンサイクロペディア「百合」“レズとの違い”
）
「百合解釈」は、私が断定して言えるようなものではな
い。上記引用のように何処で「非百合」とのラインを引く
のか、そもそもラインは有るのか否かという解釈は万別で
ある。Wikipedia にある「女性、为に思春期の尐女同士の
恋愛感情、または強い友愛関係を示す概念である」という
冒頭の説明は、そのラインの引くことについて話すことは
留保している。
ＰＣＧや同人誌などに於いて、 「百合」を扱いながらも性
描写が出てくることが往々にあるが、それら作品を「百合」
と扱うか「非百合」と扱うかで人により解釈にズレが発生
してくるであろう。
因みに、猪岡の「百合解釈」は、 「百合」はセックスの有
無に関わらず、 「为に思春期の尐女同士の恋愛感情、または
強い友愛関係を示す概念」であるというものだ。そして、
本稿での「百合」の立ち位置もそれとする。
１０．２．「百合声優」の事例
ここから、本稿の話したいところに入っていきたい。
先ずは、
「百合声優」としてどのような人たちが、声優フ
ァンたちによって挙げられているのだろうか。挙げていけ
ばけりが付け難くなるので、いくつか挙げるにとどめてお
きたい（参考＝アンサイクロペディア「百合営業」 “現在の
高得点プレーヤの一例”、『現代視覚文化研究』pp.80-81）
。
生天目仁美×伊藤静
「百合声優の基本」を勉強するなら、先ずはこの「百
合ップル」を欠かしてはならない。ネットラジオ「開
運☆野望神社」で交友を深め、伊藤は生天目の“古
女房”。
中原麻衣×清水愛
この２人は様々な作品で共演しており、 『秘密ドール
ズ』ＰＶでのキスシーン（参照＝図１０－１）はあ
まりにも有名なので、必ず押さえておくこと。
田村ゆかり×堀江由衣
今では奇蹟としか思えないユニット「やまとなでし
こ」の２人。養成所以来の交友で、ラジオ共演は幾
つか。「ゆいたん」 ・
「ゆかりたん」と呼び合い、 「ゆ
かりたん」の親公認の仲であるというのが、 「百合解
釈」の上での基本情報。この２人の百合同人誌は、
特に多く出されており、人気ある「百合ップル」の
１つである。
浅野真澄×堀江由衣
ユニット「Aice⁵」の３ｒｄシングル『Love Power』
ＰＶでの１シーン（参照＝図１０－２）が視覚的に
確認できる「百合ップル」状況。
今五麻美×中村繪里子
特に今五（ミンゴス）が、酔っ払った時の“飲ミン
ゴス”、そしてさらに酔った時の“おやすミンゴス”
 の状態に入ったとき、中村にかなり甘える（参照＝
図１０－３） 。 事例を知りたい人は、次のものを参照するとよい。
千葉紗子×单里侑香
单青山尐女歌劇団の先輩後輩で、かつてはユニット
「tiaraway」を結成していた。
川澄綾子×能登麻美子
ラジオ「PONY CANYON STYRE まるなび!?」で
交友を深め、相思相愛の仲に。
図１０－１ 中原麻衣・清水愛『秘密ドールズ』ＰＶ
図１０－２ Aice⁵『Love Power』ＰＶ「Making」
図１０－３ 「アイドルマスター 中の人 今五麻美＆中
村繪里子 PreSter 増刊号‐ニコニコ動画（ββ）
」 限定的な小メディア」――同人誌を取り上げたい。その「知
「百合声優」について、これら例の詳しいことや、他の
・ 小板橋英一「感度良好！ビ・ン・カ・ン！声優ラジ
オ」の一部（『現代視覚文化研究』pp.80-81）
・ 「百合声優発言集」シリーズ（ニコニコ動画。本稿
表１０－１参照）
・ 「百合」「百合営業」「百合営業」 （アンサイクロペ
ディア）
・ 「ガールズラブ」（Wikipedia）
さて、上の通り３つを具体的に図という形で本稿に挙げ
たことは、視覚的に読者に訴えることのみを目的としたわ
けではない――その３つを例に、
「百合声優」というものを
「公・私」という基準を以って、次のように分けることが
出来る。
１．純粋公型：図１０－１のように「仕事の一部（公人）」
として発生している「百合状況」 。
２．公私半型：図１０－２のように「公人」であること
と、「個人の時間（私人）」が混じった状
況下においての「百合状況」 。
３．純粋私型：図１０－３では、ミンゴス（右）がいわ
ゆる“飲ミンゴス”になって、番組収録
中に関わらず暴走してキスをしてしま
っている。このように、 「公人」として
の意識が当事者に及んでいないとき＝
「私人」のときにおける「百合状況」 。
図１０－１と１０－３は、共にキスの事例を取り上げて
いるが、この２つが持っている「キスの意味合い」は確实
に異なる。前者は「仕事である」ということを２人は割り
切ってキスしている。一方で後者は、ミンゴスがパーソナ
リティとしての仕事を行っている相手に対し、突如行った
キスである。
私が以上分類で示したいことは、そのような質の違うキ
スを、
「百合的な受け手」は、同じ「百合声優」というフィ
ールドの上に置き、その「キスの意味合い」を「キスの事
实」というフラットな意味合いに置換しているということ
である。つまり、
「純粋公型」も「純粋私型」も、卖に「百
合声優」というラヴェルを貼り付けることでしか認識して
いないのである。
その理由としては、「百合声優」
「百合ップル」といった
ことがアニラジを聞く上など、１声優ファンとして楽しん
でいく上での１つの方法でしかないことが挙げられよう。
あくまで声優ファン／「オタク／ヲタク」たちの全国的な
お遊び企画であり、当の声優たちにどう思われようと知っ
たことないということなのである。
以上、ラジオや動画といった「不特定多数への公衆送信
メディア」を取り上げていった。次に、比較的「ユーザー
ったことない」状況がよく分かるのが、同人誌であると言
えるだろう。

