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原発 緊急情報(6)

放射線は目に見えない.でも火山の噴火では煙は見える。だから、福島原発
からの放射線物質がどのように動くかを考える時に大変参考になる.

幸い、最近、噴火した鹿児島の新燃岳の噴火と灰の衛星写真があるので、まず
はそれを参考にしたい。

この写真の左側で白い煙が出ているとこ
ろが新燃岳であり、下に鹿児島湾、写真の
中心が宮崎の海岸と日向 だ。

噴火の煙は「四方八方」に行くのではな
く、風に流されて一方向に進む.このこ
とが放射線でも重要だ。放射線物質はこ
の煙と同じように動く.

気象予報にコンピュータが使えるようになって久しい。下の図は新燃岳から
の噴煙がどのように流れるかを計算したものである。

現実の状態より少し拡がっているが、それ
でもだいたいの傾向が分かる.新燃岳の
噴煙の流れも大切だが、今回の福島原発
からの放射線物質の行方とどこに居る人
たちがどのぐらい被爆するかを知ること
はさらに重要だ.

一刻も早く計算結果を出してもらいた
い.

また、それまではこの新燃岳の噴煙の写真を参考にして、家族の居場所を決
めたら良いと思う.
(平成23年3月15日 執筆)

武田邦彦

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を逃げ出すべきか? »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(7) 東京を逃げ出すべきか?

福島原発の近くの人はもとより、東京に住んでおられる人も「本当にここに
いて大丈夫だろうか?」と心配されているだろう。

本来なら政府が国民の側に立って次々と情報を出し、みんなが「どうしたら良
いか」が分かるのが一番良い.

でもそれは望めないので、ここで少しでもご参考になればと思って、今度
は、おそらくドイツの人が急いで計算してくれたと思われるものを掲げる.

この計算は福島原発の風を参考にして放
射線物質がどのように風にのって行くか
を計算したものである。本来は気象庁が
2日前に出すものだが、日本より外国が
早かった.

普通は「西風」が吹いているから、その
時には放射線物質は太平洋の方に流れ
る.だから漁船などに警告を出さなけれ
ばならない。

でも風は北風もある。日本の上空は偏西風なので少し上空に上がると東に流
れるが、若干、南に流れることもある。

この図を見ると北風の時には東京を越え
て静岡あたりまで汚染されている(出所
があまりハッキリせず、一つの例と考えて
欲しい。データ自身の信頼性はまだ不明
だ。このようなシミュレーションを気象
庁が早くやって公開して欲しい.まさか
隠しているわけではないだろう).
でも、あまり驚かないで欲しい。というのは、今、福島で漏れている放射線
物質は数100ミリシーベルトだから、それが移動した状態のことを考え
る.

まず、一日中、北風が吹くわけではないので、時間が限定されること、第二
に遠くに来るので少し拡散すること、第三にもともとものすごい量の放射線
物質ではないこと、である。

従って、私の家族に小さい子供がいたり、妊娠している人がいた場合、1,2
日まって様子を見る。微量の放射線は今日中に東京、神奈川ぐらいまで来る
だろうが、それはごく微量だろう.

その様子を見ても放射線障害になる可能性が低いからだ。

私も今夜、もう一度データを解析してみるが、今日はそっと戸締まりして寝て
も大丈夫である.

(平成23年3月15日 執筆)

武田邦彦

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(8) 放射線はどこまで行くか?

福島原発の問題は第2段階に入りました。

つまり、どこで爆発が起こるかというのはこれからも警戒しなければなりま
せんが、とりあえず原発で放射能物質が漏れることは確実になった事、それ
が400ミリ シーベルトと健康にかなりの影響を及ぼすようなようになった事
です。この二つで第2段階に入ったと考えられます

ここで、今回は、放射線についての知識を深め、自ら判断できる情報を提供
したいと思います。

・・・・・・・・・

一般に放射線と言っているものには2種類あって、

1) レントゲンのような「放射線」、つまり光や電子と同じように四方八方
に飛び散って行くもの、

2) ガス(おならのようなもの)やミスト(霧吹きからの霧や煙のようなも
の)

があります。

学問的にはこの二つを分けて呼びますが、般的には「放射線」とか「放射
能」とか区別します.

この2つをいつも区別すると非常にややこしいので、このブログでも今まで
一般的な言い方をしてきました。でも、福島原発の汚染から逃れるために
は、この区別を簡単に理解しておかなければいけないと思います。

・・・・・・・・・

まず、福島原発の敷地の中に強い放射能物質があり、そこから放射線が出て
います。

この放射線は四方八方に散りますし、もともとそれ程強い光でもなく、また
放射線が電子の場合には、空気中を進むと空気中のいろいろな物質にぶつ
かって止まります。

福島原発の上空にいれば、このような放射線にさらされることもあります
が、人間は地上にますので電子が地上を進むと建物にぶつかりますから遠く
まで行くことはないと言っていいでしょう。

テレビの解説者が「放射線は四方八方に飛び、距離が離れればどんどん弱く
なるから大丈夫だ。東京等には全く関係がない」等と間違ったことを言って
いるのは、福島原発からのもので「放射線」だけを問題にしているからで
す。

御用学者と言っても良いかもしれません。

・・・・・・・・・

それではチェルノブイリの時になぜ遠くの人が被害を受けたのかというと、
実は「現場でチェルノブイリの処理に当たった人は放射線で死んだのです
が、遠くの国民は「放射能を持った物質」で被害にあったのです。

この地図は、チェルノブイリの爆発の
後、放射能物質がどのようにロシアの大
地に飛んでいったか?という図です。

ちょっと見にくいのですが、チェルノブ
イリの原発は図の中心にあります。そこ
から強い放射能を持つ物質が飛んでいっ
たのですが、図を見るとわかるように二
つの方向があります。

一つは、チェルノブイリからポーランドの方に西側に進んだもので、おおよ
そ300キロぐらい飛んでいます。

もう一つは、チェルノブイリから東北東に流れたもので200キロぐらいのと
ころと、500キロメートルに強い汚染が見られました。

ちなみに、福島原発から東京までの距離は約230キロですからチェルノブイ
リの図に自分のいる所にしるしをつけると、だいたい検討がつきます。

風が問題ですから全く同じ距離でも全然、汚染の程度が違います。例えば、
チェルノブイリから200キロ西のところは相当強い汚染を受けています
が、200キロ東南東は全く汚染されていません。

風に乗って一筋になって流れますから遠くに離れても汚染は強いままにであ
まり弱くなりません。

また、所々に黒いところ(汚染の強いところ)があるのは、雨が降ると雲の
中に含まれている放射能を持つ物質が落ちてくるとか、気流の関係などがあ
ります。

でも第1には風の向きであることがよくわかると思います。

・・・・・・・・・

今は緊急時ですから人の批判をしても仕方がないのですが、よく理解するた
めに、少し問題点を指摘しておきます。

実はこのようにチェルノブイリの例もあるので、原発に何かがあって放射能
の物質が漏れた場合、どのようにそれが流れるかということは原発を建てる
ときに検討をしています。

福島原発も古く立てられたものでもあり、さらに追加して増設されましたか
ら、その時に気象データ等を詳細に検討されているはずなのです。

それを公開すれば、それだけで随分、危ない方向がわかると思っています。

・・・・・・・・・

チェルノブイリの例を理解するために、注意したいことが三つあります。

一つは、悪い方向のことですが、漏れた放射の物質が少なくても(福島の
今)多くても(チェルノブイリ)、「どのくらい遠くに行くか」ということ
は変わらないということです。

つまり、原発のところで100だとして、それが50に減る場所は、もとも
と10でそれが5になるところと同じということです。

二つ目も悪いことですが、汚染物質は風に乗って流れます。例えば風速1メー
トル(そよ風)では、1秒間に1メートル程度ですから、1時間に3600メー
トルつまり3.6km、10時間で36キロとなります。東京に到達するのは2日
半です。

わたくしが昨日、少し様子を見たいと書いたのはこのことを言っています。
でもかなり早いと思う人も多いでしょう。

三つ目は良いことなのですが、チェルノブイリに比べると福島原発が持って
いる放射能物質の量自体は「多い」のですが、今のところ漏れている量は
「少ない」のです。

従って、この三つを考えると一両日は少し様子を見るのが良いと私は判断し
ました。

ただ、 城県の北のほうに住んでおられる方は早めに来ますので、東海村等
で放射能を常時計っていますから、自治体はデータをどんどん公開して、住
んでいる人が自分で判断できるようにするのがよいと思います。

(平成23年3月16日午前9時 執筆)

武田邦彦

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の方を向いてくれ! »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(9) 気象庁:国民の方を向いてくれ!

世界の気象庁は情報を出してくれている(外電からそのまま。この記事の著
作権はこの際人の命に関わるので使用を認めてもらいたい)。

・・・・・・外電・・・・・・

世界気象機関(World Meteorological Organization、WMO)による


と、福島第1原発で爆発が起きた12日と13日の風は、それぞれ北東と東に向
けて吹いていた。原発から太平洋に抜ける方向だ。「この時の福島県沖の気
象状況から判断すると、放射性物質は陸地の方向には拡散しなかったとみら
れる」と、WMOの防災プログラムの責任者は語る。

米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric


Administration、NOAA)のモデリング・プログラムを用いて放射性物質
が飛散する可能性がある地域を予測した米国の気象学者、ジェフ・マスター
ズ(Jeff Masters)氏は、放射性物質のほとんどは日本の東北地方の太平
洋岸にある福島第1原発から東の太平洋方向に拡散し、少なくとも5日間は太
平洋上空を浮遊するとみているが、人体に有害となる放射性物質が7日間以上
も大気中を浮遊し続けて2000マイル(約3200キロ)を超えて拡散する可
能性は、ほぼないだろうとみている。

 一方、フランス気象局(Meteo France)予報部門のシリル・オノレ
(Cyril Honore)氏はAFPの取材に、「日本は温帯に位置するため、風は
おおむね西から東に向かって吹く。だが、気団(温度や湿度などがほぼ一定
の空気のかたまり)や雲は何かに囲われているわけではないので、乱気流が
起きれば垂直方向にも水平方向にも風の吹く方向に拡散していくだろう」と
話し、放射性物質を含んだ微細なちりが福島第1原発から広範囲に広がる恐れ
があると指摘した。」

(ここまで外電)
世界気象機構、アメリカ海洋大気庁、およびフランス気象庁はいずれもその
任務を果たし、福島原発付近の風から汚染がどのように拡がるかについて
「過去、現在、近い将来」についてコメントしている.

・・・・・・・・・日本の気象庁!!・・・・・・

天皇陛下が国民のことをご心配になっているのに、日本の気象庁は「過去、現
在、近い将来」に福島原発の放射線物質がどのように流れるかについて、
まったく発表をしていない。

日本には気象庁はなかったのか!

・・・・・・・・・

今のところ、福島原発からの放射線物質の漏洩はそれほど大きく無い.従っ
て、半径50キロぐらいは危険があるが、それより遠い北側と西側には問題
がない。東は海だから良いとして、南は引き続き原発の状態と風に注意をし
ておいた方が良い。

昨日から政府は「放射能が急激に上昇した」とか「ヘリコプターが放射線で
近づけなかった」と言うだけで、線量を言わなくなった。

テレビも昨日から「高い方の放射線の値」の代わりに「低い方の放射線の
値」を言い始め、値が「1時間あたりの線量」なのにあたかもそこにずっと
住んでいても大丈夫のように言い始めた。

生活をしている人を相手に言っているのだから、少なくとも1ヶ月(約10
00倍)のデータを言うべきだ。つまり、テレビが「10マイクロシーベル
ト」と言ったら「10ミリシーベルト」と考えて家族の安全を判断した方が
良い。

ところで、私はまだ東京は大丈夫だから、昨日、名古屋から東京へ来てい
る.

・・・・・・・・私のスタンス・・・・・・

私のブログに対して「危機を っている」とのご批判があるが、私は「あり
のままの事実と判断を示す」事に終始していて、最終的な判断は読む方に御
願いしている.
「危機を る」とか「冷静になることを求める」などを考えると、自分の判
断が入るので、それは入れていない。もし、私のブログを見てパニックが起
こっても、それは事実によってパニックが起こるのだから、やむを得ないと思
う.
もう一つ、私と政府やマスコミが違うのは、政府やマスコミは「今」のこと
だけを言っているが、私は「過去、現在」から見た「近い将来」に焦点を当て
ている.
その理由は皆さんが「どうしたら良いか」と判断する時には「今」ではなく
「近い将来(1週間ぐらい先)」を考えると思うからである.
・・・・・・・・・

ところで、外電によると、

アメリカ人は80キロ圏内からの避難を勧告した。

フランスは日本に居住しているフランス人を退去させるためにエール・フラ
ンス(準国営の航空会社)に航空機の派遣を要請した。

ドイツ政府はドイツの航空会社に対して、成田着の航空機を関西空港に変更
するように勧告した。

(平成23年3月17日 朝8時 執筆)

武田邦彦

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コミ、ごまかし。危ない?! »

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原発 緊急情報(10) 政府・マスコミ、ごまかし。危ない?!

政府とマスコミがごまかしを始めた。これはどうしてもすぐ多くの人が気が
ついて理解しておかなければならない。

それは「1時間あたりの放射線」と「そこに住んでいる子供が受ける放射
線」の問題だ。実に危険なごまかしを始めた。

放射線の強さを「シーベルト」で示すが、これには「年間にあびるシーベル
ト」、「1時間あたりのシーベルト」、「白血病になるシーベルト」、「瞬
時にあびるシーベルト」と4つある.

この複雑なことを利用して、昨日から政府とマスコミは歩調を合わせてごまか
し始めた。子供をもつ親はその責任から、絶対に次のことを理解して欲し
い。(今、私は計算中)

・・・・・・・・・

まず、法律で決められた「普通の人は一年に1ミリシーベルトまで(自然放
射線を除く)」というのは、「1年間」だ。

政府発表やテレビで報道しているシーベルトは「1時間あたりのシーベル
ト」だから、1ヶ月少し(42日)住んでいるところの場合、それを100
0倍する必要がある。

白血病になるシーベルトは約400ミリシーベルトで、これは1時間でも1
年でもなく、そのままである。だから1時間400マイクロシーベルトのと
ころに1時間いても大丈夫だが、1ヶ月あまり住んでいると白血病になる.

レントゲンを受けると「一度に600マイクロシーベルト」の放射線を受け
るが、これは瞬時である.

・・・・・・・・・どのぐらいで何が起こるか・・・・・・
4シーベルト       死ぬ

400ミリシーベルト   白血病

1ミリシーベルト(1年) 法律で定められた限界

・・・・・・・・・・・・

1) 福島原発2号炉から放射線が漏れたときに枝野官房長官が発表した数値
は1時間に400ミリシーベルト。
(もし、その場所に1ヶ月少し住んだら、400シーベルトになり死
亡.その100分の1で死亡するから1日いたら死亡する)

2) 文部科学省が3月16日に発表した福島原発から20キロの地点(福島
県浪江町周辺)の放射線は1時間330マイクロシーベルトであった
(1時間あたりと思う)。
(そこに1ヶ月少し住んだら330ミリシーベルトになり、白血病にな
る数値・・・これをテレビでは「安全な放射線」と言っていた。)

3) 3月15日頃の東京の高い値は1マイクロシーベルトぐらいだった。
(東京に1ヶ月少し住むと、1ミリシーベルトで、1年ぐらい住むと子
供はかなり危険。胃のレントゲンが1回で600マイクロシーベルトだ
から、1ヶ月で2回のレントゲンを受けることになる。)

・・・・・・・・・

【政府のトリック】

政府やマスコミは「福島原発から20キロのところの放射線は、330マイ
クロシーベルトだから、胃のレントゲンの2分の1」という言い方をしてい
る。だから安全という.

しかしそれは「そこに1時間しかいない人」の事であり、住んでいる人では
ない。だから、1ヶ月あまり住む人は330ミリシーベルトを浴びることに
なり、子供も親も白血病になるだろう.

すぐ待避しなければならない。決して「安全な放射線」ではないのだ。

・・・・・・・・・
今、私(武田)は少し動揺している.

もし文部科学省が16日に発表した値が正しく、私の計算があっていれば、
政府は直ちに浪江町の人をもっと遠く(風上)に待避させる必要があるから
だ。

でも、まったくその気配はない.なぜなのか?

私の計算が間違っているのか? それでは浪江町の少し南の人はどうなのだ
ろうか?たとえばある地点で測定してみるとその3分の1の100マイクロ
シーベルトのところに住んでいる人は、3ヶ月住むと白血病になる.子供は
さらに早いかも知れない。

もう一度、慎重に考えてみる.もしこの計算が本当なら大変だが、どこかに間
違いがあることを願う.

原子力の専門の人、チェックしてください。もし、この計算が正しいと大変
ですから。間違えていたらすぐ訂正します。でも重要な事ですから。
南無三! 私の勘違いであってくれ!

(平成23年3月17日 午前9時30分 執筆)

武田邦彦

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がまでが危ないか:計算結果 »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(11) どこがまでが危ないか:計算結果

緊急情報の(11)で、放射線による健康被害について、昨日から政府やNH
Kが間違ったことを言い始めたので、少なくとも緊急にそれを言っておかな
ければいけないと思い記事を書きました。

記事について多くの専門家、大学の先生、それに勉強中の大学生等からも、
計算やデータが提供されました。

ありがとうございました。

重要な事だったので、もちろん、自分としては正しいと思うことを書いたの
ですが、万が一と思ってチェックをしてもらいましたが、考え方、計算など
は基本的な間違いはありませんでした。

・・・・・・・・・

その結果をまとめますと、

1) 原発の近くの町や、 城県の北の地域、福島市等はすでにやや危険な状
態にある、

2) 東京まで来ると今のところまだ危険な状態にはない、

3) データが部分的なので、全体的な見通しができない、

4) 健康な大人と、妊婦もしくは赤ちゃんとでは、放射線の感度が相当違う
ので、誰を基準にするかで危険度が変わってくる、

ということです。

・・・・・・・・・

ニコニコ動画の生放送でお話した通り、わたくしは政府の責任者としてでは
なく、「家庭のお父さん」として判断をしています。

家庭のお父さんという意味は、家には妊娠した人もいるでしょうし、赤ちゃ
んもいるでしょう。それから楽観的な見方もあるし、悲観的な見方もありま
す。

その中でわたくしは、やや頭の隅に赤ちゃんを考え、極端に悲観的ではな
く、でも多少は「万が一」ということも頭に入れて計算をしています。

これは「事実をそのまま見る」ということとも相反することではありませ
ん。つまり、赤ちゃんは現実にいますし、原発の処理がうまくいけば汚染は
なくなっていきます。逆に1ヶ月ぐらい続くこともあるのです。

そして私は福島に住むお父さんとして、「このままいった場合、子供を少し遠
くにやったほうがいいかどうか」ということを考えたのです。

さらに、今日だけのことを考えるわけにも行きません。今日のデータだけを
使うのではなく、おおよその今後の変化も加味しました。

・・・・・・・・・

重要なことですから。前提を細かく説明しておきます。

【第一】

まず、政府や NHKがどのように間違って言っているかというと、

1) 1時間あたりの放射線というを値は、わたくしたちにはほとんど関係が
ないのに、1時間あたりの放射線の値を言っていること、

2) それを全く関係のないレントゲンの場合などと比較していること、

です。

つまり、「1時間当たりの放射線が1ミリシーベルト」だったとします。これ
を仮に1秒あたりの放射線でいれば、0.3マイクロシーベルトになり、「全く
問題のない放射線の強さ」になります。

逆に、1年あたりの放射線とすると、約9シーベルトになるわけですから、
「全員が死亡する放射線の強さ」になります。

わたくしの注意点の第一は、政府や NHK が1時間当たりの放射線の強さ


を、それと関係ないレントゲンの量などと比較をしていることです。

1時間あたりの放射線の強さは専門家にはある目安になりますが、「自分がこ
こにいてよいのか、子供をここにおさせていいのか」ということを考える時
には無意味な数字だからです。

わたくしは今朝、その危険性に気が付いたわけです。

【第二】

一方、例えば、1ミリシーベルトのところ(1時間あたりでも1秒あたりで
も)にいても、それは24時間ずっと外にいる時です。現実的には、冬場でも
ありますし24時間外にいるということはありません。どんなに長い間外にい
てもせいぜい6時間ぐらいでしょう。

ですから例えば1ミリシーベルトという時にはそれを4分の1にし
て0.25シーベルトとして計算するのがよいと思います。

ただ家によっては換気の状態が違いますので、なかなか一概には言えないと
いうことがあります。かなり密閉性の良い家にいて、ほとんど外出しなけれ
ば10分の1ぐらいというデータもあります。

逆に、外から帰って来ても服の外に放射性物質がついているときに、それを
綺麗に払わなければ被曝する時間は長くなるということになります。

【第三】

また、赤ちゃんや妊婦が普通の人よりどのくらい感度が高いかということは
なかなか難しくて、一概に言えません。

おおよその目安は、赤ちゃんや妊婦は普通の人の10倍ぐらい安全性を見たほ
うがいいというところでしょう。赤ちゃんを育てている人はこのことがとて
も心配だと思いますので、今後も少し調べていきたいと思います。

今のところ、わたくしは家のお父さんとして、「自分はまあ大丈夫だけれど
も妊娠している女性もいるから、安全を見たほうがいい」というように考え
ています。

【第四】
最後に、今日のデータを使うか、今後1週間ぐらいに予想されることのうち
「やや悪い方を使うか」という問題があります。

今日のデータだけを使えば、良いデータもあれば悪いデータもあります。ま
た、今後1週間を考えると予想が外れることもあります。

しかし、福島原発の問題で冷却がうまく行き沈静化してしまえば、それはそ
れで良かったのではないかと思います。

危険を りすぎるという批判は必ずありますが、原発が上手く安全になった
ときだけのことを考えるのも問題です。

福島原発の容器が破裂して今の10倍ぐらいの放射線がでるようになったとき
のことを考えておけば、お父さんとしての責任は果たせるのではないかと思
います。

・・・・・・・・・

そこで、計算に入ります.

一昨日からのおおよそのデータを参考にして、「赤ちゃんがいる家庭で、福
島原発の容器が破裂して、放射線が10倍ぐらいになったとき。最低でも
1ヶ月ほどは一日の4分の1は外にいる状態で、今のところで生活しても良い
か」ということで計算します。

そうすると、

{元のデータ(1時間あたりのシーベルトの平均値)}*10(赤ちゃん)*
10(容器破裂)*0.25(外にいる時間)*1000(1時間と一ヶ月少
しの時間の比率)

=1時間あたりのシーベルトの平均値×25000

となります。

読者の方で大人の人は計算の値を10分の1に、原発は今の状態より悪くな
らないと思う人は10分の1にしてください。

ここで原発が今より10倍の放射線の漏えいになるとしたのは、政府が「福
島第一3号炉に水を追加するには17日が限度だ」とコメントした「限度
だ」ということを今より10倍としました。(「限度だ」では計算できない
から)

つまり、以下の計算は、

{今のところに1ヶ月以上は住むつもりで、赤ちゃんがいて、福島原発が今
より少し悪くなる}

ということが前提です.

・・・・・・・・・

1) 浪江町の人
文部科学省が測定した時の放射線が最大で330マイクロシーベルト、
最低が160マイクロシーベルトだったので、これをそのまま平均して
考えると(一日平均、もしくは今までの累計はデータが手元にありませ
ん)、
毎時245マイクロシーベルト*25000=約6シーベルト
     計算結果:死ぬ。
容器が破裂しない場合:
245マイクロシーベルト*2500=約600ミリシーベルト
     計算結果:白血病になる。

2) 高萩市 14日22時から15日22時まで1日間
平均放射線 毎時約2マイクロシーベルト
計算:2*25000=50ミリシーベルト
  計算結果  法律の許容値の50倍。白血病の4分の1

3) 福島市  文科省データ  毎時20マイクロシーベルト
     (一日の平均値不詳)
計算  20*25000=500ミリシーベルト
  計算結果  白血病

4) 東京   いろいろなデータが毎時0.1から1マイクロシーベルトぐ
らい
計算   0.1or1*25000=2or25ミリシーベルト
  計算結果  法律の許容値の2から25倍程度。
        やや危険。

となります。
これは「危険を ることも、内輪に計算することもしない」場合です.

このように計算しますと、

1) 原発に近い人は風上の遠いところに移動した方が良い、

2) 福島、高萩ぐらいのところの人はやや危険で、原発が沈静化すれば良い
し、容器が破損すると逃げた方が良い、

3) 東京はまだ少し余裕がある、

ということになります。

この計算結果は多くの方からの情報でまた修正しますが、福島、 城の地域
のデータでは時間あたり3マイクロシーベルトぐらいがでているので、赤
ちゃんや妊婦の方は注意した方が良い、東京はまだ少し余裕があるという事
になりました。

やや予想より厳しい結果になりましたが、これは赤ちゃん係数10、原発の
悪くなる係数10が効いています.赤ちゃんや妊婦はデータをさらに調べま
す.また原発が悪くなる係数はそれぞれの予想によって考えてください。

(自衛隊のヘリコプターの測定値は毎時80ミリシーベルトぐらいだった
が、昨日はさらに高かったと報告されている.80ミリシーベルトでは1時
間から4時間で白血病などになる。自衛隊員も可哀想だ.)

(平成23年3月17日午後2時 執筆)

武田邦彦

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(12) 逃げられない人のために

関西に実家等があってそこに逃げられる人は良いのですが、すぐに逃げると
ころと言っても心当たりがない人も多いと思います。

そこで、ここでは原発の影響があるところにお住まいで、しかも逃げるとこ
ろは簡単にはないという人のためのご参考に少し書いてみました。

・・・・・・・・・

その前に昨日あたりからメディアで言われている事で間違っていることを指
摘しておかなければなりません。正しい知識がないと判断が間違ってしまう
からです。

まず第1に今朝の NHK のニュースを見ていましたら、原発の放水がうまく


いかなければ、さらに大量の放射能物質が出ると言っていたことです。

その一方では、「現在の放射線のレベルでは心配ない」ということが同時に
繰り返してマスメディアから流されています。

この二つを明らかに矛盾します。片方では「注水に失敗すると原発から大量
の放射線が出る」と言いながら、片方では「現在の放射線レベルでは大丈夫
だ」といっても全く解決にならないからです。

原子炉に水を供給することが失敗したら大量の放射線が出るというのなら、
現在の放射線レベルを元に判断をしても危険だからです。

つまり、原子炉に水を供給することが失敗したら、どのくらいの危険性があ
るかということを具体的に示す必要があります。それで初めて家族の安全が
確保されます。

メディアの無責任といえばそれまでですが、メディアを非難しても仕方がな
いので、わたくしはそれを具体的な数値で示しています。
先回の緊急情報(11)で、わたくしが「10」という数字を示しているの
は、これまでの事故例等を見ると、注水に失敗したら現在の10倍ぐらい放
射線のレベルが上がる可能性があると考えているからです。

原子炉に水を投入するのを失敗したら、放射線レベルが10倍になるという
ことは正確にはわかりません。しかし、せめてそれを専門家が言わなけれ
ば、普通の人がただ「原子炉に水を投入するのが失敗したら大量の放射線が
漏れる」等と伝えてもらっても、それは情報にならないからです。

東京の放射線レベルは現在、低いのですが、わたくしがやや高めの数字を示
しているのは、このことを加味しているからです。

わたくしは今の東京の放射線レベルは心配することはないと言っております
が、しかし人によっては不安に感じる人もいます。

本当に原発に水を入れるのが失敗し放射性レベルが大きく上がっても、新幹
線等が混んでいて赤ちゃん等を抱えている人はすぐには移動できないでしょ
うから、だいたいどのくらいのことになるかということを、わたくしの知識
の範囲でお伝えをしています。

・・・・・・・・・

もう一つ極めて危険な報道があります。

これは NHK ではなく、民放の女性のアナウンサーでしたが、

「放射線レベルは低いので心配することはない。」

と大きな声で叫んでいました。

その番組で示された図は全く間違っている図で、アナウンサーが口にしてい
る数字は「1時間あたりの放射線の強さ」であり、図に示しているのは「最終
的にその人がどのくらいの被曝するか?」という値です。

女性アナウンサーは、

「10マイクロシーベルトだからこの図から言えばとても小さい。まったく問
題ない」

と繰り返していました。このアナウンサーは放送を降りた方が良いと思いま
す.人の命に関係することですから「私はアナウンサーだから知らない」と
いうことではすまないのです。

1時間に10マイクロシーベルとということは、たった1時間しかそこにいな
い人ならその数字で良いのですが、生活をしていて1ヶ月あまり同じ場所にい
たら、10ミリシーベルトになります。これは法律でも許されてないような大
きな値なのです。

重要なことなので繰り返して説明します。

時間に10マイクロシーベルとというのは放射線の強さですから、1秒あたり
で言っても、1ヶ月あたりで言っても良いわけです。

1秒あたりで言えばとても小さな値になりますし、1ヶ月あたりで言えば大き
な値になります。

瞬間的にその場所を通り過ぎるのならば、1秒あたりでも1分あたりでもいい
と思いますが、今多くの人が判断しようとしているのは、「ここに住んでい
て良いのか」、「赤ちゃんは大丈夫か」ということです。

そうなると1ヶ月はそこにいますし、子供は感度が高いのです.

恐らくは東京にいるアナウンサーだから、原発の近くにいて不安に思ってい
る人の気持ちがわからないのだと思います。

またその横にいた専門家は、それに気がついたようでしたが、間違いを指摘
しませんでした。だれかに「危険を ってはいけない」と言われて、逆に危
険なことを言っているということです。

・・・・・・・・・

昨日から今日、テレビを見て気が付いた大きな間違いはこの二つです。

楽観的に考えるのも悲観的に考えるのも問題で、事実を正確に掴み、責任を
持って自分の行動を判断するには、このような間違いは絶対に自分の頭から
のぞいておかなければなりません。

ところで、逃げることが難しい人がどのようにすればよいかということをお
話しようとしたのですが少し長くなりましたので、次回にお話をしたいと思
います。
(平成23年3月18日 8時30分 執筆)

武田邦彦

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げられない人のために  その2 »

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原発 緊急情報(13) 逃げられない人のために  その2

緊急情報(12)で、逃げられない人たちのために少しでも役立てばと思っ
て書くつもりでしたが、少し長くなったので「その2」で書きます。

・・・

まず第1には、福島の原発から出てくる放射線には何種類かあるということで
す。まず、原発の内部にある強い放射線が四方八方に飛んでいくというもの
から受ける被曝です。

飛んで来る放射線には2種類あって(学問的には3種類ですが、現在関係ある
のは2種類です)、一つは光のようなもの。一つは電子です。

光は、「遠くの光が見える」ように遠くまで進みます。もう一つの電子はも
のすごく小さいのですが、それでも形を持っている「物質」ですからコンク
リートのビルとかそういうものにぶつかるとそこで止まってしまいます。

空を飛んでいるヘリコプターはこの「光のような放射線と電子」の両方で被
曝するのですが、原発の近くに住んでいる人は、原発との間に、小高い山と
かビル等があれば、少なくとも電子の分だけは、被曝を受けないということ
になります。

原発から遠ざかれば安全だというのは、このことを言っています。

・・・

もう一つの放射線のもとがあります。

それは、原発の装置や敷地の中にある「放射能の高い元素」が空気中を飛ん
でくる場合です。

仙台とか東京等を遠くになると風に乗って飛んでくることになります。
これは放射線を持った物質なのでややこしい問題があります。放射線物質を
吸い込みますと体の中に入りますので、体の外からではなく、中からも被曝
することになります。

また、衣服につきますと、それが除かれるまで自分の体がその放射性物質か
ら出る放射線で被曝することになります。これは外からです。

現在の状態では、福島原発から20キロ程度のところの人は避難していますの
で、ここで説明した最初の放射線はあまり考えなくてもいいということにな
ります。

つまり、「自衛隊のヘリコプターが受ける放射線」と「原発から少し離れた
ところで住んでいる人が浴びる放射線」とは少し意味が違うということを理
解しておかなければなりません。

・・・・・・・・・

仙台から東京あたりの間に住んでいる人たちは、福島原発からある程度、放
射性物質からの放射線を浴びると考えていいと思います。

その場合、放射線と体の関係を少し知っておく必要があります。

・・・・・・・・・

人間の身体は放射線に対して防御する能力を持っています。従って、一旦、
放射線に当たると、その時には身体の一部がごくわずかですが損傷します。

しかし、人間の体というものは、常に外部からの攻撃を防御することができ
るようになっています。例えば風邪のウイルスが体に入っても、体の抵抗力
さえあればウイルスを撃退できるのと全く同じです。

つまり、放射線に当たったらもうそれで終わりと思っている人がおられるの
ですが、普通の病気と同じように一旦放射線にあたっても、自分の体の抵抗
力と免疫力が高ければ、元の体に戻してくれます。

そうなると普通の病気と同じですからまず第1に体力をつけておくということ
が必要であることがわかります。

私がやや放射線に対して楽観的なのは、放射線が弱いということではなく、
人間の体が治す能力があることによります。人間は他の動物に対しても放射
線で受けた傷を治す力が強いのです.

・・・・・・・・・

そして第2には、「連続的に放射線を浴びない」ということです。

逆に「連続的に放射線を浴びる」ということは、風邪で言えば「風邪をひい
ているのに、まだ寒くて乾燥しているところ(ウィルスがいるところ)にい
るようなものです。

放射線でも同じです。外部に出て放射線を浴びたと思ったら、そのあとは家
の中に入り、しばらくじっとしていることです。それで回復をします。

風で飛んできた放射性物質は外を歩いているときに、自分の体の衣服につき
ます。多くの放射性物質は水で洗えば取れますので、洗濯機で洗ってとると
いうことが必要です。

非常に厳密に言えば、1回汚染された服は着ない方が良いのですが(専門家で
そんなことを言っている人もいますが、家庭生活では不可能です)、現実に
はそうもいかないので、やはり注意して洗濯するというのがいいと思いま
す。

下着が心配です。

だから、ちょうど冬の季節でもありウインドブレーカーのように風を通さな
いような衣服を上に着て出かけて、それを洗うということができればベスト
です。

外出を多くしなければならない人は、外から放射性物質を少しずつ家の中に
持ち込むことになりますので、玄関先でそっと脱いで放射性物質が家の中に
あまり入らないようにすることが大切でしょう。

また放射性物質は結構、拭いて取れるものですから床等の拭けるところはで
きるだけ拭くことも大切です。

・・・・・・・・・

原発に近いところ以外の放射線はほとんどこのような物質によってもたらさ
れますので、家の中を密閉してその中にじっと入っていれば、被曝量は10分
の1ぐらいにもなると言われています。
もちろん、ストーブ等をたいていれば一酸化炭素中毒等になりますから適度
な換気が必要ですが、その場合でも直接リビングルームに外の風が入ってこ
ないようにあまり生活しない小さな部屋があったらそこから寒気するように
気をつけるのも有効です。

・・・・・・・・・

「放射線で損傷したところは体が直してくれる」ことと、「放射線は空気中
にある小さな物質から来る」という二つを組み合わせますと

1) 外出を控えること、

2) 外出するときにはウインドブレーカーのようなものを着ること、マス
クや帽子をかぶること、

3) 帰宅したら玄関先でそっと脱いで洗濯すること、

4) 連続的に外出しないこと、

5) 外出した人が放射線物質を家の中に持ち込んできてその放射線で赤
ちゃんが被爆するということがないようにすること

などが有効であることがわかると思います。

もちろん、何らかの手段で2,3日でも遠くに行くことができれば、その間
は放射線で損傷した体はすこし元に戻ります.

このようなことを十分に注意すれば、原発に近い人は別にして、

「東京と福島との間に住んでいる人、仙台あたりの人は比較的安全になる」

ということができると思います。

・・・・・・・・・

これに関連した少し専門的なことに言及します。

400ミリシーベルトぐらいの放射線を浴びると多くの人が白血病になります
し、100ミリシーベルトぐらいでも免疫力の弱い人は白血病になる場合があ
ります。

しかし、この100ミリシーベルトとか、400ミリ シーベルトというのは、比
較的短い時間に被曝した場合のことです。

例えば1時間に100ミリシーベルトを浴びた人はかなり危ないのです
が、1ヶ月間で100ミリシーベルトを浴びても、その間に自分の体が直して
いきますので安全サイドになります。

でも、1ヶ月の場合、どのくらい安全になるかは極めて複雑です。

女性と男性との問題、赤ちゃんとお年寄りの差等多くのことがありますでな
かなか一概に1時間で100ミリシーベルトを浴びたらそれは1ヶ月でどのぐら
いかということを具体的に示すことはできません。

そこで、このブログでは1時間に浴びた量で1ヶ月の打撃を示しています。つ
まり打撃を受ける上限を言っているということになります。

(平成23年3月18日 10時 執筆)

武田邦彦

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午後9時、放射線速報 »

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原発 緊急情報(14) 3月18日午後9時、放射線速報

今日は緊急情報を2つも出したので、明日の情報のために調査をしていた
ら9時の NHK の放送で放射線の測定結果が出たので、放射線速報を出しま
す。

報道された放射線の値は高いのに NHK とそこに出ていた東大の先生が「健


康に影響がない」と間違ったことを言っていたので、少し焦りました。

・・・・・・・・・

文科省の測定では、福島原発から北方30キロメートルで、3月17日は1
70マイクロシーベルト、18日は150マイクロシーベルトだった。もち
ろん、すべて1時間に被曝する量である.

従って、この2日間の平均的な放射線は(1時間いれば)160マイクロシー
ベルトであったと考えられます。

・・・・・・・・・

一般人が年間に被爆しても大丈夫な量は1ミリシーベルトとされていますか
ら、1000÷160=6時間となり、福島原発の北側30キロにいる人は7
時間だけそこにいたら一般人が1年間で浴びていいという。基準値を超えるこ
とになります。

これがなんで健康に影響がない数値といえるのでしょうか? 東大の専門家
は何を考えているのでしょうか?

それは現在の基準がおかしいと心の中で思っていることと、本当のことをい
うとパニックになる可能性があるので、東大の先生のような社会の主導者は
本当のことは言わなくてもよいという気持ちがあると推定されます.

例えば、放射線の作業者は年間で50ミリシーベルトの放射線暴露が認めら
れています(一般人の50倍)。また、一度に強い放射線を浴びたときよ
り、弱い放射線を7時間浴びた時の方がダメージが小さいという知見もあるか
らです。

しかしそこが間違っています。

放射線の作業をする人は健康診断もしますし、放射線の測定値もしながら作
業をします。また放射線のあるところで厳し作業をする人には「妊婦や赤
ちゃん」はいません。

だから、作業者は50ミリシーベルトになっていて、一般人は1ミリシーベ
ルトなのです。国の基準には、長い期間の検討もされ、また国際的なレベル
も取り入れられています。

このように非常時のときに、これまでの基準を安易に変更してはいけないの
です。詳しくは調査していませんが、現在 NHK 等で専門家として出ている
人たちは、実はこのような基準を決める委員会に出ていた人達なのです。

事故が起こらない時には、厳しい基準を決めて原子力が安全なように見せか
け、事故が起こると「基準は本当は厳しすぎる」というのは余りにも無責任
です

福島原発から北へ50キロ程に住んでいる人たちは、1日以内に一般人が1年
で浴びても良いとされる。放射線を上回る可能性があります。

「あびても良いという放射線量を超える」ということは人によっては障害が
発生する可能性があると考えて正しい判断です。

自治体の市長や町長さんはNHKにごまかされることなく、数字を直視し、
基準を守り、自ら正しく判断し、自分の自治体に住んでいる人たちを待避さ
せるべきです。

・・・・・・・・・

ところで、わたくしが心配していた福島市は、ここ3日で20マイクロ,1
7マイクロ、13マイクロと幸い、低めになっています.どうも風向きが少
し南になってきたのでは無いかと思います。

明日はやや高気圧が太平洋に来て温かくなる予想ですので、その影響かも知
れません.
でも、1000÷17(3日間の平均)=59時間(2日半)ですから、福島
に3日以上居住している人はすでに1年間で許容される放射線に暴露されたこ
とになります。

従って、もしも自治体が福島市の市民は1年間で許容される放射線以上に浴び
てはいけないと判断するならば、そろそろ避難する必要が生じています。

幸いなことに、福島から南の 城、栃木、千葉、東京、埼玉、神奈川等の放
射線量は、かなり減ってきました。これから見ると風の向きが北東から日風
もしくはやや南風に変わったと考えられます。

この地域はおおよそ0.1マイクロシーベルトを下回りましたから、当面の危
険は少なくなったといえるでしょう。

・・・・・・・・・

昨日あたりから福島県を中心に、比較的高い放射線が観測されてきたことか
ら、「強い放射線を浴びるなら危ないが、この程度の放射線を長く浴びるの
なら大丈夫だ」というコメントを専門家がするようになりました。

わたくしのブログにも人間には放射線に対する防御力があり、強い放射線を
短時間に浴びるよりも、間歇的に放射線を浴びれば、人体がその損傷を回復
してくれると書きました。

しかし、一方で、わたくしは計算ではそれをあまり使っていません。

というのは、このような事故のときには、学問的にも定量的にもハッキリし
ていない解釈はできるだけ避けて、まず第1に今まで決めてきた数値を参考に
するということではないかと思います。

放射線の基準は、あくまでも1年あたりこのくらい被曝してもいいとか、この
くらいの総量なら白血病になる確率があるとか、そのように決まっていま
す。

従って、1ヶ月の間に被曝するなら大丈夫とか、1年間ならそんな量は問題に
ならないというような新しい考えを持ち込むのは間違っていると思います。

・・・・・・・・・

最後に、昨日から今日にかけて多くの皆様から大変、有用な資料をいただき
ました。これらを有効に活かしてネットという武器を使いながら、できるだ
けデータや判断の方法を書いていきたいと思います。

メールの中には具体的な場所を示して、そこに何日ぐらい住んでいても大丈
夫かという質問が多いのですが、残念ながらお1人お1人の計算をする時間が
とれません。

できましたら簡単な計算ですから、付近で測定されているデータを1日ぐらい
平均してそれを計算されることをおすすめします。

例えば、1マイクロシーベルトですと、それを1000倍してください。1マ
イクロシーベルトなら1000倍で1ミリシーベルトになり、一般人が平均的
に1年間で被爆する限度になります。

またその値が10ミリシーベル(もともとの測定値が10マイクロシーベル
ト)を超えるようでしたら、付近の人や自治体と相談をして退避するかどう
かを検討されたらいいと思います。

福島原発は次第に落ち着いているようです。だから、決して不安になること
はありませんが、しっかり計算をしてご自分でご判断されることが重要かと
思います。

申し訳ありません.

