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第 2 部 事例:マラウイにおける教育マネジメントの現状と課題

4.国としての取り組み

本章の目的:マラウイの国家および教育セクター人材育成政策とその実施体制を事例に、国 や組織レベルで必要としている教育行政の人材ニーズとその育成アプローチについて概観 し、政策が の特徴である包括性と内発性を包含したものか考察する。

4 - 1 国家人材育成政策

1964 年の独立以降、マラウイにおける国家人材育成政策と方針は 1971 年に策定された国家開 発政策( 1971 - 80: )の中で示されてきた。 は、当時のマラウイ国家開発の最上位政策であり、

1.開放経済

2.自立的な食糧自給、外貨獲得、農村開発と所得の向上を目指した農業セクター開発

3.地域開発における格差の是正

4.起業家育成に焦点を当てた民間セクターの強化

5.公共、民間の両セクターの資源の有効活用と効果的なマネジメント

の 5 つを主要目標としていた。 この政策の下に3年ごとの各セクター開発計画があり、それによって の活動計画(ア クション・プラン)は毎年改定されることとされていた。しかし、具体的な人材育成政策とその 活動計画は、1989 年のマラウイ訓練政策( )の策定まで待たなければなら なかった 60 。 すなわち、1989 年までの人材育成は、 の長期目標に基づいた計画と戦略に沿って実施 されてきたとはいえず、国の予算が確保された場合やドナーから支援があった場合に、大統領府

60 この政策策定の背景には、世銀の構造調整プログラム、セクター調整ローンの影響がある。世銀によるマラウイ

に対する構造調整プログラムのフェーズ 1(1981 - 86)によってもたらされた農業価格と市場の自由化は、

1986 - 87 年に深刻な食糧危機を引き起こし、その翌 1988 年から開始されたプログラムフェーズ 2(1988 - 92)

では、セクター調整ローン( )としてマクロ経済運営改革を目標として、公務員改革を含 む行政改革や人材育成政策などフェーズ1 よりさらに深く構造的な部分に踏み込んだ形の条件( )を 付与した支援が開始された( (2001))。

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61 を中心に提供されているプログラムの内容に応じて人

選を行うという場当たり的なものであったことは否定できない 62 。この人材育成政策の策定後、 1996 年と 2004年の二度にわたり改定(以下、それぞれ「1996 年版政策」、「2004 年版政策」 63 )が

行われ、現在に至っている。

4 - 2 人材育成の対象

1989 年および 1996 年版政策では、公共・民間の両セクターを対象とし、政府が国全体の人材 育成について責任を持っていた。マラウイにおける民間セクターの規模が小さく、各企業が独自 に人材育成プログラムを実施している例はまれで、政府の役割のひとつとして国全体の人材育成 が位置付けられていたからである。

一方、2004年版政策では民間セクターを対象からはずし、公共セクターのみに対象を絞ってい

る。その背景には、2002 年からの公共セクター・マネジメント改革( )の実施がある。1980年代から肥大化していた政府組織を、効率的かつ効果的な 公共サービス提供を実現するため人材育成も公共部門に限ることとしたのである。また、政府の 提供する人材育成プログラム終了後、よりよい職場環境や待遇を求めて公共セクターから民間セ クターへ人材流出が深刻な問題になってきたことも影響している 64

4 - 3 人材育成の目標

人材育成の目標は、政策改定を重ねるごとに、内容が再検討され、その目標や戦略が明確化さ れてきている。まず、前半の 1989 年および 1996 年版政策を概観してみよう。表 4 -1 は、各政策 目標をまとめたものである。 これらは、貧困削減戦略( )によって貧困問題が国際社会で最 重要課題とされる前に策定、改訂された国家人材育成政策であり、当時の国家開発政策であった との整合性が特に強調されている。

また、大きな特徴としては、1)ニーズに基づいた研修の提供、2)社会的弱者への配慮、

3)ローカライゼーションの推進/加速、を基礎としており、社会の公正と人々のニーズに重点を

置き、民主的でバランスの取れた政策目標となっている。 さらに、2004 年版政策は、上述 2 つと比較してもその内容 65 、構成もより充実されている。

61 政府機関の組織改革および公務員人事全般に関する業務を行う。 の中で、人材育成を担当する現在の は、当時、 と 呼ばれていた。

62 マネジメントサービス局副局長、人的資源開発局局長補佐、副局長へのインタビュー。

63 それぞれの正式名称は、1996 年改訂版は「 」、2004年改訂版は「 」。

64 人的資源局局長補佐へのインタビューによる。

65 政策書としてのボリュームは、1989年(9ページ)、1996年(17ページ)、1904 年(38 ページ)と増え、より詳細 なものへと発展している。

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表 4 -1 1989年版および 1996年版の人材育成政策の目標

1989 年版

1. の優先分野に基づいた人材育成 2. 人々のニーズに合致した人材育成プログラムの 提供、特に、地方・女性や障害を持った人々の ニーズに配慮 3. 公共、民間の両セクターにおいて円滑な「ロー

カライゼーション 66 」への移行を推進

1996 年版

1. の優先分野に基づいた人材育成 2. 人々のニーズに合致した人材育成プログラムを 提供、特に社会的弱者(女性、地方と都市部の 貧困層、障害を持った人々)への配慮 3. 公共、民間の両セクターにおいて円滑な「ロー カライゼーション」への移行を加速 4. マラウイ人起業家育成の推進 5. 構造改革が必要な分野に関しその実施支援 (例:科学技術や地方分権化に関する政策) 6. すべての教育機関の高い学術レベルの維持

6. すべての教育機関の高い学術レベルの維持

出所: (1989 1996)を基に著者作成。

表 4 -2 2004年版の国家人材育成政策

長期目標: 公共セクターにおける高い人材能力の実現 使命・役割: 公共セクター管理、実施、公共サービス提供の改善のための質の高い研修プログラムの提供 方針:

1.研修はすべての職員を対象とし、知識、スキル、態度の各方面において各自の役割と責任の向上を目

的とする。

2.実技と座学を組み合わせた学習方法を活用する。

3.公共セクター開発戦略と合致した人材育成プログラムを提供する。

4.人材育成の目的に応じて、働きながらのオン・ザ・ジョブ・トレーニング( )や、休職などによ って職場を離れてのオフ・ザ・ジョブ・トレーニングを国内、域内、その他海外の研修機関で実施する。 5.政府、民間セクター、そして非政府組織( )の連携によって プログラムを実施する。

6.研修のマネジメントは地方分権化に基づいて行う。

7.研修のニーズ分析および評価は、職員の技能開発と継続的な学習に関する公共セクター戦略の情報を

提供するものとする。

目標:

1.個々人の研修ニーズに基づき、かつ貧困削減書や貧困削減プログラムに示されている複数のセクター

に関係する課題(ジェンダーや など)についての研修や能力開発を実施する。

2.新人職員から管理職まですべてのレベルにおいてオリエンテーション研修を実施する。

3.計画、調整、モニタリング、そして持続的な研修プログラムを公共セクターのすべてのレベルで実施

する。

4.効果的な研修の実現のために、研修実施に必要な研修トレーナー、施設、資機材について明確にし、

その予算手当を行う。

5.研修プログラムをマネジメントする公共セクター内の内部能力を強化する。

6.全部署、全職員に対して、優先分野、開発計画と整合性のある研修を提供する。

7.マラウイ国籍かつ国家公務員を対象として研修機会を提供する。

8.公共セクターの全レベルにおける透明性と成果主義に基づくマネジメントを促進する。

出所: (2005)を基に著者作成。

66 1964年の独立後、新政府がまず取り組まなければならなかった問題は、それまで植民地政府の役人が担っていた 専門職をどのようにマラウイ人が担っていくか(ローカライゼーション/アフリカナイゼーション)ということ だった( 2001)。

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この政策の大きな特徴は、長期的展望・長期目標( )、使命・役割( )、方針

)、そして目標が示されており、これまでの政策に比べて論理構成も改善され

ている点である(表 4 -2)。すなわち、より効果的で質の高い公共サービス提供により貧困削減

が実現することが、公共セクターにおける人材育成の第一の目標であることを明確に示してい る。また同時にこれまでの政策と同様、個々人の研修ニーズに基づく研修プログラムの提供と、 研修機会配分の公正さを強調し、その実現のためには国内外の研修機関、民間セクターや との連携協力を推進していくこととしている。

4 - 4 政策実施体制とプロセス

2004 年版政策の実施は、主に 5 つの機関によって行われることが想定されている(図 4 -1)。

図 4 -1 マラウイ国家人材育成政策の実施体制

公共サービス研修諮問委員会(PSTAB)