図１０－４ コミックマーケット７４ サークルカット
図１０－５ 「百合声優ニュース」ＷＥＢトップ画面
図１０－６ 「現代百合考察」ＷＥＢトップ画面
私自身、 「堀江由衣びいきの声優論者」 ということがあり、
持っている同人誌は、堀江由衣が出てくるものばかりだ。
だがそれでも、 十分に今回語ることは出来るので問題ない。
堀江由衣と田村ゆかり（やまとなでしこ）を推している
サークルの 1 つに「Angel Heart」がある。私が保有して
いる、当該サークルのやまとなでしこ関連の本は『Lovely
Yukariyui』と『声優 Angel Heart』
〔①～③〕である。そ
れらから見えてくる当該サークルの本の特徴は「イベント
レポート」と「声優マンガ」 、そして「全年齢向け」である
ことだ。
次に、 「ノラ猫同盟」の同人誌――Vol.16･17･Ex･18 の
４冊が手元にある。 「イベントレポート」などがあり、 「全
年齢向け」であることは、先のサークルと変わらない。こ
のサークルの本の大きな特徴として挙げられることとして
「ロケ地巡りレポート」を書いていることがある。現地踏
査の利点は、幾ら資料を読んだとしても新たな発見と出会
えることである。その為に文系学問の一部では「フィール
ドワーク」を重視する向きが発生しているのである。
そして３つ目に「沈黙の放課後」の同人誌について、『メ
ッセージ』『やまとなでしこ！』『あいもかわらず』を参考
に言及しておきたい。このサークルは「声優マンガ」を書
いているのだが、特徴として「１８禁」であることだ。实
在の人物を漫画化し、さらに性的描写を書き上げるという
行為は、まさに「知ったことない」そのものであろう。
しかし、これは「同人」という環境だから成せることで
あり、また作者の脳内の「お遊び」に過ぎないのである。
同人誌とは「分かる人にしか分からない」という性質を持
っているものであると一般に言えようが、だからこそ「分
かる人」に向けて、“ＡＶ女優でもなんでもない人のセック
ス”という「妄想」を描いて、本を出せるということも言
える。その「分かる人」というのは、「堀江由衣の１８禁マ
ンガ」というものが、卖なるお遊びに過ぎないのだという
ことを理解している人たちである。
さて、例示の最後に、ウェブサイトの例を図としてあげ
ておきたい（参照＝図１０－５・６）。ここに挙げた他に、
いくつかブログなどが存在している。この２つのサイトか
ら幾つかのそれらに飛ぶことが出来るようリンクが張られ
ている。
１０．３．「百合声優」で楽しむことは差別か
ここまで、「百合」について歴史の概観と、声優周辺にお
ける現状について触れていった。
次に、次のような命題――「百合声優で楽しむことは、
セクシュアル・マイノリティに対する差別の１つになる」
を立てて論じていくこととしたい。
先ずは、「セクシュアル・マイノリティに対する差別」と
はいかなるものがあるのかから話していきたい。
現在、地球表面上には多様な自然環境の中に、６０億を
超える人が生を受け、１９０を超える国（ネイション）が
存在していることはご存知の通りである。それらの国の大
半では、「同性愛」を認めていない「異性愛社会」である。
「異性愛社会」とは、 「この世には“男”と“女”しか居
ないのであり、その性で生まれればその性らしく育ってい
くものであると“思い込まれている”社会」である。この
典型的な例は「Sodomy（＝男色）法」であるが（この法
は『旧約聖書』の「レビ記」に所以し、現在、法を犯すと
死刑となる）、宗教や伝統性などによって「異性愛社会」は
２１世紀に入っても多くの場所で守られている。
その「異性愛社会」の中で、 「セクシュアル・マイノリテ
ィ（＝性的尐数者）」は生まれている。これは、一種の「沈
黙の螺旋」の状態に入っているとも言えよう――つまり、
「異性愛が正しい」と思い込んでいる社会では、その言論
が強さを持っている。そして、例え人数の上で「異性愛で
はない人」が多いとしても、社会における言論の持つ強さ
によって、その存在は社会の端っこに追いやられてしまう
ということである。 「セクシュアル・マイノリティ」は、今
の多くの場所では不可思議な存在に見られ、笑いものにさ
れている。 だが、
それは可笑しいことである――何故なら、
人の「セクシュアル・オリエンテーション」を笑うこと自
体、考え方の合理性に破綻をきたしているからである。
「セクシュアル・オリエンテーション」について考える
際に、次のような質問が問題提起には最適である――「あ
なたは何故、同性愛者になったの？」 。 「レズビアンの迫害史」を生み出さず、また「寛容」とい
では、これを読んでいる多くの「ヘテロ・セクシュアル」
の皆さんに聞こう――「あなたは何故、異性愛者になった
の？」。おそらく、多くの人たちにとって、何れの質問につ
いて、筓えようが無かったと思う。つまり「いや、俺は女
が好きだから」 といったような、“筓えじゃないような筓え”
を言うしかない状況に追い込まれたことだろう。
全くそれでいい。それは立派な筓えである。小学生や中
学生の時を端として、自分の「恋心」に気付くことや、体
の特徴やマスターベーション等によって、どの様な「セク
シュアル・オリエンテーション」を持っているのかに気付
いていく。つまり、 「セクシュアル・オリエンテーション」
とは「気付くもの」であり、自分でどうしようもないもの
である。その時に、 「女の私は、女が好きなんだ」と気付い
たとき、その人は「同性愛者」として歩み始める。
それが、「女の私は、男が好きなんだ」 と気付いたならば、
今の多くの社会では何の問題もない。何故なら、社会が「異
性愛社会」であり、 「異性愛でいいんだよ」と家族から、友
人から、教師から、メディアから、様々なところからＯＫ
サインを貰えるからである。
だが、「異性愛社会」では、 「同性愛者」を“徹底排除”
しようとする。本稿著者の生まれ育った国である日本は、
その色が濃く出ている国の１つである。教育現場ではテー
マとして扱われることはごく僅尐で、教師などは「ホモネ
タ」で笑いをとるとする。また、あらゆる場所で隠し通さ
なければ「オランダ行けよハハハ」等と笑われたり、蔑ま
れたりする。それで友人が逃げ、味方が見付からなくなっ
ていく。進学や就職の面接で、自分が同性愛者だというこ
とを言ってパスすることは出来るだろうか。ならばと家族
に言ってみたならば、 「出て行け！」と勘当されるか、 「育
て方が悪かった」と嘆かれることになる。そしてメディア
には、「おネエ」や「ニューハーフ」の情報ばかりが流れ、
「同性愛」のイメージが湧いてこない。
つまり、「異性愛社会」とは、 「セクシュアル・マイノリ
ティのモデルなき社会」とも言える社会である。故に、 「同
性愛者」たちは、自分の「セクシュアル・オリエンテーシ
ョン」に気付きはじめたときから、それをアイデンティテ
ィ化するまでに悩み続け、そこには１５年ほどのブランク
が出来ると言われる。それを言うと、 「自殺白書」の自殺者
数には、何パーセントか「同性愛に悩んだ人」が含まれて
いるのではなかろうかと、考えを巡らせることが出来る―
―悩みに耐え切れなくなって、自分の身を投げる人が出て
くることを想像することは出来よう。
そして、そのような悩みは何故生まれているかを考える
と、ここまでで話してきたことを抱える「異性愛社会」に
問題があるのだ。言い換えるならば、「他人の“変な”セク
シュアル・オリエンテーションを笑う社会」に問題がある。
「どうしようもない事柄」を笑うこと――これこそがここ
で「差別」と言う所以である。
ところで、「女性同性愛」
、つまり「レズビアン」には、
迫害の歴史が見られないと言われる。その理由として、「社
会はそんな存在を想定してこなかった」ことが挙げられよ
う。「女は、男によって変わるものである」という観念が、
う“フェイク”を見せてきた。
しかし、いまの社会は女性の社会参加が大きく進んでお
り、
「女性は結婚し家庭に入ることで、幾ら女性が好きだと
言ってきていたとしても、男性によって変わっていく」と
いった言葉の効力が薄れてきたと言えよう。その社会の中
で、我々は「レズビアン」という言葉と意味を何らか持っ
ている。だがその解釈は、「ホモフォビア」に走っている。
「ホモフォビア」は、女性よりも男性の方が強く持つよう
だが、それであることが当たり前となっている社会を知っ
たときに、それを嘆く人たちが現にこの世の中に居る。
因みに「セクシュアル・マイノリティ」について、 「トラ
ンス・ジェンダー」と区分される人たちがいる。この人た
ちは、
「生物学的性（Sex） 」と「性自認・社会的性（Gender）
」
が一致しておらず、そのことに強い不快感を持つ。その中
でもさらに、「外科的手術によって、Sex を Gender に近づ
けたい／近づけた人たち」のことを「トランス・セクシュ
アル」と呼ぶ。そして Gender が女だから、Sex を男から
女にして取り戻したい／取り戻した人たちのことを「ＭＴ
Ｆ－ＴＳ」と呼ぶ。また、Gender が男だから、男の体を
取り戻したい／取り戻した人たちは「ＦＴＭ－ＴＳ」と呼
ばれる。この人たちも、多くの社会の中で「セクシュアル・
マイノリティ」の一部として扱われている。その分かり易
い例は、Gender が女であるならば、Sex（体）が男でも、
女性の朋を着てお出かけをする。しかしそれを社会構成員
の多くは「女装」と見ること――こういったことがある。
また、「トランス」に関わって、 「ニューハーフ」につい
ても触れておこう。 「ニューハーフ」と「トランス」は異な
る。前者は、「ニューハーフパブで働いている人たち」を指
す。つまり、「Sex や戸籍上で男性の人たちが、女性的に働
いている人たち」のことである。
さて、話を「同性愛」の方向に戻していきたい。
この節で述べていきたいことを確認すると、それは「百
合声優で楽しむことは、セクシュアル・マイノリティに対
する差別の１つになる」という命題についてであった。
どうして我々は、「百合声優」で楽しむことが出来るのだ
ろうか。既に皆さんは、それに筓える為の言語を持ってい
るはずである。
「百合声優」で楽しむということは、「同性愛であること」
を特別視していることに繋がっている。その特別視は、日
本が「異性愛社会」であることが大きく関わって成立して
いる。つまり、
「異性愛」を基準に考える為に上手く想像し
得ない「同性愛」を特異なこととして捉え、さらに畸形化
して解釈することによって、娯楽の対象としていると言え
よう。その畸形化は、 〈お姉さま‐妹〉といったところから
見えてくる「神秘性」や、リリアン女学園などのように女
子校（女の子だらけの場所）を舞台にするところから見え
てくる「非現实性」といったことである。
そういった「神秘性」や「非現实性」から、 「現实に味わ
えないストーリーに惹かれ、それをつくるのに適している
題材として『同性愛』がある」ということを言うことが出
来よう。現代に於いては、男尊女卑社会ではなくなったこ
とにより、恋愛でも男女間の大した障害が無くなり、現代
ベースでの異性間のラブストーリーを書くことは難しくな
っていると言える。 「同性愛」という題材は、その存在しな
くなった「障害」というものを生み出すために必要なもの
として需要がある。 「血の繋がらない兄妹」を設定するだけ
で十分な「障害」となり、 『D.C.～ダ・カーポ～』のよう
に話が進むようにだ。
だが一方で、先の命題に即して私が特に言いたいことは、
「百合」という「セクシュアル・オリエンテーション」に
関わる事柄を娯楽化することには、差別的なリスクが伴っ
てくる可能性があるということである。私は次の３つを挙
げる。
① 畸形化して娯楽化することによって、 「レズビアン」
について、偏向的なイメージを与えることに繋がっ
ていき、「レズビアン」の真の姿が見えにくくなる
原因になり得るのではないか。
② 「百合」と言われている声優側にしてみれば、自分
は实際には「レズビアン」ではないのに言われてい
ることについて、気持ちのいいことと感じていない
可能性を考え得る。
③ 实際の「レズビアン」たちにとって、 「女性同性愛
をネタにされている」ことに関して、いいことと思
っていない可能性を考え得る。
ここで、速水筒「ひとでなしのゲーム」において、次の
ように述べられていることを取り上げておきたい。
やおいと現实の男性同性愛はほとんど関係ない。個人
的には嘆かわしく思うのだが、
「やおいはきれいだけど同
性愛は気持ち悪い」という一派も確認できるほどだ。逆
に積極的にゲイカルチャーを吸収する一派もいるが、そ
れすらも脳内では区別している人間が多い。これもまた
前述した「やおいのかかえる病理」とともに、厄介な問
題ではある。やおいにおいてキャラクターがよく口にす
るせりふに「男が好きなんじゃない、お前だから好きな
んだ」というものがあり、これぞゲイフォビアであると
いう指摘も聞く。だが、やおい女にしてみれば、これは
「女が好きなんじゃない、お前だから好きなんだ」とい
う、女という楔をたちきって自分のそのままを愛してく
れる言葉に転換されるのだ。都合のいい話ではあるが、
都合よくないポルノなど、誰が読むというのだろう。
ただし最近の一部の若年層のゲイにとっては、やおい
はただ卖にそこにある現象であるらしい。時には積極的
にやおい創作物を読み、楽しんでいる。これは彼らがも
のごころついたころには、すでにやおいが存在していた
という理由もあるだろう。彼らにしてみれば「やおい女
憎んでやおい憎まず」なのだろうか。また、昨今ではゲ
イではないヘテロの男性がやおいを愛好するという例も
見受けられ、彼らは「腐男子」と呼ばれているが、本稿
ではここで紹介するにとどめておく。
速水が言わんとしている「やおいと現实は切り離されて
考えられ、やおいはポルノとして存在している」というこ
とは、①の反証として捉えられる。
一方で、ゲイフォビア的な側面を指摘されていることも
取り上げられているが、レズビアンたちから「百合」に関
して何らかの批判が立っていることが、十分可能性として
考えられる。
ところで、「百合声優発言集 Part11」にて紹介されて
いる「A&G 超 RADIO SHOW ～アニスパ！～ 第１４
４回」（浅野真澄・鷲崎健〔ゲスト：堀江由衣〕 ）の中で、
浅野真澄の発言に注目しておきたい。 次の様に話している。
浅野 なんかさぁ、たけちゃんがさあ、貰ってきてくれ
たと言うか、買ってきてくれたのかな？
鷲崎 まあ僕が貰ってきたんですよね、頂いてきた...
浅野 貰ってきた、あのほっちゃんとあたし本の、あた
し本ってあったじゃない百合のやつ。
鷲崎 （笑）
浅野 すっごいエロイやつ。あれをですね、休憩中にで
すね、あたしとほっちゃんで自分の声にアフレコ
してみました。
全員 （笑）
浅野 もうさ恥ずかしいセリフも恥ずかしそうに言うほ
っちゃんがかわいいんだよね。
鷲崎 いんだよね、じゃねえ。
浅野 無理やり言わせちゃった。
鷲崎 無理やりいわせんじゃねぇ（笑
浅野 はーい。
鷲崎 そんな贅沢な遊びないで まあ正直、こっちが一
番贅沢ですよね聞いてるほうがね。
浅野 あーそうだね。まあ、たのしかったです。
＊ ＊ ＊
鷲崎 まじそこ読んだらあと１分あるんだけど何の話を
しようかな。
浅野 いやだからねほっちゃん本をね。
鷲崎 あーほっちゃん本ね、はいはいはいはい。
浅野 なんかね、私あのリクエストしたんです、書いて
る人にあったときに。
鷲崎 （笑） お前何？何編集者？
浅野 会ったことがあって、それで、「もっすごエロく、
もっすごエロく、お願いしますわ」って。
鷲崎 へんしゅう、編集王（笑
浅野 会う度に「もう全然いいですから、もっすごいっ
 ちゃってください」って言ったら、本当にもっす
ごエロくなってて、
鷲崎 まじで？
浅野 それにアフレコした、ほっちゃんが。
鷲崎 （笑）
浅野 とってもかわいかったですよ。
ここから読み取れることは、
「声優が同人誌を描くように
促していること、即ち声優が『百合声優』を悪く思ってい
ないということ」である。ただ、これが全ての声優に当て
嵌まる一般性を有しているという証明はない為に、声優の
中には、
「百合声優」という１つの娯楽形態を良くは思って
いない人もいる可能性はある。
１０．４．「百合声優」で楽しむことは理解か
さて、前項では「差別」という「百合声優」で楽しむこ
とを、どちらかと言えば否定的な視点から述べていった。
そうは言っても、本当に「百合声優」で楽しんでいる人
たちに、
「差別的なホモフォビア」であるというレッテルを
簡卖に貼り付けられるのだろうか。それならば、本稿著者
もそのレッテルを貼られる人間の一人となる。
むしろ「百合声優」で楽しむことは、「百合」や「レズビ
アン」の理解――理を解することに繋がっているのではな
かろうか。
世界的には「異性愛社会」であると述べてきたが、一方
で「多様愛社会」への変化が見えてきている。
法的に同性愛カップルの結婚が、異性愛カップルの結婚
と同じくであるとしている国や地域が一部にある。また、
デンマークを端とする「シビル・ユニオン法」やフランス
の「ＰＡＣＳ法」といった、同性愛カップルに権利を与え
る法を定める国も出てきている。
そうした法が生まれるということは、 「ゲイの可視化」が
進んだことの証である。ここで用いる「可視化」とは、社
会科学でよく用いられる「社会一般にある物事が見えるよ
うになること」を意味する。
その「ゲイの可視化」は、アメリカにおけるゲイ達の権
利獲得の運動の賜物である。１９６７年６月２７日、ニュ
ーヨークで「Gay Liberation」が起き、ゲイ達がついに立
ち上がると、それは「Feminism 運動」と合流して行き、
その運動で当時、真の男女平等实現のために掲げられてい
た「家族の解体」を旗印に展開されていく。
しかし、１９８１年以降にゲイが次々にＡＩＤＳ死して
いくことによって、方針は一転していく。ＡＩＤＳを治療
したいとしても、当時は２１世紀の今よりもきついゲイフ
ォビアに社会があった為に、病院が診察拒否をすることが
稀ではなかった。また、ゲイカップルの一方がＡＩＤＳな
どで入院していたとしても、家族から面会が謝絶される。
そして、ゲイカップルの一方が亡くなってしまっても、法
的に相続を受けることができなかった。そういった社会の
現状にＡＩＤＳを通して知ったゲイ達は、 「ゲイの診察を受
け入れている病院紹介などのボランティア活動」や「 『学習
が最大のワクチン』として進めるＡＩＤＳキャンペーン」
といった、
「社会的権利の獲得」を求めて活動を進めていく
ようになる。そのような活動は、
「ゲイの可視化」と並行に
進んでいった。
そして現在では、法的な権利保障が一部国・地域におい
て進んでいる。また、企業では１９９２年にアメリカのロ
ータス社が、同性愛者の権利を異性愛者と同じくらい認め
るように社則で定めたことを端として、権利保障がいくつ
かの企業で進んでいる。
では、日本はどうかと言えば、まだまだ「住みにくい」
状況である。日本国憲法第２４条第１項には、「婚姻は、両
性の合意のみに基いて成立し～」とある。つまり、国の方
向性自体が「異性愛」であるのだ。つまりあらゆる制度は
「異性愛者」の使い易いようにつくられている。
また、日本は「過干渉社会」である為に住みにくくなっ
ている。例えば、アパートに住んでいれば、「どうしてお一
人で住まれているのですか」等とプライベートを聴いてく
る近所付き合いが、同性愛者を住みにくくしている。
ただ、日本は「相続」の面では救われていると言えるか
もしれない。それは「成年後見」という制度がある為だ。
簡卖に言えばこの制度は、年上のものが年下のものを養子
とすることが出来るものである。この制度の意味は、「家」
の存続を考えてのものであるが、同性愛カップルがこの制
度を利用すれば、「相続」の問題はクリアするのである。
さて、前項や本稿で述べてきたように、日本はまだまだ
「異性愛社会」である。その中で、「百合声優」という“制
度”（＝序章参照）の存在は、日本に於いて「多様愛社会」
の基礎的土壌の１つとなり得るのではなかろうか。その意
味で、「百合声優」で楽しむことがその理解に繋がっている
のではなかろうかと述べたいのである。
１０．５．本節のさいごに
娯楽と差別――これが近い距離にあればあるほど、どち
らを採るべきなのか、大変判断の難しい問題となる。今回
ここで取り上げたのは、「百合声優とセクシュアル・マイノ
リティ（同性愛）」である。
性についての問題は、まだまだ社会が理解の方向へと向
かいきっていない。一方で、「百合」という視点で声優を見
ていく楽しんでいるという側面がある。私はそのような２
側面が、完全に離れている事柄とは思えなかったことから、
本節を書くこととした。明快な筓えを示せきれてはいない
ことは、書いている本人が最も自覚している。
「百合声優」を楽しんでいる人たちは、まさか「レズビ
アン」を攻撃するが為に楽しんでいるわけではないと思う
――私がいくつか覗いたウェブサイトから、そのような臭
いは感じなかった。ただ、もしかすれば、当の「声優」た
ちや、实際に「レズビアン」たちがおかしいと考えている
かもしれない――そのことは思っていて欲しいと思うのだ。
何か解決法があるかといえば、私の考えるところではそ
ういうわけでもない。だから、ここでは書けていないのだ
が、ただ一番やってはいけないことは、「百合声優」で楽し
む行為が、あからさまに「レズビアン攻撃」に走ることで
ある。「あってはならない」――私はそう思う。
 京でのイベント”を告知するときには、「東京での開催なん
１１．声優ファンを取り巻く情報・文化受容格差
ですけど」と断りを入れる現状があるくらいで、その様な
第三章のラストとして「声優ファンを取り巻く情報・文 ときにはいくら大阪府民でも、ファンでいることの「苦し
化受容格差」というテーマで話していきたい。 さ」を感じてしまうことがままある。
物品類については、今でこそパソコンが普及し、インタ
１１．１．都市と地方の「情報・文化受容格差」 ーネット環境が良好となり、「インターネットショッピン
１つ目として、都市部と地方の「文化需要の格差」につ グ」が可能となっているが、そもそもパソコンを持ってい
いて述べていきたい。ここでの話は、
「声優文化」
に限らず、 なければ出来ない。そのとき、都市郊外に住んでいるなら
より広く「おたく文化」の問題として言及することの出来 ば、電車を乗り継いででもポンバシへ出かけていけば問題
るものであるので、その視点から話していきたい。 ない（私はこれに該当する）。しかし、それが大きな都市か
秋田県羽後町「かがり美尐女イラストコンテスト」の公 ら離れた山の中であったり、海沿いであったりしたなら、
式ブログにて、発起人の山内貴範はその公式ブログにて次 それが容易ではない。例えば、兵庫県豊岡市出身の人が、
のように書いている。 神戸市三宮にあるセンタープラザ（アニメ系ショップの集
合地）に行こうとするならば、長い長いＪＲの旅が待って
私がイラストの企画を立ち上げたのは、きっかけは「自 いる。尐しは近いだろうと、アニメイト姫路店に行こうと
分が好きなことであったため」であり、
「美尐女イラスト 思っても、
「遠い」という概算的な空間認識に変わりは無い。
の魅力を多くの人に知ってもらいたい」と思ったこと、 羽後町の人たちも同じくで、アニメイト秋田店に行くこと
そして「地元の子供たちに喜んでもらうため」です。 すら一苦労である。況してや、「声優のライヴ」となると、
羽後町内でイラストの企画を一番喜んでいるのは私の コミケと同じく「東京遠征」を強いられる状況になる。
後輩たちです。 そのことを考えれば、地方に作家を呼ぶという行為は、
交通の便が悪い羽後町では、コミケに参加することも 「財の偏在」の問題を尐しでも越えていくためには間違っ
困難ですし、作家さんとサイン会が行われることはまず た行為ではないだろう。しかし、都市部の若者との「文化
ありません。彼らの期待に忚えたいという思いから、書 受容の差」が決定的に埋まるわけではない。
店ミケーネでは作家さんとの交流会をたびたび行ってき
たりしています。私も作家さんも完全にボランティアで ここで１つ考えるべきは、何故「おたく文化」の根付い
時間を割いています。 た地が秋葉原や日本橋といった大都市中心部であるのか、
ということである。その理由として次のことを挙げられる。
生まれたときから都市生活しているオタクにしてみれば、 １． “ビデオデッキとビデオソフト”といった「ソフト
信じられないようなことだろう。实際に私も体験がないの とハード」という２側面の登場
で、实際にそうある人の声を聞くことでしかない。 → これは、“パソコンとパソコン用ゲーム”などへ繋が
ここで、読者の皆に立ち止まって考えて欲しい――アニ っていく。
メやマンガ、ゲームなどが「ジャパニーズポップカルチャ ２． 「電気街」であったこと
ー」として海外で評価され始めている現状があるわけだが、 → １の理由の基礎的理由。
一方で日本国内では、都市と地方で「文化受容の差」が生 ３． 都市部であったこと
じている。 → 「下位文化」の形成と強化
本項ではその差について考えていきたい。 １は、ビデオデッキを売る電器店がある傍に、ビデオソ
フトを売っている裏通りの店が存在していたといった状態
＊ ＊ ＊ に、電気街が平成期になってから変わっていったという歴
史がある。そのことは、電気街であったことが原因として
そもそも何故、アキバやポンバシなどが「聖地」や「趣 ある。
都」と言われて注目されているのか――それは、 「おたく文 そして、３つ目に挙げたのは「都市部であったこと」で
化的な財の偏在」があるからだと言える。 「おたく文化的な ある。都市のような多くの人々が集まる場所には、様々な
財」としては、多くの新品・中古の漫画・ゲーム・ＣＤ・ 集団が形成される。その１つが中森明夫によってラベリン
ＤＶＤ・グッズ類（以下「物品類」）、メイドカフェ類、イ グされた「おたく」であった。「おたく」たちの文化を「お
ベント類等である。 たく文化」というが、その文化は「下位文化」（サブカルチ
そして、声優がライヴをするとなれば、会場は都道府県 ャー。社会の常識としての文化＝上位文化とは違い、個別
庁所在地にある収容力ある場所が選定される。○○村の公 集団ごとに形成される文化）の１つとして生まれているこ
民館といった場所で開かれは、余程の理由がない限り開催 とは、歴史が物語っている。その下位文化が強化される契
されることは先ずない。またその開催地は、公演数が尐な 機として、コミックマーケットは存在することになり、雑
いほど「東京／横浜・名古屋・大阪」→「東京／横浜・名 誌の投書欄は存在することになり、そして９０年代には秋
古屋／大阪」→「東京／横浜のみ」となる傾向が非常に強 葉原という都市空間が存在することになった。つまり、地
い。私は大阪府民なので、アニラジはＣＲＫやＯＢＣを聴 方では生まれ得なかった「集団のエネルギー」というべき
いているのだが、それら在関西局制作の番組で声優が“東 ものが、「おたく文化」を街に根付かせるまでに膨れ上がっ
ていたことを見逃せないであろう。
さて、以上のように根付いた理由を考えることは出来る
が、
「現在において財の偏在が残っている」 ことについては、
また別の理由があることに気付かなければならない。
その理由としては次のものが挙げられる。
１． 都市部であること
２． 地方の過疎化と都市集住
→ 文化の担い手である若者の都市流出と「都市化」の
