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演題番号P10-3

初期研修医は地域医療研修に何を
求め,何を学んでいくか?

地域の診療所が提供できる研修

第41回日本医学教育学会大会  医療法人 鉄蕉会
ポスター 地域医療  亀田ファミリークリニック館山
2009年7月24-25日  家庭医診療科

大阪国際交流センター  篠原翼 岡田唯男
背景と目的
平成16年からの卒後臨床研修必修化され、全ての研
修医は2年目に1-3ヶ月研修することになっている。地域
医療を志す研修医はもちろん、専門医を志す研修

医にとっても、地域医療現場との連携を学ぶことは必要
であるが、地域医療研修で実際にどのように研修をお
こなうのか、他の診療科と比べて異なる面が多く、戸惑
うことも多い。当クリニックでは地域医療研修のあり方を
検討するため,初期研修医が地域医療研修で何を求め、
何を学んだかについて、また研修を提供した当クリニッ
クスタッフに研修に関する認識について、実態を把握す
る。
対象と方法
2008年度に亀田ファミリークリニック館山にて地域
医療研修をおこなった初期研修医12名を対象とし
て質的・量的なミックスドメソッドをを用いて実態の把
握を試みた。バックグラウンド・将来の志望など事前
のメールでの打ち合わせののち,研修初日に,それ
ぞれのニーズに合わせた研修目標について個人イ
ンタビューを行った。研修最終日に研修で学んだ内
容をプレゼンテーションする機会を設けた。研修終
了後に、初期研修医に対して,研修の良かった点,
改善点等について,また研修に協力を依頼した各部
署にも、研修の良かった点,改善点等についてアン
ケートを実施した。インタビュー・アンケートの結果を
グラウンデッドセオリーを用いて分析を行った。分析
の過程で、共著者・他職種とディスカッションを繰り
返すトライアンギュレーションを行い、妥当性を高め
た。
結果 対象者について
•  2年目初期研修医12名
•  男性7名、女性5名
•  将来の志望科は、小児科1名、外科1名、救急
科1名、消化器内科2名、脳神経外科1名、循環
器内科1名、膠原病科1名、精神科または神経
内科1名、麻酔科1名、不明2名であった。
結果 研修前の状況
結果 研修前の実際の言葉
•  「在宅にどういう状態の患者さんがいるか、退院
先としての在宅診療の選択肢が適切か否か見
極められるように」
•  「どこまでみれるか、多職種のかかわり、ケアマ
ネ業務しっておきたい」
•  「病棟はクリック一つで回っているが、実際をみ
たい」
•  「外来見学(この機会以外に他の先生の外来を
見学できる機会はもうなくなってしまうため)」
結果 実際の研修内容
結果 何を学んだか

結果 何を学んだか 実際の言葉1
•  「力を入れるところ、抜くところ、すべての主訴に関してフルワークアップをしな
くてもよい。その場で対処しなければならないこと、経過観察でみること」
•  「外来の時間配分、説明の仕方、共感の仕方、スケジュール管理、悪い結果の
知らせ方、患者や家族の訴えには理由がある」
•  「なんといっても,1番は患者・家族にとって最良の生活を提供すること.その為
には色んな人とこまめにコミュニケーションを取り合うことが大事だということ
が分かりました.」
•  「外来の感想,受診閾値が低い,followがしやすい,検査閾値が上げられる.
改めて,扱う領域が広い,地域の実情に応じて扱う範囲が変わりうる」
•  「リハビリ見学感想,自分が関わった多くの急性期の患者が,退院した後どの
ように回復していくのか,また何に悩まされ続けるのか.今まで病棟では気づ
かなかった視点.」
•  「2.5人称の視点、今回の研修で最も強く感じ、また反省したことです。」
結果 何を学んだか 実際の言葉2
•  「この地域を今後どうしていけば良いか?地域へのアプローチ,患者・家族・医
師会・病診・診診連携」
•  「ERは点でしか診られないが,外来は線でつなぐ.主訴以外も引き出す.「それ
はうちの科ではない」がない,時間・診療科・人など横断的,時間をかけて丁
寧に話を聞く,説明する.疾患ではなく,人を診ている」
•  「小児親の会:親になっていく,社会の目.社会に対する医療のあり方」
•  「訪問ヘルパー:入浴,料理,散歩,排泄など.生活に必要な介護だけでなく,
楽しみも提供している.従来家族が行ってきたことの代替.1日に何回も訪問
することで犯罪防止」
•  「家庭医と麻酔医の比較、家庭医、外来、在宅は社会に近く、手術、麻酔科医
は社会に遠い」
•  「KFCT研修を終えて、疾患、患者、家族、地域の同心円」
•  「家庭環境など、さまざまなことを考えみんなで情報を提供・共有していることは
非常に良い点であると感じた。病院で言うところの、在宅患者が入院患者で
あるような印象をうけた。」
結果 研修に対しての評価
結果 研修に対しての評価 

