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デフレーションと日本銀行
1
 
A.
 
ポーゼン著
私がこの記事を書こうと思い立ったのは、7月の日本滞在時に、ビジネス界のリーダー数人を通じて、彼らが日銀から厳しく圧力をかけられていて、日銀の見解を受け入れるよう強い られていると聞いたからであり、彼らがそれをとても憂慮していたからである。また、近頃の泉内閣が提案している景気対策からは、本来、積極的な金融政策がになうべき役割が含ま れているのが見てとれる。日本ビジネス界と政府デフレを非常に憂慮するのは正当なこと だ。デフレーションはあらゆる経済問題、特に不良債権問題を悪化させ、構造改革の妨げに なるからである。デフレの放置が長びけば長びくほど経済回復は困難になり、デフレ自体のコ ントロールも厄介なものになる
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率直な事実として、
日銀外部の人間でそれも責任ある立場にある人間は誰一人として現在 日銀が推進している政策を評価していない 
し、また日銀がこれまで推進してきた政策も評価していない。FRB―20026月に公にされたワーキングペーパ
3
を見よ―、IMF―最近公表されたばかりのIMFレポート(Article IV consultation report)
4
を見よ―、米国政府CEA議長で あるグレン・ハバードの最近のスピーチ
5
を見よ―、著名な経済学者―(世界的にも名の通っている金融経済学者の中から特に3名の名前を挙げると伊藤隆敏教授やスヴェンソン教授、 バーナンキ教授の最近の論文を見よ―、誰一人として日銀の政策を評価していない。日銀 「現在我々が推進している政策に対してはこういった責任ある人々から支持を受けている」と主張するかもしれないが、その主張は誤りである。そのような主張はプロパガンダでしかない。日本銀行91920028株式買取り計画―銀行が保有する非金融 法人の株式を買い取る計画―を発表したが、この計画が実行に移されてもデフレの解消には つながらないであろう。日銀当座預金残高目標を月額10兆円から月額15兆円に引き上げ たにもかかわらず信用の拡張と物価上昇とを実現するには不十分であったのだから、6ヶ月
 
1
 
 Adam S. Posen, “Deflation and the Bank of Japan”
Japan Times 
, September 23,2002
http://www.iie.com/publications/opeds/oped.cfm?ResearchID=790
 
2
 
このパラグラフは
soulcage
さんによる訳を利用させていただいております。深謝する次第。
 
3
 
 Alan Ahearne, Joseph Gagnon, Jane Haltmaier and Steve Kamin, “PreventingDeflation: Lessons from Japan's Experience in the 1990s”
 
http://www.federalreserve.gov/pubs/ifdp/2002/729/default.htm
 
4
 
IMF, “Japan: 2002 Article IV Consultation--Staff Report; Staff Statement; andPublic Information Notice on the Executive Board Discussion”
 August 8, 2002
http://imf.org/external/pubs/cat/longres.cfm?sk=16013.0
 
5
 
R. Glenn Hubbard, “Impediments to Growth in Japan”
 April 29, 2002
http://www0.gsb.columbia.edu/faculty/ghubbard/speeches/4.29.02.pdf 
 
 
8株式を買い取るくらいでは十分な金融緩和効果を持つとは考えられない。実際のところ、日銀株式を買い取るために新たに「円」を刷るような素振りは見せておらず、 もし日銀が保有する国債でもって株式の購入に充てるとすれば金融緩和効果は一切ないで あろう。速水優日銀総裁(2002年時点)も株式買い取り計画は金融システムの安定化のため であって金融政策の変更とは見なしていないと大いに認めているところでもある。もしこの 買い取り計画が効果を持つとすれば、この計画が日銀政府間での政策協調の第1弾とし て受け止められるということによってであり、日銀政府との間でデフレ克服に向けた政策協 調が進むとすれば望ましいことである。しかし、日銀による追加的な金融緩和策がないようであれば、デフレーションは今後も継続することになるであろう。日銀外部の責任ある立場の人間が誰一人として日銀の政策を支持しないのには正当な理 由がある。日銀の政策が支持されない理由は、政策が誤った方向を向いているからであり、日本経済ならびに世界経済全体に対して有害な影響を及ぼしているからであり、また経済学 的な根拠もなく推進されているからである。政治やビジネス界はリーダーシップを発揮してデフレを終焉させるために必要な手段を取るよう可能な限り強くプレッシャーをかけなけ ればならない。その際日銀に対して以下のように問い質せばよいだろう。日銀法によれば、日本銀行に課せられた政策課題は物価安定を実現することである。過 5のう物価は下落しているので、政策課題である物価安定を実現するためには数 年にわたるプラスのインフレ率の達成を通じて物価の下落分を相殺する必要がある。日銀 の政策を外部から観察している責任ある立場の人々は皆、日本銀行がプラスのインフレ の達成にコミットすれば物価の下落分を相殺するのに十分なプラスのインフレ率を生じさせ ることは可能であると主張している。日本銀行は政策課題である物価安定を実現するため に中期にわたってプラスの低位安定したインフレ率を実現するよう政策を運営しなければならない。現在の政策委員会がプラスの低位安定したインフレ率の達成に失敗したとすれば―不達成の理由が能力がないためなのかそれとも達成する意思がないためなのかにかかわらず―、政策委員らは日本銀行日本国民に対して負う法的な義務を履行しなかっ た責任をとるべきであり、政策委員の職を辞すべきである。』こうしたデフレ脱却を要求する圧力に対して、日銀は「なぜデフレを止めるべきでないか」、「な デフレを止めることができないか」、「なぜインフレは経済に弊害をもたらすことになるのか」 という論点に関してヘンテコな言い訳を考え出して対抗してくることだろう。日銀によるヘンテコな言い訳を論破するのは容易なことである。ヘンテコな言い訳はきっちりと論破しないといけない
6
6
 