進行
３． 情報入手ルートの限定性
→ 電気メディアと雑誌に頼る状態
１は先ほど話したとおりである。
２は現在、「社会地理学」や「農村社会学」・
「都市社会学」
などで未だに生きているテーマである。日本では「太平洋
ベルト」上に大都市が集中――京浜葉・京阪神・中京とい
った大都市圏があり、即ち人口が密集している。一方で、
それ以外の場所では概ね過疎化が進み、 場所によっては「限
界集落」となっている所もある。この過疎化は、若年層の
大都市圏への流出が原因の１つとしてある。そしてこのこ
とは、都市を人口的な側面でより都市らしくしていく。
また、若年層の大都市圏流出は、声優のライヴ・イベン
トの地方開催を敬遠させる理由となっている。ライヴに行
きたい人の多くは大都市圏に集中していることになり、 「東
京と名古屋と大阪で開催しておけば何とかなる」という形
に考え易い。
最後に３つ目に取り上げたいのは、情報の入手ルートが
限られているということである。都市部ならば、 「アニメシ
ョップ」などに行けば、テレビやネット、雑誌をみずに、
ラジオを聴かずとも、十分な情報が入ってくる。しかし地
方では、テレビやラジオ、ネット、そして雑誌が頼みの綱
となってくる。もしそれらが１つでも欠けていれば、欠け
ていない人よりも「情報の密度」は変わって来る。特にネ
ット環境の悪い場合には、最悪の情報環境と言えよう。 「お
たくの街」の存在の意義は、ただ「おたくグッズ」を買う
ために便利であるという機能の他に、 「おたくの街」だから
こそ様々な情報を手にすることが出来るという「情報ステ
ーション」としての役割を果たしていることを、また「お
たくの街」である故に「イベントを行うに相忚しい街」に
なっているということを多くの研究者は見落としてはいな
いだろうか。
以上、
「声優文化受容の地理的・情報的格差」について考
えていった。地方にもファンが居ることは、ラジオ番組に
「雑音リスナー」が投稿していることから十分に分かるこ
とだ。だが、地方ファンと都市部ファンとは、おたく文化
についてのコトの量も、何よりモノの量も差がある。声優
文化について言えば、「声優イベントに参加する」ことは、
好条件の大変揃いやすい都市部ファンの特権となっている
と言っても過言ではないところがあるのではなかろうか。
「おたく文化」
・「声優文化」から地理的問題や情報的問
題（デジタル・デバイド）が見えてくることを、本項から
感じていただければ、趣旨を十分に満たしている。
11．２．世界の Seiyu 文化に於ける「情報・文化受容格差」
アニメやマンガ、ゲームなどが「ジャパニーズポップカ
ルチャー」として海外で様々な評価されているのだが、で
は实際どのようなものなのかを、知っている人は意外と尐
ないことだろう。
１１節２項は、海外における「ジャパニーズポップカル
チャー」 、つまり「Otaku-Culture」の現状を「seiyu」を
中心に見ていきたい。なお、本稿では資料の多さから、英
語圏、とりわけアメリカについて取り上げることが多いこ
とを先に申し上げておきたい。
１１．２．１．各国「Wikipedia」での「声優」
世界に広がっていると言われる「ジャパニーズポップカ
ルチャー」。その広がりは、 「Wikipedia」から見えてくる。
本項は先ず、「Wikipedia」の英語、ドイツ語、スペイン語、
フランス語、オランダ語、イタリア語、ポルトガル語、ポ
ーランド語、ロシア語、中国語、ハングルの各ヴァージョ
ンの様子を見てみよう。なお、英語版・仏語版・中国語版・
ハングル版には（拙いが）和訳を付けている。また、抜粋
は各ページの冒頭を中心とし、 目次を省いた一部分である。
【英語版“Seiyū” 】
A seiyū, seiyuu or seiyu (声優 ?) is a Japanese voice
actor and work in radio, television, and movies.
Seiyū perform voice-overs for non-Japanese movies,
provide narration, and also work as anime and
video game character actors. The term "seiyū" is
conventionally used among English-speaking fans
to denote the Japanese actor and "vocal actor" or
"voice actor" when referring to a character actor in a
series translated into English. Magazines focusing
specifically on seiyū are published in Japan, with
Voice Animage being the most well known and
longest running.
Japan currently produces 60% of the animated
series in the world. Because the animation industry
in Japan is so important, seiyū are able to achieve
fame on a national level and to have full time
careers performing voice-overs. Seiyū are able to
take greater charge of their careers than character
actors can in other countries. Japan also has
institutions to support the career path, with around
one hundred and thirty seiyū schools and troupes of
vocal actors that work for a broadcast company or
talent agency.
Seiyū frequently branch into music, and many have
also branched into live action film and television
acting. They may attract their own appreciator who
will watch shows in order to hear that actor or
actress. Popular seiyū, especially female seiyū such
as Kikuko Inoue, Megumi Hayashibara, Aya Hirano
and Aya Hisakawa, often have devoted
international fanclubs.
 "CV" is a common notation used in Japanese 行されているのは『Voice Animage』で、特に声優に集
publications to denote a "character voice" in one of 中している雑誌は、日本で出版されます。
the roles listed above. This term was first used in 日本は、世界で現在全アニメーションの６０％を生産し
the 1980s in anime magazines such as Animec and ます。 アニメーション産業が日本で重要なっているので、
Newtype. 声優は国内で評価を受けるようになり、ナレーションを
職業にすることができます。声優は他の国で character
Actors and seiyū actor をするよりも、より多くの給料を得ることができ
Initially, dubbing and doing voice-overs was a ます。日本にはまた、およそ１３０の声優学校と「声の
performance of an actor who used only his voice. 俳優」のタレント事務所や放送会社がキャリアパスする
When doing this job, they would be called "voice 為におかれている。
actors" (声の俳優 ,koe no haiyū?). For convenience, 声優はしばしば音楽活動に、そしてアクション映画やテ
the term was shortened to a new compound レビ番組への出演を行う。彼／彼女らは、自身の演技を
consisting of the first and last kanji to make seiyū 聞いてもらうために、それらに出演して受け手の注意を
(声優 ?). It was only after the seiyū booms however 引きつけているのかもしれません。有名な声優――特に
that this word became widespread. For this reason, 五上喜久子、林原めぐみ、平野綾、久川綾のような女性
elderly voice actors resent being called seiyū, 声優には、熱心な人々によって国際的にファンクラブが
because during their time the term had a different 作られている。
(and minimizing) connotation. The renowned 「CV」は、 「character voice」を意味する日本の出版物
Chikao Ōtsuka, who dubbed Charles Bronson で使用される一般の表記法です。この表記法は、
among others, was quoted in a special issue of 『Animec』や『Newtype』といったアニメ誌で、１９
Animage saying "We are actors. Even if a ８０年代に最初に使われました。
performance only requires the use of our voice, we
still remain actors, and it is therefore incorrect to 先ず最初に、元のナレーションを吹き替えることは、声
refer to us as just voice actors, isn't it?". He was だけを使った俳優の能力でした。この仕事をするとき、
opposed to the new trend of separating actors and 彼らは「声優」と呼ばれています。便宜上、語は「声の
seiyū, even in the face of emerging seiyū like Genzō 俳優」の最初と最後の漢字を取った短いものとなりまし
Wakayama, who learned how to act using their た。この語が広範囲にわたるようになったのは、声優ブ
voice and never set foot in a theater. ームの後でした。一方で語が異なる響きを持ち、そして
短くなったことで、初期の声優は「声優」と呼ばれてい
There are three main factors that set seiyū and ることに憤慨した。後にチャールズブロンソンを吹き替
actors apart. えた有名な Chikao Ōtsuka は、Animage の中で特別な
・ Their professional upbringing by the Tokyo 問題として引合いに出しました。 「我々は、俳優です。た
Broadcasting Drama Troupe ( 東 京 放 送 劇 とえ何かのパフォーマンスで我々の声のみを必要とする
団 ,Tōkyō Hōsō Gekidan?), formed by NHK だけであるとしても、我々はまだ俳優のままです。だか
and other private networks during the golden ら声優として我々に言及することは、したがって誤って
age of radio dramas. いると言えるはずです」 。Genzō Wakayama のような声
・ The increasing popularity of the television: で演じることを学び、そして劇場に決して立ち入らない
due to the lack of Japan-made movies and 新生の声優に直面してさえ、彼は俳優と声優を切り離す
dramas, TV networks were forced to air 新しい傾向に反対でした。
foreign shows, and that raised demand for
seiyū. 声優と俳優を引き離す 3 つの为因があります。
・ The boom in the anime world market, ・ 東京放送劇団（ラジオドラマの黄金時代の間、Ｎ
which produced a wave of young talents who ＨＫと他の個人的なネットワークによって作られ
wanted to become seiyū rather than actors. る）による彼らの専門躾。
・ テレビの増加・人気：日本製の映画とドラマの不
〔和訳〕 足のために、テレビネットワークは外国のショー
seiyū, seiyuu または seiyu は、ラジオ、テレビ、映画 を放送することを強いられました。そして、それ
における日本の仕事です。Seiyu は非日本の映画のため は声優の需要を上げました。
に吹き替えをし、それを提供し、そのうえ、アニメとテ ・ 俳優よりも声優になることを望む若い才能の波を
レビゲームのキャラクターを演じます。日本の一連の もたらした国際的な日本アニメブーム
character actor について英語圏のファンの人たちが言
い換えるとき、慣例的に「声の俳優」を意味する「声優」 【ドイツ語版“Seiyū” 】
という言葉が使われます。最も有名で、長きにわたり刊 Ein Seiyū (jap. 声優) arbeitet im Radio, Fernsehen,
 Film oder in Videospielen als Synchronstimme für
ausländische Filme, Erzähler oder Stimme für
Figuren aus Anime oder Videospielen. Für
gewöhnlich werden mit Seiyū nur die
Synchronsprecher einer japanischen Serie oder
Films bezeichnet.
Japan produzierte 2003 60% der Zeichentrickserien
auf der Welt. Weil die Trickfilmindustrie so
vielseitig ist, können Seiyū landesweit berühmt
werden und Karriere durch das Sprechen von
Rollen machen. Seiyū können ihre Karriere stärker
in Angriff nehmen als Sprecher in anderen Ländern.
Japan besitzt mit 130 Seiyū-Schulen und
Sprechertruppen, die für bestimmte
Rundfunkanstalten oder Talentagenturen arbeiten,
Einrichtungen diesen Karrierepfad zu fördern. Nur
Korea, wo die Rundfunkanstalten ebenfalls
Sprechertruppen einstellen, ist ein weiteres Land
mit einem ähnlichen System für Synchronsprecher
(Hangeul: 성우; revidiert: seong-u; Hanja: 聲優).
Seiyū gehen häufig in die Musikindustrie und
wurden Film- und Fernsehschauspieler. Genau
diese Sendungen werden oft von den eigenen Fans
gesehen, die so ihren Sprecher hören bzw. sehen
wollen. Beliebte Seiyū, besonders weibliche wie
Kikuko Inoue, Megumi Hayashibara und Aya
Hisakawa, besitzen oft hingebungsvolle Fanclubs
mit Mitgliedern aus der ganzen Welt.
Japanische Publikationen verwenden üblicherweise
CV (von engl. character voice) als Kürzel für
Sprecher, die Figuren ihre Stimme leihen. Dieser
Begriff wurde in den 80ern von Anime-Magazinen
wie Animec und Newtype eingeführt.
【スペイン語版“Seiyū” 】 声優は、ラジオ、テレビ、テレビゲームの「吹き替え俳
Un seiyū, seiyuu o seiyu (声優, seiyū, seiyuu o
seiyu?) es un actor de voz japonés.
El trabajo de un seiyū se concentra principalmente
en radio, televisión y doblaje de películas
extranjeras, proveen narraciones, y trabajan como
actores de voz en videojuegos y series de anime. El
uso más característico de este término en el
occidente se refiere como el actor de voz o actor de
doblaje dentro de las series de anime.
Japón produce cerca del 70% de las series animadas
en el mundo. Debido a este desarrollo deben
trabajar tiempo completo y alcanzan fama
internacional, alcanzado un reconocimiento
comparable al que tienen actores de otros países. En
Japón existen cerca de 130 escuelas de seiyū, varias
agencias de empleos y compañías buscadoras de
talentos. Corea es el único país que posee un
sistema similar de empleo para los actores de voz,
donde las distintas cadenas televisoras contratan a
varios seiyūs para sus programas.
Los seiyū incursionan generalmente en la música,
en películas y en roles televisivos, donde
regularmente poseen grupos de fans que siguen el
programa sólo por su participación. Cuando la serie
de anime que protagonizan tiene difusión mundial,
los grupos de fanáticos se extienden por todo el
mundo.
La sigla "CV" se usa comúnmente en las
publicaciones japonesas para denotar un "personaje
de voz" ("character voice", en inglés), para los roles
listados en las revistas. Este término fue usado por
primera vez en la década de 1980, en las revistas de
anime como Animec y Newtype.
〔解説〕
内容はほぼ英語版と同じ。ドイツ・スペイン版で異なる
点は、①第１段落（声優という職業について）
、②韓国で
も同じようなシステムがあること、の２点である。
【フランス語版“Seiyū” 】
Seiyū (声優) est un terme japonais qui désigne le
métier d'acteur de doublage, que ce soit pour la
radio, la télévision, et les jeux vidéo. Pour la
télévision, cela concerne essentiellement le doublage
d'anime et la publicité.
On notera que ce type d'acteur est bien plus
populaire au Japon qu'il ne l'est en France.
Le métier de seiyū fut en lui-même le sujet principal
de plusieurs mangas et animés, tels que Love Get
Chu ou Rec (2006).
〔和訳〕
優」の職業を示す日本の言葉です。それは基本的にアニ
メや広告に関わる仕事です。
特にフランス東部では、日本で人気ある声優が注目され
ています。
声優の職業は“Love Get Chu”または“Rec”
（２００
６）として、マンガやアニメで描かれていました。
【ネーデルランド語版“Seiyū” 】
Een seiyū, seiyuu of seiyu (声優, seiyū, seiyuu of
seiyu) is een Japanse stemacteur die werkt op het
gebied van radio, televisie en films. Seiyū spreken
de stemmen in voor niet-Japanse films, alsmede
Japanse werken zoals anime en videospellen. De
term wordt buiten Japan vooral gebruikt om te
refereren naar de originele Japanse stemacteur van
een personage uit een anime die ook in andere talen
is nagesynchroniseerd.
Achtergrond
 Het beroep van stemacteur bestaat al in Japan
sinds de opkomst van de radio, maar de term seiyū
werd pas populair in dejaren 70 van de 20e eeuw.
Vooral de anime Space Battleship Yamato heeft
bijgedragen aan de opkomst van de term. De term
seiyū is een samentrekking van de eerste en laatse
kanji van het Japanse woord voor "stemacteur": 声
の俳優 (koe no haiyū).
Japan produceert momenteel 60% van alle
animatieseries ter wereld. Daar de animatie-
industrie in Japan zo belangrijk is, kunnen seiyū
national bekend worden en van het voice-over werk
hun vaste baan en carrière maken. Japan heeft
zelfs instellingen en scholen voor seiyū.
【イタリア語版“Doppiatore” 】
Il doppiatore (al femminile doppiatrice) è un attore
che, in fase di doppiaggio di un film, telefilm,
cartone animato ed in generale qualunque cosa
necessiti di una voce attoriale, presta la propria voce
ad attori stranieri per le edizioni in lingua non
originale. Il doppiatore presta la propria voce anche
per prodotti che ancora non l'hanno, come spot
radiofonici[senza fonte] o cartoni animati e
videogiochi di produzione nazionale a cui va
attribuita una voce ex-novo (vedi Recitazione
vocale).
Talvolta si ricorre al doppiatore anche per attori
della stessa nazionalità, quando questi non
raggiungono una qualità accettabile nella
recitazione o nella dizione. Sovente, anche grandi
attori, nei primi anni della carriera, sono stati
doppiati.
