官民連携(PPP)業務計画

2012 − 2020
ストラテジー 2020 のビジョンの実現に向けて:
アジア開発銀行の業務における官民連携(PPP)の新たな役割

アジア開発銀行

官民連携
(PPP)業務計画
2012 − 2020
ストラテジー 2020 のビジョンの実現に向けて:
アジア開発銀行の業務における官民連携(PPP)の新たな役割

アジア開発銀行

©2012 アジア開発銀行
無断転載禁ず。2012 年発行。

出版物分類データ
アジア開発銀行
官民連携(PPP)業務計画 2012―2020:ストラテジー 2020 のビジョンの実現に向けて―アジア
開発銀行の業務における官民連携(PPP)の新たな役割
1. 官民連携

2. アジア開発銀行

I. アジア開発銀行

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目  次

略 語

iv

要 約

v

I.

1

はじめに

II. 概念的枠組み
A. 官民連携(PPP)
B. ADB の業務における官民連携
III. インフラ・ファイナンスの課題
A. 利用可能な外部のインフラ資金源
B. 民間セクターによる投資とファイナンス
IV. 官民連携の実施原則と指針
A. 官民連携業務の枠組み
B. 第 1 の柱:提唱と能力育成
C. 第 2 の柱:環境整備
D. 第 3 の柱:プロジェクトの策定
E. 第 4 の柱:プロジェクト・ファイナンス
V. 実施計画の実行
A. 戦略的方向性
B. 国別支援戦略(CPS)
C. プロジェクトの優先順位とスクリーニング
D. 業績評価
E. ADB 職員の能力育成
F. 知識管理
G. スケジュール
H. モニタリングと評価
付 録
1. PPP(官民連携)の特徴
2. PPP 案件の組成プロセス
3. バリュー・フォー・マネーおよび政府事業との比較
4. プロジェクト開発基金(PDF)
5. 国際金融公社(IFC)の取引アドバイザリー業務
6. ADB の各部門による活動の統合
7. 成果とモニタリングの枠組み

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iii

略 語

ADB―アジア開発銀行
CPM―国別計画策定ミッション
Community of Practice(CoP)―実務委員会
DMC―開発途上加盟国
IFC―国際金融公社
KPI―主要業績評価指標
MP3IC―インフラ能力育成のための多国間官民連携
PDF―プロジェクト開発基金(機構)
PPP―官民連携
PSC―公的セクターとの比較
PSD―民間セクター育成
PSOD―民間部門業務局
PSP―民間セクターによる参画
SES―特別評価調査
TA―技術支援
VFM―バリュー・フォー・マネー

官民連携作業部会

iv

委員長

民間部門業務局副局長

山縣 丞

副委員長

南アジア局副局長
地域協力・持続的開発局副局長

M. C. Locsin
W. Um

チームメンバー

中央・西アジア局課長
南アジア局主任民間セクター開発専門官
インドネシア駐在員事務所所
民間部門業務局上級投資専門官

A. Chiplunkar
G. Hauber
J. Lindborg
S. Sampath

要 約
『ストラテジー 2020:アジア開発 銀行(ADB)の長期戦略枠組み 2008 ∼ 2020 年』は、
民間セクターの育成と、民間事業への支援業務をアジア・太平洋地域の変革の鍵と位置づけ
ています。ストラテジー 2020 の下、ADB は民間セクターとの協力を強化し、アジア・太平
洋地域の経済成長を後押しします。官民連携(PPP)は、その目的を実現する上で重要な方
策とみなされており、ストラテジー 2020 は、ADB の主要業務における PPP 推進に力を入
れています。このアプローチは、特にコストの一部または全額が回収な可能な場合、国際開
発金融機関はプロジェクト・ファイナンスの推進において民間事業者と協力すべきという G20
の見解にも沿ったものです。ADB の独立評価局は 2009 年、ADB が 1988 年∼ 2008 年に
支援を行ったインフラ関連プロジェクトに対する特別評価調査を行いました。ADB の幹部は、
この調査報告でなされた提案を踏まえ、ストラテジー 2020 を支えている PPP について、統
一的な分析と運営の枠組みとなる業務計画の策定に合意しました。
PPP という表現やそのコンセプトは変遷を経てきており、ADB の政策や手続きを見直し、
かつその業務において PPP を主流化する上で、PPP の定義が何かを確認することは重要な
意義があります。ADB の業務では、業績ベースの契約(管理・サービス契約)、リース―操
業―移転、建設―所有―操業―移転、設計―建設―資金調達―操業、その派生、コンセッ
ションなどのすべての契約が PPP と見なされます。政府調達におけるターンキー方式に基づ
いた設計や建設契約(エンジニアリング、調達および請負工事契約)は除外します。
アジア・太平洋地域は、2020 年までに少なくとも 8 兆ドルのインフラ投資を必要としてい
ますが、従来の資金源から調達可能な資金額は、この投資ニーズを大きく下回っています。
大規模なインフラ・ニーズを満たすために各国に与えられた選択肢は、
(i)従来の資金源を
見直し、そこから更なる資金の調達を模索する、
(ii)予算外の調達源からの資金調達を増
やすメカニズムを探る、
(iii)インフラ整備における PPP の役割強化のため、その阻害要因
を取り除く、の 3 種類があります。
インフラ・プロジェクトを管理したり関連サービスを提供する上で、一般的に民間企業は
政府よりも効率的と考えられています。民間企業を巻き込むことで、最新技術への投資や新
たな手法の導入、機構制度の透明化がはかられ、運営の効率向上のきっかけになるからです。
しかし、インフラ・プロジェクトの全てが PPP に適しているわけではなく、インフラ整備やサー
ビス提供に民間セクターを呼び込むには要件を定める必要があります。入札と契約が効率的
で透明性の高い方法で行われれば、民間企業のインフラ・サービスへの参画には、
(i)資源
の有効活用、
(ii)インフラ施設とサービスの質的向上、
(iii)公的セクターの運営改善、
(iv)
政府調達の改善といった利点が見込まれます。

v

vi

要 約

ADB は、開発途上加盟国における業務をとりまく環境や異なる経済状況を勘案し、PPP
業務の基本を、1.提唱と能力育成、2.環境整備、3.プロジェクト策定、そして4.プロジェ
クト・ファイナンス、という 4 つの柱としています。第 1 の柱では、ADB の地域局が中心と
なり途上国に対して PPP を提唱したり政府の能力開発を促進し、第 2 の柱でも、PPP 促進
に向けた政策・環境整備をめざすため地域局は途上国への支援を強化し、第 3 の柱でも地
域局が積極的に PPP を奨励し、プロジェクト案件の発掘や開発ニーズへの対応能力を高め
ます。第 4 の柱では、民間投資の促進を通じて途上国に変革をもたらすため、ADB の民間
部門業務局が、ノンソブリンの商品やその適用、さらに商業的な協調融資(投融資、シンジ
ケーション等)を増やして支援を提供します。地域局も、PPP 案件の資金調達を支援するた
め、政府への融資をオファーする場合があります。
PPP への支援は、その環境整備からプロジェクト期間全般を通じた包括的な支援、そし
て政府への資金提供と広範囲にわたることから、ADB の地域局は、それらを国別支援戦
略のプロセスに含めています。具体的には、局内の各セクター課や民間部門業務局と連携を
とりながら、途上国政府と協力してその国の PPP 戦略を策定します。戦略案には、
(i)PPP
の促進策とその選択肢を含む国別支援戦略・国別業務計画の作成、
(ii)PPP 推進にあたり
必要な能力育成・意識啓発・環境整備支援、
(iii)PPP プロジェクトの開発・準備への実地
支援、
(iv)候補となる民間・PPP プロジェクトのリスト作成、
(v)民間資金による(必要な
場合には政府資金も)PPP プロジェクトの立案、が含まれます。
官民連携や民間セクター育成をより統一的に適用し、ストラテジー 2020 を積極的に推進
するには、純民間のプロジェクト、次いで PPP プロジェクトへの支援が、政府実施のプロジェ
クト支援より優先されるよう ADB の業務を見直す必要があります。PPP と民間セクター育成
は不可分であり、PPP への支援は , より広義の民間セクター育成に対する支援の一環でもあ
ります。従ってプロジェクトは、まず民間セクター育成のスクリーニングを経て選ぶことになり
ます。具体的には、PPP をスクリーニングするプロセスにおいて、民間企業の技術・運営・
技能支援、参画そして資金が最大に活用できる分野、及び ADB の技術支援と財源を最も
有効活用できる領域を特定することになります。
ADB は、業務の重点を PPP に移行すると同時に、各局における業績評価方法を見直す
必要があります。PPP への支援は、往々にして各セクターの垣根を超えるため、組織内外の
様々な部署との協働が求められます。これには、民間企業の参画を促すような PPP プロジェ
クトの組成(結果として ADB がそのプロジェクトに融資を行うか否かに関わらず)を目指し
た PPP アドバイザリー・サービスの提供も含まれます。
地域局の職員が、途上国のニーズによりよく応えるには、PPP の可能性とその選択肢、そ
してそれを支えるコンセプトを熟知する必要があります。職員の能力開発においては、PPP
全般のスクリーニング、途上国と PPP 支援に関する効果的な対話、PPP 実施にあたり政府
が必要とする知識・能力育成を図る TA の準備と管理、そしてプロジェクト・ファイナンスの
組成と評価をめざします。地域局において PPP 業務を促進するには、各局の PPP 専門官が、
PPP 実務委員会の支援を得ながら、案件の構想段階以前、プロジェクトのコンセプト作成
から積極的に参画することが望まれます。

要 約

本業務計画は、2 段階に分けて実施されます。第 1 段階(2013 年まで)は、ADB 内で
PPP を育成・支援すべく業務方針とその手続きを確立します。この第1段階は、PPP への
支援を、ADB においていかに拡大するかを事実上決定するものです。各地域局は担当の途
上国と協議を行い、第 2 段階を実施します。実施計画の初めの 2 年間が終了した段階で、
ADB 内部で PPP 業務の見直しを行います。

vii

1

I. はじめに

1

1. アジア開発銀行(ADB)のストラテジー 2020 は、民間セクター育成と民間セクターへの
支援を、アジア・太平洋地域の変革の鍵と位置付けています。ストラテジー 2020 の下、
ADB は民間部門との協力を強化し、アジア・太平洋地域の経済成長を後押ししていきます。
こうした目的を達成する上で、ADB は官民連携(PPP)が重要な方策であると考えており、
ストラテジー 2020 は、ADB の主要業務の中でも PPP 推進に力を入れています。このア
プローチは、特にコストの一部または全額が回収な可能な場合、国際開発金融機関は民
間事業者と協力してプロジェクト・ファイナンスを推進すべきという G20 の見解にも沿った
ものです。PPP の原則を、ADB の業務全体に取り入れることにより、PPP プロジェクト
の立案とその成果を大幅に高め、ストラテジー 2020 の掲げる目標に貢献することができ
ます。またそれにより ADB は、アジア・太平洋地域において巨大かつ増加の一途をたど
るインフラ需要に応えるために、自らの限られた資源を有効活用して、民間投資と民間融
資を呼び込むことができます。
2. ADB の独立評価局は、ADB が 1988 年∼ 2008 年に支援を行ったインフラ・プロジェク
トの特別評価報告(SES)の結果を 2009 年に発表しました。ADB が開発途上加盟国に
おける PPP 支援の業務戦略や事業計画を策定する上で、SES は貴重な判断材料を提供
するものです。SES の評価と提案は、ADB がストラテジー2020 に基づきPSD 民間セクター
育成と民間セクター業務を拡大しつつある今の状況に適ったものと言えます。
3. ADB の幹部は、この評 価報告に含まれた提案を踏まえ、ストラテジー 2020 を支える
PPP について、統一的な分析と運営の枠組みとなる業務実施計画の策定に合意しました。
PPP の基本理念は普遍的ですが、それをいかに実務に適用するかは、各国のニーズや資
源、制約を考慮しなければなりません。そのためには、その国の国別支援戦略や国別業
務計画に PPP が設計され、組み込まれる必要があります。本業務計画では、アジア太平
洋の全域で ADB が行う PPP 支援業務の一貫性を保つため、戦略的原則を確立していま
す。

1 『ストラテジー 2020:アジア開発銀行の長期戦略枠組み 2008 ∼ 2020 年』
(ADB、2008 年、マニラ)。

2

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

II. 概念的枠組み

A. 官民連携(PPP)
4. PPP では、政府(国、州、省または地方自治体)と民間企業が、契約を通してそれぞれ
の技能、資産、そして財源を補完的に提供し、リスクとリターンを共有し、市民に最適な
サービスと価値を提供することを目指します。図 1 は、民間セクターによる幅広い参画を下
位区分として、PPP の主な種類を表したものです。
5.「PPP」と「民営化」という言葉は時として同じ意味で用いられるものの、両者は明確に区
別する必要があります。
「民営化」においては、物的資産や事業の所有権が、政府から民
間企業に移転します。政府が保有する株式を売却して公益事業を手放すことは、民営化
に当たります。政府の公益事業または政府が所有する企業が民営化される場合、その公
益事業または企業を取得した民間企業は、サービスの提供に責任を負うことになります。
インフラおよび公益事業の民営化には、通常、その活動が持つ独占性、株式・事業売却
に対する社会的・政治的懸念、サービスの提供に用いられる施設の継続的な運営等に配
慮するため、そのセクターに固有の規制を伴います。

図 1 官民連携のスペクトル
民間
コンセッション契約

リース契約





管理契約

サービス契約

民間セクターが新規または既存インフラに投資。システム運
営は完全に民間セクターが行う
契約期間中、所有権は民間セクターにある
リスク特性:政府の収益は予算に基づく。民間セクターの収
益は事業収益に基づくというリスクがある。技術的、財務
的、運営上のリスクは民間セクターが負う
継続期間:約15∼50年

民間セクターがサービス提供と運営上の投資について全責任を
負う
所有権は政府に留まる
リスク特性:民間セクターは収益リスクを、政府は大型投資のリ
スクを負う。民間セクターもある程度の投資リスクを負う
継続期間:約10∼30年

施設および/または運営の管理
所有権は政府に留まる
リスク特性:民間セクターはパフォーマンスと連動した料金を
受領。民間セクターによる設備投資は限定的
継続期間:約5∼15年

資産および/または設備の保守
所有権は政府に留まる
リスク特性:民間セクターはサービス料金を受領
継続期間:約1∼5年

公的

所有権/設備投資

}

民間




概念的枠組み

6. PPP には、新たなインフラ資産の建設と保守を伴うもの(グリーンフィールド)と、
既存の公共資産の管理を伴うもの(ブラウンフィールド)とがあります。PPP におい
ては、サービスの提供の最終的な責任は政府にありますが、長期にわたりサービスを
提供するのは民間事業者です。PPP では、参画者双方(サービスの購入者・事業権の
譲与者、民間事業者・コンセッション事業者)の責任は、個別の契約によって規定さ
れます。この契約には、どのような条件で民間事業者が、定期的あるいは最終的な報
酬の支払いを受けることができるか、およびその報酬額が物価変動に伴い調整される
のか、などが規定されています。
7.「PPP」および「PSP」(官民参画)という言葉もまた、往々にして同じ意味で用いら
れています。PSP 契約という言葉が使われていた 1990 年代当時、各国政府は、パート
ナーシップの機会を重視するというよりも、むしろ予算の抑制を目的として投資義務
を民間企業体に負担させようとしていました。しかしそれには、政府と民間事業者の
間にパートナーシップ(つまり契約上の義務やコミットメント)が必要です。PSP スキー
ムがあまりにも野心的で、社会的な影響や課題に十分な配慮がされていない場合には、
事業が独占的である故に、ユーザーに課せられる料金や利益をどこまで認めるかといっ
た問題に対して社会的な懸念が高まった例もありました。PSP 時代の経験は、PPP の
プロセス全体をどう改良、改善すべきかという価値ある判断材料をもたらすものです。
PSP での経験を批判的に分析することが、PPP と言う新しいコンセプトを打ち立てる
ことに貢献しました。その「PPP」とは、パートナーシップを通じたより良い公共サー
ビスの提供と、施設・資産のライフサイクルを通じたバリュー・フォー・マネー(支
出額に対して最大の価値を提供すること)の実現に重点を置くものです。
8. PPP のコンセプトとその用語は、時代によって変化してきました。よって、ADB が
PPP をより効果的に業務に取り込み、業務における重要な要素と位置付けるべく、方針・
手続きを見直す際には、PPP の定義を再確認することは重要な意味を持ちます。PPP
とは、効率的で近代的な公的サービスを民間から調達するための一手段であり、単に
施設や資産建設のために民間資金を利用することと見なすべきではありません。PPP
は、長期間に亘るパートナーシップを通じて、インフラ設備を管理し、公益サービス
を提供する手法の一つであるべきです。適切な責任・リスクの負担、経営の分担と相
乗作用、新しい技術の導入と開発、施設・資産の効率的な活用、そしてプロジェクト
のライフサイクルを通じた管理により、利用者により良いサービスを提供し、納税者
により多くのバリュー・フォー・マネーを提供することが目的です。PPP では、サー
ビスの提供、インフラ施設の建設と運営の一部を民間事業者に移管しますが、その他
は引き続き政府が所管する必要があります。

B. ADB の業務における官民連携
9. ADB の業務では、業績ベースの契約(管理・サービス契約)、リース―操業―移転、
建設―所有―操業―移転、設計―建設―資金調達―操業、その派生、コンセッション
などのすべての契約を、PPP と見なします。政府調達においてターンキー方式が採用
され、その契約に設計や建設を含む(エンジニアリング、調達および請負工事契約)
ことがありますが、それらは除外します。また、業績と報酬が必ずしも連動しない単
純なサービス契約(公的施設の運営を民間の請負会社職員に委託する形式のもの)や、

3

4

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

例えば完成後 5 年間に満たない保証・保守を含む建設契約(対象施設が新しく、基本
2
的な保守のみでよいため、業績に伴うリスクは非常に低い)も除外されています 。し
かし、こうしたサービス契約が、より包括的な PPP へと移行する第 1 段階として行わ
れる場合もあります。民営化と資産売却はいずれも民間企業の持つ技能と資金を導入
するものではありますが、ADB が行う民営化への支援は、PPP へのそれとは別に捉
える必要があり、民営化や資産売却もまた PPP から除外されます。巻末の付録 1(p.26)
は、PPP の要素と、PPP が適用されることの多いセクターをリストアップしたものです。

2 ただし、特に経済規模が小さい脆弱な途上国では、長期の建設契約を単純な建設契約にするよりも、長期保証
と保守を付帯させることが好まれる。

5

III. インフラ・ファイナンスの課題

A. 利用可能な外部のインフラ資金源
3

10. 2010 年から 2020 年までのアジア諸国のインフラ需要は 8 兆ドルと試算され 、うち 68%
が新規インフラの建設、32% が既存インフラの保守と建て替えです。この期間、年間の
平均インフラ需要は、約 7,500 億ドルにのぼります。ボックス 1(囲み)では ADB の開
発途上加盟国におけるインフラ需要の例を表しています。
11. 従来の資金源から動員できる額は、上記のインフラ需要を大きく下回っています。インフ
4
5
ラ建設に提供されうる資金額は、ADB が 110.2 億ドル 、世界銀行が 230 億ドル で、

