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2007 年 12 月 2 日 比較社会論コース

卒研最終中間報告会 筧 芙実子

貧困削減アプローチの転換
―ブータン GNH 政策の可能性―
1.研究目的
現在、世界人口 60 億人のうち、途上国の人口は 4 分の 3 を占めており、12 億人が 1 日 1
ドル未満の生活を送っている。グローバリゼーションに伴い、貿易や投資、労働などの経
済のグローバル化によって富や生産力が拡大する一方で、南北格差が顕著にあらわれ、貧
困も同じく拡大している。貧困はそれ自体も問題であるが、それ以上に途上国が抱える多
くの問題に波及し、経済的側面だけではない貧しさによって悪循環を生みだしている。
こういった状況の中、いったいどのような開発アプローチが必要なのであろうか。経済
成長がなされれば、西欧化されれば、貧困から脱却できるという理論は、再考されており、
「豊かさ=物質的な富」とする概念に対しては疑問が投げかけられている。
これらを踏まえて、本研究では、貧困の定義、開発議論の変遷などを背景に人間中心型
の開発の重要性について調査し、さらに、人間中心型の開発、ブータンの GNH 政策をもと
に、物質的な豊かさから人間の本質的な豊かさを目指すための開発アプローチへの転換の
必要性を調査・分析する。GNH 政策については、貧困削減のためのアプローチとしての有
効性と可能性についても論じる。

2.論文の構成

序論

第1章 世界が抱える貧困
第1節 貧困とは何か
第2節 貧困の現状
第3節

第2章 開発議論の変遷と人間中心型開発
第1節 経済成長重視の開発 ∼第 2 次世界大戦後から 1960 年代∼
第2節 近代化論への疑問 ∼1970 年代∼
第3節 構造調整戦略 ∼1980 年代∼
第4節 人間開発の登場 ∼1990 年代∼
第5節 新しい貧困削減戦略 国連ミレニアム開発目標 ∼2000 年代∼
第3章 ブータンにおける幸せをもたらす開発とは
第1節 ヒマラヤの小国、ブータン
第2節 GNH の概念
第3節 ブータンの近代化
第4節 ブータンの開発と GNH

第4章 GNH 政策のこれから


第1節 GNH 政策に対する世界の反響
第2節 ブータンにおける GNH の成果
第3節 GNH は貧困削減のための開発アプローチになりえるか

結論
おわりに
参考資料

●前回からの変更点
・第 3 章として扱っていた日本に関する内容を、第 2 章第 4 節に組み込んだ。
具体的な事例を提示することによって、人間中心型開発の重要性に説得力をもたせる
場ができた。
・GNH 政策についての現状と展望を述べる章(第 4 章)に関しての構成を変えた。

●人間を中心においた開発(=人間中心型開発)
本論文で扱う「人間を中心においた開発(=人間中心型開発)」は、人間の基本的な活動
を行うために必要な、基本的な潜在能力の拡大と選択能力の拡大のために行われる、人間
そのものに開発の目的をおいた開発のことをさす。基本的な活動とは、十分な栄養をとる
こと、安全な水が飲めること、早死にを防ぐこと、自由に政治的・文化的な活動ができる
こと、社会の一員として認められ、自尊心を持てることなどである。
物質的・経済的な豊かさはもちろん大事ではあるが、それらのみの向上を図るのではなく、
非物質的な豊かさ、精神的豊かさを追求するために、人間そのものに働きかける開発アプ
ローチであるとする。
人間開発や社会開発、BHN アプローチもこれに含む。

3.議論したいこと
・論文の構成に関して、第 2 章の第 4、5 節で人間中心型の開発について論じるのだが、章
にしたほうがいいか。日本の事例などを書き加えたため、1 節の中に情報を詰め込みすぎ
ており、読みにくくなるのではないか。
・その他、疑問点や改善点など指摘してください。

4.最終ドラフトへ向けて
今回いただいたアドバイスや指摘を整理し、ドラフトに反映する。
第 1、2 章に関しては、ほぼ完成の状態に仕上げる。
とりあえず、論文を書きすすめる。

5.参考資料
<文献>
足立文彦『人間開発報告書を読む』古今書院、2006 年
アマルティア・セン、石塚雅彦訳『自由と経済開発』日本経済新聞社、2000 年
アマルティア・セン、大石りら訳『貧困の克服−アジア発展の鍵は何か』集英社、2002 年
上田晶子『ブータンに見る開発の理念−若者たちにとっての近代化と伝統文化−』明石書
店、2006 年
絵所秀紀・穂坂光彦・野上祐生『シリーズ国際開発第 1 巻 貧困と開発』日本評論社、2004