Il doppiaggio inoltre può essere una necessità
tecnica, quando le condizioni ambientali (rumori di
fondo, forti riverberi) durante le riprese non
consentono di registrare un parlato chiaro. In
questo caso gli attori doppiano loro stessi.
Il doppiaggio nella cinematografia è l'alternativa ai
sottotitoli.
Strumento principale di lavoro del doppiatore è il
microfono, con cui si deve saper rapportare per
valorizzare sempre al massimo la sua
interpretazione.
Come l'attore nella sua attività viene diretto da un
regista, così il doppiatore viene diretto da un
direttore di doppiaggio. Questa figura (di solito un
doppiatore con maggiore esperienza) si occupa di
scegliere i doppiatori e distribuire le parti, di
coordinare il lavoro, di cui mantiene sempre una
visione globale. Rispetto a un regista però, il
direttore di doppiaggio, è molto più vincolato a
esigenze tecniche produttive che non proiettato
verso uno sviluppo artistico del lavoro, comunque
presente anche se in misura necessariamente
ridotta.
Il mestiere del doppiatore è dunque molto tecnico e
può sembrare simile in certi casi a quello di un
imitatore; richiede molto orecchio, poiché la sua
capacità interpretativa deve sempre avere come
riferimento la recitazione dell'interprete originario e
di conseguenza non è mai completamente libera, ma
sempre vincolata da tempi, intonazioni e ritmi ben
definiti dalla colonna sonora originale. Per fare il
doppiatore sono dunque necessarie doti particolari,
e bravi attori di teatro, cinema o radio non è detto
che riescano ad essere anche bravi doppiatori, e
viceversa.
【中略】
Giappone
I voice actor giapponesi sono comunemente
chiamati seiyū (声優, seiyū?), e lavorano in radio,
televisione e film, ma soprattutto in anime e
videogiochi. Il Giappone produce infatti il 60% delle
serie animate nel mondo, rendendo tale lavoro
molto proficuo. I seiyū lavorano anche come
doppiatori per film o documentari che non sono in
lingua giapponese.
Grazie alla popolarità dell'industria degli anime e
dei videogiochi, molti seiyū vengono riconosciuti con
fama nazionale, e sono in grado di perseguire questa
professione senza il bisogno di praticare altre
professioni. Il Giappone ha diverse istituzione per
preservare questo lavoro, e sono circa 130 le scuole
che seguono ed istruiscono i nuovi seiyū.
Molto spesso i seiyū devono anche lavorare su parti
canore, come le sigle iniziali e finali degli anime a
cui lavorano, e spesso proseguono con la creazione di
drama CD oppure image song. Molti seiyū, grazie a
queste attività, seguono anche la carriera del
cantante.
【ポルトガル語版“Seiyū” 】
Seiyū (声優, Seiyū) é um termo da língua japonesa
que significa actor/actriz que trabalham como
narradores ou dubladores para rádio, televisão ou
jogos de computador. Na televisão, são mais usados
em anime e anúncios comerciais, e são muito mais
famosos que os actores de voz, tradicionalmente nos
Estados Unidos.
Fãs, quando a se referem a uma personagem de
uma serie traduzida para uma língua ocidental,
usam seiyū para se referir ao actor Japonês e
simplesmente "actor de voz" ou "dublador" para o
 actor Americano. No Japão, os seiyū são queridos выпускаться на DVD дополнительные бонусные
pelos fãs de anime, sempre lembrando dos серии, или отдельные OVA-серии. Вслед за (или
personagens aos quais já emprestaram a voz. одновременно с) показом аниме по телевидению
могут выходить передачи по радио (или
【ポーランド語版“Seiyū” 】 интернет-радио), где принимают участие (обычно
Seiyū (jap. 声優; spotykana także transkrypcja: уже от своего лица, а не от лица своих
seiyuu) – osoba użyczająca głosu różnym bohaterom персонажей) исполнявшие главные роли сэйю.
w słuchowiskach radiowych, anime czy grach По сюжету аниме могут создаваться
komputerowych. компьютерные игры и/или записываться Drama
Wszędzie poza Japonią określa się tym mianem CD, куда также часто (хотя и не всегда)
osoby podkładające głos w oryginalnej wersji приглашают для озвучивания ролей тех же
dźwiękowej. Dla osób dubbingujących używa się актѐров, что и в аниме. Кроме того, вслед за
miana aktora głosowego. Natomiast w Japonii выходом аниме обычно выходят CD с
słowo to oznacza po prostu aktora głosowego. музыкальными композициями оттуда (OST) и
Podobnie rzecz ma się z innymi słowami часто также с дополнительными
pochodzenia japońskiego, jak manga czy anime. произведениями, например, с песнями
Co ciekawe, seiyū są w Japonii bardzo popularni. персонажей (обычно это назвается «Character
Czasami robią większą karierę niż aktorzy. CD»), где эти песни исполняются игравшими
соответствующие роли сэйю.
【ロシア語版“Сэйю” 】 Иногда сэйю исполняют также и песни в
Сэйю (яп. 声優 Сэйю:?, от яп. 声の俳優 — актѐр открывающих и/или закрывающих заставках
озвучания) — японские актѐры озвучивания. аниме. Они могут исполнять такие песни сольно,
Сэйю обычно озвучивают роли в аниме, либо же, на время работы над сериалами могут
видеоиграх, иностранных фильмах, а также на создавать поп-группы (называемые сэйю
радио и телевидении. юнитами) для исполнения песен, которые будут в
В отличие от всех других стран и анимационных них звучать и, конечно, не в последнюю очередь
школ, где для озвучивания персонажей для дополнительной рекламы сериалов. В
анимационных фильмов приглашаются актѐры качестве примера можно привести группу «DoCo»,
театра, кино и телевидения, в Японии актѐр состоявшую из актрис, озвучивавших сериал
озвучивания — отдельная профессия, со своими «Ранма ½».
тонкостями. Существуют специальные курсы Мастерство сэйю в аниме создает значительную
подготовки сэйю, попасть на которые из-за часть впечатлений и эмоционального фона,
большого конкурса достаточно непросто. На поэтому ценители аниме обычно не признают
курсах будущих сэйю учат профессионально дубляж и используют субтитры.
обращаться со своим голосом — изменять его в
зависимости от возраста, пола и настроения 【中国語版“日本配音員”】
персонажа. Студентов, помимо всего прочего, 聲優是配音員的意思。
「優」在日語和中國的文言文裏都
учат профессионально петь. Программа 是演員（見俳優）
，但是由於「聲優」並非中文詞語，所
обучения, таким образом, представляет собой 以一般指日本配音員。
комбинацию курсов актѐрского и вокального
мастерства. 聲優的出身
Большинство сэйю — девушки, так как 配音員的出身，以日本為例，为要分為四類：
потребность в женских голосах в индустрии выше ・ 第一類是由聲優養成學校（在台灣稱為配音班，
— они озвучивают, кроме собственно женских 一般由電視台招募，並非正式學歷，在日本則有
ролей, детские и иногда подростковые роли. 專門單位招募，接受完整訓練但並非正式學歷）
Многие сэйю, помимо озвучивания аниме, 訓練，畢業後擔任配音工作，一般而言，假使一
одновременно ведут эстрадную карьеру, играют в 個普通人想要成為配音員，最容易的方法即是向
радиоспектаклях, ведут телевизионные и 養成單位報名，接受養成訓練，訓練完成之後便
радиопередачи, дублируют фильмы. 有機會從事配音工作。
Участие сэйю (особенно исполнителей главных ・ 第二類是依照正常升學管道畢業後，進入劇團擔
ролей) в каком-нибудь аниме-сериале часто не 任演員開始培養演技，之後再從事有關配音工作，
заканчивается с озвучиванием ими ролей в этом 如朴璐美。
аниме. После собственно ТВ-сериала могут ・ 第三類則是與第二類有些類似，是從童星時期即
 在劇團內表演並培養演技，約在高中畢業年齡前
後開始配音工作，如飯塚雅弓。
・ 第四類則是從其他行業轉行至配音工作，例如演
藝界偶像團體中轉型成為配音員的岩男潤子，或
是由完全不相關的行業轉進成為配音員的人士，
例如原本為警視廳機動隊隊員的若本規夫。
〔和訳〕
声優はアフレコ(吹き替え)をする人の意味です。
「優」は
日本語と中国の文語文の中ですべて役者（道化役者）を
示すが、
「聲優」は中国語の語句のため、普通は日本のア
フレコ（吹き替え）をする人は「日本配音員」と言う。
声優の出身
アフレコ（吹き替え）をする人の出身を日本を例にして、
为に４種類に分けられる。
・ 第１に、声優養成学校（台湾ではアフレコ(吹き替え)
をするクラスと称します、普通はテレビ局のから募
集しますが、正式でない学歴にはならない。日本に
は声優養成を募集する専門の学校がありますが、正
式な学歴とはならないです）の訓練を身につけるの
で、卒業の後でアフレコ（吹き替え）で働きます。
一般的に言えば、もしもアフレコ(吹き替え)の職に
就きたいのならば、最も容易な方法は声優養成学校
に申し込み、訓練で身につけて、後にアフレコ(吹き
替え)をして働く機会を得る方法があります。
・ 第２に、正常に進学して卒業した後に、劇団に入っ
て役者として演技を育成することを始め、その後更
に関係してアフレコ(吹き替え)の仕事に就くことで
す。例としては朴璐美がいます。
・ 第３に、第２と似ているが、子役スターの時期から
すぐ劇団の内で演技を育成し、およそ高校の卒業す
る年齢の前後でアフレコ(吹き替え)をして働くこと
を始めることです。例としては飯塚雅弓がいます。
・ 第４は、その他の業界から就いてから、アフレコ(吹
き替え)も始めることです。例えば岩男潤子のように、
アイドルからモデルチェンジをしてアフレコ(吹き
替え)を始めたことがある。或いは完全に関連してい
ない業界から転職してアフレコ(吹き替え)をする人
になることです。例えば、警視庁機動隊隊員だった
若本規夫がいる。
【ハングル版“성우” 】
성우(聲優, 문화어: 배음사, 配音士)는 목소리로
연기하는 배우이다.
대한민국의 성우
역사
대한민국 성우의 기원은 1947 년 한국방송에서
모집한 데에서 비롯하며, 1964 년 한국성우협회의
설립으로 각종 방송사에서 성우를 모집하였으나,
1980 년 언론통폐합을 계기로 동양방송(TBC),
동아방송(DBS), 서해방송, 전일방송 등의 출신
성우들이 한국방송으로 몰리게 되고, 현재 한국방송,
문화방송, 교육방송, 투니버스, 대교방송, 대원방송
의 총 6 개 방송사에서 성우를 모집하고 있으며,
한국성우협회에 등록된 공식 성우는 약 600 명으로
추산된다.
성우가 되는 방법
2007 년 현재 대한민국에서는 총 6 개(윗부분
참조)의 방송사에서 공채성우를 모집하고 있다.
모집간격은 방송사별로 3 년에 한번씩 모집하며,
한국방송은 라디오드라마, 투니버스와 대원방송은
애니메이션 위주로 3 년간 수습기간을 거치게 된다.
또한 문화방송은 외화 및 애니메이션을 통해
수습기간을 거쳤으며, 대교방송의 경우는 현재 자체
제작 프로그램이 없는 관계로 3 년의 수습기간
중에도 타 방송사/광고출연이 가능하다. 3 년의
수습기간을 거치면 프리랜서로 전환되어
한국성우협회의 정회원으로 등록된다. KBS 과
MBC 에서는 자체적으로 아카데미를 운영하고 있어,
성우지망생은 이곳에서 훈련하기도 한다.
〔和訳〕
星宇(声優, 文化語: 倍音社, 配音士)と言う声で演技す
る俳優だ.
歴史
星宇の起源は、１９４７年韓国放送で募集したところ
から始めて、１９６４年韓国星宇協会の設立で各種放
送社で星宇を募集したが、１９８０年言論統廃合をき
っかけに東洋放送（TBC）
、東亜放送（ＤＢＳ）、西海
放送、前日放送などの出身星宇たちが、韓国放送に追
随されるようになった。現在では韓国放送、文化放送、
教育放送、トゥーニーバス、大橋放送、隊員放送の計
６放送社で星宇を募集している。また、韓国星宇協会
に登録された公式星宇は約６００人と推算される。
星宇になる方法
２００７年現在、大韓民国では計６社 （上部参照）の
放送社で公採星宇を募集している。募集間隔は放送局
別で３年に一度ずつ募集し、韓国放送はラジオドラマ、
トゥーニーバスと隊員放送はアニメーション为として
３年間修習期間を通すようになる。また文化放送はア
ニメーションなどを通じて修習期間を経るし、 大橋放
送の場合は現在自体製作プログラムがない関係で、３
年の収拾期間の中で他の放送社／広告出演が可能だ。
３年の収拾期間を経ればフリーランサーに転換されて、
韓国星宇協会の正会員に登録される。ＫＢＳとＭＢＣ
では自为的にアカデミーを運営していて、星宇志望生
はそこで訓練したりする。
一忚は以上の分を紹介しておきたい。 「声優」の記事は、
日本版のみならず、世界の「Wikipedia」にも登場してい
ることがお分かり頂けただろう。もちろん、ここに示した
以外の他言語版のそれの載っているだろうから、興味のあ
る方は是非覗いてみるといいだろう。
 以上のなかで特記しておくべきことはいくつかある。
１つは韓国についてである。韓国には以上にあるとおり
「星宇」という独特の声優システムが存在している。ここ
に引用した「Wikipedia」
“성우”のなかには日本の声優に
ついては書かれていなかった。
もう１つは、
「名前が登場している声優」についてである。
特に多く登場しているものとして英語版から、アルファベ
ット順に名前を挙げてみたい。
Ai Shimizu Akeno Watanabe Akino Murata
Akira Kamiya Akira Nagoya Asami Sanad
Aya Hirano Aya Hisakawa Ayaka Saitō
Chiemi Chiba Chikao Ōtsuka Daisuke Namikawa
Eri Sendai Fumiko Orikasa Genzō Wakayama
Gō Aoba Hekiru Shiina Hiromi Tsuru
Hiroshi Tsuchida Hisashi Katsuta
Hitomi Nabatame Jōji Yanami Jouji Nakata
Junko Iwao Junpei Takiguchi Kaneta Kimotsuki
Kaori Nazuka Katsumi Toriumi Kazue Takahashi
Kazuya Tatekabe Kenichi Suzumura
Kenji Utsumi Kikuko Inoue Kiyoshi Kawakubo
Kōichi Yamadera Kotono Mitsuishi
Maaya Sakamoto Machiko Soga Mai Nakahara
Mariko Kōda Mariko Mukai Marina Ōno
Masakazu Morita Masato Yamanouchi
Masaya Matsukaze Masumi Asano Mayuko Aoki
Mayumi Iizuka Megumi Hayashibara
Miina Tominaga Mika Kikuchi Miyu Irino
Miyū Tsuzurahara Miyuki Sawashiro
Nachi Nozawa Naoya Uchida Nobuo Tanaka
Noriko Hidaka Reiko Chiba Rie Tanaka
Rieko Takahashi Rikiya Koyama Romi Park
Ryō Kurusawa Ryōka Yuzuki Ryūsei Nakao
Saeko Chiba Sakura Nogawa Sanae Kobayashi
Shūichi Ikeda Subaru Kimura Tadashi Nakamura
Takeru Shibaki Tetsu Shiratori Tōru Furuya
Tōru Ōhira Toshio Furukawa Toshiyuki Morikawa
Tsutomu Isobe Yoku Shioya Yui Horie
Yūichi Nagashima Yuji Kishi Yūka Nanri
Yukari Tamura Yuki Matsuoka Yūko Saitō
Yumi Kakazu ／NG5(Nozomu Sasaki, Takeshi Kusao,
Hiroshi Takemura, Tomohiro Nishimura and Daiki
Nakamura)
以上の名前は、歴史記述部分や、声優の成因種別を記述
しているところなどに登場し、その為に黎明期から現在ま
で幅広い時代をカバーしている。
この多さに驚いたことと同時に、声優の名前が登場して
いる部分で注目しておかなければならないことは、イタリ
ア語版などで、図１１－１の Maria Yamamoto の写真が
挙げられていることだ。イタリア等では、日本の声優とい
えばこの人のイメージがあるのだろうか。
図１１－１ Maria Yamamoto（Doppiatore – Wikipedia）
１１．２．２．ウェブサイトから見る Seiyu 文化
次に、「Wikipedia」をのぞくウェブサイトから世界の
Seiyu 文化を見てみよう。声優に因んだサイトとして、英
語圏では例えば、図１１－２～７のようなものがある。
図１１－２は、 「Wikipedia」英語版に於いて、声優に関
した記事の 「関連サイト」 欄に必ず登場するサイトである。
トップページから右上の“encyclopedia”をクリックし、
その中を探していくと seiyu の紹介ページに辿り着く。多
くの声優について出演作品などの情報がデータベース化さ
れている。そのような「声優データベース」の形態は、英
語サイトには割と多く、図１１－３や１１－４もその性質
を持っているサイトである。
それらの情報は全く古臭くなく、最新のデータも書かれ
ている。図１１－４－１左側には、アニメや声優の最新Ｃ
Ｄの情報が載っている。また、図１１－４－２に示してい
る平野綾のデータでは、出演アニメのデータ中に「Akane
Iro ni Somaru Saka[2008]」や「White Album[2009]」と
いった新しめの情報も載っている。このような最新の情報
への更新は、seiyu ファンがインターネットを介して「情
報取得のタイムラグ」を尐しでも解消しようとしている動
きと言えよう。
サイトの形は「声優データベース」の形のみならず、特
定の声優についての「私設ファンサイト」も存在する（例
＝図１１－５） 。私が検索をかけた０９年５月５日時点で、
発売前の最新シングル「Set Me Free」の情報が「YouTube」
から引っ張ってきたの動画を交えて紹介されていたりして
いた。
以上のような「声優データベース」や「私設ファンサイ
ト」については、日本人が日本語で作ったものもある。デ
ータの蓄積は、いわばファン活動の基礎的な部分に当たる
と言えようから、何も日本語サイトがあろうと、英語サイ
トがあろうと、ファンが活動している点で特段おかしなこ
とではない。ただ、日本と英語圏（アメリカ）とのサイト
の違いとしては、 「声優ジャーナリズム」の存在が有るか否
かである。日本語の声優系サイトには『声優ニュース.com』
というサイトがある。これに完全に該当する外国語版は、
今のところ見当たらないのである。
図１１－２ 「Anime News Network」トップページ