 政策実施に関する助言

 政策実施のモニタリング

 年次人材育成計画の承認

 人材育成プログラムの持続的な財政

戦略計画策定

 公共セクター管理と開発の目標達成

に必要な人材育成優先分野の決定

に必要な人材育成優先分野の決定 ●  委員会メンバー と委員長の任命 ●

 委員会メンバー

と委員長の任命

 事務局設置

大統領府(OPC) 人的資源開発局(DHRMD) ●  政策実施の推進(リーダーシップ)と
大統領府(OPC)
人的資源開発局(DHRMD)
●  政策実施の推進(リーダーシップ)と
調整
●  持続的な財源の確保、インセンティブ
●  人材育成政策の実施、マネジメント、調整、
など良好な環境づくり
モニタリング、評価全般
●  国家研修データベースの開発と管理
各省庁
●  研修施設に関する諸事項(拡張や新設な
ど)のOPCへの報告
研修委員会
(Training Committee)
●  ニーズ調査の実施と研修年次計画の策定
とOPCへの提出
●  人材育成政策の実施
●  年次報告書の作成とOPCへの提出
●  各省庁の研修戦略計画の立案
●  研修ニーズと優先順位に基づいた研修活動の実施
●  新人研修の実施
●  研修プログラムのモニタリング・評価
●  研修後の適所適材
●  研修プログラムの財政管理
●  OPCとともに研修奨学制度や
プログラムに必要な事務手続き

出所: (2004)を基に著者作成。

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その中でも中心的な役割を担うのは、 である。 は政策実施において主導的な役割と、そ の推進と調整作業のためにリーダーシップを発揮し、人材育成プログラムの持続的な実施のため の財源確保やインセンティブの制度化など効果的なキャパシティ・ディベロップメントのための 良好な環境を整備することが期待されている。 次に の中で、人材育成に関する業務に特化した部署が人的資源局( )である。人材育成プログラムの実施、マネジメ ント、調整作業、モニタリング・評価全般、研修のデータベース開発と管理を担当する。人材育 成計画やプログラムに関する各省庁間との連絡、また、ドナーが研修事業を支援する場合の窓口 になるのもこの部署である。 公共サービス研修諮問委員会( )は、人材育 成政策の実施、モニタリングなどに関して助言を行う。助言だけでなく、 が策定する年次人 材育成計画の承認やプログラム実施のための財政戦略計画の策定などを行う。委員会のメンバー は の事務次官から任命され、事務局も によって運営されている。そして、 によって策定された政策は、各省庁に通達され、それに従い、かつ省庁ごとの要請に基づ いた研修戦略計画を立案する。研修の実施、マネジメント、モニタリング・評価、そして財政管 理は、基本的に各省庁の主導によって実施するが、年次計画と終了後の報告書は に提出する ことが求められている。 このようにマラウイ公共セクター全体の人材育成、 に関する政策、実施プログラムの方針、 計画は、 が中心になって実施されている。そして、各機関の役割が、政策文書の 上では、明確に定められ組織的に実施されるように定められている。

4 - 5 教育セクター開発政策

マラウイ政府は、「ビジョン 2020」と「マラウイ貧困削減戦略書( )」を国家開発政策の上位基本文書として位置付けている。また、2004年 7 月には、マラウイ国経済成長戦略( )を制定し、貧困削減戦略 に民間セクター開発を積極的に取り入れた経済開発に、より重点を置いた政策指針を示してい る。これら開発政策文書の中で、教育の役割を、農業開発、健康の増進、経済開発、そして民主 的な政治環境づくりなど社会経済開発全般に及ぶとし、重要なセクターとして位置付けている。 これら国家開発政策に基づいた教育セクター開発の上位政策文書として「(教育)政策と投資 枠組み( )」がある。1996年に策定作業が開始され、4年を 経た 2000 年にドラフトが完成し、改定の後、最終的に 2002年に国会の承認を得た。 (2000 - 2012)は、マラウイ教育セクターが直面する課題を、① 教育へのアクセス、

教育の公正さ、③ 教育の質、④ 教育内容の妥当性、社会との整合性、⑤ 教育マネジメント、

教育計画、⑦ 教育財政の7つの側面で現状分析と課題の提示を行い、2012 年までの目標と戦

略の指針を設定している。ドナーによる支援はすべて、この の実施促進を目的として行われ ている。

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しかし、 は、教育セクターが直面する課題と、今後 10 年間の政策目標を掲げているだけで あり、具体的に関係者がどのような行動をとるべきかを示している行動計画ではなかった。ま た、その間、 行動計画や教員開発計画、 関連計画などの課題ごとにさまざまな計 画のドラフトが作成され、それが計画の重複や援助協調を困難にしているという問題が生じた。 そこでこれらの政策書、計画を統一した「セクター開発計画」を策定することとなった。この背 景には、セクター・ワイド・アプローチ( )による支援枠組みを構 築したいドナー側が、財政支援の必要条件としてマラウイ教育省に策定を要求してきたことがあ る。2004 年に 支援の政策アドバイザーを中心にドナーと教育省と共同策定作業が始まり 翌 2005 年6 月に、国家教育セクター計画( )のドラフトが完 成した。2005 年から 2015 年までの 10 年計画であり、今後、修正を重ねていき、省として最終案 をまとめる予定である。

4 - 6 教育セクター人材育成政策

1994年の複数政党制による初の大統領選挙以後、これまで教育セクターではさまざまな人材育

成、組織強化のためのプログラムやプロジェクトが行われてきた。 しかし、それらの多くは、必ずしもマラウイ側のオーナーシップによるイニシアティブやニー ズに基づいたものであったとはいえない。なぜならば、これまで述べてきたとおり国家レベルと しては、1989 年の政策とその後 1996 年と 2004 年の 2 回の改定によって具体的な人材育成政策が 策定され、本来ならばそれを基に各省ごとの政策を策定されるはずであったが、教育セクターに おいては策定されないままだったからである。 人材育成のためのプログラム実施支援の要請がまずマラウイ側からあり、それに対してドナー が支援内容を提示するというよりは、ドナーが支援を行う際の事前調査やベースライン調査に基 づいて提案された研修やトレーニング・プログラムについて、協議を経てマラウイ側が受け入 れ、それに参加する人材を選定する、というようにドナー主導のプロセスによって進められてき

た。すなわち、1964年の独立後これまでの教育セクターにおける人材育成は、計画的・戦略的な

ものではなかったといえよう 67 。 このような状況を改善し、教育セクター開発目標の達成のために必要な人材を、限られた資源 の中で効果的に育成していくために、2003 年初旬から「トレーニング政策イニシアティブ

)」という人材育成に関するガイドラインの策定を始め、2005年に最終ド

ラフト案がようやく完成した。将来的には、このガイドラインに従って人材育成年度計画を作 り、ドナーからの支援もこれに基づいて支援要請していくことを教育省は目指している。ガイド ラインは、先の 2004 年版の政府人材育成政策を基礎に作成されており、全体構成だけでなく、 目的、政策方針、戦略もほぼ同じ内容 68 になっている。

67 教育省 局長、 副局長などへのインタビューによる。

68 「研修プログラムの計画、配分においては公正さと透明性の確保が必要」と、明確にされている点が 2004 年版と は異なる。

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ガイドラインの特徴としては、教育セクター職員が長・短期の研修を受けたい場合の応募のプ ロセス、財源の種類 69 、研修期間中の有給による研修の手続き 70 、奨学金の手続きなど、研修プロ グラムの提供の際に頻繁に問題になる金銭面での手続きについて明確にしてあることである 71 。ま た、研修プログラム参加者人選の基準についても定めている 72

4 - 7 評価と課題

独立後から約 25 年を経てようやく策定された国家人材育成政策であるが、その政策目標やビ ジョンは、国の開発戦略目標との整合性を図り、かつ、個人レベルのニーズを基礎とすること、 そして研修機会の配分においては社会的弱者への配慮など社会の公正さと透明性を確保するな ど、グッド・ガバナンスを意識したものとなっており、経済開発だけでなく社会開発の重要性や 制度運用の健全さを認識したバランスの取れた人材育成政策目標であるといえよう。 ただし、この政策は、あくまでも「公共セクターにおける高い人材能力」を目標とした人材育 成政策であり、必ずしも の特徴である個人、組織、社会・制度という 3 層の包括性と内発性 を意識し、その実現を目的としたものではない。 概念は、関係者間の役割分担体制、制度、 政策、社会システム、知識・技術などのすべての要素を集合体として包括的にとらえ、それぞれ のセクター開発における必要なキャパシティ 73 として織り成すことの重要性を強調しており、こ のような 本来の概念から2004 年版政策を評価すると、その視点は、業務執行に必要な能力を いかに個人レベルで強化するか、そのための技術的な留意点を定めているものであり、個人レベ ルにおける“狭義の ”にとどまっているといえよう。 従って、この政策によって、個人の能力が次の段階である組織、社会制度の強化へと、どのよ うにつながっていくのか、そのためにどのような組織構造やリーダーシップ、意思決定プロセ ス、そしてインセンティブを設定していくことが必要なのか、という が実現していくプロセ スについてはいまだ不透明なままであるといえよう。

69 1)教育省予算、2) (人的資源局)および外務省の奨学金、3)ドナー支援、4)個人負担、の 4 つを想定し ている。

70 国内外の教育機関に個人で応募したものではなく、政府の承認を得た研修プログラムであることが必要。その際 の財源は政府予算、ドナー支援のどちらでも構わない、とされている。