ボックス 1 ADBの開発途上加盟国におけるインフラ・ファイナンスの需要
インド:ゴールドマン・サックスの試算によれば、2010 ∼ 2020 年にインドのインフラ需要を満たす
ために必要な調達額は 1.7 兆ドル。
出 典:
「 インド は そ の 巨 大 な イン フ ラ 需 要 に 対 応 可 能(India CAN Afford Its Massive
Infrastructure Needs)」。
『Global Economics Paper』187
(ゴールドマン・サックス、2009 年 9 月)。
マレーシア:2011∼ 2015 年にかけての PPP プロジェクト52 件に 200 億ドル
(年間 50 億ドル)が必要。
出典:
『第 10 次マレーシア計画・2011 年∼ 2015 年』
(マレーシア政府、2011 年、クアラルンプール)。
ベトナム:2011 ∼ 2020 年のインフラ投資に 1,670 億ドル必要。うち 650 億ドルは、民間セクターか
ら調達予定(年間約 65 億ドル)。
出典:ベトナム政府、計画・投資省試算。
インドネシア:2011 ∼ 2025 年のインフラ投資に 2,110 億ドル必要。うち 1,050 億ドルは民間セクター
から調達予定(年間約 42 億ドル)。
出 典:
『 経 済 発 展 の 加 速・ 拡 大 の た め の 基 本 計 画 2011 ∼ 2025 年(Master Plan for
Acceleration and Expansion of Economic Development, 2011-2025)』
( インドネシア政 府、
2011 年、ジャカルタ)。
タイ:2009 ∼ 2012 年に 480 億ドル必要。うち 49 億ドルは民間セクターから調達予定(年間約 16
億ドル)

出典:
『2009 年第二次景気刺激プログラム』
(タイ政府、バンコク)。

3 『シームレス・アジアに向けたインフラストラクチャー(Infrastructure for a Seamless Asia)』
(ADB およびア
ジア開発銀行研究所、2009 年、マニラ)。
4 『アジア開発銀行年次報告 2009』
(ADB、2010 年、マニラ)。民間部門業務局は、域内の官民連携プロジェク
ト 47 件に対し、62.5 億ドル以上(ローン、株式、政治リスク保証、部分信用保証、信用補完融資スキーム、お
よび B ローンを含む)を提供した。
5 『世界銀行年次報告 2009』
(世界銀行、2010 年、ワシントン DC)。この数字には、全セクターに対する支援総
額と、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロア
チア、グルジア、カザフスタン、キルギス共和国、コソボ、マケドニア、モルドバおよびモンテネグロへの支援額
が含まれる。

6

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

増大する域内のインフラ需要の一部を満たすのみです。ADB の通常資本財源(OCR)
と譲許的条件による貸付(アジア開発基金、技術協力のための無償援助など)を含めた
二国間及び国際開発金融機関からの融資は、この地域の経済・社会インフラと公的サー
ビスへの投資に必要な資金のごく一部を満たすに過ぎません。
12. 域内諸国では、巨大な投資不足が経済成長に悪影響を及ぼつつあり、更なる資金の手当
が早急に必要とされています。域内諸国に与えられた選択肢は、主に3つ、すなわち(i)
従来の資金源を見直し、そこから更なる資金の調達を模索する、
(ii)予算以外の資金源
からの資金調達を増やすようなメカニズムを探る、
(iii)インフラ建設における PPP 拡大
の妨げとなる問題を取り除く、があります。ADB は、近代的で効率的なインフラ・サービ
スを提供する上で加盟途上国が直面する課題の克服を支援しています。従って、PPP 促
進を目的とする ADB の活動は、ADB によるインフラ支援業務の重要な部分を占めます。

B. 民間セクターによる投資とファイナンス
13. 一般的に民間企業は、インフラ・プロジェクトの管理とそのサービスの提供において、政
府より効率的であると考えられています。民間企業の参画により、新技術への投資、新た
な手法の導入、責任分担の明確化と透明化がはかられ、インフラ・プロジェクト運営の
効率が向上する可能性が高まります。PPP によってガバナンスが向上し、透明性、競争、
説明責任が促進され、バリュー・フォー・マネーが向上することもしばしばです。とりわ
け長期契約を伴うPPP は、公的サービスの提供や施設の建設において政府に多くのメリッ
トをもたらします。通常、PPP プロジェクトでは、公開かつ透明性の高い入札が行われ、
入札参加者に対しては、入札の評価や発注方法に関する十分な情報が提供されますが、
これはとても重要です。従来のプロジェクトと異なり、PPP プロジェクトでは、リミテッド・
リコース・ファイナンス(限定償還請求権付き金融)により融資が行われますが、PPP プ
ロジェクトの入札において、民間事業者と銀行が競うのは、インフラ施設を建設する権利
のみではなく、政府との長期契約に基づく施設の設計・建設・操業・保守に必要な初動
の投融資を提供する権利をも競うからです。よって、プロジェクトに参画する投資家と銀
行は、契約がどのようにして、どのような条件で発注されるかを確認する必要があります。
インフラ・サービスの提供に、民間事業者を参画させるメリットとしては、以下が挙げら
6
れます 。
(i) 資源の有効活用。政府と民間事業者との間でリスクが適切に分担され、適切に管理
されている PPP 契約は、その施設の耐用期間にわたり資源を有効に活用すること
ができます。これは民間事業者が、施設の設計コスト・建設工事の品質に対して、
施設の保守費用・ライフサイクルを通じた設備投資、あるいは既存施設の場合は、
拡張費用を比較・検討するインセンティブを持っているからです。
(ii) 施設とサービスの質的向上。PPP プロジェクトには銀行と事業者が資金を提供する
ため、こうした政府外部関係者による審査が強化されます。多額の資金が事業に
投じられることになるため、これらの外部関係者は通常、政府がプロジェクトを策

6 詳細は、
『新興市場の官民連携に民間セクターを関与させるには(How to Engage with the Private Sector in
Public―Private Partnerships in Emerging Markets)』
((E. Farquharson、C. Torres de Mästle、and E. R.
Yescombe、J. Encinas 共著、2011 年、ワシントン DC、世界銀行官民インフラ助言ファシリティー)参照。

インフラ・ファイナンスの課題

定して必要資金の借り入れを行うプロジェクトの場合と比べ、はるかに大規模で詳
細なデュー・デリジェンスと施設・サービスの品質確保を行います。
(iii)政府業務の改善。PPP 実施プロセスの中で、政府には新しい取り組み・技能を必
要とする新たな思考・行動様式が求められますが、それは、広範な経済改革とビジ
ネス環境の改善といった課題につながります。一例を挙げれば、PPP は、競争を
促進し、調達方法や公的サービスの質を改善する手段ともなりえ、単に民間企業の
持つ資源を活用するための手段にとどまりません。PPP は、民間セクターとの一度
限りの金融取引ではありません。このため PPP は、確固たる政策基盤、政府によ
る長期的なコミットメント、そして健全で確立された法制度に基づく必要があります。
優秀な民間事業者は、これらの点を検討した後、プロジェクト参画の是非を決定し
ます。
(iv)政府調達の改善。インフラ・プロジェクトを PPP 方式により契約・実施することで、
政府は自らの調達手段と能力の強化をはかることができます。PPP プロジェクトを
立案、準備、実施することにより、政府はその戦略策定プロセスを改善、プロジェ
クト管理や交渉スキルを高め、金融手法を理解、長期にわたる複雑な契約取引を
進める能力を培うことができます。

7

8

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

IV. 官民連携の実施原則と指針

14. PPP では、インフラの開発・運営の一部を民間事業者に委託しますが、その他は政府
が引き続き所管します。政府が民間事業者に期待することは、技術、新たな問題解決法、
専門知識などです。これらには、政府の従来の調達方法では育成・取得が難しい技能、
経営管理手法、テクノロジーが含まれます。多くの PPP プロジェクトでは、ベスト・プラクティ
ス(最も効果的で信頼できると見なされる方法)と国際基準が適用されますが、PPP プ
ロジェクトでは、これを国内基準と組み合わせることで質の高いサービスを提供します。
また政府は、国内基準と国際基準との間にあるギャップを解消しようとするので、将来
的に海外からの投資を呼び込む場合にも役立ちます。
15. 従来の政府プロジェクトと比べて、PPP プロジェクトはその立案に長い時間を要し、また
複雑です。しかし PPP プロジェクトの組成プロセスを通じ、プロジェクトを継続させるた
めに求められるスペックやコスト、支援、手続きがはっきりします。こうした点は、政府
が実施するプロジェクトでは、あまり明らかにされることがありません。従来の政府調達
では、政府がプロジェクトに予算を配分し管理する能力と意向を持っていることが漠然と
ながらも想定され、そのことが厳密に追及されることはありません。政府はプロジェクト
の運営、予算や実行に関わる重要な基準に十分な注意を払わなかったり、基準そのもの
を規定しないケースも少なくありません。途上国の政府が PPP モデルを採用すれば、こ
うした問題は透明化され、ADB と支援方法を話し合う議論の場にあげることもできます。
PPP の評価指標を用いることは、ひいては政府が ADB に提案するプロジェクト案を、ほ
ぼ例外なく改善することにつながります。
16. しかし全てのインフラ・プロジェクトに PPP 手法が有効というわけではありません。PPP
が成功を収めるには、いくつかの要件をクリアする必要があります。政府が行う公共設
備支出やサービス提供が代用できるということではなく、PPP にできることは、政府の
公益事業、公的な開発援助、その他の資金源を補完するということです。英国のような
成熟した市場では、PPP(英国では「プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(PFI)」
という言葉を使用)は、政府による公共サービスへの投資に、小さいながらも重要な役
割を果たしており、政府による調達契約全体の約 10 ∼ 15% を占めます。これは 1990 /
91 年∼ 2005 / 06 年に実施された PPP 案件 625 件、総額 600 億ポンド(1,000 億ドル)
7
以上に相当します 。これに対し、インド計画委員会の第 11 次 5 年計画
(2007 ∼ 2012 年)
は、全インフラ投資の約 3 割を民間投資に頼るという野心的な目標を設定しています。

7 『プライベート・ファイナンス・イニシアティブ:長期的パートナーシップの強化(Private Finance Initiative:
Strengthening Long-Term Partnerships)』
(英国財務省、2006 年 3 月、ロンドン)p.15 より。

官民連携の実施原則と指針

A. 官民連携業務の枠組み
17. ADB の PPP 業務は「提唱と能力育成」、
「環境整備」、
「プロジェクト策定」、および「プ
ロジェクト・ファイナンス」という 4 つの柱から成っています。図2は、ADB が加盟途上
国に対する PPP 支援を行う上で、どのような活動がそれぞれの柱に該当するかを示した
ものです。

B. 第 1 の柱:提唱と能力育成
加盟途上国政府に対する PPP 支援では、ADB の地域局が中心的役割を果たします。
18. 相手国政府の職員、機関、そして政策決定者を対象に研修を行い、能力育成と理解促
進を図ります。また、政府の PPP 政策に対する適切な意見・評価を、民間投資家や金
融機関に求めることもあります。こうした能力育成は、途上国政府が PPP を実施するに
あたり、新たな役割を果たせるように支援するものですが、PPP を通じて公共サービスを
効果的に提供するには、政府機関や手続き、プロセスを絶えず見直し、改良していくこ
8
とが課題となります 。途上国政府職員にはまた、民間企業とのパートナーシップを効果
的に管理する能力の育成も必要で、PPP 事業に習熟した専門家や、アドバイザーの協力
は特に重要です。PPP プログラムの確立には、政府の最上層部による政治的な関与と支
援が不可欠です。

図 2 ADBの官民連携業務の枠組みにおける4つの柱
第1の柱

第2の柱

第3の柱

第4の柱

提唱と能力育成

環境整備

プロジェクト策定

プロジェクト・ファイナンス

• 国 別またはセク • ADB プロジェクト •
• 意識啓発
の サイクルと PPP
ターごとの PPP
• リーダーシップの育
開 発プロセスを一
開発の促 進、指

致させる
導、 管 理を目的
• セクター 計 画と民
とし た 政 策 上、 • 先駆的プロジェクト •
間セクターの開 発
の組成を支援
法律上、規制上
アジェンダにおける
および 制度 上の • 発注から融資のク •
PPP の可能 性を特
ロ ー ジ ング ま で、
枠組み作り

プロセス全 体を通
• 政 府 お よ び ADB
じてアドバイザリー
職員の能力開発
を含む支 援を提 供
• 外部知識管理のた
( 専 門 家 に よる支
めの関係の強化
援、 ツールキット、
取 引アドバ イザ ー
費用の支出、調達
支援など)
地域局の管轄

信用補完商品(例:株式、
長 期 債、 劣 後 債の 借り
換え、協調融資、保証)
の提供
信用保証ファシリティー
の確立
バイアビリティ・ギャップ・
ファンディング(viability
gap funding、赤字額を
補助金の形で補てんする
こと)などのスキームを
通じて政 府に金 融 支 援
を提供

民間部門業務局と地域局

PPP = 官民連携

8 同様の例として、公益事業などにおける国有企業(SoE)の民営化がある。企業化は、かつて政府の一部門とし
て運営されていた事業に、職業的経営、説明責任、そして持続可能な経営というコンセプトをもたらした。一部
の公益サービスに PPP 手法を導入することで、民営化と同様、長期間にわたり持続的な改善がもたらされる可
能性がある。

9

10

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

19. 政府は、自国の開発政策に沿った形で PPP の導入が可能などうかを分析し、セクター
毎のロードマップを策定できる能力を十分に備えていなければなりません。政府における
プロジェクト実施主体は、プロジェクトの戦略上の位置づけ、そのプロジェクトが(調達
方法に関わらず)財政的に負担できるのか、そのプロジェクトに商業採算性があり民間
銀行の融資が可能か、更にプロジェクト実施に必要な資源、技能や体制が、その実施
主体に備わっているかを明確にしなければなりません。
9

10

20. ADB は、必要に応じて、多国間官民連携(MP3IC) やアジア PPP ネットワーク 等
の既存のイニシアティブを調査したり、既に進行中の他の ADB イニシアティブと重複し
ないか、当該業務が相手国のニーズや背景に沿ったものかどうかチェックを行います。

C. 第 2 の柱:環境整備
ADB の地域局は、民間部門業務局と協力して加盟途上国への支援を強化し、PPP 促進に
求められる環境整備を進めます。
21. 加盟途上国政府は、インフラ事業に PPP 方式を導入することが決まると、政策・法環境
がまだ十分に整備されていない状態であっても、往々にしてすぐプロジェクトを実行しが
ちです。開発において、
「実践しながら学ぶ」ことで物理的成果をおさめることも可能か
もしれませんが、PPP プロジェクトを確実に成功させるには、多くの前提条件が満たされ
る必要があります。途上国において民間企業が PPP への参入を躊躇する主な原因として
は、政府に PPP を支援・推進する政策・法的、リスクに応じたリターンをバランスよく市
場に根ざした形で認める枠組みがないことが挙げられます。投資法、税法、また契約の
強制力と契約者の権利、土地の所有権および資源の配分といった問題は、すべて PPP
プロジェクトの実行可能性に影響します。各セクターの収益構造、利用料金の改訂、提
供可能な担保・保証などもしばしば政策・法令な裏づけを必要とするもので、プロジェク
トの実行可能性を大きく左右します。個別の PPP プロジェクト契約にこうした環境整備
が記されている場合には、その成果があったとしても当該セクターまたはプロジェクトに
限りとなるリスクが高まります。結果、政府の能力育成につながらず、次の PPP プロジェ
クトを生み出すような環境整備には結びつきません。
22. 従って強化すべき対象となるのは、政府組織の体制、政策や方針、法制度、投資規則、
および金融市場の機能です。PPP 参画者の信頼を高める方法としては、以下が挙げられ
ます。
(i) 全てのセクターにおいて、PPP プロジェクトに提供される政府の支援とその範囲を
9 ADB は 2008 年、各国の多様な PPP 実 務 担当者を対 象とする学習プログラムの開発・導入を目的とする
MP3IC(能力育成イニシアティブ)を、世界銀行研究所および米州開発 銀行と共同で設立した。MP3IC は
PPP コア学習プログラムという学習・知識教材の普及を目指している。これは、大学院向けに作成された実践的
でインタラクティブ形式のマルティメディア研修モデュールで構成されており、国や地域レベル、および国際的な
学術機関が提供する修了証や学位プログラムとリンクできる。また、PPP 環境整備状況指数の作成や PPP に
対する各国のアプローチの比較、複数の PPP 関連書の発行
(グローバル PPP 能力育成ソースブック)、PPP ナレッ
ジ・ポータルの運営、PPP ビデオ対話シリーズの発行も行っている。ADB がパートナーとなっている MP3IC 内
でも、PPP に関する知識の創出と共有が可能。
10 PPP に関する地域フォーラムであるアジア PPP ネットワークは、知識の共有や研修の機会を求める地域の実務
者のニーズに応えるものである。

官民連携の実施原則と指針

規定する
(ii)PPP の持続的な収益モデルを支えるメカニズムを政府内に構築する
(iii)PPP の財政負担と経済的利益が持続的なものとするため、途上国が負う財政リスク
を管理できるようなメカニズム構築を支援する
(iv)随意契約にも適用可能な、透明で安定し、柔軟また迅速かつ公平な調達システムを
確立する
(v)PPP が適切な調達方法かを見極める際に用いる評価方法(例:予算から見た実行
11
可能性、バリュー・フォー・マネー や政府事業との比較、または政府サービスの質)
を確立し、それを継続的に検証して政府の意思決定に反映させるプログラムを策定
する
(vi)PPP プロジェクトに必要な土地の収用・整備を、ADB の環境・社会保護基準に沿っ
て安定、公平かつ迅速に実施できるシステムの策定を支援する

D. 第 3 の柱:プロジェクトの策定
ADB の地域局は、PPP を積極的に推奨し、途上国のプロジェクト発掘・開発能力を高めます。
23. 計画と準備が入念であるほど、効率良くプロジェクトが実施できます。多くの PPP プロジェ
クトで、融資が実行されなかったり、実行後に遅延が生じたり、業績が予想を下回ったり、
進行中のプロジェクトが中止に追い込まれたりするのは、プロジェクトの準備不足が直接
の原因である可能性があります。
24. ADB の各地域局は、途上国政府が PPP プロジェクトを発掘・準備できるよう、収益、経済、
財政、契約構成の観点から、またリスクの配分やプロジェクト・ファイナンスについても
的確な助言ができるようその能力開発を支援します。既に政策・法的な環境整備が進ん
でいる国の場合は、ADB は政府に対し助言することで PPP 活動を支えます。ADB は、
政府と民間事業者との交渉において、中立的な仲介者として携わることで政府を支援で
きるという、ユニークな立場にあります。ADB は、
(i)途上国の PPP 活動支援に必要な
リソースを有し、途上国への直接融資業務の経験を通じてその国が各セクターで抱えて
いる課題を深く理解しています。また(ii)民間部門業務局の民間企業向け投融資業務を
通じて、民間の投資行動を理解するとともに、民間金融機関の融資を呼び込むことがで
きます。ADB はこれらの技能、資源、知識を活用して、途上国政府の PPP 促進活動を
支援します。政府が必要とする支援とは、よく計画・準備され民間資金を呼び込めるよう
な PPP プロジェクトを多く組成することであり、そうしたな支援を政府に提供することで、
ADB は自らの資源をより効果的に活用します。
25. PPP プロジェクトの開発・準備に提供される ADB の支援は、特に PPP 制度の新しい国
においては、その作業過程にわたって途上国政府を先導します。ADB の支援の対象と
なるのは、プロジェクトの実施以前であれば政策決定者、プロジェクトの準備期間中は
プロジェクト・チーム、プロジェクトの運営開始後はプロジェクトの監督部門です。従っ
て ADB は、セクター分析と開発計画の立案、また、国別支援戦略や国別業務計画といっ