河合明宣・浜口恒夫編著『持続的発展と国際協力』放送大学教育振興会、2003 年
川田侃・石井摩耶子編『発展途上国の政治経済学』東京書籍、1987 年
黒崎卓・山形辰史『開発経済学−貧困削減へのアプローチ』日本評論社、2003 年
斉藤文彦『国際開発論 ミレニアム開発目標による貧困削減』日本評論社、2005 年
佐藤寛『開発援助の社会学』世界思想社、2005 年
佐藤寛編『援助と住民組織化』アジア経済研究所、2004 年
佐藤寛編『テキスト社会開発―貧困削減への新たな道筋』日本評論社、2007 年
佐藤誠編『社会開発論 南北共生のパラダイム』有信堂高文社、2001 年
佐藤元彦『脱貧困のための国際開発論』築地書館、2002 年
ジェフリー・サックス、鈴木主税・野中邦子訳『貧困の終焉−2025 年までに世界を変える』
早川書房、2006 年
世界銀行、白鳥正喜監訳、海外経済協力基金開発問題研究会訳『東アジアの奇跡 経済成
長と政府の役割』東洋経済新報社、1994 年
鶴見和子『内発的発展論の展開』筑摩書房、1996 年
鶴見和子・川田侃編『内発的発展論』東京大学出版会、1989 年
西垣昭・下村恭民・辻一人『開発援助の経済学−「共生の社会」と日本の ODA 第 3 版』
有非閣、2003 年
西川潤『世界経済入門』岩波書店、1988 年
西川潤『世界経済入門 第二版』岩波書店、1991 年
西川潤『世界経済入門 第三版』岩波書店、2004 年
西川潤『社会開発―経済成長から人間中心型発展へ』有斐閣、1997 年
西川潤『人間のための経済学−開発と貧困を考える−』岩波書店、2000 年
野上裕生『人間開発の政治経済学』アジア経済研究所、2007 年
平山修一『現代ブータンを知るための 60 章』明石書店、2005 年
平山修一『美しい国ブータン』リヨン社、2007 年
松岡俊二編『国際開発研究−自立的発展へ向けた新たな挑戦−』東洋経済新報社、2004 年
松原治郎『社会学講座第 14 巻 社会開発論』東京大学出版会、1973 年
UNDP 国連開発計画『人間開発報告書 1996 経済成長と人間開発』国際協力出版会、1996

UNDP『人間開発報告書 1997 貧困と人間開発』国際協力出版会、1997 年
UNDP『人間開発報告書 1999 グローバリゼーションと人間開発』国際協力出版会、1999

Planning Commission, Royal Government of Bhutan ,Bhutan 2020 :A Vision for Peace,
Prosperity and Happiness, Royal Government of Bhutan 1999
Suellen Donnelly ,How Bhutan can Measure and Develop GNH, Center of Bhutan
Study,2004

<雑誌>
小宮昌平・大坪寿七郎・小谷野とし子「IMF の見たブータン−『開発』の 1984 年と 1996
年−」『政経研究』第 74 号、政治経済研究所、2000 年、157−167 ページ
栗田靖之「最小の援助が生む最大の効果 ブータン式開発援助の秘密」『国際開発ジャーナ
ル』428 号、1992 年 10 月、66−69 ページ
『アジア太平洋討究』第 8 号、早稲
西川潤「ブータンに見る『国民総幸福』―理論と実際」
田大学アジア太平洋研究センター図書・編集委員会、2005 年、17−27 ページ
福永正明「民主化の道歩み始めたヒマラヤの王国ブータン 『国民総幸福量』の国造り」
『世
界週報』第 87 号、時事通信社、2006 年、10−13 ページ
松井範惇「社会開発・人間開発とは何か」『東亜経済研究』第 61 巻第 2 号、山口大学東亜
経済学会、2002 年 6 月、4−11 ページ
『UP』東京大学出版会、1993 年 9 月、22−28 ページ
山本英治「ブータン王国の近代化」
山本勝也「UNDP(国連開発計画)の人間開発論」『京都大学経済論集』第 17 号、京都大
学経済論集編集委員会、2000 年、21−31 ページ

<ウェブサイト>
○ブータン、GNH 関係
ブータン政府 http://www.bhutan.gov.bt/
ブータン研究センター http://www.bhutanstudies.org.bt/
Kuensel Online http://www.kuenselonline.com/index.php
GNH 研究所 http://www.gnh-study.com/index.php

○指標
世界銀行ウェブサイト http://www.worldbank.org/
人間開発報告書ウェブサイト http://hdr.undp.org/

○その他
荒川区役所ウェブサイト http://www.city.arakawa.tokyo.jp/
外務省ウェブサイト http://www.mofa.go.jp/
国連開発計画 東京事務所ウェブサイト http://www.undp.or.jp/
The Happy Planet Index http://www.happyplanetindex.org/

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