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勤医協中央病院⿇酔科 初期研修マニュアル

⿇酔科ローテート中の初期研修医のための感染対策

1.⼿術室への出⼊りの仕⽅
1)⼿術室は何が他の区域と⽐べてクリーンなのか
感染対策において、ゾーニング(zoning)の考え⽅は重要です。清潔のレベ
ルに応じて区域を分けて、出⼊りを制限したり、⼊り⽅を特別にします。以前
の考え⽅によるゾーニングでは履物を取り替え、⾐服を取り替えるかガウンを
上から着⽤して、マスクと帽⼦を着⽤して清潔区域に⼊ることが基本でした。
床と体の表⾯がきれいであるという考え⽅です。現在の考え⽅は、⼿術室の中
は、床がきれいなのではなく、空気がきれいであるという考え⽅です。以前は
落下細菌検査こそがクリーン度の判定基準でしたが、現在は、パーティクルカ
ウンターで測定する浮遊している粒⼦の数がクリーン度の基準です。床から院
内感染が起こったという証拠はありません。それどころか、術野からこぼれた
⾎液や体液をスリッパで踏んでそのスリッパで、あちこちに⾎液汚染を広げな
いことが重要です(⼿術室の床の⽅が、他の院内のエリアより汚染されている
ことが多い)。
我々のするべき事は、スリッパの履き替えではなく、空気のクリーン度を保
つために、出⼊りを最⼩限にし、出⼊りの時にドアをきちんと閉めること、清
潔領域で⾛って埃を舞いあげないことです。
当院は⼀⾜性(院内では⼿術室内も⼿術室外も同じ履物で歩く)を実施してい
ます。床の汚染が予想される場合は、あらかじめ、靴袋を着⽤してください。

2)接触感染の防⽌は最重要
⼿術室内でもスタンダードプリコーションを守ることはきわめて重要です。
⼿術室の外回りの看護師の陰部に定着した溶連菌から次々と⼿術患者が創部感
染を起こしたという有名な報告が CDC から出されています(Streptococcal
Wound Infections Caused by a Vaginal Carrier. JAMA, May 21, 1982-Vol

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247, No19 2680-82)。接触感染の⼀番⼤きな原因は、医療従事者の⼿です。⼿
術室にはいるときには、必ず⼿洗いをすることは重要です。
何時⼿を洗うかも重要です。帽⼦、マスク、ゴーグルを着⽤するときにどう
しても⼿が頭髪や顔⾯に接触します。はじめの⼿洗いは、帽⼦、マスク、ゴー
グルをきちんと着⽤した直後に、⾏うべきです。
2003 年 6 ⽉に出された、CDC の環境に関する感染対策のガイドライン
(Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities)
では、ドアノブ、ベッド柵、電気のスイッチなどの、みんなが頻繁に触るもの
の表⾯(high-touch surfaces)は他の表⾯よりも頻繁に拭き掃除をするように
勧告をしています。high-touch surfaces に触れた場合は⼿が汚れる可能性が⾼
くなります。

3)術⾐についての勧告はない
当院では以前からの取り決めで、⼿術室にはいるときは、⼿術室専⽤の上下
の術⾐を着⽤することになっています。CDC のガイドラインによれば、⼿術室
スタッフの⾐服は、何⽇続けて着て良いか、家で各⾃が洗濯するか、⼿術室外
へ出るときにいちいち着替えるかは未解決の問題です。現在のところどちらで
も良いと⾔うことになっています。術⾐は、通常は患者様の⽪膚に触れるもの
ではありません。体位をとるときなどに、創部以外の健常な⽪膚に触れること
はあるかもしれません。そう考えても、感染対策のリスク分類上は、
「低リスク」
に分類され、洗浄して乾燥していればよいことになっています。
(万が⼀⾎液汚
染などが起これば、消毒が必要です。当院では、
「感染性リネン」として⻘ビニ
ール袋に⼊れて、洗濯室におろし、80 度 10 分のサイクルを含む洗濯機で洗い、
消毒します。)
当院での、⼿術室内での服装は、標準の術⾐、キャップ、サージカルマスク、
ゴーグルです。靴と靴下は⾃分のものでもかまいません。素⾜にサンダルでは、
⾎液や体液が滴下したときに⾜が、暴露しますので、少なくとも靴を履くか、
靴袋で保護してください。