11 バリュー・フォー・マネーの詳細な解説は巻末の付録 3(p.37)を参照。また本業務計画への適用に関しては
第 28 節に記載。

11

12

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

たロードマップ策定の早い段階で、PPP 実施に向けた相手国の準備状況を考慮しなが
ら、PPP の可能性について協議します。国別支援戦略や国別業務計画に盛り込まれた
PPP 案件の立案作業を地域局が支援し、それら PPP プロジェクトに対する相手国政府
の関与を強めます。付録 2(p.28)では、PPP プロジェクトの策定を、段階ごとに解説し
ています。
26. ADB が、インフラ開発に振り分けられる資金は、国、セクターともに限られているため、
ADB の支援では PPP プロジェクトの育成・促進が優先されます。政府が、国内金融市
場から資金を調達でき、インフラ需要が ADB の提供できる支援額を大きく上回るような
国の場合、ADB の支援の大半は案件の育成に当てられます。プロジェクト組成のための
アドバイザリー・スキルの提供や、案件の組成を支援する融資など、初期段階からの支
援を通じて、民間による投融資が可能な案件を創出します。これにより ADB の提供する
資金が、民間資金を効果的に動員することが期待されます。これに対して、政府が国内
金融市場から調達できる長期資金が限られ、ADB がプロジェクト資金を融資することが
必要とされる国では、ADB は短期的には従来どおり政府プロジェクト(ソブリン)融資
を続けますが、その後は民間企業が参画する PPP プロジェクトの発掘・育成に注力します。
27. ADB は、相手国政府との協議の早い段階で、プロジェクトが PPP として実施可能かを
判断するため、経済・政治・社会状況を勘案した国別のスクリーニング・テストを行います。
一般的な PPP スクリーニングのチェックリストは表 1 に示されています。
28. プロジェクトが PPP に適しているか判断する際には、そのファンダメンタルズを分析して、
民間企業を参画させる範囲や、プロジェクトが政府セクターによって実施された場合のメ
リットを評価します。この評価は、政府が実施するプロジェクトとの比較を通じ、バリュー・
フォー・マネー(VFM)分析に基づき行われます。この手法により、プロジェクトの立案・
組成過程を通じて、その PPP プロジェクトが有益で、利用料金も適正かどうかも確認で
きます。これは、政府そしてプロジェクトの参画者に安心感を与えます。
(付録 3、p.37)。
29. 途上国政府は、入札の発注に先立ち、プロジェクト準備をしっかり行う必要がありますが、
それにはプロジェクトを立案・構築する技能・技術が必要です。例えば予備設計、技術・
運転仕様、各種調査(例:交通量、環境への影響)、資金調達案と銀行団との予備会議、
そして入札・契約書類の準備と言った作業は、外部の専門家を雇って行われます。これ
らの作業は、国際的な経験豊富な専門家による助言が必要な場合が多く、費用がかさむ
可能性もあります。しかしながら、これらの作業をないがしろにすることは、プロジェク
トが PPP として成功する可能性を損なう恐れがあります。
30. 民間企業を巻き込んだ PPP プロジェクトを準備するには、資金と専門的助言が必要です。
12
このため、プロジェクト開発基金または機構(PDF) を当該国内に設立する場合があり
ます。PDF は、プロジェクトの準備からそのプロジェクトが融資を受けられるまでに必要
な資金を提供します。この準備作業は極めて重要であるにも関わらず、専門家を雇う費
用が高額だからという理由で、政府は十分な予算をこれらの作業に振り分けることに積
極的ではありません。これは、専門家の助言がもたらす価値や時間のメリットを見過ごす
ものです。PDF を設立することにより、プロジェクトを準備する際に発生する問題の解決

官民連携の実施原則と指針

表 1 一般的なPPPスクリーニングおよびプロジェクト選別のチェックリスト
スクリーニング基準

はい いいえ

1. そのプロジェクトが政府の優先事項であることは明らかにされている(国家開発
計画に言及されている)か?
政府機関が、そのプロジェクトの全期間(7年、10 年、15 年、20 年超)にわたり、
プロジェクトの対価として、またはプロジェクトを支援するために必要な支払い
を行う能力があることが初期評価(予算計画)に示されているか?
2. そのプロジェクトには、大規模な新規設備投資(2,500 万ドル超)が必要か?

a

3. そのプロジェクトには、長期的な保守、測定可能なパフォーマンスや運営実績、
定期更新が必要か?
4. 初期分析で、そのプロジェクトは技術的・経済的・環境的に実行可能という結
果が出ているか?
5. プロジェクトを財政的に実行可能するような、革新的な仕組みはあるか?
6. 同じセクターで、国際的、地域内または国内の官民連携が開発されたことはあ
るか?
7. 民間セクターは興味を示しているか?
8. 民間セクターはプロジェクトに関するリスクを取ることに納得しているか?
納得していない場合、信頼に足るカウンターパーティーまたは政府自身が何らか
の支援を提供できるような形に、リスクを構成することは可能か?
9. 収益フローは明確に特定できるか(政府から、一般利用者から直接、またはそ
の両方から)?
10. プロジェクトのパフォーマンスを、明確で定量化可能な成果や主要業績評価指標
(KPI)によって測定することは可能か?
a 新規設備投資額は、そのプロジェクトが官民連携(PPP)スペクトルにおいてどこに位置づけられているの
かといった多くの要素によって決まる。サービス契約や管理契約において、民間セクターが設備投資を行う
必要は、ほとんど、または全くないことは明らかだが、民間セクターを比較的新しい PPP 市場かセクター(下
位セクター)に関与させることは、良い方法と言えるだろう。一方、民間セクターとの協力実績がある地域や、
そうした契約に有利な枠組みが存在する場合は、パフォーマンス・ベースの管理契約やコンセッション・ベー
スの仕組みを検討してもよいだろう。PPP プロジェクトの組成には多額の取引コストを伴う。そのため、プ
ロジェクトの資本は、そうした費用に見合う規模でなければならない。世界の途上国に関する評価によれば、
資本コスト 2,500 万ドルが PPP プロジェクトの適格基準の 1 つという結果が出ている。しかし ADB では、
地域局が地域ごと、国ごとにコスト基準を柔軟に定めることができる。

に必要な資金を確保できるのです。ただし、PDF を効果的に運用・活用するには、入念
な企画・運営が必要です。PDF を設立・運営するに当たって、資金の調達と使途配分、
また資金の回収方法には多くの選択肢が存在します。ADB を含む開発金融機関、政府、
また民間企業も、PDF の設立を支援します。付録 4(p.46)では、PDF を設計・運営す
る上で考慮すべき原則を解説しています。
12 プロジェクト組成の予算は、プロジェクトの総予算と比較すれば、さほど大きな額ではない。しかしこの予算
とその配分(使途)は、恐らくプロジェクトの準備作業の中でも最も重要なものと言える。プロジェクト策定の
コストは通常、平均してプロジェクト総経費の約 5% に相当する。規模の大きいプロジェクトでは、プロジェク
トの総費用の 1 ∼ 2% まで低下するが、規模の小さいプロジェクトでは 7 ∼ 10% となる場合もある。複雑なプ
ロジェクトでは、開発費用が上昇する場合がある。プロジェクト・ファイナンスが広く用いられる PPP 案件では、
プロジェクトの総経費に関わらず、法務や案件のストラクチャリングにかかる費用はほぼ一定額となっている。
途上国において先行事例となるような PPP 案件を組成するアドバイザリー支援の費用としては、平均 200 万∼
300 万ドルが必要とされる。

13

14

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

31. PDF 設立を支援することに加え、PPP 案件の組成を目的とするアドバイザリー業務に
TA を用いることは有効です。ADB は、アドバイザリー業務を継続的に提供できるよう、
手数料徴収形の TA を利用する場合があります。世界銀行グループの民間セクター部門
である国際金融公社(IFC)をはじめ、他の開発金融機関も、TA を PPP 案件への支
援に活用しています。IFC は新興国の中央・地方政府に対し、PPP 案件の実施に必要
な助言を行うとともに、TA 資金を PPP 契約業務に関わる外部専門家(財務、法務、技
術)への支払いに充てています。IFC では更に、TA 資金の活用に加え、顧問料そして
IFC 職員の人件費を賄う目的として、案件の成功報酬等を徴収しています。IFC が PPP
アドバイザリー・サービスに充てる資金をどのように調達しているかは、付録 5(p.58)に
記載されています。
32. PPP アドバイザリー・サービスを途上国政府に提供する際に、ADB の地域局は利益相
反の可能性を厳密かつ効果的に管理する必要があります。ADB が PPP アドバイザリー・
サービスを提供するにあたり、PPP 案件がその国に対する ADB の支援業務に対する条
件であったり、約束するものであってはなりません。また、ADB が政府のアドバイザー
を務めている案件に対して融資を検討する際には、利益相反が生じる可能性があります。
案件の審査では、不偏性と独立性を確保するため、その案件の担当者とは別の ADB 職
員が携わる必要があります。ADB 地域局の PPP 実行規則の一環として、アドバイザリー・
チームと融資チームの独立性、客観性、機密性を担保するための手続きが、業務指示書
に記載されます。

E. 第 4 の柱:プロジェクト・ファイナンス

ADB の民間部門業務局は、民間企業への支援及び民間銀行との協調融資を拡充することで、
その支援をより効果的なものとし、途上国における民間投資の拡大を通じて変革をもたらし
ます。ADB の地域局も、政府に融資を行うことで、PPP 案件の資金調達を支援する場合
があります。
33. 政府の返済保証を条件としない民間企業向けの支援には、融資、保証、ローン・保証の
シンジケーション、その他の金融支援(例:プロジェクト開発融資)が含まれます。ボッ
クス 2 は、ADB により政府への直接融資と、政府返済保証のない民間企業への融資が
共に実行されたプロジェクトの例を示しています。
34. ADB の提供する資金がより大きな資金を動員できるよう、ADB の協調融資および信用
補完商品の利用が推進されます。初めに、輸出信用保険、銀行融資(必要な場合は保証
をを提供)、および開発金融機関のもつ協調融資ファシリティー(例:国際協力銀行(JBIC)
13
の国際環境保全業務(GREEN) )等を検討します。ADB は、自身の信用補完商品だ
けでなく、他の信用補完機関(例:開発銀行、輸出信用機関、輸出入銀行、民間保険)
との協働を検討し、また PPP 案件に保証を供与する途上国機関(例:インドネシア・イ
ンフラ保証基金)を支援します。

13 JBIC は、鳩山イニシアティブに基づき、GREEN を通じて 2012 年末までに発展途上国に対し最大 40 億ドル
を融資することを提案した。これにより JBIC は、温室効果ガスの大幅な低減につながるプロジェクトに投融資
を行う民間企業・銀行に保証を提供します。

官民連携の実施原則と指針

ボックス 2 ナムトゥン2(Nam Theun 2)プロジェクト
12 億ドル規模のナムトゥン 2 は、ラオス人民民主共和国最大の水力発電プロジェクトであり、同
国の国内総生産(GDP)の 3 分の 1 近い費用を投じて建設されました。これは、同国と地域の発
展、貧困の削減、そして再生可能な新しい電力源の提供を目的とした多目的プロジェクトです。こ
のプロジェクトの運営会社であるナムトゥン 2 電力会社(NTPC)は、仏電力公社(Électricité de
France)
(35% 株主)、ラオス政 府(25%)、タイ発電公社‘U(Electricity Generating Public
Company、25%)、イタリアン・タイ・ディベロップメント(Italian-Thai Development、15%)によっ
て共同所有されています。
ナムトゥン 2 プロジェクトは、地域局と民間部門業務局の協力によって優れたプロジェクトが生ま
れた良い例です。2005 年に締結された融資合意にもとづき、ADB は以下を提供することでこの
プロジェクトを支援しました。
(i) NTPC 株式の購入資金として、政府への政府融資 2,000 万ドル
(ii)NTPC への直接的な民間セクター融資 5,000 万ドル
(iii)NTPC への政治リスク保証 5,000 万ドル
NTPC はプロジェクトの所有者として 25 年間のコンセッション契約を結んでおり、政府はその間、
20 億ドル超と推定される使用料、配当金、租税を蓄積し、貧困削減プログラム支援に役立てま
す。2010 年 3 月 15 日、NTPC は発電サービスを全面的に開始し、タイ王国電力庁(Electricity
Generating Authority of Thailand)に 1,000 メガワットの電力を供給しています。現在ではラ
オスの国営公益事業、ラオス電力公社(Electricité du Laos)にも電気を供給しています。

15

16

V. 実施計画の実行

A. 戦略的方向性
35. PPP プロジェクトの組成と、それに必要な政府の能力開発を支援することは、PPP プロ
グラムが成功を収める上で極めて重要です。大規模な支援が必要と考えられるのは、
(i)
民間セクターの役割をとり入れたインフラ開発計画、
(ii)フィージビリティ・スタディ、土
地収用および社会・環境評価等のプロジェクト準備作業、
(iii)政府による PPP 支援の
実行と管理、
(iv)政府と民間企業間における適切なリスク分担、
(v)PPP アドバイザリー
業務、です。PPP 戦略が、特定のセクターに限定されることは稀です。PPP の考え方と
その理解者を取り込むという、包括的な取り組みが求められます。ADB は、他の開発機
関や金融機関と密接に連携し、その活動が重複しないよう配慮しつつ、各パートナーの
比較優位を活用して途上国における PPP への支援を拡大します。ADB の各部門が PPP
に果たす役割と取り組みは、付録 6(p.61)に記載されています。
36. ADB では、地域局と民間部門業務局が途上国政府、民間企業や銀行との窓口であり、
民間資金を PPP 案件に呼び込む上で重要な役割を担っています。地域局は、PPP 推進
のための施策や制度の枠組み作り、制度整備を通じた PPP 案件の開発と資金調達への
支援、案件発掘と育成の支援、必要に応じてモデルプロジェクト実現のため、信用補完
を含む政府への直接融資を行います。また地域局は、プロジェクト組成に必要な制度構
築のガイドラインを提供し、民間企業や銀行の参画が可能となるような案件の組成を支
援し、案件の入札や交渉を指導します。民間部門業務局の役割には、国別支援戦略や
国別業務計画の策定の際に地域局を補佐して、可能性のある PPP プロジェクトを発掘す
ることがあります。また、PPP 案件への融資、民間銀行との協働とローン・シンジケーショ
ン、案件に関わるプライベート・エクイティ・ファンドへの投資、及び PPP プロジェクトが
長期資金の調達を行えるように資本市場と金融機関を支援することなどが含まれます。ま
た民間部門業務局は、民間銀行や保証会社からの協調融資および信用補完商品を手配
し、地域局の PPP 業務と融資を支援します。

B. 国別支援戦略(CPS)
37. ADB の PPP 支援は、各種制度の整備から、プロジェクトのライフサイクルを通して行わ
れる政府への支援、より幅の広い金融支援など、複数の分野に広範囲にまたがるもので
あることから、国別支援戦略の策定プロセスと連動させる必要があります。現状ではこう
した支援は、個々のセクター毎に行われているため、特定のプロジェクトに限定された固
有の課題を把握する上では役立ちますが、より広範囲な制度環境を整備する機会を逸す
ることになりかねません。PPP を促進する制度環境が未整備であるにも関わらず、一部
セクターのみに焦点を当てて取り組むことは、案件やセクターが変わるたびに制度整備の
プロセスをコストと時間をかけて繰り返すことになりかねません。個別の支援を複数のセ

実施計画の実行

クターを通して俯瞰した場合、結果がばらばらだったり、統一性に欠ける指針を政府に提
示する結果にもつながります。従って地域局では、関係する様々なセクターを念頭に置い
て国(または州、省)の PPP 戦略を策定する必要があり、地域局の各セクター部門と民
間部門業務局との密接な連携が求められます。国別支援戦略の策定には、中央業務サー
ビス部、協調融資業務部、法務局といった ADB の他の部署の参画も必要です。途上
国政府側は、特定のセクターにのみ PPP の活用を検討している場合でも、いずれ他のセ
クターに活用されるという前提で PPP 政策を作成する必要があります。特に、政府の所
管する投資制度、政府の債務管理及び予算作成は、PPP 案件を成功に導く重要な要素
です。PPP を用いたセクター支援は、ADB の各部門と PPP 専門家の密接な協議に基づ
いて、継続性と一貫性が確保される必要があります。図 3 は、国別支援戦略と国別業務
計画策定の際の PPP 支援のしくみを図示したものです。
38. 本業務計画の実施に際して必要となる戦略的変更点(表 2)としては、
(i)PPP の促進
策とその選択肢を含む国別支援戦略・国別業務計画の作成、
(ii)PPP を推進するにあ
たり必要な能力育成・意識啓発・環境整備支援、
(iii)PPP プロジェクトの開発・準備へ
の実地支援、
(iv)候補となる民間・PPP プロジェクトのリスト作成、
(v)民間資金による
(必要な場合には政府資金も)PPP プロジェクトの立案、があります。ADB の各国駐在
員事務所においても、カントリーディレクターと主な職員が、PPP の可能性とその選択肢、
PPP 支援のコンセプトを熟知し、ADB の PPP 支援を当該国に対してしっかり伝える役
割を果たします。

C. プロジェクトの優先順位とスクリーニング
39. PPP と民間セクター育成をより統一的に適用し、ストラテジー 2020 を積極的に推進する
には、純民間のプロジェクト、次いで PPP プロジェクトへの支援が、政府プロジェクト
への(=ソブリン)支援より優先されるよう、ADB の業務を見直す必要があります。PPP
と民間セクター育成は不可分であり、PPP への支援は、広義の民間セクター育成支援に
含まれます。従ってプロジェクトは、まず民間セクター育成のスクリーニングを経て選ぶこ
とになります。具体的には、PPP のスクリーニング・プロセスを通じて、民間企業の技術・
運営・技能支援、参画そして資金が最大に活用できるような分野、及び ADB の技術支
援と財源を最も有効活用できる領域を特定します。
40. 政府へのプロジェクト(ソブリン)融資は、民間または PPP によるプロジェクトの実施が
不可能か、政府による支援なしでは実現が難しいと判断される場合にのみ検討されます。
ソブリン融資プロジェクトにおいてさえ、部分的に PPP を取り入れたり、少なくとも何ら
かの形での民間企業の参画が可能な場合はあります。国別支援戦略において ADB が支
援するとされたプロジェクトは、上述の優先順位(民間、PPP、政府)に基づき事前実
行可能性評価の際に、仕分けられます。
(図 4)。
41. スクリーニングに用いられる判定基準は、相手国との協議に基づき、その国やセクター
の状況に合わせて調整・決定されます。民間事業者と政府間の適切なリスク分担や、政
府の財政負担の割合などに関して基準を定めます。国・セクターの基準には、民間銀行
による融資の可能性、スケジュール、アフォーダビリティ、プロジェクトの事業者、利用
者の反応などを盛り込みます。こうした要素はいずれも、スクリーニングにかけたプロジェ

