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平成
18
年度 財団法人 笹川医学医療研究財団
 
「ホスピス緩和ケアスタッフに対する海外研修助成」 報告書
 
筑波大学附属病院 総合医コース レジデント浜野
 
研修期間:平成
18
10
1
日~平成
19
3
15
日(
166
日間)
 
研修先:オーストラリア(ビクトリア州、南オーストラリア州)
 
目次
 
§
1
今後の日本の医療システムに求めるもの
 
§
1.1
日本のホスピス緩和ケアに対する提言
 
§
1.2
ホスピス緩和ケアの対象
 
§
1.3
 
Multidisciplinary
チームが意味するもの
 
§
1.4
医療者の勤務形態に対する提言
 
§
2
バララットでの地域ホスピス・緩和ケアプログラム
 
§
3
 
Peter Maccallum Cancer Centre
の緩和ケアチーム
 
§
4
 
McCulloch House
 
での緩和ケアサービス§5
Calvary Health Care Bethlehem
での神経筋疾患に対する緩和ケアと
 
包括的緩和ケアサービス
 
§
6 SAPS(Southern Adelaide Palliative Service)
での地域ホスピス・緩和ケアプログラム
 
§
7 Western Adelaide Palliative Service
での地域ホスピス・緩和ケアプログラム
 
§
8 Central and East Adelaide Palliative Service(CAPS)
における地域ホスピス・緩和
 
ケアプログラム
 
§9 ホスピス・緩和ケアを支える社会資源§
10
オーストラリアの研修教育システム
 
§
11
最後に
 
 
§
1
今後の日本の医療システムに求めるもの
 
今回の研修を通じて様々な経験をさせて頂いたと同時に日本の医療システム、とりわけホスピス・緩和ケアに対する自分としての意見・提言もいくつか出てきた。報告書として研修全体の報告をさせて頂く前に自分としての意見を述べさせて頂きたいと思う。
 
§1.1日本のホスピス緩和ケアに対する提言
 
6
ヶ月に渡りオーストラリアでホスピス・緩和ケアの研修をさせて頂いた結果辿り着いた日本のホスピス緩和ケアの今後の方向性に関する個人的な考えを最初に述べさせて頂きたいと思う。
 
「ホスピス・緩和ケア」という言葉が普及し始め、緩和ケア病棟や在宅緩和ケアという言葉も聞き慣れたものになりつつある現在の日本にとって今後キーワードになるのが、「地域に開かれた
End of Life Care
」という考え方ではないだろうか?
 
日本では、ホスピス緩和ケアに携わらせて頂き多くの患者さんや家族と接する機会に恵まれたが、自宅で療養したい方が様々な理由で帰宅できないケースにも数多く遭遇した。もちろん、医療者側の力不足という部分もあるかもしれないが、在宅での介護力不足、介護者の不安、在宅ケアをサポートする医療資源の不足など様々な要因が関係しているように思われた。
 
今回の海外研修に応募したきっかけの1つが、海外では在宅で療養したい方々をどのようにサポートしているか?ということを学ぶ事であった。
 
オーストラリアでは、各地域で症状コントロール、
End stage care
、そしてレスパイト・ケアなどを行う緩和ケア病棟と他の専門医や看護師をサポート・教育する緩和ケアチームそして在宅療養をサポートするホスピス・ケアプログラムという3つの組織が連邦政府、州政府によって運営されている。
 
日本では、幸運にも施設やスタッフに恵まれた地域ではオーストラリアと同等もしくはそれ以上のケアサービスが提供されていると思うが、残念ながらそのサービスを受けられるのは限られたごく一部の地域というのが現状と思われる。
 
「人間の
mortality
100%
」と言われているように、全ての人々に
End of Life
というものが存在し、死というものが避けられないものになった時に、その時間を少しでも自分らしく満足いくように過ごしたいというのが多くの人々の願いであろう。しかし、地域や医療機関の事情によって不幸にも
End of Life
を望み通りに過ごすことができないというのが日本の実情であり、課題でもあると思われる。
 
今後の日本のホスピス緩和ケアにとって重要なことは数多くあるが、より多くの人々の
End of Life
を充実させるシステムを日本の実情に則して構築していく過程に関わっていくことが、今回の研修を通じて自分が学んだことを日本のホスピス緩和ケアに貢献する方
 
法と考え、以下に自分が考える
End of Life Care
システムを述べさせて頂く。
 
1つ目のポイントは、各患者さん・家族のマネジメントをそれぞれの医療機関ごとに考えるのではなくて、その患者さん・家族が生活する地域単位でマネジメントを考えることである。各医療機関にはそれぞれの事情があり、診断・治療・生活のサポートにおいて適切なサービスを供給できない場合もあるが、地域単位で供給できる医療資源・人材という観点から考えれば選択肢は広がり、より各個人に合わせた対応ができるようになると考えられる。現在の各医療機関が地域の資源を活用するという考え方から、地域の資源を地域で活用するという考え方への転換が必要と思われる。
 
そして、
2
つ目のポイントは上記内容をマネジメントする人材・機関を医療機関でなく
 
地域の機関に担当してもらう。現在の日本で言うならば地域包括支援センターや在宅介護支援センターに在宅緩和支援センターを併設し、何らかのサービスや介入が必要な場合は患者が住んでいる地域の支援センターに登録し、担当者が初期アセスメントを行い必要なサービスを判断する。この担当者は緩和ケアに精通した看護師などの医療専門職が望ましく、その判断に応じて地元の開業医による往診や訪問看護ステーションへ訪問看護を依頼する。この方法のメリットは各医療機関で緩和ケアに精通した医療専門職の雇用・育成が困難でも、各地域単位でそのような医療専門職を共有することでより多くの人々に質の高いサービスが提供できるものと思われる。以上の2点を盛り込んだシステムの長所は、人口や医療機関の実情に合わせて地域を設定することで地域格差を最小限にできる可能性があるということと、診断・治療・再発、そして積極的な治療が難しくなる時期で担当する医療機関や医師が変わっても「地域」という不変の枠組みで捉えることで継続的かつ個別化した対応ができる可能性が高いということである。最後に上記の考えに基づいた具体案を以下に提案したい。これはあくまでも現時点での個人的な意見であり実現の可能性は今後の日本のホスピス緩和ケアの動きに大きく依存するものと思われる。人口10万人ぐらいの地域で在宅緩和ケアサービスを提供する事務所を設置し、そこに常勤看護師1名、非常勤1~2名、更にできればケアマネージャーかソーシャルワーカーを1名配置する。どんなに自宅から離れた病院にかかっていても登録時は自宅の地域の事務所に登録することを原則として、サービスの流れを入院中心から在宅サービス中心に考えていく。「入院していなくてもいいから在宅へ」ではなく、「在宅で提供できるサービスでは対応できないので一時的に入院加療を考慮する」という考えで。

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