(平成23年3月18日 午後10時、執筆)

武田邦彦

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害を無くすために »

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原子力情報 01 風評被害を無くすために

これから、福島原発を冷やすのに成功して徐々に沈静化していった後、福島
県の人は農作物や魚それに土地の価格等いろいろな面で風評被害を受ける可
能性があります。

それが本当のことであれば、まだ対策乗っ取りようがありますが、風評被害
であれば本当に悔しいと思います。

数年前、風評被害の専門家と一緒に講演をしたことがありますその方は今回
のことでもテレビでお見受けいたしました。

彼の話ですと、風評被害が発生するには一にも二にも「本当のことを言わな
い事による」と言っておられました。

日本ではメディアが本当のことを言わないので、日本の風評被害はほとんど
メディアが原因するという研究を示していました。

確かに「風評」ということ自体が、事実と違うことですので、事実と違うこ
とを言っているとその次に風評被害に遭うということを意味しています。

・・・・・・・・・

今回の福島原発でわたくしは「メディアが伝えなかったり、大きく間違った
ことを伝えている」ことに3つあると思います。

一つは付近住民の被爆について「かけ算をしない」ということです。

これはすでに、このブログでは説明しましたが、1時間に10マイクロシーベ
ルトという放射線は「安全なレベルだ」ということを繰り返していますが、
それは「1時間だけそこに住んでいる場合」に限られています。

1時間で10マイクロの場合、2時間いますと20マイクロ、10時間です
と100マイクロになります。
普通「生活する」ということはその場所に1ヶ月ぐらいいますから、例え
ば42日ですと1時間の1000倍の時間、放射線をあびることになります。

たしかに1時間に10マイクロの放射線は1時間だけなら問題はありません。
それはテレビのいう通りです。しかしそこに住んでいるとそれを1000倍
にしなければならず、10ミリシーベルトになります。

放射線の基準値は一般人(赤ちゃん、妊婦を含む)が1ミリシーベルトですの
で、この値は明らかに一般人が1年間にあびて良いとされている値の10倍に
なります。

福島の多くの地域は、すでにこの値を超えています。

それでもテレビは安全だと繰り返しています。このようなウソをついている
と人は政府やテレビの情報を信じることができなくなりそこに風評が発生す
るということになります。

「基準値を超えても安全だ」という論理はかなりおかしいのですが、もし規
制値を超えても安全であっても、「基準値を超えている」ということを言わ
なければ、将来また同じような風評がおこるということは十分考えられま
す。

基準値を信用しない専門家でも「現在は基準値を超えているけども健康に問
題がない」と発言すべきなのです。それは個人の責任として言ってもいいこ
とですが、基準値は国の基準として存在するわけですから。それを言わない
のは専門家ではありません。

ぜひ本当のことを言って欲しいものです。

・・・・・・・・・

2番目は、「すでに市民が受けた放射線」は測定することができないというこ
とです。
原子力に従事する人は、放射線をあびますから、必ず線量計やフィルムをつ
けて自分があびた放射線を測定します。これは厳密に守られています。

それは、一旦放射線を浴びてしまうと体の中を抜け、「遺伝子の異常」など
の形で残ります。しかし、遺伝子にどのくらい障害が残ったかを測定するこ
とができません。

福島原発でも、地震のあと、作業員が原発から退避するときにでも被曝した
線量を測定してから原子炉を出たと証言をしています。いかにあびた放射線
の量を測定することが健康に大切かが分かります.ところが、事故が起こっ
て以来、原発の付近に住んでいる人は、どのくらい放射線を浴びたかを測定
していません。

従って、推定した計算でその人がどのくらいの放射線を浴びたかを計算する
しかないのです。

テレビでは、人の衣服の周りをカウンターのようなもので測定している画像
が出ますが、これはその時に衣服についている放射性物質の量を図っている
だけで、本人がどのくらい被曝したかということとは無関係です。

これも間違った報道が行われています。

すでに福島原発から放射能が漏れてから7日経ちます。7日ということ
は168時間ですから。1時間当たりの放射線の値に168を掛けなければなり
ません。

例えば、原発の周りは1時間に100マイクロシーベルト、福島市では20マイ
クロシーベルとぐらいが続きましたから、すでに付近住民は16.8ミリシーベ
ルと福島市の人は2ミリシーベルトの被爆を受けたことになります。

もちろん国の基準を超えていますので、健康に影響があるとしなければなり
ません。さらに、大人の場合は問題がないかもしれませんが、妊婦やお子さ
んは大いに心配しなければならないと思います.

おそらくこのことを報道しないのは、報道すると大騒ぎになるとか、線量計
の数やフィルムバッチの数が足りないので、ここは隠しておこうということ
だと思います。

しかし、風評被害を止める意味でも事実をそのままいってそれに耐えるだけ
の精神力を政府は持ってもらいたいと思います。

・・・・・・・・・

三番目は、今後、福島原発がどのようなことになるかということを曖昧にし
ていることです。
確かにチェルノブイリやスリーマイル島の場合と違うので、今後どのくらい
の放射能が出るのか、それともこのまま沈静化するのかわかりにくい面はあ
ります。

しかし、この時こそ「原子炉の専門家」というのであれば、今後どのくらい
のことが起こるのかということを明確に示さなければいけないと思います。

国や東京電力があれ程、懸命になって原子炉に水を注ぐ努力をしているので
すから、仮に水を注ぐのが失敗した場合どうなるかということはすでにわ
かっているからです。

わたくしはすでにこのブログでおおよそ、このくらいの範囲になるだろうと
いうこととそれに基づく計算式を示しています。読者の方からは現実にその
計算ができるホームページを作っていただいた方もおられます。

政府がやらないなら、わたくしたちで身を守らなければならないのですが、
それはやがて福島県に風評をもたらすでしょう。

・・・・・・・・・

福島県の知事、もしくは福島の市町村の自治体の長は市民の側に立っている
のですから、今後の風評被害を防止するという意味でもこの際、はっきりと
した事実を市民の前に示した方がいいとわたくしは思います。

(平成23年3月19日 午前8時 執筆)

武田邦彦

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本のお役人! »

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原子力情報 02 ああ!日本のお役人!

ある読者の方(あるお母さん)が気象庁と文科省に問い合わせていただいた
結果は? 

「たった今気象庁に「放射線飛散予測地図を作る予定はあるのか?」と電話
したら、

放射線の飛散予報は気象庁の管轄ではない、

放射線関連は文部科学省の管轄だと言われました。

私が「火山灰の飛散予報はしていますよね?」と尋ねたら

「気象庁は放射線の濃度を測定していないので、それは難しい」

というような事を言われました。

文部科学省に電話しましたところ、

担当の方は席を外していると言っていましたが、

「飛散予測図を出す予定は無い。

観測データを出しているし、テレビの情報を注意して聞いていてほしい」

との事でした。」

・・・・・・・・・

ああ!日本のお役人!! 

その中には立派な方もおられると思うけれど、全体がこのような雰囲気では
立派な方は押しつぶされてしまうだろう.

気象庁は国民の多くが心配しているときに、その技術力と税金でコンピュータ
を買い、気象予測をしているのだから「汚染予測」にはもっとも近い役所
だ。

今からでも良い.心を入れ替えて欲しい.

戦後、小学校の教科書は「個人」だけを強調し、「家庭、地域、社会、国」が
抜けた.その中で教育を受けてきた人が「自分のことだけ」を考えるのが正
しいと錯覚するのは当然でもある。

残念だ。

(平成23年3月19日 午前8時30分 執筆)

武田邦彦

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について »

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原発 緊急情報(15) ご質問の多いことについて

福島原発の状態は第3段階に入りましたので、緊急情報を少し止めようかと
思ったのですが、ご質問が多いので、緊急情報として書きました。
福島原発の事故の第1段階は最初の頃水蒸気爆発が起こったりした時期で、変
化は激しく、危険でした。

特に、その頃は放射線があまり原発から外へ出ていなかったので、東京電力
は相当無理なことをして放射線が外に出ないように頑張るだろうと考えてい
ました。

例えば、原子炉の中の圧力が上がった場合、圧力を低くすると、外部に放射
線物質が漏れるので、東電の責任者はびびって、それができないと思う可能
性があったのです。

そうすると、圧力が上がり原子炉が爆発する危険があると考えたからです。

ところが2号炉の格納容器が割れたために、発電所の中の放射線が一
時400ミリシーベルトというものすごく大きな値なりました。これは良くな
いのですが、わたくしはこれを聞いて逆に安全になった、第2段階に入ったな
と思いました。

というのは、東電の責任者が放射線を漏らしては行けないというプレッ
シャーから解放されるので、圧力容器が破裂する可能性が少なくなったから
です。

そして、自衛隊が水を注入し始めた頃から第3段階に入ったと思います。すで
に1号機から3号機は原子炉の中の燃料の問題、4号機は使用中の核燃料の
貯蔵の問題になりました。

これらは水の補給がうまくいかなければ燃料が破損しますが、それに
は3、4日かかるでしょう。従って、行動する時間的余裕が出てきたというこ
とが言えます。

・・・・・・・・・

このような状態の中で多くの人が心配されていることが3つ程あります。
一つは明日あたりから天候が悪くなって関東地方に雨が降る可能性があると
いうことです。放射性物質が空気中にある場合に雨が降るとそれが地表に落
ちてきて人体に付着します。

チェルノブイリ原発の時に、汚染地域がポツポツと飛び地になっていたのは
この雨の影響も大きかったわけです。

そこでわたくしは気象庁が出している雲の動きを調べてみましたら、もし明
日関東地方に雨が降った場合、その雲は放射線の少ないところ(ほぼ安定し
て日本海)から来ますので、少なくとも東京、横浜、大宮、千葉については
問題はありません。

福島県及び 城県と栃木県の北部、宮城県の南部については、すでに空気中
にある放射性物質が落下するので、できるだけ雨の降っている時には外に出
ない方がいいと思います。

どうしても雨にぬれた場合、家に帰ってできるだけ早く洗濯して汚れをとっ
てしまうことが大切です。洗濯をした水は若干の放射線物質がついていると
思いますが、それが下水に流れるのは仕方がないと思います。

現在の段階では環境を汚すのはやむを得ないので、それよりも人体に直接、
触れることを防ぐことが大事だと思います。

・・・・・・・・・

第2に、政府やテレビは相変わらず時間当たりの放射線のことを言っていて、
それとレントゲンとか飛行機の関係で「直ちには障害がでない」と言ってい
ます。しかし、もともと放射線は遺伝子に損傷を与えるもので、すぐには障
害は出ません。

また、一般人の基準である1ミリシーベルト(これから先はシーベルトは省略
します)を浴びても大丈夫だということを随分多くの人(政府、テレビ、専門
家、一般の人がネットで)が書いています。

わたくしもどちらかと言えば個人的には放射線はもう少し高くても大丈夫で
はないかと考えていますが、このような非常時では個人的な考えはあまり表
に出すべきではなく、やはりいろいろな会議を経て決まった国の基準を守る
ことが大切だと思います。

でも、これほど「大丈夫」と強調されているので、少しデータを説明しま
す.
女性で医療関係のお仕事をされているかたで放射線をうける人の場合、被曝
限界をどのように考えるか長く議論されています。

いろいろな考えがありますが、最も標準的には女性で医療関係の放射線を浴
びるような仕事をしている場合、1ミリを超えたら仕事をさせない方が良いと
いうのがこの仕事の関係の専門家がおおむね合意してるところです。

従って、1年に1ミリから数ミリぐらいが良いのでしょう.

次に、東京からニューヨークまで飛行機で行くと、かなりの被曝をすると言
われますが、これについては航空関係者の間で議論があります。

おおよそ一般人の基準の1ミリに比べて、その5倍の5ミリ程度がが妥当であ
ると考えられています。5ミリというと、例えば1ヶ月あまり同じところで生
活する人は、1時間当たりの放射線は5マイクロになります。

福島県の多くのところは、時間当たり5マイクロを越えてますから。航空機で
仕事をする人の基準値を超えるということになります。

三番目はチェルノブイリの事件のときに、スウェーデンで妊婦の影響を調べ
た研究があります。

チェルノブイリの時に、スウェーデンで観測された一番高い放射線は1マイク
ロとでした。ですから日本で言えば、福島県はもとより、 城県と栃木県の
北、宮城県の南方がそれにあたります。今のところ東京、横浜、大宮、千葉
は、1マイクロを下回っています。

テレビや政府は1マイクロでは全く健康に問題がない(すぐには障害がでな
い)と言っています。しかし注意しなければならないのは、テレビや政府は
「短期間に障害が出ない」と言っていることです。

スウェーデンの論文を読むと、妊娠しているときに1マイクロの放射線を浴び
た子供は、頭の発達が少し遅れ、特に数学の力が落ちたというふうに報告さ
れています。

ただ、子供の体の方は健康だと報告されています。

わたくしはこの論文を紹介するかどうか少し迷いました。妊娠しているお母
さんにしてみれば、生まれてくる子供の頭の発達が遅れるということはとて
も衝撃的なことだからです。

もちろん論文ですから先端的なことであり、あるいは間違いもあるかもしれ
ません。論文を紹介しておいてやや無責任ですが、ヨーロッパの論文には少
ない例で断定的な結論を導くものがあり、私はこの論文に否定的です.読者
の先生からもご連絡がありましたが、日本の医学の知識でも論文の記述は疑
わしいと言っておられました。

従って、この論文に記載されていることが事実であるか、少し保留させてく
ださい。実は妊婦についての影響はそれほどはっきりとしたレポートがない
のです。その理由は妊婦が高い放射線のところでさらされることがないこと
と、放射線が低いところではかなり多数の例をとらないと学問的にはっきり
しないからです。

・・・・・・・・・

総合的に見て、女性のレントゲンを取り扱う人、飛行機に乗る人、そして妊
婦等の例を見ますと、日本の基準、つまり一般人が1年間に1ミリという被ば
く量は、それ程極端に低いわけではないとも考えられます。

今後研究が続けば、もう少し高いレベルでも OK かもしれませんが、個人で
勝手に判断して、1ミリは低すぎるとこの段階で言うのは危険です。

とりあえず1ミリを一つの目安とし、航空機の仕事をする人の5ミリぐらいを
ご参考になってそれぞれご判断いただきたいと思います。

・・・・・・・・・

三番目は水道等の汚染です。

水道やその他の野菜が汚染されたという報告がありますが、これは当然のこ
とです。すでに福島原発から遠く離れた福島市で20マイクロという放射線が
報告されているわけですから放射能を持つ物質が広く拡散していることは間
違いありません。

問題は程度の問題ですが、わたくしがもし家族に言うならば、飲み水はでき
るだけペットボトルで飲むこと、洗濯や掃除お風呂等は、水道を使っても問
題がないと答えると思います。

また、野菜等は1日中、外にいるのですから、すでに7日間というと1時間
あたり20ミクロンでも、3ミリを越えています.
すでに放射性物質が付着することが多いので、ある程度は洗わなければいけ
ないと思います。野菜に付着している放射性物質のほうが水道に含まれてい
るより多いと思われるからです.

水道や野菜については現在のところデータが少なく、この程度しか言えませ
ん。放射線というのはできるだけ少なくしておくというのが大切ですから。
もしペットボトルを買おうお金があれば飲み水だけでもペットボトルにして
おいたほうがいいのではないかと思います。

また放射性物質の中には煮沸すればのぞけるものもありますが、細菌と違う
ので原則としてはとれません。

・・・・・・・・・

皆さんから多くのメールをいただき、本来は一人一人の事情が違いますから
個別にお答えしたいのですが、現在のところブログを書くのが精一杯という
のが正直なところです。

申しわけありませんが、しばらくできるだけブログを多く書くようにします
のでご参考になってください。また誤字脱字もご容赦ください。

(平成23年3月19日 午後7時 執筆)

武田邦彦

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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福島原発事故に思う・・・・

私は今朝、名古屋から東京へと向かった.

家を出るときに家内がそっと新幹線の自由席の切符を私に渡してくれた。

東京が汚染されたとき、駅はごった返し切符がなければ乗れないと心配したの
だ。

・・・・・・・・・

でも、私はその切符を使わないだろう。

東京が10ミリシーベルトになったとき、大勢の人が西に逃れる.新幹線は
パンクし、大混乱になる。

いや、日本人は大丈夫と思う.どんなことになろうとも・・・

我々は整然と、まず妊婦、赤ちゃんを送り出そう.次にお母さんと児童生徒学
生だ。それが終わったら働き手がいるから現役を送る.

すべては整然と自制心をもって日本人は行動すると思う.

そして婆さんは在来線を使ってもらい、私たち年老いた男は誰もいない東京
を掃除して徒歩で離れよう.新幹線の運転手は若いのだから先に逃げて欲し
い.

私がこの日本に恩返しができるとしたら、それは汚染された東京に残ること
なのだ。

・・・・・・・・・

私は痛い足を引きずって東海道を西へと進む.

不思議なことに強い西風が吹いている.
とある民家について一夜を明かしていると激しい雨が放射能を洗い流してく
れた。

そういえば私は小さい頃から病気がちで免疫力はついている。

そういえば私はこうして両親から授かった命を長く楽しんできた。

今更、思い残すことはなく、若い人を助けることができたなら本望だ。

・・・・・・・・・

でも、案外、私は持つかも知れない。

人を死に追いやるもの、それは絶望だ。

人を死から救い出すもの、それは希望だ。

私には希望がある。10ミリシーベルトになっても日本人の誇りと自制心で
多くの赤ちゃんを助けたこと、それが私の明日の希望になる。

(平成23年3月19日夜 東京にて)

* 福島原発も最悪な時期を過ぎたので、なにかホッとしてゆったりした気分
になり、私の今までの気持ちを書きました。明るい希望がわいてきたよう
な気がします.

武田邦彦
« 原発 緊急情報(15) ご質問の多いことについて | | 原発 緊急情報(16) 法を破っ
た国と専門家・・自衛しよう! »

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原発 緊急情報(16) 法を破った国と専門家・・自衛しよう!

福島原発の方は小康状態に入ったが、福島県を中心に放射線がゼロになった
わけではない。

事故が起こってから今まで約7日間の時間が経っているので、一般の人が放射
線の被曝を受けている。そこで、もし時間があれば今日は日曜日なので、家
族で自分や子供が受けた放射線の量を計算しておくと安心もするし、今後の
計画も立てることができると思う。

・・・・・・・・・

私は長く原子力関係の仕事をしていたので、その間に「第一種放射線取扱主
任者」の資格を持ち、業務をしていた。

別に自分がどうのこうのということではないが、「武田は素人だ」という人
もいるが、皆さんに安心してもらうために、第一種放射線取扱主任者は「日
本人を放射線から守る資格」としては最高のもので、オールマイティに業務
を行えることを断っておきたい.

このブログにも第一種放射線取扱主任者の方から多くのアドバイスをもらっ
ていた。たとえ大臣といえども、放射線からの防御という点では第一種放射
線取扱主任者の命令を聞かなければならない、そういう資格なのだ。

・・・・・・・・・

放射線取扱主任者のもっとも重要な役割は法律にそって、日本人(もちろん
日本にいる外国人を含む)を被曝から守ることである.

専門家というのは事態が変わったから、普段と違うことを言っては行けな
い。もし政治的な配慮で超法規的措置が必要なら、それは政府が非常事態宣
言をして、超法規的措置を執るべきであり、専門家が自らの判断で法律に背
くことをしてはいけないのである。
・・・・・・・・・

これまで長い研究と議論の結果、法律では次のことが決まっている。

まず第一には、「管理区域」という考え方である。

「管理区域」とは放射線の量がある程度高くなると、そこに出入りすると健
康上の問題が生ずる可能性があるので、被曝量を測定したり、健康診断をし
たりする必要のある区域である。

定められた放射線の量は、3ヶ月で1.3ミリシーベルトである(これから後は
シーベルトを省略する)。

1.3ミリはマイクロシーベルト(マイクロ)でいうと、1300マイクロである
し、3ヶ月は時間で言えば、3×30×24=2160時間に当たる。つま
り1300マイクロを2160時間で割れば、テレビ等で報道をしている1時間あ
たりの放射線の強さになる。

計算するとわかるかこれは1時間0.6マイクロに相当する。

この1週間、福島県は西南の会津の地域を別にすると多くの場所の放射線の強
さは1時間1マイクロを超えていたので、福島県は広く「管理区域」を設定」
しなければならなかった。

これは法律(具体的な数値は規則)で定められていることなので、国会で法
律を改訂したりしない限りは、たとえ総理大臣や知事でも変更することはで
きない。

ましてテレビのキャスターや1個人の専門家が管理区域の定義を勝手に変え
て、「管理区域内でも健康に問題は無い」などということは法律違反であ
る。

まして福島市は比較的高いときには20マイクロ、低い時でも10マイクロぐ
らいあったから、平均して例えば15マイクロだとする。

すでに7日間が立っているので、時間は、7×24=168時間で、その間1時間
当たり15マイクロの放射線を浴びているわけだからすでに、市民は2.52ミ
リの被曝を受けたのである。
従ってすでに福島県知事や福島市の市長は、人の健康に重要な影響を及ぼ。
放射線の法律に反し、福島市を管理区域に指定するのを怠っているというこ
とがいえる。

管理区域の設定は、意図的に放射線を出す場合(レントゲンなど)も、今回
のように原発が事故を起こして放射線が出た場合でも同じである。人の健康
に関わることだから原因が自分であれ東電であれ、こなしとも当たり前であ
る。

・・・・・・・・・

このブログを見ている皆さんは、自分の住んでいたところや、異動した人
は、そこの放射線量を調べてそれに2160と168を受けて数値を出して欲し
い。

例えば、3日間福島市に住んでいて、その後名古屋に避難したという人は、名
古屋の放射線は無視して良いので、15×2160×(3/7)と15×168×)3/7)を
計算する。

(3/7というのは、7日間のうち3日間が福島市にいたという意味である。直
接、福島にいたときだけの時間を入れた方が良いかも知れない。)

そうすると、前者が約13.9ミリ(3ヶ月続いた場合)、後者が約1.1ミリ(7
日間で終わった場合)(いずれも小数点2桁目を四捨五入)となる。

法律の定めるところによると、3ヶ月で1.3ミリを超えるところは、管理区域
に設定しなければならないので、このような人は放射線の被曝量を管理し、
健康状態をチェックしてもらうような状態にあったといえるだろう。

ちなみに東京でではおおよそ0.1マイクロ程度以下だったので、3ヶ月で
約0.2ミリになる。これは管理区域に相当する放射線の強さより少ない。3ヶ
月も続かないと仮定すれば、さらに低くなる

東京都民の健康を守るのは、東京都知事の仕事であるから東京都知事が1年以
上続くとみて、東京を管理区域にするかそれとも2週間で事故の処理が終わ
り、放射線が元に戻ると考えれば、管理区域に設定する必要はないと考えら
れる。

・・・・・・・・・
管理区域というのは、いろいろな人がそこに出入りするので、そこに出入り
する人の放射線の被曝状態を管理したほうがいいという場所を示している。

今回の福島市のような場合には、福島には妊婦も赤ちゃんも児童もお年寄り
もいろいろな人が生活するので当然管理区域に設定しなければならないだろ
う。

・・・・・・・・・・

もう一つの指標は、質的に放射線を取り扱うような労働者がこのくらいをあ
びてもいいという一つの目安である。

もちろんこのくらい被曝しても良いという値は一般人の年間1ミリ の基準値
よりも大きい。

つまり一般の人は、特別に放射線の被爆を管理されているわけでなく、また
生活の制限もなく、さらには赤ちゃんや妊婦もいるわけだから、それだけ放
射線の量は低く設定されている。

一方、「放射線の仕事をする」ということがわかっている人は、測定や健康
管理ができるので少し高めに設定されている。

だから少なくとも今度の事故では、放射線の仕事をする人の被ばく量より少
なくてはいけないことは当然である。

この量は、男性では1年間に50ミリ、女性は3ヶ月に3ミリである。

これを1時間あたりに直すと、男性は5.7マイクロ、女性は1.4マイクロであ
る。男性より女性の方が被曝量が少なく設定されているのは女性が妊娠して
いる可能性があることによる。このような規定は、一般の作業や医療関係の
作業等で若干の違いはあるがほぼこの数値と考えて良い。

そうすると、福島市の状態は「放射線の仕事をして測定をし、健康管理をす
るという条件のもとで認められている男性でも被爆が許されない放射線の強
さ」なのである。

このような放射線の状態が続いているのに総理大臣、知事、市長であっても
独自に判断してはいけない。法律違反で逮捕されるはずである。

まして、専門家やメディア等が「直ちに健康に影響のない医療」ということ
は絶対にできない。

ある読者が福島市に問い合わせたら、「一回のレントゲンであびる量
が600マイクロだから問題がない」と答えたらしいが、そんなことは法律に
書いていない。突然、福島市の職員が新しい基準を作るのは法律違反なので
ある。

日本は法治国家であるから非常時でもまずは法律を守らなければならない。

・・・・・・・・・

これらを求めると次のようになる。

法律では、一番低いのは一般人の1年間に1ミリ、次は、ある程度管理できる
場所としての管理区域の3ヶ月で1.3ミリ、そして放射線の作業をすることが
わかっていて、線量を測定したり、健康診断をする人の言動が女性で3ヶ月
で3ミリと言うことになる。

これを1時間あたりで整理すると、

一般人        0.1  マイクロ

管理区域       0.6  マイクロ

放射線作業者(男性) 5.7  マイクロ

放射線作業者(女性) 1.4 マイクロ

となる。今までの7日間、家族がどこにいたかを表にして、いた場所の放射線
を調べ、その放射線量と時間を掛けて、全てを足せば家族の被曝状態が分か

.

おおよそなら、福島県で5から10マイクロ、周辺の市町村では2から3マ
イクロ、東京近郊では0.1マイクロ程度の数値を使えば良いだろう
.

まずは計算してみて欲しい。

(平成23年3月20日 午前8時 執筆)

* 計算が多かったので、第一種放射線取扱主任者やその他の専門家がおられ
たら計算をチェックしてください。もし間違いがあればすぐに直したいの
で。
早速、単位の表記、名古屋と福島にいた時の計算などでアドバイスを受けた
のでわかりやすくしました。計算自体はOKのようです。

武田邦彦

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原発 緊急情報(17) 医療行為と放射線 違うものの比較

今回の福島原発の事故でいわゆる専門家の発言がいかにいかがわしいかこと
がはっきり証明されました。

例えば、福島市の放射線の汚染が1時間当たり20マイクロシーベルトとい
う値がでたとき、専門家は一斉に「レントゲンでは1回で600マイクロ
シーベルトの被曝をする」などの例を出して20マイクロシーベルがいかに
小さい数値で問題でないかのごときにコメントしていました。

しかし20マイクロシーベルトというのは1時間あたりですから、その家に
1日いたら(外とほぼ同じ環境で)、それだけで24倍、さらに放射線漏れ
が1週間続いたら24の7倍ですから168倍になります。

これは、約3.4ミリシーベルトになり、一般人が1年に被爆する限度とさ
れている1ミリシーベルトを遙かに超えます。また1日12時間は別のとこ
ろにいたり、換気をしない部屋の中にいても1.7ミリシーベルトですか
ら、「安全」とは言えません.

しかも、1年間の限度量などはコメントしている人たちが決めたものですか
ら、無責任きわまりないと思います。
・・・・・・・・・
さて、今回は別の視点からこの問題を見てみます。

福島原発に近い農地で取れたホウレンソウからかなりの量の放射性物質が見
つかり食品として不適切かという問題が生じました。

また、1回のレントゲンとかCTスキャンとの比較をして「安全だ」という
専門家だけがテレビに登場しました。

しかしCTスキャンというのは医師のもとで行われる医療行為の一つです。
医療行為は直接、医師が行う場合と、医師に準じた専門職がやる場合があり
ますが、いずれにしても、その人の健康状態などを見て監視のもとで行われ
るのです.

医療行為は通常の意味の「安全」でもなく、「健康に良い」分けではありま
せん。

例えば、医師は必要に応じて足を切断することもあります。足を切断するの
が「健康に良い」はずはないのですが、なぜ医師は足を切断するのでしょう
か?

それは、医療行為で医師はその人の全てを考えてベストなことをするからで
す。このままではもっと悪化して命を失うというときには、あるいは医師は
悩み、判断し、そして足を切断することもあるわけです。

だからといって、普通の人が足を切断していいというわけではありません。

つまり医療行為の際に被曝する放射線は全く一般と関係がないのです。もち
ろんCTスキャンをするときには、医師は患者さんを考え、被曝をできるだけ
少なくし、その後も患者さんを観察することは欠かせません。

このような医療行為での被曝と福島原発から出た放射線で福島県に住んでい
る普通の人に与える影響とは全く違うのです。
・・・・・・・・・

私の経験では、放射線の専門家はこのことを何回も教えられます。

たとえば、放射線の作業をする人はかなりの放射線をあびることが許されま
すが、その代わりに健康診断もするし、人生を通じて過去にどのくらい被爆
したかという記録も提出しなければなりません。

さらに、作業するときには線量計やフィルムをバッチをつけて、一つの作業
をした時にどのくらいの被曝をしたかということをしっかりと記録しておき
ます。

放射線の被曝の危険は、量も問題ですが、同時に被曝した量がわかっている
ということです。専門家は記録があるということによって安全を保てること
を知っています.

福島県発ではメディアを中心として、原発の事故処理に当たっている人たち
に対して「大変な放射線を浴びて苦労している」という報道が続きました。
もちろんそれ自体は間違っていませんが、作業する人は被曝の量を厳密に計
りながら作業をしているのです。

それに対して、福島県の人は被爆も量も分からず、健康診断もしていないの
です。

わたくしが放射線の管理者として考えるならば、危ないのは福島原発で復旧
作業をしている人よりも福島県に住んでいる普通の人の方が心配です。

放射線と人間の健康というテーマの専門と言われる方々が、これらの基礎的
なことを、もう一度思い出し間違ったことを国民に呼びかけないようにして
欲しいのです.

このことがあるので、今日の最初のブログに「被曝量を自分で計算しよう」
というのを出したのです。

また続いてほうれん草の被曝を取り扱いたいと思います。

(平成23年3月20日 12時 執筆)

武田邦彦

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(18) ほうれん草は食べられるか? »

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原発 緊急情報(18) ほうれん草は食べられるか?

城県は2011年3月18日に福島県境に近い高萩市で採れたホウレンソ
ウから、国が示した規制値の1キロあたり2000ベクレルの約7.5倍に
あたる1万5020ベクレルのヨウ素131を検出したと発表した。

福島第一原発から約100キロ離れたところにある.また同時に規制値を超す
放射性セシウムも検出されたと報道された。

これに対して枝野官房長官は、

「被曝量は胸部CTスキャン1回分の5分の1程度である」とし、「ただち
に健康に影響を及ぼす数値ではない」と強調した。

官房長官は放射線の人体に対する影響の素人であるから、この後ろに専門家
がいる
.

千葉市の放射線医学総合研究所の環境放射線影響研究の専門家は

「このホウレンソウの数値を人体への影響を示す単位である「シーベルト」
に換算した場合、0・24ミリシーベルトになる。

人体に影響があるのは一度に100ミリシーベルトを受けたときとされてお
り、小鉢1人前のホウレンソウを100グラムと仮定すると、今回のホウレ
ンソウは4200人分を口にしないと人体に影響を及ぼさない計算になる。

と発言している.さらに、

この専門家は

「妊婦や子供など、放射性物質の影響が大きいとされる人たちについても、
摂取しても問題がないレベルだ」
と言う。

・・・・・・・・・

本当は「ベクレル」とか「内部被曝」についてかなり丁寧に説明してからの
方が良いのだが、ことは緊急を要するので、それらは後に説明することにし
てここでは「汚染されたほうれん草を食べても大丈夫か」ということだけを
説明する。

この専門家の言うことはムチャクチャである。おそらく国から研究費を丸抱
えでもらっているので、国民を無視した発言をしていると考えられる。

・・・・・・・・・

まず、第1に放射性を持つ物質を食べた場合の健康への影響は詳しく調べら
れていて、この場合のヨウ素131のように放射線を出す元素(正確には同
位体という)ごとに細かく決まっている。

またそれらが1種類の時とか、2種類の時についての研究されている。

その上で、規制値が決まっている。この手のものは同位体の数が多いので、
同位体毎に詳しい「別表」があり、それで専門家は接種して良い限度を決め

.

だから、規制値の7.5倍でも安全だなどという話は全くない。そうなると
専門家は自分で決めた規制値を自分で否定する事になる。

・・・・・・・・・

次に、ほうれん草で内部被曝することと、1年に100ミリシーベルとと
は、人の健康に影響するのがまったく違う。

でも、ここではこの専門家の通りに、もしも一般の被曝と比較するならば、
一般人の1年間の限度は1ミリシーベルトである。

この専門家が言っている100が1になるのだから、まったく違う
.

具体的にはほうれん草を小鉢一杯、42回食べたら、1年間の規制値になる
(小鉢1杯で100グラムは少し重いが)。

つまり、このホウレンソウは1年に42回しか食べられない。

また、妊婦や子供についての内部被ばく量(限度)はハッキリ決まってい
て、これも1年当たり1ミリで、こちらの方は単なる基準値ではなく、法律
で定められている内部被ばく量の限度である。

従って、汚染されたホウレンソウの汚染度が少し高くなることがあり得る事
を考えると、安全をみて1年に10回ぐらいに限定されるだろう
.

・・・・・・・・・

放射線で汚れた農作物を捨てるというのは、それをつくった農家の人は断腸
の思いだろう。また、経済的な損失も大きい。

でも、農作物に対する放射線で汚染されたものの規制値を決めた限りは、そ
れを守るのが順当である。

また、医療行為の一つであるCTスキャン等と被曝量を比較するのは無意味
で、いくら官房長官が素人と言っても政治家である
.

国民の健康を守る見識がない。

すでにこの国の政府も専門家も、国民の健康を考えずに電力会社を助け、ひ
たすら「国民がじっと我慢して放射線物質で汚れたホウレンソウを食べ健康
害すること」を望んでいるようだ。

当面、放射線で汚染された野菜は食べない方が良い。産地から出荷するのは
「規制値以下のもので、良く水で洗浄して、汚染がとれることが分かってい
るもの」に限るべきだ。

消費者の防御としては、汚染野菜を買わないことしかない。仕方が無い。汚
染しているのだから。

(平成23年3月20日 午後1時 執筆)

武田邦彦
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食品の汚染と放射線物質の半減期 »

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原発 緊急情報(19) 食品の汚染と放射線物質の半減期

ほうれん草についた放射能をもつヨウ素は半減期が短いので、実際には害に
ならないとの考えもあります。

ここで「半減期」というのは、放射線を持つものは壊れていきますので、そ
れが、半分壊れる時間のことです。

例えば、放射性のヨウ素ですと、半減期が8日ですから8日で2分の1、1
6日で4分の1と急激に減っていきます。

だからほうれん草を16日ぐらい置いておけば安全になるのは確かです
.

ただ、わたくしが半減期のことをあまり言ってないのは、読者の人の危険を
ろうというのではありません。

実は、放射線物質の規制値にはすでに、半減期のことも考慮されているから
です。

放射線物質を含むものを扱ったり、食べたりする人はいろいろな場合があり
ます。極端なことを言えば、ほうれん草を買ってから1万年も貯蔵しておけ
ば、あらゆる放射性物質は「安全」という事になります。

そのようなことを言っても意味が無いので、標準的な被曝を考え、半減期も
考慮に入れて放射性物質の規制が決まっています。発表されたほうれん草の
放射線の値は、現在、決まっている規制値を超えています
.

それでも半減期が短いから安全だというためには、規制の値がどのように決
まっているかを詳細に知らなければなりません。それも膨大な数の核種毎
(放射線をもつ物質毎)に知る必要があります。
わたくしのスタンスは、原子力の一つ一つのことを完全に理解しなければ自
分を防御できないというのでは安全は保てません
.

また、事故が起こってから、専門家が集まって何回も検討した国の規制値を
変えるよりも、現在のような緊急の時には、これまでの国の規制値をそのま
ま使った方が良いと考えているからです。

なお、原子炉から出る有害な放射性物質の半減期は、ヨウ素が8日、バリウ
ムとストロンチュームがともに30日、そしてプルトニウム241が14年
です。

でも同じ半減期を持つバリウムに比べてストロンチュームは骨に蓄積しやす
いので、その分を考えなければなりません。

このように、規制値は色々考えて決められているので、今、変更しない方が良
いと思います。むしろ細かいことを考えずに規制値をただ半減期だけを考え
て楽観的に判断するのは危険と思います
.

その意味で「規制値を超えているけれど、食べても安全だ」というのは不適
切でしょう
.

(平成23年3月20日20時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(18) ほうれん草は食べられるか? | | 原発 緊急情報(20) NHKの
矛盾を役立てる »

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原発 緊急情報(20) NHKの矛盾を役立てる

政府は2万人を超す死者行方不明者を出した東北関東大震災の復旧に全力を
注ぐなければならない時期なのに、福島原発のことで振り回されていると報
道されている。

NHKも多くの時間を使って福島原発の状況を報道しつづけている。

なぜ政府は、福島原発対策に振り回され、NHKはなぜ福島原発の放送を続
けているのだろうか。

それは「大事件」だからである。

しかし、政府もNHKも「漏れた放射線は大したことはない」、「放射性物
質で汚染された野菜や牛乳も健康に影響がない」、「原発は沈静化に向かっ
ている」と言っている。

「大変なことである」と言いつつ、「何もしなくても安全だ」と言っているの
だから、不信感が募るばかりだ。

・・・・・・・・・

ところでわたくしたちは、時として目の前で起こっている事の本質をなかな
か見抜くことができない。

今度の場合、もしも福島原発の状態が簡単なもので、しかも住民の被害がない
のなら、もともとニュースバリューもなく、政府が懸命になることもない。

反対に、政府が懸命になってNHKが放送を続けけているにもかかわらず、
何も起こらないはずはないのである。

「安全だ」と言っているけれど、現在の放射線量は、福島県東部及び福島市
では管理区域を設定しなければならず、住民に線量計やフィルムバッチを配
り、健康診断を開始する時期である。

またホウレンソウや牛乳等も規制値の20倍程度の値を示しており、これも
注意を要する

規制値を超えても健康に関係がないというなら、規制値を作る意味がない。

また、福島原発が徐々に沈静化していくなら、政府はもっと震災復興に力を
入れ、NHKは別のことを放送してもらいたい。

しかし、なぜ政府がこれほどまでに対策に懸命になり、NHKが放送続ける
かというと、実は、現在の状態が憂慮すべきものだからであり、かつ近い将
来、福島原発がさらに危機的な状態に陥る可能性があるからにほかならな
い。

そこで、このブログでは、

1. 放射線で個人が被爆する量をそれぞれ個人が計算することを目指し
た。それによって避難するかどうか自分で決められる、

2. 汚染された食品は、規制値以上のものは食べないようにすることを勧
めた、

3. 水については現在調査している。まだ飲み水以外は大丈夫のようだ、

4. 原発の今後は、最大で現在の10倍の危険性があると考えて、避難す
るかどうかを決めるときには、計算値を10倍して欲しいと勧めた、

5. 福島第1原発3号機はプルトニウムのまざった燃料を使っていて、こ
こが爆発したときに、周辺にどのような影響があるかは極めて難しい。私
は、最大で通常のウラン燃料を使用する時の2.5倍程度ではないかと思う
ので、そうすると将来の推定計算をするときに、現在の10倍ではなく25
倍程度で計算するべきだろう。

・・・・・・・・・

これが私の推奨するところである。

私が、「政府が対策に懸命でNHKがあれ程報道しているのだから、事態は
良い方向に向かっていない可能性がある」と判断しているからでもある。
福島原発がさらに悪い状態に入った時、福島県、福島県西武、宮城県南部、
城県北部はかなり距離が近いので、放射線が増大するのに1日程度であ
る。

一方、東京や仙台など地理的に離れたところは(冬で北風が吹く日が多い仙
台は少し距離より以下遠いと考えている)、3、4日の余裕があるだろうと
いうのがわたくしの考えである。

10倍、25倍という数値は確実性が足りないが、そういう数字がなけれ
ば、住んでいる人が判断することができない。せめて専門家が推定しなけれ
ばならない。

また、テレビの解説者は、家の中でじっとしていれば被曝の量は少なくて済
むとか、ほうれん草を食べ続けなければいいと言ったりしているが、やはり
標準的な生活や、やや危険な時間の過ごし方をした時にどのくらいの危険性
があるかということを示すのが最も良い指標になるだろうと私は思ってい
る。

このようなことから、読者の方は、

「政府が原発対策に関心を示さず、官房長官が発表を止め、NHKの放送時
間が極端に減れば、福島原発は安全になったと彼らが考えている」

と判定することもできる。

(平成23年3月20日 午後10時 執筆)

武田邦彦

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「直ちに」とは何か?「冷静に」とはなにか? »

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原発 緊急情報(21) 「直ちに」とは何か?「冷静に」とはな
にか?

