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日本放射線技術学会雑誌
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はじめに
国立成育医療センターは平成14年 3 月,第 5 番目のナショナルセンターとして東京都世田谷区に開院した.“成育医療”とは,胎児から小児,思春期を経て産に至るまでのリプロダクションサイクルを対象とした総合的かつ継続的医療をいう.成育医療実践のため以下の 6 項目を掲げることができる.1最適な医療を供給するためチーム医療を行う2いつでも(365日,24時間誰にでも開かれている3成育医療に関する救急医療を行う.4こころの問題に配慮した医療を行う.5アメニティに配慮した医療を行う.6年齢に応じた教育環境を整備する.特に小児医療に関してマスコミを中心に何かと取り沙汰されている昨今,当施設が果たすべき役割は大きいと考えられる.われわれはチーム医療を担う一員として必要な知識を全員が共有することを目指し,マニュアル作成を試みた.
1
1-1 小児の特徴
小児胸部単純X線撮影では,心拡大を判断する場合,心胸郭比はあまり役に立たず,正面像で心尖部が側胸壁に接している場合,また側面像で心陰影が胸郭前後径の半分以上を占める場合,気管や左主気管支が後方に圧排されている場合に心拡大があると判断される.出生時には通常,胸骨の化骨核は 3 個確認でき,半年後には 5 個確認できるようになる.チアノーゼ型先天性心疾患の約半数に早期癒合がみられ,ダウン症候群の75%に過剰分節がみられる
1)
新生児は鎖骨の弯曲が強く,時に骨折様に投影されることがある.
1-2 撮影法
胸部撮影は立位正面後前方向の吸気撮影が基本である.両上肢は挙上させ肘関節部分を持つと同時に頭部側面を固定し,体がねじれないように腰部をしっかり固定する.鞍馬などに座らせ足の力による抵抗をなくすと上半身の固定が容易になる.呼吸は不規則であるため十分に観察し,撮影タイミングを逃さないように心掛けるべきである.気管,気道が確認できるよう頸部まで含め,下顎骨が肺尖部に重ならないよう下顎を上げる.このとき,逆に上げすぎて後頭部が入り込まないよう注意する.側面撮影でも両上肢は挙上させ胸郭内気道や前上縦隔が明瞭に描出されるようにする.
1-3 画像のチェックポイント
・上気道部から肋骨横隔膜角まで含まれているか.・正しい体位であるか.鎖骨,肋骨が左右対称であるか.・吸気であるか(横隔膜が後部肋骨の第 8 肋骨と交していれば吸気とみなす)・体動や呼吸によるボケはないか.・縦隔内の気管,肺血管影は明瞭であるか.・脊椎と肺の境界が明瞭であるか.
1-4 小児特有の症状・疾患・正常変異
胸部単純X線撮影でみられる胸腺陰影は多彩な形態 を示すため,胸腺は異常と間違えやすい代表的な臓器である.胸腺は前縦隔の胸郭入口部から横隔膜までの間に存在し,その大きさには個人差がある.ストレスやステロイド治療により小さくなり,それらから解放されることで元以上に大きくなることもある.最も大きくなるのは思春期で生下時の約 2 倍になり,その後は脂肪変性が始まる.胸部単純X線写真では 2 歳以下で胸腺陰影を認め,5 歳以上の学童でも 5%は胸腺を認識することができる.時に腫瘤様や肺炎様に見える場合もある.胸腺は正常構造であるため縦隔臓器を圧排偏位しないことで縦隔腫瘍と鑑別可能である
2)
日常よく遭遇する小児特有の疾患としてクループが挙げられる.クループとは吸気性喘鳴,咳,嗄声をきたす喉頭閉塞性疾患で,好発年齢は生後 3 カ月から 5歳である.主に声門下狭窄をきたし,正面像ではこれが明瞭に認められ,声門下部に通常認められる肩状陰影の肩部分が消退して“wine bottle appearance”とな
当院における小児単純X線撮影マニュアルために−
曽根原純子
国立成育医療センター放射線診療部
臨床技術講座
 
2003 年 2 月
当院における小児単純X線撮影マニュアルより良い画像を提供するために−
(曽根原)
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価,また状態の悪い患児の撮影に適している.側臥位は左側臥位とする.立位後前撮影は,重力により臓器の降下が起こり画像上濃度が不均衡となるため,消化 管の位置の把握,下腹部の淡い石灰化などの画像情報が失われやすい.また,重篤な患児の場合は状態を悪化させる危険性があるため注意が必要である.画像診断のアプローチとして腹部単純X線撮影は基本であるが,所見が特異性に乏しいため,疾患の診断においては超音波検査をはじめ消化管造影,CT検査,M RI査といった他のモダリティを適宜組み合わせることが重要である.