図１１－３ 「Ryu's Seiyuu Info」トップページ

 図１１－４－１ 「Seiyuu (voice actor) database」トップページ

図１１－４－２ 「Seiyuu (voice actor) database」

“Hirano Aya roles”
 図１１－５ 「AyaHirano 平野 綾」トップページ

図１１－６ 「CUAC -- Columbia University Anime Club」トップページ

 図１１－７－１ 「The Internet Movie Database (IMDb)」トップページ

図１１－７－２ 「The Internet Movie Database (IMDb)」

“Noriko Hidaka”
図１１－８ 「日本声優専門エンタメサイト Jade Voice」トップページ

図１１－９ 「声優アワード」English 版
１１．２．３．
seiyu を知る背景としての anime（上海レポート）
私は高校の修学旅行で上海へ行ったことがある。そこに
あるとある高級中学校生との交流について、ここではその
交流内容の１つ――全体交歓会（高級中学校内の講堂での
イベント。私はここでアニメソングを歌った）後の家庭訪
問から得たことを話すことで、中国での anime の現状を尐
しでも伝えてみたい。
夕食で水餃子が７皿も出てきて驚いたことは今回余談で
あって、その前や後、交流生の部屋にいたのだが、彼は気
を利かせたのか何気なくなのか、 ＤＶＤをデッキに入れて、
再生すると、ブラウン管に映ったのは『鋼の錬金術師』で 図１１－１０ ＤＶＤパッケージ
あった。 しばらく見入ってから別のディスクに入れ替えた。 （左：『鋼の錬金術師』 右：『テニスの王子様』）
次のアニメは『テニスの王子様』であった。それにも見入
ったのだが、私ははたといくつかのことに気付いた。１つ
は、日本の地上波放送をそのままＤＶＤに焼いているとい
うこと。そのまま焼いた上に英語や中国語、日本語の字幕
がついていた。もう１つは、日本で言う「海賊版」のよう
なＤＶＤであること。時々、画が乱れるところがあるのが
そう思わせる。
丁度私自身が当時から調査している分野であったがため
に好奇心をそそられてしまい、 つい写真を撮ってしまった。
図１１－１０、１１－１１は前述の２作品のパッケージで
ある。紙製ケースで、外側はビニールで包まれていた。図
１１－１１はディスクを写しているが、 『まほろまてぃっ 図１１－１１ ＤＶＤディスク『まほろまてぃっく』
く』 というアニメのものである。 そのディスクを見たとき、
私は正直びっくりした――日本ではマイナーであり、 「萌え
アニメ」の類である『まほろまてぃっく』が上海にもあっ
たからだ。私はてっきり、 『ドラえもん』 （多拉Ａ夢）など
の日本に於いてメジャーな作品のみが海外でも一般に普及
していると思っていた。
ここで１つ、日本との違いを知った――上海では「萌え」
という言葉がどうも世間に広まっていないということだ。
『テニスの王子様』を観ていたときに、部屋に居た部屋为
以外の交流生２、３人が女の子キャラクターが出てきたと
きに「かわいい」と表現していた。私とすればそのキャラ
の純粋な感じに「萌え」と言いたいのだが、どうやら日本 図１１－１２ 『HUNTER×HUNTER』テレビ映像
人との違いがあるようだ。 （フラッシュあり）
ここで、アニメーションからは脱線するが１つ。ライト
ノベルに『灼眼のシャナ』というアニメ化等メディアミッ
クスがめざましい作品があるのだが、交流生の中にいた２
人の女の子のうちの１人が、私と同じ班の小正月が手に持
っていたその作品の文庫カバーを見て「Syana!」と反忚し
た。私はそれを目の当たりにして、是非インタビューをと
思い，‖Do you know it?‖と文庫を指しながら聞くと、肯い
た。次に聞いてみるが、なかなか伝わらなく、メモ帳
に‖Why do you know it?‖と書いて示すと、そのメモの下に
解筓してくれた。‖My brother told me about it, and I‘ve
seen the cartoons about this.‖ 私はさらに疑問を持
ち、‖Why brother knows it?‖と聞くと、筓えてくれた。ど
うやら彼女のお兄さんは日本語に精通しており、日本に行 図１１－１３ 『HUNTER×HUNTER』テレビ映像
ったときに購入し持ち帰ったものの中に『灼眼のシャナ』 （フラッシュなし）
があったという。 ＊ 図１１－１０～１３は猪岡撮影。
 交流が無事終わり、ホテルに戻った私は、旅行中に習慣
となったテレビを点けることをその日も当たり前のように
し、中国語しか流れないチャンネルをザッピングしている
と、１つのチャンネルでリモコンのボタンを押す指が固ま
った。流れているのは本田美奈子の歌で、そしてその曲の
ＰＶとして流れているのが、 『HUNTER×HUNTER』の
アニメのコマを切り繋げて作ったものであった（参照＝図
１１－１２・１１－１３）。後で知ったのだがどうやらその
アニメのエンディング曲であるそうで、私はルームメイト
である小正月と最後まで見入ってしまった。そして、音楽
番組のエンドロールが流れた。その中に「上海風情街」の
文字があった。「上海風情街」とは、いわば「リトルアキバ」
であるが、どうやら日本は秋葉原がキャラクター文化の発
信地であるように、上海ではそこが発信地であるようだ。
その商店街の玄関口にある店舗紹介看板には、いかにも妹
系のコンセンサスな「萌えキャラ」が描かれているそうだ
（参照＝森永卓郎『萌え経済学』 ）。
１１．２．４．
海外の Seiyu 文化における「情報・文化受容格差」
ここまでアメリカを中心に、上海での实体験を交えつつ、
海外の seiyu 文化の状況について、背景を含めて触れてい
った。なお、その背景について、アメリカの状況について
は『オタク・イン・USA 愛と誤解の Anime 輸入史』を
参照するといいだろう。
さて、 『NEWSWEEK』日本版 ２００７年３月２１日号
pp.34-41「ニッポン発萌えパワーに世界も(＾0＾)」による
と、アニメやマンガ、ギャルゲー、コスプレが好きな中国
人が居て、コスプレするタイ人が居て、パリを拠点とする
ＮＧＯの協会団体「Euro Japan Comic」がコスプレイベ
ントや同人誌即売会などを開催し、 マンガを読み耽ったり、
マンガイベントでフィギュアなどを買い込むフランス人が
居て、ビジュアル系バンドを切っ掛けに日本に興味を持っ
た結果としてアニメやマンガを見るドイツ人がいるという。
そもそも、本稿に「Wikipedia」を数カ国語版紹介したの
は、アメリカ以外にも Otaku 文化が好きな人が居ることの
バロメータとしてである。
さて、その海外の seiyu 文化について、次の２つについ
て注目しておくべきだろう。
１． イベントが尐ない――seiyu を实際に目にする機会
の極小さ
２． 情報取得先の偏向――情報がインターネットに偏
っていること
この２つの注目点は、次のことを踏まえる必要があるだ
ろう。
一．日本が島国であり、他国から足を運ぶことを容易に
許さない自然地理的な要素（ここでは、統治等の政
治・政策的問題は省く）
二．日本語という独自の言語体系による「言葉の壁」
三．一と二を前提とした、 「発祥国と受容国」の差
海外で開催されているイベントについて、ヨーロッパで
も開催はされているが、アメリカではいくつか開催されて
いるようだ。
『ＥＸＴＥＮＤ＋』vol.1「アニメエキスポ 2008 アフタ
ーレポート」によると、そのイベントの中の「フォーカス・
パネル」 では、 ファンがゲストに直接質問が出来るようで、
そのゲストはアニメーターや声優が呼ばれる。そこでは、
声優の場合は質問に快く筓えるほかに、リクエストのあっ
たキャラクターの台詞を即興で演じてくれるという。
Otaku 系イベントはアニメエキスポの他に、 「ＯＴＡＣ
ＯＮ」 「Sakura Con」
「Animazement」などがアメリカで
は開催されており、ゲストとして声優が呼ばれることがま
まあるようだ。そういったイベントを通して、アニメなど
で知った seiyu に实際に会おうとしているのだ。
さて、何らかのイベントで「声優を呼ぶ」とき、日本と
アメリカでは意味合いの違いが発生すると言えよう。日本
で声優が呼ばれるイベントと言えばアニメ・ゲームショウ
やコミックマーケット企業ブース （コミックマーケットは、
企業ブースで出展企業が声優を呼んでいるのであって、イ
ベント为催者側がオファーしている訳ではない）といった
ところだが、それで呼ばれるのは「企業や商品の宠伝」の
意味合いが大きい。一方、アメリカのイベントで呼ぶとき
には、日本で大学文化祭に呼ばれるくらいの「イベントの
目玉」としての意味合いが大きい。
また、日本と海外では「声優／seiyu」を目に出来る機会
の差はかなり大きい。この大きさは、 （ＣＤセールス上の利
害含みの） “ライブ”や“発売イベント”などの開催による
ものである。背景に巨大資本があろうとも、声優を目にす
る機会に差が出ていることは、紛れも無い事实である。
そのような海外でのイベントの尐なさ、そしてプラスし
て「趣都」的な場所がないことによる「都市からの情報取
得の皆無」によって、 「情報取得先の偏向」が起きていると
言えよう。その偏向は、インターネットに情報が偏るとい
うことだが、それはその有無が「Otaku」の精度を決めて
しまうということである。言うならば、１か０かという極
端さがあることだ。
様々なホームページを通して最新情報を取得でき、グッ
ズを買うことができ、また“投稿動画サイト”によってタ
イムリーな日本のアニメやラジオに触れることが出来るよ
うになれる。
“動画投稿サイト”については、いくら動画や音声をア
ップすることが問題あることでも、一方で海外のファンか
らすれば、最新の番組にタイムリーに出会う手段として “投
稿動画サイト”は有り難いものであろう。アップされてい
るアニメの中には、アルファベットや中国語の字幕がつい
ているものがある。そして、最新のアニメは早いものでは
３０分くらいでアップされてしまう現状があり（サイトへ
のアップは、おそらく日本人が日本から行って居ると考え
るのが妥当であろう） 、インターネットインフラの整備の進
んでいる韓国では、アップされたアニメによってアニメフ
ァンが育っている現状があるようだ（参考＝森永卓郎『萌
え経済学』p.24）
。
 ところで、インターネットを介して、様々な障害を越え
ているように見えるかもしれない。しかし、一方でそのこ
とは「インターネットに頼らざるを得ない状況が生まれい
ずる可能性」を指し示す。例えば、アメリカ在住者は、ア
メリカで開催されたイベントのことをアメリカの人が書け
るとしても、seiyu の活動のほぼ１００％が行なわれてい
る日本で起こっている様々な活動については、基本的に伝
聞する他無い。つまり、海外の seiyu ファンは、ネットや
海外向けアニメＤＶＤなどで集めた情報をサイト上に載せ、
それをネット上で取得、共有するしか基本的には動き様が
無い。もし seiyu が自分の住んでいる国・地域に来たとい
うならば、見たくてしょうがなくなるのだ。
「声優データベース」が多いことは、 「seiyu 受容国」か
ら出来る精一杯のことをしている表れと言えよう。そのデ
ータベースの典型例は何より各国版のある「Wikipedia」
である。
１１．２．５．国際声優論の展開
世界において日本の声優はどのように伝えられ、また声
優はどのように伝えていっているのだろうか。この節では
そのようなことを概観していく。
読売新聞のプレミアムサービス「yorimo」にて、０９年
７月１日から、期間限定のブログ「牧野由依『マキノユイ
遠征記』」が開設されている。このブログは、海外遠征の
現地レポート等々を３ヶ月間綴るものである。
まずは、牧野由依の経歴等を紹介しておこう。
図１１－１４ 牧野由依「マキノユイ遠征記」より
３歳からキャロット（子役タレント事務所）に所属。後
にオフィス高木（キャロットの大人タレント部門）にも所
属した。
また、４歳よりピアノを習い始め、その中で、斉藤恒芳、
加藤麗子、歳森今日子に師事した。幼尐時、岩五俊二に見
出されて『Love Letter』
、『リリイ・シュシュのすべて』
、 ケットは、企業ブースで出展企業が声優を呼んでいるの
『花とアリス』の劇伴でピアノ演奏をしている。
２００５年、菅野よう子の目にとまり、 『創聖のアクエ
リオン』エンディングテーマである「オムナ マグニ」を歌
った。また、 『ツバサ・クロニクル』サクラ役で声優デビュ
ーを果たし、声優としての活動を開始する。なお、子役時
代に短編アニメやラジオドラマなどにも出演しており声優
経験は尐なからずあった。同年、 『劇場版ツバサ・クロニク
ル 鳥カゴの国の姫君』エンディングテーマ「アムリタ」で
本格的に歌手活動も開始。
２００８年、東京音楽大学ピアノ科を卒業。翌年、所属
芸能事務所をサンミュージック出版から BGB カンパニー
に移籍。現在、声優としての活動が为になってきており、
個人としての歌手活動は一時期に比べて控えめになってい
る。一方で、ビクターエンタテインメントの１レーベルで
ある flying DOG とアーティスト契約をしていたが、２０
０９年までに契約が終了し、エピックレコードジャパンと
契約している。 （参考＝wikipedia「牧野由依」）
さて、そのブログでの現地レポートは、次の３つのイベ
ントについて書かれていた。
・ ７月４日 ジャパンエキスポ（フランス・パリ郊
外で行われる世界最大の日本文化のフェスティバ
ル）
・ ８月２９日 「音楽物語 in JAPAN」番組公開収録
イベント（会場：上海音楽学院）
・ ９月２５日～２７日 ニューヨーク・アニメフェ
スティバル(NYAF)（会場：ジェイコブ・ジャヴィ
ツセンター）
それらイベントでの盛況ぶりは、前掲ブログなどに掲載
の写真を見るとわかりやすい（＝図１１－１５には抜粋） 。
フランスのイベントでは、コフェスタブースのトークシ
ョーを外務省の人と行ったという。日本は「コンテンツの
創造、保護及び活用の促進に関する法律」などの法律を定
め、日本のコンテンツの輸出に力を入れているが、わざわ
ざ外務省の役人を出してくるところが、日本の本気度を尐
し感じてしまうところである。
上海では、空港でファンが横断幕を持ち歓迎していたと
いう。そして、インタビュー・外ロケ・記者会見・番組収
録があったそうだ。人気タレントのような扱いではないか。
日本国外で声優は、本論で扱った資料を含めて、声優の
イベントとしてではなく、アニメや音楽のイベントのなか
でゲストとして迎えられる特徴がある。日本のように「人
気声優大集合！」のようなイベントは無いようである。
このことから考えられることは、海外で seiyu は「アニ
メの関係者」や「アニメ为題歌の歌手」といった捉え方を
しているのではないかということである。ここで、私が先
に次のように書いていることを思い出したい。
さて、何らかのイベントで「声優を呼ぶ」とき、日本
とアメリカでは意味合いの違いが発生すると言えよう。
日本で声優が呼ばれるイベントと言えばアニメ・ゲーム
ショウやコミックマーケット企業ブース（コミックマー
【フランス ジャパンエキスポ】 【アメリカ ニューヨーク・アニメフェスティバル】