みんなが不安に思っている現在、私のような専門家が(打ち合わせなく、結
果として)同じ事を言うことになるのが大切でしょう。そうしないと一般の
人は不安に思います.その点では、私とテレビなどに出ている専門家との間に
かなりの違いがあります。

本当は違いはないはずです。私も原子力の仕事を長くしてきましたし、第一
種放射線取扱主任者ですから、同じ試験問題を解き、合格し、それを元に仕事
をしてきたのですから。

そこで、少し深く考えてみました。

政府、テレビの専門家、NHKなどは、福島原発で放射線の汚染の数値が出
る度に、「直ちに健康に影響が出るレベルではない」と「冷静に対応」と
言っています.

3月21日には高い放射線の下で作業にあたる作業員の被曝について指揮を
した人が「直ちに健康に影響ない」と言いました。

なぜ、政府や専門家は「放射線障害を防止する法律や規則」に定められた限
度と異なる数値を言っているのでしょうか?

・・・・・・・・・

まず、辞書で「直ちに」を調べて見ると、

1:   間に何も置かないで接しているさま。直接。じかに。「窓は―通り
に面している」「その方法が―成功につながるとは限らない」

2:   時間を置かずに行動を起こすさま。すぐ。「通報を受ければ―出動
する」
とあります。日常的にも2つの意味でしょう。

一つは「原因と結果」が直接結びついていること、もう一つが「時間的にす
ぐ」だということです。

だから、「直ちに健康に影響がない」というのは、たとえば1時間に100
マイクロシーベルトの被曝をしたときに、政府が言った意味は、

1) 1時間だけそこにいれば一般人の基準値の10分の1だから、この数値
だけでは健康に影響があることはない。その家に1日いれば2.4ミリ
シーベルトになるから基準値を超える、

2) 今日の午後とか明日に病気になるわけではない(時間)、

のどちらかでしょう。

すぐ影響はないという時間的な方は当然です.放射線の障害というのは主に遺
伝子障害や白血病、甲状腺ガンなどですから、放射線をあびてからかなりの
時間を要します.

だから、放射線をあびてすぐその影響がでるなら、かなりの重症になるで
しょう。私が作業を担当している人が「直ちに」と言ったことに心配したの
はそのことです。

もしかするとその作業主任の人は、やけどのように、放射線をあびるとすぐ
健康に害があると錯覚していたら、作業する人が可哀想と思うからです.

もう一つ、つまり1)も似たようなものです、多くの人はその場所に住んで
いるのですから、1時間あたりなどの放射線の強さはあまり意味がありませ
ん。

1時間に時間を掛けると、1ヶ月あたりなら7.2ミリシーベルトですか
ら、かなりの放射線をあびることになります。

でも、あくまでも専門家が決めた法律の値は次の通りです(1時間に換算).

     1時間あたり(マイクロシーベルト)

一般人の目安        0.1 (1年が基準)

管理区域の設定の義務    0.6 (3ヶ月が基準)
放射線作業者(男性)限度  5.7 (1年が基準)

放射線作業者(女性)限度  1.4 (3ヶ月が基準)

ですから、10マイクロシーベルト(福島市など)とこれらの値の間を埋め
なければなりません。

・・・・・・・・・

日本の官僚(この言葉は中央官庁が編み出した言い方と思います)はそれほ
ど頭が悪くないのです.

「直ちに健康に影響がない」のは確かです.私も同じ意見で、1時間だけあび
ても、また今日の午後、気分が悪くなるのではないからです。

1時間だけあびるなら10マイクロシーベルトですから、一般人の1ミリ
シーベルトの100分の1になります.確かに「直ちに」健康には影響があり
ません。

私と同じ考えですし、法律にもそっています。

つまり、将来、もし健康障害が出たら、「私は「直ちに」と言ったのです
よ」といえば良いようになっています。

「放射線が1時間あたりとも言っていますし、勿論、法律も知っています
よ.あなたは「直ちに」という日本語が分からないのですか」と言われれば反
論もできません。

つまり、「直ちに・・・」というのは「そこで生活していたら」というのと
は日本語が違うのです.

・・・・・・・・・

「冷静に対応」、「決してパニックにならないように」というのもなかなか
意味深長です.

10マイクロシーベルトと聞けば、国民は、

「直ちには健康に影響がないが、10日、そこにいると規制値を大きく超え
るので、私の家族は待避が必要だ」
というのは実に「冷静な対応」です。パニックでもありません。

この人が20日間、家にいて家族に健康の障害が出たときに、

「あのときに「冷静に対応」と言ったじゃないか!」

と怒鳴り込むと、官僚は落ち着いて、

「ええ、冷静に対応するというのは、放射線の量をお考えになって規制値を
超えるまでに移動することですよ」

と言われてしまいます.

官僚とはそういうものです。

・・・・・・・・・

このように考えると、

「規制値を自分で計算して、法律の値にもとづいて考えた方がよい」

という私の考えと、

「直ちに健康に影響はないので、冷静に対応を」

という政府の言っていることは実は同じ!!なのです!!

しかし、混乱しているのは、「直ちに・・・」の後、CTスキャンのような例
を出して、法律の規制値を言わなかったり、法律の規制値は「目安であっ
て、健康とは関係がない」と言ってみたりするからでしょう.

それを言っているのは官僚ではなく、官房長官だったり、テレビの専門家だっ
たりします。

3月20日夜、水の汚染について、ある専門家が「飲まない方が良いのです
が、それしか水がなければ仕方ありません」と言っていましたが、これはあ
る意味で、正直と思います.

・・・・・・・・・

政府が苦しい言い訳をして、専門家が追従しているのは、予想外の事故が起
こり、普段では決してあってはいけないほどの放射線が東北南、関東北を汚染
したので、その対応ができないからです。

対応ができないことと健康とは無関係ですから、もう少し誠意のある、わか
りやすい表現を使って欲しいものです。

・・・・・・・・・

ちなみに、福島原発の状態を見ると、ここ3日ぐらいで、もしかすると今後の
見通しがつくと思います。私が見通しがついたら直ちに書きます.なお、今は
まだ東京は大丈夫です。

(平成23年3月21日 8時、執筆)

武田邦彦

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いので »

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原発 真面目な話です  わかりやすいので

(ある読者からのご提案を受けて)

「(放射線が基準以上でも )直ちに健康に影響はありません」

「(タバコを吸っても   )直ちに健康に影響はありません」

「(発がん性食品を食べても)直ちに健康に影響はありません」

・・・直ちに影響がなければOK??

「(法律で1ミリと決まっていますが?)それは単なる目安です」

「(法律で制限速度が50キロですが?)それは単なる目安です」

「(法律で20才未満は禁煙ですが ?)それは単なる目安です」

・・・法律の数字は目安?

トリックがわかりやすいですね。それでも、主要メディアと専門家は同じ事
を繰り返しています.詭弁にめげず、私たちは自分たちで守りましょう。
・・・・・・・・・別件ですが・・・・・・
今晩か明日の朝までには、今後の見通しを出そうと思っています.

(平成23年3月21日 執筆)

武田邦彦

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(22) どうすれば良いか その1 »

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原発 緊急情報(22) どうすれば良いか その1

福島原発の状態が少し見えてきましたので、関東地方から東北の南部に住む
人がどうしたらいいのかいうことを整理しました。

今、住んでおられるところで生活をしても良いのか、汚染されたものを食べて
良いのか、何時、逃げなければならないのかを、まず数値で示します。

数値だけでは難しくなるので、4回目ぐらいから「やさしく文章で書いた解説
編」もつけますが、根拠がハッキリしていないといけないので、数値を先に
します。

また、1回で整理できないと思いますので、“その1”では「どのくらいの放
射線まで大丈夫か」を、ほうれん草、水、海水からの取り込みのような内部被
曝(体内)も入れて整理をしました。

“その2”では地域ごとの被曝量を示す予定ですが、今日の夕方になると思い
ます。

この整理はわたくしが個人で考えたものであり、家庭のお父さんが家族のこ
とを心配して計算したというようにとらえてください。

わたくしとしては誠心誠意やっていますが、人間のやることですから計算間
違いなどもあると思いますので、基本的には他の情報も見て、読者の方が自
分でご判断ください。

・・・・・・・・・

まず第1に表を示しました。国際基準、国内の法律(放射線障害を防止する法
律と規則(本当の名前は長い))、それにテレビの専門家がコメントしたも
のです。

「どのぐらいの放射線が問題か」というのは、1時間だけあびる人、1日の
人、1ヶ月ぐらいは続くと思う人、1年は続くと思う人によって違いますの
で、2つの欄を作りました。

私はこれまで「1年ぐらいは続く」という前提で数字を出してきました。最初
は空気中、それから食品、土、海水などに放射性物質が散って行きますから、
それがおおよそ放射線が少なくなるのは1年ぐらいかかる(そう考えた方が良
い)と思ったのです。

でも楽観的な人や外国産の食材だけを使う人、水道を飲まない人などもおられ
ますから、1ヶ月で放射線が無くなるという環境の人は1ヶ月の欄を見てくだ
さい。すでに放射線が観測されて1週間以上経ちましたので、1週間の欄は削
除しました。

(何かのことで表が入りませんので、表は次の記事に入れます)

この表で最も中心は、日本の原子力基本法に基づいて作られた放射線障害の
法律の下にある放射線障害防止規則の数値によっています。

放射線障害防止規則は長い間使われてきた規則で放射線を取り扱う仕事に就
いている人の健康を守るためのものです。

今回の福島原発の事故では、自分の意志で仕事をするのではなく、いわば無
理やり被曝しているケースですが、放射線に関する仕事をしている人も、無
理やり被曝してしまった人も同じ人間ですから、健康を守るという点では同
じ数値が基準として使えると考えました。

また、表の1行目の一般人の目安は国際勧告で共通的に言われているもので
す。日本もこれに従っていますし、日本にいる外国人もこの基準です
.

国際勧告では、かならずしも1ミリシーベルト/年でなくても良いけれど、あ
まり離れないようにと各国に勧告しています。さらに、仕事をしていて管理
されている人の10分の1にはしなければならないと言っています
.

テレビなどでは「1ミリシーベルトは単なる目安だ」と言っていますが、それ
はこの勧告で「あまり離れないように」ということを受けています。

ただ、10分の1ですから、正確に言うと「男性は1ミリから5ミリの範囲」、
「女性(妊婦を含む)は1ミリ」ということです。また妊娠する可能性のない
女性(子供を除く)が男性と同じか、少し違うかは議論が終わっていません。

2行目の管理区域の数値は、個人の問題では無く職場とか自治体が関係する人
を守るためにやらなければならないことです

つまり、0.6μS/hを越える怖れのあるところは、職場や自治体が管理区域を
設定し、その人の「被曝した記録をとること」と、「健康診断をすること」
が求められています。

今の福島市などは明らかに管理の義務のある放射線ですから、福島市は(現
実にできるかどうかは別にして)、市民にフィルムバッチを配り、健康診断を
する地域です(専門家として単に法律を説明しているだけです。私は現在、
福島市長ではないから)
.

また、この表では妊婦の内部被曝、つまりホウレンソウ等を食べたり、水を
飲んだりした時の体内の被爆の限度を示しています。

「限度」ですから、法律的にはこれ以上、被曝させると管理者の罪になる数
値です。

女性は妊娠しているかどうか一般的にはすぐわかりませんので、女性作業員
は妊娠している可能性のある人を取っています。小さい子供もこれに準じて
良いでしょう
.

また、ここではテレビの専門家がこの程度なら安全だと言っている数値を掲
げました。

わたくしはこのような数字には法律的な根拠はなく、個人的な判断だと思い
ますが、ほとんどのテレビに出る専門家が口をそろえて言っていますので、
ここに示しておきました。

ただ、テレビの専門家の話をしっかり聞いたのですが、たとえば「100ミリ
シーベルトまで大丈夫」と言っておられる方とか「長期間では問題だが、短
期間では・・・」などと解説しておられます
.

それが1年か、1ヶ月かがハッキリしないので、ここでは1ヶ月に100ミリで
計算しました。1年で100ミリでも他の数値とかけ離れているのは確かです
.

また、専門家の人が国際勧告や日本の法律と違うことを発言されている真意は
私には分かりません。

・・・・・・・・・

以上のことから、体の外からの場合、国際勧告に従いたいと考える人、仕事の
基準でも良いと考える人がいるでしょう。その場合は、男性は放射線が1年間
続くと思っている人は5.7、1ヶ月で終わると思っている人は.68.4まで大丈
夫です
.

女性は2.3から27.6を限度とすると良いと思います。食品からなら妊婦
で0.5から6.0の間ということが判ります
.

これに対してテレビの専門家の方が正確だと考えられる人は、140ぐらいか
ら1700ぐらいまで大丈夫です
.

これらの数値と次の“その2”に出す予定の「どのぐらい被曝するか」を比較
すると判断ができます。

ちなみに、「規制値」の列の単位はmSがミリシーベルト、yは年、mは月
で、たとえば3mは3ヶ月を示しています。

まず、急ぐのは福島県の職場や自治体は、もし0.6μS/hから7.2μS/hを越
えるような怖れのある地域なら早期に「管理区域」を設置し、そこにいる人の
被曝を測定するためのフィルムバッチを配り、健康診断の準備をした方が良い
と思います。

(平成23年3月21日 夜11時執筆を追記して翌朝8時アップ)

武田邦彦
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緊急情報(22)の表

緊急情報(22)の表がなかなか入らないので、少し画質を落として見ました。

武田邦彦

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の1 | | 原発 緊急情報(23) どうすれば良いか その2 »

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原発 緊急情報(23) どうすれば良いか その2

どうすればよいか“その1”では、おもに法律に基づいてどの程度の放射線を
あびても大丈夫かということを書きました。

日本の法律はかなりの議論をへていますから、わたくしは法律の値はそのま
ま信用してよいと思います。また、体内の被曝も計算に入っています。

今回は、実際にどのくらいあびているか、また近い将来、どのぐらい被曝す
ることになるかを計算しました。

二つの表を見比べてもらえば、自分の住んでいるところと、自分が男性か女
性か等を考えれば、おおよその検討をつけられるようになっています。

また、かなり二つの表が難しいので、今後、その解説を言葉でしていきたい
と思います。

・・・・・・・・・

まず、現在と近い将来にどのぐらいの被曝を受ける可能性があるかという表
を示します。表はじっくり見てください。

「現在」の被曝量は「事実」に基づいていますから、それほど変わりません
が、「最大」と書いてあるところは、わたくしが今後の福島原発の状態のう
ち、最も悪い状態を想定しています。従って、この数字はわたくしの判断が
入っています。

どのような判断をしたかは、ここでも簡単に書きますが、さらに詳しい根拠
は、続いて書いていくつもりです。(クリックすると表が大きく見えると思
います。今回も表が入らなければ独立した記事にします.)

被曝は体の外側から受けるものと、食べ
物や水等を飲んで体の内側から受けるも
のがあります。

体の外側から受ける値は、すでにいろい
ろなところで発表されているように、福島県の最も多いところで300、福島
市が10∼20ぐらいです。ここでは少し低めの10をとっています。ご自分が
お住まいのところのデータをお使いください。

福島、 城、宮城など福島原発から近いところは、おおよそ3ぐらいの値が報
告されています。同じ福島といっても距離も遠く風上に当たる会津地方など
は値が低いので、これもやはり自分のお住みになっているところをお調べく
ださい。

東京とその周辺の値は正確に示すのが非常に難しいのです。もともと地域が
広いこと、人の移動が長距離であることなどがあります。そのためにこれま
でもわたくしが示す東京の数値はやや高めで、それも変化していました。

でも、ここ2,3日、計算がしやすくなってきたのは、外部から受ける放射
線と食品などから受ける放射線とがでてきました。原発から遠いところは食
品などの比率が上がってきますから、外部からの放射線の影響が相対的には
小さくなります。

実は、わたくしが東京だけはこれまでも高めに設定していたのは、やがて食
品とか水が汚染されてくるのでそれを考えていました。

また、テレビを見ていますと、例えばヨウ素131の半減期が短いのですぐ
なくなってしまうというコメントがありますが、原発からの漏れが止まれば
その通りですが、原発から継続的に放射性物質が出ている時には、いわば次
から次とヨウ素が来ますので、半減期はあまり意識しない方がいいのです。

また、主な核分裂生成物の半減期は30年ぐらいのものが多いので、あまり時
間が経ったからと言って急激には変化しないのです。

いずれにしても、今のところ、最も高い所で300、最も低いところで0.1ぐ
らいとおもいます。その間は表を見ておおよその値を推定してください。

・・・・・・・・・

現在の被ばく量の計算は簡単で、外から受ける被ばく量を2分の1にし(室内
補正)、食品や自ら受ける被ばく量はそのまま足しています。
外からの被ばく量は、テレビで「家の中に入れば10の1」と解説されていま
すが、それは一日中家の中にいて換気を一切しない状態のことを言っていま
す。

外からの放射線というのはなかなか難しいのですが、福島原発から飛んでき
た放射性物質は比較的空気中に浮遊しているということを考えると、窓を開
けて一度換気してしまえば部屋の中は外と同じになります。

一日中換気しないということはあまりありませんし、また、はき出し窓を開
けてベランダに出て、そこで洗濯物を干したりしますと、その時に部屋の中
の空気は入れ替わってしまいます。

空気が入れ替わるばかりではなくて当然空気中に浮いている放射性物質も一
緒に入ってくるわけですから家の中と外とがそれ程違うという状態をつくる
ことはできません。

そこで、この計算では家の中の状態は外よりも放射線が2分の1であると考え
ました。つまり昼はある程度換気しますが、夜は締め切って寝るということ
を想定したわけです。

また台所でガスを使うときに、換気しなければ中毒で死んでしまうこともあ
ります。換気扇をつければそれだけ空気が外に出て行きますが、同じ量の空
気が外から入ってきます。

その時に外からの空気がフィルター等を通して入ってくる場合は別ですが、
一般の家庭では 間から入ってくるのでやはり外の空気とほとんど同じよう
になると思います。

現在は冬ですから石油ストーブをお使いの家庭は、時々換気をしたほうがい
いという意味もあってここでは2分の1にしています。

・・・・・・・・・

次に、ホウレンソウなどの食品や水が放射性物質に汚染されているとき、食
べた時にどのくらい被曝を受けるかという計算は非常に難しい計算です。

これを詳しく説明しますと、本当に専門家でなければ理解できなくなります
ので、ここではほうれん草について専門家が計算した値を使いました
.
つまり、20日に発表された汚染されたほうれん草1キログラム当たり240マ
イクロシーベルトという値を使っています。

また、体の中の被曝は学問的には時間あたりではなく100グラムでというこ
とで決まるのですが、これもやはり1日にほうれん草を100グラム食べた
ら、それを24時間で割って時間当たりの値を出しています
.

食品の欄の1という数字は、1キログラム240μSですから、100グラム
で24μS、それを24時間でわって1時間あたりに換算しています
.

・・・・・・・・・

そうしますと、福島市に住んでいる人は、外部からの放射線が10と大きいの
で、それを部屋の中にいる時間を考えて2分の1にして、それに食品の1を足
して合計で6になっています。

これに対して東京の人は外からの放射線が低いので、0.1を2分の1にし
て0.05、それに食品からの1を足すと1.05となり、さらに四捨五入して小
数点1桁で表示すると1.1になります。

つまり、食品や水が汚染されてくると、だんだん地域の差がなくなってくる
ということを示しています。

このようにして現在の被ばく量を計算しますと、福島県で放射線が強いとこ
ろで151、福島市で6、周辺の件で2.5、そして東京等が1.1程度ということ
がわかります。

この値を“その1”で示した。どのくらい被曝してもいいかというものと比較
すると、だいたい現在の状態を把握することがわかるできます。私が早く福
島市は管理区域にした方が良いと言っているのは、この6という数字があるか
らです
.

・・・・・・・・・

さらに、現在の状態だけわかっても今後のことがわからないと行動をとるこ
とができません。特にお子さんをお持ちの人は春休みの関係があり、今後ど
うなるかということにご興味があると思います。

詳しい理由はあとで説明しますが、ここでは次のように仮定しています。

1) 福島原発の状態は冷却がうまくいけば放射線は減ってきますが、プルト
ニウムを含む3号炉やその他のところの燃料が融けると強い放射線が出
る可能性があります。
これについては NHK も「大量の放射線が出る可能性があるので、原子
炉に水を注ぐ注入している」と説明しています。また消防の人や自衛隊
がかなりの被曝をしながら水をかけている理由は大量の放射線が出る可
能性があるからです。
わたくしはそれを「現在の10倍」として説明してきました。しかし3号
炉がプルトニウムの燃料を使っていますので、さらに調査をして25倍
にしました。
少し値が大きくなるかもしれません。ただわたくしはこのブログを書き
始めて以来、大きすぎるとか小さすぎるということを考えずにきました
ので、ここでもそのようにご理解ください。

2) 食品などから体内に取り込まれる放射線ですが、今はほうれん草などに
限定されています.
テレビの解説者は「ほうれん草ばかりを1年中、食べ続けるわけではな
い」と言っていますが、それはほうれん草だけが汚染されている場合で
す.人間は水を飲み、調理に水を使い、いろいろな野菜を食べます。だか
ら、「人間が食べる限りは1年中」として計算します。
ここでもまた半減期の問題があります。ヨウ素131の半減期は短いので
すが、原発からの放射線物質の半減期は30年ぐらいが多いこと、原発か
ら継続的に放射線物質がでている場合は、追加されますので、ここでも
あまり半減期を考えない方が良いと思います
.

かくして、この表では外からの量を25倍(屋内の2分の1を入れていますか
ら実質は12.5倍)、食品は毎日たべる食品の10種類が汚染されたとし
て10倍にしています
.

そうすると、もっとも高いところで3760、福島市で135,近県で47.5、そ
して東京付近で11.3となります。
これは、政府とNHKが言っている「冷却に失敗した場合」ですから、その状
態によります。当然ですが、あと1週間ぐらいで放射線がほとんどでなくな
り、食物は海からの影響がなければ、それは「良かった」と思うことにして
います
.

・・・・・・・・・

前の表と見比べて、どのように考えたら良いかは後で書きますが、簡単に言
うと、現在の状態なら「やや注意」、福島原発の漏れが続くようなら「かな
り注意」、そして福島原発から大量の放射線が漏れたら、福島市民は逃げる
という感じになりました。

東京近郊の人は様子を見ることになるでしょう。このことはもう少し詳しく
考えてみることにします。

(平成23年3月22日 11時 執筆)

武田邦彦

« 緊急情報(22)の表 | | ショート警報  かけ算のできない東大教授 »

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ショート警報  かけ算のできない東大教授

食品で、危険な兆候が見られましたので、言葉足らずですが短い警告を出した
いと思います。

福島原発事故の最初の段階に福島市で1時間に20マイクロ(シーベルト、
後は省略)の放射線が観測されました。

これに対して、テレビに出ていた東大教授が、「1回のレントゲンで600マ
イクロだから、それの30分の1。まったく問題がない。」

と発言しました。

東大教授は「かけ算」ができないのです。

20マイクロは1時間あたりですから、30時間たつと600マイクロになりま
す。従って、福島市に住んでいる赤ちゃんは1ヶ月に24回のレントゲンを受
けることになります。

このようなことをコメントするというのは、わたくしはやや犯罪とも言える
気がします。

・・・・・・・・・

本日、似たような事が民放でありました。

民放のある解説者がほうれん草の汚染について解説をし、「ほうれん草の汚
染が基準値を超えているといっても、100ミリになるまでには80キロ程のほ
うれん草を食べなければいけない。」

といってほうれん草の安全性を強調していました。

もともと100ミリ等という基準値はありませんし、ほうれん草等の食品中の
放射性物質の規制が厳しいのは、原発から放射線が漏れるような時にはほう
れん草だけが汚染されているわけではないのです。

また、ほうれん草の中にはヨウ素だけではないので、30年の半減期を持つ
ものが多く、ヨウ素の半減期を言っても意味がないのです。この解説者の言う
ことを信じれば、放射線の疾患になる人が出てくるでしょう.規制値は規制値
なのです。

東大の先生が「かけ算ができない」とすれば、この解説者は「足し算ができ
ない」といえます。

・・・・・・・・・

このところ情けない解説が続くので原子力の技術者としてのわたくしの信念
を申し上げます。

科学技術は人類に貢献するために行うのであって、決して人類の健康を損
なっては、やるべきではないのです。

わたくしたち原子力に携わる技術者は原発から出る放射線を絶対に基準内に
収めなければなりません。むしろ、自然放射線と違わないぐらいに減らして
十分に安全な状態で原子炉を運転し、エネルギーを供給することこそが、わ
たくしたち技術者のプライドなのです。

この期に及んで、放射線の規制値の解釈をごまかし、被曝する量があたかも少
ないようなことを言う原子力関係者がいることは本当に恥ずかしいことで
す。

わたくしたちは福島で失敗し、信頼を裏切ったのです
.

せめて正しい情報を伝えるべきです。また、農作物が売れなくなって農家の
方は大変でしょうが、魂のある農家の方なら自分の作ったもので消費者が健
康を害することを望むでしょうか?

農家は被害者、技術者は加害者ですが、共に与えられた天職に対してプライ
ドがあります。

(平成23年3月22日 午後5時 つい執筆)
武田邦彦

« 原発 緊急情報(23) どうすれば良いか その2 | | 原発 緊急情報(24) どうすれ
ば良いか その3 »

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原発 緊急情報(24) どうすれば良いか その3

どうすれば良いのかの“その1”で、現在、法律で決まっている被曝の限度を
書き、“その2”ですでに被曝した量と今後、被曝すると考えられる量につい
て整理をしました。

すでに2つの表からご判断をされている人も多いと思いますが、問題なのは
今後の福島原発が沈静化するのか、今よりひどくなるのかについて考えてお
かなければなりません。

・・・・・・・・・

福島第1原発には、1号炉から4号炉まであり、それぞれ破壊の程度が違いま
す。1号炉と2号炉の問題は「原子炉の中の燃料棒がどのくらい破損してい
るか」ということです。

ある程度、燃料棒が破損していることはすでに東京電力からも報告され、1
号炉の燃料棒は70%程度破壊されていると報告されています。

燃料棒が破壊されていると言っても、棒がひび割れを起こしている程度なの
か、高温になって燃料棒全体が溶けてかたまりとなっているのかによって違
います。

核爆発中(原子炉運転中)だったのですから、大量の放射性物質があったの
で、その崩壊熱で燃料棒が融けていくと温度が非常に高くなります。

最初の段階は燃料の3分の1ぐらいが露出すると、燃料棒を作っているジル
コニウムが水と反応して水素を生じ、福島原発で起こったような水素爆発が
起こります.

さらに温度が上がり、燃料棒が融けるとその塊は2500℃ぐらいになりま
す。ところで、鉄が溶ける温度というのは、おおよそ1500℃ですがぐらい
ですから、燃料棒が高温で融けると、塊になって原子炉の下を突き破り(原
子炉を作っている鉄が溶けるから)、さらに下にいって、ドスンとコンク
リートの床に落ちます。

これを「メルトダウン」と言います。

コンクリートの床に落ちると、余りに熱いのでさらにコンクリートを融かし
ますが、融けたコンクリートの成分が燃料棒と混じり、それで温度が下がり、
そこで止まるということです。

これは理論的にも、スリーマイルの事故の時の経験でもそうでした。

「メルトダウン」をメディアは恐ろしいことのように言いますが、現在の福
島原発はそれより酷い状態なのでメルトダウンは怖くありません。

ただ、燃料棒を取り出せないので、かなり手こずるでしょう。つまりメルト
ダウンというのは、「手こずるか手こずらないか」の問題であり、「大きな
事が起こるか、起こらないか」ではないのがスリーマイルの教訓でした。

3号機はプルトニウムを燃料に使っていますから、ウラン燃料の1号機、2号
機とは違います。21日にでた黒い煙の原因が心配ですが、普通に考えると
爆発的にプルトニウムが飛散するようなことは起こらないでしょう.

4号機は、定期検査中ですから原子炉は空で「使用中の核燃料」がプールに
入っています。メディアでは「使用済み核燃料」と言っていますが、4号機の
燃料は使用中ですから、まだ核爆発(小さい)をする可能性もあるし、崩壊
熱も高い状態です。

この核燃料のプールに穴が開いているというのがアメリカの見解で、日本は
穴は開いていないと言っています。どちらかによって今後の状態が変わりま
すが、それはこれから漏れる放射性物質の量が2倍になるか3倍かという問題
です。

爆発的するかどうかではありません。

・・・・・・・・・

以上のことから、福島原発の事故は3月22日の午後になってようやく将来の
見通しがわかり、簡単にいうと、「福島原発の事故は、原発自身については
終わりつつある」と言って良いでしょう。
今後、放射線物質が飛散することもあるし、いろいろな事後処理があります
が、これまでのような緊張した状態からは脱したと思います。

その点で、今までわたくしが示していた被曝の計算から言えば、

・・・「現在」の2倍で終わる・・・

ということです。前の表の「現在」とその2倍の間に絞られてきたと思いま
す. 

「現在」より少し大きめな数値も考えておくのは、これまでは空気中の放射
性物質から被曝していたのですが、今後は野菜、水、海、魚などから少しず
つ被曝しますからその分を考慮しておいたほうが良いということです。

さらに、福島原発はまだ安定していないのですから今後も大きな爆発も考え
られますが、それは可能性が少ないので「頭の隅に入れておく」程度です。

・・・・・・・・・

今後は福島原発を忘れて、身の回りに関心を寄せ、「野菜はどうするか」、
「飲み水は」、「風呂は」、「海水浴は」などを考えて行きたいと思います.

(平成23年3月23日 午前8時 執筆)

武田邦彦

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か? その4 »

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原発 緊急情報(25) どうすれば良いのか? その4

ここでは、これまで3回の「どうすれば良いのか?」のまとめをできるだけ
わかりやすく説明する積もりです.

福島原発が爆発して、膨大な放射線物質が放出されました。その時、危険性は
「1倍から25倍」の範囲でした。つまり、1倍というのが3月15日、2
5倍が将来で、爆発規模で10倍はあり得るし、プルトニウムで2.5倍の危
険性があると私は考えていました。

これは、政府、NHK等が繰り返していた「もし注水に失敗したら大量の放
射線がでる」、「きわめて深刻な事態に陥っている」という文学的表現を、
私の判断(過去の実例と理論など)に基づき数値で示したものでした。

それが今は「1倍から2倍」に入るようになりました。1倍から2倍ぐらい
になると、具体的にどのような行動をとればよいかが決まります。そこで、
緊急情報(22)「被曝限度」と(23)「地域ごとの被曝量」の表を出したので
す.

・・・・・・・・・

たとえば、福島の人の被曝量は、1時間あたりの量として(体内も含む)6
マイクロから12マイクロですから、おおよそ10マイクロぐらいです。東
京は1から2ですから2ぐらいと考えます. そして、汚染が1ヶ月で終わる
として(少し甘いが)管理区域(被曝量を測定し、健康診断を行う)として注
意するのが7マイクロですので、福島市の人は「組織的に管理区域に入る」
レベル、東京は「個人的に注意する程度」であることが判ります.

一方、女性(赤ちゃん)の場合は6マイクロですから、福島市の女性は1ヶ月
以内に移動するか、何らかの対策をとる必要があります(放射線の法律によれ
ばということです)。
男性は68ですから、どの地域でも汚染された食品をとらなければ大丈夫で
す.特に年配の男性は問題がないレベルになりました。

・・・・・・・・・

ここまで来ました。

でも、昨日の福島の放射線を見ると、もっとも高いところが90もありました
(原発から30キロより外ですが)。そうなると、その地域におられる人は
福島の9倍になりますから54となり、女性はもちろん待避しなければなり
ませんし、男性もギリギリになるので、1ヶ月たったら移動が必要です.

このことで判るように、15日あたりからご自分が住んでいるところの毎日
の放射線の平均をとって、得られた値を、その期間の総時間で割るのです。そ
れが2になるか10になるかがでると完璧に自分や自分のご家族の被曝量を
計算できて、しかもそれが危険な状態かも判ります。

たとえば、15日から、2(マイクロ/時)、3,6,1,4と5日間の平均
の値が判れば、2+3+6+1+4=16で、それを5でわると、“3.2”に
なります。それを緊急情報(22)の表と見比べると、「被曝量は管理し、健
康診断を受ける必要」があることが判ります。

ただ、同じ表の「テレビの専門家のコメント」より値はかなり下回りますか
ら「直ちに健康に影響」はでませんから、すぐ入院などは不要です.

ご自分の被曝量を計算しておけば、これからも放射線量を見ていればだいた
い、見当がつきます.

・・・・・・・・・

問題は、「体内被曝」です。これからは外部被曝が減ってきて、体内被曝が
増えてきます.当面は「外部=体内」として外部の2倍にしておくのが良いで
しょう.

というのは理由があります。外部と体内は「同じ原因」で起こるからです.

福島原発が爆発して飛散した放射線物質は「その場所に飛んでくるから」放
射線の量が上がるのです.その物質は、衣服につき、土に潜り、野菜に乗り、
川に降ります.だから、空気中に漂う放射線物質がそのまま、放射線の量にも
なり、野菜の汚染にもなるからです.
次のブログで説明しますが、ホウレンソウとか水道水だけが汚染されている
わけではありません。小さい粒が空気中を飛んで来るのですから、作物の種
類にもよらないのです.

牛乳が汚染されているのは草を食べるからだと解説されていましたが、おそ
らくは今のウシは牛舎の中で昨年とった乾燥した草を食べているとしたら、
飼料には放射線はないと思いますので、空気中の放射線物質を吸い込んだか
らでしょう。これは人間でも同じです.

少し飼育の状態を調べて見たいと思います。

福島県の人に悪いのですが、福島産の作物はすべて汚染されているはずで
す.残念ですが事実は事実です(福島と言っても、会津の方は汚染が弱いので
少ないと思います.また、放射線レベルが2マイクロ(毎時)以上のところ、
城の北、栃木の北なども汚染されている可能性があります。

(その地域の人には申し訳ないのですが、このような時には事実が大切です
から。空気中を飛んでくるので、どうしても汚染されます.)

(平成23年3月23日 執筆)

武田邦彦

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をお風呂に入れても大丈夫? »

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原発 緊急情報(26) 赤ちゃんをお風呂に入れても大丈夫?

福島原発が爆発して放射線をもつ「粒(目に見えない小さな粒)」がホワー
と原発の上に立ち上りました。イメージとしては小さな火山が噴火して火山
の煙が立ち上ったようなものです。

福島原発は太平洋に向いていますし、風は西風なので、ホワーと舞い上がっ
た「粒」は風にのってほとんどは太平洋にいったと思いますが、わずかの
「粒」がどうも北西(福島)の方と、南に行ったのです
.

つまり、福島原発から放射線が四方八方に飛んででたのではないので、そこ
を誤解すると(国がそのように説明したから誤解しても無理はないのです
が)、判らなくなります
.

ホワーと上がった「放射線の粒」は風にのって福島市などに行きましたし、
遠くは利根川上流にも飛んでいきました。

福島市の「放射線」は20マイクロ(シーベルト)ぐらいになったのですが、
その時の様子を詳しく書きます。この情景を思い起こせれば、「東京の水は
飲んでもよいの?」、「子供をお風呂に入れても良いの?」ということもわ
かります。

・・・・・・・・・

情景を目に浮かべるために、自分(読者の方)が「目に見えない粒」に変身
して、風に乗り、福島原発から福島市まで飛んでいったとします。

上空から見ると福島市が見えてきます.そこで風が弱くなったので、徐々に下
に降りてきて、地上1.5メートルぐらいで止まりました。

そこに文科省の車がきて「放射線」を測ります.そこで測っているものは「粒
から光のようにでる放射線」です。

つまり、福島原発から放射線(光のようなもの)が飛んでくるのではなく、
「粒」が飛んできて、その「粒」から放射線がでるのです。

文科省の車が行った後、読者のお一人がそこを通りかかるとします。「粒」は
放射線を出し続けていますから、その人は、まず「粒からでる放射線で被
曝」します。またその人は人間ですから、息をすって呼吸をします.その時
に、「粒」はその人の肺に入ってしまうのです
.

つまり、「粒からでる放射線(外からの被曝)」と「粒を吸い込むので、体
内での放射線(体内からの被曝)」の二つの放射線をあびることになりま
す。

おそらく、今の福島市役所は、「飛んできた粒」から放射線をあびること、
その後、自分がその「粒」を吸い込んでしまう事を知らないのではないかと思
います。

だから、マスクがいるし、雨が降ると放射線が上がるのです。

また外出するとその「粒」が衣服に付着しますから、家に帰ったら玄関の外
でティッシュで拭かなければなりません。

・・・・・・・・・

実はここで読者の方に謝らなければならないことがあります。

放射線の法律によると、「ある場所」の「実効線量(放射線の量)」は「外
からのもの+体内からのもの」を合計することになっています.たとえばそれ
が3ヶ月で1.3ミリシーベルトになりそうだったら、「管理区域」にしなけ
ればならないなどとなっています。

この通達は文科省からでているので、同じ文科省の発表だから発表される数
値はこの2つの合計と思っていたのですが、今日、調べたら、もしかすると
「外から」だけかも知れないのです。

かなり調べましたが、まだ判りません。

もし、文科省が公表している放射能が外からだけのものなら、それを約2倍し
ないと正しい放射線の量になりません。

約2倍というのは、チェルノブイリの時には、「外から」と「体内から」の比
率はおおよそ同じでした。だからもし文科省のデータが「外から」だけな
ら、2倍にしなければなりません。

福島が20マイクロなら正しくは40マイクロになります。もう少し調べます
.

・・・・・・・・・

ところで福島市に降ってきた「放射線を出す粒」は人の肺に入るだけではな
く、地面、ホウレンソウ、どんな作物、樹木、ネコ、イヌ、川、ビルにも降り注
ぎます
.

「粒」はえり好みしませんから、どこにでも同じく降ります。ただ、人間、ネ
コ、イヌ、ウシなどの動物は呼吸するので、体の表面につくと同時に肺に入る
というだけ余計に被曝します。

このように「粒」がおおよそでもイメージできると、「なぜホウレンソ
ウ?」、「なぜ水道?」というのが判りますし、「ホウレンソウはどのぐら
い危ないの?」、「水道は飲んで良いの?」というのも判ります
.

・・・・・・・・・

「放射線をだす粒」はどこでも誰でも何でも「平等」に降ります. 人間も、
イヌも、土も、ホウレンソウも、小松菜も、川にも同じく降ります
.

ということは、ザッと言って、「自分が汚染されると同じく」、ホウレンソウ
もウシも川も汚染されます.もちろん、「粒」は野菜の好き嫌いもないので、
どの野菜がどうということはありませんが、「根菜類」は地下に潜っている
ので、汚染されません。

ホウレンソウが汚染されているのは、「粒」が降ってくるからです
.

牛乳が汚染されているのは、ウシが呼吸するときに「粒」を肺にいれるから
です。

水道水が汚染されるのは「粒」が川にも落ちるからです
.

だから、ザッと言うと{「自分」+「食べた野菜」+「飲んだ水道水」+
「飲んだ牛乳」}になります。汚染されたものを体に入れれば、自分が被曝
した量が何倍かになりますので、できるだけ採らない方が良いと言うことに
なります。

・・・・・・・・・
そうすると次のことも判ります。

「なぜホウレンソウ?」・・・「ホウレンソウだけ測定したから」

「なぜ水道水?」・・・・・・「川から水をとったから」

ということになります。

でも、良いこともあります。「粒」は平等に降りますから、自分にも川にも
同じだけ降ります。だから「ドンドン汚れる」というのではなく「自分が汚
れたと同じぐらい汚れる」ということですから、限度があるのです。

その点では限度があるから安心です
.

また、赤ちゃんをお風呂に入れると水道水からの放射線をあびますが、人間
の皮膚は放射線に強いので、飲むのに比べれば10倍で同じぐらいになりま
す。
(非常時の被曝ですが、皮膚は10倍大丈夫とされています。)
だから、お風呂は大丈夫です。回数をやや少なくするのも良いと思います。
また「粒」は「こすると落ちやすい」という性質がありますから、お風呂か
らでたら良くタオルで拭いて上げるのも良いでしょう
.