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4)腕時計は必ず外す
院内で、医療業務を開始するに当たって、はじめにするべきことは、腕時計
を外すことです。⼿を洗うことが医療従事者にとっては感染対策上⼀番重要な
⾏為ですが、腕時計をしていては、⼿⾸まできちんと⼿洗いをすることは困難
です。さらに⼿⾸までしっかりとペーパータオルで拭くことも困難になります。
腕時計をしていては、洗浄も乾燥も不⼗分な⼿で医療⾏為を⾏うことになりま
す。
また、腕時計を外すことは、⾃分は、⼿洗いをきちんと⾏い感染対策に配慮
しながら医療⾏為を⾏うことの意思表⽰でもあります。感染対策に詳しい、病
理学の堤教授の著書の中に、
「腕時計をした医者には近づくな」という⾒出しが
あります。このエッセイは、朝⽇新聞の関⻄版に連載しており、多くの⼀般の
国⺠が読んでいると思われます。
注射薬を詰めたり、注射したり、硬膜外チューブを挿⼊したり、中⼼静脈カ
テーテルを挿⼊したり、動脈ライン・静脈ラインを確保したり、⿇酔業務で腕
時計をして良い業務などありません。

2.何時⼿を洗うか?
⼿指衛⽣(⽯けんと流⽔で⼿を洗う、またはウェルパス等で⼿を消毒する)
を⾏う事は、感染対策上きわめて重要な⾏為ですが、回数が多ければよいと⾔
うわけではありません。合併症として、接触性⽪膚炎(⼿荒れ)を起こし、⽪
膚炎を起こした⼿は、細菌が付着しやすくなりかえって逆効果になることもあ
ります。やはり、何時⼿を洗うかを明確にして、必要⼗分な⼿洗いを過不⾜無
く⾏う必要があります。
極簡単に⾔えば、清潔操作の前、汚染物との接触のあとに、⼿指衛⽣を⾏い
ます。現在では、⼿指衛⽣と⼿袋の着⽤を⼀連の流れで⾏うため、⼿指衛⽣→
⼿袋着⽤→処置→⼿袋外し→⼿指衛⽣となります。清潔操作のあとの⼿指衛⽣
と汚染物との接触の前の⼿指衛⽣は省略が可能と思われます。

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3.⼿の保護
まじめにウェルパスや⼿洗いを⾏うと、1 ⽇か 2 ⽇で多かれ少なかれ⼿荒れが
⽣じてきます。予防を⾏うことはきわめて重要で、当院では、尿素軟膏(アセ
チロール)を希望者に無料で配給しています。1 ⽇の仕事の開始前に 1g、終了
後に 1gを⼿に擦り込んでください。それでも⼿荒れが悪化するときは、⽪膚科
にご相談ください。

4.ウェルパスの使い⽅
ウェルパスに代表される擦り込み式速乾性⼿指消毒薬は、今や、感染対策上
最も重要な薬剤となっています。CDC が 2002 年 10 ⽉に発表した、新しい⼿
洗いのためのガイドラインでは、⼿が⾁眼的に汚れていなければ、ウェルパス
を使⽤することを第⼀に勧めています。これにより、⽯けんと流⽔による⼿洗
いより、ウェルパスを第1選択とする考えが、定着しています。
ただし、ウェルパスは正しく使⽤しなければ、⼗分な感染予防効果がありま
せん。まず気をつけてほしいのは、使う量です。ポンプの頭をしっかりと最後
まで押すと、3ml のウェルパスが出てきます。3ml はかなり多いので、⽚⼿で
こぼれないように溜めておくのがやっとの量です。それを⼿に⼗分擦り込みま
す。①⼿のひら②⼿の甲③指先・⽖の間④指の間⑤親指のねじり洗い⑥⼿⾸の
ねじり洗いのすべてを確実に⾏います。ゆっくりと擦り込んでも3ml のウェル
パスは簡単には乾きません。結局すべての擦り込みを終了しても、⼿がまだ濡
れていて、⼿を左右に振って乾かす必要があります。

5.床にものを置かない
床はリスク分類では「最⼩リスク」で消毒する必要はありません。いくら消
毒しても、時間とともに菌が落下して汚染されます。特に⼿術室では、⾎液や
体液によっても汚染されます。そのため、床にものを置いたり、電源コード、
モニターのライン(⾃動⾎圧計の耐圧チューブ、⼼電図のリード線、パルスオ
キシメーターのコード、直腸体温計のコード、⿇酔ガスモニターのサンプリン