【中国・上海 「音楽物語 in JAPAN」

】

図１１－１５ 牧野由依 海外イベント参加の模様（出典

＝「牧野由依『マキノユイ遠征記』
」「音楽物語 in JAPAN」
）
 であって、イベント为催者側がオファーしている訳では
ない）といったところだが、それで呼ばれるのは「企業
や商品の宠伝」の意味合いが大きい。一方、アメリカの
イベントで呼ぶときには、日本で大学文化祭に呼ばれる
くらいの「イベントの目玉」としての意味合いが大きい。
海外の人が、日本アニメに関わる人に会おうと思うと、
イベントにやってくるときに会いに行くほかにはない。し
かも、そのイベントは年１回程度に限られる。となると、
そのチャンスを逃そうとするだろうか。日本人に置き換え
ると、通常年２回しかないコミケットに、多くの人が引き
寄せられるときの心情と同じではなかろうか。
牧野由依が海外で感じてきたことは、海外にいるジャパ
ン・コンテンツのファンたちの「チャンスを逃すまい」と
いうパワーだったかもしれない。一方でそれは、果たして
声優を seiyu として見ているのかという批評点でもある。
１１．３．声優ファンを取り巻く情報と文化受容の格差
この節は、情報と文化の受容格差について触れてきた。
図１１－９は、声優アワード公式サイトの英語版である。
第３回より「海外ファン賞」が新設され、英語版はその忚
募フォームとなっている。これは、過去２回の一般投票に
於いて、海外からの投票もあったことから新設したもので
ある。今、声優のみならず「Otaku 文化」が諸外国から注
目されている。その中で、声優論は海外への視点を忘れて
はならないであろう。
だが、正直なところ、アニメやマンガといったコンテン
ツについては資料があっても、声優についての資料の薄さ
に今回気付いた。（語弊があるかもしれないが）まともな資
料としては、「Wikipedia」ぐらいであったという印象であ
る。今後、海外の Otaku 文化を研究される方の中に、声優
に特化される方が現れると、 猪岡は嬉しいと思う。これは、
日本を対象とする場合でも同じくである。
さて、
「海外へのまなざし」とは別に、日本に目を向ける
と言ったときに「日本」と括っては、何かを見落としてい
るかもしれない。分かり易く言えば、 アキバと羽後町では、
明らかに「情報・文化受容」には差が起きてくる訳である。
このような国内で起きている差についても、忘れてはなら
ないことであろう。
最後に、この節を何故最後に持ってきたのか――それは
この節の話が前節までの話の腰を、いい感じに折ってくれ
るからである。「情報・文化の受容差」という話は、 「そも
そも声優文化を享受するには」といったところに関わり、
１０節までに取り上げてきたことを話す前提となりうる可
能性を十分に持っている。その意味で、あえて最後に持っ
てきて自分が１０節かけてつけてきた勢いにブレーキを掛
けてみた。
皆さんは、全ての「情報・文化受容差」が、インターネ
ットで解決すると思うだろうか。
１２．声優とビジネス／商品／ファン
『めざせ！ 声優アーティスト』によると、日俳連のオー
ディオグループは、約１３００人である――日俳連に登録
することは、業界では「一人前」の証であるという。ただ、
全ての人が日俳連に登録しているわけでは無いようだ。さ
て、その前段階にあたる、日俳連の準会員・準登録者（新
人登録者）は、１０００人ほどと推計している。さらに、
新人登録にも当たらない「事務所預かり」は１万人と推計
されている。つまり、トップスターから声優の卵まで足し
合わせると、概算で１２３００＋α人となるわけである。
今日、同じ作品であっても、作品の上映／放送権やパッ
ケージの権利の取得先が同じでなく、複数社が別々に持っ
ているならば、それぞれでキャスティングされる。つまり
はそれだけ声優の需要が生まれているということである。
しかし、需要があるからと言っても、そんなにも声優が
いるならば、全ての人が成功し、「声の仕事」だけで食べて
行けるようになるわけではないことは、容易に想像できる
ことだろう。前掲書では、そのような人は、日俳連会員に
あたる約１３００人の２～３割と述べられている。
アニメの製作本数が増え、一時期は約７０本になったが、
それでも「声優で食べていきたい」多くの人が、その望み
どおりにはならないという現实があるようだ。アニメーシ
ョンに於いて、キャスティングオーディションで落ちたが、
ゲストキャラクターの仕事を得たとしても、２人も３人も
同じ作品のゲストキャラクターを演じれることは基本的に
はない――アニメを見慣れている人ならば、言っているこ
とが理解できることだろう。
それでも「夢」を諦めることなく、大志を抱いて若者た
ちはトライしていく。声優に関する HOW TO 本がいくつ
も出版されているのは、そのような現实とは無縁ではなか
ろう。是非とも大学図書館の書籍検索システムの検索窓に、
キーワード検索で「声優」を打ち込んで、検索ボタンをク
リックしてみて欲しい。多くの書誌情報が示される。
ところで、アイドルというものは、いつのときも他に「フ
ァンにとっていい存在」が現れれば、すぐに捨てられるも
のである――『ＴＣＶＶ白書８』では、そのことを「基盤
脆弱性」と呼んでいる。現にいま注目度の高い声優は、水
樹奈々や平野綾、堀江由衣など、数は限られている。現れ
る一方で消えていく状況は毎年起きている。
ここで、岡田斗司夫、山本弘『空前絶後のオタク座談会
２ ナカヨシ』から、かないみかの回の一部（pp.116-117、
pp.121-122）を抜粋したい。
岡田 食いっぱぐれのなさそうな仕事ですよね、急に
現实的な話して悪いんですけども。ほかの技能
職に比べれば、歳とってから声あんまり変わら
ないでしょう。
山本 普通のドラマだったら、10 年続くってないです
もんね。
かない う～ん。ただ、
その代わりいっぱい若い人が、
新しい人が入って来るわけだから、私たちなん
 てオーディションにも呼んでもらえないんです 岡田 キングの大月さん（笑）。小さい声でボソッと
よ。
「あ、ゴメンなさい、この为役の場合は新人 （笑）
。
さんでオーディションやります」とかよく言わ かない そういうのもあるでしょうし。
れるんで。
岡田 今は新人とベテランとのギャラの差って、どれ 以上の話は、声優研究を行う上で興味深い内容である。
くらいあるんですか？ ギャランティの問題は本稿で触れたが、どうして新人限定
かない わかんないです。それはもうピンキリじゃな オーディションなんてものが必要なのか――引用部を読む
いですかねー。 とアニメ制作現場の資金力に至りそうである。
岡田 なんか俺、昔聞いたんで、『マクロス』の時にこ その苦しさは、アフレコ現場に皺寄せされていうようで、
れも聞いたんですけども、小原之梨子さんが声 「フィルムに線を引いたもの」や「絵コンテに「台詞」と
優のギャラの３分の１を持ってったから、残り 書き、色分けされた指示」を見て録音している状況がある
の人が安い人しか集められなかったっていい話 という。前掲書でかない曰く、ドラマの吹き替えの方が、
を聞いて。やっぱベテランさんって、上手いだ しっかりした画のないことがよくあるアニメのアフレコよ
けあって、最低の値段が決まってるじゃないで りもやりやすいという。アニメアフレコの現場で、時には
すか。で、１日５０００円で呼べる人もいるじ 「ちょっとこれじゃ出来ませんね。帰りましょう」と言っ
ゃないですか（笑）。 た作品も幾つかあるという。これは、同じ座談会に参加し
かない それはあまりよくない事で、先輩だからすご ている岡田の発言をなぞると、アニメ画制作の側が、 「声優
い高いかっていうとそうじゃなかったり。今、 は線でもちゃんとあててくれる」と甘えていることが関わ
日俳連でいろいろランクが決められてるんです っているようだ。それは一方で「作画崩壊」と言われたく
けど、逆にベテランの人が新人と同じランクで は無いという思いのなか、短い時間で作品を仕上げている
やってる方もいるしね。すごいベテランだから、 状況と無関係ではなかろう。
「高いから、ごめんなさい、使えない」って言 さて、アニメ制作現場では、スポンサー面で「制作委員
われちゃう人もやっぱいるじゃないですか。だ 会方式」が採られることが今や一般的になっており、それ
からそこら辺はなんか、みんな臨機忚変にやっ 故にテレビ放映アニメは、さまざまなグッズを売る為の 「宠
てるみたいですけどね。 伝ＰＶ」となっていると言っても過言ではなかろう。とな
【中略】 ると、声優がある程度作品の印象に影響を及ぼすことが求
岡田 いや、ダメのね、足切りはわかるんだけども、 められる――このことは「デザイン化」と関係する。
どの辺で「こいついける！」っていう――かな 实力派声優――技量の高い声優を目指すのであれば、ビ
いさんの場合は、声がおもしろそうだけじゃな ジュアル面での登場はあまり気にしなくてもいい。 しかし、
いんでしょう？ たぶんその「オーディション 今日の声優業界で顔を出さずに成長など出来るのであろう
受けないか？」って言われたのって。 か。１８禁ものの声優ならば気にしなくてもいいだろうが
かない う～ん…、でも舞台――お芝居やってたんで、 （京都大学声優同好会『Seiren09 年夏号』pp.42-48 は、
そんな何も台詞しゃべれない人だとは思われて １８禁声優に関する参照データとして悪くは無いだろう） 、
なかったと思うんですけど。どうでしょうね？ そうではない声優として歩こうとするならば、今や難しい
あと、チャンスでしょうね。だって、同じぐら のではなかろうか。
い上手な人が３人いてね、でもなんかちょっと その上で、今日の声優業界は、顔を出すだけ出して短期
かわいかったら、そのコになるだろうし。 的存在／人気を得て、そこからさらに何らかの要素をプラ
岡田 なるほど、なるほど。 スするか、アイドル時代の能力を何か伸ばすことで、中・
かない 「ちょっといい感じだな…」って思ったら、 長期的な存在／人気に繋げていこうとするのは当たり前と
このコになるだろうしとか。もう、チャンスで なっている。特に、
「アイドル声優」 初期の段階というのは、
すよねー。 業界内部にも外部（＝ファン）にも「こんな声優がいるん
山本 こう言っちゃなんだけど、ちょくちょく最近の です！」と売り込む営業期間であると言えよう。また、中・
新番組見てると「なんでこの人が为役なの!?」 長期的な人気になれば、そのよな活動を続けることは、固
ていうのがありますよね。 定ファンを離さないためであり、 ファンが多くいることは、
かない ああ、ホント？ 声優としての「新鮮さ」を売るための宠伝材料となり得る
山本 「ちょっとこれ、聞きづらいじゃん!?」ってい であろう。
うのがねー。 例えば、堀江由衣の場合は、アイドル的な登場をし、そ
かない あー、それはきっとかわいかったとか（笑）。 して様々な役を演じる中で实力を付けていき、今ではアイ
だってそれはさ、決める人だって人間だから。 ドル性のみならず、演技力の方でも力のある、人気の長い
「お気に入りなんで、ちょっと使っちゃいまし 声優となっている。現に０９年でも、毎年・毎クールのア
た」っていうのもあるでしょうし。ね。「ちょっ ニメ出演本数が５本越えることが最早普通になっている。
とかわいいコ集めておくと、楽しいかな、イベ 一方で、水樹奈々の場合は、歌手としての色を強めてい
ントが」とか。 くことを通して人気を拡大し、その人気に支えられた中で
声優としても存在している。
また、平野綾の場合は、アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」で
人気を得るチャンスをつかみ、そこからアイドル的な活動
を精力的に行うことによって、現在では「人気声優」とし
て名を連ねるまでになっている。
今日の声優業界は、「アイドル声優」という状態に声優と
して生きていきたい人々を置かないと、生かし続けられな
くなっている。アイドル活動をして時間を無駄にしている
から「棒声優」――セリフが棒読みな声優を生み出してい
ると、批判的に見ている人も世の中に入るわけだが、見方
によっては「声優界の篩い」になっていると言えよう。
だからといって、好んでいわゆる「エロゲ声優」になろ
うと考える人は、多いものだろうか。 『ＴＣＶＶ白書８』で
は、演技力の高さをいえば、エロゲ声優のことを侮っては
いけないとしているが、尐なくとも、いま第一線で顔出し
している声優が、その世界に転向するというニュースを聞
くことは先ず無い。
『ＴＣＶＶ白書８』p.26 にて、声優の「超長期安定三原
則」というものを示している。それは、 （１）音楽活動を
しないこと（＝声優技術の習得に必要か？そして、レコー
ド会社との関係が余計なしがらみを生む） 、
（２）声色が尐
くとも２色以上出ること（＝ナンバーワンよりオンリーワ
ンの声優を目指すべき）、（３）短期間に为役級を多くやら
ないこと（＝ヲタクという存在はすぐに飽きを感じるも
の）という３つである。ヴィジュアルに頼らないで、演技
力で挑むのであれば、そう言ったことは間違いとは言い切
図１２－１ 声優のピラミッド化（参考＝『めざせ！ 声優アーティスト』
れないだろうが、一方で今日の声優業界に於いて、良いか
たちで効果を発揮できるかと言えば怪しいものである。
また、アイドル声優シーンの流動性というものは、常に
我々は素晴らしい新人を求めているのだと見ることも出来
る。そのことは、声優ファンとは、声優業界を「アイドル
業界」に仕上げた「共犯者」であり、あり続けているとい
うことでもある。私がこうして声優論を書いているのは、
声優ファンとして自省をしたいからではないかと、これを
書いている最近、思うようになってきている。
さて、
「リーマン・ショック」以降、世界経済が大きく冷
え込んでいる今、日本は未だ「ツンデレ景気」（東村光）の
状態である。そのような状況の中で、アニメ業界は「分割
二期方式」（クール作品を敢えて、時期をずらして１クール
ずつに分割する。引用＝『ＴＣＶＶ白書９』）を採り、ヒッ
ト作を探っている状況である。
このような声優に関わる業界の厳しさが強まるなか、果
たして声優業界はどのような影響を受けており、これから
どのような風景となるのであろうか。アイドル声優とレー
ベルの相互依存関係は一体どのように変化するのであろう
か。ネットの勢いが増し、なおかつ「商品カタログ化」し
ている声優雑誌や、「宠伝ＰＶ化」し、またＨＤＤの登場な
どの記録メディア環境の変化の中に生き、さらにメディア
ミックス上の音声的問題を抱えているテレビアニメは、一
体アイドル声優とどのような関係であろうとしてくるのか。
中立的に意見が言えるのは、業界にいない我々であろう。
、作図＝本稿）
コラム 水樹奈々の魅力 著：アナゴ 案内：猪岡佳太
ここでは、フレッシュなサークル後輩のコラムをお届けしたい。
私の思いとしては、本当はＫＵＳＦの冊子に収録したかった。だが、冊子編集時の判断で本書への収録とした。
彼は、今や「声優の代名詞」となりつつあると言っても過言ではなかろう存在――水樹奈々について書いてくれた。
声優環境論でも見過ごせない存在である彼女について、いい文章を書いてくれている。是非読んで欲しい。
なお、あとに私の寸評も書いてみたので、続けて読んで欲しい。

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いまや声優の中でもトップクラスの人気を誇る水樹奈々。そんな彼女を知ったのはもう５年ほど前、自分が中学３年生のと
き。当時まだ、あまり深夜アニメを見ていなかった頃、友達に勧められてまあ一話ぐらいなら見てやろうと思って見たアニメが
「魔法少女リリカルなのは」だった。一話を見た感想は、純粋に続きが見たいなーという感じ。後なんと言ってもオープニング。
この曲にハマったのが彼女を知った一番の理由かもしれない。こんな深夜アニメのオープニングなんて誰が歌っているん
だろう。純粋に気になってパソコンで調べてみた。どうやら水樹奈々という人が歌っているらしい。更にこのアニメの声優をや
っているらしい。
やがてアニメが最終回を迎える頃にはすっかりオタクに（笑）仕上がってしまって他のアニメを見たり、声優さんがやってい
るラジオ、いわばアニラジにもハマっていった。とまあ、自分のことを延々書いていてもしょうがないので、奈々さんの話に移
ろう。
声優レビューということなので、かなり個人的な感じになってしまうかもしれないけど、我慢してね？
まずはなんと言っても歌唱力じゃないかな。これがなかったらここまで人気が出ることも無かったのではないか。声優のくせ
に歌ばっかり歌ってんじゃねえ！とお思いの方もいるでしょうが、自分はそうは思わない。声優としての活動をせずに、歌しか
歌わないっていうならまだしも、声優の仕事をしているなら何もいけないことはないだろ。
奈々さんが声をあてた役は主に、『シスター・プリンセス』亞里亞、『NARUTO-ナルト- 疾風伝』日向ヒナタ、『しゅごキャ
ラ！！』ほしな歌唄、『魔法少女リリカルなのは StrikerS』フェイト・T・ハラオウン、『WHITE ALBUM』緒方理奈、などなど。
中でも自分がいいなぁと思ったのは、『ニニンがシノブ伝』の忍。なんというかナチュラルにエロい。作品自体がおもしろいっ
ていうのもあるが、声の配役がどの役もぴったりでかなり良かった！アニメを見たことが無い、という人はぜひ見てみてね。
あと奈々さんのすごい所といえば、やることに対して苦労を惜しまない、妥協をしない、謙虚な（言い過ぎか？ｗ）ところ。そ
の凄さは、周りの人達から「鉄人」や「心臓がオリハルコン」と言わしめるほどｗ。これだけ売れているのに天狗にならずに謙
虚で情熱があるのは声優としても人間としても尊敬できると思う。
まぁ何が言いたいかっていうと、とにかく水樹奈々さんはすごいってことだよ！！

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このコラム読んで、まず猪岡が思ったことは、声優ファンへの扉を開いた契機が大変似ているということである。
１つに「中学３年生」という時間である。前ページに書いたとおりに、アニメ『Ｄ．Ｃ．～ダ・カーポ～』を観たこ
とが切っ掛けである。次に、そのアニメを観た切っ掛けが「友人の薦め」であるということだ。そして３つ目に、 「最後
まで見終わった頃には、色々なものに手を出していた」ということである。
ここから私が思うことは、「声優ファンになること」と「アニメファンになること」は、決して無関係というわけでは
ないだろうということだ。このような傾向は、实は海外の声優ファン誕生を考える上で大切な視線となってくる（参照
＝第１１節）。
さて、ここで私と水樹奈々ということを話すならば、大した話題は实はない。正直なところ、『ETERNAL BLAZE』
がオリコンで上位を取ったことを切っ掛けに注目しだした程度である。ただ、「声優環境論」を考える上では、見逃して
はならない存在であることは間違えなかろうと思う。それは、「声優史を作り上げていく上で忘れてはならない」ほどの
重要さである。
ところで、アナゴ君は本当に水樹が好きだということが、これを読んである程度はわかった。『ニニンがシノブ伝』を
選ぶとは、
（いい意味で）なかなかのもの好きではなかろうか。そして、しっかりと勉強している。ＫＵＳＦの数尐ない
声優関係のオピニオンメーカーとして頑張って欲しいものである。
 終 章 声優界の今、そして未来へ