・・・・・・・・・・・・

読者の方からのご質問が多いので、時間の許す限り書いていきます。特に、
水、洗濯、台所で使う水、安心な食材、ベクレルとシーベルト、体外被曝と
体内被曝、規制値がなぜ低い値になっているのにテレビに専門家は高い数字
を言うのか?など数字が入る難しい問題も徐々に書いていきます
.

(平成23年3月23日 午後9時 執筆)

武田邦彦

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ぜ、そんなに違うのか? »

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原発 緊急情報(27) なぜ、そんなに違うのか?

(昨日、3月23日になって、メールのご返事が時間的にできなくなりまし
た。申し訳ありません。全数、読んではいます。そこでご質問を中心にブロ
グをすこし詳しくして書きます。)

今日は、「法律の規制値では厳しい数字が出ているのに、政府やテレビでは
大丈夫、大丈夫と言っているのは、どうしてそんなに違うのか」ということ
を説明したいと思います。

多くの人がこれに疑問を抱いてどちらが正しいかと心配しているからです。

・・・・・・・・

すでに述べたことですが、単なる計算間違いがあります。

「20マイクロは大したことない。1回のレントゲンが600マイクロだから」

といった東大教授はかけ算ができずに間違っただけです。

20マイクロは1時間あたりですから30時間で1回分のレントゲンにあたりま
す。

もし20マイクロでも大丈夫と言っていると福島市に住んでいる幼児は1ヶ月
に24回のレントゲンを受けることになります。

このような計算間違いは人の命に関することですから、この際、テレビは責
任を持って一度修正をしておいたほうがいいと思います。

・・・・・・・・・

「54000ベクレルのホウレンソウは大丈夫だ。規制値の3000ベクレルは毎
日、1年間、食べ続けた時の値だから」
と言った広島の放射線の専門家も割り算ができなかっただけで訂正が必要で
す. 54000のホウレンソウは水洗いした後の 城産のホウレンソウです
.

54000を3000で割ります. そうすると18になります。つまり規制値
の18倍です. 365日を18で割ると20日になります。毎日、ホウレンソウ
を食べると20日で規制値を超えます
.

毎日でなくても、1ヶ月に20回食べると1年分の規制値を超えることになり
ます。

・・・・・・・・・

「ヨウ素の半減期は8日だから、すぐなくなる」

と言う人が多いのですが、規制値はもちろん半減期を考慮しています。専門
家が議論して決めている数字ですから、半減期は大切な数字で、それを入れ
ているのは当たり前です
.

特に、現在のように継続的に原発から放射線物質がでている時には、半減期
はほぼ関係がありません。(つぎから次と新しいヨウ素が降っているから)

・・・・・・・・・さて、準備を終えて・・・・・・

一般人が1年に浴びてもいい放射線の量は、1ミリシーベルトと決まっていま
す。これに対して、テレビの専門家は100ミリシーベルトまで大丈夫だと
言っています。

この100倍の差は何でしょうか。

まず第1に国際的な取り決めです。例えば食品ですと日本だけが特別な規制を
していると輸出ができません。日本の食品を絶対に輸出しないと決めれば、
日本だけの規制ができますが、それは無理なのです。食品以外でも日本だけ
が規制が緩いと外国人旅行客や外国企業の進出も難しくなります.

そこで今まで放射線についてはICRP(国際放射線防護委員会)、食品につい
てはWHO(世界保健機構)の規制を使っていました。この震災で規制要求に
高くすることになりましたが、そうすると外国は日本産の食品の輸入を禁止
すると思います。

2番目の理由は、放射線をあびる原因を一つだけに限定するとテレビで言って
いるように100ミリシーベルトぐらいでも安全ですが、その人はレントゲン
を受けたり、今度の事故のように、空気からの被曝、水からの被曝、ホウレ
ンソウからの被曝、牛乳からの被曝などいろいろなところから放射線を受け
ます。

これだけなら5種類ですが、例えば10種類の被曝原因があると100を10で
割って規制値は10ミリシーベルトになります。

さらに人間にはいろいろな人がいて、赤ちゃんや妊婦、それに放射線に感度
の高い人がいます。赤ちゃんは3倍ぐらい感度が高いので、10を3で割っ
て、3mm シーベルトぐらいになります。

わたくしの知っている限りでは、日本の規制値の議論では3ミリシーベルトぐ
らいが良いということもありましたが、国際基準が1ミリシーベルトなの
で、1990年の国際勧告に従って1ミリシーベルトになっています。

ただ日本国内だけの法律ではこれの5倍から6倍ぐらいになっていますが、い
ずれにしても1年で5ミリシーベルトぐらいより大きな数字は非現実的です
.

そもそも、この値のもとになっている「電離放射線障害防止規則」は昭
和47年に制定されて平成23年の1月14日に改正されるまで、長い間の議論
を経てますから、それが突然おかしな数字だというのも奇妙なことなので
す。

・・・・・・・・・

推定ですが、テレビに出た専門家は悪意はなかったと思いますが、規制値を
そのまま言うと福島市の人が怯えてしまうのではないかとか、疎開する先が
ないとか、水が飲めなくなるとどうするかとか、ほうれん草の代わり何を食
べるかということを心配されたのではないかと思います。

これは考え方の問題ですが、私はそのようなことは専門家が発言すべきこと
ではなく、専門家をあくまでも自分の専門に沿って正しいことをいうべきだ
と思います。
また、「安全である」というのが風評を ることなのか、規制値をそのまま
言うのが るのかは簡単ではありません。

わたくしが風評の専門家に説明を受けた時には、「風評とは正しい情報が伝
わらない時に起こる」と教えていただきました。

るか らないかというのは専門家が考えることではなく、専門家は事実を
述べるだけで、あとは行政とか政治がそれをどうするかを決めるべきだとわ
たくしは考えています。

・・・・・・・・・

数字が大きく違う第三番目の原因は、今回の事故はどのくらい長く続くかと
いう見方にあります。

1週間で終わるというならば、1年間に1ミリシーベルトという基準値は厳し
いでしょう。

1ヶ月で終わるというならば規制値を12倍ぐらいはできます(12ミリシーベ
ルトまでOK)。

さらに原発から出る放射性物質の大物は半減期が30年ぐらいありますか
ら1年以上影響があるとするならば、最初から1年ぐらいの規制値を考えてお
かなければならないということになります。

これが「直ちに健康には影響がない。」という言葉になって繰り返し言われ
るようになりました。

確かに福島原発が爆発してから2、3日の時点では、すぐ収束すると考える人
と、少し長引くと思っている人がいたと思います。

わたくしのスタンスは、すぐ終わっても長引いても、一応は安全サイドで考
えておいて、すぐ終われば「それでよかったな」と思うというのがわたくし
の考え方でした。

なにしろ、相手が放射線ですから、このような見方をするのが今までの規制
の考え方でもありました。

・・・・・・・・・

極端に心配する必要はありませんが、一度浴びた放射線は体の免疫力以外に
回復するのは難しいので、できるだけ注意して生活をするという必要がある
と思います。

従って、すでに言っていますけれども、福島市の人は危険ですが、東京の人
はまだ余裕があるというのが現状ですから、それを全体的に頭に入れて行動
されるのが良いと思います。

(また時間を見てブログを書くことにします。また十分にチェックする時間
がなく、誤字脱字が多く皆さんにご迷惑をおかけしています。どうぞご容赦
ください。)

(平成23年3月24日 9時 執筆)

武田邦彦

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 大変だけれど・・すべては理屈通り »

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原発 緊急情報(28)  大変だけれど・・すべては理屈通り

今は大変なときだけれど、福島原発と放射線汚染のことは「理屈通り」に進
んでいます。

メールをいただいた方の疑問の多くは、報道もあって「理解できない」と感
じている人がおられますので、ここでは「放射線汚染は理屈通りに進んでい
るので、それにそって考えると良く理解できる」ということで説明をしたい
と思います。

・・・・・・・・・

混乱の発端は、20マイクロシーベルトの福島市の汚染を「健康に影響がな
い」と言ったことに基づいています. すべて「規制値」で考えると判ります
.

まず、福島市の汚染は「規制値(ここでは妊婦、幼児を基準にします)
の40倍」です。(ここでは、これ以後、シーベルトとかベクレルということ
を止めて、「規制値の何倍」だけで行きます。)

規制値の40倍が「直ちに健康に害がある」かどうかは別にして、規制値
の40倍であることは確かです
.

福島市が規制値の40倍の放射線が観測されたということは、そこにそれだけ
の放射性物質があるということです。

・・・これが重要です・・・

「規制地の40倍というのは、そこに40倍の放射線を出す粒」がウヨウヨし
ていると言うことです。

その「粒」は「人、場所、時間」などを選びませんから、人の体の中、土の
上、樹木の葉、野菜、ウシの体、川、海などに侵入します
.

だから、時間的にはまず「空間」の放射線が高くなり、それから野菜や樹木の
ような表面、それから人、ウシなどの体の中、さらには、川に「粒」が入り、
そのうち、土壌にしみます
.

そうすると、まず

1) 順序がある。

ということがわかります。最初は空気中、それからホウレンソウの葉っぱ、少
し経って川の上流から取水される水道水、さらに土壌、少し経って海から採っ
た魚の中というようになるでしょう。

今のところ、これも順序通りになっています
.

そして、

2) 汚れの原因は同じ「粒」だから、空気もホウレンソウも水道も同じぐら
い汚れる、

という事です。つまり、空気が規制値の40倍なら、ホウレンソウもその程
度、水道もその程度です。

ただ、ホウレンソウは畑一面に空を向いていますから、私たちと同じぐらい
に被曝しますが、水道は川が細ければあまり粒が降らないので、少し少なめ
のはずです。

かくして、空気が40倍なら、ホウレンソウは20倍、水は5倍程度の汚れにな
ります
.

これもおおよそその通りになっています。ただ、政府が急いで野菜の基準
を10ベクレルから300ベクレルなどに変えると、いろいろな値になります
.

・・・・・・・・・
実は「規制値」というのはあるシッカリした「考え方」でできています. そ
れは空気でも、野菜でも、水でも同じですから、本当は従来のままにしてお
けば、だいたいの感じがわかるので良いのです。

つまり、空間が40倍とすると、野菜、水、牛乳、土、魚などがほぼ同じ程度に
なるので、5つなら40*5と計算ができるからです
.

たとえば、(難しいので雰囲気だけで良いのですが)国際放射線防護委員会
の「概念」は、

(1)公衆の構成員の中には放射線による危険性(リスク)の大きい子供が
含まれている、

(2)公衆は被ばくするかしないかに関して選択の自由がなく、さらに、被
ばくによって直接的利益を受けない、

(3)公衆は放射線以外の自分の職業からの危険にもさらされているという
理由から、公衆の線量限度を従事者の10分の1に決めることが適切である、

などと決まる
.

これに適合するように、空間、水、食物、土壌などの基準が決まるので、規制
値というのは全部「同じ」レベルなのです。

今回のことでは、突然、レントゲンとかCTスキャンなどを出すからややこし
くなり、水道はどうか、野菜はどうかという話になるのです。

・・・・・・・・・

多くの人が納得して行動できる方法ですが、

1) いちいち、シーベルトとかベクレルとかに振り回されない、

2) 基準の何倍だけに注意する、

3) それを平均するとだいたい、自分や家族がどのぐらい危ないかが判る、

ということです。

たとえば、空気の場合は基準は「普通に生活している時に安全な限界」です
し、水の場合は「普通に飲んだり、お風呂に入ったり、煮炊きをしても大丈
夫な限界」、野菜も「普通に食べたり、食べなかったりしたときの限界」です
から、素直にその通りに考えることです。

規制値を超えた水道とかホウレンソウの時には赤ちゃんのために何とか凌ぎ
ます。男性は問題が無いのですが、女性はマスクをする、外出から帰ったら
ティッシュで服をぬぐう(放射性物質は拭くととれるものが多い)、できる
だけ3月11日以前の作物(イネなど)を食べるということをすればかなりの
被曝を少なくすることができます。

いずれにしても、放射線の被曝は論理的によく考えたとおりですから、その
意味では安心です
.

(平成23年3月24日 午後11時 執筆)

武田邦彦

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原発短信

本日は時間がとれずに新しいブログは夕刻以後になりますが、

汚染されない生活

1) 3月11日以前の食材を使う、

2) 外国産の野菜と肉を食べる、

3) ペットボトルの水を飲む

これでほぼ口から入る放射性物質は格段に減ります。

それにマスクをして空気中の「粒」を防ごう!!

(平成23年3月25日 執筆)

武田邦彦

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被曝を少なくする方法(その1) »

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原発 緊急情報(29) 被曝を少なくする方法(その1)

空気からの汚染に始まった福島原発の被曝は、野菜、水、さらにこれから
は、土、海等からの被爆が関係してきます。

かなり複雑になってきましたので、多くの人が戸惑っておられるようです。
そこでここでは、これらのことを一気に理解することを目的にして、かつで
きるだけやさしく説明をしたいと思います。

・・・第一 どのぐらいまで大丈夫か?・・・

放射線に対する規制値を、わたくしは放射線障害防止の法律に基づいて言っ
ていますし、テレビではレントゲンなどを参考にして安全だと表現をしてい
ます。また極端な場合には「放射線を浴びる方がいい」という専門家までい
ます。

国際放射線防護委員会、これは国際的に放射線に対する防護の基準を決める
委員会で日本もこの勧告に従っています。

個人的な意見は別にして、頭の中を整理するために国際放射線防護委員会の
数値と考え方を示します。

まず、放射線の被曝では低い線量から死亡者が出ます。問題はその死亡者の
比率をどのくらいだったら危ないかとすることなのです。国際的には放射線
に被爆することによって、「1000人に1人」ぐらい死亡者が増える状態を
「危ない状態」とすることになっています。

だから1万人に1人ぐらいの死亡者になる放射線なら認められています。しか
し、「100人に1人」となると相当なものですから、これは「我慢ができな
いほど危険」と考えられています。

国際的に認められている具体的なデータを説明します。
「年齢別死亡率」というデータを30才から10才毎に記録して整理されてい
ます。

40才の人を取りますと、1ミリシーベルトの時に4人が死亡する条件で
は、5ミリシーベルトで22人、10ミリシーベルトで37人、50ミリシーベルト
で190人というのが基準となるデータです。

つまり放射線というものは、1ミリシーベルトとだから安全とか10ミリシー
ベルトだから安全というのではなく、「被曝する量が増えるにと死亡する人
が増える」ということです。

もちろん死亡するまでには病気にかかるので、病気(脱毛、不妊、白内障、甲
状腺ガン、白血病)にかかるという点では死亡数よりも多くなります。

よくテレビで「100ミリシーベルトまでは大丈夫」と言ってますが、そうい
う表現は被曝の場合には間違っています。個人的な見解としてはありえます
が、このような非常時にたとえシッカリしたデータに基づいても、その解釈9
が個人であるような見解を述べるというのは不適切です。

そこで、国際的には被曝することによって1000人に1人が死亡するところを基
準にしようということになりました。その他に自然に浴びる放射線がありま
すし、その他の条件があり非常に専門的に詳しく検討されています。

もちろん世界的な研究ですから、広島長崎の被曝、これまでの様々な経験、
さらには自然に受ける放射線との加算などすべて考慮してあります。

その結果、被曝量をはかり、健康診断を受ける事ができるような職業的な被
曝の場合には、一年に20ミリシーベルトが限度で、被曝量もはかれず健康診
断も受けない一般人の場合、 1年に1ミリシーベルトです。

もし、福島原発の放射線が1ヶ月で終わったとしても、一般人では1時間に1.4
マイクロシーベルト、幼児や妊婦では1時間に0.5マイクロシーベルト程度に
なります。

そこで、私は、「福島市はすでに危ない」、「周辺で3マイクロシーベルトは
注意」、「東京は少し余裕がある」と言っているのです
.

・・・・・・・・・
大人ですからご自分で判断するのが基本ですが、1時間に10マイクロシーベ
ル等程度の被曝が続いている福島市が「国際的な勧告と放射線障害防止の法
律を無視して」独自に安全だと決めるのは非常に危ないことです。

少し長くなりましたので、野菜や水も含めてどのようになるかということを
できるだけ早く次の情報に書きたいと思います。

(平成23年3月25日 午後8時 執筆)

武田邦彦

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(30) 被曝を少なくする方法(その2)

(その1)に続いて、具体的な方法を書きます. 申し訳ありませんが、誤字脱
字はご容赦ください。
・・・第二 シーベルトとかベクレルなどは忘れても・・・

シーベルトをやっと覚えたと思ったら、グレイとかベクレルなどと次々と出
てきて、理解するのも計算するのも難しくなりました。でもなにしろ自分や
子供の事ですから、正しく知らなければなりません。

そこで、(その2)ではシーベルトは仕方がないにしても、その他のものは
すっかり忘れてもおおよそ被曝はわかるという方法まず書きます。

前の緊急情報に、原子炉から出てくる放射性物質は「ホワッーした小さい粒
子で、それが風に飛んで流れてくる」と言いました。

その通りですから、ガスならマスクでは止まりませんが、小さい粒子ですか
ら、ある程度マスクで止まるのです。

風に乗ってきますから少しずつ落ちてきますし、雨が降るとまとめて落ちて
きます。浮かんでいるところや落ちるところは全く区別なくどこでも同じで
す。

政府からは、浮かんでいる粒子や壁に着いた粒子などからあびる放射線の値
が発表されています。

チェルノブイリの例を見ますと、このように「外から被曝する量」と「粒子
を口から吸って体内で被爆する量」はほとんど同じでした。

そこでもしも、政府から発表される放射線の量が1.0とすると、それと同じ
量1.0をまず足します
.
・・・

次に、野菜とか牛乳等の食品からの被曝あります。これも一つ一つの汚染の
値を覚える必要はありません。極端に高いものは当然のように避けるとし
て、あとの食品はどうしてもある程度は食べなければいけません。

そこで原理原則を覚えておきます
.

「放射線を持った粒」はどこでもかしこでも同じように降ってくるというこ
とを利用して推定することができます。

つまり、自分が被曝する量だけをほうれん草とか牛も被爆してるわけです。
従って、だいたい自分が被爆した量と同じぐらいが食品から入ってくると考
えていいのです。

発表値がもし1.0なら、{1+1(体内)+1(食品)=3}という事になりま
す。

・・・

次に水ですが、基本的には水道水は、あまり放射線が高くならないはずで
す。これも同じ原理で考えます。

「放射線を持った粒」は、空気中にも土にも、川にも同じように降り注ぎま
す。ところが、「川の面積は土の面積よりもかなり小さい」ので、それを集め
ても小さめの値になるはずです。

ただ、水は大量に使うということもあり、無制限に水道水を飲んでいいうよ
うな場合には、やはり同じような被曝の可能性があると考えて良いでしょ
う。

現在のところ、このように4つの被曝の原因があります。今後、土壌とか海
からのものを接種するようになれば、その分はまたプラスすることになりま
す。

・・・

1) 簡単な計算方法(基礎)

政府の発表する「場所と放射線の量」の数値を4倍すると、自分の被曝
量が判る。

・・・

次に、防御をします
.

まず、食品は放射線をあびていないものを買います。自分の住んでいる近く
からとれた場合は先ほど書きましたように、自分の被曝と同じ量をプラスし
なければなりませんが、日本の南、北海道、外国なら放射性物質は含まれて
いません。

また、3月11日に地震があり、その後、原発が壊れて放射性物質がでましたか
ら、3月11日(厳密に言えば漏れた日にちと場所)以前のものを食べること
です。産地も同じです
.

たとえば、主食系なら、コメ(昨年とれた)、アメリカからのトウモロコ
シ、パン(多くは外国からの小麦)、サツマイモ、ジャガイモ(多くは北海
道)が良いでしょう
.

野菜は日本の南、北海道、外国のものを食べるようにします。缶詰の野菜も
売っていますし、今なら冷凍物は製造年月日が古いと思います
.

肉は北海道、青森、三重、岐阜、宮崎、鹿児島など汚染と関係の無い地域から
の肉や、オーストラリアの牛肉などがお勧めです。

加工食品も3月11日以前の製造年月日のものを少し確保しておくと良いで
しょう。赤ちゃんのいるご家庭では、今の内に粉ミルクなどを買っておけば
製造年月日が3月11日以前のものを買えると思います。

・・・

水は、飲み水をペットボトルにして、お茶でもなんでも工夫します。どうし
ても水道水を使わなければならない場合は、軽い被曝を覚悟します. でも水
の汚れはあまり進まないと思います
.
井戸は水道より安全ですが、放射線を測定できないという決定的な弱点があ
ります。だからあまりお勧めできません
.

・・・

2) すべて地元のものを使う人  発表値の4倍

3) マスクを掛け、食材も水も上記の注意ができる人  発表値のまま

ということになります。

もし、注意ができなければ、福島市が1時間40マイクロシーベルト、福島県東
部、 城県北部、栃木の一部、宮城の一部は10マイクロシーベルトぐらい。東
京は0.5マイクロシーベルトのレベルになり、福島とその近郊はやはり危険
でしょう. 東京はギリギリ大丈夫
.

もし、注意ができれば、福島市が10マイクロシーベルト、その近くが2から
3マイクロシーベルト、東京が0.1から0.2マイクロシーベルトぐらいにな
り、福島市はダメ、近くは大人は大丈夫、東京は幼児でも大丈夫になります。

これでだいたいの見当はついたと思います
.

「国内で放射性物質の無いところ=おおよそ500キロ離れているところ」、
「外国の食材」、「古い物」を捜してください。

また、追記ですが、これまでホウレンソウの放射線を測るとき、実際には出
荷するホウレンソウをそのまま測定していました。ところがこの事件が起
こってから、「ホウレンソウを流水でよく洗ってから測ること」という通達
が政府からでて、小さめのデータがでるはずです。

このようなこともありますので、あまり細かいことを考えずに、「原理原則」
で身を守った方が良いと思います
.

(平成23年3月25日 午後9時 執筆)
武田邦彦

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「安全な原子力推進派」は異端?   私のスタンス

「どうしたら被ばく量を減らせるか」という重要なときに基本的な話をする
のは何となく気がひけますが、メールのご質問も多くありますので、原子力
の推進と反対についてわたくしの考えを述べます。

原子力には推進派と反対派がいて、推進派の中でも、何が何でも推進という
人と安全な原子力を推進したいという人と2種類があります。

反対派の方も、原子力は安全じゃないから反対と、人生観や思想的に絶対に
反対という人たちがいます。

つまり、

1) 何が何でも推進

2) 安全な原子力なら推進

3) 原子力は不安全だから反対

4) 何が何でも反対

のグループがいるという訳です。

・・・・・・・・・

日本社会は少し過激になるところがあり、現在の原子力関係では、「何が何
でも推進」と「何が何でも反対」の人達が力が強く、私が考える妥当な見
方、つまり上の2と3は排斥されるのです。

わたくしは「安全な原子力なら推進」という考えです。つまり、これから原
子力を推進していくためには、事故が起これば推進することができないとい
うのがわたくしの考えです。
わたくしは原子力安全委員会専門部会で「地震で倒れるような原発をよくな
い」と主張したのですが、そのような考えは現在の原発の議論の中では「異
端」なのです。

また、現在の原発の地震指針は、原発を守るようになっていますが、付近住
民の被曝についても、付近住民を被曝からどのように守るかという点でも、
汚染された状態の生活をどうするかということも全く考えられていません。

福島原発の受け入れに当たって、福島県は近くの住民に、逃げる手段を作っ
たり、子供のいる家庭に安定ヨウ素剤を配ったり、汚染されたときに農家が
どのように生活するかということを考えてなかったと思います。

・・・

東電は原発をつくり、それを運転することが使命ですが、自治体は住民を守
ることが使命です。従って自治体が「原発は安全だ」という東電の約束をそ
のまま受け取ること自体がおかしいのです

飛行機を例に取りますと、飛行機を飛ばすときには万全を期して墜落しない
ようにします。しかし、人間のすることですから墜落することもあります。

飛行機に乗ると、毎回、スチュアーデスが非常時に取るべき行動を乗客に説
明します。その乗客はその飛行機が墜落したら命を失うかも知れないのです
から、説明は大変にシビアです。それでも飛行機が落ちる事のことを考えて
防御するというのが責任者のやるべきことなのです。

福島県の知事は東電に対して腹を立てているようです。もちろん、東電の失
敗を責める必要はありますが、自分たちも住民の安全を守ることを考えてい
なかったということから出発しないと福島県の人は被害を大きくするのでは
ないかと心配しています。

自治体の役割は、「そこに住む人たちの命を守る」ことです。命を守ること
を東電に預けるのではなく、自分たちでパラシュートを用意する必要があっ
たのです。

福島県とか福島市という自治体は何のために存在するのでしょうか。このよ
うな非常時でこそ、住民の命を守って欲しいものです。

これは全国の原発を持つ自治体にもいえることです。原発の安全性は国の方
で保証するのですが(当てにならなくても自治体では判らない)、各自治体
は原発が仮に事故を起こした時に、できる限り住民が守る計画をもっていな
ければならないとわたくしは考えています。

良く原発を受け入れる自治体が独自に「安全の検討」などをしていますが、
それより「非常時の対策」を作るのが第一の役割と考えられます. 

自治体は電力会社を信用してはいけないのです。それは電力会社が悪いので
はなく、そのような役割を負っているのです。

・・・

わたくしにしてみれば、「安全な原発推進派」というのは「墜落しない飛行
機は賛成」というのと同じですから、当たり前のように感じますが、それが
異端になるという日本の状態を変えなければならないと思っています。

(平成23年3月25日 午後10時 執筆)

武田邦彦

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原発 緊急情報(31) 結局、子供はどのぐらい被曝するか?

核爆発でできた放射性物質がどのくらいの時間でなくなっていくかというこ
とには一つの目安があります。

1) できた瞬間から4日目までに1000分の1になる、

2) 4日前から4ヶ月の間に、さらに10分の1になる、

3) 4ヶ月から後はあまり変わらない。

最初に1000分の1になる理由は、短い時間にどんどん壊れていく放射性物質
があるからです。ただ福島原発事故の場合には核爆発(臨界、運転)を止め
て3日程度たってから水素爆発で外部に出て、それから、さらに1日くらいの
後の放射線の量を測定していますから、測定値は第1段階をすでに終わってい
るものです。

第2段階では今、盛んに言われている「放射性ヨウ素」等のように、数日から
数十日で壊れる元素の影響で10分の1ぐらいになるのです。

それから後は、半減期が30年ぐらいの元素が少しずつ分解していきますの
で、放射線はほとんど変わらないと考えてもいいのです。

福島原発が水素爆発をして大量の放射性物質が放出された後、量は減りまし
たが、今でも福島原発から少しずつ新しく放射線物質が放出されています。

しかし、核爆発はすでに10日程前に終わっていますので、今出ている放射性
物質はあまり早く分解しないものが多いと考えられます。

・・・・・・・・・

このようなことから、わたくしが今までどのような考えで、このブログを書
いてきたかということを示したいと思います(量は福島市を中心にします)
.
福島原発が水素爆発を起こした後、福島市の放射線は20マイクロシーベルト
程度になりました。

福島原発の大規模な爆発が続かず、少しずつ漏れる程度になれば、放射線は
徐々に下がって行き10マイクロシーベルトぐらいで一段落するでしょう
.

しかし、徐々に新しい放射性物質も降ってきますから、それを考えておおよ
そ1ヶ月後には、3倍ぐらいのところで落ち着くと考えました。つまり30マ
イクロシーベルとぐらいが福島市のとりあえずの「積算された放射性物質」
の量と考えたのです。

そしてそれが1ヶ月ぐらい経つと、10分の1になりますから3マイクロシー
ベルトていどです。これが考える場合の基礎になります。

でも文科省が内部被曝を入れていないことや、野菜や水からの被曝がありま
すから、しばらくは10マイクロシーベルト付近になる(東京では0.5マイク
ロシーベルト程度)と考えられます。

つまり、10分の1になり、そこで2,3年は続くということです。

・・・・・・・・・

このような時に、大人が注意しなければならないのは放射線が強い時期に子
供にできるだけ被爆をさせないということです。

残念ですが、長期間、汚染された土地に住まざるをえない福島県の子供は、
これから長い間被爆するのですから、せめて最初の段階でできるだけ大人が
注意をして、被ばく量を減らしておいてあげなければいけないと考えます。

つまり、政府や専門家は「安全だ」と言っていますが、現在は「安全」を強調
するよりも、できるだけ放射性物質に触れないようにしておいて、2、3ヶ月
後に状態がはっきりして危険がなければそこで普通の生活に戻ったらいいと
思っているのです。

・・・・・・・・・

4ヶ月後に放射性物質の量が減った後、半減期が30年のものを中心にして
減っていきますから、放射線はあまり減っていきません。
しかし、東京等の大都市では、道路もビルもコンクリートやアスファルトで
できていますので、雨が降っても放射性物質が土にしみるということはあり
ません。

このような状態のときに、今までの経験が生きるかどうかはまだ判らないの
です. でも、東京が「やや安心」ではないかというわたくしの考えは東京が
アスファルトとコンクリートで固まっているということもあります。

反対に、福島市など田園地帯に近い地域は、土に放射線物質がしみ込む可能
性が高いので、なかなか汚染がとれないと思っているからです。

・・・・・・・・・

ペットボトルの水を飲んだり、3月11日以前の食材を探したり、家からあま
り外に出ないようにしたりする生活を続けると、とても疲れると思います。
お子さんもストレスがたまってくるでしょう。

しかしわたくしは今、楽をするのではなく、1ヶ月ぐらい何とか頑張っても
らって、放射線物質が下がってきたときに安心したほうがいいのではないか
と思います。

またここに書きましたように残留した放射性物質が最終的に見てどのくらい
になるかということを今はまだはっきりわかりません。チェルノブイリの時
には爆発的でしたが、漏れたのは一瞬でした。これに対して、現在の状態は
世界的に見てもそれほど経験したことがないのです。

その段階で、今までずっと私達専門家が守り続けてきた「放射線障害防止の
法律や国際的な規制」を一気に緩めてしまい、「大丈夫だ、安全だ」という
のは、これから長い間、被曝せざるを得ない子供たちのことを考えると賛成
ができないのです。

最初は危険と思い、徐々にゆるめていく方がより適切な方法でしょう。

(平成23年3月26日 午前8時 執筆)

武田邦彦
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放射線の専門家に自重を求める

テレビ出られて福島原発の放射線について「安全だ」と言っておられる専門
家の方に自重を求めたいと思います。

わたくしたち原子力の専門家は、原子力や放射線の正しい利用を進めるため
に、国際的な勧告や放射線障害防止に関する法律を厳しく守ることを進めて
きました。

決してレントゲンや CT スキャン等だけを参考にして安全性を議論してきた
のではありません。また、1年間の被曝量で規制値を決めても、それは1年間
ずっと続く場合だけではなく、規制値を超える場合には、危険があると考え
て良いということだったのです。

委員会では、半減期はもとより、元素の種類による身体への影響等極めて詳
細で厳密な議論を経て決めてきたのです。

確かに国際的な基準になっている空間の線量率が1年に1マイクロシーベルト
という数値、WHO が定める食品の放射性物質の量など、日本の委員会では
厳しすぎるという意見があったことは確かです。

しかしわたくしたちはそのような議論を経て、現在の基準を作ってきたので
す。

特に私が問題だと思うのは、3ヶ月に1.3ミリシーベルトを超える場所は「管
理区域」として設定し、そこでは放射線で被爆する量を管理したり、健康診
断をしたりするということをわたくしたちは厳密に守ってきました。

福島市においては瞬間的な線量率が1時間に20マイクロシーベルと程度まで
あがり、現在でも毎時10マイクロシーベルトのレベルにあります。この線量
率は、文科省の測定方法を見ると外部被爆だけであって、規則に定める外部
被曝と内部被曝の合計ではないと考えられます。

今後、内部被曝などを考えると、毎時数マイクロシーベルトの状態が2、3年
は継続すると考えられます。

・・・・・・・・・
一方、福島市には、幼児や妊婦も生活しておられます。また、1時間だけの被
曝量を言っても、その人たちは24時間ずっと生活をしているのです。たとえ
屋内にいても換気をすればあまり差はありません。

放射線障害防止規則による妊婦の被曝量の限界は毎時約0.5マイクロシーベ
ルトですから、私達専門家は福島県の東部の多くの市町村において、妊婦等
の避難を勧告する立場にあるのではないでしょうか。

現在ではむしろ政府より放射線の専門家の方が「安全だ」ということを強調
しているように見えますが、むしろ放射線の専門家は国際勧告や法律に基づ
いて、管理区域に設定すべきところは管理区域に設定すべきといい、妊婦の
基準を超えるところでは移動を勧めるのが筋ではないかと思います。

その上で、政府や自治体がどのように判断するかというのは放射線の専門家
の考えるところではないとわたくしは思います。

政治家やメディアでは「国民を安心させなければいけない」と言っています
が、現実に法律で定められた規制値を超えている状態を安全といい、それで
安心していいというよりもむしろ、現実をそのまま伝えて判断を社会に任せ
るべきと思います。

・・・・・・・・・

また我々は学問的立場で考えていますので、各々の専門家に各々の考え方が
あることは十分に知っています。

わたくし自身が国際勧告のレベルは少し厳しいと考えている人間ですが、し
かし、放射線防護に関する日本の法律も50年を経ています。その間、十分に
検討を尽くされてきたのです。わたくしたちは原発問題とか社会問題とは切
り離して、厳密に放射線と人体への影響を考えて発言していかなければいけ
ないと思います。

特に核分裂生成物に汚染された土地は、長寿命半減期の元素によって線量率
は直ちに下がらないと考えられます。このような場所に長く生活しなければ
ならない子供たちのことも考えて発言をお願いしたいと思います。

・・・・・・・・・

むしろわたくしたちは、福島原発の事故がもたらす新しいこと、例えば東京
のようなコンクリートとアスファルトで固まったところにどのくらいの残留
放射線が残るかとか、福島第一、3号機のようにプルトニウムを燃料として用
いている原子炉の放射性物質の影響等を至急検討する必要があると考えてい
ます。

・・・・・・・・・

2011年3月26日のあるテレビの番組を見ていましたら、今まで「安全だ」
と断言していた人が「私の言っている「安全」というのは東京だけだ」と最
後にご発言になったのに強い違和感を覚えました。

東京が人口も多く、重要なことはわかりますが、最も危険なのは福島県とそ
の周辺であり、安全だと発言されるには福島県の人のことを考えなければな
らないと思うからです。

わたくしの経験では、原子力や放射線を扱っている方々は決して不誠実な人
ではありませんでした。むしろ会議等を行っている時にわたくしは、皆さん
が十分に考え放射線の身体に対する影響を少しでも減らそうと努力されてい
ると思っていました。

その我々の専門家の雰囲気をぜひ思い出していただきたいと思っています。

(平成23年3月26日 午前9時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(31) 結局、子供はどのぐらい被曝するか? | | 原発 緊急情報(32) 
プルトニウムの毒性 »

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原発 緊急情報(32) プルトニウムの毒性

(メールのご質問に十分にお答えできず誠に申しわけありません。今のとこ
ろは全数を読んでおりますので、順次ブログでお答えしていきたいと思いま
す。ここではご質問も多かったプルトニウムについて解説をしたいと思いま
す)

今回の福島原発では、1号機、2号機、4号機が通常のウラン燃料を使ってい
ます。ウラン燃料というのはウラン235を核爆発させるもので、多くの原子
炉で使われているものです。

これに対して3号炉は、プルトニウムという元素を燃料に使っています。これ
はウラン235を核爆発させますとプルトニウムはできますので、それを回収
して再度、燃料として使うのです。

つまり、普通のウラン235の燃料の時には4.5%程度のウラン235の純度で
燃料として使うのですが、プルトニウムは9%程度で使用します。

また少しややこしいのですが、ウラン235燃やすとプルトニウムができま
す。お役目が終わって燃料を取り出すときにはある程度のプルトニウムを含
んでいます。

・・・・・・・・・

ところで、プルトニウムがなぜ問題かというと、一つにはプルトニウムとい
うのは自然界にはない元素でウラン235の核爆発で作られます。第2番目は
プルトニウムには非常に強い毒性があるという考えられていることです。

大震災と福島原発の事故の後なので、これまで話を控えていましたが、広島
の原爆がウラン235、長崎の原爆がプルトニウムでした。

そこで今回、万が一、3号炉が水素爆発したときに、プルトニウムの飛散が予
想されますので、それに対して事前に準備をしておくべきかどうかを中心に
話をしたいと思います。

・・・・・・・・・

プルトニウムの毒性は次の三つです。

1. 放射線が強い、

2. 放射線の中でも体の表面や内蔵の表面を損傷する、

3. 人体へ特別強い毒性を持っていると言われている。

わたくしがウラン濃縮の研究をしている当時、プルトニウムの毒性を知ること
が大切だったので、かなりの量のアメリカの文献を読んだことがあります。

ウランが核爆発をする条件とか、プルトニウムの毒性の基礎的な研究は、
第2次世界大戦時代のアメリカに最も多く、特に初期の研究では研究者の死に
つながるような事故等も伴いながら研究をしています。従って、その時代の
文献はとても大切です。

また長崎原爆、チェルノブイリ等、関係する資料も比較的整理されていま
す。

それらによると、プルトニウムの特性は次のように考えられます。

1. 放射線は強いのですが、放射線の量を常に測定して管理しておけば、他
の放射性物質と同じと考えられる、

2. 放射線の中でも体の表面や内臓の表面を損傷する特徴があるが、これも
プルトニウムばかりでなく他の放射性物質でもその程度は同じ、

3. プルトニウムだからといって人体に特別な毒性はない。

1.や2.はすぐ理解できると思います。まず外から来る放射線は人間に
とって「どの放射性物質から出ている放射線か」かということをわかりませ
ん。放射線の種類やエネルギーによって人体に対する影響が決まるだけで
す。

プルトニウムか体内に入った場合ですが、ほとんどは口から入ったら、胃や
腸を通って比較的早い時期に排泄されます。その時に、消化器官の表面に放
射線があたりますが、これもプルトニウム以外の放射性物質と同じです。
このようなことから、プルトニウムだから毒物だということないというのが
わたくしの判断です。

・・・・・・・・・

このようなわたくしの判断は今までも機会のあるときに、話してきました
が、それに対して、主に原発反対派の人から強い反論があります。

それはプルトニウムの毒性は特別で「角砂糖5ヶで日本人が全滅する」と言わ
れます
.

わたくしは責任ある立場でしたから、事実を調べるために、随分文献を読ん
でみましたが、このような毒性を見つけることはできませんでした。

科学的事実に賛成派も反対派もないのですが、この件についてはわたくしは
「推進派」と同じ考えです。繰り返しますが、科学的事実には推進派も反対
派もありません。ただ国民の健康だけを考えて判断する必要があります。

それなのに、「プルトニウムの毒性」という問題を、科学ではなく思想の問
題に置き換えてしまうことが、これまでこの問題がハッキリしなかった原因
です
.

おそらくこのブログでも、ここで「プルトニウムの毒性は特別なものではな
い」と書きましたので、「武田はけしからん」という反論もあると思います
が、プルトニウムの毒性は科学的事実ですから微量のプルトニウムによっ
て、大きな損傷を受けたという医学的事実が必要なのです。

・・・・・・

ところで、「プルトニウムの毒性は特別である」という考えに対し
て、2006年に電気事業連合会が反論を出しています。

ただ、電気事業連合会の普通の説明と同じで、「プルトニウムを燃料に使う
ことは安全である」ということを繰り返しているだけで、厳しく言えば答え
になっていないという面があります。

少なくともプルトニウムの毒性に対して心配している人がいるのですから、
形式的な答えではなく、実質的に踏み込んだ答えをしていればプルトニウム
に対する不安感はかなり弱まったと考えられるからです。

わたくしはこのブログで常に国際放射線防護委員会 (ICRP)の勧告に基づい
て作られた日本の法律の考え方と数値を使っていますが、それによると、プ
ルトニウムはごく普通の放射性元素として分類されています。

わたくしがウラン濃縮研究をしているときに、ウランとプルトニウムの人体
内での振る舞いがかなり似ていることを知りました。

ウランもプルトニウムも、

1) 比較的、消化器表面を損傷する放射線を出すこと、

2) 人間にとってウランもプルトニウムも必要のない元素なので口から入っ
たら比較的短時間で排泄されること、

3) ウランやプルトニウムは腎臓に行きますが、それは排泄のためであり、
だから早期に排泄されること、

4) ウランを間違って飲んだ例では、障害がでていないこと、

等です。

生物関係の方面ではよく知られているように、「人間は必要なものは取り込
み、不必要なものを排泄する」という機能を持っています。

例えば人間の血液に必要な「鉄」を考えますと、鉄の放射性同位体が体の中
に入ると、人間の身体は「放射性かどうか」を見分けることができないの
で、その鉄を体に取り込んでしまいます。

体に取り組むとそのあとずーっと放射線を浴びることになります。

逆に、ウランが入ってきてもどこに使っていいかわからないので、すぐ排泄
してしまうのです。

このように、ウランやプルトニウムが人間に対して強い毒性を持たないの
は、人間が使う元素ではないということが決定的な理由だとわたくしは考え
ています。

・・・・・・・・・
従って福島原発からプルトニウムか飛散しても、これまで通り放射線の強さ
に注意していれば大丈夫ということになります。

プルトニウムを燃料に使う3号炉について、わたくしはこれまで、危険度を他
の号機に対して2.5倍にしていました。この理由は、第1にプルトニウムの特
性をもう一度調べてみようと思ったこと、第二に燃料の中の放射性物質の状
態がウラン燃料と違い、やや危険側にあるということで、2.5倍をかけてい
ました。

現在でも3号炉については、やはり2.5倍程度の数字は必要と思います。これ
はプルトニウムを燃料とする軽水炉の大事故が初めてであるということで
す。

・・・・・・・・・

3号炉に関する最終的な結論は、「注意しておかなければいけないが、決定的
にわたくしたちの健康に影響を及ぼすものではない」ということです。

(平成23年3月27日 午前8時 執筆)

武田邦彦

« 放射線の専門家に自重を求める | | 原発 緊急情報(33) なぜ、雨の後、放射線が下がら


ないのか? »

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原発 緊急情報(33) なぜ、雨の後、放射線が下がらないのか?

