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博士課程の学生が

  1,000万円超の
研究助成金を獲得する方法

∼自分の研究費は自分で稼ごう!∼

お試しプレビュー版

ver. 2005/1/2

網谷 重紀
copyright © 2005 shigeki amitani all rights reserved
1. はじめに

研究者を目指す修士課程・博士課程のみなさま、はじめまして。わたくし網谷と申します。

 僕は 2004 年の3月に無事東京大学大学院工学系研究科の博士課程を修了しまして、現在日本学術


振興会の海外特別研究員としてオーストラリアのシドニー工科大学 (University of Technology,
Sydney (UTS)) の Creativity & Cognition Studios (CCS) というところで、創造活動支援に関する
研究を行っています。ようやく学生が終わり、晴れて研究者としてのスタートを切った、というとこ
ろです。

 本書では研究助成金獲得に関する私の経験を元にした情報をご紹介したいと思います。経験に基づ
くものなので、「これであなたも研究助成金が取れる!」といったデタラメなことを言うつもりは全く
ありません。「実際研究助成金ってどうすんの?」という方々、主に修士課程・博士課程の学生の方々
に参考になると思われることを書いていこうと思っています。もちろんそれ以外の方々も大歓迎です
が、ただし、ちゃんと買ってくださいね。

僕はこれまでに以下の2つの研究助成金を獲得してきました。

 平成14年度立石科学技術振興財団研究助成金:  200万円超  (博士課程)


 平成16年度日本学術振興会海外特別研究員:  800万円超  (現在)

 と、えらそうに書いていますが、実は学振は上述のもの以前に DC1,2 を2年連続で失敗しています。


従って、自分なりに何がどうダメだったのか、ということを研究してきました。

 僕はまだまだかけだし研究者なので、獲得助成金の数も額もまだまだ少ないです。それでもこれま
でに獲得してきた1,000万円を越える助成金は、私が研究者として自信をつけることができた、と
いうこととともに、「今後の研究者に求められる能力を身につけるための実践的練習になる」という意
味で非常に意義深いものであると考えています。国立大学が独立行政法人化した今、かならず以下の
能力が必要になります。

 今後自分で研究費を獲得していく能力
 自分自身で研究の企画・進捗・予算配分を管理する能力
 他人に自分の研究の価値を理解させる能力

 練習を始めるのに早いに越した事はありません。どんなに自分の研究内容が優れていると思ってい
ても、世に問う必要があります。論文を書く、というのがその一形態ですが、研究の萌芽期において
は、説得力のある「企画書」が必要です。

 かつ実際には研究を進めて行くための資金が必要なのです。高い書籍や学会参加費、出張費などな
ど、そうしたものを自分の研究費でまかなう事ができるわけです。研究が忙しくて、あるいは禁止さ
れていてバイトができない方々も多いかと思います。そうした人こそ研究助成金を積極的に利用して
いくべきだと考えます。

 また、「自分は自分の研究でこうした助成金を獲得してきた」という事実は自信につながるだけで
はなく、誰の目にも明らかな、非常に具体的な評価の尺度にもなります。研究助成金という制度を自
分の研究者としてのキャリアを積む手段だと思って使わせてもらいましょう!

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2. 研究に必要なお金:いったい研究にどんなお金がかかるのか?
 研究や学問というものは清貧の思想とあいまって、「お金なんて」という雰囲気がありましたが、実
世界では分野によってはそんな悠長な事は言っていられません。研究では様々な場面でお金が必要に
なってきます。この節では研究においてどのようなお金が必要になってくるか、ということを列挙し
たいと思います。

3. 自分で研究費をとってくる事のメリット ∼金銭的なメリットを越えて
 前節で述べたのは、「お金があると何かとよい」ということですが、金銭面でのメリット以上に研究
助成金を獲得しようとする事には「研究を進める上での大きなメリット」があると僕は考えています。
この節ではどのようなメリットがあるかということについてお話ししたいと思います。

4. とにかく申請してみよう!
 僕は学振の DC1 と DC2 には2年連続で失敗しています。3度目の正直で、ようやく学振の海外特
別研究員に選ばれました。その前に立石財団の助成金の申請も行っていたので、海外特別研究員の地
位を獲得する前に3回の綿密な練習をしてきた、ということになります。ダメもととはいえ、やはり
助成金は獲得したい。そのための練習はやりすぎるということはありえないのです。書きましょう。
申請しましょう。

 申請のとっかかりとしてネットで「研究  助成金」でググれば、それはそれは山ほどひっかかりま
す。うまく探せますか?しっかりキーワードを選んで検索してみてください。ネットは絶大な威力を
発揮しますが、それでもなかなか自分にふさわしいものは見つけにくいですね。もっと効率的な情報
源はどこにあるのか?7節のリストとともに、そのあたりを述べていきたいと思います。