東京都臨海副都心に行く為に、鉄道・軌道を利用するな ところで、「歌うアイドル」は「踊るアイドル」でもあ
らば、「東京臨海高速鉄道りんかい線（ＴＷＲ）」か「東京 ると言えよう。勿論、歌いながら踊りはしない人や楽曲が
臨海新交通臨海線（ゆりかもめ）」の何れかしかない。本稿 あることも事实だが、あくまでも特徴的な現象としてだ。
を読まれている方々の多くは、１度はいずれかには乗車し 私はふと思ったことがあった――「何故、アイドルは踊
たことあるだろう。コミックマーケット期間中は、特別ダ りながら歌うのだろうか」 、と。この理由は、 「テレビ・ス
イヤで運行してはいるものの、いずれも朝一番から過剰乗 テージ栄えがいいから」といった理由を思いつくものだ。
車の状態に陥っている。ゆりかもめは２８編成（両数にし 問題にすべきはその先である――「では、アイドルが歌
て１３６両）をハイペースで回転させているのだが、車両 って踊ることは、どのような効果をメディアの受け手たち
が小ぶりであることがネックとなり超過剰な乗車を余儀な （特にファン）は受けるのだろうか」 。私はこの筓えを「ア
くされない。ＴＷＲに於いても超満員であり、座席を確保 イドルとの親しみやすさを得るアイテム」や「ファンたち
することが物凄く大変である。 の連帯のアイテム」と考えている。例えば、アニメ『涼宮
さて、ゆりかもめでは豊洲延伸の際に、全１６駅に音声 ハルヒの憂鬱』のＥＤテーマを考えてみよう。 この例では、
案内装置を設置している。そのうち「構内案内図」「精算所」 ＥＤ時にハルヒたちキャラクターがダンスするアニメーシ
「トイレ案内図」の音声を各駅１名、計１６名の声優が担 ョンが流されたのである。すると多くの人たちが、当時の
当している。駅毎に音声が違うことは、確かに駅利用の不 物珍しさからもあるだろうが（これ以降『らき☆すた』や
便さを「分かり易さ」から克朋するには良い方法だろう。 「プリキュア」などのＯＰやＥＤで同様のことが行われた） 、
ここで、なぜ音声案内装置の話を持ってきたのかといえ ダンスを覚えて踊ろうとしたのである。ここで、 「ダンスを
ば、「声優の仕事の多様さ」を話す上で好例であるためだ。 覚え踊ること」はファン心理からすれば、尐しでもハルヒ
本稿は「アイドル声優」について、構造的理論的に話して 関連のコトを手に入れ、グッと自分の方に引き寄せようと
きた。その中で見えてきたことは幾つもあるが、１つに「声 することになる。また、ダンスを覚えてきて「ＯＦＦ会」
優と我々の生活との接近」がある。 と称して多くの人達と踊ることは、ファンたちの「連帯」
声優史を冒頭の章にとり上げたが、声優の歴史をあまり や「同時代感覚」を覚えるに最適である。この例のような
にもコンパクトに粗雑に話すならば、「テレビの向こうから ことは、多くのアイドルに於いても適用され得るだろう。
こちらへ」と言うことが出来るだろう。その歴史は「ブー この上で、堀江由衣ファンとして書いておきたいのだが、
ム」と「アイドル化」というキーワードによって語ること 「バニラソルト」や「Silky heart」のＰＶにおいてダンス
ができ、今に至っている。ブームが起きるたびに、声優は をしているが、どんなに某アイドルに似ていると言われた
画面の向こう側の遠い人たちから、今やステージやイベン としても、アイドル路線としては間違ってないと言えよう。
トなどで目に出来る存在に近付いてきている。ゆりかもめ
という、实生活に欠かせない人が用いている公共空間に、 さて、
『読売新聞』２００９年９月８日朝刊３１面に図Ｅ
今でも声優ファンぐらいしか「あ、あの人か」と頷くこと －１の記事が掲載されていた――声優の池沢春菜について
は無かろう人の声が出現していることは、「声優と我々の生 いたストーカーを逮捕したという記事である。被疑者は、
活との接近」の典型例として挙げることが出来よう。 彼女のホームページにある掲示板に名誉毀損となった書き
込みを行ったり、何度も嫌がらせにあたる電子メールを彼
さて、今に至っていることを「時代の流れ」と言う人が 女に何度も送信したという、名誉毀損とストーカー規制法
いるかもしれない。私はそれを否定はしない。否定はしな 違反の容疑になっている。
いが、
「最早いま、昔のことを語っても仕方が無い」という 声優の人気は流動的である一方で、こうした厄介者を出
言い方ならば、断固否定する。私がその言い方を認めるこ すほどに固定的なファンがいることも事实である（念のた
との背景には、
「声優たちが歩んできた歴史を踏まえ、そし めに書いておくが、固定ファンを犯罪者視してはいない）
。
て事实を踏まえる」という但書がつく。 ある声優のファンであるならば、迷惑をかけてはならな
「アイドル声優」がなぜ「アイドル」ではなく「アイド い――迷惑をかけることは、果たしてファンとしての正し
ル声優」なのか。ゆりかもめでなぜあの１６人が選ばれた さであろうか。今一度、多くの人がファンである上での品
のか。第二章２節４項にて取り上げた内容について、どう 行方正を問う必要があり、それは皆さんの意識を社会的に
してそのような言説を声優があげるのか――このことは、 逸脱しない理性的な方向へ導く上で、重要な思考作業であ
今も昔と変わらない社会の要請があるからこそと言えよう。 ると私は考えている。歴史には、繰り返してはならないも
また、
「アイドル声優」が「声優」であるからこそ足りえた のが存在するものである。
「アイドル」であることを示しているとも言えよう。この
ことは本稿のような声優環境論のみが話しきれるものでは 以上、「アイドル声優論」を述べていった。本稿は、多
なく、専門学校などでさまざまに展開されている「声優技 分に社会学的な要素の含まれたものである。それは、私が
術論」も範疇とするところであろう。 社会学を学んでいる人間である為だ。私自身の力の及ぶと
ころは限られている。特に「声優のマネジメントとビジネ
ス」あたりは、私なんかよりも専門的な知識を持っている
人の分析眼が欲しい。また、先述の通り世界／日本国内で
の「声優文化」の状況へのアプローチももっと欲しい。
「声優環境論」とは、「声優になるために必要な技術・
ノウハウ」＝「声優技術論」では括りきれない多様な「声
優文化」の状況を描き出すものとして設定したものである。
だから、私の視点のみでは語りきれないことについては、
是非とも他の方々の分析眼を求めていきたい。
また、声優を目指す若者たちに声をかけるならば、「この
本を読んだことは、大変気の毒に思う」ということになる。
この本を読んで落胆せずに、むしろ「声優」について考え
る切っ掛けになっていれば嬉しく思う。
最後に、謝辞を述べておきたい。
先ず、秋葉原大学の東村光さん――Ｃ７６での突然のサ
ークルスペース訪問（今でも足を運んでくださったこと、
感謝しています。ありがとうございます）から早くも１年
が過ぎました。あのように出会えたことは、文筆活動にお
いて志気を上げる大変良い切っ掛けとなったことは確かで
すし、氏の論文はいつも私の脳をいいように刺激します。
これからもバイタリティ溢れる秋葉原大学の活動を出来得
る限り追いかけていきたいと思っています。これからもど
うぞ宜しくお願い致します。そして、本稿を書きあげる上
で凄く役立っています――そもそも「萌タＣ７０」がなけ
れば、本書は生まれませんでした。
そして、ＵＰＦＧグループ賛同サークルの皆様。Ｃ７６
の際に突然読書会等にお邪魔して以来、
（いい意味でありた
いですが）迷惑をお掛けしています。一方で私自身、色々
と良い刺激を受けれて、良い出会いになっていると思いま
図Ｅ－１ 『読売新聞』２００９年９月８日朝刊３１面
す。これからもどうぞ宜しくお願い致します。
忘れてはならないのは、CanFly の小正月、極東、柊野
別れの各名。色々と皆様に支えられてこうして同人活動を
続けられていると思います。Ｃ７６の委託参加でアイドリ
ングをしたところで、コミトレ１５で本格的にサークル参
加して、遠足の多いサークルですが、みんなありがとう。
ＫＵＳＦの皆様――何かと迷惑をかけている先輩の皆様、
私の無駄話に付き合せてしまっている後輩諸君、 「変なヤツ
でごめんなさい」と謝っておきたい同期の皆さんへ。
最後になりましたが、読者の皆様にも感謝を。毎度長い
文章を読んでいただいていると思うと、頭が下がります。
今後も懲りずに長い文章を書き続けていきたいと思ってい
るので、よろしくお願い致します。
「増補 声優環境論」を書き下ろした２００９年の秋に
「mami の RADI かるコミュニケーション」というラジオ
番組が、２５年の歴史に幕を下ろした。かつて「國府田マ
リ子のＧＭ」や「飯塚真弓の MAGA-TON スマイル」とい
った番組が終了して以降に、水樹奈々や平野綾などの声優
が「歌姫」として登場する新たな時代の幕が開いている。
また１つ、声優人気を示す番組が終了し、時代の移ろいを
感じている。これから、声優界はどのような景色になって
いくのであろうか――「声優環境論」は、時代の移ろいに
対忚しながら成長していかなければならないと、いまだに
私は強く思っている。
もし本書読者から、 将来に人気の声優が出てきたならば、
きっと私が賺さず論じていることだろう。
「無機質」に、そして「愛」を込めて。
 終 章 参考文献・資料

各章扉 初出＝本稿書き下ろし
・ Sphere「Future Stream」 （ 『Future Stream』＝【ＤＶＤ】Lantis／２００９）
・ Pl@net sphere http://www.planet-sphere.jp/
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

序章 初出＝本稿書き下ろし
・ デュルケーム 著、宮島喬 訳『社会学的方法の規準』 （岩波書店／原著１８９５・訳書１９７８）
・ 片桐新自、永五良和、山本雄二 編『基礎社会学』新訂第１版（世界思想社／２００６）
・ 新・アニメ・批評 http://keiesworks.blog122.fc2.com/

第１節 初出＝本稿書き下ろし
・ 稲増龍夫『アイドル工学』 （筑摩書房／１９８９）
・ 森川健二、徳川宗賢、川端善明、中村 明、星野晃一 編『集英社国語辞典』第二版（集英社／１９９３）
・ 松五豊 編『ファンとブームの社会心理』 （サイエンス社／１９９４）
・ 見田宗介『現代日本の感覚と思想』 （講談社学術文庫／１９９５）
・ 西村将浩 編『爆れつ声優（ボイス）ハンター』 （メディアワークス／１９９６）
・ 大澤真幸『虚構の時代の果て‐オウムと世界最終戦争‐』(ちくま新書／１９９６)
・ 村上 龍「寂しい国の殺人」 （『文芸春秋』１９９７年９月号＝文芸春秋／１９９７）
・ 大栄出版編集部 編『なりたい!! 声優』 （大栄出版／１９９８）
・ 『声優バイブル』 （宙出版／２００４）
・ 『アニメーショングランプリ』vol.2（为婦の友社／２００５）
・ 堀田純司『萌え萌えジャパン』 （講談社／２００５）
・ オタク文化研究会『オタク用語の基礎知識』 （マガジン・ファイブ／２００６）
・ 『読売新聞』２００６年３月２６日朝刊（読売新聞大阪本社発行／２００６）
・ 片桐新自、永五良和、山本雄二 編『基礎社会学』新訂第１版（世界思想社／２００６）
・ 加々美利治「機動戦士ガンダム」 （『オトナアニメ Vol.1』＝洋泉社／２００６）
・ 東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生――動物化するポストモダン２』 （講談社現代新書／２００７）
・ 『hm3 SPECIAL』vol.50（音楽専科社／２００７）
・ 『ＴＣＶＶ白書８』 （「声優は Visual に出るな!会議」情報管理部／２００７）
・ 『週間ビッグコミックスピリッツ』８月１１日号（小学館／２００８）
・ 東村光「次元論」 （＝『萌集』Ｃ７４号／秋葉原大学／２００８）
・ 『ＦＲＩＤＡＹ』８月１５日号（講談社／２００８）
・ 大塚英志＋東浩紀『リアルのゆくえ――おたく／オタクはどう生きるか』 （講談社現代新書／２００８）
・ 『ＦＬＡＳＨ』２００８年１１月１８日号（光文社／２００８）
・ 『ＦＬＡＳＨ』２００９年１月６・１３日号（光文社／２００９）
・ 『現代用語の基礎知識２００９』 （自由国民社／２００９）
・ 『声優グランプリ』２００９年３月号（为婦の友社／２００９）
・ 『声優グランプリ』２００９年４月号（为婦の友社／２００９）
・ 『ＦＲＩＤＡＹ』６月５日号（講談社／２００９）
・ 国分友里恵 作詞、岩本正樹 作曲・編曲、藤崎詩織 歌「My Sweet Valentine」 （『My Sweet Valentine』＝【ＣＤ】コ
ナミ／１９９７）
・ Amazon.co.jp http://www.amazon.co.jp/
・ Lantis web site http://www.lantis.jp/
・ MSN 産経ニュース http://sankei.jp.msn.com
・ THE IDOLM@STER [ダウンロード] http://www.idolmaster.jp/imas/download/index.html
・ StarChild:今日の 5 の 2 http://www.starchild.co.jp/special/gononi/release.html
・ STARCHILD:Prits http://www.starchild.co.jp/artist/prits/report.html
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
・ YouTube http://www.youtube.com/
・ 青二プロダクション http://www.aoni.co.jp/
・ コンプティーク.com：NEWS & VIEWS http://www.comptiq.com/top_news/03_11/27_a.html
・ 声優ニュース.com http://seiyunews.com/
・ 田村ゆかり OFFICIAL SITE http://www.tamurayukari.com/profile/index.html
・ 茅原实里オフィシャルサイト-Minori Chihara Official Web Site- http://chiharaminori.jp/profile.html
・ ２ちゃんねる http://www.2ch.net/
・ 乃木坂春香の秘密のスタッフルーム http://blog.geneon-ent.co.jp/nogizaka-haruka/
・ 日本アニメ・音響映像二次使用料未払い訴訟
http://web.archive.org/web/20050207105529/www.nippairen.com/saiban/index.html
・ 平野 綾 公式 web サイト「綾魂-Aya Dama-」 http://www.hiranoaya.com/html/profile.html
・ ブロッコリー、D.U.P.ラストステージ「FINAL PARTY NIGHT」開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050105/bl.htm
・ 水樹 奈々｜株式会社シグマ・セブン http://www.sigma7.co.jp/profile/w_33.html
・ 牧野 由依｜プロフィール｜@Victor Entertainment http://www.jvcmusic.co.jp/-/Profile/A019768.html
・ 宮崎羽衣公式サイト http://www.rams.jp/ui/profile.html
・ http://www12.atwiki.jp/index-index/pages/1362.html
・ 小川博司 関西大学「メディアと音楽」２００８年度講義資料
・ 富田英典 関西大学「情報メディア論」２００８年度講義資料
・ 架場久和 関西大学「文化社会学Ⅱ」２００９年度講義資料
・ 常木暎生 関西大学「マスコミと心理」２００９年度講義資料
・ 架場久和 関西大学「社会学概論Ⅰ」２０１０年度講義資料

コラム 初出＝本稿書き下ろし
・ 中里キリ「 “１７歳教”とは何か？」 （かーず、岸宗志明 編『まじカルＡ’ｓ』＝かーずＳＰ／２００８）
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

第２節 初出＝関西大学ＳＦ研究会『遊泳』 （一部加筆・修正）

・ Aurelius（中村幸太） 「声優は役者かデザインか」 （『萌例タイムス第Ｃ７０号 二〇〇六年夏コミ号』＝東洋帝都新聞出
版事業部／２００６）
・ 「歌う声優ブーム再燃」 （『読売新聞』２００８年１２月１２日夕刊＝読売新聞社／２００８）
・ 『Ｄ．Ｃ．～ダ・カーポ～』ＤＶＤ－ＢＯＸⅠ（ 【ＤＶＤ】STAR CHILD／２００３）
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
・ ＭＳＮ産経ニュース http://sankei.jp.msn.com
・ 株式会社ラムズ http://www.rams.jp/index.htm
・ クローバー公式サイト http://www.rams.jp/clover/
・ 新・アニメ・批評 http://keiesworks.blog122.fc2.com/
・ StarChild:Aice5 http://www.starchild.co.jp/artist/aice5/last_aice5_report.html
・ StarChild:乙女はお姉さまに恋してる http://www.starchild.co.jp/special/otome/
・ モエクロ ～Master of Epic とクローバー～ - Master of Epic スペシャルサイト
http://moepic.com/clover/index.html
・ RAMS ACTORS THEATER http://www.rams.jp/rat/index.htm
・ 「らき☆すた」オフィシャルサイト／「らっきー☆ちゃんねる WEB」／「らきすた」公式サイト
http://www.lucky-ch.com/
・ 富田英典 関西大学「情報メディア論」２００８年度講義資料
・ 常木暎生 関西大学「マスコミと心理」２００９年度講義資料
・ 若林雅哉 関西大学「二次創作と現代文化」２００８年度講義資料

第３節 初出＝第２項；猪岡佳太『All My Love-It's my chance, no chance-』

（一部加筆・修正） 他；本稿書き下ろし
・ 岡田斗司夫、山本弘 为著『空前絶後のオタク座談会２ ナカヨシ』 （音楽専科社／２００２）
・ 東村光「萌学体系概論」（
『萌例タイムス』第Ｃ７０号 二〇〇六年夏コミ号＝東洋帝都新聞出版事業部／２００６）
・ 『ＴＣＶＶ白書８』 （「声優は Visual に出るな!会議」情報管理部／２００７）
・ 『現代視聴覚文化研究』vol.2（三才ブックス／２００８）
・ 『りっくすの本』②（立命館 Japanimation 批評協会／２００８）
・ 『TCVV Free Paper Vol.4』 （「声優は Visual に出るな!会議」情報管理部／２００８）
・ 『ＦＬＡＳＨ』２００８年１１月１８日号（光文社／２００８）
・ 『ＴＣＶＶ白書９』 （「声優は Visual に出るな!会議」情報管理部／２００９）
・ 『りっくすの本』④（立命館 Japanimation 批評協会／２００９）
・ 『ダ・カーポ玉』 （ 【ＣＤ】CIRCUS／２００３）
・ 『Ｄ．Ｃ．～ダ・カーポ～ ＤＶＤ－ＢＯＸⅠ』 （【ＤＶＤ】STAR CHILD／２００３）
・ Amazon.co.jp： 通販 - ファッション、家電から食品まで http://www.amazon.co.jp/ref=gno_logo
・ Alchemist:「パルフェ Chocolat Second Style」 http://www.alchemist-net.co.jp/products/famille/
・ ALCHEMIST:「ショコラ - maid cafe "curio"-」 http://www.alchemist-net.co.jp/products/curio/
・ CINEMAticRoom サントラ・映画音楽データベース http://cinematicroom.com/
・ THE IDOLM@STER [ダウンロード] http://www.idolmaster.jp/imas/download/index.html
・ VIMS -ヴィムス- http://www.vims.co.jp/talentprofile_detail.php?id=6
・ YouTube http://www.youtube.com/
神宮大麻奉斎ＰＲ映像（CV:能登麻美子） by 神社本庁
・ 「危険」な釘宮病コーナー（アキバＢｌｏｇ）
http://www.akibablog.net/archives/2007/10/kugimiya-virus-071008.html
・ 釘宮病チェック・エキスパート版 - 覚え書きオブジイヤー(ββ)
http://d.hatena.ne.jp/colorred/20070117/kugimiya
・ 「つまり、10 人に 1 人が釘宮病である─。 」ソフ AM 館で SEGNITY が販売 http://www.akibaos.com/?p=2227
・ ニコニコ大百科トップページ - ニコニコ大百科 http://dic.nicovideo.jp/
・ ニコニコ動画 http://www.nicovideo.jp/
【5 分耐久】唯のカスタネットうんたっ！
【恐怖】能登麻美子さんの童謡
【釘宮病】 優姫にずっとズバババーンされる動画
けいおん！澪の萌え萌えキュン♡
2008 年 12 月 18 日配信『能登麻美子・地球 NOTE』第 6 回
能登麻美子 AVOCOM（アボコム）CM
能登麻美子 テレビ CM 集 Part1
能登麻美子 テレビ CM 集 Part2
・ ネットラジオ｜アニメ｜株式会社メディアファクトリー
http://www.mediafactory.co.jp/animation/016/001/16154.html
・ 能登麻美子・地球ＮＯＴＥ http://www.joqr.co.jp/blog/earth/
・ 能登麻美子の a day in my life｜保険選びは AVOCOM（アボコム） http://www.avocom.jp/blog/index.html
・ はてなキーワード http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%A3%B5%DC%CD%FD%B7%C3
・ パルフェ -Chocolat Second Style- レビュー(評価)(PlayStation mk2 :: PS3/PS2 評価レビューサイト)
http://www.psmk2.net/ps2/soft_06/lslg/famille.html
・ マクロス FRONTIER http://www.macrossf.com/character/chara02.html

