You are on page 1of 25

Blog(とWikipedia)を用いた大学での

地理教育の実践

目代邦康 (自然保護助成基金)
2011.5.24 JPGU
ソーシャルメディアと地球惑星科学セッション
はじめに
● 大学における地理教育

高校での地理,地学の低い履修率による知識量の不
足.

教職科目であるため,受講者数は多い.一斉教育.
● 「情報」世代

● 情報の収集→再構築→情報発信

● ICTを用いた教育の可能性を探る.
● 今回はWiki(Wikipedia)とblog 2
取り組み
● その1 講義の最終課題のレポートを,Wikipedia
の記事を書くことにする.テーマは,筆者が用意し
た「専門用語」あるいは「研究者」について調べる.
(2009年度実施)

● その2 講義の最終課題のレポートを,各々のblog
にアップロードする.テーマは,筆者が用意した書
籍一覧から1冊を選び「書評」を書く.
(2010年度実施)
3
課題 Wikipediaに記事を書く
● 課題の内容を,広く公開することによって,レポート
の質の向上をはかる.
● 学生の学習に対する動機付け

インターネット上の情報集積に寄与
● 情報発信することを学ぶ
● Wikipediaがどのようにつくられているのか知ること
によって,その利用方法を学ぶ.

4
方法
● 東京学芸大学2009年春学期に開講された「自然
地理学概説」の授業.
● 教員養成系でないコースの学生,約200人.専攻
は様々(地域研究,自然科学系,社会科学系).主
に2,3年
● 筆者が提示したテーマ一覧から,語句(人名を含
む)を1つ選び,調べて,Wikipediaにあたらしい項
目をつくり記事を書く.
● 課題は,4月末(3回目の講義)で提示.締め切りは
学期末.
● URLを電子メールで提出. 5
背景
● レポートの採点は本務地の勤務時間中には行えな
い.
● 大学でインターネットを利用した教育システムが用
意されているが(e-learning),使い勝手がいまひと
つ.
● レポート課題での,コピーアンドペーストの横行.

不特定多数によるチェック.

6
結果
● 問題の無い記事を書いた学生は2名.
● 体裁の不備.
● Wikipediaの記法になれていないと難しい.
● 著作権の問題.
● 講義で1回分をつかって著作権については解説してい
る.
● 調べられない.短い文章しかかけない.

学部学生には難しい.
● 締め切り間際の一斉アクセスによるブロック.
7
提出された課題1

8
提出された課題2

9
指導を受け書き足された例

10
予想外の展開
● 同一IPアドレスからの一斉アクセスは「荒らし」行為と見な
される.

それらの記事が,内容に問題あり.

そのため,大学から書き込みができなくなる.


質の低い記事が,一斉にアップロードされたので,その品
質管理作業が集中的に発生.
●管理者はボランティア.地理学に詳しい人は,修士卒の
人がいるらしい.
● 推敲が不十分.コピーアンドペーストも多数.

問題がある記事は削除されるが,意味不明だと残ってしま
11
う.
12

http://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia‐ノート:削除依頼/自墳
13
学生の対応

14
課題 blogに書評に掲載
● 前年の反省:

記事のオリジナリティーの問題.

集中アクセス
● 改善案

公開させる方針は継続

調べて書くのではなく,考えて書く →「書評」
● 分散型 →blog

15
方法
● 各自,既存のサービスを使ってblogをつくる.
● 課題図書を,筆者がblogで公開(親blog).
● 提出 ・・・親blogにトラックバック.

一ヶ所のサイトからリンクで辿れるので,他の人の課題
を読むことも可能になる.
● 課題は2冊.1冊目の書評を書いた後,他の学生の
書評も読み,内容の向上につとめる.
● 他の学生へコメント.

人のレポートを読む機会をつくる.
● Blogは匿名で可.学生番号とURLを著者に知らせ
る. 16
17
またもや・・
● Blogサービス間のトラックバックの不具合.

相性の問題.?
● ネットワーク上の問題は,上記問題のみ.

18
学生による相互コメント

19
書評をblogに書く課題
● 質の向上について:学生の書いた書評を読む限
り,品質の大幅な向上はみられない.
● 他人の書評を読むことについて:コメントがありきた
りのものであるとから,各自の文章の改善には役
にたっていなさそう.(真意はわからず.)

20
Blog, Wikipediaを用いて気づいた点
● 整理は容易.(非常勤講師にはメリットが大きい)
● いつでも書き換えられるというメリットとデメリット. 
←いつ評価するか,明示する必要あり.
● 学生に修正を要求できる.
● インタラクティブな教育が可能.少人数なら教育効果は
高い.
● 公開することの意義.強く反対した学生は居なかっ
たが,確認しにくる学生は数名いた(プライバシー
の問題など). 
● blogが授業後,どうなったか追跡したところ,みな残
存.追記もなし.
● 本の著者とつながる可能性.
21
まとめ
● 大学の教職科目の「自然地理学」で,Wikipediaの
記事作成,blogに書評を掲載という課題を課した.
● Wiki,blogともに,情報の集約,一覧性という機能
を元々持っているので,大学教育におけるツールと
して活用しやすい.
● 大学における一斉教育の場で使われることは,シ
ステム設計上考慮されていないので,実際の運用
にあたっては,集中アクセスの問題など,慎重に準
備をすすめる必要がある.

22
23
日本地理学会 ICTを活用した地理学の
社会普及・連携に関する研究グループ

発起人代表者:目代邦康(財団法人自然保護助成基金)

発起人:伊藤智章(静岡県立吉原高校),小口 高(東京大
学),澤田結基(産業技術総合研究所),谷 謙二(埼玉大学),
山田晴通(東京経済大学)

● 近年,ICT(Information and Communication Technology:通信情報技


術)の技術革新と普及により,学術界を取り巻く状況は大きく変化してい
る.多くの人が学術情報に接することができるようになる中で,情報発信や
活用の方法,信頼性の担保など,多く問題点が生まれている.一方で,多
くの蓄積を持つ地理学にとっては,研究を飛躍させ,社会とのつながりを
強化する好機であるといえる.このような状況の中で,ICTを活用した地理
学の社会普及・連携を進めていくため,これまでの地理学における成果を
整理,共有し,さらに実践を踏まえ,情報の蓄積,活用の方法について議
論する.
24
Wikipediaの信頼性
● 専門家:学術情報の信頼性に対する疑問.
● 英語,ドイツ語において,活字とWikipediaの情報を比
較すると,Wikipediaは,多少劣るが大差はないという
結果(Giles, 2005; Rector, 2008など).
● Giles(2005)Special Report: Internet encyclopaedias go head to head.
Nature, 438, 900-901
● Rector(2008). Comparison of Wikipedia and other encyclopedias for
accuracy, breadth, and depth in historical articles. Reference Services
Review, 36, 7-22

25

You might also like