17

18

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

図 3 国別支援戦略・国別業務計画プロセスにおけるADBのPPP支援

地域局が管理するプロジェクト
設計機関

国別支援戦略の
策定前

PPP専門家の支援を受けた
現地事務所代表者が協議

国別支援戦略
政府の計画支援
国別業務計画

PPPの環境整備

セクター開発改革

PPP専門家の支援を受けた地
域局内セクターとADBによる
テーマ横断的協議

個別プロジェクト

金融市場の開発
TA

TAの無償援助
および/または
ローン

TAの無償援助
および/または
ローン

TAの無償援助
および/または
ローン

OCR融資
/保証

方針/枠組み

方針/枠組み

資本市場の
開発

インフラ・
ファイナンス・
ファシリティー

デモンストレー
ションPPPプ
ロジェクト

セクター改革

資本市場への
参加

リスクの分配
/財務商品

アドバイ
ザリー

PDF協調融資

公的/民間保証
商品

融資可能なPPP
プロジェクト

公的融資商品

民間融資商品
リスクの分配
/財務商品

OCR = 通常資本財源、PDF = プロジェクト開発資金または融資枠(開発途上加盟国の資金との協調融資)

クトがどう分類されるかを決定します。このスクリーニングを経て、国別支援戦略に基づ
き提案されたプロジェクトの中から、よく構築され、経済的にも実行可能な民間プロジェ
クトと PPP プロジェクトが選ばれて実施されます。
42. PPP をプロジェクトや計画に効果的に組み込むため、地域局は PPP に関する専門知識と
能力を高めて、適切な段階において、体系的にプロジェクトの審査とモニタリングを行い
ます。地域局は、PPP を含む複雑なプロジェクトの審査、実施、運営に専門家を活用し
ます。

D. 業績評価
43. ADB は、業務の重点を PPP へと移行するのに伴い、各部門の業績評価方法も見直す
必要があります。PPP への支援は、往々にしてセクターの垣根を超えるため、組織内外
の様々な部署との協働が求められます。これには、民間企業の参画へとつながる PPP プ
ロジェクトの組成(結果 ADB がそのプロジェクトに融資を行うか否かに関わらず)を目
指した PPP アドバイザリー・サービスの提供が含まれます。このため、ADB の業務を
適切に評価する、新たな指標を確立する必要があります。ADB は、PPP プロジェクトに
実践的なおかつ長期的に関与することを目指しており、その目的を反映した新しい指標に

実施計画の実行

表 2 PPP業務計画の実施を促進するための戦略的変革案
国別支援戦略・国別業務計画の
プロセスにおける現行の方法
地域局の各セクター部門が、局内の
民間セクター育成担当官との協議によ
り、または単独でセクターごとの計画
を設計しているため、国別計画との統
合が不十分。

PPP業務計画の実施を促進する戦略的変革点
複数セクターにまたがる全体的な計画が必要。PPPに関して
は、特定のセクターに関する計画を立案する前に、対象国での
PPPの実行方法に影響を及ぼすような、何らかの形の環境整
備支援を国レベルで行う必要がある。

ジェンダー、環境、社会的基準という 各セクター部門の助言をすり合わせ、互いに交差するテーマと
互いに交差する主流テーマを特定セク してPPPを推進。
ターに関する計画の一部として検討・
実行しているが、PPPを互いに交差す
るテーマとして体系的に検討すること
は行われていない。
特定プロジェクトの支援計画において
行われるPPPに関するリソースとの協
議が間接的だったり、事前に行われて
いない。

PPP担当者が、CPSの前段階における相手国政府との協議に
参加し、CPS案に最初に盛り込むべきニーズや問題、提案され
る行動を特定する。
PPP担当者を、国別計画策定ミッション(CPM)チームの不可
欠な部分として加える。

CPSの前段階における計画立案や相 先を見越したニーズ評価と、CPSに対するアプローチを決定す
手国政府との協議が、必要が生じた るために、CPSの前に内部セクターや部門を横断した戦略会議
時のみ行われている。
が必要。
CPSの前段階で、セクター別のPPP専門家と、民間部門業務局
の専門官が対象を絞った協議を行い、関連政府機関と戦略的
コンセプトを話し合い、PPPインフラやサービス開発の明確な
戦略分野、方向性、目的を特定する。
民 間セクターのステークホルダーと踏み込 んだ 協 議 を行
い、PPPプロジェクトに参加する要件と関心を見極め、これら
のパラメーターをCPSの前段階における政府との協議に盛り込
む。
国としてのPPP目標(方針、財政、セクター目標を含む)と、CPS
の前段階での特定プロジェクトに関するアクションや協議との
つながりを特定する。
ほぼCPSに沿ってプロジェクトを実行 合意されたPPPの原則が実現されるよう、コンセプト決定前に
している。
CPSに基づくプロジェクト案をスクリーニングし、民間セクター
の関与と協調融資の機会を活用できるその他の手段を特定す
る。
民間セクターの開発計画が、政府の 地域局および民間部門業務局は、途上国でのPPP開発推進機
計画とは別個に作成されている。
会を共同で特定すべきである。
CPS = 国別支援戦略

は、プロジェクトの早い段階における政策決定者との協議、プロジェクト組成期間中にお
ける継続的な関与、そして重要なこととして、プロジェクト運営開始後の適切なモニタリ
ングが含まれます。
44. PPP プロジェクトの主要業績評価指標(KPI)は、各途上国の状況に即して設定される
べきですが、実現したプロジェクトの案件数と、第三者から提供された資源(特に民間
資金)を主な指標とすべきであり、ADB が提供した融資金額を指標とすべきではありま
せん。ADB が提供する支援がどういった形(=保証、協調融資、PPP アドバイザリーの

19

20

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

図 4 プロジェクト・ファイナンスの選択肢の初期評価
診断計画

CPS/COBP
サイクル

(CPSに基づい
た)プロジェク
トの特定

(民間セクターの内容と資金 
調達の可能性に基づいた)
プロジェクトのスクリーニング
プロジェクトプロジェクト
プロジェクト

民間融資プロジェクト

公的・民間融資

公的融資

COBP = 国別業務計画、CPS = 国別支援戦略

ような非融資型支援)であるにせよ、PPP は ADB が提供した資金と専門知識を効果的
に活用することができます。作成される KPI は、測定可能な実績に基づかなければなり
ません。例えば、第 1 の柱では、能力育成と研修は重要な作業ですが、研修を受けた
政府職員の人数を KPI とするのではなく、結果 PPP を促進する法律・政策がいくつ成立
したか、そして最終的には、PPP として立案されたプロジェクト数を KPI とすべきです。
ADB の PPP 業務と途上国への支援に用いられる KPI を、図 5 にまとめています。地域
局は、PPP 支援効果を測定する地域ごとの手法を確立します(図 6 に指針を掲載)。付
録 7(p.63)では、業務計画の成果の枠組みを示しています。

E. ADB 職員の能力育成
45. ADB の職員は、PPP の可能性とその選択肢のみならず、プロジェクト・ファイナンスに
用いられる民間企業へのノンソブリン投融資、民間セクター参画、協調融資、保証業務
にも精通している必要があります。地域局は、プロジェクトを準備するにあたり、TA を
用いて技術・環境・社会評価を行うことに習熟していますが、PPP プロジェクトでは、以
下の作業を行う知識と技能も求められます:財務分析、民間融資の可能性の評価、法制
度の審査、リスク低減手段の検討、入札・契約書類の作成(それぞれの PPP 手法に即
した)、政府規制の策定、案件の監査と評価。
46. 地域局は、以下の作業に求められる技術と知識が異なることを理解する必要があります。
すなわち、
(i)プロジェクト案件のスクリーニング全般、PPP の役割とその利点に関する
建設的な対話、
(ii)制度整備を支援する TA の準備と管理、プロジェクトの立案、適切
な PPP 方法を検討する上で必要な作業要綱(terms of reference)の作成、
(iii)PPP
案件へのアドバイザリー・サービスの提供。また、地域局の職員は、VFM 評価と PSC(公

実施計画の実行

図 5 PPP活動と開発途上加盟国支援における主要業績評価指標(KPI)
第1の柱

第2の柱

第3の柱

第4の柱

提唱と能力育成

環境整備

プロジェクト組成

プロジェクト・
ファイナンス

• P P Pの準 備 支 援を • A DBの助言に従っ • PPPプロジェクトの • 実施されたプロジェ
受けた 新たな 途 上 て、セクター別指針、 組成を推進している クトの価値総額

ツールキット、基 準 途上国の数
• 提供されたプロジェ
‒ 国ごとの支援を通 書、PPP調達実務、 • PPP案件として開発 クト・ファイナンスの
じて
支援プロセスの普及 が始まったプロジェ 総額
‒ 一部の地域、また など、PPPに関する クトの数
• A DB資金のレバレ
は 地 域 全 体 に 対 方針、法規制改革を • A DBが 支 援し、以 ッジ比率
する支援を通じて
導入した途上国の数 下との融資合意段階
注:中間結果。第2の ‒ 国レベルで
まで達したPPPプロ
柱と第3の柱の成 ‒ 半 公 営企 業レ ベ ジェクトの数
果に反映
ルで
‒ 政府のみ
注:中間結果。第3の ‒ 政府と民間セクター
柱の成果に反映
( 合 同 )または 民
間セクターのみ
PPP診断と、その結果に基づいた計画をCPSまたはCOBPに組み込む
融資のクロージングまでたどり着いたPPPプロジェクトの数

COBP = 国別業務計画、CPS = 国別支援戦略

的セクター比較)の構築に必要な技能を備えていなければなりません。地域局は、プロ
ジェクト・サイクルを通して求められるこれらの技能を、自らの局内で育成する必要があ
りますが、短期的には、民間部門局の職員に参加してもらって補填できると考えられます。
地域局職員に求められる技能を正確に把握するために、スタッフの技能と研修状況の調
査を必要に応じ実施します。

1. 研修
47. 職員の能力育成が必要と考えられる業務は、主に次のようなものです。すなわち、
(i)案
件全般のスクリーニング、
(ii)PPP に関する途上国政府との効果的な対話、
(iii)PPP 促
進に必要な能力育成を図る TA の準備と監理、
(iv)PPP プロジェクトの発掘と準備(特
にプロジェクト・ファイナンスを組成し評価する能力)。PPP プロジェクトは、プロジェク
ト・ファイナンスによって融資されることを基本とします。この基本は、ADB のプロジェ
クト立案、準備、融資実行にわたるプロセスをより強固にするもので、ADB が提供する
支援形態がソブリンかノンソブリンかにかかわりません。ADB の人事局は、プロジェクト・
ファイナンスの研修を行っています。この研修に基本、中級、そしてより高度な技能、分
析、商業的な構成を含めて、これらが ADB の業務にどのように適用できるかを検討しま
す。こうした研修は、プロジェクトが抱える課題を、基本的な要素に分解・再構築するの
に必要な共通の言語と認識を確立する上で有益です。これを ADB 職員に徹底し、民間
セクター育成を推進する組織文化を育み、そして何よりも、PPP プロジェクトの成功体験
を評価・活用できるような制度を築くことが重要です。

21

22

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

図 6 ADBによるPPP支援のパフォーマンス測定プロセス
ADBの戦略
目標

主要結果領域
• 定められた指標目標を満たす
• クライアント満足度
• サービスの質

CPSおよびCOBPに沿った主な事業成果。成果は
(a)クライアント(途上国政府)の視点、
(b)経
営目標、
(c)PPP実務委員会が評価した創造価
値で測定される。

プロセスおよび活動
• インセンティブ
• リソースの可用性とパフォーマンスとのバランス
• 提供されたサービスの質
• ソート・リーダーシップの発揮

PPPのプロフェッショ
ナル
• 人事採用、
研修、
雇用
• キャリア開発および
育成

RDセクター・チーム
• PPPの専門知識につい
て地域局のセクター・チ
ームを支援
• 地域局セクター・チーム
の満足度

PPP実務委
員会
• 独立したレビ
ューとフィード
バック

実際の成果およびPPP実施計画に記載された
KPIに照らしてPPP業務の直接的な貢献度を測
定する。

実際の成果に基づいて測定した、
4つの柱、
結果、
成功度に対するPPPプロフェッショナルの貢献度。

COBP = 国別業務計画、CPS = 国別支援戦略、KPI = 主要業績評価指標

2. PPP に関するメンタリング
48. 地域局の PPP 業務拡充を支援するため、PPP 専門家は、PPP 実務委員会の支援の下、
プロジェクトの構想段階以前、即ちコンセプト作成により積極的な役割を果たします。地
域局は遅くとも構想書の承認を行う際には、PPP 専門家をプロジェクトのスクリーニング
に関与させ、プロジェクト・チームと積極的に協議させます。複雑なプロジェクトの場合、
PPP 専門家はプロジェクト・チームの主要メンバーとして加わります。特に複雑で難しい
と見なされるプロジェクトでは、PPP 実務委員会に調査、助言、協議を依頼できます。

3. PPP 実務委員会
49. PPP 実務委員会は、PPP の手法やソブリン・ノンソブリン投融資業務に関して ADB 職
員の知識管理と能力育成を担当し、地域協力・持続的開発局を事務局とします。また
PPP 実務委員会は、人事局と協力して PPP 研修プログラムを作成するほか、PPP に関
するイベントや会議を開催し、PPP 実務者を招いて政策、契約、その他 PPP に関する
経験を、ADB 職員と話し合う機会を設けます。PPP 実務委員会は、加盟途上国やその
他の地域での PPP の成功・失敗事例を分析し、その情報を ADB 内で共有します。

4. 官民連携職員の人的リソース
50. ADB の業務において、PPP 案件を立案・実施するには、幅広い経験と知識が必要です。
できれば PPP 案件の経験が豊富な正規職員を多く育成し、ADB 内にデータ・プールと

実施計画の実行

経験ある人的資源を確保する必要があります。より多くの PPP 案件が実現するにつれ、
このデータ・プールも拡充しますが、経験を積んだ外部の PPP 専門家を招くことも必要と
なります。地域局は、国別支援戦略と国別業務計画の策定を通じて、組成されるであろ
う PPP プロジェクトの数と、必要とされる ADB 職員の関与の程度を予測します。それ
を基に、途上国政府の要求に応えられるよう、適切な技能を備えた人員を十分に用意す
る必要があります。PPP プロジェクトの実現性が高い地域局では、他局より多くの PPP
正規職員が必要となる場合があります。
51. PPP 専門家は、国別支援戦略・国別業務計画、分析、戦略そして開発計画の策定に助
言を行います。これには、PPP が直面する課題を政府・民間企業と協議すること、また
その国やセクターに即して、現実的で新しい取り組みを検討することが含まれます。また
PPP 専門家は、プロジェクト・チームの一員として、プロジェクト・サイクルを通してプロジェ
クトを検証することで、地域局における PPP 業務の質を確保します。また PPP 専門家は、
PPP 促進に必要な環境整備を推進するために TA を立案、実施します。
52. PPP 専門家の業務量は、プロジェクトのスクリーニング、協議および人材育成の初期段階
では膨らむので、これら業務に必要な時間と費用は予算に盛り込んでおきます。案件の
スクリーニングや立案、評価プロセスへの参画といった作業は、専門家個々人の業務能
力開発計画に含めます。PPP プロジェクトの数が増えるにつれて、地域局は支援を継続
的に行うために PPP 専門家を増員する必要があります。

F. 知識管理
53. PPP 実務委員会は、PPP に関する知識を共有する場として、ADB の実務者間に統一さ
れた PPP 施策を確立することに貢献します。PPP 実務委員会は、国別支援戦略や国別
業務計画、個々のプロジェクトを策定する際に、PPP の可能性特定に用いることができ
る基本的考え方を確立できるよう支援します。また、事前実行可能性調査に基いた PPP
案件のスクリーニング、TA および融資案件のピアレビュー(同僚評価)も実施します。
プロジェクトの担当者は、プロジェクト案を準備して PPP 実務委員会に提出することに
よって、実践を通して学ぶことができ、スキルを伸ばすことができます。PPP 実務者が、
PPP 実務委員会と協力し合うことは重要であり、こうした評価作業を支援するために十
分な時間と費用を予算に含む必要があります。このように、PPP 実務委員会の活動は、
各委員(及び参加者)の業務計画の一部ととらえる必要があります。
54. PPP 業務では、継続的な学習と改善が求められます。ADB がその支援を拡充するに
あたり取得した知識は、プロジェクト・サイクルの各段階において文書化されます。必
要があれば、PPP 実務委員会を通して、優れた実務例のケーススタディーを作成しま
す。PPP 実務委員会は、ADB や他の機関が支援・実施した PPP 案件の成果を検証し、
ADB の PPP 施策の拡張や改善に活かします。更に、入札準備の際に一部セクターで求
められる書類など、知的成果物の作成も支援します。PPP 実務委員会は知識の普及に努
め、PPP に関して他の情報チャンネルと互いに協力します。

23

24

官民連携(PPP)業務計画 2012−2020

G. スケジュール
55. 本業務計画は、2 段階に分けて実施されます。第 1 段階(2012 ∼ 2013 年)では、ADB
内で PPP を育成・支援すべく、業務方針とその手続きを確立します
(図 7)。この第1段階は、
PPP への支援を ADB においていかに拡大するかを事実上決定するものです。地域局は
担当の国と協議を行い、第 2 段階を実施します(図 8)。主な作業としては、国別支援戦
略・国別業務計画の一環として PPP 実施計画を作成し、政府のプロジェクト組成を支援
する TA や融資を準備したり、PPP アドバイザリー業務を行うことなどです。
56. 最初の 2 年間が経過した段階で、ADB の PPP 業務の再検証を行います。2014 ∼ 2020
年の作業に含まれる可能性があるのは以下の事項です。
(i) PPP 支援に振り向ける財源の追加
(ii)業務マニュアルとプロジェクト管理指示書の改訂(必要に応じ)
(iii)様々な関係者・参画者への継続的な研修
(iv)統合されたプロジェクト開発・準備業務とそれに対する支援
(v)PPP アドバイザリー・サービスの強化

H. モニタリングと評価
57. 目標達成状況は、年毎に評価されます。それを補佐するものとして、年央には方向性評
価を行い、PPP プロジェクトに動員された資金額とADB が行った支援の開発効果を基に、
ADB の活動が正しい方向に向かっているかを確認します。2012 年以降、ADB は PPP
プロジェクトの発掘、構築、交渉、実施等を評価する基準を策定し、それを体系的に監
視します。これにより ADB は、そのリソースをより有効的に管理し、様々な要求に応え
るべく計画を立てることができます。また複雑な PPP 案件の評価の際には、期間、投資
額、そして成果を補正することが必要です。案件組成期間の各段階で検証を行い、必要
な時間と資源の確保を図ります。ADB の地域局と PPP 実務委員会は共同で成果を評価
します。

実施計画の実行

図 7 PPP業務計画実行のための主な活動
PPPの態勢を整える(2012∼2013年)

2012年

2013年

運営ガイドラインと職員向け指示書の作成
PPP取引に関するインセンティブの提示
PPPプロジェクトの特定を支援するCPSプロセスの見直し
ADB職員、途上国関係者および民間セクターの研修
ニーズへの対応

CPS = 国別支援戦略

図 8 PPP業務計画実行のための地域局の主な活動
PPPの態勢を整える(2012∼2013年)
地域局のPPP計画の実行
環境整備
PPP案件組成の支援
PPP取引アドバイザリー・マンデートの作成
資金調達の組成