71 ガイドラインの序文には、能力開発の研修機会の配分について「 (不適当な要 求や要請に対して“ノー”と言う)」、「 (利益に絡む争いを避ける)」などの倫理的な 課題についての対処について触れられている。

72 1)2004 年版人材育成政策との整合性、2)ジェンダー間のバランス配慮、3)年齢制限(長期研修参加は 45 歳ま

で)、ただし遠隔教育については制限なし、4)長期研修は勤続2年以上、短期研修は勤続に制限なし、5)ドナー

支援による長期研修の参加資格条件を満たすこと、6)組織と個人のニーズに基づいた研修であること、などを

選考基準としている。

73 (2005)

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5.ドナーによる支援の特徴

本章の目的:マラウイ教育セクターにおけるドナーの支援を概観するとともに、各ドナーの 概念のとらえ方、教育マネジメントに関する への支援の特徴について整理する。ま た、第 3 章で示した を促進する 5 つの鍵(オーナーシップ、政策・制度、インセンティ ブ、リーダーシップ、そして知識)に対してどのような配慮を行い、協力を実施しているの か、そのアプローチについても考察する。

5 - 1 ドナーの教育セクター支援方針

マラウイには 1994 年の民主化以降、多くの二国間および国際援助機関が教育開発を重点セク ターと位置付け支援を行っている。主な二国間ドナーは、カナダ(カナダ国際開発庁( ))、英国(英国国際開発省( ))、 ドイツ(ドイツ 技 術 協 力 公 社( )/ドイツ 資 金 協 力 機 関( ))、米 国

)、日本、そして国際機関・国際金融機関は、ユネスコ(

)、ユニセフ( )、国 際食糧計画( )、アフリカ 開発銀行( )、世界銀行( )である。 表 5 -1 は、各ドナーの支援方針と重点サブ・セクターおよび重点分野を示している。 ミレニアム開発目標( )やマラウイ貧困削減戦略書、そ して、「すべての子どもたちに教育を」など国際的な開発目標の達成への協力を共通の支援方針 とし、その中で人権や子どもの健康など各機関の特徴を優先分野としている。全体的には、初等 教育が重点分野として位置付けられ、ほぼすべてのドナーが当該分野への協力を行っている。 また、教育政策や教育計画、教育情報マネジメントに関する支援に対してもほとんどのドナー が関与している。その多くは、プロジェクトのマネジメント能力を強化し、対象とするサブ・セ クター支援が効果的に行われることを目的としている。例えば、小学校建設を行う際に、地方教 育事務所の行政官に対して予算計画、業者の選定、調達手続きからプロジェクトのモニタリング 監理などプロジェクト・マネジメントに関する研修やトレーニングを実施したり、 関 連の啓蒙活動を学校レベルで実施する際に、中央、州、県の各教育行政機関事務官に対して他地 域でも同様の啓蒙活動が広がるよう人材養成研修などを行ったりするなど、ハードとソフトを効 果的に組み合わせた協力を目指している。

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表 5 -1 主要ドナーのマラウイ教育セクター支援方針と優先サブ・セクター、重点分野

(注)○:初等教育関連、■:中等教育関連、□:高等教育関連、★:教育行政関連、*:セクター横断的課題

 

ドナー

支援方針

 

優先サブ・セクター/重点分野

の教育セクター開発目標達成のための 支援 枠組みづくりに向けた支援

中等教育教員

中等教育

目標達成のための支援 基本的ニーズの向上、貧困削減に資する支援 枠組みづくりに向けた支援

教育行政/政策

中等教育教員訓練

教育

 

初等教育

ジェンダー

目標達成のための支援 枠組みづくりに向けた政策支援

初等教育

教育行政/政策

目標達成のための支援

初等教育教員訓練

枠組みづくりに向けた政策支援

初等教育

 

初等教育終了後の職業訓練教育

ジェンダー

教育行政

の目標達成のための政策支援 、人権教育、平和教育、環境教育、科学教育、 言語教育・文化の多様性、就学前教育、成人教育の 促進

就学前教育

初等教育

成人識字教育

(ノン・フォーマル教育)

 

ガイダンスおよび カウンセリング

教育計画

子どもの健康、教育の改善のための支援 人権を基礎とした開発政策の促進

初等教育

就学前教育

 

ジェンダー

教育

目標達成のための支援 教育やトレーニングを通した人的資源開発の促進

初等教育教員

初等教育

 

高等教育

教育情報管理

教育政策

教育 * ジェンダー

目標達成のための支援 枠組みづくりに向けた政策支援

初等教育

中等教育

 

教育政策

教育 * ジェンダー

の目標達成のための支援 学校給食制度普及による子どもの健康向上

初等教育

日本

目標達成のための支援 援助協調の促進、 支援

教育行政・計画

中等教育教員訓練

 

初等教育

出所: 2004 /05 および現地インタビュー調査を基に筆者作成。

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5 - 2  の支援アプローチと動向

5-2- 1 キャパシティの認識

各ドナーが実施している支援アプローチを検討する際、まず、教育マネジメントの をどの ように認識しているのかを理解することが重要である。強化するキャパシティの認識は、具体的 な支援プログラムやプロジェクトが、一体、何に対して、誰に対する を強化することを目的 としているのかに大きく影響してくるからである。そこで、表 5 -2 は、わが国を含む各ドナーの 教育マネジメントにおけるキャパシティについてのとらえ方、理解をまとめたものである。

表 5 -2 ドナーの教育マネジメント分野におけるキャパシティの認識

ドナー

教育マネジメントのキャパシティとは何か?

個人、組織の業務執行能力 教育行政能力

既存の組織、制度の能力 個人だけでなく部署のチーム力としての能力 リーダーシップ

個人や組織の業務執行能力 制度構築による教育セクター・マネジメント能力 教育行政能力

個人や組織の業務執行能力 地方教育事務所の能力 制度構築による教育セクター・マネジメント能力

教育本省のマネジメント能力 リーダーシップ

教育本省のマネジメント能力 リーダーシップ 個人や組織の業務執行能力 学校運営能力

教育省のマネジメント能力 学校運営能力 リーダーシップ 個人や組織の業務執行能力

教育行政の政策実施能力 リーダーシップ アカウンタビリティ

教育行政の政策実施能力 リーダーシップ

日本

教育行政能力

学校運営能力

出所: 2004 /05 および各ドナーの現地事務所教育担当者への インタビュー調査を基に筆者作成。

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これから、ドナーは、教育マネジメントにおけるキャパシティを、1)マネジメント能力、

2)リーダーシップ、そして、3)アカウンタビリティ(行政の透明性)確保の能力、という大き

く 3 つ、またはその一部としてとらえていると考えることができるだろう。特に、ここでいうマ ネジメント能力とは、教育計画や予算の立案から調達、プロジェクトの実施、ドナーや政府内機 関との調整、活動評価、レポート作成能力など教育行政の全般にわたるマネジメント能力を指し ており、その中で、ドナーによって計画部門や評価部門など、それぞれの分野を重点的に支援し ている。すなわち、教育行政においても地方分権化が進行する中、政策推進の強いリーダーシッ プを持って、国内の他政府機関やドナーなど関係者間の調整を行い、省内での政策実施プロセス の透明性を確保しながら実施のマネジメントを円滑に行っていく能力を強化していくことを、教 育マネジメントの と認識しているといえる。

5-2- 2 支援アプローチの特徴

では、このような支援方針と の認識に基づき、各ドナーは、実際どのような支援を行って いるのであろうか。表5 -3 は、各ドナーの支援形態、対象地域、そして の枠組みに基づい た直接財政支援についての立場をまとめたものである。 まず、支援形態を見ると、 を除き、ほとんどのドナーがプロジェクト型 をとっている。一方、対象地域を見ると、 、そしてわが国を除き、全国を対象 とする支援を行っている。 ただし、この場合の全国展開型とは、カリキュラム改定とそれに関連する教科書配布、教員訓 練など、地域を限定して行うと教育の質の管理に支障をきたす恐れがあり、地域限定型やパイロ ット型では実施が困難な支援が主である。学校建設や教科教授法改善を目的とした教員訓練など の支援では、全国を対象地域としているという意味においての全国展開型であり、実施において は州や県を限定して行っており、全地域を同時に実施対象とするものではない。 過去に行われたドナー支援によるパイロット型プロジェクトが、パイロット期間、すなわち支 援内容やアプローチの「試験期間」を経て、全国展開へと進む例がまれであり 74 、長期的には教 育セクターの各組織強化や国全体の制度強化につながっていないという意見が強く、パイロット 型で支援を行う場合にも、「その後」どのように発展または、フェーズアウト(支援終了)して いくのか長期的な視野が必要であるという認識がドナー間での一般的な認識である。 また、直接財政支援についての姿勢を見ると、大きく 3 つに分類できる。 を 中心とした積極的推進派と、 やわが国の慎重派、そして など、国際 機関を中心とした積極的推進ではないが直接財政支援枠組みの方向性については支持をする立場 である。推進派の中でも牽引役である など欧州ドナーは、 の枠組みが出来次