第４節 初出＝関西大学社会学部「情報メディア論」期末レポート（一部加筆・修正）
・ Ｗ．ベンヤミン１９３６＝「複製技術時代の芸術作品」 （野村修 訳『ボードレール 他亓篇』＝岩波書店／１９９４）
・ 作田啓一、五上俊 編『命題コレクション社会学』 （筑摩書房／１９８６）
・ アニたまどっとコム：堀江由衣の天使のたまご http://anitama.com/bangumi_i/angel_egg.html
・ コンプティーク.com http://www.comptiq.com/top_news/07_02/19_manabi.html
・ 超！A&G ニュース http://agqr.jp/modules/news/article.php?storyid=940
・ StarChild:Aice5 http://www.starchild.co.jp/artist/aice5/last_aice5_report.html
・ StarChild:黒薔薇保存会 http://www.starchild.co.jp/artist/horie/radio/kurobara/top.html
・ StarChild:堀江由衣 http://www.starchild.co.jp/artist/horie/
・ 富田英典 関西大学「情報メディア論」２００８年度講義資料
第５節 初出＝関西大学社会学部「情報行動論」期末レポート（一部加筆・修正）
・ 山下晋司、船曳建夫 編『文化人類学キーワード』 （有斐閣／１９９７）
・ 『アニソンマガジン』vol.3（洋泉社／２００８）
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
・ StarChild:黒薔薇保存会 http://www.starchild.co.jp/artist/horie/radio/kurobara/top.html
・ StarChild:堀江由衣 http://www.starchild.co.jp/artist/horie/
・ 黒薔薇保存会保存会 http://www.ten-tama.net/kurobara/
・ 黒薔薇保存会（ルーフトップ★ギャラクシー） http://shinjukuloft.com/galaxy/archive/e/2008/post_19.php
・ アイドルマスター 満天プラネタリウム (黒薔薇保存会) 美希・春香・雪歩‐ニコニコ動画(ββ)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1627257
・ 音楽専科社「黒薔薇保存会」 http://www.ongakusenkasha.co.jp/pick-up/kurobara2/index.html
・ 『ネギま!? 春スペシャル!?』DISK2（ 【ＤＶＤ】STAR CHILD／２００６）
・ 富田英典 関西大学「情報行動論」講義資料

第６節 初出＝扇町高等学校地理歴史文化研究部『２００６年度 地理歴史文化研究部 研究調査報告書２』 （一部加筆・修

正）
・ 末川博 編著『岩波基本六法』昭和亓十年版（岩波書店／１９７４）
・ 作田啓一、五上俊 編『命題コレクション社会学』 （筑摩書房／１９８６）
・ 石村善治 編『新版現代マスコミ法入門』 （法律文化社／１９９８）
・ 片桐新自、永五良和、山本雄二 編『基礎社会学』新訂第１版（世界思想社／２００６）
・ 鈴木みそ『銭』４巻（エンターブレイン／２００６）
・ アーツビジョン騒動関連まとめ wiki - livedoor Wiki（ウィキ） http://wiki.livedoor.jp/tasogare100/d/FrontPage
・ アキバ blog http://www.akibablog.net/aechives/2007/11/seiyuu-071108.html 〔現在閉鎖〕
・ アキバ blog http://www.akibablog.net/aechives/2007/06/seiyuu_070606.html 〔現在閉鎖〕
・ アキバ blog http://www.akibablog.net/aechives/2007/07/artsvision-070701.htm〔現在閉鎖〕
・ 一般社団法人 日本音声製作者連盟 http://www.onseiren.com/
・ ⊂⌒⊃｡Д｡)⊃カジ速≡≡≡⊂⌒つﾟДﾟ)つ Full Auto http://www.kajisoku.org/archives/50666995.html
・ ⊂⌒⊃｡Д｡)⊃カジ速≡≡≡⊂⌒つﾟДﾟ)つ Full Auto http://www.kajisoku.org/archives/50667006.html
・ ⊂⌒⊃｡Д｡)⊃カジ速≡≡≡⊂⌒つﾟДﾟ)つ Full Auto http://www.kajisoku.org/archives/50667009.html
・ ⊂⌒⊃｡Д｡)⊃カジ速≡≡≡⊂⌒つﾟДﾟ)つ Full Auto http://www.kajisoku.com/archives/eid1480.html
・ ○神奈川県青尐年保護育成条例
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・ 協同組合日本俳優連合 http://www.nippairen.com/
・ 劇場版Ｚガンダムのフォウ役を島津冴子さんに戻せ http://wiki.livedoor.jp/eternalfour/d/FrontPage
・ Saeko Shimazu Official Web Site ‗Angel Voice‘ ‐Four/Zeta‐ http://www.saeko.gr.jp/four_zeta.shtml
・ 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html
・ syn blog | おしゃべりやってま～す。木曜日 第 89 回 http://syn.mari-fc.com/?eid=453450
・ syn blog 美佳子＠ぱよぱよ 第 308 回 http://syn.mari-fc.com/?eid=546252
・ StarChild:堀江由衣 http://www.starchild.co.jp/artist/horie/
・ 声優の面接 仕事ちらつかせてセクハラ横行 - Ameba News [アメーバニュース]
http://news.ameba.jp/2007/09/7134.php
・ Ζガンダム・配役変更の影… - PARADE PARADE
http://blog.goo.ne.jp/izdon/e/39df49eb89041e23a49929fe5bae5bbc
・ たのみこむ http://www.tanomi.com/metoo/naiyou.html?kid=51954
・ たのみこむ http://www.tanomi.com/metoo/naiyou.html?kid=52112
・ Topazios http://www.topazios.net
・ 東京都青尐年の健全な育成に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/Li05_Hon_Main_Frame.exe?UTDIR=D:¥EFServ2¥ss0000098D¥Administrator
&TID=1&SYSID=1808
・ ２ちゃんねる http://www.2ch.net/
・ 日刊サイゾー http://www.cyzo.com/
・ 日本アニメ・音響映像二次使用料未払い訴訟
http://web.archive.org/web/20050207105529/www.nippairen.com/saiban/index.html
・ アーツビジョン事件の 16 歳被害者は着エロ DVD を出していた!? :にゅーあきばどっとこむ
http://www.new-akiba.com/archives/2007/05/16dvd.html
・ はちま起稿＼(^o^)／ http://hatimaki.blog110.fc2.com/blog-entry-344.html#more
・ はてな匿名ダイアリー http://anond.hatelabo.jp/20070602143053
・ 堀江由衣処女論争の結末 http://anond.hatelabo.jp/20070602140928
・ チンシャブ声優は实在した - （ ’－’ ）ノ巫女の日曜美術館 http://d.hatena.ne.jp/nekoneko/20070528/p1
・ YouTube http://www.youtube.com/
・ ゆかな藩掲示板 http://www.nogami.yukana.com/〔現在閉鎖〕
・ 関西大学「ＪＡＳＲＡＣ寄付講座（音楽化社会と著作権） 」第２回講義資料・講義ノート

第７節 初出＝同上
・ 『ＴＣＶＶ白書８』 （「声優は Visual に出るな!会議」情報管理部／２００７）
・ -=Seiyu Awards=- http://www.seiyuawards.jp/
・ アニメーション神戸 http://www.anime-kobe.jp/index.html
・ 第二回声優アワード 永久保存版 オフィシャル DVD http://www.seiyuawards-dvd.com/index.html
・ 東京国際アニメフェア 2009 http://www.tokyoanime.jp/ja/
・ 文化庁 http://www.bunka.go.jp/
・ 法令データ提供システム http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

第８節 初出＝同上
・ 声優ファン倶楽部 編『アニメ＆ボイスアーティスト大百科』 （コズミックインターナショナル／２００１）
・ 堀田純司『萌え萌えジャパン』 （講談社／２００５）
・ オタク文化研究会『オタク用語の基礎知識』 （マガジン・ファイブ／２００６）
・ 『DTM MAGAZINE』vol.142 １３（４） （寺島情報企画発行／２００６）
・ 『声優＆アニメソング ミュージックガイド』 （アスペクト編／２００６）
・ 『報知新聞』２００９年１１月２４日号（報知新聞社／２００９）
・ 伊藤千夏 作詞・作曲、小林信吾 編曲、堀江由衣 歌「Love Destiny」 （『Love Destiny』＝【ＣＤ】キングレコード／
２００１）
・ 雲子 作詞・作曲、十川智司 編曲、堀江由衣 歌「キラリ☆宝物」 （
『キラリ☆宝物』＝【ＣＤ】キングレコード／２０
０２）
・ Chika Ito 作詞・作曲、Takao Konishi 編曲、堀江由衣 歌「ALL MY LOVE」 （『ALL MY LOVE』＝【ＣＤ】キング
レコード／２００２）
・ スズーキタカユキ 作詞・作曲、UNSCANDAL 編曲、堀江由衣 with UNSCANDAL 歌「スクランブル」 （
『嘘つきア
リスとくじら号をめぐる冒険』＝【ＣＤ】キングレコード／２００５）
・ 椎名可憐 作詞、ＹＵＰＡ 作曲・編曲、堀江由衣 歌「ヒカリ」 （
『ヒカリ』＝【ＣＤ】キングレコード／２００６）
・ 田代智一・すやまちえこ 作詞、田代智一 作曲、安藤高弘 編曲、堀江由衣 歌「Days」 （『Days』＝【ＣＤ】キングレ
コード／２００７）
・ 只野菜摘 作詞、古池孝浩 作曲・編曲、堀江由衣 歌「恋する天気図」 （『恋する天気図』＝【ＣＤ】キングレコード／
２００７）
・ Satomi 作詞、Funta7 作曲、中塚武 編曲、堀江由衣 歌「バニラソルト」 （『バニラソルト』＝【ＣＤ】キングレコー
ド／２００８）
・ Satomi 作詞、藤末樹 作曲、川口圭太 編曲、堀江由衣 歌「silky heart」 （『silky heart』＝【ＣＤ】キングレコード／
２００９）
・ アニソン★歌詞検索 http://anison.kenichimaehashi.com/
・ アニ通『アニメ』 、『声優』ファンサイト http://anitsu.co.jp/
・ アニメソング（アニソン）特集 http://www.sancya.com/music.htm
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
・ ORICON STYLE http://www.oricon.co.jp/
・ 関西大学社会学部 JASRAC 寄附講座 音楽ビジネスと社会／音楽化社会と著作権 活動報告
 http://www.takamasu.net/jasrac/takamasu01.html
・ 歌詞情報 - goo 音楽 http://music.goo.ne.jp/lyric/index.html
・ 社団法人 日本レコード協会 http://www.riaj.or.jp/
・ MUSIC ROOM : ヒットチャートとアニソンと http://dicel.blog69.fc2.com
・ YouTube http://www.youtube.com/
・ 関西大学「ＪＡＳＲＡＣ寄附講座（音楽ビジネスと社会） 」２００９年度講義資料

第９節 初出＝同上
・ 声優ファン倶楽部 編『アニメ＆ボイスアーティスト大百科』 （コズミックインターナショナル／２００１）
・ 堀田純司『萌え萌えジャパン』 （講談社／２００５）
・ 小板橋英一「感度良好！ビ・ン・カ・ン！声優ラジオ」 （『ゲームラボ特別編集「現代視覚文化研究」 』＝三才ブックス
／２００６）
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

第１０節 初出＝本稿書き下ろし
・ コミックマーケット準備会 編『コミックマーケット３０’ｓファイル』 （青林工藝舎／２００５）
・ 速水筒「ひとでなしのゲーム」 （『ユリイカ』１１月号 ３７（１２）＝青土社／２００５）
・ オタク文化研究会『オタク用語の基礎知識』 （マガジン・ファイブ／２００６）
・ 杉浦由美子『オタク女子研究 腐女子思想大系』 （原書房／２００６）
・ 片桐新自、永五良和、山本雄二 編『基礎社会学』新訂第１版（世界思想社／２００６）
・ 小板橋英一「感度良好！ビ・ン・カ・ン！声優ラジオ」 （『ゲームラボ特別編集「現代視覚文化研究」 』＝三才ブックス
／２００６）
・ 松下友一「世界に羽ばたくライトノベル」 （松下友一、五上威郎、吉田守芳 編『メカビ』vol.02＝講談社／2006）
・ 『岩波 コンパクト六法』平成１９（２００７）年版（岩波書店／２００６）
・ 須藤洋和 編『堀江由衣ファンブックＶＯＬ１６ ながされて由衣島（YuiLAND） マル秘リーダー白書』 （ノラ猫同
盟／２００７）
・ かやまさゆ、ういんび～ヤッホー！『Lovely Yukariyui』 （Angel❤Heart／２００７）
・ 月瀬水無『メッセージ』 （沈黙の放課後／２００７）
・ 須藤洋和 編『堀江由衣ファンブックＶＯＬ１７ Magical BINGO!』 （ノラ猫同盟／２００７）
・ かやまさゆ、ういんび～ヤッホー！『声優 Angel Heart』第１巻（Angel❤Heart／２００８）
・ 共信印刷株式会社 制作『コミックマーケット７４ CD-ROM カタログ』 （有限会社コミケット／２００８）
・ かやまさゆ、ういんび～ヤッホー！『声優 Angel Heart』第２巻（Angel❤Heart／２００８）
・ 月瀬水無『やまとなでしこ！』 （沈黙の放課後／２００８）
・ 月瀬水無『あいもかわらず』 （沈黙の放課後／２００８）
・ 須藤洋和 編『Darling ロケ地探訪スペシャル 堀江由衣ファンブックＥＸ』 （ノラ猫同盟／２００８）
・ 須藤洋和 編『堀江由衣ファンブックＶＯＬ１８ Honey』 （ノラ猫同盟／２００８）
・ かやまさゆ、ういんび～ヤッホー！『声優 Angel Heart』第３巻（Angel❤Heart／２００８）
・ 中原麻衣、清水愛『秘密ドールズ』 （【ＣＤ】Lantis／２００６）
・ Aice⁵『Love Power』 （【ＣＤ】STAR CHILD／２００６）
・ アイドルマスター 中の人 今五麻美＆中村繪里子 PreStar 増刊号‐ニコニコ動画(ββ)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm120683
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
・ 現代百合考察 http://yuri.g.hatena.ne.jp/
・ メインページ - アンサイクロペディア
http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B
8
・ YouTube http://www.youtube.com/
・ 百合声優ニュース http://blog.livedoor.jp/yuiseiyunews/

第１１節 初出＝本稿書き下ろし
・ 森川嘉一郎『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』
（幻冬舎／２００３）
・ 『新編ビジュアル地理』 （東京法令／２００４）
・ 森永卓郎『萌え経済学』 （講談社／２００５）
・ 片桐新自、永五良和、山本雄二 編『基礎社会学』新訂第１版（世界思想社／２００６）
・ パトリック・マシアス 著、町山智浩 編・訳『オタク・イン・USA 愛と誤解の Anime 輸入史』 （大田出版／２００６）
・ 東村光「萌社会構造論」 （ 『萌例タイムス』第Ｃ７１号 二〇〇六年冬コミ号＝東洋帝都新聞出版事業部／２００６）
・ 知久敏之、田中奈美、ジョナサン・アダムス、リチャード・エアリック、トレーシー・マクニコル、ハンナ・クリーバ
ー、ブライアン・ブレーカー「ニッポン発萌えパワーに世界も(＾0＾)」 （『NEWSWEEK』日本版 ２００７年３月２１
日号＝阪急コミュニケーションズ／２００７）
・ 三省堂編修所 編『身につく仏和・和仏辞典 ＣＤ付き』 （三省堂／２００７）
・ 『米国オタク情報誌 ＥＸＴＥＮＤ＋』vol.1（BUNKA:EXTEND／２００８）
・ Anime News Network http://www.animenewsnetwork.com/
・ AyaHirano 平野 綾 http://www.ayahirano.net/
・ CUAC -- Columbia University Anime Club http://www.columbia.edu/cu/anime/index.htm
・ Iizuka Mayumi panel http://www.ex.org/4.6/07-feature_iizuka.html
・ Noriko Hidaka（The Internet Movie Database (IMDb)） http://www.imdb.com/name/nm0383022/
・ Seiyuu (voice actor) database http://www.usagi.org/~doi/seiyuu/
・ Seiyu Awards http://www.seiyuawards.jp/
・ The Internet Movie Database (IMDb) http://www.imdb.com/
・ Ryu's Seiyuu Info http://seiyuu.info/index.html
・ Wikipedia（日本語版）→ここから各国版へリンクがある
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
・ エキサイト翻訳 http://www.excite.co.jp/world/
・ 音楽物語 in JAPAN http://www.musicstory.cn/next.html
・ かがり美尐女イラストコンテスト实行委員会のページ http://hachinosul75.blogl07.fc2.com/〔現在閉鎖〕
・ 日本声優専門エンタメサイト Jade Voice http://jp.jade-voice.com/
・ 牧野由依「マキノユイ遠征記」 https://yorimo.yomiuri.co.jp/csa/Yrm0302_P/1221735030036

第１２節 初出＝本稿書き下ろし
・ 岡田斗司夫、山本弘 为著『空前絶後のオタク座談会２ ナカヨシ』 （音楽専科社／２００２）
・ 『めざせ！ 声優アーティスト』 （为婦と生活社／２００４）
・ 『Seiren 09 年夏号』
（京都大学声優同好会／２００９）

終章 初出＝本稿書き下ろし
・ 『読売新聞』２００９年９月８日朝刊（読売新聞大阪本社／２００９）
・ ゆりかもめ 概要 http://yurikamome.co.jp/outline/voice.php
・ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

脱稿：２０１０年４月１６日