25

26

付録 1

PPP(官民連携)の特徴

1. PPP(官民連携)。PPP は一般的に、
(i)プロジェクトの実施期間、
(ii)アセット・ファイ
ナンス、プロジェクト実施期間中の責任と所有権、
(iii)成果に基づく収益、
(iv)成果お
よびサービス仕様、
(v)民間事業者とのリスク配分、という主要な 5 つの要素によって特
徴づけられます。各要素については次の通りです。
2. 実施期間。政府と民間事業者の協働は通常は中長期にわたるものであり、期間中に発生
する様々な局面に対応できるような契約が必要です。契約期間を通じ継続してモニタリン
グを行うことにより、民間事業者による長期的で効率のよい施設管理が可能となります。
3. アセット・ファイナンスとプロジェクト実施期間中の責任と所有権。アセット・ファイナンス
(プロジェクト・ファイナンス)は、参画者(政府、民間企業)間の複雑な契約を伴います。
建設された施設の所有権は、通常契約期間の終了とともに政府側に移転されます。民間
事業者は、契約期間中の運営・保守の責任を負うことになるため、プロジェクトのライフ
サイクルを通じて保守費用(と建設費用)が最適化されるような施設を建設することにな
ります。
4. 成果に基づく収益。建設される施設ではなく、施設を基に提供されるサービスの仕様と
提供に重点が置かれます。成功している PPP プロジェクトでは、運営事業者がそれらを
満たすことが、支払いの条件となります。PPP の利点は、単に民間の融資を活用するこ
とに留まりません。施設の運営効率を高め、事業リスクを大幅に民間事業者に移転する
ことにあります。
5. 成果およびサービスの仕様。民間事業者と政府が果たすべき役割・責任は異なります。
民間事業者は、政府の要求に従い、プロジェクトの様々な業務(設計、建設、修復、操業、
保守、資金調達)に参画します。政府は、公益、サービスの質、および価格政策におい
て達成すべき成果を定義します。政府は、必要であれば財政支援(例:アベイラビリティ・
ペイメント、サービスの可用性に対して政府から支払われる対価)、最低収益保証、銀行
融資の保証、また又はバイアビリティ・ギャップ・ファンディングを提供します。政府から
の財政支援が見込まれる場合、実際いはその支援がサービス利用料の補完を目的とする
ものであっても、契約上はサービスの提供やアベイラビリティ(可用性)に対して資金が
調達されたという内容になります。政府は、プロジェクトの業績評価をその契約期間にわ
たって行い、民間事業者が施設を長期的に効率よく運営・管理していることを確認する
必要があります。従って政府もまた、プロジェクトの効果や偶発債務の順守状況のモニタ
リングに責任を負うことになります。

PPP(官民連携)
の特徴

6. 民間事業者とのリスク配分。従来の建設契約、ターンキー契約で政府が負担していたリス
クは、政府と民間事業者と間で分担されます。ただし民間事業者が、必ずしも PPP プロ
ジェクトにおける、すべての、或いは大半のリスクを負担するわけではありません。
7. リスクを評価、管理、対処できる官民両セクターの参画者の能力に応じ、案件ごとにリス
ク配分を決定します。その際に用いられる最も重要な原則は、各リスクを分解、定量化して、
そのリスクを最も効率的に管理できる参画者に割り当てることです。これまでに世界各地
で PPP が実施されたことのあるセクターには以下が含まれます。
(i) エネルギー発電、送電、配電、および街灯
(ii) 通信
(iii) 運輸(港湾、道路・高速道路、橋、鉄道、空港、大量輸送施設などの都市交通施設、
バス停および駐車場)
(iv) 上下水道処理、海水淡水化施設
(v) ごみ処理施設、液体廃棄物処理場
(vi) 病院、保健サービス
(vii)学校、教育施設、高等教育機関
(viii)観光インフラ、会合・会議・展示場
(ix) 政府庁舎、低所得者向け住宅、スタジアム、刑務所、伝票発行、情報通信技術
システム
(x) 刑務所、矯正サービス

27

28

付録 2

PPP 案件の組成プロセス

1. PPP の優れた策定プロセスは、案件の成功に不可欠です。このプロセスにはいくつかの
重要なステップが含まれています。それらを確固たるものとし、プロジェクトへの融資を
可能とするには、多くの分野にわたる専門的な技能が必要です。本業務計画の第 3 の柱
(プ
ロジェクト組成)において、ADB の支援効果を向上する上で、このプロセスは重要な一
部となります(付録 6、p.61)。

A. プロジェクト組成段階
2. 案件組成の主眼は、その案件が商業ベースで実現されるよう立案、準備することです。
プロジェクトは、適切に立案、構成されなければなりません。政府が審査・承認を行え
るように、また民間事業者がプロジェクトの実行可能性と投資収益を判断できるよう、
適切に構築される必要があります。また事業パートナー選定にあたっては、厳正で透明
性の高い選定根拠に基づかなくてはなりません。
3. 政府の視点。政府は、プロジェクトが、最低コストで建設・操業・保守が可能で、かつ
バリュー・フォー・マネーを提供する確認を求めます。また政府は、プロジェクトが利用
料金、環境・社会的基準、法例、および設計と性能において、政府の基準に合致して
いることを確認します。更に、政府の支援が求められる場合には、その支援の必要性
と形式が明確に示されていなければなりません。
4. 商業的視点。商業的な懸念事項と要件としては、以下が含まれます。
(i) プロジェクトのコンセプトと事業範囲が明確であること
(ii)収益フローがしっかりしていること
(iii)特に投資家に好感されるプロジェクト構成
(iv)想定されるプロジェクトのリスク
(v)政府による支援の範囲
(vi)厳密かつ網羅的な契約の枠組み
5. インフラ・プロジェクトを商業(民間)ベースで実施するには、政府と民間事業者双方の
課題を克服する必要があります。案件の策定に際して準備される検討書類には、これら
の課題の検討結果と提案、そしてその根拠が含まれます。検討書類には、プロジェクト
の事前実行可能性調査、民間融資の可能性に関する評価、環境・社会的評価、契約の
枠組み、入札手続き、リスク管理計画が含まれます。

PPP案件の組成プロセス

1. プロジェクト実行可能性および融資可能性に関する詳細な評価
6. 案件組成の一環として実施される、実行可能性および融資可能性の評価(投資対効果検
討書)には、以下が含まれます。
(i) 実行可能性評価。民間事業者の参画を促すには、プロジェクトへの投資資金が回
収できることを示さなければなりません。プロジェクトの実行可能性を、民間事業
者の行う審査に十分に耐えうるよう明確に示す必要があります。
(ii) プロジェクト費用試算。具体的には次の項目が含まれます。
(a)工事完成時までの物価スライド
(b)建設期間中の利息
(c)初期運転資金
(d)その他資金コスト(剰余金、または銀行団が要求する財務条項を満たすに必要
な引当金を含む)
(iii) 収益性。事業会社のキャッシュフローを予測するにあたり、利用者がそのサービ
スに料金を支払う用意があることを証明する必要があります。実行可能性調査は、
キャッシュフローに基づき、プロジェクトの実行可能性を明らかにするものです。
プロジェクトの財務的な実行可能性は、ディスカウント・キャッシュフロー分析手
法を用いて分析します。コストの低い代替資金源を利用できるよう法制を整備する
必要があります。立案に際しては、政府の財政的な制約、プロジェクトのキャッシュ
フロー、そして資本市場からの資金調達を考慮に入れる必要があります。
(iv) 資金調達戦略。操業キャッシュフローに基づき、最適な資金調達を検討します。
検討すべき課題は、負債・資本比率、負債の借入期間、最適な資本構成、適切
な負債のコスト、建設資金の借り入れ、および余剰資金の再投資の必要性です。
支出は、プロジェクトの資金調達能力と返済要件を考慮して調整します。
(v) 信用構造。信用構造は、建設・操業期間を通したリスク管理の枠組みを提供します。
建設リスクには、建設そのもののリスクと財務リスクが含まれます。建設そのもの
のリスクとは、技術および物流面でのリスクを指します。財務リスクでは、プロジェ
クトの建設予算と土地収用費用を考慮します。財務リスクは、主にプロジェクトの
流動性要件と資金の借り入れが合致するかです。運営事業者に関するリスクとは、
需要の創出能力、運営能力、債務返済能力に関係しています。
(vi) 資産価値の保全。投資資金の回収は、利用者が支払う料金、または政府の支払
いによります。このためプロジェクト設備は、適切なサービスの供給が可能なように、
契約で定められた水準に達していなければなりません。また、
(a)利用料金と提供されるサービスが見合っている場合は、利用者はサービスを利
用して料金を払いますが、
(b)設備が満足な状態ではない、サービスの提供が一定しない、またサービスの
質が契約水準に達しない場合には、利用料金は支払われません。
(vii) リスク管理。設備劣化のリスクを低減する唯一の方法は、納期を守り、質の高い
工事を手掛けると定評のある請負会社を選ぶことです。調達においては、現地業
者優遇とは一線を画し、最も実力のある業者を透明性の高い方法で選びます。国
際的な投資家と開発金融機関の参画するプロジェクト・ファイナンスの組成におい
て、透明性の高い入札・調達プロセスは欠かせません。
(viii)適時実行。商業採算性を確保するには、プロジェクトを遅滞なく実施する必要があ
ります。建設期間中の金利やインフレによってコストが増大すると、プロジェクトは

29

30

付録2

実行不能となります。適時実行を確実にするためには以下が重要です。
(a)設計・エンジニアリング業務が準備され、建設計画が練りあげられ、建設に速
やかに着手できる
(b)プロジェクトの資金が、その優先順位に従って全額調達可能である
(c)完工に対するリスクを低減し、またプロジェクトを十分に融資可能なものとする
ため、契約がターンキー形式で締結されている
7. このように、実行可能性および融資可能性評価(「投資対効果検討書」)は、融資の可能
性を判断する十分かつ詳細な根拠、政府による支援がある場合はその内容と規模、およ
びプロジェクト実行の技術的基盤を提示します。これに基づき、詳細な資金と資源の動
員を策定します。

2. 環境・社会的評価
8. インフラ・プロジェクトでは、環境・社会への影響がほぼ例外なく重要な問題となります。
あらゆるセクター(例:有料道路)において、環境・社会に対する影響は、建設、失職
者の再就職、環境・社会的な影響への対処など、一時的な費用となる傾向があります。
水供給システムでは、液体廃棄物処理、下水、排水は継続的に測定されます。プロジェ
クト組成の早い段階で、建設費用、操業・保守費用を検討します。さもなければプロジェ
クトはその設計要因を満たせず、その実行が不可能となります。
9. プロジェクト組成の際、環境・社会的評価は、実行可能性の評価と並行して実施される
のが通常です。環境・社会的評価は、プロジェクトの環境・社会的影響を見極め、その
影響を最小限に抑える適切な方策を立てることに重点が置かれ、その方策はプロジェク
ト契約書に盛り込まれます。また、関係者の環境・社会的影響の削減義務を、法的拘束
力のある契約として盛り込みます。

3. 契約の枠組み
10. PPP プロジェクトの根幹は、プロジェクトの資金調達と実施を可能にする契約です。契約
に基づき、PPP プロジェクトは、キャッシュフローから資金を回収するプロジェクト・ファ
イナンスにより、資金を調達します。契約文書は、商業ベースでインフラ・プロジェクトを
実施する PPP 方式を支えるものです。法的拘束力のある契約を通じて、参加者間でリス
クが適切に振り分けられます。
11. 例えば民間銀行が、道路プロジェクトの実行可能性を評価する際には、予想交通量を推
測します。実際の交通量が、予想された交通量を下回った場合、プロジェクトの融資者
には、契約書の財務条項を除いて、資金を回収する手段は存在しません。道路は転売価
格がゼロであるため、そうした資産を担保として保有することは意味がありません。
12. 契約の枠組みは、プロジェクトの投資家と融資者が負担するリスクのレベルを見極め、そ
の結果として融資期間や条件を決定します。
13. プロジェクト策定時に、以下を含む契約の枠組みを記載した合意書を作成します。すな
わち、プロジェクト実行案、プロジェクト参加者間の責任分担、契約不履行が発生した

PPP案件の組成プロセス

場合の対応策、プロジェクトリスクの割当、環境・社会的影響の評価。
14. この契約の枠組みは、できるだけ民間事業者を選定する前に完成させることが大事です。
さもなければ参画者の責任分担が未定で、プロジェクトは未確定部分を残すことになり、
後々不要な遅延が生じる恐れがあります。
15. 法制度の詳細検討を終え、プロジェクトの実施体制が整った後、プロジェクト参画者との
協議に基づき、契約書類をドラフトします。

4. 調達プロセス
16. 透明性の欠如は、PPP プロジェクトの成功を阻害する主な要因の一つです。そのため政
府および国際開発金融機関は、競争入札に基づく透明度の高い調達手続きを、融資条件
とする例が増えています。従って、案件組成における主要な活動の一つは、政府や国際
開発金融機関が求める要件を満足させる実施方法を策定することです。
17. 通常、実施プロセスの詳細報告は、以下の三つの成果を含みます。
(i) 調達手続きに関わる詳細な指示書。これには、開発・運営事業者の選定方法に関
する詳細な指示書が含まれます。具体的には、事前資格審査通知、提案書の評価
方法、奨励されるべき交渉方法、調達プロセスの各段階における入札者への詳細
な指示書です。
(ii)入札文書。これには、全ての関連書類、適格とされた入札参加者に、詳細な提案
書の提出を促す明確な手続き、および事業者の評価と選定手続きが含まれます。
(iii)評価。提出された提案を評価するための詳細な指示書が含まれます。
18. 民間事業者が、プロジェクトを開発段階から実施段階に進めるのに必要となる詳細な実
施手順が、文書の重要な部分を占めます。

5. リスク管理計画
19. インフラ・プロジェクトは、プロジェクト・サイクルを通して様々なリスクにさらされるため、
それらのリスクを低減する適切な措置が必要とされます。一般的な民間インフラ・プロジェ
クト、PPP プロジェクトにおけるリスク低減は、以下を通じて行われます。
(i) 契約
(ii)保険
(iii)投資家―銀行―ステークホルダーの多様化
20. リスクを特定・評価する作業には、リスクの特定、評価、配分、管理と削減を含みます。
プロジェクトのライフサイクルを通して特定されたリスクに対処するため、プロジェクト毎
のリスク管理計画が必要です。リスクには通常、以下が含まれます。
(i) 政治的リスク
(ii) 商業的リスク
(iii) 技術的リスク
(iv) 環境・社会的リスク
(v) 資金調達リスク、為替リスク

31

32

付録2

(vi) 法的枠組みに関するリスク
(vii)不可抗力リスク
(viii)その他、労務管理等のリスク

B. PPP プロジェクトにおけるリスクへの対応
21. いかなる案件取引においても、完全にリスクを排除することは不可能です。契約にかか
わる全ての参画者は、リスクを負担します。しかし以下の手法により、リスクを容認可能
な水準に抑え管理することが可能です。
(i) リスクの特定。プロジェクトのコスト、性能、タイミング、採算性を損なう事象や行
動は何か(例:インフレ率が予想を大幅に上回る場合、プロジェクトはどうなるのか?)
(ii) リスクの重大性を見極める。リスクが現実となった場合の具体的なコスト増、遅延、
性能低下はどの程度か?
(iii)リスクの配分。リスクは、それを最もよく管理できる参画者によって管理される必要
があります。管理することができない参加者にリスクを負担させた場合、そのコスト
が増大し、プロジェクトのリスクが更に増加します。
(iv)リスクの低減。プロジェクトに悪影響を及ぼす事象が発生する可能性を低減するに
は何をすべきかを決定します(例:洪水による損害を軽減するため、すべての構造
物を 100 年に 1 度の洪水による上昇水位より高い所に建てる)。
(v) リスクの費用化。リスク対応にかかるコストを見極めます(例:洪水保険の費用)。
22. リスクは、プロジェクト策定と実施の様々な段階(例:開発、建設、操業)に存在します。
PPP プロジェクトの組成・実施過程は複雑で、高い技能を要求し、長期間を要すること
から、財政的なコミットメントが必要となります。プロジェクトがどの段階にあるかに関係
なく、リスクを理解し、適切に配分する古典的な手法は、第 29 節で後述する手法、およ
び図 A2 に示すリスク管理サイクルの通りです。
23. リスクの特定。この段階では、プロジェクトに関する全てのリスクを特定します。プロジェ
クトは民間投資を呼び込むために構築されるものであることから、政府の影響を受ける
可能性のある全ての問題を特定することは重要です。具体的には以下のような問題が含
まれます。
(i) プロジェクト実施の遅延
(ii) 契約の解約・取り消し
(iii)法律改正
(iv)新たな課税
(v) 代替施設の建設
(vi)政府の支援が必要な新たな事象
(vii)インフラ・リスク(例:政府による土地提供、または土地使用・通行許可)
24. 投資家・銀行から見た PPP プロジェクトの主要リスクには、以下のようなものがあります。
(i) プロジェクトに直接関わるリスク
(ii) 規制・制度に関するリスク
(iii) マクロ経済のリスク
(iv) 国有化および収用(政治的リスク)

PPP案件の組成プロセス

図 A2 リスク管理サイクル

リスクの特定

モニタリングと

リスク評価

レビュー

リスクの低減

リスク配分

(v) プロジェクトの遅延
(vi) コスト超過
(vii) 需要予測リスク(例:利用量や利用料金)
(viii)性能リスク(例:技術やプロセス)
(ix) 操業・保守リスク
(x) 不可抗力(例:地震、洪水、その他自然災害)
(xi) 政治的・社会的リスク
(xii) 外国為替リスク
25. リスク評価。特定されたリスクが実現する可能性と、実現した場合の影響の大きさを見極
めます。
26. リスク配分。リスクに対処する責任を、いかに参画者に割り当てるか、またはリスク分担を
含む手法を用いて、リスク対処への同意を取り付けます。
27. リスクの定量化。リスクの発生する可能性、重要性、および結果に基づき、リスクの金銭
的価値を計算します(表 A2)。
28. リスクの低減。リスクが発生する可能性と、その影響を低減するよう努めます。時には、
プロジェクトの一部の「リスクを取り除く」ことで、最適なリスク移転が可能になることが
あります(ただし、ある程度を超えて(または下回るレベルで)行うと、リスク移転によ
る効率化のメリットを失う)。

33

34

付録2

表 A2 リスク管理マトリックス
リスクの種類

具体的リスク

責任者
民間セクター

政府

現場リスク
設計、建設およびコミッション
スポンサーおよび資金調達
操業
市場
ネットワークおよびインターフェース
業界との関係および社会的混乱
政策および政府の方針
不可抗力
資産の所有権

29. リスクを効率よく配分、低減することは、インフラ・プロジェクトへの融資の実行を可能
とします。また参画者には、建設、操業に際して適切な動機を与えます。一部リスクの配
分が適切に行われなかったとしても、プロジェクトの資金調達は可能かもしれません。し
かしその結果、費用と、最終的にはユニタリー・ペイメント(=サービス提供に対する対
価を、建設、保守等などに分類せず、一体のものとして支払う総額)や利用料金が上昇
します。これは、投資家や銀行が、より大きいリスクを負担する見返りとして、より多く
の報酬を期待するためです。
30. 監視と評価。既に特定されたリスクと、プロジェクトの進捗、環境変化に伴い発生するリ
スクを監視、評価します。新たなリスクは、評価、配分、低減、監視します。これは、
プロジェクトの実施期間を通じて続けられます。

C. PPP プロジェクトに関するリスクの類型
31. PPP プロジェクトの主たる財務リスク源は以下の通りです。(i)例えば政府、顧客、経
営者、請負会社または事故が原因で、建設費用が予算を超過する、
(ii)金利・為替の
変動、プロジェクトの遅延により資金調達コストが上昇する、
(iii)
(例えば交通量および
交通単位量当たりの支払額の変化により)収益が予想を下回る。
32. 他のリスクほど重大ではないものの、財務リスクもまた操業、保守、管理コストと関係し
ます。経済的観点から見た主なリスクは、コスト超過、遅延、および実際の需要が当初
の推定を下回る場合などです。
33. 通常、人はリスクを回避したり、リスクを低減・排除するために、保険という形を通じて
何らかの対価を支払う用意があります。異なった投資が負担するリスクの違いが、それぞ
れが期待する最低利益率が異なる理由です。