74 その理由としてマラウイ側のオーナーシップや実施体制の不備を指摘する報告もある一方、実際は、ドナー側の 予算、援助人材確保の問題、さらに、プロジェクト継続の正当性確保の困難さ、そして「新規プロジェクト立ち 上げの誘惑」によるところが大きいのではないかという指摘もある( 教育セクター担当責任者とのインタ ビューによる)。

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表 5 -3 各援助機関による支援アプローチ、対象地域、直接財政支援に対する姿勢

ドナー

支援アプローチ

対象地域

直接財政支援

プロジェクト型

全国展開型

推進

プロジェクト型

全国展開型

支持するがマラウイの

管理能力次第

プログラム/プロジェクト型(財政支援 75 と技術 協力の組み合わせ)

全国展開型 76

積極的推進

プログラム/プロジェクト型(財政支援と技術協

全国展開型 77

積極的推進

力の組み合わせ)

教育省組織内部型 78

全国展開型

支持

プロジェクト型

パイロット型

支持

プロジェクト型

パイロット型

慎重

プロジェクト型

全国展開型

積極的推進

プロジェクト型

全国展開型

支持

日本

プロジェクト型

パイロット型

慎重

出所: 2004 05 及び現地インタビュー調査を基に筆者作成。

第、直接財政支援を始められるようにそのための予算をすでに確保し、それをもってマラウイ側 に早期の枠組みづくりを促している。逆に枠組みができなければ、援助も減らさざるを得ないと いう立場である。 次に、表 5 -4 は、各ドナーによる教育マネジメント強化を目的とした支援内容をまとめたもの である。ほとんどのドナーが、教育計画、教育政策分野の の具体的な支援として国内外の教 育研修機関における教育行政官に対する長短期研修やワークショップの提供支援という形態をと っていることが分かる。

1990年代までは学位取得を伴う欧米の大学院への海外長期研修が主であったが、学位を取得し

た教育省職員の離職率が高く、その支援の有効性が疑問視されるようになり、最近では、原則と して国内の研修期間、プログラムの内容によって国内で研修実施が困難な場合には周辺国による 第三国研修、そしてそれでも実施困難な分野、例えば、教育財政や特別支援教育などは、海外の 大学院などでの研修としている 79

75 現段階では、直接財政支援の枠組みが整っていないことから、教育省側の活動に応じて必要経費を柔軟に支援す る方式をとっている。

76 全国を対象とした初等教育カリキュラム開発・教員訓練と地域パイロット型の教室建設の組み合わせ。

77 とともに全国を対象とした初等教育カリキュラム開発・教員訓練と地域パイロット型の教室建設の組み合わ せ。

78 教育省の一部としてマラウイ国ユネスコ委員会( )を設置し、教育省に 対して 推進に係る助言を行っている。

79 経済計画開発省( )に対するキャパシティ・ディベロップメントプ ログラム支援を行っている 担当者とのインタビューによる。

35

表 5 -4 教育マネジメント強化(関連分野も含む)に関する支援内容

ドナー

支援内容

教育行政官、特にカリキュラム開発や教授法助言・指導官への海外長期研修(学位取得) に対する支援

中等教育現職教員の国内教育機関における研修(学位取得)に対する支援

教育セクター開発に関連する既存の制度強化を意識した施設建設、初等教育用教科書の現 地調達能力向上支援( 80

中等教員養成機関であるドマシ教員養成大学( )の組 織強化支援

中等教育現職教員の国内教育機関における研修(学位取得)に対する支援

行政官および中等教育教員養成大学の講師を対象とした海外短期研修

公務員制度改革に対する支援(人事評価制度改革に対する技術的支援)

教育行政官や初等教育教員に対する国内外の長短期研修(学位取得も含む)に対する支援

初等教員開発センター強化支援

ガバナンス、地方分権化、公共財政マネジメントなど、公共セクター改革全般にわたる 支援

教育行政官や初等教育教員に対する国内外の長短期研修(学位取得も含む)に対する支援

初等教員開発センターやマラウイ教育研究所( )など国 内教育・研修機関の強化支援

ガバナンス(民主化支援)、地方分権化、公共セクター改革全般にわたる 支援

教育行政官に対する国外長期研修(学位取得も含む)に対する支援( パリ本部の 国政教育計画研究所: 81

初等教育学習到達度調査の実施支援

教育行政官や初等教育教員に対する国内外の長短期研修(学位取得も含む)に対する支援

教育教育マネジメント・システム(教育統計などの開発・管理など)構築支援

教育行政官や初中等教育教員に対する国内外の長短期研修(学位取得も含む)に対する支

ガバナンス、民主化支援、地方分権化、財政運営改善支援

学校給食プロジェクトに関連する学校への食糧配給に係る事務手続き強化支援

日本

地方分権化促進支援を目的とした教育行政官および主に州と県レベルの教育行政能力強化(開 発調査)

マイクロプランニング作成、教育基礎データマネジメントのための国内研修。また、カウ ンターパートに対する第三国・本邦研修

県教育開発計画策定支援および改定作業支援

パイロット県における教育行政官に対する研修(教育計画、プロジェクト管理など)

パイロット県におけるパイロット・プロジェクト(学校・教職員住宅建設、学習教材配布、 教員研修、住民啓蒙活動、地域現金収入向上活動など)実施支援

県教育開発計画実施促進マニュアルとして全国地方教育支援計画書の作成支援

出所: 2004 /05 および現地インタビュー調査を基に筆者作成。

80 教育セクター無償支援( )の略。

81

36

次に、各ドナーの支援アプローチの特徴を見てみよう(表5 -5)。 まず、現場で直接支援を行うチームの構成について、各機関の本国から派遣されている総括 (チームリーダー)と現地コンサルタント、または現地専門家によって構成されている機関が多 いことが分かる。この背景には、現地の人材リソースを有効活用し、援助の効率性を向上させる だけでなく、現地の文化や社会状況、社会規範などをよりよく理解している現地専門家が参画す ることにより、組織や制度強化にもつながり、援助の有効性を高めるとの考え方がある。特に、 は、チームリーダーも現地専門家が担い、各現地事務所や本国の責任者と連絡を とりながら、ドナー会議やマラウイ側との協議では各ドナーのセクター代表としての発言権を与 えられ、現場における迅速な協力に対応できる体制を整えている。

表 5 -5 ドナーによる支援アプローチの特徴

ドナー

 

支援アプローチの特徴

セクター支援チームの構成

特徴

総括 本部教育セクター担当者 (2、3 ヵ月に一度マラウイ を訪問し、現地調査および 教育省との協議により進捗 を確認) プロジェクト・マネージャー: 現地コンサルタント(3 名)

教育省組織とは半独立の形態をとっているプロジェクト

実施ユニット( 82 を活用してのプロジェクト・マネ ジメント

現地コンサルタント、建設業者などの最大活用

総括 本部教育セクター担当者 (定期的にマラウイを訪問 し、現地調査および教育省 との協議により進捗を確 認) プロジェクト・マネージャー: 常駐の現地専門家、コンサ ルタント

活動が制度化されることを目的として教育省内にプロジ ェクトオフィス設置

ジェンダーや などセクター横断型課題と教育 セクター支援の意識的な組み合わせ

国内制度(例:調達や建設ガイドライン)に基づき、制 度強化も含めた支援

現地 を通じた学校、地域レベルの支援(資金、技 術提供)

 

他ドナー( など)と緊密かつ具体的な連携協力

総括 現地教育セクター担当者 (本国より派遣)

*本国からの専門家は、施設建設

現地事務所の裁量による柔軟な援助資金運用

活動ごとに短期のコンサルタント傭上。特に、政策立案 支援や各種調査の場合に、調査実施およびドラフト作成 に必要な技術を「提供」することを目的

の専門家(全セクター担当)と二

現地 を通じた学校、地域レベルの支援(資金、技 術提供)

人。活動ごとに短期のコンサルタ

ント傭上。特に、政策立案支援や

初等教育のカリキュラム・レビュー( )を支援し、新カリキ ュラムの実施と教員訓練を 枠組みで実施を希望

各種調査の場合に、調査実施およ

びドラフト作成に必要な技術を

「提供」することを目的

他ドナー( など)と緊密かつ具体的な連携協力

82 。主に施設建設や調達関係の実施マネジメント、モニタリングを専門とする部署。

37

総括 現地教育セクター担当者 (本国より派遣)

現地事務所の裁量による柔軟な援助資金運用

教育省内教員養成局の施設建設、資機材供与、運用資金 の一部を支援

*活動ごとに短期のコンサルタン

現地 を通じた学校、地域レベルの支援(資金、技 術提供)

ト傭上。特に、政策立案支援や各

種調査の場合に、調査実施および

教員訓練を 枠組みで実施を希望

ドラフト作成に必要な技術を「提

他ドナー( など)と緊密かつ具体的な連携協力

供」することを目的

総括 常駐の現地専門家(他 4 名)