実際の言葉
•  「個性のある研修医がKFCTに来られ、発表なども、それぞれ
違った視点で行われ、自分たちの診療を振り返る機会になりま
した。また、外来や往診の見学などを通じ、建設的なフィード
バックももらえたことも良かったです。」
•  「研修医の先生方の学ぶ姿勢、熱心さ、素直さに触れ、感動した
こと。リハビリテーションの視点を少しは感じ取っていただけたこ
と。スタッフが何らかの刺激や学びを得ていること。」
•  「事前連絡を早めに頂きたい。研修生プロフィールもあるといいと
思います。研修後のフィードバックがあるといいと思います」
•  「初期研修医のニーズに合わせるだけでなく、基本となるスケ
ジュールがあるとよい」
結果 研修に対する満足度
結論
2008年度に当院にて地域医療研修をおこなった初
期研修医は12名で,2週間の研修期間であった。初
期研修医の地域医療研修のニーズに関しては、家
庭医外来、在宅診療、コメディカルとの連携にわけ
られ、地域医療研修前の研修状況・キャリアプラン
が影響を与えていた。研修医が学んだ内容は家庭
医診療・在宅診療などの多様な診療、他職種業務
内容・患者の生活などの多様な視点、コミュニケー
ションの取り方などが挙げられた。研修システムに
対しては、スタッフにも学びとなっていることが把握
できた。
考察 今後の展望について
•  次年度以降の初期研修医の地域医療研修につ
いても、調査を継続し、理論的飽和を目指すこ
とが望ましい。
•  本研究で得られた研修についての改善点を元
に、初期研修医に対するレクチャー・ビデオレ
ビュー・基本スケジュールの作成等、次年度以
降の研修カリキュラムを改善していく予定である。
考察 本研究の限界について
・当診療所は、外来診療のほか、訪問診療、
透析診療、歯科診療部門が集約したやや規
模の大きい診療所であり、より小規模の診療
所において結果が異なる可能性がある。
・当診療所に所属する医師は家庭医診療科に
所属しており、診療範囲が多岐にわたってい
る点、家族をまとめてみる点、地域に働きかけ
る点などの特長がある。そのため、他診療科
を標榜する診療所においては、結果が異なる
可能性がある。
・今回対象となった初期研修医の将来の志望
科は様々であったが、全ての診療科が網羅さ
れてはおらず、質的研究の理論的飽和に達し
ていない可能性がある。
まとめ

•   初期研修医は地域医療研修に対して、外来診
療、在宅診療、コメディカルとの連携を学ぶことを
期待していた。
•  診療所において様々な外来診療・コメディカル診
療・訪問診療の経験から、診療内容・視点の多
様性を学んだと思われた。
•  地域で多様な役割を果たす診療所は,研修医の
様々なニーズに応えられる可能性があると思わ
れる。
登録時の抄録
第41回日本医学教育学会大会 2009年7月24-25日 大阪国際交流センター 
ポスター 地域医療 演題番号P10-3 
演題名  初期研修医は地域医療研修に何を求め,何を学んでいくか?    
ーーー地域の診療所が提供できる研修ーーー 
英語演題名what are needs and outcomes of medical residents community health training in Kameda
family clinic Tateyama
著者名  篠原翼、岡田唯男
所属 亀田ファミリークリニック館山
背景:平成16年からの卒後臨床研修必修化され、全ての研修医は2年目に1-3ヶ月研修することになってい
る。地域医療を志す研修医はもちろん、専門医を志す研修医にとっても、地域医療現場との連携を学ぶ
ことは必要であるが、地域医療研修で実際にどのように研修をおこなうのか、他の診療科と比べて異な
る面が多く、戸惑うことも多い。当クリニックでは地域医療研修のあり方を検討するため,初期研修医が
地域医療研修で何を求め、何を学んだかについて、また研修を提供した当クリニックスタッフに研修に関
する認識について、質的研究法を用いて実態の把握を試みた。 
方法: 2008年度に亀田ファミリークリニック館山にて地域医療研修をおこなった初期研修医14名を対象とし
て,バックグラウンド・将来の志望など事前のメールでの打ち合わせののち,研修初日に,それぞれの
ニーズに合わせた研修目標を話し合い、設定した.研修最終日に研修で学んだ内容をプレゼンテーショ
ンする機会を設けた。研修終了後に、初期研修医に対して,研修の良かった点,改善点等について,ま
た研修に協力していただいた各部署にも、研修の良かった点,改善点等についてアンケートを実施した。 
結果:2008年度に当院にて地域医療研修をおこなった初期研修医は15名で,2週間の研修期間であった.
初期研修医の地域医療研修のニーズに関しては、在宅診療の経験,コメディカルとの連携,外来診療な
ど分けられ、地域医療研修前の研修状況・キャリアプランが影響を与えていた。研修医が学んだ内容は
家庭医診療・在宅診療・他職種業務内容・コミュニケーションの取り方などが挙げられた.クリニックス
タッフからは,研修システムに対する評価が得られ,スタッフへよい刺激となっていることが把握できた.
考察:地域で多様な役割をはたす診療所は,研修医の様々なニーズに応えられる可能性があると思われる.

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