PPP案件の組成プロセス

34. 民間企業のインフラ投資が持続的な成功を収めるために、政府はプロジェクトの想定リ
スクと、実際のリスクの両方を低減する必要があります。効率的なリスク管理は、最低限
のコストで最もよくリスクを管理できる参画者が、リスクを低減すべきという原則に基づき
ます。表 A2 は、通常のリスク管理マトリックス(一部リスクのみ)の構造を示しています。

D. 契約の枠組み決定と契約に関する合意書の締結
35. 契約書は、PPP プロジェクトの根幹を成します。契約の草案はプロジェクト組成段階で
作成されますが、他の契約書は、運営事業者の選定後に合意されます。
36. プロジェクトの主要要件は、プロジェクトの組成時に特定され、その後、契約書のドラフ
トに盛り込まれます。入札の際に、契約草案の写しが各応札業者に交付され、応札者は
入札段階で、契約書草案に変更(あれば)を申し入れるよう求められます。このように応
札業者は、統一された契約書に基づき正式提案を行います。
37. 入札業者の選定を完了するに当たり、最終的な交渉・合意に基づく契約書を策定、締結
1
します。銀行融資の実行前 に締結しなければならない契約書は以下の通りです。
(i) コンセッション(事業権利)合意書
(ii)株主合意書
(iii)入札合意書
(iv)建設契約
(v)操業・保守契約

E. 運営事業者の選定
38. プロジェクトを実施する適切な事業者の選定は、PPP プロジェクトのプロセスにおける極
めて重要な活動です。適切な民間セクターの運営事業者を選ぶことによって以下が決定し
ます。
(i) プロジェクトの技術力
(ii)プロジェクトに対する投資家、銀行からの信頼度(特に建設期間中)
39. 運営事業者の選定基準は、評価基準も含めて、プロジェクト策定時に決定します。従って、
実施報告書に記載されている詳細なプロセスが、運営事業者の選定基準となります。
40. 運営事業者の選定に際して、透明性の高い国際競争入札が行われるかどうかは、金融機
関、国際開発金融機関、その他の機関投資家にとり重要な参画要件です。運営事業者
の選定や財・サービスの調達が透明性の高い方法で行われない場合には、通常、融資
の実行がより困難となります。運営事業者が選定されると、プロジェクト開発段階で作成
されたすべてのプロジェクト文書は、評価の枠組みも含めて各応札業者に交付されます。
競争入札ではない方法で事業者が既に選定されている場合には、プロジェクトに必要な
財およびサービスの調達は、透明性の高い入札によって実施する必要があります。

1 プロジェクトの契約と資金調達がすべて完了し、これらの合意書が締結され、融資の前提条件が満たされた時。

35

36

付録2

F. 融資の実行
41. よく構築され、商業採算性のあるインフラ・プロジェクトは、以下の特徴を備えたものと
なります。
(i) 金融機関による融資の可能性
(ii)環境・社会的基準の順守
(iii)各参画者に責任を割り当てる包括的な契約の枠組み
(iv)最も効率よくプロジェクトを実施する透明度の高い調達
(v)詳細かつ包括的な経営的視点

37

付録 3

バリュー・フォー・マネーおよび
政府事業との比較

A.PPP プロジェクトにおけるバリュー・フォー・マネー
1. PPP プロジェクトのバリュー・フォー・マネー(VFM)は、民間企業による関与の効率性、
有効性および経済性、そしてリスクの適切な配分を通じて実現されます。VFM の評価は、
PPP 評価プロセスの極めて重要な要素です。途上国政府はVFMの実現可能性に基づき、
PPP 手法による調達の是非を判断し、また PPP 手法にてプロジェクトを実施する場合に
は、適切な PPP 方式を決定します。
2. VFM 分析において、プロジェクトの(基本的な)需要リスクを誰が負担するのかが鍵に
なります。ADB が支援する初期の PPP プロジェクトの多くは、有料道路、空港、港湾といっ
た経済インフラ・プロジェクトでした。これらのプロジェクトは市場の需要に基づいてい
るので、そのプロジェクトによって提供される施設やサービスに対価を支払うかをエンド
ユーザーが判断します。プロジェクトの採算性改善のために、政府の財源が直接利用さ
れることはほとんどありません。このため、これらのプロジェクトの多くでは、バリュー・
テストは行われてきませんでした。また多くの政府が、財源不足のために、これらのプロ
ジェクトの実施を民間企業に依存しています。民間資金を利用してプロジェクトが実現し
ないと、建設できるインフラは限られるためです。国内投資家(実際はその銀行)には、
これらプロジェクトの需要リスクを負担することは難しくないかもしれません。しかし、国
際的なスポンサーとそのプロジェクトにファイナンスする銀行にとって、これは重要なリス
クと言えます。
3. 途上国政府が社会インフラ・プロジェクト(例:教育、保健)に PPP の活用を模索すると、
需要リスクを負担することが多くなります。例えば、学校サービスへの需要は将来の人口
動態だけでなく、教育の発展度合いによっても変わります。同様に将来の医療サービス
への需要は、治療方法の進化に影響され、矯正施設(刑務所等)への需要も、政府の
刑事政策の影響を受けます。投資家と銀行は、こうした需要リスクを管理できないため、
このリスクを負担しません。従って政府は、バリュー・テストによってプロジェクトがその
実施期間を通して、VFM を提供することを確認する必要があります。
4. 競争入札プロセスが完了するまでは、PPP 手法を採用することによって VFM がどのよう
に改善するか最終評価を下すことができません。PPP プロジェクトが VFM を実現できる
かを評価するには以下の2点が不可欠です。
(i) プロジェクトが VFM を実現する要因を特定する
(ii)それら要因に関して、民間事業者が VFM を実現する可能性を分析する

38

付録3

5. VFM 分析により、PPP が VFM を実現できる可能性だけでなく、以下についても判断
することができます。
(i) 最も適切な PPP 方式
(ii)最適な PPP の範囲
(iii)VFM の実現を調達プロセス完了時点で評価する基準

B. PPP プロジェクトにおけるバリュー・フォー・マネーの決定要因
6. プロジェクトの VFM 実現は、プロジェクトの種類、セクター、実施国により異なります。
多くのプロジェクトに共通する要因もありますし、途上国政府の戦略目標と関係している
こともあります。一般的に PPP は、以下により VFM を向上させます。
(i) プロジェクト・ライフサイクルを通してのコスト削減
(ii)リスク配分の改善
(iii)プロジェクトの合理的かつ効率的な実施
(iv)サービスの品質向上
(v)新たな収益源の開拓
7. 政府と国際開発金融機関は、政府、民間事業者、または PPP のうち、どれがそのプロジェ
クトの実現に最適か分析・判断する必要があります。この作業により政府は、プロジェク
トの経済的利益をより明確にできます。またその政策決定を、ステークホルダーにより良
く理解させることができます。
8. VFM 分析は、プロジェクトの実施方式(政府事業、民間事業、PPP)に関わらず、提
供される財やサービス、そしてそのコストに基づいて正確に行われます。分析では、その
プロジェクトの策定・建設・操業・長期保守を含むライフサイクルにわたる総コストと、各
選択肢における対価の支払いに重点を置きます。政府が行う事業では、サービスの提供
にかかる費用、プロジェクト開発費用、また運営費用が、一般予算の中に埋もれて明確
でない場合が多く見られます。客観的なVFM 分析では、これらのコストを分析・分解して、
各プロジェクトに割り当てる必要があります。
9. 更に、政府事業との比較をより合理的に行うには、費用やサービスの提供に伴うリスク
を考慮しなければなりません。政治的に難しい場合もありますが、政府事業の率直な実
績が必要です。また分析を難しくするのは、政府が「楽観バイアス」に囚われがちである
という事実です。これは、計画の実施結果について楽観的になり過ぎる傾向を指します。
政府の「楽観バイアス」は、プロジェクト費用を過小に見積もったり、非現実的なプロジェ
クト実行スケジュールを立案したり、自らの実行能力や管理能力を過大評価していたり、
プロジェクトの範囲や目的が野心的過ぎたりといった形で顕れます。これらは、政府の過
去の実績と比較すれば明らかになります。
10. VFM 分析では、政府が過去の実績を分析するか、政府実施事業のパフォーマンスを
PPP プロジェクトのパフォーマンスに引き上げるために必要な追加投資額を算出します。
2
政府事業に関して揃える情報 には予算・積算、コスト超過、運営実績(コスト・質の両面)、
保守予算と費用(どの程度が予算化され、またどの程度保守が実施されたかを評価)と
いった客観的な過去のデータに加えて、PPP プロジェクトの評価に用いる基準を含めま

バリュー・フォー・マネーおよび政府事業との比較

す。このような詳細な分析は、有効な比較を行う上で重要です。

C. PPP 業務計画と途上国における潜在的なバリュー・フォー・マネーの評価
11. 多くの途上国政府は、長年に亘り民間企業とエンジニアリング - 調達 - 建設契約を締結し
た貴重な経験を持っています。また途上国の多くは、数多くのインフラ・プロジェクトの
実施に当たり、開発機関から資金援助を受けています。通常、それらのプロジェクト情
報は、開発機関と共有され、途上国政府において文書化、保存されています。
12. 民間企業が VFM を提供できるか否かは、当該プロジェクトや、最近の類似プロジェクト
での実績を比較して検討されます。それらの情報は、机上調査、政府の技術チームや民
間事業者(候補)との協議を通じて入手することができます。とは言え、全ての途上国に
おいてそうした情報を入手できるわけではありません。それら情報を入手するのが容易で
はない場合、プロジェクトを担当する地域局は、類似の例から基準となりそうな情報の
収集に努める必要があります。
13. アドバイザリー・チーム(= ADB スタッフ、プロジェクト実施機関、PPP アドバイザーか
ら構成)が、民間企業が VFM を実現できるか評価する際に利用できる情報源は、先
行事例の検証と市場調査です。
14. 先行事例の検証。先行事例を検証する際の課題点は、プロジェクトごとに異なります。一
般的には、民間事業者の類似プロジェクトにおける経験と見解を見極めることです。特に
注目すべきは、以下の点です。
(i) プロジェクトの範囲(施設の建設とサービスの提供とのバランスを含む)
(ii)効率の良いリスク配分の可能性(特に需要リスクと残余価値リスク)
(iii)利用料金、他の収益、政府の財政負担減につながる他の施設活用法
(iv)当該プロジェクトの建設中および運用中の VFM 実現の可能性(類似プロジェクトで
予想、もしくは達成された VFM から類推)
15. PPP の実施初期には、途上国分析に必要な情報が足りず、他国の類似プロジェクトの情
報を利用する必要があるかもしれません。しかし将来の PPP プロジェクトに生かせるよう、
実施したプロジェクトのデータベースを構築、維持、監理することは重要です。
16. 市場調査。ADB の地域局と途上国政府は、次の事項を認識する必要があります。PPP
プロジェクトの実現には、
(i)投資家、民間事業者(出資者を含む)が、
(a)プロジェク
トの採算性と途上国政府の支払い能力と信用リスク、そして(b)政策、法制度の安定と
確実性に満足しており、かつ(ii)民間事業者は、要求されるサービスの提供が可能で、
リスクを負担できること、が必須です。従って、プロジェクトの基本方針が決まり、大ま
かな運営仕様が定まった段階で、民間企業や銀行の反応を市場調査を通じて見極めます。
17. 民間企業の関心度は、市場調査、または先行プロジェクト(同じ国で実施されたプロジェ

2 多くの途上国政府は、土木工事や主要インフラの建設を、国際開発金融機関や二国間支援により実施している
ので、こうした情報を収集することはそれほど困難ではない。

39

40

付録3

クトや、モデルとなるような類似プロジェクト)から予測することができます。しかしプロ
ジェクトが、大規模、革新的、また複雑な場合には、個別の市場調査を実施する必要が
あります。この市場調査では、プロジェクト特有の問題に焦点を当てます。民間事業者の
プロジェクト実施能力、民間企業による経済規模の実現、および専門知識の有無等の要
素を考慮します。最も重要な要素は、民間事業者の関心度合いと、プロジェクト実施能
力があげられます。
18. また市場調査では、銀行とも協議を行い、その懸念するリスクを理解する必要があります。
(新たな大規模設備投資を必要とする)PPP プロジェクトは、リミテッド・リコース・ファ
イナンスに基づき、資金調達が行われます。このため、プロジェクトに対する銀行の関心
を見極めることは大変重要です。従来の政府プロジェクトと異なり、返済順位の高い融
資者(銀行)が、プロジェクトへの貸付金利と財務指標をどう設定するかは、PPP プロジェ
クトの VFM 実現の可否に大きく影響します。
19. 効率良くまた効果的な市場調査を行うために、プロジェクトの趣意書やインフォメーション・
メモランダムを、民間事業者に提供します。これには、プロジェクトの想定範囲と規模、サー
ビス内容、想定される契約条件、リスク配分案を記載します。
20. 政府プロジェクトと PPP プロジェクトの比較を例示するため、表 A3 に組成・策定プロセ
スと調達プロセスの比較を記載しています。
21. 一部の政府プロジェクトでは、ターンキー方式による設計 - 建設モデル、または長期間保
証や運営を採用することがあります。政府プロジェクトでは、設計、建設、操業、保守
責任等を組み合わせる(かつ、それに伴いリスクを配分する)ことは稀です。

図 A3 政府との比較からバリュー・フォー・マネーまで:主要ステップ
官民連携(PPP)

政府との比較(PSC)

民間セクターに移転さ
れるリスク
競争中立性

基本コスト

政府に留まるリスク

}

租 税や 課 徴 金、保 険 な
ど、民間セクターが 支払
う可能性のあるすべての
要素を盛り込む
実際のサービス提供コス
ト。政 府が見積る、資産
の建 築と保 守に必 要な
支出

サービスに対する支払
いコスト(収益フロー)

常に政府が負担するリス
ク。通常、政府でも民間
セクターの供給業者でも
コストは変わらない

政府に留まるリスク

バリュー・
フォー・
マネー

出典:『官民連携:インフラ提供とプロジェクト・ファイナンスにおける世界的革命(Public-Private
Partnership: The Worldwide Revolution in Infrastructure Provision and Project Finance)』
(D. GrimseyおよびM. K. Lewis、2004年、マサチューセッツ州ノーサンプトン:エルガー社)。

バリュー・フォー・マネーおよび政府事業との比較

ボックス A3 政府との比較モデルの作成(例)
政府との比較

政府との比較(PSC)により、政府が同じ成果と同じサービス水準を求められたと仮定して、同じ
プロジェクトを建設・操業した場合のコストを導き出すことができます。PSC の算出には以下が求
められます。
(i) 成果を達成できるプロジェクト設計案
(ii)建設費用の見積り
(iii)資金調達コストの見積り、および
(iv)プロジェクトの全期間を通じた運営費用の見積り
例えば、政府が以下の前提に基づいて新規プロジェクトの建設を希望しているとします。
(i) 見積建設費用:100 ドル
(ii)当初の運営費用:30.00 ドル。20 年間にわたり年率 5% の割合で上昇
(iii)政府の資本コスト:10%
(iv)プロジェクト全期間の現在価値の割引率:10%
(v)運営費用:363.40 ドル
(vi)プロジェクト費用の現在価値総額(割引率 10%):100+363.4=463.40 ドル(PSC)

リスク調整後ベースでの政府との比較

リスク調整後ベースでの政府との比較(RA-PSC)は、政府がプロジェクトを実行する上でリスクを
負う可能性と、リスクが及ぼす影響の大きさを評価するものです。このリスクは、政府が過去に行っ
たプロジェクトについての事実データ分析に基づき、以下が含まれます。
(i) 建設費用のコスト超過リスク
(ii)プロジェクトの完成が遅れるリスク
(iii)運営費用が予想を上回るリスク、および
(iv)政府にとってのその他の関連リスク
例えば、経験を積んだ政府のステークホルダーと PPP アドバイザー(例:土木技師、公的予算担当者、
調達専門官、法務専門官、消費者組合)のワークショップでは、このプロジェクトは以下の主な 3
つのリスクに直面すると推定されます。
(i) 建設費用のコスト超過(推定 60.00 ドル。発生の可能性:66%。よってリスクのコスト:60.00
ドルの 66%)= 39.60 ドル
(ii)完成の遅れ(推定 2 年間。コストへの影響 20.00 ドル。発生の可能性:75%。よってリスク
のコスト:20.00 ドルの 75%)= 15.00 ドル
(iii)技術および運営の不備(20 年間。推定コスト 15.00 ドル。発生の可能性:33%。よってリス
クのコスト:20 × [15.00 ドルの 33%])= 99.00 ドル
過去に行われた類似プロジェクトの公的調達に基づき、プロジェクト・チームは、リスクの大きさと
して最も可能性が高いのは以下のとおりと推定します。
(i) PSC = 463.40 ドル
(ii)政府のリスクのコスト(39.60 ドル + 15.00 ドル + 99.00 ドル)= 153.60 ドル
(iii)RA-PSC 総額(463. 40 ドル + 153.60 ドル)= 617.00 ドル
民間セクターとの比較 PPP の参照モデル(入札前)と PPP を落札した入札(入札後)には、以下
が必要です。
(i) 民間セクターが建設リスク、完成リスクおよび運営リスク(政府より低い)を管理できる可能
性と、リスクの大きさについての推定
(ii)民間融資の推定コスト(政府より高い)
PPP の推定 VFM 総額は以下のとおりです。
(i) 政府機関が提示するアフォーダビリティ(例:予算制限によって決定)= 650.00 ドル
(ii)PPP を落札した入札:初めは年間 40.00 ドル。20 年間にわたり年率 5% の割合で上昇。
(iii)落札した入札の正味現在価値(割引率 10%)= 484.50 ドル
(iv)バリュー・フォー・マネー = RA-PSC(617.00 ドル)― PPP 落札した入札(484.50 ドル)
= 132.50 ドル(RA-PSC の約 21%)

41

42

付録3

22. VFM 分析において重要なことは、異なった選択肢(政府プロジェクトか民間プロジェク
トか)を評価する際に用いる割引率です。通常は、ディスカウント・キャッシュフロー分
析を用いて各々のキャッシュフローを比較します。比較される政府プロジェクトのキャッシュ
フロー特性と PPP プロジェクトのそれとは異なるため、ディスカウント・キャッシュフロー
分析により比較します。各セクターのリスクと機会資本コストは同じではありません。政府
プロジェクトの分析に、政府のソブリン債務コストまたは類似の金利を適用する場合があ
ります。この場合、政府が当該プロジェクトに資金を配分する機会コストや、プロジェク
トリスクを見逃すことになります。このためリスク調整後の指標が必要となります。VFM
分析の結果は割引率に大きく左右されるため、往々にして議論の対象となります。何に
基づいて割引率を決定したにせよ、その理由と決定要因は明確にされる必要があります。
23. VFM の検証を通じて PPP の環境整備、民間企業育成における課題等を特定することも
可能です。建設、操業、資金調達のコストが高いのは、民間事業者、銀行が課すリスク
プレミアムが大きいことを示しています。PPP プロジェクト実施にあたって、政府が明確、
確実性、客観性、透明性の高いプロセスを提示できた場合、VFM が改善する可能性が
あります。
24. 最適と考えられたプロジェクトの範囲に基づいた VFM 分析で、アフォーダビリティが課
題となることがあります。しかし、プロジェクトを変更・調整したり、提供されるサービス
を縮小・拡大することによって VFM を改善するには綿密な検証が必要です。このように
VFM 分析は、異なるプロジェクトの範囲 , 参画者間のリスク配分、提供するサービスの
質を仮定して行います。
25. 政策決定者と開発金融機関は、異なった政策によって提供されるサービスの真のコスト
を知る必要があり、そのために VFM 分析は重要な方法です。また VFM 分析は、政府
のリスクや財政負担がより適切となるようプロジェクトを修正するうえでも有効です。但し、
コストの正確な推測が難しく、リスクの判断は主観的なため、VFM 分析には限界がある
ことを理解する必要があります。