(簡単ですがご質問が多いので、解説をしておきます。春休みも終わりに近
づき、今後、お子さんをどうしたらよいかとお考えの方も、このことは直接
的ではありませんが、大きな参考になりますので、お読みいただければと思
います。)

20日前後に降った雨の後、各地の放射線の濃度が大きく上がりました。その
後、放射線の濃度が下がらないのでご心配になっている人が多くおられま
す。

まず原理原則を話します。

福島原発から出る放射線物質は、核爆発で起こったものですから、多くの放
射性物質を含みます。その中にはヨウ素のように半減期の短いものと、スト
ロンチュームなどの放射性物質のように半減期が30年のものとがあります。

半減期の短いものは最初の段階でどんどんなくなっていきますし、半減期の
長いものはずっと放射線の強さは変わりません。

原子炉から近い福島県で降るものは、放射線の濃度は高いのですが、まだ半
減期が短いものが多いので、放射線は減少していきます。

これに対して、東京などの遠いところは、福島原発から出た後、かなり時間
がたって東京に流れてきて、しかも東京の上空にしばらく滞留してから雨で
落ちてきますので、半減期の短いものはすでにあまりないのです。

核爆発でできる放射性物質の多くは半減期が30年ぐらいありますから、一旦
雨で地表に落ちるとそのあと急速に減少するということはありません。

ただ、東京の場合にはコンクリートやアスファルトで覆われていますので、
激しい雨が降ればあらい流されるかもしれません。雨が降らなければ、原則
的には道路や壁等に放射性物質がついていますので、なかなか放射線が減ら
ないということになります。

このようなことに多くの方が疑問に持つのは、 NHK 等で「福島の放射線の


減少だけを説明している」ということにもあります。

現在、東京など福島原発からやや遠いところは、放射線は規制値より少し低
いところにあります。しかし、急速には減っていかないでしょう。

(平成23年3月27日 午前9時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(32) プルトニウムの毒性 | | 原発 緊急情報(34) 春休みの終わ
り、簡単に判断すると »

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原発 緊急情報(34) 春休みの終わり、簡単に判断すると

春休みも終わりに近づき子供を持たれる多くの家庭の方は、これからどうし
ようかと思案しておられると思います。

先日示した被曝量の表はかなり複雑だったので、それをさらに簡単にして多
くの人が参考にできるようにしたいと思います。

また、あまり文章が長くなると複雑になるので必要に応じて分けて整理をし
たいと思います。

・・・・・・・・・

まず第1にどのくらいの放射線を浴びても良いかということを、自分ではっき
りと決めておくことです。

ご不安はあるでしょうけども、とにかく決めないと決断をすることができま
せん。

その参考のために二つの例を挙げます。

一つは、日本の放射線障害防止の法律と国際放射線防護委員会の勧告で、こ
れは同じ値です.この値を使うということは、専門家に判断をゆだねるとい
うことを意味しています。

値は1年に1ミリシーベルトですから、1時間あたりに直しますと約0.1マイ
クロシーベルトです。

つまり、一つ目の決断の数値は、

「1時間 0.1マイクロシーベルト」

であるということです。

・・・・・・・・・

2番目は政府や NHK が言っている「レントゲンの被爆」との比較です。私


は医療行為であるレントゲンと日常的に被曝するのを比較できないと思いま
すが、ここでは「政府の考え方」を尊重する人のために、計算しました。

レントゲンには、胃のレントゲンと胸のレントゲンがありますが、1回あたり
の胸のレントゲンで被曝する量は50マイクロシーベルです(文末に資料をつ
けました)。

胸のレントゲンを1年に20回ぐらいは良いということになると、1年に1ミ
リシーベルトになるので、1時間あたり、0.1マイクロシーベルとになりま
す。

つまりもう一つの決断の数値(政府より)も「1時間 0.1マイクロシーベル
ト」であることがわかります。

(これについては、テレビ等で言っている値と少し違うので。文章の下に説
明を加えておきました。)

つまり、私(法律とICRP)と政府(レントゲン)とはまったく同じ数値
(1時間0.1マイクロシーベルト)なのです。(ただし、レントゲンを1年
に20回までOKとすれば。もし1年に2回とすると政府の方は一桁下がっ
て0.01になる。)

・・・・・・・・・

次に現在の放射線がどのくらい続くかということです。

放射線は徐々に減っていきますが、これには大きな原則があり、

「40日で約10分の1」

になるということです。

すでに放射線が漏れてから、7日以上たっていますので、現在の時点から見る
と、

「5分の1」

程度になるということがわかります。それから後は半減期が30年ものが主に
なるのでほとんど変わりません。

さらに現在、発表されているデータは「外からの放射線」のことですから、
空気中に浮いている粒子は呼吸で体内に入りますので、発表された数字を2倍
にしなければなりません(チェルノブイリの実績)。

次に、水道や食品から取り入れられる放射性物質の量は、おおよそ外部から
の放射線と同じと考えていいのです。
つまり、これからしばらくたって放射線が減少する量が(5分の1)、食品や
水、自分の体に入った放射性物質は(3倍)ですから、結局、発表される放射
線の強さに0.6(=3÷5)をかけると、この4月になると、1年間に概ね浴び
る放射線の量を計算するときには、

「今、発表されている量  ×0.6」

「0.1マイクロシーベルト」

を越えるかで判断ができます。

・・・・・・・・・

(発表値の例)  全て1時間あたりです。

原発の周囲   90マイクロシーベルト

福島市      4マイクロシーベルト

福島県の周辺   2マイクロシーベルト

東京新宿     0.1マイクロシーベルト

(1年間、実際に被曝する放射線の予想値)

原発の周囲 54 マイクロシーベルト

福島市      2.4マイクロシーベルト

福島県の周辺   1.2マイクロシーベルト

東京新宿     0.06マイクロシーベルト

これに対して、

限度       0.1マイクロシーベルト

・・・・・・・・・

原発の周囲    直ちに待避

福島市      できるだけ早く待避

福島県の周辺   できるだけ早く待避

東京新宿     大丈夫
・・・・・・・・・

この結果は、4月から1年間の判断ができるように、放射線の減少も具体的に
示してあります。テレビでは「そのうち減るから」と言っているだけです
.

また、数値が越えたからと言って、100人が100人、放射線の障害がでるわ
けでもありませんが、国際的に危険が生じる可能性があるという基準と認識し
てください。

後は、ご本人のご判断です. ここで示した数値は、赤ちゃん、妊婦も範囲に
入っています. また1歳児から5歳児までは放射性ヨウ素が危険ですから、
できるだけ「雨、水道を飲むこと、福島などの野菜」を控えてください。それ
は1年ではなくヨウ素の半減期が短いので、4月中旬までです。

(平成23年3月27日 午後2時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(33) なぜ、雨の後、放射線が下がらないのか? | | 原発 緊急情報


(35) 春休みの終わり 判断−2 »

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原発 緊急情報(35) 春休みの終わり 判断−2

春休みの終わりにどう判断すべきすべきかという参考にしていただくため
に、緊急情報34で、簡単な計算を紹介いたしました。

その後多くの方からご質問を受けたので、一部、ご返事申し上げます

・・・・・・・・・

福島県の海岸線、及び 城県の北部の海岸線まで、政府から発表される放射
線の値が少し低くても、お子さんのいる家庭は避難したほうがいいとわたく
しは考えています。

実は、次の図を見ていただくとわかります。

この図は3月23日に原子力安全委員会か
ら発表された図ですが、原発から漏れて
出るのは「光のように四方八方に行く放
射線」ではなく、ホワッと上空に上がっ
て風で飛んでいく放射性物質(粒子)で
す。

この図ですと、北北西と南に放射性ヨウ
素が飛んでいます
.

そしてその濃度は、1歳児の甲状腺の場合、いわき市や伊達市で1時間あたり
350マイクロ シーベルトの及んでいて、発表される放射線量の150倍にもあた
ります。

この測定は事実ですから。もしこの地域に1才から5才程度のお子さんを持ち
の人は、甲状腺が異常をきたす可能性が高いので、赤ちゃんのことを考えれ
ば、是非とも移動してもらいたいとわたくしは思っています。

その点でぎりぎりの境界を決めるのが大変に難しいのです。

おもに風向きによりますが、風向きが少し変わりますと、汚染の領域が変化
すると思われるからです。

・・・・・・

第2番目はテレビでも報道しているように福島原発のところにある「放射能が
極めて高い水」のことです。

このことについて、原子力保安院等は「びっくりした。どこから来たかを調
査する」と言ってますけども、予測できることで、すでにわたくしのブログ
では、織り込み済みで計算方法を書いています。

1週間程前から原子炉には継続的に水が注入されました。その一部は空気中に
水蒸気となって飛散し、それが継続的な空間の汚染源になっています。

原子炉建屋の床にたまった水は、原子炉、格納容器、貯蔵プール等を通って
下に落ちていますから、相当濃い放射性物質を含むと考えられます。

テレビでは、一時、通常の原発中の水の数10万倍と言っていましたが、それ
ぐらいは当然考えられます。特にびっくりする値ではありません。

わたくしは「原子炉が沈静化したので、福島原発から漏れる放射線は今後
は2倍程度の範囲に収まるだろう」と言っているのがこのことです。

ただ少し気がかりなのが2号機の下で測定した水の中に含まれている放射性物
質の一部が核分裂が継続した場合に存在するものを含むからです。

これが、地震前のものなのか停止後のものなのかが問題ですので、今後も注
意していきたいと思います。

いずれにしても、現在、原発にちかいところで放射線があまり減らないの
は、半減期で減る分だけ新たに福島原発から流れてくるからです。

これがどのくらいで収まるかということですが、現在の状態ですと4月中旬ぐ
らいには収まるというふうに考えています。

そうすると、その後は10分の1まで減少しますから、先ほどの計算でおおよ
その被ばく量が計算できるということになります。

・・・・・・・・・

福島県沖の海も汚染されていますが、これも当然のことです。保安院は「測
定したら汚染がわかった」と言っていますが、福島原発から空に上がった放
射性物質は西方に流されて太平洋に行っているわけですから、当然その下の
海は汚れます。
また、冷却のために海水を大量に原子炉建屋内に入れたわけですから、その
水が海に戻れば、これも当然放射性物質を伴います。

また保安院はどういう根拠があるかわかりませんが、「汚染された海から取
れた魚も大丈夫だ」と言っています。そんなことは現在の段階でわかる人
は1人もいないと思ます。

放射性物質で汚染された海で取れる魚は、原則として汚染されています。汚
染されている魚を食べていいかどうかはその魚の放射性物質の濃度によりま
すから、その値がない内に安全だということは、なんと言うことでしょう
.

・・・・・・

また、同じように福島県の作付けの問題で「土壌が汚染されているかどうか
を調べる」というテレビを報道がありましたが、土壌はもちろん汚染されて
います。

空間に放射性物質がなければ、放射線は観測されませんから、福島で放射線
が観測されるということは、すでに空気中に放射性物質が存在するというこ
とになります。

放射性物質が存在すれば、それをが地面に落ちますから、土壌が汚染されま
す。すでに間違えなく福島県の土壌は汚染されています。

どんなに怖い事実でも事実を真正面から見る勇気がこのようなときには大切
です

・・・・・・・・・

毎日家にいたり、ペットボトルの水を使ったり、大変な毎日が続いていると
思いますが、放射線量は最初の1ヶ月が高いのでここを何とか凌いでもらいた
いとわたくしは希望しています。

マスクや浄水器、室内の空気清浄機等は効果が万全ではありませんが、若干
の意味はありますので使ってください。また布団や洗濯物をできるだけ外に
起こさないことも大切です。

放射性物質はいろいろな形(細かい粒子など)をしていますし、水で溶ける
ものや、溶けないものもあるし、拭いたら取れるものや、取れないものがあ
りますが、ここ1ヶ月だけは少し我慢をして、できるだけあれもこれもやって
おいた方がよいと思います
.
・・・・・・・・・

避難も長期になってお仕事も始まったり、新学期が始まったりする人はとて
も迷うことではないかと思ます。

放射線は浴びた影響は「累積(合計)」が問題ですから、1週間か2週間だけ
やや高い放射線のところにいても、その後、低いところに移れば回復すると
いう傾向もあります。

現実の生活の中でできる事とできないことがありますが、何とか工夫してい
ただければと思います。

その点では原子力安全委員会が継続的にSPEEDIを使って現実に風の向
きで変わる放射性物質の状態を公開してくれることを強く望んでいます。

(平成23年3月27日 午後6時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(34) 春休みの終わり、簡単に判断すると | | 原発 緊急情報(36) 
3号炉(プルトニウム)の問題(その2) »

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原発 緊急情報(36) 3号炉(プルトニウム)の問題(その
2)

(「知識」が自分の身や家族を救うこと、原子力の知識は見かけが難しそう
に見えるだけで内容的にはそれほど難しくないので、できるだけわかりやす
く書きますので、理解を深めてください。また専門的な知識の必要な方もお
られますので、ブログの後半にはやや専門的な内容を盛り込むことにしまし
た。)

今までの原子炉は、ウラン235を核分裂させるのがほとんどでしたが、最近
ではプルトニウムを核分裂させるものも出てきました。

それが福島原発の3号機です。3号機が水蒸気爆発等をしますと、プルトニウ
ムが空気中に放出されます。これについてすでに1度、このブログで説明をし
ましたが、追加して説明をします。

・・・・・・・・・

簡単な説明

3号機が爆発して燃料として使っていたプルトニウムが空気中に飛散します
と、小さい微粒子になって風に乗って飛んできます。

それが、野菜等について食品と一緒に口の中に入る場合には、そのまますぐ
排泄されてしまいますので、あまり害はないということを書きました。

しかし、プルトニウムの微粒子が風に乗って飛んできた場合、呼吸とともに
口から入り、75%ぐらいは消化器系の壁について胃のほうに行きますから良
いのですが、25%、つまり4分の1ぐらいは肺に行きます。

肺に行くと肺の奥の方に詰まってそのまま出てこなくなります。そうなる
と、プルトニウムは周辺の細胞をいためますので、それが心配されていま
す。

・・・・・・・・・

防御方法
空気中を飛んでくるプルトニウムの粒子は、0.3ミクロン程度の非常に小さ
な微粒子です。

しかしインフルエンザウイルス(0.1ミクロン程度)よりも大きいので、イ
ンフルエンザウイルス用のマスク(N95と言う少し高めの)を用意しておけ
ば、おそらく95%ぐらいは被曝を防ぐことができると思ます。

機会のある内に、インフルエンザ用のマスクを買って置いておきましょう。

放射性物質の量が多い福島県の人等は比較的頻繁にマスクを変えた方がいい
と思ますが、東京や仙台などでは今のところ洗って繰り返し使えると思ま
す。

・・・・・・・・・

(やや専門的)

わたくしがウラン濃縮の仕事をしているときに勉強したプルトニウムの知識
は少し古いので、今回、西暦2000年までの事故例などを調べてみました。

やはり最も注目すべき事故例は、1965年のアメリカで起こった事故で、そ
の時には25名の人が酸化プルトニウムの微粒子を吸い込んでいます。

吸い込んだ量は、放射線の作業をする人として認められている許容値のさら
に10倍程度であり、かなりの量を被曝しています。

この時の酸化プルトニウムの粒径は0.21ミクロンから0.37ミクロンで
す。0.21ミクロンとは210ナノメートルですから、所謂“ナノ粒子”の領域で
す。微粒子としてもかなり小さい方に属します。

当時、プルトニウムは非常に毒性が強いと言われていたので、この25人は直
ちに肺癌になると予想されていました。しかし、事故後20年たった1985年
の健康診断でも健康上の被害は認められていません。

このほかに事故例は10ぐらいありますが、いずれも軽度の被曝で重篤な症状
は見られていません。

・・・

原理的に言えば、酸化プルトニウムの微粒子が呼気とともに肺に入ると、沈
着しα線をだして周囲の細胞を痛めると考えられます.また半減期が長く、水
に溶解しないので、一旦、肺に入った酸化プルトニウムは除去ができないと
考えられます。
しかし、それは机上の考えであり、事故例を見ますと、酸化プルトニウムの化
学的、生理学的なダメージは小さく、α線による放射線障害が主でしょう
.

一方、インフルエンザウイルスの大きさは、0.1ミクロン程度ですので、幸
いインフルエンザ用マスクでかなりの部分は、防ぐことができると思いま
す。

・・・

プルトニウムの毒性が極めて強いのではないかという危惧があるのはわかり
ますが、あくまでも、わたくしたちは「正しい科学的な知識」によって行動
を決めなければいけません。

その点では、根拠なくプルトニウムの毒性について述べてもいけませんし、
また逆に3号炉はプルトニウムを燃料としているのですから、東京電力や国は
もう少し誠意を持って3号炉の状態や、プルトニウムが飛散した時の防御を発
表するべきだと思ます。

(平成23年3月28日 午前9時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(35) 春休みの終わり 判断−2 | | 原発 緊急情報(37) 明日(29
日)と明後日(30日)の被曝予想 »

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原発 緊急情報(37) 明日(29日)と明後日(30日)の被曝予

福島原発から漏洩している放射性物質の飛散について、ノルウェーとドイツ
の被曝予想を示します.

これはドイツから発信されている予想
で、3月29日正午(ちょうど、今から1日
後)の福島原発からの放射性物質の流れ
です. 幸い西風ですが、やや北に向かっ
ています。また太平洋ではある程度、拡
がっています.

このことから、明日は、仙台地方は警
戒、 城方向はやや安心というところで
す。また太平洋を回って、日本の南の方に少し飛散していますから、東海か
ら沖縄に書けて微量ですが、放射線が検出される可能性があります。

30日まではドイツもノルウェーもほぼ同
じ推定を出していますが、30日は風が停
滞するので、東北南部から関東の北、仙台
まで放射性物質が拡散するようです。特
に風が弱い場合は、東の太平洋に流れず、
日本列島の中に入り汚染が進むと予想さ
れます.

ドイツの予想はここに示しませんが、ノ
ルウェーの予想よりさらに仙台の方の汚染が予測されています.三陸の方まで
汚染が拡がる可能性も否定できません.

31日の予想はまだノルウェーの予測だけ
しかでていませんが、今度はやや南に放
射性物質が飛ぶようです. 城から千葉方
面は警戒してください。

原発に近いところは、原発からの直接的
な放射線を浴びることになりますが、1
0キロ以上のところは放射性物質の拡散
ですから風下に行きます。

また、現在のところ福島原発は爆発していませんので、煙は低く、従って近
いところから複雑に流れることになります。つまり、上空が西風でもしばら
くは、地上の風で拡散します。

気象庁は、今でも「花粉の飛び方」などを予報していますが、早く、放射性
物質の動きを発表してもらいたいものです。

ただ、天気予報で風向きは出していますので、風向きに注意して行動をした
ら良いと思います.

(この記事は一部、読者の方のご協力を得ました。ありがとうございまし
た。)

(平成23年3月28日 正午 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(36) 3号炉(プルトニウム)の問題(その2) | | 原発 緊急の緊急
(38) プルトニウム・・規制値を守れるか? »

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原発 緊急の緊急(38) プルトニウム・・規制値を守れるか?

プルトニウムが福島原発の付近で検出された。

すでにプルトニウムの毒性についてはブログで2回、書いているのが、それ
に加えて、自衛するのは、

1) 国がプルトニウムの規制値(キログラムあたり1ベクレル)を守れるか
(ヨウ素は300ベクレルなので、その300分の1)。
規制値を変えると危険度が判らなくなる。すでに東電は規制値を言わず
に「原水爆実験の時に日本を汚染したプルトニウムと比較すると」など
と言っているが、まだ「規制値無視」が続いている.
また、農作物でも規制値をゆるめる検討が進んでいる.事故が起こった
からといって規制値をゆるめると、何が何だか判らなくなる.
私たちは、「プルトニウムはヨウ素の200倍。ヨウ素は200ベクレ
ル(換算方法は下記)」と覚えておきたい、

2) すぐには拡散しないが、測定方法が少なく、情報が遅くなる(簡単な方
法では測定できないので、もし測定側に誠意があっても1週間程度かか
る)、

3) 汚染が拡がったときのためにインフルエンザのマスク(N95)を用意して
おく、

4) プルトニウムが原発から離れたところで測定されたら、その方面の人は
すぐマスクをつける(プルトニウムは直ちに風に乗って移動しない(酸
化プルトニウムは飛びにくい)ので、少し様子を見る)、

5) 原子炉からプルトニウムがでるのは当たり前(3号炉以外でもプラン2
35が核分裂するとでる。3号炉はさらに多い(約6,7倍))だか
ら、特別な事が起こっている訳ではない、
ということである。

・・・・・・・・・

ちなみに、ヨウ素、セシウムなどは、

「ベクレルを100分の1にして2をかける」

とマイクロシーベルトになる。ヨウ素では、300ベクレルというのをシー
ベルトに直す場合には、100でわるから3になり、それを2倍するから6
マイクロシーベルトになる。

ただ、普通は、シーベルトは時間あたり、ベクレルはキログラムあたりにな
るので、それも含めた換算方法はまた時間がとれるときにできるだけ早く書
きたい。

(平成23年3月29日 朝 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(37) 明日(29日)と明後日(30日)の被曝予想 | | 原発 緊急情報
(39) 有用なデータが提供されました »

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原発 緊急情報(39) 有用なデータが提供されました

「できれば待避した方が良い」と言われても、生活もあり、学校もあり、な
かなか思うようにならない人が多いと思います.

そこで、私の大学(中部大学)の卒業生がとても有用なデータをメールで提
供してくれました。

・・・結論・・・

1) 被曝を防ぐには「花粉」、「黄砂」を防ぐのと同じ、

2) 「蔭」を作り「表」を避ける事、

3) 「家の中」はあまり防護にならない、

4) マスク、衣服を丁寧に拭くなど「花粉を飛ばさない」のと同じ、

です。放射性物質は目に見えませんが、「花粉と黄砂」の経験を活かしま
しょう。

・・・・・・データ・・・・・・

私にデータを提供してくれた中部大学の卒業生は車で 城県北部の友人のと
ころに3月26日に行き、手元の測定器で放射線(ガンマ線)を測定してく
れました。そのデータです.

彼は工学部出身なので、現実にメールでいただいた記録は、測定器のメー
カーなど詳細に渡っていますが、要部をご紹介します.(すべて1時間あた
りのマイクロシーベルト)

① 埼玉− 城県北部(高速)    0.2

② 城県北部−いわき市(高速)  1∼2

③ いわき市一般国道        2∼3

④ いわき市友人宅         3∼4
⑤ 常磐道トンネル内        0.2 

・・・・・・解釈・・・・・・・・

1) 埼玉からいわき市まで福島原発に近づくと確実に値が上がってくる(特
に福島原発の南には風が吹いているから。(教訓)近づかない)

2) トンネルの中は「蔭」になるので放射性物質の粒子も入りにくい(教
訓:蔭を作る)

3) 家の中は防護にならない(換気をするから)

と言うことになります。また、一般国道より高速道路の方がわずかに少なく、
これが意味があるかどうかは判りませんが、「低いところに放射性物質がた
まりがち」であり「埃が舞い上がるところは放射性物質が多い」のも、花粉
や黄砂と同じですので、有意差があるかも知れません。

放射性物質は目に見えませんが、花粉や黄砂は私たちが経験があるので、そ
れを思い出して少しでも放射線をあびないようにできます。

子供の屋外での体操、野球やサッカーの練習はしばらく控えた方が良いで
しょう。

「直ちに健康に影響はない」という政府の発表は「子供が屋外でスポーツを
して良い」と言っている訳ではないからです.

(平成23年3月29日 午後9時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急の緊急(38) プルトニウム・・規制値を守れるか? | | 原発 緊急情報
(40) これからの福島原発と被曝 »

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原発 緊急情報(40) これからの福島原発と被曝

政府発表やマスメディアの報道は「すでに起こったこと」に限定されている
ので、それでは不安です。

そこで、このブログでは「多くの人が生活の中で判断しなければならないこ
とをお父さんの代わりに言う」というスタンスで来ました。お父さんとは
「家族を守る、やや慎重、将来も見る、生活もある、絶対に間違ってはいけ
ないということではなく、大胆に」という意味です.
今も「将来」に心配されている方が多いので、少しまとめもかねて整理をし
ておきます

またこのブログでは常に「近い将来」を考えて書いていましたから、その点
は大丈夫です
.

・・・・・・

福島原発事故直後は、大変に危険な状態でした。というのは、東電は「放射
線を外に出したら大変だ」ということで、原子炉の圧力が上がっていたから
です.

この時期、私は、「今の状態の25倍まである」と書いていました。これはN
HKが「大量の放射線が漏れる可能性がある」と報道していたので、その
「大量の」というのがどのぐらいか、私の判断で25倍としました。

でも、13日の週の中盤になると、放射線が一気に漏れたので、東電はある意
味で気楽になったので、事故処理が正常にできるようになったのです。

そこで、私は危険度を「今の2倍まである、またプルトニウムが関係する
と2.5倍」と絞り込んだのです
.
それから後は、原発の状態より「いかにして被曝をさけるか」とか「どの地
域が危ないか」に中心を移していきました。すでに、風の方向では危険な状
態に入りつつあったのです。いわば「第2段階」でした。

・・・・・・

このときに、政府やメディアは「地域の放射線量」を発表していましたが、
すでに汚染されているところは「放射線をもった粒子」が飛んでいるのです
から、川や地面にも落下しているので、水道や野菜の汚染は予想されていま
した。

また、ウシも人間も呼吸しますから体内被曝があり、牛乳やお乳が汚染され
てきます(母乳の危険性は福島東部に限定されると思いますが、データが
まったく提供されません)。

これが第3段階でした。

・・・・・・

そして、少し前から第4段階・・・つまり、原発を見直すことができるように
なると、原発の中の異常な放射線や、プルトニウムの問題が浮上します.それ
が現在です
.

この時期は、やがて放射線が落ち着くまで、「頑張る」という時期です.つま
り、最初の時期に放射線が高いので、その時期に、いやがる子供にマスクを
させたり、できるだけ外国か3月11日以前の食材を買い求めるなどの工夫を
する時期で、お母さんのがんばり時なのです
.

放射線の汚染は「最初からの合計」ですから、最初の時期に何とか凌いでお
けば、健康にも良いし、後で行動が自由になるからです
.

政府やメディアは「もっとも汚染をあびない方が良い時期」に「安全だ」を
繰り返したので、「直ちに健康に」という呼びかけはまったく、まずいと思
います
.
・・・・・・

そしてやがて第5段階に入ります(これから)。

普通に「お父さん」として考えると、万が一には原発が爆発することもあり
ますが、その可能性が低いので、そうなったら必死になって風上に逃げるし
かありません。今、それを考える時期ではないと思いますが、風の向きなど
を見ておいて、どちらに行けばよいかを考えておく必要があります。

今のところ、福島原発の汚染は「福島市方向」と「いわき市方向」に限定さ
れています
.

ただ、原発の中は作業するには放射線が強いので、遅々として進まないで
しょう. ですから、まずは事故から1ヶ月(4月中旬)までを目処として、
「いざと言うときの対策」、「これからの事」を考える小康状態であると
思っています
.

もし、経済的に、もしくは親戚などの関係で福島とその近県にお住まいの方
で、特にお子さんはなんとか遠くにいて欲しいし、もしどうしても離れられ
ない場合は、できるだけ被曝しないように注意してもらうということです。

東京は小康状態ですから、今、色々な準備をするチャンスと思います
.

・・・・・・

4月中旬になると、原発の作業は難航しても、徐々におさまり、土壌や海など
の汚染が注目されるようになると思います。今のところ心配のないプルトニ
ウム漏れの測定も進むでしょう。また継続してヨウ素がでなければ、半減期
の関係で甲状腺の疾病の可能性が減ってきます
.

しかし、原発からの放射性物質は半減期30年のものが多いので、なかなか線
量が下がらなくなります.今、メディアで「徐々に下がっている」というのは
当然で、初期の低下ですから、これは計算済みです
.
福島の人の被曝は長期間になります。また土壌が汚れるので、作物は作れな
いと思います(残念ですが、仕方がありません)。海からの魚から放射線が検
出されるようになり、生活は広い注意がいるようになります。

つまり、一部分の汚染が、次第に薄くなり、拡がるという時期に入ります
.

このときに、それまで注意をしていた人は「被曝した総量」が少ないので、や
や行動に自由がでるでしょう。

・・・・・・・・・

福島原発がどうなるかはあまり今のところ関係がありません。むしろ、
近々、取り上げますが、他の原発の方が危険です. そちらの方にも関心が向
くと思います
.

できれば早い段階で専門家が、これまでの理性を取り戻して「規制で危険と
なっている数値は危険」という時期がこればと願っています
.

(平成23年3月29日 午前11時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(39) 有用なデータが提供されました | | なぜ、今日も原発が運転されて
いるのか? »

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なぜ、今日も原発が運転されているのか?

今日も日本の原発が運転されている. すでに地震で柏崎刈葉、それに福島が
破壊したのに。

地震はいつでも来る. そして柏崎刈葉も、福島も「震度6」で破壊したの
だ。福島は津波というけれど、地震に津波はつきものだし、最初の地震で配
管系は破壊している
.

・・・・・・・・・

福島付近で被曝した人には申し訳ないが、それでも「西風」だったから日本
は九死に一生を得た。もしこれが日本海側だったらとゾッとする。昔の言い
方なら「神風」だ。まだ日本人が誠実さをとりもどせば未来はある
.

原発は地震で壊れる。今回の破壊は、設計が悪ければ保安院、施工が悪ければ
建設会社や電気会社、運転が悪ければ東電に責任がある。

おそらく設計だ。それでも保安院院長は謝らない. 「国民にかわって原発の
安全を守る」と言ってきたのに、それに失敗しても他人事だ

今、自治体が全国の原発の安全性を見直すという。でもそれは官房長官(政
府)の役割・・・むしろ原子力安全委員会の役割だ。

自治体は「原発は爆発するものとして、住民の安全を守る」方法を早急に検
討しなければならない。

福島原発付近で避難対象地域になっていた人が次のように言っていた。

「・・・町の防災放送で「原発から放射線が来るから自動車で逃げろ」と指
示があったが、自分は車は持っていないので、家にいた。食糧が尽きたので
徒歩できた」

いったい、この国には住民を守る役所はないのだろうか? 考えられないが、
町役場の人は防災無線を流して、自分は自動車で逃げたのではないか?

原発が爆発すれば放射線が漏れるだけではない. 水道が汚染されるのは当然
だ。それなのに自治体は「水が使えなくなったらどこに水源を求めるか」も
検討していない。住民はペットボトルを求めてウロウロするだけだ
.

何もしていない。

それなら、日本の原発は運転を続けてもよいのか。電力会社は自治体から要
求されてからではなく、原発が爆発する心配があるのだから、みずから行動を
とってもらいたい。この期に及んで言われたから重い腰を上げるのでは信頼
は得られない。

「もんじゅ」に異常があるという。国は積極的に自らトラブルを発表して、
国民側(奇妙な表現だが)に立って欲しい.私たちが政府を「雇用」している
のは、私たちの命を守ってくれるからなのだ。

また2度と「想定外」とか「地震に津波があるとはしらなかった」 等と言っ
て欲しくない。今の日本は、「電力会社やお役所の失敗を、庶民の被曝とい
う形で贖う」という奇妙な国なのだ。

名古屋は検討を開始する.浜岡、敦賀の発電所が破壊しても名古屋市民を守る
ため、水道の取水口、市民の避難、全てを準備する計画をスタートする。で
きれば緊急時の計画ができるまで原発は止めて欲しいものだ
「防災計画はある」と強弁する人がいる.現状を目の当たりにしてもまだ「防
災計画」というのがあると言う人はどういう神経をもっているのだろうか。

・・・・・・・・・

東京には今、アメリカ人もヨーロッパ人もいない。ホテルはがらがらで外人
専用のホテルは一部、閉鎖になっている。

外資系の会社は大阪に仕事を移している. 外国人の命が高く、日本人は安い
という現状は到底、我慢できない。
でも、日本人は日本から逃げない.
日本人だから日本の国土を愛している. ら国も自治体も、電力会社もそれが
判って欲しい。電力会社が自ら原発を止めて、市民の安全を守って欲しい。
あなたも私たちの同胞なのだ。

(平成23年3月30日 午後4時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(40) これからの福島原発と被曝 | | 原発 緊急情報(41改) 千葉の
水道汚染と発表 »

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原発 緊急情報(41改) 千葉の水道汚染と発表

3月30日、千葉県八千代市の睦浄水場の入り口手前で22日に採取した飲用水
から幼児の暫定基準(1キログラム当たり放射性ヨウ素100ベクレル)を越
える370ベクレルが検出されていたという報道があり、ことが「水道」なの
でできるだけ早く情報を伝える必要があり、昨日、ブログに書いた.

北千葉浄水場でも336ベクレルだった。

・・・・・・・・・

その後の調査で、この事実の発表は30日ではなく、すでに23日か24日に水
道局のホームページで市民に知らされている(通知の日付を確認できなかっ
た)ことが判った。

その後、放射性ヨウ素は減少している. 従って、幼児の場合、22日に暫定基
準の4倍の放射性ヨウ素を摂取したことになるので、その後、最低でも3日は
放射性ヨウ素を含まない水を飲まなければならない。

なお、十分なデータがないので、次の点が不明である。

1) 22日の370ベクレルの水道水が現実に八千代市の住宅に供給されたの
か?

2) 23日以後の放射性ヨウ素の濃度はどのぐらいだったのか?

3) 現実に、この水道を使っている幼児のいる家庭では、何日になると「平
均して」幼児の暫定基準を下回るのか?

を計算して、何らかの情報を提供したいのだが、いずれも公表されているデー
タが少なく、正確な計算ができないので、八千代市の幼児は当面、ペットボ
トルを飲ませることをお勧めする.

(説明)
放射性物質の基準は、「平均して」だから、一日だけ370ベクレルの水道水
を幼児が飲んだ場合で、その次の日が100,次が60、次が40と少しずつ
減っていった場合、

(370+100+60+40)/4=143

だから、4日後でも、まだ幼児の暫定基準を下回らない。

つまり幼児の立場から言えば、22日に基準を超える放射性ヨウ素が体に入
り、その後も、薄まっているものの放射性ヨウ素がゼロにはならないの
で、1週間ぐらいは注意が必要である.

(千葉県の発表が「誠意があったか?」を考えてみたい)

・・・・・・・・・

この事件は「名古屋市民を原発事故からどのように守るか」ということをこ
れから取り組もうとしている私に採ってはよい参考になった.

1) 浄水場で「放射性物質」を測るためにサンプルを採り、その結果が出る
まで1日とすると、浄水場は「民家に水道水を供給してしまってから、
「供給するべきではなかった」ことが判るのか?」。そうすると「市民
に安全な水を供給する」ということが原理的にできないことになる。

2) 浄水場の上流水源を監視しているのか、もしくは監視できるのか? 上
流水源を監視できれば、「供給してしまってから、供給するべきではな
いことが判る」という奇妙なことは防ぐことができるが可能なのか。

3) 汚染された水道水を飲んだ家庭を特定できるのか?

4) ネットやテレビなどを通じて、個別の地域に対して、いつまで経ったら
幼児の基準を下回るのかの情報を提供できるのか?

この1)から4)まで、今回の千葉県の事故からは判らなかった。また

5) 水道局は「いついつの時点で、何ベクレルだった」という結果を発表す
るだけで行政サービスは完結するのか(しないように思う)、それと
も、どのぐらいの汚染水を供給したか地域ごとに示し、各家庭が自分で
計算できるようにして初めてサービスといえるのか?
も考えてみたい。

いずれにしても、汚染水道水を飲んでしまった幼児がおられたとしたら、今
回はおそらく大丈夫と思うが、今後のことも考えて、対策を練っておいた方が
良いだろう.

私も情報が入り次第、また水道水のことを書きたい。

また「地震で倒れない」と言っていた原発は実は「震度6で倒れる」という
事だったと同じように、「安全な水道水を供給する」というのは実は「供給
してから安全かどうか判る」ということなのかも調べて見たい.

(平成23年3月31日 午前8時 執筆)

武田邦彦

« なぜ、今日も原発が運転されているのか? | | IAEAから聞きたくなかった »

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IAEAから聞きたくなかった

IAEA(国際原子力機関、本部はスイスのジュネーブ)が土壌汚染につい
て測定したところ、福島県で「IAEAが勧告している避難しなければならな
い地点」が見つかったことを日本政府に通告したというニュースが流れた。

聞きたくないニュースだった。

日本には政府がある。IAEAが土壌汚染を測る前に日本政府か自治体、も
しくは原子力機構や、東電が測って、日本国民に知らせ、あるいは待避させ
て欲しかった.

日本人の命と健康を守るのは、第一に日本人だ。

・・・・・・・・・

3月31日、テレビ局が独自に入手したとされる3月24日から3月28日に撮影
されたという福島原発の内部映像が公開された。地震で破壊されたと見られ
る配管がプッツリ切れていた。

31日は多すぎるけれど、それでもテレビ局が公開してくれたのは良かった
が、福島原発の状態を知りたいというのは国民の願いだ。それなのに、東電
や保安院など映像を撮影したり、見たりすることができる人たちは、この映像
を隠していたのだろう.

これほどの非常時になっても、まだ福島原発は「東電のもの」であり、内部
映像は「秘密」であるという感覚は奇妙だ。

一刻も早く、国は東電と1年契約で、福島原発とそこの従業員、技術者の国へ
の移管を契約し、企業秘密とは関係なく、情報を公開するのが適当である.

・・・・・・

日頃、北朝鮮の情報が隠されていると批判している日本人だが、今が非常時
だということを考えると、北朝鮮を上回る情報統制だ。

(平成23年3月31日 午前8時30分 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(41改) 千葉の水道汚染と発表 | | 原発 緊急の緊急(42)  海の汚
染»

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原発 緊急の緊急(42)  海の汚染

ほとんどの日本人が、もう政府の発表を信じていないでしょうから、大丈夫
と思いますが、老婆心まで。

昨日、福島原発の取水口の沖合でとった海水から基準値の3000倍を超える
放射性ヨウ素が検出されたと発表されました。まさか、この値自体ははウソ
ではないと思います.

その後、保安院も国の放射線医療の専門家も「健康に影響のない値」と言いま
した。

でも、基準値の3000倍を超える放射性ヨウ素のある海で、スキューバダイ
ビングをしたり、波打ち際で子供が遊んでいたら、すぐ逃げるように言って
ください。

おそらく日本人全員が国を信じていないので、「健康に影響がない」と思っ
ている人はいないと思いますが、万が一.

繰り返しますが「健康に影響がない値」という政府の発表や専門家の説明は
全くの間違いです. 哀しいことですが、政府や専門家を信じないでくださ
い。

福島原発の横の海岸で遊ぶ人はいないと思いますが、「健康に影響が無い」
なら、水泳やお子さんの水遊びはOKということになります。

保安院の人は自分のお子さんかお孫さんをお連れになって、福島原発の横の
海で遊ばせてください。(やめてください。絶対に危険です私が保安院に注
意するのもなんですが・・・).

どこで何があったか知りませんが、メディアも「健康に影響がありません」
という人だけを出すのではなく、「規制値の3000倍ですから危険です」とい
う人も登場させて欲しかったと思います. メディアは何のためにあるので
しょうか?

・・・・・・・・・類似の話・・・・・・

福島原発が事故を起こした後、テレビでは東大教授が「このぐらいの放射線な
ら安全だ」と繰り返していました。

当時の福島市と東京では放射線の強さは、約200倍でした。

ところが、事故直後、東大の中では文書が回り、「換気を止めること、ドラフ
ト(化学実験などで使う空気が漏れない装置で、これを使うと外気が研究室に
入る)」を停止するよう命令があったことを昨日、確認しました。

テレビでは「レントゲンが600マイクロシーベルトだから、福島市の20マイ
クロシーベルト(毎時)は30分の1だから心配ない」と発言した、当の東大
教授が、その200分の1のところで生活をしている自分の大学では「換気扇
を止めろ」と指示したのです.

私は教育者ですが、教育しても人間の品性が高まらないことにがっかりして
いますが、またそれを感じる今日この頃です.