 探して見つけては書いて申請する。これを数回繰り返すうちに、研究の足場は固まり、研究は進ん
で行きます。そうこうしているうちに申請も通るようになると思います。

5. 申請書の書き方: 僕はこうして書いてきた
 はじめに言った通りですが、この本は「こう書けばよい!」などというデタラメなことを言うつも
りはないということを再度お断りしておきます。これは当然ですね。なので、「僕はこうして助成金を
獲得してきた」的な書き方で話を進めたいと思います。

 申請書を書く際にやってしまいがちでやってはいけないのは「論文を書いてしまう」ということで
す。言われればその通りと思う人も多いでしょう。でも「え?どういうこと?」と思う人も多いんじ
ゃないでしょか?なぜそれでは通らないか、ということについて述べていきます。

6. 初公開!網谷の申請書(の一部): 立石財団の場合
 僕が立石財団に申請した時の申請内容を、差し支えない範囲で掲載し、「どういうことに気をつけて
書いたか?」を述べていきます。四角で囲まれた部分が実際に申請書に書いた内容です。その後にポ

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イントをおさえて行きます。僕の申請研究テーマは以下のようなものでした。

[助成課題名]創造活動支援のための人間-機械系の研究

 タイトルからもお察しの通り、理系だか文系だかわからないモノだと思います。そもそも僕は理系・
文系という分類にそれほど意味があるとは思っていません。なので、ある意味本書が「どちらの分野
にも役立つ」ということを期待して書いております。

7. 研究助成金情報源
 分野によっていろいろあります。僕が探した時に見つけたもなので主に自然科学・工学系ですが、
列挙します。芸術系も含まれています。募集時期などの詳細は年によって異なるので、必ずご自分で
お調べください。

8. おわりに
 本書で述べてますが、研究助成金を申請することのメリットの価値は計り知れません。そしてそれ
を提供してくれる機関はたくさんあります。あまりよい言い方ではないかもしれませんが、利用しな
い手はありません。

 研究助成金の申請に関する情報は非常に職人的というか、徒弟制度的というか、「実際のところどう
やってどうするものなのよ?」という疑問に具体的に答えてきた書籍や情報源は少なかったと思いま
す。僕が申請した時は、授業で「研究企画」というのを受けてみましたが、やはりマス講義。限界が
あります。となると、自分の担当教官に見てもらって、ということになるわけです。まさに徒弟制度
ですね。

 科学技術立国や大学院重点化計画を掲げた日本ですが、その甲斐あってというかそのせいでという
か、博士課程進学者数はある程度増加しました。その結果、受け入れ先の数をポスドクの数が上回っ
てしまっています。

 研究助成金がなければ受け入れ先頼みになるわけです。それはそれでよいですが、こうした現状で
は博士課程に進学する、というのがかなりネガティブな選択になってしまうのも無理はありません。

 この現状を打破するには、やはり自分で研究費をとってくるポスドクになる必要があるということ
だと思います。研究者が不幸せな国を科学技術立国と呼べるでしょうか?

 僕は現在某財団の振興賞にも応募しています。さらに現在 CCS でこちらの博士課程の人と組んでや


っている研究に関しても助成金を申請しよう、という話が出ています。まだ話ですが…。

 大変ですが、やります。というのは研究が進むからです。学会に出席しやすくなるからです。さら
にお金も手に入って、必要なソフトウェアや機器を購入できるからです。モチベーションは単純です。

 研究者のみなさん、決起しましょう。日本を本当の科学技術立国にしましょう。夢を見て、見せて

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は叶えていくのはあなたです。

謝辞

 博士課程のうちの2年間をご支持してくださいました財団法人立石科学技術振興財団ならびに現在
私の研究および生活をささえていただいております日本学術振興会に対しまして、この場をかりて心
よりお礼を申し上げたいと思います。

 また、上記の申請において、申請書作りからポスター作りまで大変お世話になりました先生方に深
く感謝の意を表明したいと思います。

 そして最後までお読みくださいました読者の皆様、どうもありがとうございました。研究というも
のを日本で盛り上げて行きましょう。

著者について

網谷 重紀
1975 年生.
1998 年東京大学工学部産業機械工学科卒業.
同年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻入学.
2001 年同研究科先端学際工学専攻博士課程進学.
2004 年博士(工学)取得し, 現在日本学術振興会海外特別研究員として
University of Technology, Sydney (UTS)の Creativity & Cognition Studios (CCS) に勤務.
ACM, 情報処理学会,人工知能学会会員.

 さらにくわしくは以下のところへ。

website: http://shigekifactory.com/
email: shigeki@shigekifactory.com

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