に関する政策アドボカシーと啓蒙活動

総括 常駐の現地専門家(他 4 名)

や国連人口基金( )など、他国連機関や現地 との連携

地域、学校レベル、子どもへの直接支援を重視

主に国内での現地ワークショップなど短期研修

総括:現地教育セクター担当者

現地 を通じた学校、地域レベルの支援(資金、技 術提供)

(現地専門家)

*政策立案支援( やセクター開 発計画など)に対して政策アドバ イザーを派遣する技術提供型支援

マラウイ大学やムズズ大学、マラウイ教育研究所( ) など国内高等教育・研修機関の強化支援

本国高等教育機関との長期教育行政官研修派遣や、現地 でのプロジェクト実施などの連携

総括:本部教育セクター担当官

教育省組織とは半独立の形態をとっている教育開発マネ ジメントユニット( 83 を活用してのプロジェクト・ マネジメント

プロジェクト・マネージャー

現地教育セクター国際スタ

ッフ

プロジェクト開始前に交換する援助覚書( ) に、特に、政策に関する条件(コンディショナリティ)の 付与

*必要に応じて短期のコンサルタ

ントを国内外より傭上

教育政策や教育の地方分権化の進捗、 枠組み構築 に関する作業の進捗など

総括:常駐国際スタッフ

など、他国連機関や現地 との連

*必要に応じて短期のコンサルタ

地域、学校レベル、子どもへの直接支援(食糧危機に係 る学校給食プロジェクト)を重視

ントを国内外より傭上

緊急援助に主眼がある(長期的な組織・制度強化までは 十分に考慮されていない)

国内での現地ワークショップなど短期研修

日本

総括:本部教育セクター担当官

地方分権化促進支援として、主に州・県教育行政レベル において教育計画と実施マネジメント能力向上を目的に 実施

現地専門調査員

長期専門家:教育省付専門家

コンサルタント・チーム:開発調

教育省付技術専門家を通じて省内およびドナー間の調 整、政策策定支援を行う

査担当

出所: 2004 /05 および現地インタビュー調査を基に筆者作成。

83 。先の (アフリカ開発銀行)と同様、主に世銀支援によるプロジ ェクトの実施マネジメントを行っている。

38

一方、政策文書策定や各種調査、教育行政官研修実施のための支援など活動に応じて本国また は第三国からの短期コンサルタントを頻繁に活用するのが である。これは常 駐させる本国からの専門家の数を限定的にし、その分、活動に必要な技術協力をピンポイント的 に行うアプローチである。先の現地専門家活用アプローチと同様、コストの面では効率的であ り、必要な技術を必要なときに得られるというメリットがある。ただし、短期派遣内で求められ た作業を行う必要があることから、内発性や主体性を確保しながらいかに既存のキャパシティを 支援していくかという の内発性よりも、政策文書策定や研修実施のために必要な技術を外部 から移転してくる、すなわち、キャパシティのギャップを外から埋めるという発想になってしま う危険性がある。これは、外部専門家やコンサルタントの傭上が、各ドナーが設定している活動計 画の円滑な実施のために行われる場合が散見されることからも指摘しておかなければならない。

支援アプローチのグッド・プラクティス】

による初等教育教科書配布プロジェクト( プロジェクト)

[プロジェクト概要] 1998 年、初等教育における教育の質の向上のため、マラウイ国内全小学校約 5 000 校に対し て、約 1 100 万冊の教科書を配布することを目的として開始された。2 つのフェーズに分かれ て実施されており、フェーズ1(1998 - 2004年)での主目標は、「教科書の配布」を確実に実 施し学校レベルでの教育環境を改善することに置き、フェーズ 2(2004 - 2010 年)では、主 眼は、配布から「教科書を持続的に配布できる社会制度環境整備」にシフトさせている。

プロジェクトフェーズ 1とフェーズ 2の比較

フェーズ 1(1998- 2004年)

フェーズ 2(2004- 2010年)

主導

マラウイ教育省主導

コンサルタントによるプロジェクト監理

教育省によるプロジェクト監理

の支援により学校への教科書直接配布

教科書配布の方法・戦略を教育省主導で開発

教科書配布において民間セクターの活用

教育省による配布・運搬計画策定と実施

による教科書配布状況調査実施

学校からの教科書需要に応じた戦略

教育省内職員へのキャパシティ強化不足

ジェンダー、 関連も含めた教育省内職 員へのキャパシティ強化に配慮

[フェーズ 2で期待されるアウトプット]

1.教材配布計画・調達・配布の一連の流れに関する政策枠組みの構築

2.円滑なオペレーションのための情報システムの構築

3.透明性のある調達システムの構築

4.教科書配布システムの構築

5.ジェンダー、 の課題に対応できる教科書マネジメントの専門家育成

39

[支援期間] ・フェーズ 1(パイロット期間)、フェーズ 2(制度化期間)をそれぞれ 6 年、計 12 年と長期的 視野で支援を行っている。

[アプローチ] ・フェーズ 1 では、緊急性の高い教科書の配布にプロジェクトの目標を設定し、活動を通して マラウイ側にその成果と信頼を得、マラウイ側からの内発性とオーナーシップを醸成した 後、制度化のためのフェーズ 2 にシフトしている。 ・教育省以外の政府関連機関( などの調達関連部署)を単に情報共有やコンサルティン グのレベルではなく、実際の作業の中に取り込むことにより、教育セクターだけでは解決 できない調達システムの制度部分を改善し、教育行政として作業を行いやすい環境整備を 目指している。 ・既存の調達システムを尊重し、それに基づいた教科書配布の支援を行うことを基本としなが ら、不備な点に関しては改善を図っていくようなアプローチをとっている。 ・ステークホルダーを明確にしている。

[人材活用]

・本国教育セクター担当者(本国職員)―現地事務所セクター責任者(現地専門家:常駐)―プ

ロジェクトマネージャー(現地専門家:常駐)と現地人材リソースを最大活用している。

[その他] ・円滑なコミュニケーションとプロジェクト終了後の活動の制度化( )を進 めるため、プロジェクト職員が常駐する事務所を教育省と同じビル内に設置している。

出所: (2005 年 11月8日)プレゼンテーション資料、を基に 2004 /05 および現地インタビュー調査を基に筆者作成。

5 - 3 ドナーによる「 促進のための 5 つの鍵」に対する取り組み

第 4 章で見たとおり、 を促進する鍵となる要素として、特に、オーナーシップ、良好な政 策・制度環境、インセンティブ、リーダーシップ、そして知識が重要であり、その中でドナーの 果たすべき役割は「途上国の プロセスを側面支援するファシリテーター」でなければならな い。 以下、マラウイ教育マネジメント支援において、各ドナーがこれら 5 つの鍵にどのような配慮 をしているのかについて整理する。

40

5-3- 1 オーナーシップ

すべてのドナーは、オーナーシップの重要性を認識し、それをいかに醸成していくかに配慮し なければならないとしている。そのため、支援内容を決める際、基本的には、事前のベースライ ン調査に基づいて教育省と協議を重ねながら支援内容を決めていく。その際、協議のカウンター パートとなるのは、省内で局長、事務次官レベルとなる。 しかし一方、この際のオーナーシップは、「マラウイ側」または、「マラウイ教育省」という大 きな区切りで議論されることが多く、例えば、教育管理情報システム( )に関する支援を行う際に、直接のカウンターパート(ステークホル ダー)となる中間管理職やジュニア・レベルの職員がどれだけのオーナーシップを有しているの か、また仮にオーナーシップが欠如している場合に、それはどのような要因によって阻害されて いるのかなど、それぞれの 支援に応じた詳細なステークホルダー分析や広範なステークホル ダーの取り込みについての配慮は十分とはいえない状況である。

5-3- 2 良好な政策・制度

 

「良好な政策・制度」に関連した支援

特になし

教育セクター関連政策や制度だけでなく、 や施設建設、資機材調達関連制度強化を意識

公共セクター・マネジメント改革全般への支援

民主化・ガバナンス支援

公共財政支援

公共セクター・マネジメント改革全般への支援

民主化・ガバナンス支援

公共財政支援

公共セクター・マネジメント改革全般への支援

民主化・ガバナンス支援

公共財政支援

関連の政策、行動計画策定支援。制度改革を伴う支援は特になし

関連政策支援。制度改革を伴う支援は特になし

関連政策、 策定支援。制度改革を伴う支援は特になし

公共セクター・マネジメント改革全般への支援

民主化・ガバナンス支援

公共財政支援

特になし

日本

公共財政制度(教育・保健・農業セクター)に関する調査研究支援

41

ドナーによって良好な政策・制度の構築を念頭に置いて個々の支援を行っているか、そうでない かには差が見られる。 諸国は、ニュー・パブリック・マネジメント 84 と絡み、公共セクター 改革、特に公務員制度改革、ガバナンス支援、そして公共財政制度改革支援に取り組んでいる。

5-3- 3 インセンティブ

 

インセンティブ

研修終了後の学位取得または学位の向上(アップグレード)

学位のアップグレード(国内およびカナダでの大学・大学院研修)