(平成23年3月31日 午後2時 執筆)

武田邦彦

« IAEAから聞きたくなかった | | 原発 緊急報告(43) 「水」の行方 »

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原発 緊急報告(43) 「水」の行方

福島原発から「大量の汚染水」があることが報告されています. 施設の中の
水の放射線は1シーベルト程度と極端に高く、取水口から300メートルで
も、放射線ヨウ素が規制値の3000倍以上と、これも高い値が報告されてい
ます.

これからどうなるでしょうか?

1) 発電所の中の水をかなり除去しないと、放射線が強いので、作業ができ
ず、それが原発の処理に時間がかかることになります.私の個人的見通
しでは2ヶ月というところです。

2) それは放射線が強いと一気に作業をすることができず、「今日はこれ」
という具合に一つ一つになるからです.

3) 水は少しずつ海を汚染していきます. 幸い、黒潮が福島県で太平洋の真
ん中に折れるので、 三陸、釧路沖などには大きな打撃を与えることは
ないでしょう。

4) 近くの海水浴、釣り、ダイビング、ボートなどは控えた方が良いでしょ
う。また漁船も付近には行かない方が良いと思います。

5) 魚は徐々に汚染されていきます。しばらく経つと汚染された魚が報告さ
れるでしょう. どのぐらい汚染が拡がるかはまだ余談を許しません。

6)  原子炉内の水の問題は、報道されるでしょうが、一般の人にはあまり関
係がないことです。

私たちには、新聞やテレビが問題にしている「原発の水をどうするか」とい
うことより、「海は汚れるのか」、「いつごろ終わるのか」が問題ですか
ら、あまり原発の内部のことに気をとられないことが大切と思います.
・・・・・・・・・技術編・・・・・・

この汚染水の発生原因、その持つ意味、そして今後のことを説明しておきたい
と思います.

【その1】

原発の冷却系が破壊され、原発の冷却ができなくなり、東電や国は必死に海
水を投入し続けた。この水の量は4000トンと言われている.

一方、 その水は空から建物の中に直接、入れたので建屋の床にたまり、徐々
に海の方に流れた。

【その2】

原発には復水器、用水タンクなどがあるので、そこに4000トン水を入れる
ことができるが、あまり余裕はない。そして今後も1万トン以上の水を注入す
る事になる。

【その3】

つまり、冷却系が動くまでは冷却水を入れては汚染されるという自体が続
く. 水を蒸発させて減容(容量を減らす)という設備を発電所の横に作るの
が正解だが、なかなか踏み切らないだろう.

【その4】

発電所はウラン235の核分裂の熱を100とすると、70は海に捨てて、30を
発電するという熱収支である。従って、現在の「崩壊熱」は発電時の発熱と
比較すると数%には下がっていると思われるので、復水器の冷却能力で十分
だ。
その点で、国は「復水器は壊れているのか、いないのか」を明らかにすると、
国民は直ちに復旧できるかどうか、どのぐらいかかるかを判断することがで
きる。

仮に国の説明通り、「津波で破壊された」ということが本当で、「爆発前は建
屋外壁は機密性を保っていた」、「原子炉建屋が移動していない」なら、復
水器は破損していないはずだ。

もし国の説明が間違っていて、地震で破壊されたのなら、復水器も破損して
いる可能性があり、その場合は発電所のもつ冷却装置を使えない。

本日のテレビで、北海道大学の先生が「空冷式の新しい冷却装置をつけろ」
と言っておられたことを考えると、復水器は地震で破壊されているのかも知れ
ない。

どうやら国の主要な人は内部の状態を知っているようだ。

(平成23年3月31日 午後3時 執筆)

武田邦彦

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親父 (おやじ)

「クニ、貧乏は恥ずかしくないぞ! 額に汗しただけでいいんだ」

父はそう教えてくれた。(わたしの名は邦彦)

時々、父は往復の電車賃だけを持って「無銭旅行」というのに連れて行ってく
れた。家から歩いて中央線に乗り、もってきた汽車賃の半分の駅で降りる。

当時の駅前は小さい広場に土煙があがるようなところだった。駅の外にある
小さなベンチで家から持ってきたおにぎりを頬張り、水道の水を顔を逆さに
して飲み、しばらくしてまた同じ中央線で家に帰った.

父はなにも話さなかったが、「お金と人生」を教えてくれた.

・・・・・・・・・

「クニ、生きている内に評価されたらダメだぞ. 死んで30年がちょうど良
い」

私が長じて学生のころ、父はそういった。

生きている内に評価されるというのは、その時代の人が理解してくれること
だ。そんなことに価値があるわけではない。本当の価値は死んだ後に評価さ
れることだと父は言ってくれたのだ。

数学者で変わり者の父だった。

一日中、部屋に閉じこもって研究をしていたが、酒が好きで夜は日本酒を飲ん
でいた。洋酒はダメだった。時々、ジョニ黒やヘネシーをもらうと、母が、

「すみませんが、持って行ってくれますか?」

と出入りの肉屋さんに頼んでいた。
父にとってみればその酒が持つ「社会的価値」などは何の意味もなかった。
自分が好きなもの、それだけだった。

・・・・・・・・・

私は体が弱かったけれど、そんな父の言葉を信じて、ここまで生きてきた。父
の教えがなければ今の自分はないだろう。

(平成23年3月31日 執筆)

武田邦彦

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プロフィール

主たる活動

中部大学 教授  (所属: 総合工学研究所)
高知工科大学客員教授,多摩美術大学非常勤講師、
上智大学非常勤講師
内閣府原子力委員会専門委員、同安全委員会専門委員
文部科学省科学技術審議会専門委員
名古屋市経営アドバイザー、名古屋ウェストライオンズクラブ会員
日本工学教育協会特別教育士、シニアー創造学院客員教授、 青森県鰺ヶ沢町顧問、
うるま市アドバイザー,(株)ユーテック顧問
富山環境顧問
旭化成工業株式会社・社友、 芝浦工業大学・名誉賛助員 名古屋大学高等研究院・
院友

プロフィール

 昭和18年(1943)6月3日、東京都生まれ。昭和37年(1962)都立西高等学校卒業・昭和41
年(1966)東京大学教養学部基礎科学科卒業。同年(1966)旭化成工業(株)に入社、
(1986)同社ウラン濃縮研究所長、平成5年(1993)より芝浦工業大学工学部教授を経て、平
成14年(2002)より名古屋大学大学院教授,平成19年より現職. 

工学博士、専攻は資源材料工学。東京大学、京都大学、東北大学、横浜国立大学、早
稲田大学、立教大学、愛知大学などの非常勤講師、文部科学省中央教育審議会専門委
員、工学アカデミー理事、芝浦工業大学評議員、学長事務代理、大学改革本部長代
理、教務委員長、NEDO技術委員,日本工学教育協会常任理事、JABEE工学一般審査
委員長、非営利法人「おもしろ科学たんけん工房」「テクノ未来塾」理事などを経
験。

 物理化学的手法を用いた原子力、材料、環境などの研究と、倫理などの研究。専門
は資源材料工学
 主な受賞:日本工学教育協会工学教育賞(倫理)、日本原子力学会平和利用特賞、
日本エネルギー学会賞、日本工学教育協会論文・論説賞(創成科目)、マテリアルラ
イフ学会論文賞、資源素材学会発表論文賞, World Materials Day Awardなど。

 著書(共著を含む):「ニッポン再建論」(共著、廣済堂新書、2011)、「君が地
球を守る必要はありません」(河出書房、2010)、「温暖化謀略論ー米中同時没落と
日本の繁栄」(ビジネス社,2010)、「誰も知らない「危ない日本」7つの問題」(大
和所部尾、2010)、「ウソだらけ、間違いだらけの環境問題」(新講社、2010)、
「「CO2 25%削減」で日本人の年収は半減する」(産経新聞出版、2010)、「偽
善エネルギー」(幻冬舎、2009)、「温暖化論のホンネー「脅威論」と「懐疑論」を
超えて」(科学評論社、2009)、「科学者が読み解く環境問題」(シーエムシー、
2009)、「武田邦彦エッセンス」(中部大学、アリーナ、2009)、「その「エコ常
識」が環境を破壊する」(青春出版、2009)、「大麻ヒステリー」(光文社、
2009)、「作られた環境問題」(ワック出版,日下公人さんとの共著,2009),
「日本一早い平成史」(ゴマブックス,共著,2009),「家庭で行う正しいエコ生
活」(講談社,2009),「電子/電気製品の発火・不良原因の究明技術と安全対策」
(技術情報協会,分担執筆,2009),「暴走する「偽」環境ビジネス」(KKベスト
セラーズ, 2009),「武田邦彦はウソをついているのか?」(PHP,杉本裕明さんと
の共編,2009),「「地球温暖化」論で日本人が殺される!」(講談社,丸山茂徳先
生との共著),「欧州化学物質規制ハンドブック」(エスティーエヌ,分担執
筆,2008),「27人のすごい議論」(文春新書,639,共著,文藝春秋社,2008),
「日本の論点」(文藝春秋,分担,2008), 「食糧がなくなる!本当に危ない環境問
題」(朝日新聞出版,2008)、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか3」(洋泉社,
2008),「間違いだらけのエコ生活」(主婦と生活,2008)、「偽善エコロジー」
(幻冬舎,2008)、「バイオ燃料で、パンが消える」(PHP、2008)、「高等学校国
語現代文」(第一学習社,2004,"愛用品の五原則"が収録される),「高分子材料の劣化
解析と信頼設計」(NTS,2007)、「自然に学ぶ材料プロセッシング」(三共出版
2007 共著)、「暴走する地球温暖化論」(文藝春秋2007,共著)、「環境問題はなぜ
ウソがまかり通るのか2」(洋泉社2007)、「国債は買ってはいけない(東洋経済新
社2007)」,「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(洋泉社2007)、「何を食
べれば安心か」(青春出版2004)、「難燃材料データブック」(NEDO,2003),
「難燃高分子材料の高性能化技術」(テクノネット2003),「二つの環境」(大日本
図書2002)、「エコロジー幻想」(青春出版2001)、「リサイクル幻想」(文春新
書2000)、「リサイクル汚染列島」(青春出版2000)、「リサイクルしてはいけな
い」(青春出版2000)、「有機材料工学」(シグマ出版)、「日本における同位体分
離のあゆみ」(日本原子力学会,分担執筆,1998),「分離のしくみ」(共立出
版,1988)、「高純度化技術体系」(フジテクノシステム,分担執
筆,1997),”New Developments in Ion Exchange", (Elsevier, 1991).「分離
科学ハンドブック」(共立出版,1990)、「イオン交換」(講談社)、「日本の将来
と産学連携」(丸善)、など約80、論文・総説など約700編、学術発表約1300件、
特許など約100件。

趣味:歴史、熱力学,おいしくない食事をすること

連絡先
Kunihiko Takeda, Dr. Prof., Chubu University
E-mail: tak@leaf.ocn.ne.jp
(写真をご利用になる方に(一応,了解をお願いします.))

武田邦彦

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ご質問と回答

最近、時間がとれずメールのご返事ができません。ご質問の多いものをブログ
でお答えします。(Qはご質問、Aは回答です)

Q.

今3か月の妊婦です。上の子は地元に疎開させました。住んでいるところは、
計算すると1年間に2.6ミリシーベルト、3か月だと0.6ミリシーベルトになり
ました。

A.

難しい判断ですが、放射線は1ヶ月で10分の1になりますから生活上可能であ
れば、5月の連休後まで疎開されるのをおすすめします。4月の13日で1ヶ
月程度になりますが、今回の場合、まだ少しずつ放射線が出ているので5月の
連休あけぐらいまでは気をつけなければならないと思います。今のところに
おられるとからといって必ず障害が出るわけではありませんが、ここ1ヶ月
だけが危険だと思います

Q.

まだ、数週間、危機を脱出するまでにはかかりそうです。埼玉県民は、どう
したらいいでしょうか?都民と埼玉は同じと考えていいのでしょうか?

A.

福島原発が破滅的状態になる可能性は非常に少なくなりました。危険な状態
の可能性は20分の1ぐらいしかないと思います。いざという時のために、水
を用意しておくとか貯金通帳をまとめておくということはいりますが、現在
の埼玉県では注意して生活すれば問題がないと思います。

Q.
会津若松は大丈夫でしょうか。水についても特に情報も入ってこず、来週か
らは幼稚園も始まりますし、幼稚園が始まればもちろん外での運動もごく普
通にあると思います。

A.

ちょうど放射線に感受性の高い年齢のお子さんを持ちでご心配と思います
が、風が東からこないので会津若松はほとんど汚染が進んでいません。ただ
放射線の多い福島県内なので全体的に対策が少し遅れがちなっています。そ
こにお住まいになって大丈夫ですが、食材をお買いなる時に注意されたらい
いと思います。

Q.

福島原発が放出する放射線量について、全く問題なく、更には、この放射線
量は低線量率放射線であり、むしろ、身体に良く、病状が快方に向かうとい
う研究者がおられます

A.

日本の自然放射線は年間に1.5ミリシーベルトです(報道されている2.4ミ
リシーベルトは世界平均で日本ではありません)。赤道に住む人達の肌が黒
い(紫外線障害防止)ようにわたくしたちは昔から住んでいる環境に最も適
した形に変わっています。日本人の場合には、放射線が0よりも1.5ミリ
シーベルトの方が健康であると考えられています。しかし人工的な放射線が
プラスされる場合、通常の人の場合には、5ミリシーベルトから10ミリシー
ベルトまで大丈夫なのですが、赤ちゃんや免疫が少し弱い人等がおられます
ので、安全を見て世界的な基準が低くなっています. 1ミリシーベルトとい
うのは、自然放射能の1.5を加えた合計で2.5という意味です。

1.5まではその研究者の言われる通りなのですが、それ以上の放射線は一般
的には体が悪いとされています(国際的にも国内勧告でも)。私も事故が起
こってから急に「放射線は安全だ」という研究者を信じたいのですが、もし
間違っていたら取り返しがつかないので、今までの規制で進むのが良いと
思っています。

Q.

1年分の内部被爆を1日で受けるのと平均して1年受けるのでは、数値とし
ては1年間で受ける被爆量は同じですが、身体に起こると予想される事も同
じなのでしょうか?

A.

放射線による損傷は、おもに遺伝子等の損傷なので、これを修復するのは体
の中の免疫反応しかありません。一度被爆すると、しばらくそれを直そうと
します。日焼けと同じですが、若い女性が1日、海水浴で日焼けしますとチ
ミンダイマーというのを経て8,000個ぐらいの皮膚がんが残ると言われてい
ます。若い内はそれを完全に直せますので皮膚がんにならないわけです。こ
れと同じようなことですから一概に言えないのですが、休む期間がいるとい
う鉄則があります。連続的に浴びないというのはその点では良いのですが、
一度に急激に浴びるとやはり体に損傷が起きます。現代の被曝と健康の考え
方は、長寿社会でもあり、確率的に起こるので「できるだけ被爆を避けた」
ほうがいいという考え方です。

Q.

4月初旬に家族と東京へ戻り生活の予定ですが、帰国を躊躇しております。

A.

お子さんの年齢健康状態を考えますと東京での生活は大丈夫です。ただ余裕
がありましたら大きな爆発があった1ヶ月後ぐらいで放射線が10分の1にな
りますので、ご無理がなければ連休あけぐらいが適当だと思います。

Q.

体内に取り込んだ場合でも、ヨウ素131の放射線は8日で半減するの
で、80日経てば放射線量は1000分の1になる。取り込んだからといって、
ずっと被曝が続くというものではない。しかし、内部被曝によって遺伝子に
傷が残るなどして、後にがんを引き起こすという部分があるのだと思いま
す。

A.

正確に理解されているとおもいます。規制値などは半減期も含まれていて、
放射性ヨウ素がなくなっても、摂取したときに被曝していますから、障害の
発生は遅くなります。半減期を強調する方もおられますが、規制値を決める
人は勿論、それも知って規制値を決めています.

Q.

放射線の二次汚染はないと認識してはいますが、実際のところどうなんで
しょうか?

A.

放射線で被曝した人と接しても、接した人が被曝するということは全くあり
ません。従って福島県民を排斥するような活動は私は断じて許すことができ
ません。ただこのようなことが起こるのは、ある時には科学的、ある時には
非科学的に行動するとこのようなことが起こると思います。従って正しい行
動するためには常に正しい価格的知識に基づいて、行動することが福島の人
にも大切ではないかとわたくしは思っています。具体的には昨日の海水の放
射性ヨウ素が基準値の3300倍だったにもかかわらず、「健康に影響がな
い」というと、非科学的ですから全体がわからなくなって、それが「福島県
人は来ないでくれ」という話になるわけです。そこのところ福島の人も絶対
に頑張ってもらいたいと思います。

Q.

福島原発付近の海流は通常、北海道東岸から千葉県の鹿島 付近に向けて流
れています。また冬の時期には南からの黒潮が離れると黒潮と本州の間に入
り込み千葉県の勝浦市付近までは通常に南下します。

A.

これはご質問ではなく海流について私に教えていただいたものですが、海は
日本に人にとってかけがえのない財産です。それがいとも簡単に汚されてし
まったことに、わたくしはとても落胆しています。かくなる上は少しでも海
を汚染しないことと、汚染の状態を細かく測定して欲しいものです。また今
からでも良いので、回収作業やフェンス等有効なものをやってもらいたいと
思っています。

Q.

※外出時のマスク着用は16日から※飲料水をペットボトルにしたのは24日
から※マンションの換気を止めたのは18日から
A.

仙台の方ですが、現在のところ仙台まで汚染があまり進んでいませんので、
早めに対策をとられてよかったと思います。基準値を超えているかどうかは
別にして、1ヶ月ぐらいは取れる対策を取っておくというのが正しいと思い
ます。

Q.

「風評被害」

A.

放射線の危険をあおるので「風評被害」が出ると政府が言っていますが、
「風評被害」というのは「現実の被害」がない場合の時です. 今回の場合、
福島県東部の首都はかなりの被曝です。また、周辺の野菜も残念ながら規制
値を超える汚染をしています。つまり現在は「風評被害」ではなく、「現実
の被害」ですから、これを風評被害と言って間違った方向に進まないことが
大切と思います。

Q.

今回の福島原発の放射性物質は全然問題なく、福島の野菜や牛乳も大丈夫だ
し、水も飲んで大丈夫だから、普通の生活をして下さいと言っている動画が
あります。

A.

このブログで再三、書いていますが、わたくしのスタンスは「これまで長い
間議論を重ねて決めてきた放射線の安全基準とか法律を、事故が起こったか
ら議論なしに変える」というのは危険であるということです。わたくしにも
自分の意見がありますが全く触れていません. つまり現在のような危険なと
きに、これまでの基準値を決める委員会で通らなかったような学説を唱える
のはあまり良くないと思うからです。この先生の主張が法律とかなりかけ離
れているならば、その先生が「基準値を決める委員会に出席されてない
か」、それとも「委員会でご意見が通らなかったのか」のどちらかだと思い
ます。いずれにしても、長く使ってきた我々の放射線障害に関する法律の値
と異なることを言われる場合には、なぜ法律に自分のご意見が入っていない
のかということもお話にならなければいけないと思っています。
Q.

ホームページでは放射性物質は不検出、という公表がありますが、それでも
やはり水道水は使用しないほうがいいのですか

A.

放射線防御の原則はできる限り被ばく量を減らすということです。この場合
は現実に水道水が汚染されていませんから、飲むのはさしつかえありませ
ん。

Q.

放射能汚染に備えて友人よりヨウ素剤をいただきました。数値は少なく推移
してますが蓄積があり迷っています.

A.

わたくしがヨウ素剤にあまり触れないのは副作用もあるからです。またヨウ
素剤は10∼30ミリシーベルト程度のタイミングがよいとされていて、タイ
ミングが難しいという意味があります。放射線ヨウ素がご心配ですから、ヨ
ウ素の多い食事が良いと思っています。ただ学問的な証明がないので、素人
療法になります。やはり第一は被曝そのものの値を低くしておくことです.

Q.

幼稚園の園庭はグラウンドでとてもひろく戸外遊びが心配なのです。場所は
さいたま。室内プールもやめておいたほうが良いのでしょうか?(水の汚
染)

A.

現在はまだヨウ素の放射線量が減っていませんから福島原発から継続的に新
しい放射性物質が飛散していると考えられます。従ってこういう場合には、
空気から吸い込む放射性物質の方が水より危険ですので、もしも選べるなら
ば、屋外の運動ではなくプールに行かせるほうがよいと思います。

Q.

IAEAの避難勧告があっても日本という国は動きません。全国ネットのTVも
信用出来ません。乳児がいるのですが、東京はまだ住み続けられますか? 幼
い子を何とかしてあげられないでしょうか。

A.

福島原発が継続的に放射性物質を出しているからこそ、政府は福島原発の処
理に懸命になっているのです。「安全です」を繰り返していますが、安全な
ら処理はゆっくりでも良いのです。でも幸いにも東京は230キロと原発から
遠く北風もそれほど強くないので現在では幼いお子さんも大丈夫です。その
点はご安心いただいた方がいいと思います。ただ、食材に気をつけるなど空
間から受ける放射線だけは仕方がありませんが、それ以外を極力少なくして
あげると良いと思います。東京だけ触れることが多いのですが、仙台や山形
も東京とほぼ同じです.

Q.

高校生の息子が、武田先生の計算方式で私の住んでいる地域について計算し
てくれます。

A.

お聞きしてわたくしも励まされます。ちょうど新年度を迎えることもあって
多くの人がご自分で計算され、たとえ規制値を超えていてもご自分で判断さ
れてお家に戻ったりしておられます。

Q.

小学校では水筒を持っていくことは禁止されています。他のお母さんからは
「それは気にしすぎ」と言われました。

A.

学校は文科省の指導のもとにあり、なかなか保守的で難しいのですが、やは
りペットボトルを持たせたいと要望を出すのがよいと思います。また他のお
母さんのお話ですが、被曝だけは「少なくしておけばこしたことがない」と
いうものですから、気にしすぎということは全くありません。

Q.

100ベクレル/kgの水を1リットル飲んだ時は、100ベクレ
ル/kg=100/100*2=2マイクロシーベルト。1/24=0.083マイクロシー
ベルト/時ですか?

A.

おおよそ良いのですが、最後が2に24をかけるのが正解です.

Q.

4月初旬から学校が始まるため、今日東京へ戻りました。2週間ほどでも、被
曝を避けられたのは良かったと思っています。

A.

全くその通りです。生活の範囲で、少しでも減らすのが大切です。

Q.

まわりは政府とマスコミが言っているから大丈夫と取り合ってくれません。

A.

本当に大丈夫なら、政府はあれ程必死になって福島原発に取り組みません。
神経質になる必要はありませんが、冷静に被曝を少なくしておく努力をする
のが大切と思います。政府が必死になっている間は、結果が厳しいことを考
えている証拠にもなります。

Q.

冷却装置が壊れているとしたら原発の放射能漏れの終息は2ヶ月以上かかり
ますか?

A.

発電所の中の放射線が強いと作業が予定通りはかどりませんから2ヶ月ぐらい
かかると考えてよいと思います。ただ、現実的には放射性ヨウ素の半減期が
短いので、各地のヨウ素の変化を見ていると福島原発から出ている放射性物
質の動きがわかるという利点があります。

Q.

このメールが武田さんに届くよう望んでおります。私達に何ができますか?
A.

届いております。今のところ頑張ってすべてのメールに目を通させてもらっ
ていますが、ご返事はできなくなりました。今は個別に被曝を減らして状況
を見ていく時期だと思います。

Q.

静岡県御前崎にも、空中降下物に放射性物質が検出されていますが、ふつう
に生活していたら、体についたり呼吸で体内にはいりますし、家の中にも
入ってきますし、セシウムは何十年もそこにとどまって放射線を出し続ける
んですよね?

A.

セシウムは土と性質が似ています。ただ、世界的に決まっている「1年に1ミ
リシーベルト」という値は安全サイドですが、シッカリしています.つまり放
射線というのは被曝しなければしない方が良いのですが、そうは言っても人
間は生活しなければならないので、この値ならまず大丈夫という値です。計
算されてて納得されたら、安心していいと思います

Q.

来週の出産までは仕方ありませんので東京に残るつもりですが、その後は地
方へ避難するべきでしょうか? 5歳の子供もいますので子供をつれてどこ
かにマンションを数ヶ月借りる方法を考えています。

A.

東京でお生みになるのに問題はありません。来週ならかなり放射線も減って
います.雨の後だけ外に出るようなことを避け、水と食材に気をつければ、4分
の1にはなりますから、安心です.

また機会がありましたら。
(平成23年3月31日午後10時 執筆)

武田邦彦
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原発 緊急情報(44) 4月1日から3日の汚染(海を中心に)

4月1日12時から6時間毎、福島原発からの汚染物質の流れをドイツの情報か
ら掲載します。

現在が4月1日午前9時ですから、最初の地
図は12時間後、そしてそれから順番に
(すみません。国際協定時で書いてし
まったので、日本時間は表示に9時間を足
してくださ

い)1日12時、18時、2日0時、6時、12時、18時、3日0時、6時、12時
の9枚です
.

海のお仕事やサーフィン、釣りなどを楽しまれる方のご参考までに。(画像が
1行に2枚になっているところは左が時間の早いほうです.)

武田邦彦

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問と回
答| |
生活と
原子力
01 
健康と
放射線
量のも
ともと
の関係
»

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特設スタ
ジオ]

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生活と原子力01 健康と放射線量のもともとの関係

福島原発が今後どう状態になるにせよ、漏れ出したセシウムやストロン
チュームの半減期が30年ですから、残念ながら関東・東北に住む人にとっ
て、これから長い間、生活の中に放射線というやっかいなものが入ってきま
す。

またその他の地方でも今後、地震もありますし、原発は運転されているの
で、「原子力と放射線」について今までのように「遠いところのもの」では
なく、自分のものとしてとらえ、あるいは家族を守り、あるいは自分を守っ
ていかなければならない時代になりました。

それは福島原発の事故とともに、私たちの宿命ともいうべきものと思いま
す。

・・・・・・・・・

どのくらいの放射線なら安心なのかというのは多くの人の関心事だと思いま
す。国際的にまた国内の法律でも「普通の人が安全だと言える放射線の量」
は、1年間に1ミリシーベルトです。

今までは「シーベルト」というものは生活にまったく関係ありませんでした
が、これからは、「シーベルト」という言葉を覚えておかなければならない
ものの一つになりました。

・・・・・・・・・

国際的に決められたルールは非常にはっきりしています。国内法はそれに
従っています.

人間は全く危険のない状態で生活するということはできません。しかし、
「まあ、このくらいなら大丈夫だ」というレベルはあるのです。

それを次の3段階に分けています。

1) 受け入れることができる放射線量
2) このくらいなら仕方がないという放射線量

3) 我慢ができない放射線量

この三つに分けておけば、いろいろなことを決めることができます。

例えば、受け入れることができる放射線量をはっきりしておくと、それ以下
は全く無視してよいということです。

これを専門用語では「免除レベル」と言いますが、あまり使われないので忘
れてしまっていいと思います。

普通の人が覚えておきたいのは「我慢ができない放射線量」の数値で、これ
を「限度」と言います。基準値とか規制値と言われるのはこの限度のことで
す。

図を見たら理解しやすいという人は、こ
の図を見てください(ダブルクリックす
ると綺麗に見えます)。この図は国際放
射線防護委員会、略称して ICRP と言い
ますが、その委員会が出している図で日本ではアイソトープ協会が翻訳して
います。
.

・・・・・・・・・

この放射線の限度が一般人では1年間に1ミリシーベルトということになりま
す。

すぐ疑問を感じる人がいます。それは日本で生活していると、自然から
1.5mmシーベルトの放射線を受けるので、「自然より低いの?」というの
は疑問です。

1人の人が受ける放射線は次の足し算になります。

(自然から)+(限度(1ミリ))+ レントゲンなど医療被曝

医療関係は別に計算します. 1年に、胃のレントゲンを1回、胸のレントゲ
ンを2回、健康診断で受けたとしますと、0.6+0.05+0.05=0.7の被曝を
受けます。

「医療」は入れないことになっているのは、医療で被曝するときには医師が
判断するからです。

一方、日常生活の中でも、飛行機に乗ると海外旅行では0.4ミリシーベルト
(片道0.2)の被曝を受けますし、ラジウム温泉に行ったりして被曝するこ
とになります。

これらは限度の1.0に入りますから、海外旅行(0.4)とその他(0.1)を引く
と、非常に厳密に言うと、「福島原発で被曝できる限度は0.5」とまります。

つまり、自然放射線(1.5), 医療など(1.0)の他, 旅行などで若干あびます
ので、福島原発で被曝する量を限度の1.0ミリシーベルトとすると、

1.5+0.9+1.0=3.4 から
1.5+0.9+1.5=3.9

となります。

約3.4から3.9ぐらいの値ですね。

・・・・・・・・・

一方、職業的に放射線を扱っている男性の場合、1年で20ミリシーベルトが
限度です。特別な場合、1年で50ミリシーベルトが許されていますが、その
場合は残りの4年で50ミリシーベルトしかダメなので、平均的には20ミリ
シーベルトと言うことになります。

男性と幼児、妊婦などでは放射線に対する感度が3倍から5倍程度違うとされ
ており、3倍として「職業的に受けるとして20を3で割って約7ミリシーベル
ト」になります。

ただ、職業的に放射線を受ける場合には、どのぐらい放射線をあびたかを測
定し、健康診断もするので、それが行われない一般人の場合、2分の1ぐらい
の安全を見ています
.

つまり、職業的に放射線をあびる人を基準とすると、3.5ミリシーベルトに
なります.

・・・・・・・・

一般人が被曝する限度を足すと3.4から3.9、職業人から見ると3.5ですか
ら、結局、医療用などを除けば、1年で余計な放射線の被曝は1.0ミリシー
ベルトぐらいにしておく必要があるのです。

これが「一般の人の受ける限度(我慢できる限界)」になるので、1ミリと
いうことです。
・・・・・・・・・

私の発言に対して「危険を るのは良くない」と言う人がいますが、ここで
説明したのは、国際勧告と日本の法律(放射線障害防止の法律)を解説して
いるだけです。

繰り返す事になりますが、今回の事件で私は「自分の意見」を言わないこと
にしています。というのは、私は神様ではないので、これまで40年ほどにわ
たって議論されてきた最終的な結論(1ミリシーベルト)をそのまま伝えて
います.

これに対してテレビなどにでる人が法律に書かれた値の100倍でも大丈夫と
発言していますが、私にはできません。なぜなら、もし法律の限度の100倍
の被曝をして、その赤ちゃんが将来、ガンなどになっても私は専門家として
責任をとれないからです。

つまり、「非常時だから」というのは判っていますが、国際勧告とか法律に
定められた「限度」は、人の健康を考えているのですから、「パニックにな
るから、放射線に対する人への影響が変わる」とか、「福島市の人を全部、移
住させることはできないから、まあまあ」ということとは関係がありませ
ん。

これまで「これが限度」と言われていた値を、原発の事故が起こったから、誰
の許可もなく違う数字を言うことは科学者としての私の範囲ではありませ
ん。

政府が「直ちに健康に影響がない」と言っているのは私も同意します.なぜ
なら放射線をあびて直ちに健康に害がでることは、すぐ死ぬときぐらいしか
ないからです.

・・・・・・・・・

私も人間の体の防御から言って、1ミリシーベルトが少し安全サイドの値だと
は思いますが、もし将来、子供にガンが出て、その子供が

「なぜ、ボクがガンになったの?」

と聞かれた時、親は、

「ごめんなさい。法律を考えないでテレビで言っている人や、ネットで解説
している先生のことを信じたの」

と答えたら子供はなんと思うでしょうか。
「ここまでは安全だ」と法律で決まっている(長年、検討され、国際的にも
認められている)範囲で病気になったのなら諦めもつきますが、根拠なく被
曝したら悔いが残ります。

わたしはテレビで解説している人に、

「原発をやりたいから限度をゆるめる」というのは、原発のために人間が病
気になってもよいということでもあります。原発は人間のためにあるので
あって、人間が原発のためにあるのではありません。

私は、国家は国民を守るためにあると思っています. もし1ミリシーベルト
が厳しすぎたとしても、 とりあえずはそれを知り、できるならその範囲にし
ておくのが大切と思います。

(平成23年4月1日 午後11時 執筆 一部修正)

武田邦彦

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生活と原子力02   1ミリ、100ミリ、「直ちに」の差は?

福島原発で放射性物質が漏れたとき、一般人が1年間に被曝しても大丈夫な量
は、

(法律と私) 1ミリシーベルト

(解説者) 100ミリシーベルト

参考;(政府)「直ちに健康に影響はない」

と大きく違いました. これでは普通の人が迷うので、「違いの原因」だけ解
説をしておきます
.

・・・・・・・・・

まず、100ミリシーベルトを支持する専門家は、国立研究所系研究者、京都
大学、長崎大学、東芝関係者などに多いようですが、その一人は、かつて長
崎大学におられて、今、京都大学の渡邉正己教授です
.

わたくしは普通このようなことを論じるときに、個人名を挙げません。それ
は、内容を批判することがあっても、人間を批判したくないからです。

しかし今回の場合ははっきりと発言しておられますことと、ここでは渡邊先
生を批判するのではないので、先生のお名前を挙げさしていただきました。

先生が3月20日に発言されたことは次のようなことでした。

「100ミリシーベルトで健康に害を与えると仮定しても、発がん率はおよ
そ100人に1人。放射線の被曝がなくても100人のうち50人はガンになるの
で、あまり影響はないと予想されます。」
これは先生のお考えであり、わたくしの考えとは違いますが、だからといっ
て先生のお考えが間違っているというわけではありません。わたくしと違う
ということです。それでは何が違うかを整理してみたいと思います。

・・・・・・・・・

「人間はがんで死亡するのが、人口の約半分なので100人に50人はガンで死
ぬ。だから放射線に被曝して100人に1人だけガンが増えたからといって問
題ではない」というのが先生の趣旨です。

これに対して、わたくしは次のような例を考えます。

1) 「どうせ人間は100人に100人が死ぬのだから、交通事故で死んでも問
題はない。それに、交通事故の死者数はわずか10万人に5人だから、交
通事故対策等はやらなくてよい」

2) 「飲酒運転をしても、交通事故死の10分の1にしか過ぎない。ましてそ
の数は100万人に5人だ。だから飲酒運転を取り締まる必要はない」

どうせ人間を100人に100人が死ぬのだから交通事故で死んでも病気で死ん
で同じであると言えば、それはそうかもしれません。渡邊先生はこのように
考えておられると思います。

しかし、社会が交通事故を何とか無くそうとしているのは、人間が自然の中
で死んでいくのは仕方がないが、幼い子供や青年が、また、仮にお年を召し
た人でも、やはり交通事故で亡くなるというのは悲惨なことだと日本社会は
判断していると思います。

次に、飲酒運転による交通事故死は、交通事故全体の10%に過ぎません。で
すから、飲酒運転で犠牲になる方は年間「たった」50人です。確率的で言え
ば「100万人に5人」にしかすぎません。100万人に5人しか被害を受けな
いものをメディアが騒ぐというのも問題かもしれません。

しかし、お酒を飲まなくても運転できるし、お酒を飲めば交通事故が多くな
るのです。だからたとえ50人増えるにしても、日本社会は何とかそれを食い
止めようとしてきたと私は思っています。

このような通常の社会的だ災害に対して、100ミリシーベルトの放射線を浴
びると100人に1人がガンになるわけですから、約1億人の日本人を考えれ
ば、1000万人がガンになるということになります。

現在では福島市の約半分がかなり危険な状態にありますから。放射線を浴び
ている人たちの数は100万人程度です。従って、福島県だけを考えて
も、1万人の人が放射線の被曝でガンになるということを渡辺先生はおしゃっ
ています。

確か事故の福島県の100万人の人は、最終的にお亡くなりになる時の原因は
ガンが50万人ということになりますが、お年を召して自然にガンで死亡され
るのと、福島原発から出た放射性物質を浴びてガンになって死ぬというのは
大きく違うと私は思います。

まして、「時期の問題」を考えると、放射線による疾病の調査のほとんど
は20年間ぐらいなので、現在の赤ちゃんは、仮に1ミリシーベルトの放射線
をあびると、20歳ぐらいまでにガンになるということになります。

わたくしは、渡辺先生と考えが違うのはこのように思うからです。

・・・・・・・・・

もう一つの違いは、飲酒運転というのは「してはいけないことをする」とい
う問題でもあります。

今回の原発事故は、原子力に関係してきたわたくしにとって見れば、原子力
が「してははいけないことをしてしまった」と申し訳なく思っています。

「原発を運転すれば必ず放射線が漏れる」ということが最初から判ってい
て、その上で国民は電気がいるという理由で原発を認めていたというのなら
少し違うのですが、原子力の関係者は「今まで原発から放射線が漏れること
はない」と言ってきたわけですから、今はせめて付近住民の方に安全な情報
を早く伝えることと思います。

「してはいけないことによって出た放射線でガンになる」ということはわた
くしには「してはいけない飲酒運転をした犠牲者」と同じと考えるからです
.

・・・・・・・・・

また、わたくしは、「100人に1人」という数はかなり高いように思いま
す。親の気持ちなれば、1000人に1人でも危ないと思い、1万人に1人ぐら
いになれば、何とか防いであげることができると思うのではないでしょう
か。

渡邊先生と同じ長崎大学の先生は、「100ミリシーベルトで、100人
に0.5人しかがんにならないので大したことがない」というふうに発言され
ていました。渡邊先生とほぼ同じ数値です
.

わたくしは交通事故が「1万人に0.5人」ということを考えれば、これ
も100倍の危険ですから、非常に大きな値ではないかと思います。

ちなみに、福島県全体のことを考えると、すでに汚染が開始されてから1ヶ月
になろうとしていますが、空間の放射線量が1時間あたり2マイクロシーベル
トぐらいのところは、1ヶ月経ったところで、空間放射線から1.5ミリ、内部
被曝が1.5ミリ、水から1.5ミリ、食品から1.5ミリで合計6ミリシーベルト
ぐらいになっています
.

それに、自然放射線0.12ミリ、胃のレントゲン0.6を足して約7ミリシーベル
トが1ヶ月後に放射線がゼロになったとしての被曝量です。

被曝によるガンの発生が受ける放射線の量によるとしますと、100万人あた
り7万人のガンがでることになります(渡邊先生の予想を比例計算)。

・・・・・・・・・

このように整理していくと、渡辺先生とわたくしとは、放射線を浴びること
によってどのくらいガンになるかという「科学的事実」については見解はほ
ぼ同じです。

違いは「危険」と感じる程度が違います
.

おそらく、渡辺先生は100人が50人とか100人がガンになるような場合が
「危険領域」とご判断されていると思いますが、私は100人中1人でもガン
になるというのは「大変なことだ」と考えているという感覚の問題かもしれ
ません。

この判断は、読者の人がご自分のお考えに合わせて判断するべきものと思い
ます。政府やメディアは「1万人に1人ぐらいで騒ぐのは風評だ」と言ってい
ますが、騒がない方が風評のように思います。

・・・・・・・・・

さて、このことで二つ考えるべきことがあります。

一つは、一見して科学者の間で、科学的事実の解釈に差があるように見えて
も、よくよく見ると科学的事実は一致していても、「人生、健康、思想、政治
的立場」で差がある場合があります。

このようなときに専門家はお互いに非難することなく「どこに考えの差があ
るのか」ということをはっきり言ったほうが聞いている方はよくわかると思
います。

もう一つは政治の問題です。

かつては、日本に資本主義を支持する人と社会主義を支持するグループが
あって、国会では与党と野党を形成していました。

こんどのような時には、資本主義を支持する与党の人はどちらかというと原
発推進の立場から「このくらいの放射線なら大丈夫だ」という発言をし、そ
れに対して、社会主義で野党の人は庶民を守ると言う見地から「危険だ、政
府は隠している」と追及して、それがあるバランスになっていたように思い
ます。

またメディアの中でも政府に批判的なメディアがあり、国民が放射線を浴び
るのは良くないということを基本に、紙面を作り、それが政府を動かしたり
しました。

しかし最近ではメディアも含めてオール与党のようになったので、今回の件
でも政府の発表等を鋭く追及する力が弱かったようにも思います。

特にわたくしは、発電所周辺の海で基準値の3355倍の放射性ヨウ素が見つ
かった時に、保安院は「直ちに健康に影響はない」と記者会見で言っていま
した。政府は明らかに不適切なことでも言うこともあります。

それに対して、もし、わたくしがそこにたら、

1) それならば何万倍になれば危険になるのですか?
2) 健康に影響がないということは原発の近くの海で子供を海水浴させても
いいのですか?

という質問をしたと思います。これを考えても政府発表に対しての記者の方
の追及の力が弱いように思います。わたくしはそれこそがメディアや学者の
役割と考えています。

(平成23年4月2日 午前9時 執筆)

武田邦彦

« 生活と原子力01 健康と放射線量のもともとの関係 |

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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教育関係者に訴える! 今すぐ、立ち上がってください!!

福島県及び近県の教育関係者に御願いします。

現在、福島県及び近県の空間放射線量は1時間あたり約2マイクロシーベル
トで、呼吸による体内被曝と水や食糧から入る放射線量もほぼ同じ量ですか
ら、約6マイクロシーベルトになります。

一方、福島原発の処理は長期化が予想され、児童生徒の被曝量は「考慮しなけ
ればならないレベル」になります。1年間の被曝が予想され、その場合、6×
365×24=53ミリシーベルトになり、児童生徒の放射線障害は100人
に0.5人を越える段階にまで達しています
.