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グチューブなど)、⿇酔ガスのパイピングなどが床を這うのは原則的にはやめる
べきです。
電源コードは、使⽤の前後にコンセントに差し込んだり、抜いたり⼿で触り
ます。いつも床を這わせていて、ろくに洗っていないものを⼿で触れた後は、
きちんとした⼿洗いが必要です。皆さん⼿を洗っていますでしょうか。
特にモニターのライン類は、患者様の健常な⽪膚に接触する可能性があり消毒
はいりませんが、洗浄して乾いている必要があります。消毒のイソジンが付着
して茶⾊になったものが、床に何度も落ちてさらに汚染されたものを患者さん
に取り付けるようなことがないように注意が必要です。⼼電図のリード線は意
外と汚れています。時に、アルコールなどで汚染を除去するとともに、⽇常的
には床に落とさないような注意が必要です。
同様に、脱着可能な⼿術台の「⼿台」
「L字リヒカ」など、外した後に床に置
くことをよく⾒かけます。洗浄など⼗分しないまま次の患者様に使⽤している
ようです。⾒た⽬にきれいで乾燥していればよいですが、床に置くのは絶対に
やめましょう。
「置く台がない」場合は、ワゴンなどを⽤意してもらいましょう。

6.患者様の⼿術室⼊室
当院の⼿術室では、2008 年 4 ⽉現在、病棟からのストレッチャーのまま、各
⼿術室の⼿術台の横まで、病棟の看護師が付き添って⼊室します。このとき、
病棟の看護師は、靴の履き替えやガウンの着⽤、キャップやマスクの着⽤など
はしません。患者様の⼿術台への移動時は、転落などがないように介助を⾏い
ます。特別にドレーンや創を有する患者様以外は、健康な⽪膚との接触ですの
で、感染対策上のリスクは⾼くありません。しかし、2002 年 10 ⽉の CDC ガ
イドラインでは、ベッド移動のような患者様の正常な⽪膚や⾐服との接触でも
後から、⼿洗いをするように勧告しています。移動の介助でも⼿袋の着⽤が必
要です。

7.静脈路の確保

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⾎管を穿刺する⼿技は、侵襲的な⼿技で、患者様の健康な⽪膚を貫き細菌の
侵⼊⾨⼾をつくることになり、感染をもたらす可能性があります。また、医療
従事者が⾎液に触れる可能性が常にあります。ウェルパスによる⼿指消毒と、
⼿袋の着⽤は必須です。静脈の位置を触診で探す場合など、⼿袋を着⽤してい
ては、わかりにくい場合がありますが、訓練で、ほとんどの場合可能となりま
す。
⽪膚の消毒は酒精綿で⾏います。刺⼊予定部を中⼼に同⼼円状に円を徐々に
拡⼤しながら、外側へと消毒範囲を広げてゆきます。
⼿術室では、⼤部分が静脈留置針の挿⼊ですので、⾎管内に挿⼊後、内側の⾦
属針を引き抜きます。引き抜いた⾦属針はすぐに、あらかじめすぐ横に⽤意し
た、針捨て容器に直接廃棄します。安全機構付きの針の場合は、逆流を確認し
⾦属針を引き抜いた後、すみやかに、安全装置を働かせて、針を安全な状態に
します。
留置した針と、点滴ルートの接続は、介助者に⼿伝ってもらうことを原則と
します。留置針から逆流した⾎液に触れないように、ペアンなどの鉗⼦で針を
押さえることが推奨されます。使⽤した鉗⼦は、毎回消毒することが原則です
(酒精綿で⼗分清拭するだけでも良い)。もちろん介助者は⼿指消毒後に⼿袋を
着⽤してから介助します。
使⽤した酒精綿は、⾎液が付着していても燃えるゴミに廃棄してかまいませ
ん。
⼀度挿⼊した末梢静脈留置針の有効期間は、4 ⽇間です。静脈留置針の上に貼
ったオプサイト(IV3000)にマジックで 4 ⽇後の⽇付と挿⼊した時刻を書き込
みます。

8.体位交換
側臥位、腹臥位の⼿術や、硬膜外⿇酔・脊髄くも膜下⿇酔などの側臥位をと
るときには、狭い⼿術台の上で安全に体位交換を⾏うために、ベッドの両側に
医師または、看護師が⽴ち頭側に⿇酔科医が⽴ちます。通常は、患者様の健康

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な⽪膚に触れることが多いですが、粘膜や顔⾯、陰部に⼿が触れることもあり
ます。⼿袋の着⽤が必要です。直後に⼿袋を外して⼿指消毒を⾏うべきです。
ドレーンがすでに挿⼊されている場合や、術後の場合は、より汚染のリスクが
⾼くなりますので、確実に⼿袋を着⽤して体位交換を介助すべきです。