短期研修

学位のアップグレード(国内および英国での大学・大学院研修)

学位のアップグレード(国内およびドイツを含む海外大学・大学院研修)

研修参加とキャリア開発のリンク(特に初等教育)

学位のアップグレード(フランスでの研修)

特になし

学位のアップグレード(国内および米国での大学・大学院研修)

学位のアップグレード(国内および海外大学・大学院研修)

特になし

日本

短期研修

学位のアップグレード(日本での大学・大学院研修)

を支援していく際、効果的なインセンティブをいかに与えうる仕組みを作っていくかが最 も困難な課題のひとつである。典型的なインセンティブとしては、短期の行政官研修を受けた場 合の修了証書や、長期研修後の学位取得がある。これは、ガバナンス改革の一環として、縁故主 義による不透明な昇進や昇給を防ぐために、明確な基準を設けるために学歴や職歴、資格を基準 としていくことが公共セクターで進められていることによって学歴志向が高まっていることが背 景にある。ただし、学位は向上しても、それによって強化されたとされる個人のキャパシティ (課題対処能力)を、各教育行政組織内で、また教育セクター全体として、さらには公務員制度 の中で、積極的に生かしていこうと動機付けられるようなインセンティブを作り出すという視点 は不十分である。 また、研修参加の際に支払われる金銭的インセンティブについては、すべてのドナーは、原則 として政府規定以上の日程、宿泊費は支払わないとしている。しかし、実際は、統一された行動 がとられているわけではない。特に、国内外のコンサルタントに支援プロジェクト運営を委託し て行う場合、ワークショップなどの国内研修の収支報告書を政府規定の手当額を照会しながら厳 密に確認していないことから、実際には、それぞれのケースによって支払額がさまざまであるの が実態である。

84 ニュー・パブリック・マネジメントと開発援助との関係については、森田(2003)、 (2003 )などを参照。

42

また、政府規定に従って手当が支払われる場合、援助の非効率性を助長している場合が散見さ

れる。例えば、プロジェクトを担当している欧米系ドナーのコンサルタントへの聞き取り調査に

よると、首都内でワークショップを行う場合、政府規定に従うと首都在住の参加者には日当は支

払われないことになる。しかし、それでは参加者が集まらない。そこで、政府規定として手当支

給が認められるよう首都からある程度の物理的距離のある場所で、かつ会議場を有するホテルに

おいて宿泊付きのワークショップを開催せざるを得ない。また、首都で研修を行うと、日常業務

との兼ね合いで、午前中だけ出席し、午後は席を離れてしまうことが多く研修にならない、とい

う意見が多く聞かれた。このような背景があり、金銭的インセンティブを付与しすぎないとして

いるドナーの建前としての方針と、実際のプロジェクトを実施していかなければならない現場の

対応とに乖離が見られる。

これは、援助の効率と効果を高めるためにどのようなインセンティブが必要かについて、政府

も含めドナー全体で十分に議論と合意がなされておらず、また、それを現場で周知徹底させてい

く仕組みが存在していないことが大きな原因であると考えられる。

5-3- 4 リーダーシップ

 

リーダーシップ

研修・トレーニングの人選については、教育省側に対象分野と予算のガイドラインを伝え、基

本的には先方のイニシアティブに任せる

研修・トレーニングの人選については、教育省側のイニシアティブに任せながらも、全プロ セスに参画

教育省 や局長への政策アドバイス

地方教育事務所、小学校教員、学校長に対するリーダーシップ研修

教育省 や局長への積極的な政策アドバイス

地方教育事務所、小学校教員、学校長に対するリーダーシップ研修

教育省 や局長への政策アドバイス

小学校教員、学校長に対するリーダーシップ研修

特に、学校、地域レベルでのリーダー育成を意識

現地 支援を通して学校、地域レベルでのリーダー育成、高等教育レベルのリーダー育成

海外・第三国へのリーダーシップ研修、スタディ・ツアー

地方教育事務所、学校長に対するファシリテーター研修

日本

プロジェクト実施を通じてのカウンターパートに対するリーダーシップ研修

表 5 -2 で見たとおり、リーダーシップの強化は、教育マネジメントの において重要な要素 であるとドナー間で広く認識され、教育省の管理職レベルの行政官に対するリーダーシップ研修 を国内外の研修機関で行っている。また、支援対象となる教育行政官の人選においては、できる だけマラウイ側のリーダーシップに任せる意味で、選考のガイドラインに従って協議を行い決定 している。

43

しかし、第 4 章で議論したとおり、理論的には においてリーダーシップの重要性について 指摘されているが、実際、マラウイの事例においても、どのような社会制度環境において、ま た、それぞれの組織の役割によって、どのようなタイプのリーダーシップが有効かについての議 論は不十分である。その結果、リーダーとしての立場にいる、またはリーダーと期待されている 個人のリーダーシップ能力の欠如が問題の場合と、リーダーシップを発揮するのに良好でない組 織構造や社会制度環境が問題である、と考えることが必要である。しかし、これら 2 つの場合を ひとまとめに「リーダーシップ不足」と判断し、その都度、個人に対するリーダーシップ研修を 提供し続けている傾向が見られる。その結果、研修によってリーダーシップ理論は身に付けて も、それを組織内で生かす体制がないことから、能力を十分に発揮することができず、その個人 にとっては、能力開発によって自己のキャパシティを強化した分、元の職場環境に適応できず、 最悪の場合は離職してしまうケースが多く見られる。

5-3- 5 知識

 

知識

プロジェクト関連報告書の教育省への配布、求めに応じて他ドナーにも配布

初等教育教科書配布状況データ・ソフトウェアの教育省、求めに応じて他ドナーに配布

初等教育スクールマッピングのデータ、活動進捗報告書などを教育省に配布、求めに応じて他

ドナーに配布

プロジェクト関連報告書の教育省への配布、求めに応じて他ドナーにも配布

発刊物の教育省への配布、求めに応じて他ドナーに配布

活動進捗報告書など、求めに応じて他ドナーに配布

支援、活動進捗報告書などを教育省に配布、求めに応じて他ドナーに配布

活動進捗報告書などを教育省、他ドナーに積極的に配布

活動進捗報告書など、求めに応じて他ドナーに配布

各ドナーは、教育マネジメントの改善に必要不可欠な教育統計の収集、加工、管理に関する 支援などそれぞれの支援プロジェクト活動に関する案件形成のための事前協議、実施進捗報 告や教訓や提言についての「知識の共有」を行っている。これはパートナーシップとして援助協 調の重要な要素のひとつである。しかし、これらの知識は第 4 章で示した知識の分類では、コー ド化された形式知に近く、地域固有の知識である土着の知識( )や暗黙知 に対する配慮は十分とはいえない。また、知識の共有に関しても、活動進捗状況や報告書の共有 にとどまっており、組織内、組織外にどのように知識が共有され、キャパシティ(課題対処能力) のプロセスに相互に影響しあうかという知識マネジメントのメカニズム強化までは支援の範囲に 含まれていない。

44

5 - 4 考察:ドナーは の視点を備えているか?

このように、マラウイにおける教育マネジメントの が目指すべき方向性についてはドナー 間で共通認識を有しており、また、直接財政支援など援助モダリティの違いは存在しつつも、緩 やかな援助調整の下で支援内容のすみ分けが行われているなど評価できる点が認められる。しか し一方、課題としては、1) のための 5 つの鍵への不十分な配慮、そして、2) の「包括性」 についてドナー間での認識の差、が挙げられる。 それぞれのドナーは を促進する 5 つの鍵について何らかの配慮を行っている。しかし、そ れらの配慮は、ある意味、他の国や地域への教育マネジメントの に対する支援でも共通する 内容であり、特にマラウイの教育セクターやそれを取り巻く環境を十分に考慮しているものとは いえないだろう(詳細は第7 章-第 11章を参照)。 また、支援するサブ・セクターによって重点とする行政レベルが異なるものの、マラウイにお ける教育マネジメントの が目指すべき方向性についてはドナー間で共通認識を有しており、 また、直接財政支援など援助モダリティの違いは存在しつつも、緩やかな援助調整の下で支援内 容のすみ分けが行われているなど評価できる点が認められる。 しかし一方、各ドナー間で、 の「包括性」についての共通認識が必ずしも得られているわ けではない。この点におけるドナー間の認識の違いは、各ドナーが支援する行政レベルの範囲の 違いに起因するものと考えられる。すなわち、主な支援対象とするサブ・セクター(初等教育、 中等教育、高等教育)によって、中央本省、州や県の地方教育事務所、そして学校と、それぞれ の行政責任範囲に応じて重点とする支援の対象と内容が異なっている。例えば、初等教育であれ ば県教育行政と学校に重点が置かれる一方、中等教育では州教育行政に、そして、教員養成教育 では中央本省と大学などの高等教育機関の を主に支援することになり、重視している の 範囲もおのずとそのサブ・セクターとそれを管轄する行政機関に限られてくることになる。これ は、限られた援助資源を有効に活用するためには、サブ・セクターを選択し、投入する資源を集 中し、目標達成のための行程監理を行う上で必要な方法なのかもしれない。しかし、援助の「選 択と集中」を行うことで、全体の 支援の中での位置付けが見えなくなり、自分の援助の範囲 に関係する しか関心がなくなり非常に狭い視野に陥ってしまう危険性が観察された。 本来は、誰かが常に全体を意識しながら個々のドナーによる支援アプローチがセクター全体の でどのような位置付けにあるのか、目標達成のための進むべき方向性を示し、その中で、そ れぞれのドナーが行っている支援を調整しなければならない。そこで、ドナーは、その役割をオ ーナーシップの観点から被援助国政府が担うことを望む。しかし、被援助国政府側に仮に強力な オーナーシップがあったとしてもその任を負うキャパシティがないからドナーから支援を受けて いるのであり、ここに を支援する上でのジレンマがあり、課題が存在しているといえる。