2-3 画像のチェックポイント
・横隔膜から恥骨まで含まれているか.・ガスパターンは明瞭であるか.・体動や呼吸によるボケはないか.
2-4 小児特有の症状・疾患・正常変異
小児の腹部疾患および消化器疾患の主症状として遭遇する頻度が高い嘔吐は,患児の年齢に応じたさまざまな要因が挙げられる.新生児(生直後∼1 カ月)では胃食道逆流現象,新生児敗血症,壊死性腸炎,肥厚性幽門狭窄症などが,乳児(1 カ月∼2 歳)では胃食道逆流現 (カラシア)・乳糖不耐症・感染症(尿路感染,肺炎中耳炎,髄膜炎・ウィルス性腸炎・肥厚性幽門狭症・腸重積などが,年少児(25 歳)では感染(中炎,尿路感染,肺炎,髄膜炎)・ウィルス性腸炎・腸重積・虫垂炎などが,年長児(5∼18歳)ではウィルス性腸炎・食中毒・精神的要因などが挙げられる
4)
2-5 腹部臥位正面像における腹腔内遊離ガスのサイ
2)
・cupolar sign:上腹部中央部の横隔膜下面にガスが貯留し半月状に描出される.・football sign:前腹壁直下に溜まったガスにより肝鎌状靭帯が浮き上がり線状陰影として見え,腹水によりガス像の輪郭が丸く見え,全体としてラグビーボール様に描出される.・triangle sign:腹壁や腸管壁によってできる腹腔間隙にガスが溜まり三角形に描出される.・inverted V sign:左右臍動脈の周囲にガスが存在する場合それらが浮き上がって見え,逆V字形の線状陰影として描出される.・air dome sign:肝の存在により暗く見える右上腹部に,前腹壁と肝の間に溜まったガスによりdome形の明るい陰影が描出される.・subhepatic gas:M orison窩にガスが溜まることで肝の下角や胆
の輪郭が描出される.る.このため小児においてクループ疑いで胸部単純X線撮影を行う場合はもちろんのこと,喘鳴,咳などの症状がある場合も肺野だけでなく頸部まで含めることが重要である.この所見は吸気撮影でないと認め難いため,撮影のタイミングも重要である.また,患児の状態が急に悪化する恐れがあるため,撮影時には適切な処置のできる医師が同行することが望ましい.仰臥位にすると重力により悪化する恐れがあるため,仰臥位をとらせてはならない
2,3)
また,特に 1∼3 歳の乳幼児で多い撮影目的とし異物誤飲が挙げられる.気道異物のほとんどは食物性異物(多くはピーナッツ)で,右主気管支に多くみられ,主な症状としては咳,喘鳴などである.通常,食物性異物は胸部単純X線写真上で同定するのは困難である.気道内部に異物が存在する場合,呼気時に異物よりも末梢の空気が排出されないことでair trapping起こり限局性の過膨張を生じる.一般的にair trappingの診断には吸気時,呼気時の撮影が有用で,患側肺はair trappingにより吸気時と呼気時での肺容量の変化が乏しく,横隔膜は動きが制限され,縦隔は健側に偏位する.吸気時と呼気時での撮影が困難な場合は両側臥位撮影が有用である.これは正常では下側の肺が呼気状態,上側の肺が吸気状態となるが,異物が存在する場合では下側でも吸気状態のままでありair trapping診断が可能となるためである
2,3)
2
2-1 小児の特徴
小児は,成人に比べ臓器が小さく体脂肪が少ないため,画像上臓器の識別は困難である.身体的特徴として消化管ガスが多いことが挙げられ,低年齢ほど目立つ.したがって,新生児では小腸内にガスが存在しても異常とはいえない.腹部単純X線撮影では消化管ガスを圧排する腫瘤,消化管閉塞,腹腔内遊離ガスの診断が可能である.また,腹部に留置されているカテーテル類の位置確認やチューブトラブルのチェックを目的とした撮影依頼も少なくない.
2-2 撮影法
腹部撮影は背臥位正面前後方向の呼気撮影が基本となる.横隔膜から恥骨下端までを含め,曝射時間が可能な限り短くなるような条件で撮影する.臥位撮影では両肩を固定し大腿を揃えて両膝関節を固定し,特にねじれに注意する.立位撮影では胸部正面撮影と同様に十分に上半身を牽引して腰を引かせないような固定が必要となる.側臥位撮影およびcross table lateral(背臥位側面方向)撮影では,腹腔内遊離ガスや消化管の液面形成の評
 
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・陰
内ガス:まだ開存している鼠径管を通って腹腔内遊離ガスが鞘状突起内に侵入したもの.・網
内ガス:W inslow孔から腹腔内遊離ガスが肝と胃の間の盲網内へ侵入したもの.