・・・・・・・・・

教育者の先生方、児童生徒は先生方の命令のもとに行動することを求められま
す. 自分たちでは自分の健康を守ることができません。

言うまでもありませんが、教育は政府と独立しており、子供達の命と健康を守
ることが教育者のもっとも大切な役割です
.

政府の指示や勧告は教育委員会とは独立です.そのための教育委員会です
.

学校の開始日を5月の連休明けにしてください。そして屋外の運動はしばら
く中止してください。御願いします!!

放射線の量と健康障害については様々な学説がありますが、50年にわたる
研究の結果が、ICRP(国際放射線防護委員会)および放射線障害防止の
法律と規則(国内)で決まっていて、年間1ミリシーベルトです.それを越え
ているのですから、学校はそれに対して真剣に取り組み、将来、児童生徒に
放射線障害を万が一でも出さないように、情熱のある行動を求めます
.

半減期のある放射性物質は時間が経てば減っていきます. だから最初が大切
なのです!

「おそらく大丈夫だろう」とか「政府が言っているから」では教育者として
の信条に反します. 「万が一にも児童生徒の健康に害が亡いこと」を第一に
してください。

政府は、原発の近傍の海で規制値の3355倍でも「健康に影響がない」と
言っています. その海で児童生徒を海水浴はさせないと思います
.

ご自分でご判断しないでください。あくまでも「基準以上は危険。基準以上
で児童生徒の登校をさせない」と決意してください。

学校の先生は教育上の全権があります。いろいろな事情があるでしょうが、
ここで教育者としての責務を貫いてください。

これまでの、世界の被曝の経験では、ICRPのデータにもあるように、す
でに数100名の児童生徒が20年以内にガンになる可能性のレベルまで来
ています
.

「危険を承知で知らない顔をする」ことこそ「風評」であり、事実を直視す
ることは「風評」ではありません。事実を見るには勇気が要りますが、将来
の子供のために先生方が勇気をもって事実を見て、具体的な行動をとってい
ただく事を切望します
.

(平成23年4月2日 午後9時 執筆)

武田邦彦

« 生活と原子力02   1ミリ、100ミリ、「直ちに」の差は? | | 原発 緊急情報(45)
 迷っている人に(被曝は合計) »
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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(45) 迷っている人に(被曝は合計)

新学期が始まったり、避難生活のストレスもたまる頃。多くの人が「避難先
から帰ろうか」、「自分は良いけれど、子供が・・・」と迷う時期です.

そこで、判断のための一つの目安を書きたいと思います。

まず、「被曝は合計」ということです。

たとえば、最初の20日は九州に避難していたので、自分がいたところの放
射線が1時間に0.02マイクロシーベルトとします。

次に福島県の自分の家に帰り、そこが4月初旬に2マイクロシーベルトとしま
す。そして来年の3月12日まで福島の自分の家に住むと仮定します(式
の2番目の”4”は、空間、内部、水、食糧の4つから被曝するから。また一ヶ
月から一年までの放射線は約10分の1です).

九州での被曝  0.02×4×20日×24時間=38.4マイクロシーベルト

福島の20日   2×4×20×24=3840マイクロシーベルト

福島の後1年  0.2×4×325×24=6240マイクロシーベルト

合計      10.1ミリシーベルト

これと、次の許容値と比べると、

男性成人  限度は3ミリシーベルトだから、帰るのは少し早めだけれど、す
こし遅らせばほぼ大丈夫。

幼児    限度は1ミリシーベルトだから10倍になるので厳しい。

つまり、この人の場合、最初に避難したので、「初期被曝」が少なく、福島に
帰ってからの被曝だけが問題にあり、ちょっとまだ福島に帰るのは危険とい
う感じです.

・・・・・・・・・

それに対して今まで福島にいて、これから九州へ疎開するとすると、最初の
放射線が今の4倍として、

福島での被曝   4×4×20×24=7680

九州へ避難    0.02×4×345×24=662

合計       8.3ミリシーベルト

この人は、最初の被曝量が大きいので、その後、九州に避難してもあまり有
効ではありません。つまり、最初の例では福島にほぼ1年生活ができるのに、
この例では、ほぼ1年間、九州に疎開しなければなりません。

放射線は漏れた直後が高いので、すぐ避難すると合計が少なくなります. 

このことは、放射線の事故は「初期被曝を避ける事」が大切で、責任ある人
や専門家は、危ないかどうか判らないときには「危ないかも知れないからす
ぐ避難した方がよい」と呼びかけるのがいかに大切かを示しています.

つまり、今回、政府や専門家はなにを大きく間違ったかというと、「被曝は
足し算である」、「最初の被曝が大きい」という原理原則を理解していな
かったことです.

ムダでも最初は逃げろ!が原則です。最初のタイミングに「安全」は禁句で
す.

・・・・・・・・・

最初の段階で避難している人は、初期被曝が小さいので、ご自分のいたとこ
ろの放射線量を調べ、そこにいたときの時間をかけると自分が被曝した量が
わかり、今後「どのぐらい被曝する余裕があるか」を計算することができま
す。

おそらく初期に避難している人は福島県を別にすると帰ることができる人が
大半と思います.

初期に避難できなかった人は、慎重に計算してください。
・・・・・・・・・

つまり、自分が被曝する量は計算できっちり計算ができますので、計画的に
生活をすることができます.

なお、完璧にマスクをして、水もペットボトル、食材も完璧に注意したとい
う人は(×4)が要りません。またマスクはしなかったけれど、水と食事は注
意したという人は(×2)です。

・・・・・・・・・

また、幼稚園や学校の先生は児童生徒の被曝量を計算して、登校させて良い
かを決めてください。なお、屋外で運動をさせるとさらに(×2)をしてくだ
さい。

学校の先生で、「100人の児童生徒さんで1人ぐらいガンがでても良い(京
都大学、長崎大学の教授の基準)」とご判断される先生は、政府の方針に従っ
て1年100ミリシーベルトを限界としてください。

学校の先生で、「少し厳しいけれど、なにしろ放射線だから法律に従っ
て1年1ミリシーベルトにしてあげたい」と思う方は、1ミリシーベルトを越
える可能性があれば登校は自粛してください。

どちらをご選択したかを保護者の方に通知した方が良いでしょう.そうすると
保護者は子供を学校に行かせるかどうかが決まります. 児童生徒の健康と運
命は先生だけで決めることはできません.

また、給食にだす食材は「地産地消」などと「危機がないときの方針」を捨
てて、児童生徒の被曝をできるだけ避けるように産地を選んでください。た
とえば野菜が「規制値に達していない」と言っても、このような時には児童
生徒はいろいろなものから被曝しますので、できるだけ避けてあげたいもの
です。

(平成23年4月2日 午後11時 執筆)

武田邦彦
« 教育関係者に訴える! 今すぐ、立ち上がってください!! | | 生活と原子力03  放射
線と人間の細胞(その1) »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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生活と原子力03  放射線と人間の細胞(その1)

(基礎的なことですが、これから放射性物質と長いつき合いになるので、人
間の細胞と放射線について少し解説をしておきます。)

生命をもった生物がこの地球に誕生したのは今から37億年前と言われていま
す。しかし生まれたての生物にはとても辛いことがありました。

それは、空から放射線がものすごく降って来るからです. 

最初の生物は海の中で誕生しましたけれども、その生物が海水面に上がって
くるとすぐガンになって死んでしまったのです。

その原因は太陽にありました。太陽というのは核融合をしている「裸の原子
炉」ですから、そこから強い放射線が地球に降り注ぐいたのです。

しかし生物は太陽の光がないと生きていけませんので、(意識があったかど
うかは別にして)チャレンジ精神の旺盛な強い生物は危険をおかして海水面
に上ろうとしたのです。

できるだけ多くの太陽の光を浴びようとすると、降り注ぐでくる放射線を守
ることが必要になります。このことから生物には、放射線に対する防御能力
が発達しました。

原始的な動物にも放射線に対して防御する力が強いのはこのような歴史的な
経験からです。

・・・・・・・・・

もし、そのままであれば地球上には、今のように多くの生物が住むことはな
かったでしょう。しかし、今から約15億年程前、生物が吐き出した酸素が上
空に上り、成層圏でオゾン層を形成したのです。

このオゾン層は、太陽からの放射線をほとんどシャッタアウトするという性
質を持っていました。

その後、不運なことにしばらく地球が寒冷化したので、生物はそれほど繁殖
しませんでしたが、今から6億年程前に地球が暖かくなると、放射線は来ない
し、気温は温暖化したので生物が急激に繁殖します。

その末裔が今の人間です。

そして、人間が最も放射線に対する防御も発達しています。なお、夏の海水
浴で真っ黒に日焼けするのは、「波長の長い放射線」でそれに対する防御も
人間はとても進んでいます。

・・・・・・・・・

わたくしは長く人間や生物、またプラスチック(高分子)等の材料の劣化の
研究をしてきました。プラスチックと人間というと大きく違うように思いま
すが、石油は大昔の生物の死骸なので、石油から作ったプラスチックは人間
の体と非常に似ているのです。

一つの例を挙げますと、人間の女性の足を作っている筋肉は「ポリアミド」
という高分子ですが、女性が使っているストッキングは「石油からできたポ
リアミド」です。

つまり、ストッキングをはいている女性の足は、ポリアミドでできた自分の
筋肉の上に、これもポリアミドでできたストッキングをはいているのです。

つまり、人間や生物の体の材料とプラスチックはほとんど同じもので、わた
くしは長い間、「人間の体のように、自分で自分を修繕するようなプラス
チック」(自己修復性プラスチック)を研究していました(詳しくは私の研
究が雑誌「ニュートン」に2度ほど紹介されていますので、それをご参照く
ださい)。

わたくしが原子力の研究をしていた頃、重要な研究テーマの一つは「放射線
で材料が劣化しないこと」でした。その研究の過程で人間の細胞はなかなか
放射線で死なないこと、その修復はどのようなメカニズムであることを知っ
たのです
.

・・・・・・・・・
このブログでも書いていますように、わたくしは放射線に対して従来から
「規制値が厳しすぎるのではないか」ということを発言してきた一人です。

それはわたくしが人間の細胞と放射線の関係を調べてみると、人間の細胞は
修復力が強く、放射線でダメになってもすぐ修繕するからです。

でも、わたくしは「放射線と細胞」というある一面からしか研究していない
のですが、放射線に関わる多くの専門家は「放射線と身体」の総合的な関係
を研究されておられるからです。

例えば、10万人の集団がいて、ある量の放射線を浴びるとどのくらいガンが
発生するかという統計的な研究や、また医学的にある放射性物質が体に入っ
た時にどのような作用するかということも詳しく調べられています。

・・・・・・・・・

原子力の分野では、日常的にも放射線と体への影響というのは議論になりま
す。そしてその中にはいろいろな専門の先生がおられますから、それぞれの
研究分野で見方が違います。

わたくしのように「放射線と細胞の劣化」ということを研究してる人は、放
射線で細胞が劣化しても回復力が強いから大丈夫ではないかという感触を
持っていますし、また現場のお医者さん等は放射線で障害を受けた人を治療
しておられますから、やや慎重であるというだ傾向があるからです。

こう言った議論を通じて最終的にはある規制値が決まってきます。それが現
在の1年間で1ミリシーベルとまでは大丈夫だという規制値になっているで
す。

・・・・・・・・・

福島原発の事故が起こっても、私は人間の細胞は放射線に対する防御に優れ
ているので、そう簡単にやられないと思っています。でも、それは「免疫力
が強く、栄養のバランスがとれて、休養が十分」という条件が必要です。

しかし、人間はそのように元気な人ばかりではありません。赤ちゃんや病気
がちの人もおられますので、やや規制値は低くなりがちです。

人間の体というのは本当に複雑なので、「わたくしが大丈夫だから、あなた
も大丈夫」ということにもなりませんし、一方では、強い放射線を浴びても
あまり病気にならない人もいます。

機会がありましたらもう一度、人間の細胞が放射線のダメージからどのよう
に立ち治っていくかということも解説していきたいと思います。

もちろん放射線に被爆して体が痛むというのは、「病気」の一種ですから、
できるだけ栄養を取り、休養を十分にとり、そして免疫力をつけることが放
射線に対して体を守る一つの方法であることは間違いありません。

(平成23年4月3日 午前8時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(45) 迷っている人に(被曝は合計) | | 原発 緊急情報(46) 「風
評被害」を学ぶ »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(46) 「風評被害」を学ぶ

NHKは2006年4月16日(日) 午後9時から9時49分に総合テレビで「汚さ
れた大地で∼チェルノブイリ 20年後の真実∼」という放送をし、今でもN
HK ONLINEで見ることができます。

そこでNHKは、

「史上最悪の原発事故からこの4月で20年、人々の苦しみは続いている。
というよりむしろ悪化している。ウクライナにある、放射線を浴びた人々が
集まって暮らすアパートでは、がんなどの重病患者が増加、毎週のように死
者が出ている。さらに大量の放射性物質がまき散らされたベラルーシでは、
ヒロシマ・ナガサキでは否定された「遺伝的影響」が報告された。

(中略)

「いまだわからないことばかり」とも言われる放射線の人体への影響。広島
の医師や研究者も加わって、暗中模索の事実解明、因果関係の究明が続けら
れている。」

(本来は著作権がありますのでNHKに断って載せなければなりませんが、
日本人の命に関わる事ですから、ご勘弁ください.)

・・・・・・・・・

一方、福島原発の事故が起こった後、 NHK は「このくらいの放射線なら大


丈夫だ」という放送を繰り返してきました。

それも政府コメントの紹介に止まらず、アナウンサーが自ら比較的大きな声
で「安全です」を繰り返してきたのです。

昔から NHK は受信料を強制的に取る国民的放送ですから、多くの日本人は


自分が受信料を払っている NHK のアナウンサーは自分の味方で本当のこと
をいうというように思っています。それを利用した行動でした。

さらに、福島原発の近くの海から規制値の3355倍の放射性要素が、それた
ときに、「健康に影響はありません」という保安院のコメントだけを紹介
し、このような高濃度の放射性要素が健康に影響を及ぼすという考えの人の
コメントは出しませんでした。

つまり NHK は片方では「チェルノブイリの放射性障害が考えていたよりも


はるかに大きい」という放送をし、片方で「福島原発の放射性障害はほとん
どない」と言ったのです。

しかし、海外の多くの報告が示すように、今回の福島原発の事故はチェルノ
ブイリとほとんど匹敵するような放射性物質を出していることがわかってい
ます。

もう一つ問題なのは、 NHK 自体がチェルノブイリについては「放射線によ


る人体への影響はまだわからないことばかり」と放送したのに、福島原発が
起こると「安全です」という確定的なことを言うという違いは極めて大きい
こと感じます。

・・・・・・・・・

わたくしは、数年前、風評被害を専門とする社会学者に教えを受けたことが
あります。その人は若い人でしたが、非常に専門的で立派な学者でした。彼
の話はとても複雑でしたが、簡単に言うと、

「風評被害というのは、正しい情報を伝えないことによって起こる」

ということでした。そしてその理由は、

「人間は自分の身を守ろうと考えるので情報が不完全な時は、余計に不安に
なって慎重な行動になる」

ということでした。豊富な例を示していただき、わたくしはそのことを強く
覚えています。

つまり「風評被害」というのは「悪いことでも異常なこともなく」、情報が
不足した時に起こる「正常な人間の社会活動」ということです。

だから、風評被害をなくすには、一にも二人も人間が自分を守りたいという
本能に適した「正確な情報を提供する」ということなのです。

・・・・・・・・・

2011年4月3日(日曜日)の朝、わたくしは NHK のニュースを見て、福島


県の農家の人が本当にかわいそうになりました。

放送では、福島県の野菜を何とかして売りたいと思っている農家の人が、ト
ラックに新鮮な野菜を積んで東京に運び、そこで2割引で野菜を売っているの
です。

農家も NHK も「この野菜は安全です」というの強調していました。それを


見て、わたくしは本当に福島県の農家の人がかわいそうになりました。

というのはこのようなNHKの放送こそが、福島県の野菜に対する風評を強
くして、野菜が決定的に売れなくなってしまうからです。

・・・・・・・・・

人間はバカではありません。そして現在のようにある程度の情報が提供され
ていればそれに基づいて自分の身や自分の子供の事を守ろうと考えるのは当
然のことです。

福島原発から出た放射性物質が、空中にあたかも花粉や黄砂のように飛び、
それが地上に落ちます。

地上に落ちたり、壁についた放射性物質からわたくしたちの体が被爆しま
す。その値はNHKで毎日報告されていて、福島県ではおよそ数マイクロ
シーベルに及びます。

ということは、会津地方は別かもしれませんが、福島県全体としては放射性
物質が常に降っているわけです。このことはほとんどの日本人が知っている
と思います。

つまり福島県の農家には大変に申しわけないのですが、野菜には放射性物質
が付着していると考えるのが「常識」なのです。そうなると、規制値と比べて
どのぐらい低いのかということが、大切で消費者の知りたいことです。

例えば、規制値が300ベクレルの時に、野菜についている放射性物質
が200ベクレルなら、多くの消費者は買わないでしょう。20ベクレルなら買
うかも知れません。数値がなければ判断できません。

また、普通の時ならば、周りに放射性物質がないので、あるいは規制値以下
であれば野菜を購入する人もいるかもしれません。しかし現在では、空間か
らの放射線、自分が吸い込んだ放射性物質、水食品等の汚染があるのですか
ら、よけいに慎重になります。

このような時に自分や自分の家族を守ろうとしたら、「放射性物質がついて
いる野菜よりも、放射性物質がついてないものを買いたい」と思うのはごく
自然のことです。

もし、福島県の農家の人が福島産の野菜を売ろうとするなら、「この野菜は
規制値の何分の1の放射性物質がついています。もしもそれで良いなら買って
ください」とお願いするのが良いと思います。

つまり野菜を売るということは、人の口に入るのですから、十分に情報を出
して信頼を得て、野菜を売らなければなりません。

そうしないと風評被害はさらに拡大すると思います。

わたくしは息を詰めて放送を見ていました。しかし NHK は最後まで「安全


な野菜だ」というのを繰り返し、「福島県の農家を応援したい」という人を
紹介していましたが、野菜がどのくらい汚染されているかということは全く
触れませんでした。

・・・・・・・・・

それに福島県の農家に打撃を与えたことがあります。

1) 政府が「野菜の放射線を測定するときには、「出荷のまま」ではなく、
良く「流水」で洗ってから測定しろ」という通達を出したことです。
これによって消費者は「表示されている放射線量はインチキだ」と確信
しました。
消費者は販売されている状態の野菜についている放射性物質の量を知り
たいのに、測定する野菜だけを綺麗に洗ったら判らなくなるからです。
しかも政府の通達ではご丁寧に、かならず「流水」で洗うように指導し
ています.
こうなると消費者は「数字は当てにならない」ので、「産地で判断す
る」ことになります。政府が作り出した風評です.
2) 城県知事や福島県知事が「野菜の出荷基準を高くしてくれ。そうしな
いと農家が困る」と陳情しました。
「高い放射線の野菜を出荷しないと農家が困る」という理由ですが、つ
まりはこれを消費者から見ると、「 城県や福島県の野菜を買うと、余
計に被曝する」ということを意味します。
もしこれが農家の要望を知事が受けたのだとすると、 城県と福島県の
農家は自分の収入を得るために消費者に、今のように被曝に神経質に
なっているときに、これまでの基準値以上の放射性物質がついた野菜を
食べさせることになりますから、不信感は決定的でしょう.

福島県の農家は被害者です. でも、放射性物質が空から降って来るのは事実
で、それを日本人は知っています.だから、方針を転換する必要があります。

政府やNHKの言っている「風評」の宣伝にのったら、農家の人は本当に困
ることになるでしょう。

「風評」は情報操作などによって発生する正しい社会の反応なのです.

(平成23年4月3日 午前9時 執筆)

武田邦彦

« 生活と原子力03  放射線と人間の細胞(その1) | | 原発 緊急情報(47) 汚染・6
日に日本全土に拡がる怖れ »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(47) 汚染・6日に日本全土に拡がる怖れ

ドイツの気象サービス及びノルウェーの発表では、4月5日から7日にかけ
て、福島原発からの風が一旦、南に行き、四国・九州にまで南下し、そこか
らさらに偏西風で日本列島を縦断して、北海道に達する上ると予想されてい
ます。

この図はドイツ気象サービス(DWD)の
シミュレーションで、日本で4月6日頃に
あたります(あまり時間は厳密に考えな
い方が良い)。

パソコンで図を見ることができない人が
おられますので、文章でも説明します
と、福島から一旦、太平洋に出た汚染物
質は、その後、東風でぐるっと回って日
本の房総半島、静岡、四国、九州とまわり、山陰から福井まで達します。

つまり4月6日頃を中心にして初めて福島原発の汚染物質が西日本を汚染する
可能性がありますので、注意が必要です。

次に示す図はノルウェーのシミュレー
ションであり、上のドイツの気象サービ
スのデータから約1日たった状態です
(7日ぐらい)。

一旦、日本の西日本に到達した福島原発
からの放射性物質は、その後、偏西風に
乗って北に進み、日本列島を縦断して北
海道まで達すると予想されている。

この頃、新たに福島原発から放射性物質が漏れれば、それもともに北海道の
東海岸に到達すると計算されています。

このシミュレーションの結果は、あくまでもドイツとノルウェーの結果で
あって日本の気象庁の予想ではありません。

日本の気象庁は、現在のところ福島原発の放射性物質がどのように飛散する
かの予報を出していません。花粉予想や噴煙の予想は気象庁の役割でありま
すが、どうやら放射性物質を飛散については気象庁の役割範囲にはないそう
です(税金は?)。

いずれにしても、できるだけ多くの情報を集めて、私たちと家族の安全を守
りたいと思います。

ドイツとノルウェーの情報が、どのような基礎的なデータに基づいているの
かわからないので、ここでは日付もはっきりとは示していません(もとデー
タは時間もハッキリ示してありますが、それほど精度が無いと思うので、
「絶対にそうなる」と断定的に考えないでください。

しかし、私たちにとって重要な情報であることは確かです。この情報に基づ
いて、

「もしかすると、西日本もしくは日本全体に放射性物質が飛散するかもしれ
ないので、4月5日から7日ぐらいにかけて、外出を避けたり、マスクをす
る、子供を外で遊ばせない、家の戸締りをしっかりするという対策を取って
おく。」

と考えてください。

ドイツとノルウェーの予想が外れるかもしれません。外れたら申しわけない
けれども、それは仕方がないので、その時は、多少無駄な時間を過ごしてし
まったと思ってください。

・・・・・・・・・

ところで現実に九州まで放射性物質が飛んで、例えば鹿児島が1時間当た
り1マイクロシーベルとまで放射性物質が上がり、それが1週間続いたとしま
す。

その場合の被ばく量は、
1×7×24=168マイクロシーベルト

で、今回限りであれば、長期的にも、赤ちゃんにも、妊婦にも問題はない。

(注)さらに詳しい計算(鹿児島の人の1年間)

168+(0.05*358*24)=597マイクロシーベルト

で、今回限りであれば、累積放射線も大丈夫です
.

鹿児島が大丈夫なのは「ずっと続けて被曝する」というのが恐ろしいので、
一時的な被曝はあまり影響がないということです。

でも、被曝は少なくしておくのが良いので、自衛してください。

(平成23年4月4日 午前8時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(46) 「風評被害」を学ぶ | | 原発 緊急情報(48) なぜ、1ミリシー
ベルトが妥当か? »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(48) なぜ、1ミリシーベルトが妥当か?

1986年4月、当時のソ連のチェルノブイリ原子力発電所4号機が爆発しまし
た。

その時に、多くの放射性物質がロシアやベルラーシの人たちや大地を汚染し
ましたが、これに対して、当時の IAEA (国際原子力機関)は精密な調査を
行い、報告書を提出しています。

それによると、チェルノブイリ原発の事故では、

1) 放射性物質の被曝による障害者は、存在せず、

2) 将来にわたってはっきりと原発の事故の障害者であるということがわか
る人はでない、

と報告しました。

ところが、事故から5年ぐらい経つと、普段ですと1万人に1人も出ないとい
う小児甲状腺ガンが多く見られるようになりました。そのグラフを下に示し
ます。

パソコンでグラフを見ることができない
人がおられますので、文章でも説明しま
すと、1986年に事故が起こり、それか
ら4年間はほとんど患者さんは発生して
いませんが、1990年つまり事故から4年
たってこども100万人あたり20人もでま
した。

さらに、その92年には40人、94年に
は60人と増大しました。今では、チェルノブイリ原発から出たヨウ素131が
子供の甲状腺にたまり、甲状腺がんを引き起こしたということははっきりと
わかっています。

さらにチェルノブイリ原発事故から10年経った頃、今度は妊婦の体に異常が
出てきました。

すでに事故から10年たっていますので、その頃、妊娠する女性というのは、
事故当時少女だった人が多いのです。例えば12才の頃に被爆し、22才で妊
娠して異常が見付かるということが明らかになってきました。

つまり「妊婦に障害がでる」というのはわかりやすいのですが、まさ
か、10才の女性が被曝して、その少女が15年後に妊娠したときに障害がで
るなど、まったく予想ができないからです
.

チェルノブイリの事故からすでに25年を経ますが、まだこの先どのような健
康障害が出るかというのははっきりわかりません。

・・・・・・・・・

わたくしが言いたいのは、放射線で被曝すると甲状腺ガン等になるというこ
とを強調したいのではありません。ここでは、「100ミリシーベルトまで安
全」と行っておられる先生の「学問」というのはどういうものかをハッキリ
させたいのです。

なぜ、そんなことが緊急かと言うと、福島原発の事故が起こって以来、東大
教授やお医者さんが多く登場し、「心配ない、心配ない」といっておられま

.

生意気なことをいうようですが、わたくしから見れば、その東大教授やお医
者さんは「学問」の本質を理解されていないように思うのです。

普段なら、このような失礼なことや傲慢なことは言わないのですが、現在は
それが「市民の方の健康に直接関係がある」ので、あえてここでお話をした
いと思った次第です。

・・・・・・・・・

チェルノブイリの時には、すでに、広島・長崎の被曝例や、研究途中での被
曝事故等についての健康障害はかなり詳細にわかっていました。データはか
なり合ったのです
.

また、チェルノブイリ事故で健康障害が出ないという報告書を書いた IAEA
には、世界の最もすぐれた原子力及び放射線と健康に関する学者が集まって
いました。

「多くのデータ」と「優れた人」が集まって「間違った結論」を出したので

.

それではなぜ、「チェルノブイリ事故では障害者が出ない」と大きく間違っ
たのでしょうか。それは学問というものの性質に根差しています。

学問というのは「現在までの知識を精密にくみ立てて、一つの結論を得る」と
いうことを行います。従って、「厳密に正しい」ともいえるのです。だから
学者が言ったというとみんなが信用するというのがこれです。

ところが、「現在までの知識を精密に組み立てて一つの結論を得る」という
文章をよくよく見ると、「学問は真実はわからない」ということがわかりま
す。

つまり、あくまでも学問は「現在までの知識」に基づいているのであり、
「将来獲得するであろう知識」は全く入っていないのです。将来、獲得する
であろう知識というのは予想ですから、もしそれを使えば厳密な論理は展開
できません。従って学問はその性質上、現在までの知識しか使えないので
す。

これがチェルノブイリの時の IAEA の間違いの元になりました。つまり、そ


れまでの知識によると、チェルノブイリ原発の事故によって、小さい子供が
甲状腺ガンになり、将来の妊婦に異常が起こるということはわからなかった
のです。

・・・・・・・・・

本当の学者というのは、「学問は真実がわかっていない」ということをわ
かっているということです。

これを今回の福島原発に当てはめますと、たとえば、「これまでの研究によ
れば、100ミリシーベルとの被曝を受けても大丈夫だ」とある学者の研究で
明らかになっていても、それは現在の知識に基づく仮の学問の結論であっ
て、おそらくは正しくないということなのです。

また、「100ミリシーベルとの被爆を受けると、1000人のうち、5人か
ら10人が放射線によるガンになる」という事実も、また同時に学問的データ
なのです。

このようなときに、「学問」の本質が判っている学者はどういうふうに発言
するでしょうか。

「学問的に、わたくしの研究では100ミリシーベルトぐらいまでは大丈夫だ
と思います。しかし一部に、100ミリシーベルトを浴びると1000人の内
に5人から10人の人がガン(過剰発がん)になるという結果もあります。

もともと学問は、真実が判っているわけではないので、皆さんはできるだけ
放射線に被曝しないように気をつけてください。

学者は新しい知見があれば論文を出すことができますが、皆さんの健康は損
なわれると元に戻ることはできません。従って、国際放射線防護委員会で決
められたように安全という意味では、「1年間に1ミリシーベルト」を目安に
生活設計をされた方がよいと思います。

お役所も市民を守るのが役目ですから、法律に基づいた値で市民の健康を
守ってください。」

今、福島市で行われていること、学問的に言えば「人体実験」ということが
できます。つまり学問は「100ミリシーベルトだから大丈夫だ」ということ
を断定的にいう事ができないのですから、学者が自分の判断で勝手に被曝量
を決めるということは、学問の本質に反することなのです。

福島市から被曝による過剰発癌がでなければ良いことなのですが、もし過剰
発癌が発生したら、それはちょうどチェルノブイリのときのように、「学者
が新しい論文を書くことができる」という結果になり、市民は過剰発癌で苦
しむことになるからです。

学者は常に「自分たちにはわからないことがある。だから研究をしている。
自分たちが今、正しいと思っていることは、将来の研究によって覆される」
と思っているはずなのです。
私たちは自衛しなければならないのです。

(平成23年4月4日 執筆)

武田邦彦

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原発 小さな疑問 その2  福島は足し算、大阪はそのまま

放射性物質で自分や自分の家族がどのぐらい被曝しているか、移動したらど
のぐらいになるかの計算で、「足し算」を間違っている人が多いようです
.

間違いの原因はテレビでNHKなどが「足し算」をしないので、見ている人
が間違えます。

簡単に言うと、

1) 原則として、汚染は「足し算」

2) 福島など汚染地域は「足し算」

3) 大阪のように汚染していない地域は足し算をしなくて良い、

ということです。

まず、「原則として足し算」とは、

1) 福島原発からでる「危険な放射性物質」はヨウ素だけではない.というこ
とです。最低でも、ヨウ素(半減期8日)、セシウム(同30年)、スト
ロンチウム(同30年)はありますし、そのほか、皆さんが心配してい
るプルトニウム(長い半減期)があります。それを足さなければなりま
せん
.

2) 自分の体に入るルートは、1.空気から、2.吸い込んだり着いたり、
3.水、4.野菜、魚など の4つのルートがあります。
福島の人:全部だから4倍にする、
大阪の人:今のところ2から4がないので、そのまま

テレビでは簡単に言うと「ウソ」を言っています.だから混乱します.たとえ
ば、昨日、東電が海に汚染水を放出したときに、「たいした事はない.魚を食べ
続けてもヨウ素は0.6ミリシーベルトにしかならないので、一般人の限度1ミ
リシーベルトより小さい」と言いました。
真っ赤なウソです。そんな言葉を使いたくないのですが、私はビックリ、がっ
かりしました。

次の足し算がないのです。(福島県の人)

空間からのヨウ素の被曝    ?ミリシーベルト

空間からのセシウム被曝    ?

空間からのストロンチウム   ?

体の中のヨウ素の被曝     ?

体の中のセシウム被曝     ?

体の中のストロンチウム    ?

水からのヨウ素        ?

水からのセシウム       ?

水からのストロンチウム    ?

野菜魚からのヨウ素     0.6ミリシーベルト

野菜魚からのセシウム     ?

野菜魚からのストロンチウム  ?

(合計)      {0.6+(?×11)}ミリシーベルト

ということです。

つまり、東電の専門家はもちろん、この最低でも(プルトニウムなどを考え
なくても)12ヶを足さなくてはいけないのに、意図的に0.6だけを言ってい
るのです
.

福島に住んでいる人で、{空間から放射線を受けず、息をせず、食物を食べな
い人}はいるでしょうか? それを一つずつしか言わないで数字を小さく見
せようとしています
.

足し算だから、私が「少しでも安全なものを食べた方が良い」と言うのは、
現在のように、空気も野菜も魚も水も汚染しているときには、一つ一つ
は0.6ミリシーベルトでも、それを12倍すると7.2ミリシーベルトになるか
らです。

「この期に及んで何をやっているのか!」

としかり飛ばしたい気持ちです
.

でも、このブログでは、上の全部を計算するのは普通の場合はできないの
で、福島、 城にお住みの場合は、空間の放射線量に4をかける。東京、千葉、
宮城、会津若松などの場合は、2をかける。それ以外のところは、当面、その
ままという計算式を出しています
.

それなら計算ができると思いますが、テレビには注意。

・・・・・・・・・

大阪の人は大丈夫です. 自然放射線以外には汚染されていませんから、もと
もと足し算自身が不要なのです。

また、ウランの核分裂反応については機会があったら、できるだけ早く出し
ます
.

(平成23年4月5日 午前9時 執筆)

武田邦彦

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感謝

多くの人のご努力のおかげで、

1) 気象庁が計算していた「福島原発からの風の動き」が公表されるように
なりました。これで、遠くの人も風が来なければ安全です. これまで
ドイツ、ノルウェーの人に感謝したいと思います.

2) NHKが「1年に100ミリシーベルトまで安全」というのを止めて、
「1年に1ミリシーベルトが一般人の限度」と言い始めました。1年
に100ミリシーベルトとは、放射線で日本人が5000人のガンを出す量
ですから、到底、納得できません.

3) 学校が校庭の汚染を測り始めました。子供の健康は親が責任を持たなけ
れば子供はなにもできません。ずいぶん、活動がありました。

放射線防護は「最初、3月12日から」がもっとも大切だったのですが、その
頃に「安全だ」と言い、放射線が下がりつつある時に「危険だ」というのは放
射線防御の専門家ではないのですが、今からでも何とか防御することができ
ます。

また、海が汚染され始めましたが、海流の動きに注意しなければなりませ
ん。調査が進んだら、順次、出していきます.

福島県以外の場合は、魚はまだ買うことができると思いますが、最初が危険
です.

(平成23年4月5日 午前9時 執筆)

武田邦彦
« 原発 小さな疑問 その2  福島は足し算、大阪はそのまま | | 生活と原子力04  法
律とその基準 »

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生活と原子力04  法律とその基準

(詳しく知りたい人に)

少し落ち着いたら放射線の被曝の基準について、法律という面から整理をし
ようと思っていましたけれども、なかなか福島原発が落ち着かないので、放
射線の被曝についての法律の話をしておきたいと思います。

放射線の被曝に関する基本的な日本の法律は、「原子力基本法」です。昭
和30年にでき、最後の改正が行われたのは平成16年です。

第1条の目的には、「この法律は、原子力の研究、開発及び利用を推進するこ
とによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振
興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与すること
を目的とする」とあります。

きちんと書いてある目的の条文ですが、どちらかというと原子力を利用する
側に重点が置かれているような気もします。

また、放射線による障害の防止として、第20条に「放射線による障害を防止
し、公共の安全を確保するため、放射性物質及び放射線発生装置に係る製
造、販売、使用、測定等に対する規制その他保安及び保健上の措置に関して
は、別に法律で定める」とあります。

この法律を受けて、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法
律」という やや長い名前のついた法律があり、昭和32年に制定され、最終
の改正は平成22年5月です。つまり昨年の5月に最終的な改訂が行われてい
ます。

この法律は基本的なことが書かれていますが、あまり数量的なことは示され
ていません。この法律のもとにさらに「放射性同位元素等による放射線障害
の防止に関する法律施行令」、「放射性同位元素等による放射線障害の防止
に関する法律施行規則」、「放射線を放出する同位元素の数量等を定める
件」があります。

名前を見るだけで嫌になってしまうような長い名前の法律や規則です。数量
を決めるのは最後のもので、ここには後に整理をする厚生労働省と同じ数値
が乗っていますが、ただ、排水、排気の基準のところに、規則第19条があ
り、線量限度として「1年間に1ミリシーベルト」とあります。これが「公衆
が安全な線量」とされています.

条文に明記されていないのは、「公衆の限度を越える事態」そのものの概念
がないからです.つまり人工的に放射線や放射性物質を出す場合は、「意図を
持って出す」のであって、福島原発のように「制御できずに出す」という事
はないと錯覚しているからです.

さいす

でも、公衆の被曝限度が1ミリシーベルト(年)なので、最終的にはこの数字
がチラチラと出てきます.

・・・・・・・・・

次に、厚生労働省の管轄である「労働者の保護」を目的とした放射線障害防
止規則を説明しておきたいと思います。

文部科学省の法律と厚生労働省の法律は同じ日本国のものですから、わずか
なところは違いますが基本的には同じ構造と数値でできています。

厚生労働省の法律では、「労働安全衛生法」がまずあり、その下に「労働安
全衛生法施行令」があり、さらにその下に「電力放射線障害防止規則」があ
ります。この規則は、昭和47年に制定され、最後の改正は、平成23年1月で
すから、今年の1月に最終的な改正が行われています。

この規則は、労働者を被爆から守るわけですから第1条の目的には、「事業者
は、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めな
ければならない。」とあります。

しかし、他の法律で決められている数値も同じです.それは労働者と一般人は
同じ人間だからです。

規則の構造を説明しながら数値を示していきます。
まず重要なのは「管理区域」の概念です。つまり放射線の被曝を減らすため
には、日本中どこでもかしこでも注意するわけにいかないので、ある放射線
を超えるところだけ「管理区域」として決めるという考え方です。つまり、
第三条では、

一  外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合
計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域

二  放射性物質の表面密度が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えるおそ
れのある区域

となっています。

まず、最初の数値は3ヶ月で1.3ミリシーベルトですから、福島原発でマスメ
ディアが使った1時間あたりの放射線量で言えば、0.6マイクロシーベルトに
なります。

福島原発から放射線が漏れ福島市の1時間あたりの放射線量が20マイクロ
シーベルトになったときに、わたくしはびっくりしました。

私が放射線と健康についてどう考えているかどうかは別にして、法律で管理
区域が0.6マイクロシーベルと以上となっているときに、その30倍もの放射
線量が、普通のところ=福島市全体、におよんだのです。

私は、福島市長が直ちに福島市を管理区域にして市民を守ると思っていまし
たが、事態はは全く逆になり、またびっくりしました。

また、表面汚染ですが、ここで言っている別表第3には、「アルファ線を出す
もの:1平方センチメートルあたり4ベクレル.アルファ線を出さないも
の40ベクレル」とされています。

3月31日、IAEAが飯舘村の土壌表面で1平方メートルあたり200万ベク
レルを観測しましたが、1平方メートルは1万平方センチメートルですから、
別表第3の単位では200ベクレルになり、これも管理区域の指定が必要です.

・・・・・・・・・

管理区域の設定が終わると、

1) 仕事の男性   年間20ミリ(1時間2.3マイクロ)
2) 仕事の女性   3ヶ月5ミリ(1時間2.3マイクロ)

3) 妊婦(内部)  妊娠中1ミリ(1時間0.2マイクロ)

です。労働者を対象としているので、一般公衆を明記していないが、一般公
衆には妊婦もいるので、おおよそ1年1ミリシーベルトに合わせてあります.

・・・・・・・・・

最後にICRP(国際放射線防護委員会)との関係について整理をしておき
ます.

ICRPは1990年に一般公衆の線量限度を1ミリシーベルト(年)と勧告を
しました。これについて、日本の国内法にどのように盛り込むかについて、
審議委員会は次のように要望を出しています.

「現行の施設基準を変えない事とし、管理区域の外側の一般人の被ばく線量
が1年当たり1mSvを越えないよう管理を行う。、

 ・現状の各施設における管理区域境界での線量の実測値と管理区域外側の
一般人の滞在時間を考慮すると大部分の施設は年間1mSvを超えない。

 ・したがって「施設基準は現行もままとし、管理区域外側の一般人の滞在
時間等を考慮し年1mSvを超える場合には『特別に管理する区域』を設ける
ことによって、基本部会案と同等の安全対策を取ることが出来る。」と考え
られる。

 ・管理区域境界において線量を連続モニタリングし、実測値を短時間例え
ば1ヶ月毎に点検することにより、状況に応じて管理区域の外側にさらに特別
に管理する区域を設定すること等によって一般人の被ばく線量が年当た
り1mSvを越えないようにすることは容易であると考えられる。」

つまり、直ちに明文化するのではなく、実質的に1ミリシーベルトを越える怖
れのあるところを注意していきたいということです。

1990年勧告を受けて、放射線の専門家はみんな1ミリシーベルトで動いてい
たのに、福島原発で真逆のことを言われたので、私はビックリしました。

なお、政府の原子力データの管理機関「高度情報科学技術研究機構」では、
そのホームページに、

「線量目標値は、日本の原子力発電の主流を占めている発電用軽水炉につい
て、ICRP(国際放射線防護委員会)のALARA(合理的に達成可能な
低減)の精神にしたがって、放出放射性物質による周辺公衆の被ばく線量を
合理的に達成できる限り低く保つための設計及び運転管理の目標として、定
められた(原子力安全審査指針)ものである。

その値は、実効線量当量で、年間50μSvで、一般公衆に対する線量限度の
1/20で、地域による自然放射線からの線量当量の変動の巾より小さい。
実効線量当量は、気体廃棄物中の希ガスによる外部被ばく、ヨウ素の摂取に
よる内部被ばく、液体廃棄物に起因する海産物摂取による内部被ばくの合計
で評価する。」

とあり、一般公衆の線量限度が1年で1ミリシーベルトであること、普段
は1年間でその20分の1の50マイクロシーベルトを目標にすることが明記さ
れています.