45

6.教育行政官に対する人材育成の現状と課題

本章の目的:第 4 章、第 5 章で国とドナーによる教育マネジメント強化の取り組みについて 概観した。これを受けて本章では、教育省が実施した教育行政官を対象とした研修ニーズに 関する調査を分析し、これまで実施された能力強化のための研修の実施状況、研修に対する 行政官個人の認識、また、自己の能力開発に関する認識、各教育事務所の組織全体としてニ ーズについて考察を行う。

6 - 1 人材育成ニーズ調査の背景

第4章で示した教育セクター人材育成ガイドライン作成と並行して、マラウイ教育省は2003年

1 月、 によって全国の教育行政官を対象にした能力開発ニーズに関する包括的なベース ライン調査が実施された。 しかし、この初回のベースライン調査の結果回収率は非常に悪く 85 、トレーニング・ニーズ分 析には不十分なものだった。そこで、2004 年 10 月、調査票をより詳細なものに改訂し、11 月か ら翌 2005 年 2 月まで全国 6 州および 32 県 86 の地方教育事務所にその調査票を直接訪問により配 布、回収まで行う調査方法に改め、再度実施された。

6 - 2 調査対象

調査対象は、教育行政機関である教育本省、州教育事務所(6 州)、県教育事務所(32 県)お よび調達業務を専門に担当する調達ユニット(南西部州教育事務所)に所属する専門職、行政 職、すべての教育行政官である。ただし、ドライバーや清掃職員などのサポート職員は含まれな い。すなわち、本調査はすべての教育行政官を母集団として調査対象とする悉皆調査で、その母 集団の総数は、693 名であった。

6 - 3 回収率

各教育事務所に直接訪問した結果、全国平均で 80%(本省を除く)を超える調査票の回収率を

85 その理由として調査方法の問題が指摘できる。教育本省から各州地方事務所に調査票をファックスで送付した が、実際に回答したのは 6 州のうち 1 州のみだった。ファックスによる回収方法が通信問題を抱える地方教育事 務所にとって物理的に困難であったこと、さらに、回収期限を設けてはいたが、それを遵守させるような組織規 範が脆弱化している( 職員へのインタビューによる)。

86 教育行政の地方事務所の数は全部で34であるが、マラウイ湖に浮かぶリコマ島(北部州)のリコマ県教育事務所

)はアクセスの問題から、また、南西部州のネノ県教育事務所(

)については、2002 年に新たに設置されたが実質的な業務が開始されていないことから調査対象

に含まれていない。

46

得た。しかし、本省からの回答率(16 7%)は地方からのもの(83 4%)と比較して低かったこ とから、その結果分析から得られる情報は偏りが発生し、それを一般化することに問題が生じる と考えられ、さらに、母集団をひとつのグループと全体の傾向などを分析する際に、本省からの 情報が異常値として影響を与える可能性がある。従って、本研究では、当初の調査対象数から本 省からの母数 120 とサンプル数 20 を除いて、母集団 573、回収した分析対象のサンプル数 478 で 以下の議論を進めることとする。

表 6 -1 教育行政官の研修ニーズに関するベースライン調査の母数とサンプル数

 

母数

回収数

回収率(%)

本省

120

20

16

7

北部州

107

98

91

6

中東部州

80

76

95

0

中東部州

162

114

70

4

南東部州

88

71

80

7

南西部州

76

61

80

3

山岳部州

60

58

96

7

総合計(本省を含む)

693

498

71

9

    (本省を除く)

573

478

83

4

出所: (2005)を基に筆者作成。

6 - 4 調査対象者の属性

6-4- 1 男女構成比・平均年齢

調査票を回収した本調査の分析対象者( = 478)の男女構成は、男性323、女性155であり、 その男女構成比はほぼ 2:1 である。ただ、州と県とでは平均年齢は、州教育事務所が 42 5 歳、 県教育事務所は 46 1 歳、全体では 45 3歳と、ほぼ 40歳代半ばである 87

表 6 -2 分析対象者の男女構成比および平均年齢

男 女 合計 平均年齢

合計

平均年齢

州教育事務所

60

17

77

42

5

県教育事務所

263

138

401

46

1

合計

323

155

478

45

3

出所: (2005)を基に筆者作成。

87 本調査と並行して実施された中等教育教員を対象とする研修ニーズ調査で明らかになった平均年齢 35 8歳よりも 10 歳ほど上であることから、第 3 章で触れたとおり、通常、学校の初中等教育教員経験者が教科主任や学校長を 経て教育行政官となるキャリア・ルートがあることが確認できる。

47

6-4- 2 学歴

図 6 -1 で示されているように、教育行政官の最終学歴には、州または県の教育事務所のいずれ かに所属するかによって傾向が異なる。すなわち、州教育事務所は大学卒、県教育事務所は高校 卒が中心である。これも州と県の教育行政の役割で説明ができる。 州教育事務所は、毎年県レベルから上がってくる教育予算の取りまとめ、サブ・セクターでは 主に中等教育の教授法助言(インスペクション・視学)、初等教育は県に対する助言を行い、県 教育事務所は、主に初等教育アドバイザーによる初等教育行政を担っている。マラウイでは、初 等教育教員資格として必要な学歴は高卒以上、中等教育教員資格として必要なのはディプロマ (2 - 3年の短大課程)以上である。上述したとおり、専門職の場合、学校教員を経験した後、教 育行政官となるのが一般的なキャリア・パスであり、州教育事務所には中等教育教員経験者が、 県教育事務所には初等教育教員経験者が配置されることになり、以下のような各事務所職員の学 歴状況になることが推察できる。

図 6 -1 教育行政官の学歴

(%)

中卒 高卒 ディプロマ 学士 修士 博士 その他 州教育事務所 県教育事務所
中卒
高卒
ディプロマ
学士
修士
博士
その他
州教育事務所
県教育事務所

出所: (2005)を基に筆者作成。

6 - 5 結果

6-5- 1 研修機会

表 6 -3 は、2003 年 1 月から 2004 年 12 月の 2 年間に参加した能力開発のための研修やセミナー、 ワークショップの回数を示している。 州レベルでは、0 38 から最大で 1 75 回、平均でちょうど約 1 回の割合で研修機会が行われてい る。一方、県教育事務所では、2 44 から多いところで最大 8 回以上も研修が行われている。平均 でも 5 回を超えている。すなわち、教育行政官の能力向上を目的とした研修機会は、県レベルの

48

方が州よりも多く与えられており、行政レベルで著しく「機会の不平等」が確認された。

表 6 -3 州・県事務所の研修機会の頻度(2003年 1月- 2004年 12月)

 

(単位/回)

 

平均

最小

最大

州教育事務所

1

00

0

38

1

75

県教育事務所

5

07

2

44

8

50

出所: (2005)を基に筆者作成。

さらに、このような「機会の不平等」は、それぞれの事務所内でも確認できる。表 6 -4 は、職 種別に研修機会の頻度を見たものである。

表 6 -4 職種別の研修機会の頻度

州教育事務所

県教育事務所

職種

回数

 

職種

回数

事務所長

 

2

00

事務所長

5

39

教授法助言官(視学官)

 

0

71

基礎教育担当官

3

15

人事官

 

0

89

会計官

1

67

教育計画官

6 00

初等教育アドバイザー

6

06

基礎教育担当官

 

1

86

人事官

1

44

会計官

 

0

29

 

出所: (2005)を基に筆者作成。

上述のとおり、州教育事務所に与えられた研修機会の平均値は1 00回であるが、その中身を詳 細に見ると、すべての職位が同じような機会に恵まれているわけではなく、職種によって大きな 格差が見られることが分かった。例えば、州教育事務所の教育計画官は、6 00 回で他の職位を圧 倒している。次に研修機会の多い事務所長の 2 00 回の 3 倍の研修機会があるばかりでなく、行政 職の人事官や会計官の 1 回にも満たない頻度と比べると、州レベルでの教育行政に係る は、 ほとんど計画官を中心に行われていたといっても過言ではないだろう。 一方、県教育事務所内を見てみると、初等教育アドバイザー(6 06 回)と事務所長(5 39 回) が他を圧倒していることが分かる。ここでも、人事官や会計官は 1 44 回、1 67 回と少ない。事務 所平均が高いだけに、その機会の少なさは、現場で働いているとさらに際立つことだろう。 このようにマラウイ教育行政官に対する には、州、県という行政レベル間と、同じ行政レ ベルの中でも職種間、特に計画官や初等教育アドバイザーなどの専門職と行政職とによってその 研修機会に大きな不均衡が生じていることが分かる。逆に、県、州の行政レベルに関係なく、能 力開発の対象とされてきたのは、事務所長と計画官、そして初等教育アドバイザーであったとい ってよいだろう。

