写真を見るレッスン:旅と写真、旅する写真© Mika Kobayashi
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変化と言えるでしょう。ブログや写真共有サイトで公開されている無数の写真画像、とくに外国の日常生活の光景や、旅先で撮ったようなスナップ写真を眼にするとき、ふと我に返って不思議な気持ちに襲われることがあります。見ず知らずの人が撮った、写っている場所や人も判らないような写真をなぜ私は見ているのだろうかと自問するような、心許ないような宙吊りの気分、と言ったらよいのでしょうか。ブログのように写真に説明の文章やキャプションが添えられている場合はまだしも、ほとんど何の説明も添えられていない写真がスライドになって延々と続いていくのを、写真を撮った人と写された人や場所の関係を知らないままで眺めていると、写真とそれを見ている自分自身との関係が、距離や時間の感覚も含めて、あやふやでとらえがたいもののように感じられてきます。
ステレオ写真の時空
このようにインターネット上で膨大な数の写真を見ることに慣れきってしまうと、通信技術が発達する前の時代に、「遠く離れた場所の写真を見る」ということがどのようなものだったのかということを想像するのは難しいことかもしれません。ここで、ひとつの事例として100年前の状況を取り上げてみたいと思います。 (図1)は、20世紀初頭にアメリカで制作された広告です。地球の右側にあるアメリカ大陸の北米の方から、巨大な男性が右手に双眼鏡と横長のカードを組み合わせたような道具を持って覗き込み、アフリカ大陸のほうに腕を伸ばしてエジプトと書かれたあたり触っています。
(図1) アンダーウッド&アンダーウッド社 トラベル・システム広告
この絵に上下に添えられた謳い文句には、「遠く離れた国のすぐ近くにいるためには、アンダーウッド社のステレオグラフ・トラベル・システムが手近にありさえすればよいのです。」と書いてあります。アンダーウッド&アンダーウッド社(Underwood & Underwood)とは、ステレオ写真(立体写真)を製造していたアメリカの会社で、さまざまな国で撮られたステレオ写真をセットにして販売していました。「トラベル・システム」とは、ステレオ写真と、ステレオ・ビューア(ステレオ写真を見るための道具で、絵の中の男性が手に持っている双眼鏡のようなもの)を組み合わせた商品でした。つまり、ステレオ・ビューアを使って嵌め込んだステレオ写真(絵の中に描かれている横長のカード)を見ると、双眼鏡を覗き込むように、あたかもその場所が手近にあるような臨場感を感じ取ることができる、というのがステレオ写真の魅力だったのです。
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