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在宅診療の場で簡便にCGAを行うための教育ツール

『modified-CGA』

佐藤 健太
• 道東勤医協釧路協立病院 内科
横林 賢一
• 広島大学病院 総合内科・総合診療科
今藤 誠俊
• 日本生協連医療部会家庭医療学レジデンシー・東京 生協浮間診療所
藤沼 康樹
• 日本生協連医療部会家庭医療学開発センター 生協浮間診療所
高齢者総合機能評価
CGA : Comprehensive geriatric assessment

 英国の老年科医マージョリー・ウォーレン
が1930年代に提唱した概念
– 医学面、心理・社会面、機能面、環境面の
観点から高齢者の機能と問題点を評価
– 包括的な治療・フォローアッププランと連係

– 「全人的ケアマネジメント」を体系化・標準化し
長期にわたり評価・管理を行うことで高齢者の
予後を改善する
CGAの効果
 死亡率低下
 在宅生活期間延長
 入院率低下
 身体機能維持、転倒予防
 認知機能維持、周術期せん妄予防
 医療費は増えない
 過剰な薬剤の整理
The value of Comprehensive Geriatric Assessment. Brain C. Scanlan. Care Management Journals; 2005; 2-8.
Comprehensive geriatric assessment: a meta-analysis of controlled trials. Andreas E Stuck, et, al. The Lancet; 1993; 342; 1032-36.
CGAの評価項目
 ADL
– Katz Index
 IADL
– Lawton & Brody
 認知機能
– Mini-Mental State Examination (MMSE)
 うつ
– Geriatric Depression Scale (GDS)
 老年症候群・Geriatric giant
– 尿失禁、転倒、視力障害・難聴、栄養障害
 社会サポート
– 家族・友人の援助状況、公的サービス
CGAの問題点

 項目が多く、内容も詳細
– チェック式:MDS-RAPs (米国Nursing homeで使用)
– 簡易版 :10分間スクリーニング
(Age-Friendly PHC Centres Toolkit, WHO, 2007)

 エビデンス創出が困難
– コントロール群にも影響がでる
– 複数の小さな介入の積み重ねで効果を発揮するた
め大きなサンプルサイズを要する
→日本の自施設でも有効かどうかの検証が困難
日本での現状

 訪問診療で簡便・気軽に使用可能な
「訪問診療の導入時および安定期のケア
モデル」が存在しない

 CGAの普及が進まず、各医師が個人の経
験に基づいて訪問診療を行っている

 医学生・初期研修医への標準的な教育も
ない
目的

 CGA を簡易化し、訪問診療「導入時」および
「安定期」に気軽に使用できるケアモデルを
開発し、有効性を検討すること

 日常的に提供できる標準化された在宅医療
を普及し、効率的な医学教育にも活用できる
ツールに発展させていく基礎とする
理論モデル

CGA実施 • 家で暮らす
• 機能維持
• 認知症
• 系統的評価 • 入所率減尐
• 廃用
• 早期発見 • 死亡率減尐
• 孤立
• 早期介入 • 薬剤副作用減尐
虚弱高齢者 • 医療負担軽減

元気な高齢者
普及に貢献
簡便な実施 →たくさんの施設で気軽に行える
教えやすい →たくさんの将来の医療者に広められる
対象・方法 : 指標の作成

 在宅医療に精通した3名の医師で
訪問診療導入時のケアモデル(指標1)
安定期のケアモデル(指標2)を開発した

 各指標は、訪問診療時に聴取すべきと考
えられる項目の「語呂合わせ」で作成した
指標1: Start-up CGA (s-CGA)

 Support :公式・非公式サポート

 Cognition :認知機能

 Geriatric giants:うつ・尿失禁・転倒

 ADL :ADL / IADL / AADL


※CGAの主項目を押さえつつ、覚えやすいことを意識した
指標2: Modified CGA (m-CGA)

 Medication :内服状況・減量できるか

 Care the caregiver:介護者のケア

 Geriatric vitals:五快
快眠・快食・快便・快動(ADL)・快重(体重変化)
 Analgesia:緩和ケア
身体・心理・社会・霊的苦痛の確認・緩和

※訪問診療で毎回確認したい項目をリストアップした
対象・方法 : 使用感のアンケート

 医療生協家庭医療学レジデンシー東京
(以下CFMD)に属する後期研修医・フェ
ロー・指導医に、メーリングリストで同指
標を公開

 2週間経過した時点で、同医師へ指標2
に対するWebを用いたアンケート調査を
行い有効性を検討した。
結果

 CFMDメーリングリストに属する40名の
うち、14名から以下の回答が得られた
「安定期・維持期の訪問診療の質
が向上すると思うか」

とてもそう思う8名、そう思う5名、どちらでもない1名、
そう思わない0名、全くそう思わない0名
「学生や研修医の教育に使えると思うか」

とてもそう思う11名、そう思う2名、どちらでもない1名、
そう思わない0名、全くそう思わない0名
「今後も使おうと思うか」

とてもそう思う9名、そう思う5名、どちらでもない0名、
そう思わない0名、全くそう思わない0名
考察

 mCGA(指標2)の使用により
安定期・維持期の訪問診療の質が向上し、
学生・研修医教育にも有効である可能性
が示唆された。
プランの実行
毎回「m-CGA」聴取

問題点の抽出
ケアプラン作成

CGA実施 「s-CGA」実施

退院前 往診導入時 以前から往診中


カンファレンス カンファレンス の安定患者
研究の限界
 指標使用者の主観的満足度だけで評価
– 患者予後・満足度・QOLなどで有意差を出す
ためには、多施設共同研究でサンプル数を
稼ぐ必要がある
– カークパトリックの4段階評価を参考に、医学
生・研修医の学習効果を測定する

 2指標に組み入れる項目の選択方法に
科学的妥当性がない
– 先行研究の解析や、デルファイ法による専
門家の意見の集約などを用いて再構築する
今後の課題
 sCGA・mCGAを診療所かかりつけ高齢者
全例に使用し、患者のQOL・機能予後、
mCGA実施率等の推移を検討する予定
– 必要に応じて多施設共同研究も検討

 sCGA・mCGAを組み込んだ医学生対象の
学習プログラムを作成し、効果を検討する
ご清聴ありがとうございました

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