予算を背景に、計画に基づいて管
轄省庁が承認
比較的大規模なプロジェクトでは政
府当局(例:内閣)の承認が必要な
場合も

複雑なプロジェクトのサービスに関 国内設計基準
する入札
または
それほど複雑でないプロジェクトに
ついてはセクターの管轄省庁が実

一時的な資本予算から資金を調達

承認

設計契約の締結

開発前
(i) 資産の仕様
(ii) 運営の仕様
(iii)パフォーマンス
仕様
(iv) 商業的な仕様
(v) ステークホルダ
ーとの協議

プロジェクトの特定

管轄省庁が担当

プロジェクトの特定

活動

管轄省庁との協議に基づく計画立 リソース配分
計画立案
案コミッション
計画立案コミッションの担当
当局

備考

共通要素

計画立案

活動

政府モデル
備考

次ページに続く

PPP部門および/または管轄省庁が政府の財務
担当部門と協議
政府は、政府内または外部コンサルタントの協力
を得て、予備設計ならびに環境/社会調査を実
施する場合がある
年次予算もしくは特別に設計された開発基金、ま
たは双方を資金源とする
政府はPPPの機会を活用して、設計基準または
パフォーマンス基準を一般的な政府のプロジェク
トに適用される水準より高い水準まで引き上げる
場合がある

管轄省庁が政府当局(例:内閣、上級PPP委員
会)の同意を得て承認

管轄省庁(PPP部門があればPPP部門との協議
による)

管轄省庁との協議による計画立案コミッション

PPPモデル

表 A3 政府・モデルおよび官民連携モデルによるプロジェクト開発の比較

バリュー・フォー・マネーおよび政府事業との比較
43

多くの場合、政府は注文内容の変
更またはコストの変動に責任を負う
コストが増加した場合、特殊・特別
予算の承認が必要な場合もある

運営に関する責任は、部分的・全面
的に民間の請負会社に割り当てら
れる
または
管轄の官庁部門の下、政府が運営
いずれの場合も(年次承認に基づ
いて)割り当てられた年間運営予算
から資金を調達

建設契約の締結

操業契約の締結

備考

民間セクターが、プロジェクトの建設、資金調達
および操業に関する認可と承認の取得に責任を
負う
政府は、一部の承認(例:土地)について責任の
一部を負う場合がある

政府は、開発サイトを事前に特定したり、プロジ
ェクトのための土地権を割り当てる場合がある。
土地は政府が取得するか、民間セクターの元に残
すか、または双方の組み合わせ
政府が資金を提供する(コストは民間セクターか
ら回収)か、または民間セクターが資金を提供

PPPモデル

次ページに続く

落札業者との契約締結 一連の契約に基づいて必要とされるすべてのコン
セッション、権利およびパフォーマンスに関する交

(金額の大小に関わらず)落札業者が操業・保
守の全コストに責任を負い、追加報酬が支払わ
れることはない
契約の全期間に対する支払いは事前に決定され
ており、多くの場合、特定の経済的要因に応じた
調整も事前に決定されている

入札(プロジェクト全 すべての仕様と要件を1つのパッケージにまとめ
体)

管轄省庁が、プロジェクトに対する 管轄省庁(例:環境庁)の規 承認
認可と承認の取得とそうした承認に 制当局
必要な調査の実施に責任を負う

活動

承認

備考

共通要素

管轄省庁が(政府の関連部門と協 土地規制当局(国、州、省ま 土地収用
議の上)土地を取得
たは地方自治体)
一時的な資本予算から資金を調達

政府モデル

土地収用

活動

表A3(続き)

44
付録3

PPP = 官民連携

管轄省庁が、仕様の決定と予算(プ
ロジェクト期間中の改定に従う)に
従ったプロジェクト実行に責任を負

利用料金は立法機関の承認した方
針に従って管理される
場合により、利用料金に関する規制
委員会の承認が必要

監督と規制

備考

保守に関する責任は部分的・全面
的に民間の請負会社に割り当てら
れる
または
管轄の官庁部門の下、政府が運営
保 守は 運営 予 算 項目に分 類され
る。多くの場合、
(予算規則を理由
として)主要な保守のために長期的
資金を提供する要件または能力は
ない。
予算は毎年承認を受ける必要があ

政府モデル

保守契約の締結

活動

表A3(続き)

設計 ― 建築 ―資金 調
達―操業フォーマット
(または類似の構造)
に基づくプロジェクト
の実行

活動

(アフォーダビリティを目的と 監視と規制
した)利用料金に対する補助
金の予算化、および操業・保
守コストをカバーする管轄省
庁を支援するための租税の予
算化および/または政府財源
の配分

共通要素
備考

政府は、契約の順守状況を確認するため監督と
モニタリングを行う
(プロジェクト契約で事前に定められていない場
合)料金は規制当局による承認が必要

受注した入札業者が資産の設計、建築、資金調
達およびサービス運営に責任を負う。資産の質、
完成については一定のパフォーマンスが求められ

民間セクターの関係者が保守コストと建設スケジ
ュールに責任を負い、操業期間中は利用者から
徴収した、または契約に基づき政府から支払われ
たサービス料金のみから運営費用を賄う

PPPモデル

バリュー・フォー・マネーおよび政府事業との比較
45

46

付録 4

プロジェクト開発基金(PDF)

1. 民間企業が参画するプロジェクトが失敗する主な原因に、プロジェクトの準備不足があげ
らます。プロジェクトが、適切な契約やリスクの配分、収益性、政府による支援、プロジェ
クトの実行可能性や環境・社会的影響の評価、資源(例:水、風、太陽光、ガス埋蔵量)
の評価、適切な用地の確保を伴うことなく競争入札にかけられることが、あまりに多いと
言えます。多くの場合、こうした状況は、政府が専門のコンサルティング会社やアドバイザー
を雇用して必要な準備作業を行う費用を惜しんだり、時間がかかり過ぎると考えたことが
原因です。案件の組成や準備には先行費用が発生します。重要な公益サービスの提供や
設備の完成が遅れたり、実現しなかった場合の損害、民間事業者が課すリスクプレミア
ム(プロジェクトが準備不足でリスクが高いと判断)と比べれば、この先行費用は補って
余りあることが過去の事例から判明しています。
2. プロジェクト準備に必要な先行費用を確保するため、プロジェクト開発・準備を目的とす
る開発資金プール、すなわちプロジェクト開発融資基金・機構(PDF)を設立することが
増えています。PDF は、プロジェクトの準備に要する先行費用の一部もしくは全額を、競
争入札まで、場合によっては融資が実行されるまで賄うことにあります。PDF の資金は、
助成金または融資(もしくはその組み合わせ)という形で提供される場合があります(入
札が不調に終わった場合は、融資を助成金に転換)。通常、PDF は「回転資金」として
設立され、プロジェクト開発・準備のために PDF が提供した資金は、プロジェクトの落
札業者から回収されます。
3. PDF は、資金提供のみが目的ではありません。PDF を効率的に運用することで、支援
されたプロジェクトが成功する可能性が高まり、PDF に提供された初期投下資金(シー
ド・ファンディング)の減衰を防いでその持続性を高める必要があります。そのためには、
PDF 資金の使途、返済方法等の条件を設定する必要があります。PDF 資金の目的性を
高めることは、官民双方がプロジェクトに参画する際に安心感をもたらします。
4. PDF は、複雑なインフラやサービス・プロジェクトが適切に計画・開発されることを支援
します。また、民間企業や銀行の参画が、可能なプロジェクトの実現に重要な役割を果
たします。

プロジェクト開発基金(PDF)

A. 構造設計
5. PDF を構築する際は、以下の要素を考慮する必要があります。
(i) 規模
(ii) 資金の供出元
(iii)目的
(iv)支援対象
(v) リスクの配分方法
(vi)資金の管理・運用方法とその評価

1. 規模
6. プロジェクト開発・準備の予算は、プロジェクトの総予算と比較すれば、さほど大きな額
ではありません。しかしこの予算とその配分(使途)は、恐らくプロジェクトを準備する
作業の中でも最も重要なものと言えるでしょう。プロジェクト開発費用は通常、平均して
プロジェクト総費用の約 5% に相当します。規模の大きいプロジェクトでは、プロジェクト
の総費用の 1 ∼ 2% まで低下し、規模の小さいプロジェクトでは 7 ∼ 10% となる場合もあ
ります。特に複雑なプロジェクトでは、開発費用が上昇する場合があります。プロジェクト・
ファイナンスが広く用いられる PPP プロジェクトでは、プロジェクトの総費用額に関わらず、
法務や案件のストラクチャリングにかかる費用はほぼ一貫しており、1 件当たりの開発費
用の総額は、100 万ドル∼ 500 万ドルが相場です。ただし、複雑なプロジェクトでは 1,000
万ドルを上回る場合もあります。PDF の資金提供の対象に土地収用を含めた場合には、
この数字ははるかに大きくなる可能性があります。従って年間数十件のプロジェクト案件
を計画、準備するには、年間約 1 億ドルの資金を PDF に投入する必要があります。
7. PDF ヘの初期拠出金と年間拠出金。PDF に拠出する資金額(初期、およびその後)を
算定するには、PDF の立ち上げ期間と、その期間中に PDF が支援するプロジェクトの
成功確率を考慮する必要があります。これらは当初必要な資金額、追加で必要な資金額、
また PDF に拠出される資金の性質に大きな影響を及ぼします。第一に、成功確率の高
いプロジェクトを開発・準備するには時間を要します。また、PDF が支援したプロジェク
トが必ず成功するとは限りません。よって、プロジェクト開発・準備を支える制度が未だ
新しい場合には、プロジェクトの失敗する確率は高く、知識・経験が蓄積されるにつれ
成功確率が高まるような学習曲線を想定します。PDF が提供した資金を、プロジェクト
の落札事業者から回収するとしても、プロジェクトの開発・準備から融資の実行まで 1 ∼
4 年を要するため、PDF への拠出金の算定には、資金を回収するまでの期間を考慮に入
れる必要があります。PDF が落札業者から回収する費用には、失敗に帰したプロジェク
トに PDF が提供した費用も含める必要があります。さもなければプロジェクト成功率が
100% を下回った場合には、毎年 PDF に追加で資金を拠出する必要があります。ボック
ス A4.1 は、PDF の運営と資金調達のしくみを表しています。
8. PDF の規模を検討するには、PPP の制度、その性格と成熟度を考慮します。当初は
PDF の規模を小さいものにおさえたり、特定セクターに重点を置く(例:少数の管轄省
庁と協力する)ことが望ましいと言えます。そうすることで PPP 制度の運用に習熟し、
PDF 活用に必要な能力・経験を培う時間を確保することができるためです。

47

48

付録4

ボックス A4.1 プロジェクト開発基金(PDF)設立の経済的側面
前提:

(i) プロジェクト1件当たりの平均開発費用:300万ドル
(ii) プロジェクト1件当たりの平均開発期間:3年間
(iii)プロジェクト開発は時間と共に加速し、年間5件からスタートしてピーク時には年間30件
まで増加
(iv) 成功率の学習曲線は、成功率50%からスタートし、時間と共に95%まで上昇
(v) 成功した案件に、その案件開発に関する直接費用を負担させる(お金の時間的価値や、
開発に失敗したプロジェクトをカバーするためのリスク配分のマークアップは考慮しな
い)

結果:

(i) 最初の2年間は全額拠出が必要
(ii) 学習曲線効果のため、当初7年間の正味回収額は少ない
(iii)PDFの自己資本調達率は、5年目に50%、10年目に75%に達する
(iv) 上記前提に基づくと、最初の10年間の年間平均拠出額は600万∼700万ドル。この所要
額は、毎年新たに追加されるプロジェクトの数によって大きく左右される

表 A4.1 基金の運営に関する前提
基金設立
からの年数
1

基金への
投入額
(ドル)

基金のリターン
(ドル)

基金の正味規模 開始されたプ
(ドル)
ロジェクト数

成功率
(%)

実現した
件数

5,000

5,000

5

0

0

2

7,000

7,000

7

0

0

3

6,500

2,500

9,000

9

50

3

4

7,150

3,850

11,000

11

55

4

5

6,600

5,400

12,000

12

60

5

6

5,850

7,150

13,000

13

65

7

7

6,600

8,400

15,000

15

70

8

8

8,250

9,750

18,000

18

75

10

9

8,000

12,000

20,000

20

80

12

10

6,700

15,300

22,000

22

85

15

11

6,000

18,000

24,000

24

90

18

12

26

91

20

5,980

20,020

26,000

13

5,920

22,080

28,000

28

92

22

14

5,820

24,180

30,000

30

93

24

15

3,680

26,320

30,000

30

94

26

16

1,500

28,500

30,000

30

95

29

17

1,500

28,500

30,000

30

95

29

18

1,500

28,500

30,000

30

95

29

19

1,500

28,500

30,000

30

95

29

20

1,500

28,500

30,000

30

95

29

プロジェクト開発基金(PDF)

2. 基金の構成
9. PDF に資金を拠出するのは、開発金融機関、政府、民間企業など様々です。PDF は、
助成金、融資、また政府の拠出金で構成されます。
10. プロジェクトの策定・実施は高いリスクを伴い、一定の割合で失敗に終わるプロジェクト
が出ます。従って、PDF への拠出金をすべて融資(負債)で賄うことはできません。政
府が出資者となってリスクを負担する、または融資の一部を補助金に転換できるといった
選択肢を残すことにより、プロジェクトが失敗し投下した費用が回収できない場合に備え
る必要があります。
11. 政府が資金を拠出することは、PDF の負担するリスクを調整・分担し、PDF の提供する
資金の有効活用に貢献します。政府は、PDF の資金が有効に活用されるよう環境整備
を図り、PDF の支援するプロジェクトが成功し、提供された資金が回収されるよう努め
ます。開発援助機関は技術支援を提供して、政策変更リスクを低減する環境整備を支え
ます。

3. 政府または民間セクターによる支援
12. PDF は、政府・民間事業者によるプロジェクト開発・準備に利用することができます。
PDF の資金は、国際競争入札や、融資が実行されるまでに必要なプロジェクト策定に利
用できます。政府に、PPP 案件組成に習熟した組織、またはそれを所管とする省庁が不
在な場合、PDF は民間企業が行うプロジェクト組成も支援します。PDF の形態に関わら

図 A4.1 プロジェクトの成功率または失敗率
%
100

35

90
80

25

70
60

20

50
15

40
30

10

20

5

10

0
1

2

3

4

5

6

7

失敗したプロジェクト
出典:アジア開発銀行

8

9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
成功したプロジェクト

0

成功率(右軸)

成功率

プロジェクトの数

30

49

付録4

図 A4.2 プロジェクト開発の年間キャッシュフロー
50
45

30,000

40

25,000

35
30

20,000

25
15,000

20
15

10,000

10

5,000
0

プロジェクト件数

PDFの年間キャッシュフロー(単位:1,000ドル)

35,000

5
1

2

3

4

5

6

7 8

PDFへの年間拠出額
その年に開始された
件数(右軸)

9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

0

PDF資金の回収/PDFの自己資本調達
成功したプロジェクト
(右軸)

PDF = プロジェクト開発基金
出典:アジア開発銀行

図 A4.3 プロジェクト開発基金の自己資本調達率
100

50

90

45

80

40

70

35

60

30

50

25

40

20

30

15

20

10

10

5

0

1

2

3

4

5

6

7

8

PDFへの年間拠出額
その年に開始された
件数(右軸)
PDF = プロジェクト開発基金
出典:アジア開発銀行

9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

0

PDF資金の回収/PDFの自己資本調達
成功したプロジェクト
(右軸)

プロジェクト件数

%

PDFの資金源に占める割合

50

プロジェクト開発基金(PDF)

ず、PDF の支援の受益者となるには一定の資格を要求され、それら受益者とは、資金利
用と返済条件を記した合意書を作成することが望まれます。民間企業が PDF の資金を
利用するには、その企業も資金を負担して(例:最低でも PDF の提供資金と同額を拠出)、
PDF とともにリスクを分担します。同様に、政府が PDF の資金提供を受ける場合にも、
単なる政府予算の補填に留まらないよう、業績評価基準や PDF の明確な利用・管理計
画を提出します。政府が PDF 資金を利用する場合には、民間企業の場合と比較して簡
単と思われますが、プロジェクトの組成に関わる課題は同様です。
13. 政府、民間企業のどちらが PDF 資金の受益者となる場合でも、プロジェクトの成功確
率を高めるには、必要な経験と能力、それを支援する業務手続きとシステムを兼備して
いなければなりません(表 A4.2)。

表 A4.2 プロジェクト開発基金の利用資格
政府

民間セクター

プロジェクト開発機関の(他の政府部門からの)
独立性
目的のために資金源を特定し、確実なものにする
能力
開発を実施および/または管理する上で必要なス
キル
パフォーマンスと資金の用途に関する説明責任
プロジェクトの開発、資金調達、実行に関する明確
な手法を有していること(例:民間入札業者へ
のエグジット、建築―操業―移転または建築―
操業―所有モデル)
PDFの配分と並んで開発機関自身の予算をリスク
にさらすこと

顧客を熟知しており、および/またはプロジェクト
参加者の健全性を確認していること
管理能力、開発能力
各参加者の過去の実績
合弁会社契約書、定款
開発を行う企業の自己資本(その証拠も含む)
プロジェクトに関する債券発行枠
プロジェクトの事業計画書
PDFの配分と並んでリスクにさらされる自己資本
の額

PDF = プロジェクト開発基金

14. PDF に資金・ノウハウを拠出する民間企業は、政府に対し、政策・制度整備を通して案
件組成を支援することを期待します。民間企業によるプロジェクトの組成は、本来政府
が果たすべき役割を政府に代わって行うものではありません。例えば、土地収用を民間
企業に委ねた場合、プロジェクトの完成が遅れたり、土地取得費用が大幅に増加し、そ
の増加分が利用者や政府に転嫁される恐れがあります。プロジェクト遅延やコスト増の
結果、PDF の資金が枯渇し、プロジェクトそのものが失敗に終わる可能性も高まります。
PDF の受益者が政府、民間企業のどちらかに関係なく、プロジェクトの開発・準備作業
においては、官と民の責任分担を明確にする必要があります。

B. 運用設計の原則
15. PDF の資本構成には、PDF が負担する高いリスクを考慮する必要があります。特にモラル・
ハザードを回避するため、PDF の構成には慎重さが求められます。また PDF の資金は、
どのようなプロジェクトにも提供されるわけではありません。プロジェクト案は、適切な原
則に基づき、セクター開発計画に沿ったものでなければなりません。PDF 資金の利用申
請者は、厳密な事前審査を通過する必要があります。申請時には少なくとも事前実行可
能性調査は完了しており、できれば収益予測を含む事業計画書が準備されていることが
望まれます。