9.硬膜外チューブの挿⼊、脊髄くも膜下⿇酔
1)感染の予防
硬膜外穿刺も腰椎穿刺も侵襲的な⼿技なので、感染を起こす危険性はありま
す。無菌操作の徹底と、抗菌薬の予防投与が、通常考えられる予防法です。他
の侵襲的な⼿技に習えば、硬膜外穿刺を⾏う直前に抗菌薬が投与されているこ
とが望ましいです。しかし、⼿術の感染予防がメインですので、硬膜外挿⼊や、
体位交換、術者の⼿洗いなどで時間が超過し、術者が執⼑するときに抗菌薬の
⾎中濃度が低下していては何にもなりません。このタイミングは当院ではまだ
決定していません。硬膜外投与までに抗菌薬が点滴され、30分以内に執⼑が
開始出来れば、ベストと思います。

2)背部のマーキング
腸⾻稜を触知して Jacoby 線や肩甲⾻尾側端を結ぶ線を引き、極突起をマー
キングする際に、⼿袋の着⽤が必要です。マーキングの終了後に⼿袋を外して、
⼿指消毒が必要です。

3)⼿指消毒
消毒を⾏う前に、ウェルパスで最低 1 回は⼿指消毒を⾏います。滅菌⼿袋の
着⽤だけでは不⼗分です。必ずウェルパスで⼿指消毒を⾏い乾燥してから、⼿
袋を着⽤します。⼿術室での硬膜外チューブの挿⼊時は、現時点では、滅菌ガ
ウンを着⽤していません。カテーテルの挿⼊なので、理想的には滅菌ガウンを
着⽤して⾏う⼿技に属すると思われます。今後の検討が必要です。

4)背部の消毒
硬膜外チューブの挿⼊には硬膜外⿇酔⽤のキット、脊髄くも膜下⿇酔には腰
椎⿇酔⽤キットをそれぞれ⽤います。キットの中には、スポンジブラシが 2 本
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と、消毒薬を⼊れる、カップが⼊っています。カップの中にネオヨジンを 7 分
⽬まで注⼊してもらいスポンジブラシに⼗分しみこませて、患者様の背中を消
毒します。このとき、刺⼊予定部を中⼼に同⼼円状に円を描きながら、徐々に
円を拡⼤して消毒範囲を拡⼤してゆきます。ブラシは必ず 1 ⽅向に動かし、戻
してはいけません。上下や左右に直線的な消毒をしてはいけません。1 回⽬に⼗
分広い範囲を消毒し、2 回⽬は同様に中⼼部から消毒しますが、1 回⽬の消毒範
囲より内側で消毒を終わります。

10.気管挿管時の感染対策
患者様が⼊室してから、挿管が終了するまでは様々な処置が続くので、⼿袋
は着⽤していることが多くなります。⼿袋の着⽤は処置毎に必要であれば、そ
の都度新しいものを着⽤します。
バッグアンドマスクでは両⼿に必ず⼿袋を着⽤します。
挿管時にクロスフィンガーを⾏った右⼿でむやみにバッグやボールペンなど
を触るのは避けましょう。理想的には、挿管チューブを挿⼊した直後に右⼿の
⼿袋は外すのがよいです。しかし、挿管直後は、換気を⾏ったり、余裕がない
場合が多いので、出来るだけ早い時期に右⼿の⼿袋を外すように⼼がけてくだ
さい。いつまでも⼿袋を着⽤していると⾔うことは、患者様の唾液を⿇酔機の
バッグや気化器などにたくさん付着させることになります。チューブを絆創膏
で固定するときに、⼿袋が汚染されていると、絆創膏も汚染されることになり
ます。
挿管時に使⽤した、喉頭鏡のブレードは⾎液や唾液や痰などが付着している
ことが多いので、使⽤後は周囲を汚染しないようにすぐにビニール袋や⼿袋な
どで包み込み、⿇酔科ワゴンの下段に置きます。もしエアウェイなどを使⽤し
ても同様にビニール袋などに⼊れて、⿇酔科ワゴンの下段に置きます。⿇酔科
ワゴンの上段は、基本的には清潔なものを取り扱います。

12.抜管時の感染対策

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抜管時は、患者様が咳き込むことも多く、⾶沫を浴びることもあるので、ゴ
ーグルの着⽤は必須です。また、引き抜いた挿管チューブには痰や唾液などが
⼤量に付着している場合があるので、すぐにビニール袋などで包んで、感染性
廃棄物に捨ててください。

