1
社会福祉とは
1.1
「社会福祉とは?」に答えるパースペクティブ
1.1.1
歴史的観点
その起源は近代社会(モダン)の成立そのものにある。
•
前提は
社会
•
社会の対極としての
個人
•
近代になり
個性をもつ個人
の誕生
•
社会と個人の
対立
図式の誕生
•
個人(個性)の増長による
社会の崩壊
*1
1.1.2
論理的観点
個性が強化されることにより、個人(自分)が個人(自分)について言及する場面が多くなった。自己言及というのは自己矛盾を内包する。これは目新しいことではない。古くはギリシア時代から知られていた。有名なものとしては「嘘つきのクレタ人」というものがある
*2
。自己言及そのものは実はそれほど問題ではない。自己言及は言い替えればメタ言語ともいえるが、メタ言語は日常的に駆使されているし、これなくしては言語活動そのものが成り立たなくなってしまうからだ
*3
。近代から現代にかけての問題はむしろ、自己言及が個人に向けられることが強調された(強調されすぎた)ことに依る。個性と何かしらの関係をもつ学問が多く発生した事実からもそれは分かる
*4
。個性の強調はしかし、あくまで個性を客観視できている範囲内でのみ有効である
*5
。現代では個性があまりに強調されすぎ、ある意味それが社会現象として逆表出するまでにいたっている
*6
。個性の増長の産物は結果的に、自らの揺りかごとしての社会の崩壊であった、ともいえる。以上のような現象に関する反発(あるいは自己調整機能)として登場したのが社会福祉である、という仮説も成り立つ。
1.1.3
まとめ
社会福祉とは、近代社会が自ら内在する矛盾から創出された一つの制度、ということができる。その源泉には「強い個人」があり、その結果生じてきた現象がある。家族やその他の集合帯では満たされない個人の生存や生活上のニーズが、社会問題として認識された、その結果として生じたものと言い替えてもよかろう。
*1
個人(個性)の増長とは、個人が自分自身について考え、語り、より深く知ろうとする傾向のことを指す。このことを換言すれば、個人が自己言及を始めたといってもよいだろう。社会という集合の中での要素という地位からは決して脱しきれない個人というものがそれをすることはしかし半面、論理的にみると後述するように、必ず矛盾に陥る。
*2
「クレタ人は嘘つきだ」とあるクレタ人がいったとしよう。このクレタ人は正直者か嘘つきか。
*3
例えばメタ言語によって、言語について言語自身で説明することができる(「○○という語は∼という意味です」というふうに)。結果、人間はそれによって言語を学習することができる。相手と通じ合えない場合も「この時こういうつもりで∼と言ったんだけど」と言って相互理解を図り、人間関係を調節することができる。これらはすべてメタ言語の働きである。
*4
代表的なものとしてはフロイトの『夢判断』
(1900)
『精神分析学入門』
(1917)
を始祖とする現代心理学。他にも人類自身の個性という分野 を確立したダーウィンの『種の起源』
(1856)
がある。数学の分野でも奇しくも自己言及がトピックスになったのはこの時代であるし、アインシュタインの相対性理論にもこの影響が認められることは認知されている。フロイト、ユング 関連年表
*5
すでにこのような言い回しそのものがメタ言語をメタメタ言語として用いていることが分かるだろう。事実この通り、メタ言語の危険性というのはそれが限りなく増長していく性質にある。個性が強化されるということはメタ化の歯止めが効かなくなるということでもある。日常の会話ではこのようなことは起きない。個性の客観視というのは自己言及が会話の中で収まっている範囲内と言い替えても良い。
*6
その例を見付けるのは容易である。家庭崩壊などがそうであろうし、さらにはカルト教団による大量殺戮、小子化などもこの視点からみれば個性の増長が影響しているといえる。
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