49

6-5- 2 能力開発分野

同じ教育行政官でも職位や職種などによって個々人の関心分野は異なるだろう。職位、職種別 に教育行政官の能力開発の関心分野について分析を行った。分野としては、教育行政に必要とさ れると思われる以下の 17項目を挙げている。

[ 1

教育計画

[10]

カリキュラム開発

[ 2

予算管理

[11]

専門教科(指導)

[ 3

会計

[12]

プロジェクト・マネジメント

[ 組織マネジメント

4

[13]

調達マネジメント

[ 人事管理

5

 

[14]

施設建設マネジメント

[ モニタリング評価

6

[15]

教育

[ コンピュータ技術

7

[16]

ジェンダーと教育

[ 8

学校運営

[17]

特別支援教育

[ 9

教室運営

これらの項目は、技術の内容によってさらに 4つに分類できる。

1) 組織運営技術(1 - 7) 教育行政組織、制度として機能、維持していくために必要な能力や技術 2) 学科・学校経営技術(8 - 11) 学校教育における学科の専門技術や、学校運営、教室運営に関する技術 3) プロジェクト・マネジメント技術(12 - 14) 教育開発計画の実施、資機材・学習教材の調達、そして施設建設などプロジェクト全般の マネジメントに関する技術 4) 横断的課題(15 - 17) 教育やジェンダー、そして特別支援教育という教育だけでなくセクター横断的 な課題に対処するための知識、技術や能力

図 6 -2、図 6 -3 は、これらの分野についての能力開発が、現在の業務執行上必要であると認識 している、または、現在の業務とは関係ないが将来的に伸ばしたい分野について、その関心の高 さを図示したものである 88 。グラフ上の線が高い分野ほど関心の高さを示している。例えば、州 教育事務所の教育計画官間の高いニーズは、モニタリング評価、プロジェクト・マネジメント、 そして施設建設マネジメントなどに見られ、逆に関心の低い分野として、教室運営、特別支援教 育や専門強化であることが確認できる。

88 優先順位を付けてもらい、それを点数化して積算し、各職種の行政官の数で割った平均値を示している。

50

図 6 -2 職種別の能力開発に関する関心分野:州教育事務所

所長 教授法助言官(視学官) 計画官 中等教育担当官 人事担当官 会計官
所長
教授法助言官(視学官)
計画官
中等教育担当官
人事担当官
会計官
特別支援教育
ジェンダーと教育
組織運営技術
学科・学校経営技術
プロジェクト・
横断的課題
マネジメント技術
HIV/AIDS教育
施設建設マネジメント
調達マネジメント
プロジェクト・マネジメント
専門教科
カリキュラム開発
教室運営
学校運営
コンピュータ技術
モニタリング評価
人事管理
組織マネジメント
会計
予算管理
教育計画

図 6 -3 職種別の能力開発に関する関心分野:県教育事務所

特別支援教育 ジェンダーと教育 HIV/AIDS教育 施設建設マネジメント 事務所長
特別支援教育
ジェンダーと教育
HIV/AIDS教育
施設建設マネジメント
事務所長
初等教育アドバイザー
調達マネジメント
初等教育担当官
会計官
人事官
プロジェクト・マネジメント
専門教科
カリキュラム開発
教室運営
学校運営
コンピュータ技術
モニタリング評価
人事管理
組織マネジメント
組織運営技術
学科・学校経営技術
プロジェクト・
横断的課題
会計
マネジメント技術
予算管理
教育計画

出所: (2005)を基に筆者作成。

51

表 6 -5 は、グラフから職種別の能力開発に関するニーズについて上位 5 分野を書き出したもの である。

表 6 -5 州・県教育事務所における職種別の能力開発に関する関心分野(優先順)

州教育事務所

 

1

2

3

45

 

事務所長

教育

ジェンダーと教育

特別支援教育

組織マネジメント

人事管理

教育計画官

モニタリング・

プロジェクト・マネ

施設建設マネジ

組織マネジメント

・予算管理

評価

ジメント

メント

・教育計画

教授法助言官

教育

・特別支援教育

ジェンダーと教育

専門教科

コンピュー

・モニタリング・評

タ技術

中等教育担当官

教育

コンピュータ技術

モニタリング・

ジェンダーと教育

学校運営

評価

人事担当官

人事管理

教育

ジェンダーと教育

特別支援教育

調達マネジ

メント

会計官

特別支援教育

ジェンダーと教育

コンピュータ技

教育

モニタリン

グ・評価

県教育事務所

 

1

2

3

45

 

事務所長

教育

人事管理

コンピュータ技

ジェンダーと教育

特別支援教

初等教育アドバ

教育

ジェンダーと教育

カリキュラム開発

モニタリング・

学校運営

イザー

評価

初等教育担当官

教育

ジェンダーと教育

コンピュータ技

人事管理

学校運営

人事担当官

人事管理

コンピュータ技術

組織マネジメント

教育

教育計画

会計官

モニタリング・

・組織マネジメント ・調達マネジメント ・ 教育

施設建設マネジ

・人事管理

コンピュー

評価

メント

・ジェンダーと

タ技術

教育

出所: (2005)を基に筆者作成。

これらの分析からは、各行政官の能力開発に関する研修ニーズに関して、以下のような傾向を

指摘することができる。

【全体の傾向】

職種によって教育行政官の関心分野は異なり、多様なニーズがある。

現在、担当している職種と、能力開発を望んでいる分野とが一致している場合(例:州県

の人事担当官=人事管理)、必ずしも一致していない場合(例:県の会計官=モニタリン

グ評価)が見られる。

52

「会計」と「施設建設マネジメント」分野への関心は比較的に低く、「 教育」、 「ジェンダー」、「特別支援教育」など教育セクターの政策協議で議論 89 されている教育課 題については高い関心が見られる。

【職種別】

教育計画官は、他の職種と比較して「プロジェクト・マネジメント系」の技術に対するニ

ーズが高い。また、モニタリング・評価に対する関心も高い。すなわち、実施マネジメン

トと活動のモニタリング・評価という教育計画立案後の活動をいかに進めていくかに関心

があることが推察できる。

事務所長レベルは、教育課題に対する関心と、人事や組織マネジメント、そしてコンピュ

ータ技術など組織運営に関する技術に対するニーズが高い。

県レベルの人事担当官は、組織運営技術に対して、州レベルの人事担当官は、教育課題に

対する関心が高いなど、職種は同じでも行政レベルが異なることで能力開発に対するニー

ズが異なっている。

初中等教育担当官や教授法助言官など学校レベルでの活動が主業務となる職種において

は、業務に直接関係する学校経営技術とモニタリング・評価について関心が高い。

また、事務所ごとにニーズの高い分野を見てみると、 教育、人事管理、ジェンダー、 特別支援教育、コンピュータ技術、モニタリング評価、そして組織マネジメントであることが分か る。 このように基本的には事務所別、職種別に多様なニーズがあり、州、県という教育行政レベル によって統一した研修プログラムを計画、実施することが、必ずしも各事務所のニーズに合致す るとは限らないことを示唆している。

6 - 6 まとめ

教育マネジメント強化のための取り組みや支援の配分に際して、州と県という教育行政レベ

ル間で不平等、不均衡が生じている。

同様の不平等、不均衡が同じ行政事務所内の異職種間で生じている。

これらの背景に、過去 10 年間、初等教育サブ・セクター開発を重点的に取り組んできたこ と、また、地方分権化促進支援のためドナーが支援対象としている県教育事務所に多くの投 入がなされ、それ以外の州・県教育事務所も含めた国や地域の教育行政全体への視点が不十

89 2004 年に新大統領として赴任したビング・ワ・ムタリカ大統領が開催を選挙公約としていた (全国教育会議)が2005 年 3 月に開催されたが、そのときにもこの 3 分野は今後重視していかなければ いけない分野とされた。

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分であったことが考えられる。

関心のある能力開発分野のニーズは、各事務所、各個人によって多様である。そのニーズの

背景には、事務所内の人員不足で、一人の職員がいくつかの仕事を掛け持ちするなど、自分

の職種以外の業務を兼務していることも考えられる。

従って、州、県といった教育行政組織の を強化する際には、すべての事務所に対して統 一した研修プログラムを実施することが必ずしも現場のニーズに合致しているとは限らな い。また、公式の職種以外にも事務所内で役割を担っている場合には、その分野の能力強化 の支援をすることが行政組織全体のキャパシティ強化につながると考えられる。

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