以下、ポーゼンによる日銀との想定問答が始まる。
False argument
はデフレ脱却を求める声に対して日銀が寄せるであろう反論、
True response
はポーゼンによる日銀への再反論である。
 
 
False argument # 1:False argument # 1:False argument # 1:False argument # 1: Deflation, for the most part, is beneficial because it is driven byDeflation, for the most part, is beneficial because it is driven byDeflation, for the most part, is beneficial because it is driven byDeflation, for the most part, is beneficial because it is driven byderegulation, technology, and imports.deregulation, technology, and imports.deregulation, technology, and imports.deregulation, technology, and imports. デフレーションは大抵の場合において望ましいものである。というのも、デフレーション規制緩和技術革新、安価な輸入品の国内流入によっ て引き起こされているからである。)True response # 1:True response # 1:True response # 1:True response # 1: もし価格がそのような好ましい理由によって下落しているのだとすると、価格下落を経験するのはそのような変化から直接的な影響を被る部門の製品だけだろう。そうした好ましい理由によって相対価格が下落したならば、人々は豊かになったと感じて支出増やすことだろう―こうした例としては1990年代のアメリカが挙げられるだろう―。規制緩和技術革新、安価な輸入品の国内流入といったことによって、現在日本において生じているように、一般物価が下落したり、消費支出が減少したりすることはない。 False argument # 2:False argument # 2:False argument # 2:False argument # 2: Zero interest rates or looser policy would keep inefficient businessesZero interest rates or looser policy would keep inefficient businessesZero interest rates or looser policy would keep inefficient businessesZero interest rates or looser policy would keep inefficient businessesopen.open.open.open. (ゼロ金利や金融緩和は非効率的な企業の生き残りや開業を支援することになる)True response # 2:True response # 2:True response # 2:True response # 2: 不況下においては企業による信用へのアクセスが制限されることになるが、新規に事業を開始しようとする前途有望な企業ほど資金調達面で困難な状況に置かれることになる。一方で、特に民間銀行が過小資本状態に陥っているならば、一定のブランドを確立した非効率的な既存企業ほど容易に信用にアクセスし続けることができる
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日本銀行は、さらなる金融緩和に抵抗することによって、日本経済の構造問題の解決に貢献しているのではなくその反対に構造問題の深刻化に貢献しているのである
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False argument # 3:False argument # 3:False argument # 3:False argument # 3: Monetary conditions inMonetary conditions inMonetary conditions inMonetary conditions in JapanJapanJapanJapan are already loose with zero interest rates.are already loose with zero interest rates.are already loose with zero interest rates.are already loose with zero interest rates.(金融はすでに十分緩和されており、その証拠に金利はほぼゼロ%である)True response # 3:True response # 3:True response # 3:True response # 3:実体経済活動において重要なのは実質金利であって名目金利ではない。 デフレ下においては、現在の日本におけるように名目金利はゼロ%であっても2%の物価
 
7
 
貸出先の企業が不良債権に分類されることを避けるために銀行が延命措置として実質的に破産状態にある企業に追い貸しをするということを言いたいのだろう。過小資本に陥っている銀行ほど追い貸しをする誘因が高いということだろう。
 
8
 
ここではポーゼンは、カバレロ=ハマーの研究
 ― 
「不況によって非効率的な企業が淘汰され、その結果日本経済全体の生産性が向上する」との清算主義の主張の誤りを明らかにした研究
 ― 
を念頭に置いていると思われる。ポーゼンの主著である『
RestoringJapan's Economic Growth
でもページを割いてカバレロ=ハマーの研究が紹介されている。
 
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