13.バルンカテーテルの取り扱い
導尿に⽤いるバルンカテーテルと排尿バッグは現在、⼀体となり取り外しで
きない閉鎖システムを採⽤しています。排尿バッグは、たまった尿を捨てるた
めの廃液ドレーンが下部についています。排尿バッグの外側が汚染されている
と、廃液ドレーンから逆⾏性にバッグ内が汚染される可能性があります。排尿
バッグを床に置くことは厳禁です。また、バッグからバルンカテーテルさらに
は膀胱へと逆流をさせないために、排尿バッグは常に体より低い位置に維持し
ます。ベッド移動時などどうしても排尿バッグを体より⾼くするときは、カテ
ーテルをクランプします。クランプを続けると尿が膀胱にうっ滞するので、移
動などが終わり次第、体より低い位置に戻して、クランプを解放します。

14.注射、点滴など
注射薬や点滴を取り扱うときは、⼿指衛⽣を⾏って⼿袋を着⽤します。
アンプルは開ける前に酒精綿で開⼝部の周辺を消毒します。
バイアルは蓋を外したあとゴムの部分を酒精綿で消毒してから薬液を吸引し
ます。
プラボトルの点滴はシールを剥がしたあとは清潔なので、消毒せずに点滴セ
ットの針を刺してもよいです。ただし、シールを剥がしてから時間がたったり、
他の薬剤を注⼊したり操作を加えたあとは、酒精綿で消毒してから針を刺しま
す。
シュアプラグから薬液を注⼊するときは必ず酒精綿で消毒してから、注射器
をセットします。
これらで使⽤する酒精綿は、1 回の消毒で使い捨てます。ただし、⼀度に複数

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のアンプルを開けるときなどは、⼀連の動作を 1 枚の酒精綿で⾏ってもかまい
ません。

15.ゴーグルの着⽤
術中は、術野から⾎液や体液が⾶沫してくることもあり、⽬の保護は重要で
す。基本的には、患者様の⼊室から退室まで、ゴーグルを着⽤し続けることを
推奨します。

16.抗菌薬の予防投与
当院では、抗菌薬の予防投与を、⼿術室⼊室後、執⼑までの間に⿇酔科医が
⾏っています。多くの場合、気管挿管終了後にソルラクトなどの補液を⼀時中
断して、点滴セットを差し替えて、抗菌薬を投与しています。具体的な内容は
以下の通りです。

1)抗菌薬の選択
下部消化管(結腸・直腸・⾍垂炎など)はリリアジン(セフメタゾール:CMZ)、
それ以外はラセナゾリン(セファゾリン:CEZ)、敗⾎症や化膿性の疾患で治療
が必要な場合はそれぞれの主治医の指⽰で決定します。
(通常の⼿術では表⽪の
菌を対象にします。下部消化管の⼿術では、腸内細菌も対象にする必要があり
ます。)

2)抗菌薬の投与量
CMZ も CEZ も腎機能障害時は投与間隔を延⻑して調節する薬剤です。そのた
め、初期投与量は、体重によって決定します(⾼齢だから減量するとか、腎機
能が悪いから減量すると⾔うことではありません)。おおむね、60kg 以上で 2g、
それ以下で 1g としています。⽣⾷ 100mL に溶解して、10 分から 20 分で投与
します。初回投与の終了後、電⼦カルテに⼊⼒します。[診療記録]-[テンプレ
ート]-[共通]-[抗菌薬]とクリックし[初回投与観察表]をダブルクリックしま
す。テンプレートの内容に必要なチェックを⼊れて[決定]を押してください。

3)2 回⽬以降の投与
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通常の腎機能の場合、3 から 4 時間後に 1 回⽬と同量の抗菌薬を投与します。
それより早く⼿術が終了した場合は 2 回⽬の投与は必要ありません。腎機能障
害がある場合、クレアチニンクリアランスの推測値を計算で求めます。
男性のクレアチニンクリアランス推測値=(140 - 年齢)×理想体重(kg)/
(72×⾎清クレアチニン濃度(mg/dL))
⼥性のクレアチニンクリアランス推測値=男性の推測値×0.85
理想体重(kg)=(⾝⻑(m))2×22
クレアチニンクリアランス推測値が 50 より⼤きければ通常通り。10〜50 の
場合は 5 から 6 時間に 1 回追加します。10 より⼩さい場合は通常追加投与はし
ません。慢性透析中の場合も通常追加投与はしません。

2008.04.26 Takakuwa Version 1.0

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