ICRPは「線量限度」(我慢できる限度)を1ミリシーベルトにして、原子
力関係者に「努力目標」を求め、それが日本では50マイクロシーベルト
(年)でした。

福島原発の最初のころ、1ミリシーベルトを「単なる目標値」と発言した専門
家は深く反省してください。

(平成23年4月5日 午前9時 執筆)

武田邦彦

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生活と原子力05  放射線と人間の細胞(その2) どのぐらい
まで安全か?

メールでご質問を受ける多くの方の関心は、「どのくらいまで放射線を浴び
ても大丈夫だろうか」、「関西にもかなり長くなったので、いつ頃帰ったら
いいだろうか」というのが多いようです。

被曝量は一応計算しても、それがどのくらい自分や自分の子供に影響がある
かがはっきりわからないと決断ができないからです。

申しわけないのですが、お1人お1人の被曝量を計算して大丈夫かどうかア
ドバイスをすることが時間的にできなくなりましたので、できるだけわかり
やすく、現状を踏まえてここでご説明します。

・・・・・・・・・

混乱の第一は、政府の発表がムチャクチャだったことです。

それはもう忘れていいのですが、わたくしたちの心の中に引っかかっている
ので、一応、復習しておきます。政府などの発表は、

「基準値の1ミリシーベルトは単なる基準値で健康には関係がない。100
ミリシーベルトまで大丈夫である。」

「100ミリシーベルトを浴びても、1000人に5人ががんになるだけで
ある。」

「基準値の3355倍でも直ちに健康に影響を与える数値ではない」(その
後、発電所からの排水は基準値の1億倍までなりました。)

などです。

これらの政府や専門家の発言が矛盾していることは放射線と健康の関係を知
らない人でもわかるので不安に陥るのを当たり前のことです。

そこで、一旦すべてを忘れて基礎から整理をしたいと思います。

・・・・・・・・・

頭に入れとかなければならないのは、次の数値とその意味です。

1) 1年間に50マイクロシーベルト
極端に低い数字ですが、これもはっきりとした根拠があります。例え
ば、今まで日本の原子力発電所が発電所の敷地との境界ではこのくらい
まで下げておこうと政府、電力会社、そして専門家が言っていた数字で
す。
また、ヨーロッパの環境運動家を中心としたグループは国際委員会の基
準は甘いとして、おおよそこの程度の数字を出しています。
つまり「絶対に安全」といえば、1年間に50マイクロシーベルトとい
う数字もあるのですが、日本に住んでいると自然放射線でも、この20
倍以上ですからやはり少し神経質すぎると言ってもいいと思います。

2) 次の数字は、1年間に1ミリシーベルトという数字です。この数字は国
際委員会や日本の法律等で定められているものですから、基本的にはこ
の数字が一つの指標になります。
この数字を少し超す場所(5ミリ)は「管理区域」という名前で普通の
ところ特別されて標識が立ち、そこに人が入ってはいけないというわけ
ではないのですが、被曝する放射線量を測り、健康診断をするという必
要が生じてきます。
つまり絶対に病気になるということはないけれども、注意をしなければ
ならないということを意味しています。管理区域は1時間あたり0.6
マイクロですから、現在、福島県東部(郡山を含み、会津若松を除
く)、 城県北部などは確実にこの管理区域に入ります。従って、政府
のいうように直ちに健康に影響はありませんが、やはり被爆する線量を
測定したり、健康診断をして注意をするという必要があるところです。
また、教育委員会や市役所等は、政府がいくら安全だと言っても、政府
と独立しているのですから、法律的に管理区域に指定しなければならな
い状態のときには法律に従う必要があるとわたくしは考えています。
具体的には、1時間に0.6マイクロを越えるところは、学校でも市の
一部でも責任者が「管理区域」に設定するべきです.
3) 次に1年に20ミリシーベルトというレベルがあります。現在の福島市
がややそれに近いのですが、これは仕事で放射線に携わる男性の1年間
の限界です。
仕事で放射線に携わる人も一般の人も、人間は人間ですから、放射線に
対して同じ危険性を持っています。それなのに一般の人は1.0、職業
であびる人は20というのは基準が開きすぎているように感じると思い
ます。
しかしそれには三つの理由があります。
一つは、放射線の仕事に携わる人は、被爆した量をしっかり測り健康診
断をしますから、万が一のときにはチェックができるということです。
二つ目に、放射線の仕事に携わる人は、健康な成人男子ですから、一般
の人のように赤ちゃんとか妊婦、また放射線に感度の強い人等が含まれ
ていないということがあります。
放射線に携わる人でも妊娠している女性等は特別な規定で保護されてい
ます。
三つ目に、自分の意思で放射線を浴びるか、それとも事故等で自分の意
思とは関係なく放射線を浴びる場合と、差をつけるのが、防災の基本的
な原則でもあります。
例えば、ハンググライダー等は非常に危険なのですが、無理やりハング
グライダーをやらされるのではなく、自分の意思でハンググライダーを
やるので、その危険も認められています。

4) 次に、50ミリシーベルトという基準があります。
このぐらいになると、少し健康障害の恐れが出てきますので、例えば5
0になると子供は甲状腺がんを防ぐために、ヨウ素剤を服用する必要が
出てきます。

5) 100ミリになると、慢性的な疾患が見られるようになり、1000人
に5人が放射線によってガンになるという数値になります。ここでいう
ガンとは、専門用語では「過剰発癌」と言って、普通の生活でがんにな
るものを除いて放射線によってそれにプラスされる危険性を言っていま
す。
長崎大学の先生を中心にして1000人に5人ぐらいの過剰発癌は問題
がないという考えがあるのは確かです。現在の福島市は、自治体として
この考えをとっているようです。
なおこれまで非常時の作業で被曝する限界は100でした。つまり「非
常時に厳重な防護服を着て、線量計を着け、管理された状態で100ミ
リ」というのですから、それを一般市民に当てはめるのは乱暴だと私は
思います。

6) 次に250ミリシーベルトというレベルがあります。
このレベルは最近になって福島原発の作業する人の限界値になったもの
です(引き上げられた)。100と250の何が違うかというと、10
0まではガンなどの「すぐにはでない健康障害」を念頭に置いているの
ですが、250になると「急性の白血球減少」等の「直ちに影響が見ら
れる」レベルになります。
政府が「直ちに健康に影響がない」と繰り返しましたが、それはこの2
50を念頭に置いています。つまり、政府が言っている「直ちに」とい
うことは「ガンにはなるが、急性の白血球の減少は見られない」レベル
であるということになります。

このように考えますと、人によって感覚が違うので、どのレベルが「正しい
レベルである」ということは必ずしも言えないことがわかります。

心配する人は、あるいは50マイクロでも余計な放射線を浴びたくないと思
う人もいるでしょう。また楽観的な人は「1000人に5人ぐらいのガン」
なら大したことがないと思うでしょう。またお母さんで、「自分は良いけれ
ども、赤ちゃんにはそんな思いをさせたくない」という人もいるでしょう。

だから、テレビの専門家が言っていたように「わたくしは平気だ」等と言っ
ても、それはその人個人の思想であって、多くの人がどのくらいを注意しな
ければならないのかという問題とは全く関係がないのです。

・・・・・・・・・

わたくしは次のように考えました。

今回の福島原発から出た放射性物質は、今まで人間が経験したうちの最も多
いレベルですから、わたくしたちの次世代を担う赤ちゃんに影響をおよぼし
てはいけないと考えました。

そうすると、最も信頼性のある値は「1年に1ミリ」であり、それ以下なら
「安心」、それ以上なら「注意」とはっきりと意識したほうがいいと思いま
す。

これはわたくし個人の意見ではなく、国際委員会の勧告や日本の法律に明記
されていることでもあります。

・・・・・・・・・

重要なことを繰り返します。

「1年に1ミリ以内なら安心」ですから、その範囲なら心配する必要はあり
ません。わたくしのブログの読者の中で1年に1ミリ以内でも心配されてい
る方がおられますが、わたくしは1年に1ミリ以内なら心配をする必要がな
いと言ってあげたいと思います。

問題は、「1年に1ミリ以上で、20ミリ以下という被爆を受ける可能性が
ある人」です。この領域に入る場合には、「注意」しなければなりません。

この注意というのは具体的に何かというと、「赤ちゃんや妊婦の場合にはで
きるだけ移動して被曝を避ける」ということです。もちろん個人的に事情が
ありますから、なかなか難しい場合にはマスクをするとか、食材に気をつけ
る等できるだけ万全を期さなければいけないと考えています。

最近、体内の放射性物質を除くとか、特別なことが言われていますが、わた
くしはあまり信用していません。もしそのような方法があるのならば、ヨウ
素剤以外にもいろいろな防御手段がこれまでも提案されているはずだからで
す。

成人男子で元気な人は、管理区域が1年で約5ミリという数値を参考にし
て、少し健康に気をつける程度で良いでしょう。また女性の場合はいろいろ
な事情があるので1から10程度の範囲であれば、「できるだけ気をつけ
る」ということになると思います。

わたくしは最初の頃、「とにかく逃げた方がいい」と言いました。これはわ
たくしの考えではなく、放射性物質からの防御に対する基本的な考えの一つ
です。

何か事故があると、最初の放射線がもっとも強いので、それを避ければ、だ
んだん弱くなります.今度の場合、3月12日の週がもっとも放射線量が多
かったので、とにかくその時期は「逃げろ!」ということなのです。
経済的な負担などがありますが、逃げておけば安心ですし、「年間の被曝
量」は決まっていますから、最初に被曝しなければ、後で余裕がでます。

また、野菜、水、さらに魚などは、最初の時期の汚染が「拡がってから」にな
りますから、2週間とか1ヶ月が注意のしどころです。

・・・・・・・・・

このようなことを考えますと、

1) 最初に逃げる時期は終わりつつある(福島原発は、これまでのチェルノ
ブイリなどと違い、まだ少しずつ放射性物質がでているので「できれば
連休明け」ということになります)。

2) 野菜、水も少しずつ安全になってきている。ただし魚はこれから。ま
た、西日本にも徐々に拡がるが、汚染のレベルは数ミリを超える事はな
い。

3) 今後は「汚染された土地で農業や酪農ができるか」、「最初に被曝した
人は、それを背負って1年間の被曝を考える」、「魚を買えなくなる時
期が本当に来るのか」などが問題になってきます。

・・・・・・・・・

ところで、読者の方からの情報によると、福島県は、

「○飯舘村(飯舘村役場)平常値:-測定値:6.14マイクロシーベルトで、
 胃のX線集団検診1回当たりの放射線量は、600マイクロシーベルト/回
ですが、本日の測定値のうち、最も高い飯舘村の測定値は、これを十分下
回っており、健康に影響ないレベルと考えられます。」

と(厳しい言い方では)犯罪にもなることをホームページに掲載しているそ
うです。

1時間あたり6.14マイクロシーベルトとは、すでに事故から1ヶ月程度
になりましたので、1ヶ月で4.4ミリですから、胃のレントゲン7回分で
す。しかも赤ちゃんや妊婦が「腹部の防御もなく」です。

さらに一年では54ミリになりますから、これは「ヨウ素剤服用」のレベル
です。「安全」ではなく「危険」です。福島市は直ちに管理区域に指定して
県民を保護すべきです。

また横浜市は放射線物質の少ないとされる海の傍の地上から離れたところで
測定しているようですが、やはり多くの人がそのまま参考になるような場所
で測定するか、その旨を記載しておく必要があるでしょう。

自治体は市民の命を守るのですから、「放射線物質を少なく見せて、仕事を
減らそう」などと考えずに、「やや放射線量の多い低い屋外で測定する」とい
うことを御願いしたいと思います
.

(平成23年4月6日 午前9時 執筆)
(なお、携帯でご覧になっている人から「全角の数字でないとみずらい」と
のご指摘があり、全角で書いてみました。

武田邦彦

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原発 速報  風は太平洋に

今日、4月7日の風向きが変わり、西日本ではなく西風になり、ドイツなどの
気流の発表をみると、西日本は安全になったようです.

(平成23年4月6日 午前10時)

武田邦彦

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小さな疑問 その3 屋内10分の1 »

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原発 緊急情報(49) 新学期・・・人間ができる限度

全国各地で新学期が始まろうとしています。そして放射線の強いところも新
学期に入る学校がほとんどのようです。それは、教育委員会が国の判断をそ
のまま取り入れて「安全だ」としているからです。
でもこの問題は「安全かどうか」ではないのです。

これについてのわたくしの見解をぜひ述べたいと思っています。

・・・・・・・・・

日本の法律では、1時間に0.6マイクロシーベルト(外部被曝と内部被曝
の合計)を越えたら、そこを「管理区域」に設定して、掲示をし、一般の場
所と違う取り扱いをします。

つまり、幼稚園、小学校、中学校で1時間の放射線が0.6マイクロシーベル
トを超えている場合は、次の標識を学校の門に張ってください。

驚くべきことに学校が管理区域に入って
いるところが多いのです。

この場合、「安全かどうか」ということは
議論するべきではないのです。 法律的
にある放射線を越えたら、管理区域にす
る必要があり、「学校に立ち入るには、
本人の同意はもちろん必要ですし、みだり
に人を立ち入らせてはいけない」ので
す。

学者の中には、放射線は害にならないと
か、放射線を浴びた方がむしろ健康にな
るとか、プルトニウムを食べても食塩よ
り完全だという先生がおられるのは事実
ですが、それは学説です.学問の自由ですから、何を言ってもかまいませ
ん。
しかし、次のことはハッキリしています.

1) 安全かどうかは別にして、1時間に外部被曝と内部被曝の合計が0.6
マイクロシーベルトを越えたら、標識をつける、

2) 学校にみだりに児童、生徒を立ち入らせてはいけない(もちろん、幼稚
園、保育園、高等学校、大学も)、

3) 教育委員会は政府と独立であり、それでこそ児童生徒を守ることができ
る。

・・・・・・・・・

もう一つの問題を指摘します.

人間は「自分で選択できるもの」はある程度危険なことも許されます。しか
し「強制的に全員が行うもの」については、一人残らず、全員が危険を冒す
ことについて同意する必要があります。

学校では、児童、生徒は先生の命令のままに行動しなければなりません。
従って、教育委員会も先生も、管理区域に入るところでは、児童、生徒を強
制的に校舎に入れることはできないのです.権限はないのです.

保護者の方も、ご自分でご判断できることではありません。お子さんの健康
はお子さんのものであり、お子さんを勝手に管理区域に入れることは保護者
でもできないと私は思います。

一体、誰のための教育なのでしょうか。教育は児童、生徒のためであって、
教育委員会のためではありません。

人間には、命令できることの限度があります。児童、生徒は「物」でしょう
か?

(平成23年4月6日 午後6時 執筆)

武田邦彦
« 原発 小さな疑問 その3 屋内10分の1 | | 原発 緊急情報(50) 規制値が20ミリ
になると・・・ »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(50) 規制値が20ミリになると・・・

「枝野幸男官房長官は6日午前の記者会見で、福島第1原発の放射能漏れ事故
を受け、年間1ミリ(シーベルト、以下省略)としている住民の被ばく限度
量について、引き上げを検討していることを明らかにした。」

というニュースが流れ、その理由として記者は、

「屋内退避指示が出ている第1原発から20から30キロ圏の外側でも、大気
中の放射線量の積算値が10ミリを超えた地域がある。このため、原発事故
の長期化を前提に、健康に影響が及ばない範囲で被ばく限度の基準を緩める
必要があると判断した。」

と解説しました。 

・・・・・・・・・

この政府の変化について、私たち被曝する身になると、次のことを知ってお
かなければなりませ。(記者が書いているようなこと・・「健康に影響が及
ばない範囲で基準をゆるめる」・・・ことはできないのは当然だから)

1) 福島原発の事故が起こったから(という理由で)、私たちの放射線に対
する防御の能力が上がったのか(事故があったからという理由で、放射
線が20倍も安全になったのか)?

2) 規制値をゆるめる理由となるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告
にはどのように記載されているのか? ICRPの真なる意図はなに
か?

3) かつて「100ミリまで健康に影響がない」と言い続けていた日本政府
は、なぜ、今になって「年間1ミリ」が住民の被曝限度と言い出したの
か?
その上で、私たちはどのように放射線から防御しなければならないかを考え
たいと思います.

・・・・・・・・・

【1の答え:人間は急に放射線に強くなるのか?】

事故が起こったから人間が放射線に強くなるということはありません。やは
り「安全な放射線」は1年間1ミリで変わらないのです。つまり1ミリから
20ミリになると、病気の危険性は20倍に上がります。

具体的には、1年間に100ミリの被曝を受けた場合、1000人に5人、つ
まり1万人に50人、1億人で50万人が「過剰発がん」になります(ここ
では福島市の顧問になられた長崎大学の先生の数値を使います.たの数字も
ほぼ同様です)。
放射線によるガンの発生は「確率的」、つまり、被曝量に比例しているとさ
れていますので、1年間に1ミリというのは、自然放射線に加えて、人工的
な放射線が増えることで1億人(日本人全体)に対して100ミリの場合の
100分の1、つまり5000人が(放射線で)ガンになると予想されてい
ます。
そして、20ミリはその20倍ですから10万人になります。つまり、20
ミリあびると、交通事故の10倍ぐらいの危険があることを意味していま
す.

なぜ、そんな危険な基準を設けるのかというと、ICRPは「事故の時には
総合的に考えて、仕方のない範囲で我慢する」ということだからです。たと
えば事故処理に当たる作業の人も限度が上がるが、その場合は「志願者」だ
けに限るなどのことをしていて、非常時を強く意識しています。

その意味で、繰り返しますが、記者が言っているような「健康に影響がない範
囲」などというのは被曝ではありません。

【2の答え:ICRPの勧告の意味】

非常時のICRPの考え方は、まず、第一に「全体のために少し我慢してく
れ」という思想に基づいていること、

第二に「短期間に限る」ということで、たとえば屋内待避(2日間)、一時
的な避難(1週間)、食糧制限(10ミリ)などのように「臨時措置」であ
ること(防護措置のあるもの)、

しかし、さらに国が「総合的な施策」を打つことができれば、状況に応じて
20ミリまでOKというものです。無条件で、1ミリが20ミリになるわけ
ではありません。

簡単に言うと「短期的で、国が十分なケアーをする場合に限り」ということ
です。

【重要な前提】

ICRPが使っている「放射線量」は、(外部被曝+内部被曝)の合計で、
それに対して日本政府のものは(発表がないので定かには判らないが)外部
被曝だけと思われます.

その点では、今、1時間に1マイクロと発表されているところは、2倍して
2マイクロ(呼吸によって体内に入る量)、それに食品や水からの1マイク
ロ(水道が特に汚れていない地域)を加えて、「3倍」にして3マイクロで
計算してください(何も警戒できない児童などは4倍)。

(例)

1×3×365(日)×24(時間)=26ミリ

私たちは、家族の健康には、1年20ミリは臨時のこととして、これまで通
り、1年1ミリを基準に考えることです。

・・・・・・・・・

このように当然のことですが、事故が起こったから突然、人間が放射線に強く
なる訳ではないので、「1年1ミリなら安全」というのは変わりません。

また、ICRPの勧告を「よくよく読んで」、「なんとか日本人により多く
被曝させたい」という意図を持って重箱の隅をつつく(法の網の目をくぐ
る)ようにすれば、若干の余裕もあります。

本来、国民を守るためにあるお役人や専門家は、もしかすると「放射線の害
を少なく見せたい」という欲求から、網の目をくぐるような言い方をしてく
る可能性があります。

でも、私たちは「より多く被曝したい」のではなく「より安全に」というこ
とで、ICRPも「事故の時にはやむをえず20ミリまでよいが、できれば
1ミリ」という考えは変わってはいません。

・・・・・・・・・

ところで、日本政府は最初「100ミリまで健康に影響がない」と言って、
それにのった専門家は、たとえば私のことを「1年に1ミリなどと言って、
危険を る学者がいる」などと言ってきましたが、今回、見通しがついたら
「1ミリが限度」と公式に認めました。

それは前進です.

しかし、放射線被曝は「最初が肝心」なので、このような変化は「国民の為
を考えているのではなく、政府の保身」から出発しているのでしょう。最初に
1ミリといって避難させるべきなのです。

また、国民を守る最後の砦である、原子力安全委員会も、地方自治体も、20
ミリになって「仕事は楽になる。国民は被曝が増える」という二つのことの
うち、「仕事が楽になるなら歓迎だ」という態度にでると予想されますの
で、注意を要します.

(平成23年4月7日 午前9時 執筆 4月8日修正)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(49) 新学期・・・人間ができる限度 | | 原発 緊急情報(51) 窒素
を入れた理由と影響 »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(51) 窒素を入れた理由と影響

4月7日に、東電が福島原発の格納容器に「窒素を入れる」と発表され、事
実、窒素を入れ始めたようです。この意味は、

1) 格納容器に水素と酸素があって、爆発する可能性がある、

2) 窒素を入れた分だけ、強い放射線をもつガスが放出される、

ということです。そして私たち「被曝側」としては、

1) 窒素が入れば爆発はしない、

2) まだ不安定なので、貯金通帳など身につけておいた方がよい(福島、 城
北部など)、

ということです。

・・・・・・・・・

原子炉の爆発には、核爆発、水素爆発、水蒸気爆発があります。そして爆発
する場所としては、建屋、格納容器、圧力容器の3つがあります。

もっとも危険なのは、「圧力容器内の核爆発」で、これを止めるには「ホウ
素の投入」が必要です。ですから、「ホウ素」という文字が出てきたら、逃
げる準備が必要です.

次に、今回の格納容器の水素爆発などの大量の放射性物質がでる場合で、政
府やメディアは「大量の」とか「きわめて憂慮すべき」とは言いますが、具
体的にどのぐらい「大量なのか」は言いません。

もし、格納容器が水素爆発したら、現在の10倍から100倍の放射性物質
がでますから、福島県東部、 城県北部は直ちに避難してください。
放射線のレベルは1時間に100マイクロ(シーベルト、省略)ぐらいにな
るでしょう。つまり、10時間で1ミリ、4日で10ミリになりますので、直
ちに避難が必要です.

しかし、爆発の可能性は低いと思います.

しばらくテレビはつけておいて、窒素投入が成功するか、何気なく監視して
おくというのが良いでしょう.

・・・・・・・・・

ただ、東電発表にやや矛盾があります。

水素が発生するのは、破損した燃料棒のジルコニウムと水の反応、高い放射線
による水の分解ですが、

1) ジルコニウムと水の反応では水素しかでない、

2) 放射線による水の分解では、水素が2モルで酸素が1モルの比率でで
る、

3) 水素の爆発下限は水素4%、酸素5%だから、上記の反応では爆発限界
に入るのにはなにか別のことがあるのではないか、

4) 格納容器の水素濃度は測定してないと考えられるので、なぜこのような
推定をしたか、

などです。

情報が断片的なので、判断が難しく、現在では危険側で考えなければならない
のが現状です。

・・・・・・・・・

ところで、先日、放射性物質を含んだ汚染水を海に流した時、漁業組合が「俺
たちの海を汚すのに、断りがない」と言い、それに対して東電が謝りまし
た。

今回は、私たちの番です.「私たちが呼吸する空気を汚す窒素投入に対し
て、自治体に了解を取ったか?」と聞かなければなりません。

東電は私企業ですから、勝手に(能動的行為で)空気を汚すことはできない
からです。

(平成23年4月7日 午前10時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(50) 規制値が20ミリになると・・・ | | 原発 緊急情報(52) 子供
の目線で »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発 緊急情報(52) 子供の目線で

新学期を前にして福島県の小学校を中心として学校や幼稚園の空間線量率
(普通に発表されている放射線の強さ)が測定されて公表されました。

それを見ると、高いところでは1時間当たり20マイクロ(シーベルト、省
略)を超えるところもあり、10マイクロ程度の学校が相当多いようです。

そこでここでは「大人の目線」ではなく、現実に学校に通って被爆する「児
童生徒の目線」で、子供達がどれぐらいの被曝すると予想されるかを計算し
てみたいと思います。

・・・・・・・・・

お子さんが通う小学校の測定値(地上1.5メートル)が20マイクロとし
ます。もし、ご自分のお子さんの小学校が2マイクロでしたら、以下の値を
10分の1にしてください。

まず、大人は1.5メートル付近の空気を吸いますが、お子さんは50セン
チから1メートル程度です.それに走り回ったり砂場で遊んだりしますの
で、地面にかなり近いところ、しかもホコリが舞っているような環境です
(これは子供目線の一つ)。

労働衛生関係でよく知られているように、地面から30センチまでがホコリ
が舞う高さです。「放射性物質」は「黄砂」のような物ですから、ホコリと
同じように舞い上がります.

読者の方からのご連絡などから、1.5メートルの地点と比較すると50セ
ンチぐらいのところは線量が1.5倍程度になっているようです。

そこで、地上1.5メートルの測定値が20マイクロの学校は、子供目線で
は30マイクロとなります。
また、事故が起こる前まで文科省は「被曝は外部と内部を合計すること」と
指導していましたが、事故が起こってからは「外部だけ」

を発表しています.

「子供目線」では、「原発事故を小さく見せる」とか「パニックを避ける」
などは関係なく、「自分がどのぐらい被曝するか」だけです。

外部被曝と内部被曝の比率は自然放射線では、外部被曝の2倍が内部被曝で
す(公的発表値).またチェルノブイリの時にはほぼ同じでした(私の調
査)。

そこで、ここでは少し甘いのですが、ラドンの影響があるので、内部被曝を
外部被曝と同じとします。

なぜ、子供が内部被曝をするかというと、「放射性物質のホコリ」を吸い込
むからです.これは牛乳に放射性物質が含まれていたことと同じです.

空間からの被曝=外部30マイクロ+内部30マイクロ=60マイクロ

・・・

次に食事や水、洋服、持ち物から児童生徒が被曝する量ですが、この計算で
は「自治体が「地産地消だから地元のものを食べよう」とか「給食には地元
の食材」とか、さらには「魚が汚染されているといっても、限度の1年1ミ
リより低い0.6ミリだから」ということを信じている(政府や自治体の
言っていることを信じている)校長先生や給食の方のもとで食事をする子供
を想定します.

地元の野菜などは基本的に「地元の汚染レベルになる」ということです。野
菜などはベクレルで表示されますから、これをシーベルトに直すのには、子
供がなにをどのぐらい食べるかを決めなければなりません.

報道は錯覚するように情報が伝えられています.

たとえば、ホウレンソウですが、「一年にホウレンソウを食べ続けれ
ば・・」と言い、「1日100グラムのホウレンソウを1年間、食べ続ける
と」と報道されますので、親御さんは「そんなに食べない」と錯覚します。

でも、汚染される時にはホウレンソウも、小松菜も・・・野菜やその他の食
材も同じく汚染されることになります.その場合は、「ホウレンソウの汚染
=食材の汚染」となりますので、お子さんがおかずを一日300グラム食べ
るとすると、逆にホウレンソウの値を3倍しなければなりません。

東電が発表した魚の汚染も同じでした。実に不誠実な発表で「大丈夫です」
というのは、その魚しか食べず、息もせず.水も飲まず、空高く浮いている
人の場合という前提を抜かしていました。

また、水についても同じで、水に含まれる放射性物質は空気中のものが川に
落下するのですから、これも同じような量になります。でも現在では少し
減っていますので、「環境から」ということで、水+衣服+道具などを合計
します。

つまり、子供は、食材と水などから約30マイクロの被曝を(もし大人が放
射線を気にせずに給食などをしたら)受ける事になります.

この計算は、現在では栄養士の方が「カロリー」より、「被曝量」を計算す
る方が重要な事を意味しています.保護者の方は学校の栄養士の方に「給食
を出すなら被曝量を「ベクレル」ではなく、「シーベルト」で示すこと」を
求めてください。

たとえば独身の女性なら自分で食材を選べますが、子供は出されるものを食
べるしかないので、保護者の方の責任です.

ここでは、今までのやり方に合わせて、

外部(30)+内部(30)+食材(30)+水など(30)=120、
で計算を進めます.今後、地域地域でお子さんの被曝についての計算が進む
でしょうから、この数値が小さくなることを望んでいます.

また、もともとの空間線量率が2と低いところは、食材や水はかなり緩和さ
れるでしょう.

食材などは現在、ヨウ素、セシウムを計測していますが、ストロンチウムなど
がまだ未測定なので、原理的には食材からの被曝は30の1.5倍、つまり
45になります.ストロンチウムは骨に入りますので、本当は重要ですが、
まだ発表はありません。

・・・
この小学校に通う子供は1時間に120マイクロの被曝を受けます。

すでに事故から1ヶ月になりますから、

最初の1ヶ月: 120×30日*24時間=86.4ミリ

ビックリするほど多いのですが、胸のレントゲンが1回あたり50マイクロ
なので、もともと1時間あたり120マイクロというと、幼稚園や小学校の
子供が1時間に胸のレントゲンを2回以上撮り続けるというのですから、こ
のような値になるのは当然です.

国際勧告や法律の線量限度は1年に1ミリですから、すでにその80倍を被
曝した可能性があります。また政府が引き上げた被曝限度の20ミリからみ
ても4倍です。

何も知らない子供が、「政府を信じている」と繰り返す教育委員会の犠牲に
なるのは可哀想です.

また、普通なら最初の1ヶ月でかなり放射線は減るのですが、福島原発の場
合、まだ漏れているので、これから3ヶ月は2分の1、それから10分の1に
なるとすると、

3ヶ月  86.4×3÷2=129.6ミリ

8ヶ月  86.4×8÷10=69.1ミリ

で最初からの合計の被曝量は、285ミリになります。これは非常時の作業
員の被曝限度(福島原発の前は100ミリ、その後250ミリに変更)の上
限ですから、大人でも急性白血球減少が見られる急性領域になります。

つまり、福島県で線量率が20マイクロぐらいの値のでた小学校では児童を
福島原発の作業をさせているということです。

・・・・・・・・・

私たちはまず「もっとも被害を受けると考えられる子供達」に焦点をあてな
ければなりませんから、この計算は決して「誇張されたもの」ではないと思
います。

もし、2マイクロの場所(福島県東部、 城県北部の多く)ではこの10分の
1ですから、28ミリぐらいになり、これも1ミリの限度の28倍、政府の新
基準を越えます.

まず学校は、すぐ「正しく、ごまかさず」に計算することがどうしても必要
です.政府が安全と言っているからといって子供の健康が害されて良いとい
うことはありません。それが教育委員会の独立性なのです.

・・・・・・・・・

まず、教育委員会、校長先生など管理関係の方は被曝量を計算して公表して
ください。学校にいるときだけではなく、家庭も含めて児童生徒が守られて
いるかという見地で実施してください。

校長先生、学校の先生は、「児童の目線」にたって、測定をしてください(地
上20センチが適当です)。

先生は、下校の時に児童の衣服にどのぐらい放射性物質がついているか測っ
てください。また、放射線としては、教室の中は「室内」にはなりません。

給食の方は、食材の線量を測ってください。一つ一つの食材が「規制値内」
であっても、合計するとかなりになります。また農業の人も「汚染された食
材を子供に食べさせる」ことは反対と思いますから、生産者や自治体に遠慮
なく子供本位でリストアップしてください。

(普通の時には規制値内で良いのですが、あちこちから放射線をあびるときに
は、規制値は関係がなく、足し合わせなければなりません。外国産、北海道
産、3月11日以前の食材を使えばグッと減ります.)

また、最近測定値の「すそきり・・・少ない数値の場合ゼロにする」をし始
めていますが、これも子供のために止めてください。小さい数字も足し合わ
せるとかなりになります。

各家庭に計測器を置くことはできませんから、学校で測定してあげてくださ
い。また「計測器がないから」など「子供の被曝」とは関係の無い大人の事
情は先生方の間でも会話を控えましょう.

(平成23年4月8日 午前9時 執筆)

武田邦彦
« 原発 緊急情報(51) 窒素を入れた理由と影響 | | 生活と原子力 06 なぜ「東通原
発」は非常電源が入ったか? »

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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生活と原子力 06 なぜ「東通原発」は非常電源が入ったか?

4月7日深夜、東北地方は再び最大震度6を記録する余震に見舞われた。被
災者の人はとても心配だろう。なんと言ったら良いか判らないぐらいの過酷
な仕打ちだ。

でも、ここではそのような状態でも、「原発」のことを冷静に考えておきた
い。

この余震で青森の東通原発と六ヶ所村の再処理施設の電源が切れ、ディーゼ
ル発電の非常用電源を使った。震度は5と推定される。

ディーゼル発電機が動くということは「耐震設計を越えた地震に見舞われ
た」ということだ。

また、停止中の女川原発も震度6で通常電源がとまり、予備電源に切り替
わった。ここも「耐震設計を越えた地震」ということになる。

・・・・・・・・・

5年前から私は「原発は地震で壊れる」として、安全委員会部会、講演、書籍
などで原発の耐震性を考え直さなければならないと訴えてきた。

自分が「予言」したからということではない。実は予言などという大げさな
ものではなく、「科学的な合理性を持って原発は地震で倒れる」のであり、
実に簡単な原理なのである。

それを「原発は地震で大丈夫」と口で言ってきただけなのだ。

もし、それを日本社会が理解してくれれば、原発は少しは安全になる可能性
がある。

原理は簡単だ.
1) 耐震設計自体が低い(柏崎、福島は震度5、今回の地震の結果から見る
と、女川は震度5、東通は震度4で設計したと考えられる)

2) 原子炉だけを守るようになっていて「原子力発電所」や「付近住民」を
守ろうとはしていない。

これが現実なのに、政府、原子力委員会、原子力安全委員会、保安院、電力会
社、県、市町村の首長は、いずれも、

「原発は地震で壊れない。安全だ」

と言い続けてきた。

・・・・・・

国民の安全を守るのがもっとも大切な指導者なのに、「耐震設計は4で震度5
なら損傷する。そして、付近住民や電気設備ではなく原子炉だけを守る」と
いうことを知っていながら、よくそんな発言ができると思う。

昨日、 文化系の見識のある方とディスカッションをした。なぜ、「震度4、
原子炉だけ」という設計を「地震で大丈夫」と言うのか、科学者の私には理解
ができないからだ。

・・・・・・実績・・・・・・

柏崎刈葉  震度6で「放射線漏れ」と「変電所火災」

福島    震度6で電源喪失、水素爆発

女川    震度5で通常電源喪失

東通    震度5で通常、予備電源ともに喪失

・・・・・・それでも全国の原発は大丈夫??・・・・・・

100%の確率で損傷、倒壊している。だから、電力会社が自主的に他の原
発を止めて欲しい.

今回の東通原発は震度5で通常電源、予備電源が喪失し、ディーゼル発電機
を動かした。普通の人なら「最後の砦が役に立った」と思うかも知れない
が、筆者の専門の工学から見ると、「設計が4だったら、設計通り、設計が5
だったら、設計ミスか施工の手抜き」という事になる。

工学というのは「まあまあ、なあなあ」ではない。震度5で設計したら、震度
5で「非常事態」になってはいけない。震度5では「ビクともしない」とい
うのが震度5の設計である.

その意味で、東通原発が震度5でディーゼル発電が動いたということは、設
計か施工の欠陥である.東北電力は直ちにどちらに問題があったかを公表す
べきだ。

さらに、福島原発にもトリックがある。

福島原発が「地震で倒れない」と言った政府、福島県の発言がウソではない
ことを印象つけるために「津波の損傷」と言ってきた。

しかし、作業員は「地震直後に上からザーッと水が降ってきた」という証言
や、1号炉の圧力容器の亀裂などを見ると、震度6の最初のアタックでかなり
損傷していたと考えられる.

また、たとえ津波であっても、日本には38メートルの津波を経験している
のだから、10数メートルの津波が「想定外」というなら「地震や津波で壊
れる怖れがある」ということだろう。

・・・・・・・・・

いや、そんな細かいことを議論していては、大筋を見失う.

原発は、

1) 原子炉だけ守ればよい.だから、電力の供給がなくなるのは「原発の安
全性」の問題では無いとしている、

2) 設計震度は「電力会社が地震学者を呼んで勝手に決めれば良い」として
いる、

という事実をもう一度、認識することだ。

東通原発では、震度5で最後の砦になるディーゼル発電以外の電源を失っ
た。まるで、個人病院のようだ。

個人病院でも停電に備えて予備の小型発電機ぐらいは備えている.予備の電
源があるからと言って「地震で大丈夫です」などと言うのはまったく非常識
で、原発は多重防御ではなく、ほぼ1重だ。

そして、問題なのは「原子炉だけを守る」という思想だから、柏崎で変電所
(場内)が燃えても「関係ありません」と言い、今度も「停電だから仕方あ
りません」と言うだろう.

でも、ディーゼル発電機が故障したら、東通原発は、冷却系を失い、福島原
発と同じようになるのだ。電力会社の方は、「原発は地震で倒れます」と地
元に行って欲しいし、自治体は「原発は地震で倒れるから、止めろ」と言う
べきだろう.

再び、被曝する人を出さないために。

(平成23年4月8日 午後1時 執筆)

武田邦彦

« 原発 緊急情報(52) 子供の目線で |

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


(下記の HPは、現在削除されています。理由は不明です)

原発�速報�福島第一、1号炉の放射線急増について

多くの方が1号炉の放射線急増で心配されています。
私は、窒素を導入するということは中にあるガスがそれだけ外に出るので、東電は最初から放射
線急増を覚悟して窒素を入れたと思います.
つまり、「窒素を入れる」ということは「空気を汚す」と言うことですし、空気を呼吸しているのは私た
ちですから、もっと一般向けに情報を出すべきです.
とりあえず、不安に感じている人に、一応、大丈夫ということだけ言いたいとおもい、速報を書きま
した。テレビは「うすーく」つけておいてください。
急変の可能性は少ないと思います。
(平成23年4月8日�執筆)

武田邦彦
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原発 小さい疑問 なぜ、原発近くの野菜は買ってはいけないの
か?

農業の人には悪いのですが、農業の人も「消費者に安心して食べてもらう食
材」の生産に励んでおられたと思います.それが前提です.

・・・・・・

ホウレンソウが汚染されていたとします.普段なら「ホウレンソウだけが放
射線で汚染されている」という事なので、「そのホウレンソウが基準値を超
えていなければ食べて良い」のです。

しかし、現在のように空気(外部線量)、それを吸い込んでの内部被曝、野
菜、魚、水、土壌など全てが汚れていると、ホウレンソウも他の被曝に足さな
ければなりません.

たとえば、次のようなことです。

【普通の時】 

空気      0

水        0

内部      0

ホウレンソウ 10

小松菜     0

大根      0

牛乳      0

こうなご    0
合計     10

となりますから、ホウレンソウは規制値以下なら大丈夫です.

ところが、「環境が汚染されているとき」(時期は1年ぐらい)は、状態が
違います.

【汚染時】

空気      10

水        2

内部      10

ホウレンソウ  10

小松菜     3

大根      1

牛乳      5

こうなご    10

合計      51

となります。つまり一つ一つは「規制値内」でも「足し算」をしなければな
りません。

少し前に「かけ算のできない東大教授」と書きましたが、先日の東電の魚汚
染の発表は「足し算のできない東電」ということです。

むやみに怖がる必要はありませんが、ここ半年ぐらいは、「基準値以下で
も、できるだけ被曝を避ける生活」が大切です.

個人の事情、体力などに合わせて、できる範囲で被曝を減らすこと、これが放
射線防御の基本です.

(農業、漁業の方の考え方はまた別の機会にします)

(平成23年4月9日 午前9時 執筆)
武田邦彦

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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ


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原発  首相が、今、宣言すること

福島原発の処理が長引いているこの時期、私は首相が宣言することは、次の
ことと思う.

1.
 「原発の事故を起こしてしまい諸外国にご迷惑をかけたことを謝罪する」
首相は国民にも謝罪していないが、まずは外国。

2.
 「今後は、外国に迷惑をかけないようにする」
具体的には原発の横にプールを掘り、海水に放射性物質を流さない決意を
示す.重機を使えば短期間に5万トンレベルのプールはできる。防水工事
が間に合わなければ
「日本の大地を汚しても、海は汚さない」
という日本の決意を内外に示す.

3.
 「原発付近の農作物、酪農品、海産物をすべて政府が買い上げ、さらに一次
産業の活動を止める」
国民の食の安全を確保する。「風評」などと言わずに、放射性物質を含む
食材は絶対に国民の口に入れないという決意を示す.輸出も同じ.

4.
 「年間1ミリシーベルトを越える可能性のあるところ(1時間に0.6マ
イクロ以上)の児童生徒を疎開させる」
絶対に子供を被曝させないという決意を示す.すでに福島原発の近くの子
供は防空が破れて爆撃を受けている状態だから、戦時体制で疎開させる。

私は是非、やってもらいたいと思う.

(平成23年4月9日 午前10時 執筆)
武田邦彦

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