2-6 新生児の腹部立位正面像における消化管閉塞部位の診断
1,2)
・single bubble sign:上腹部に一つの大きな液面形成を認めた場合は,肥厚性幽門狭窄症による胃の拡張を考える.・double bubble sign:拡張した胃と十二指腸を認めた場合は,十二指腸閉塞を考える.・triple bubble sign:胃,十二指腸に加え三つめの液面形成を認めた場合は,近位空腸の閉塞を考える.さらに多数の液面形成を認める場合は,遠位小腸あるいは大腸レベルでの閉塞を考える.
3
3-1 小児の特徴
は,時には大1 対),小1 対)側頭泉門2 ,後側頭泉門(2 4 泉門ある.これら泉門は生後に閉じるもので,小泉門が生後 3 カ月で最初に融合し,前側頭泉門は 6 カ月,後側頭泉門は18カ月,大泉門が36カ月で融合し頭蓋骨を形成する
1)
脳は乳幼児期から小児期に著しく発達するが,必ずしも頭蓋骨の発達と並行ではなく,脳の表面が頭蓋骨 内板を圧迫することによって指圧痕の増強が起こる.これは 2∼3 歳と 5∼7 歳の二つのピークがあり,純写真上で打ち抜き像が認められる.新生児では指圧痕は認められず,認められた場合は異常所見となり,10歳以上の場合も同様である
1)
副鼻腔は,出生時にはほとんど認められず,上顎洞,篩骨洞,前頭洞,蝶形骨洞の順に発達する.上顎洞と篩骨洞は生後 6 カ月頃から発達し始め,前頭洞は6 歳頃に含気が認められるようになる.蝶形骨洞は10歳頃から発達する.副鼻腔の大きさや形は,個人差や年齢差が大きい.2 歳未満では,正常でも副鼻腔粘膜が厚いうえ涕泣により上顎洞の含気は容易に低下するため,その所見の病的意義については慎重に評価すべきである
1)
3-2 撮影方法
頭部の固定の補助具には主に発砲スチロールを用いる.正面撮影は,頭部の両側から発砲スチロールで挟み込むようにして固定し,OM ラインは顎の形にくり抜いた発砲スチロールを上から押さえるように用いて角度を調整し,同時に固定する.側面撮影は,片側を軽い半円に切り凹型にした発泡スチロールで後頭部を押さえ,かつ下顎を押さえて固定する.小児の特異的な撮影としてアデノイド撮影と,それに伴う副鼻腔撮影がある.アデノイドは真側面で顎関節より下方 2cm,前方 2cmの点にカセッテに対して直に入射する.下顎は,鼻棘と後頭隆起を結ぶ面が水平になるように軽く上げ,口を閉じ鼻呼吸時のタイミングで撮影する.小児は呼吸時に両肩が挙上し,体は後ろに傾きやすいので,頭部をしっかりと固定する.副鼻腔撮影は,そのほとんどがウォーターズ撮影である.小児では永久歯が上顎洞下方に投影され読影の妨げとなるため,成人よりも角度に注意を要し,ドイツ水平線をカセッテに対して55
˚
60
˚
で撮影する.小児 と成人ではドイツ水平線の角度はほとんど同じであるが,特に 5 歳以下の小児のポジショニングでは,顔面骨が小さいために鼻尖部がカセッテにつく角度となる.ポジショニングは成人と同じだが,そのポジショニングの“見ためが全く異なるのは,ウォーターズ撮影の特徴である.
3-3 画像のチェックポイント3-3-1 頭部
・左右のずれはないか.・縫合部,指圧痕は明瞭であるか.・石灰化,錐体部が明瞭であるか.
3-3-2 アデノイド
・両下顎枝が重なっているか.・鼻腔が描出されアデノイドが確認できるか.
3-3-3 副鼻腔
・左右のずれはないか.・下顎の出し過ぎ,引き過ぎはないか.・錐体部が上顎洞の下縁に描出されているか.・上顎洞内に歯牙の投影を少なくすること.
3-4 小児特有の症状・疾患・正常変異
アデノイドは,3 歳頃より発育が始まり 6 歳頃で最大となり,12∼13歳で退縮する.前方は鼻腔に,側方は耳管を介して中耳に,下方は咽頭,喉頭に通じているため,肥大や炎症が生じると隣接する耳鼻咽喉領域に影響を及ぼす.臨床的には肥大だけでは異常ではなく,肥大による二次的疾患(副鼻腔炎,滲出性中炎,急性中耳炎,耳管狭窄症などが生じると問題となる.アデノイドの大きさは側面像により計測することがきる(Fig. 1
5)
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4-1 小児の特徴
小児の椎体は,成人と比較して椎間腔および環椎前

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