51

52

付録4

16. PDF を構築するにあたって、PDF が提供する資金の利用資格、PDF の業務範囲、利用
条件を記した契約書を準備する必要があります。

1. 利用資格
17. プロジェクトの策定・実施には高いリスクが伴うことから、PDF の支援が見込まれるプロ
ジェクトや関係者は、事前資格審査をクリアする必要があります。事前資格審査項目には
以下が含まれます。
(i) プロジェクトの必要性(すなわち、プロジェクトの目的と政府の開発計画が合致して
いるか)
(ii) プロジェクトは PPP 方式による建設・運営に適しているか(すなわち、官と民者の
役割が明確であり、収益モデルがはっきりしていること)
(iii)以下を含む、プロジェクトの基本情報
(a)資金調達、建設および運営案を説明した予備事業計画書
(b)建設地、使用される技術、コスト、想定される環境・社会的課題を含む事前実
行可能性調査
(iv)事業内容や過去の実績を含んだ、PDF を利用しようとする企業の資格
(v) PDF が課す要求や条件(例:監査権、現地視察)への同意
(vi)案件組成に要されるアドバイザーの業務範囲と予算
18. プロジェクト開発の初期段階では、プロジェクトに関して多くの不明点があることは避け
られません。ただし、PDF の利用条件は、明確で透明性が高く、客観的に適用される
べきです。

2. 支援の範囲
19. PDF の支援は、プロジェクト策定に必要な調査、ストラクチャリングおよび予備的な法律
業務、プロジェクトの実行可能性(財政・技術・経済・社会的側面から)の評価に用い
られます。また透明度の高い国際競争入札を経て、プロジェクトを実施する準備をします。
プロジェクトの開発・準備には様々な作業がありますが、PDF の資金は、プロジェクトの
開発・準備に直接関係する作業にのみ利用されます。PDF が提供する資金の用途には、
以下が含まれます。
(i) 技術的な実行可能性の調査
(ii) 交通量調査、資源調査(例:水、風、太陽光、ガス埋蔵量)、需要予想、市場予測、
システムのモデル化、収益予想などの特別調査
(iii) 予備エンジニアリング、設計および技術仕様の決定
(iv) 技術、商業運営仕様の決定
(v) 財務モデリングを含むプロジェクトの財務構成、民間銀行、二国間援助機関、
国際開発金融機関との予備協議、政府による財政支援の必要性とその構成
(vi) 調査および区画記録の取得
(vii) (入札のための)技術仕様の決定
(viii) 資源配分計画(例:水使用権、燃料供給)
(ix) 環境調査
(x) 住民移転・復旧調査
(xi) 土地調査・区画記録の取得

プロジェクト開発基金(PDF)

(xii) 社会的影響を軽減する計画とその費用
(xiii) エンジニアリング、調達、建設にかかる費用の計算、資金調達と予備費
(xiv) 経済評価、バリュー・フォー・マネーの評価
(xv) 特別目的事業体(SPV)の設立
(xvi) 許可、承認及び認可(可能な範囲で)
(xvii)プロジェクトが必要とする土地、土地使用権の取得
(xviii)契約書の作成(政府の PPP 法制度に基づいたものが作成されていない場合)
20. PDF 業務の所掌範囲と方針は予め策定しておく必要があります。その業務には、参画を
検討している企業や政府、国民に、そのコストやメリットを十分に理解させることも含ま
れます。PDF の支援で策定されるのは、プロジェクトの予備設計と運営基準、プロジェ
クト実施の前提条件、参画者間の責任分担とリスク配分、収益計画、利用料金の設定
基準などです。プロジェクト開発・準備に必要な作業は、セクター、プロジェクトごとに
異なります。しかし PDF が支援する基本的な作業内容等は、予め特定します。こうする
ことでプロジェクトが失敗に終わった場合でも、資金使途が不明瞭といった批判を回避
できます。
21. PDF は、その資金の使途項目に上限を設けたり、資金が使用されないよう除外項目を設
けます。使途が制限、または禁止される項目例としては以下の通りです。
(i) 開発事業者の給与とオーバーヘッドコスト
(ii) 開発事業者の輸送コスト
(iii) 一般的な法定費用(例:会社登記、資本化、ビザ)
(iv) 合弁会社契約および株主合意に関する費用
(v) 開発事業者の資金調達コスト(特に株主資本)
(vi) 開発事業者の支払うべき租税公課
(vii)過度なコンサルタントの利用(例:弁護士に書類をレビューさせるのではなく、草案
を作成させる)
22. プロジェクトは、すべて異なります。特にプロジェクトが新しく、難しい課題の克服を目的
にしている場合には、違いは顕著です。その場合、PDF 資金の管理者は、その案件を
を例外として取り扱います。また、PDF のの資金と資金によって賄われる費用には制限
があるため、プロジェクト組成を意図する事業体(官民とも)も資金を提供します。これ
により、それら事業体も、プロジェクト策定に伴うリスクを分担します。
23. プロジェクトの開発・準備作業を行う上で、作業範囲、質、期間そして費用は重要な要
因です。これらのバランスには、注意を払う必要があります。資格を持たないコンサルタ
ントが実施した技術的実行可能性調査は、たとえそれが網羅的でも、投資家を説得し、
プロジェクトの資金調達を実現する上ではあまり役に立ちません。国際経験が豊富なコン
サルティング会社であっても、その請け負った業務範囲(または予算)が限定的であれば、
その評価・報告は、プロジェクトの問題点を十分に検討したものとはならない可能性があ
ります。従って PDF 設立にあたり、PDF が支援する作業とその成果物がどのようにプロ
ジェクトの実現に貢献するかを、現実的に判断することが求められます。

53

54

付録4

3. 利用条件
24. PDF の資金は、契約書に基づいて供与される融資と同じです。プロジェクト融資が実行
されれば、PDF が提供した資金は回収されます。プロジェクト失敗のリスクをプロジェク
ト開発事業者と PDF が分担するということは、コストの分担とも捉えられます。
25. PDF が資金を提供するにあたり、作成される合意書に盛り込まれるべき点は以下の事項
です。
(i) 作業の期限
(ii) 費用・支出の証明
(iii) 費用の制限及び除外項目
(iv) 監査権
(v) 定期的な報告と実績評価
(vi) インティグリティ・チェックと継続的な法令順守
(vii)リスク負担に関する合意
(viii)PDF が提供した資金が助成金に転換される際の条件
(ix) 契約終了の権利
(x) 紛争条項
(xi) PDF が提供した資金を、成功したプロジェクトから回収する際の要件
26. これらの点は、法律、商業、技術的な観点から実務的に検討される必要があります。

C. 立案に関する課題
27. PDF の立案は、必ずしも容易ではありません。それには、政治・経済状況、政策環境、
そしてプロジェクトが直面する課題を考慮する必要があります。PDF の立案には、以下の
ような課題が含まれます。
(i) 例えば 9 割程度完成しており、最終的に完成する可能性の高いプロジェクトである
にも関わらず、予算が枯渇した場合はどうするか?
(ii)プロジェクトの失敗をどの段階で判断するのか?資金の拠出者は、サンク(埋没)コ
ストをどう考えるのか?失敗に終わったプロジェクトに投じた資金はどうなるのか?
(iii)投下した資金を、どのように回収するのか?資金コスト、その時間的価値、また
PDF のポートフォリオ・リスクについて負担を求めるのか?
(iv)資金の管理は、どの機関が行うのか(政府、独立した機関、開発金融機関なのか)?
(v)PDF が設立される国において、資金はどの様な形で提供するべきか? PDF が政府
内に設立されるような場合、会計上の取り扱いは?適用される会計方針は、PDF を
運用する特別目的会社の設立方法に影響を及ぼすか?
28. これらの課題に対する回答は、PDF 参画者との協議を通じて、ケースバイケースで決定
されます。それに影響を与える要因は、PDF の総資金額、市場の状況、PDF に資金を
提供する機関のリスク許容度などです。
29. PDF の運営を目的とする会社を設立したり、信託口座を利用することで、資金の管理と
保全を図ることができます。また資金の出納に関しては、明確な規則と管理が定められ
ます。特定の事業体の予算を実質的に増やす結果となるような形態は、回避する必要が
あります。

プロジェクト開発基金(PDF)

1. 資金の割り当て
30. PDF の資金をどのように振り分けるかは、資金の拠出者と拠出方法に大きく左右されます。
開発金融機関の提供する資金は、多くの場合、政府の財務管理要件に従う必要がありま
す。中央政府が一元的に PDF 資金の管理と分配を行う国もあれば、中央省庁(例:財
務省)が PDF 資金を受領し、セクターを管轄する省庁に移管して管理させている国もあ
ります。PDF が複数セクターの開発を推進することを目指すのであれば、PDF の立案時
に、各セクター毎の割り当てを考慮する必要があります。例え資金が中央で管理されても、
セクター毎の割り当ては必要です。管轄する省庁が、その割り当てを明確にするよう要求
することもあります。ただし PPP 案件の準備状況は、セクターごとに大きく異なる可能性
もあります。PDF 資金の利用資格・条件は、PDF に資金を拠出する機関と PDF を運営
する機関との間で合意する必要があります。
31. 政府予算を実質的に補うことになるようなしくみには、注意が必要です。そのような場合
は、コントロールが困難で、資金回収も複雑となります。政府の会計規則では、回収さ
れた資金は収益と分類され、一般的な入金として計上されることが多くあります。特に、
政府の財政状態が逼迫、資金管理統制が実施されているような時に、PDF が遅滞なく
その資金を回収することが困難となる恐れがあります。一般的に、政府の予算配分に資
金の回収を頼るような PDF の立案は避けるべきです。

2. 独立機関によるプロジェクト開発基金の管理
32. 複雑な政府予算の配分を考えると、独立機関または信託形式により PDF を運営するこ
とが望ましいと言えます。それら機関に、政府及び出資者の代表が参加することは構い
ませんが、必要な資格と技能を持つ機関が、独立の立場から資金を管理することが理想
です。単に財務と会計の専門知識を有している
「ファンドマネージャー」では、不十分です。
「ファンドマネージャー」は、有望なプロジェクトを発掘できる経験を積んだ専門家のチー
ムを擁する必要があり、これら専門家が、PDF の設計に携わる重要性が軽視されてい
ることがありますが、それは誤りです。信託形式を採用するには、PDF 資金の使途・分
配方法を明確かつ客観的にする必要があります。信託の受託者は、自己の裁量や私見を
差し挟むことなく、具体的な指示に応じ、また明確な基準に従って行動します。信託構
造では、受託者に指示をし、PDF の評価や管理を行う委員会が必要になる場合があり、
その場合この委員会は、適切な資格を有し、必要な技能を備えた委員により構成される
必要があります。

3. 資金の回収
33. 一般的に、PDF に拠出された資金は「回転」します。つまり、ある案件への融資が実行
されると、PDF が提供した資金はプロジェクトの実施体から回収され、新たなプロジェ
クトに再利用されることを前提としています。しかし PDF の規模と条件を検討するには、
以下の実務的な課題を考慮する必要があります。
(i) 初期の資本額と資金拠出のタイミング。プロジェクトの開発・準備には、数ヶ月から
数年を要しますが、PDF はその間にも、次の新しいプロジェクトに、継続的に資金
を提供する必要があります。よって PDF の資金規模は、資金の回収・再利用が始
まるまでに、必要と予想される資金額を賄える規模でなければなりません。よってそ
の額は、予想される PDF の年間支援額の数倍に達する可能性があります。

55

56

付録4

(ii)失敗に終わったプロジェクトの会計処理。ある割合で、失敗するプロジェクトが発生
します。それらのプロジェクトに提供された PDF の資金は、回収が不能になるすの
で、会計上の処理をする必要があります。この「失われた」資金を助成金に転換して、
償却することが求められます。プロジェクトが失敗することも、PDF 立案時の予算
に織り込む必要もあります。プロジェクトが失敗に終わり回収不能となった資金を補
填するために、PDF の持つ資金を補充する必要となる場合があります。
(iii)成功したプロジェクトからの資金の回収。PDF が成功したプロジェクトから、資金
を回収するには多くの方法が考えられますが、々にメリットとデメリットがあります。
(a)プロジェクトに提供された PDF の資金と同額を回収
(b)PDF が提供した資金に利息を加えて(時間的価値)、回収
(c)PDF がプロジェクトに提供した資金と、他に発生するであろう回収不能資金の
補填分をリスクプレミアムにつけて回収
34. プロジェクトが失敗し、提供した資金が回収不能となるリスクを考慮して、成功したプロ
ジェクトから回収される資金に、リスクプレミアムを上乗せするという考え方がありますが、
プロジェクトを策定する立場からは、他の関係者の失敗や、それを管理すべき政府の能
力や経験不足に伴う損失を穴埋めさせられることは、不公平なやり方とみなされます。。
そのプロジェクトが失敗したのは、事業者に十分なプロジェクト開発・準備の能力が備わっ
ていなかったのかもしれないし、そうした事業者の事前審査を政府が適切に行っていな
かったせいかもしれません。また、政府の支援が足りなかったり、途中で政策が変更し
た(特に新たな政策の導入)、またはプロジェクトのコンセプトそのものが適切ではなかっ
たからかもしれません。従って、PDF に資金を拠出する際には、参画者間で種々検討を
行うことは重要です。提供した資金に加えて利息(時間的価値)を回収するというコンセ
プトも、程度は小さいながら同様の問題を抱えており、特にプロジェクトの開発・準備期
間が長期の場合はなおさらです。提供した資金と同額を PDF が回収する方法は、上記
に比べれば分かりやすく、参画者の同意を得やすいと言えるでしょう。
35. PDF が提供した資金と同額を回収する方法として、回収不能となった資金を補填するた
めに PDF の資金を定期的に補充する必要があります。この形態の PDF と、追加資金の
拠出の影響については、ボックス A4.1 で解説しています。

D. 注記
36. PDF は、開発途上国がインフラ整備で直面する深刻な財源不足に対応するものです。し
かし PDF は万能薬ではないし、PPP を推進する環境が整っていないのであれば、PDF
を導入すべきではないでしょう。インフラ開発において、金融・財政的な支援に力点が置
かれる傾向があります。むろん資金の調達は重要ですが、PDF の資金を利用できる能力
と技能が不可欠です。それがあって初めて、限られた資金を有効に活用してインフラ開発
を成功に導くことができます。

E. アジア・太平洋地域の PDF
37. ボックス A4.2 および A4.3 は、インドとインドネシアにおける PDF の実例を紹介してい
ます。

プロジェクト開発基金(PDF)

ボックス A4.2 インドにおけるプロジェクト開発基金
インド政府は、インド・インフラ・プロジェクト開発基金(IIPDF)を回転資金として設立しました(基
本融資額 10 億ルピー)。同基金は、信頼に足る融資可能な PPP プロジェクトの開発支援を目的と
しており、民間セクターも利用することができます。
政府機関は、IIPDF を利用することで PPP プロジェクト開発費用を賄うことが可能となり、この費
用には、実行可能性調査、環境への影響調査、財務ストラクチャリング、法的レビュー、ならびに
コンセッション契約書や商業的評価書といったプロジェクト資料の作成費用が含まれます。
IIPDF は助成基金ではありません。通常、政府の実施機関によるプロジェクト開発費用を最大
75% まで援助しますが、入札プロセスが完了した時点でプロジェクト開発費用は落札業者から回収
されます。
IIPDF はこれまで、プロジェクト費用総額約 4 億 2,500 万ルピーのうち 3 億 2,300 万ルピーを 35
件のプロジェクトに対し提供してきました。

ボックス A4.3 インドネシアのプロジェクト開発基金
インドネシアでは、PPP プロジェクトの準備態勢が十分に整っていないことが、インフラ開発を妨
げる最も深刻な原因の 1 つとなっています。2005 年 1 月に開かれたインドネシア・インフラ・サミッ
トでは、90 件超のプロジェクトが民間セクターに紹介されました。しかしこれらのプロジェクトの進
捗状況ははかばかくなく、例えば有料道路プロジェクトに対して関心を示し、事前資格審査を申請
した投資家はわずか 6 件であり、関心を示した投資家の数が 0 ∼ 2 ということも珍しくありません。
このように投資家の関心が低い主な理由は、PPP プロジェクトの技術的・財政的な面に関する信頼
に足る情報、特にプロジェクトに影響を及ぼす様々なリスクについての詳細な分析が不足している
ことが原因であり、政府がリスク分担支援に消極的なのもそのためです。
最近、ADB が支援する「インフラ改革セクター開発プログラム」a の広い範囲に改善された法律
上、規制上、制度上の枠組みが導入されたことで、インフラ開発に対する民間セクターの効果的な
参画を支援する環境が誕生しました。中でも、民間セクターによるインフラ提供への参画に関する
大統領規則(Perpres)67/2005 は、規則や規制を明確にすることで、民間投資家にとっての確実
性を高めています。とは言え、PPP プロジェクトに関する包括的で信頼できる情報が存在せず、ま
たプロジェクトのリスクが、それを管理するのに最も適した関係者に明確に分配されない限り、民
間セクターによる大規模な参画増は、あまり見込めないと予想されます。政府は、
「インフラ改革セ
クター開発ミニ・プログラム」
(財務省令 38/2006)に記載されたリスク管理の枠組みによって、リ
スク配分の問題に対応しています。効果的なリスク配分の妨げともなっている、プロジェクトの準備
態勢が不十分という問題に対処するため、インドネシア政府は ADB にインフラ・プロジェクト開発
ファシリティー(PDF)の設立支援を要請しました。このプロジェクトは以下の 3 つの要素で構成さ
れています。
(i) 以下の開発を含む、PPP プロジェクトの準備と取引の実行
(a)PDF の中央政府部分(電力や有料道路、輸送など大型プロジェクトの準備と入札にかか
る資金を提供)
(b)PDF の地方政府部分(比較的小規模な地方のインフラ・プロジェクトの準備と入札にか
かる資金を提供)
(ii)PDF に対する技術的アドバイザリー・サービスと PPP プロジェクトの推進能力および実行
能力の育成
(iii)PDF に対する調達・管理サービス
a 『総裁から理事会への報告および推奨事項:提案されるプログラム群、ローン、技術協力の無償援助、お
よびインフラ改革セクター開発プログラムのためのオランダ政府からインドネシア共和国に対する助成金の
管理(Report and Recommendation of the President to the Board of Directors: Proposed Program
Cluster, Loans, Technical Assistance Grant, and Administration of Grant from the Government of
the Netherlands to the Republic of Indonesia for the Infrastructure Reform Sector Development
Program)』。
(ADB、2006 年、マニラ)。

57

58

付録 5

国際金融公社(IFC)の
取引アドバイザリー業務

1. 中核業務。PPP に対する取引アドバイザリー業務の一環として、国際金融公社(IFC)は
以下の業務を実施しています。
(i) 融資可能なプロジェクトの特定
(ii)デュー・ディリジェンスの実施
(iii)プロジェクト契約書の作成
(iv)最適な財務構造についての助言
(v)適格投資家の特定
(vi)売却、交渉およびクロージング
2. 報酬体系。報酬体系は以下に基づいています。
(i) コスト回収を前提とした報酬設計
(ii)政府から支払われる報酬 10 ∼ 30% プラス、
(iii)成功したプロジェクトの投資家から支払われる成功報酬 70 ∼ 90%
3. 多分野にまたがる専門家チームの管理。IFC は、取引アドバイザーとしての役割の一環
として、一つのマンデートに携わる多くの専門家やコンサルタントを管理します。IFC は
通常、以下を含む、多分野にまたがる専門家とコンサルタントから成るチームを結成します。
(i) プロジェクトの設計と建設費用について助言するエンジニア
(ii)クライアント機関と IFC の間で商業的条件が決定された後、プロジェクト契約書を
作成する(通常は国際弁護士事務所の)弁護士および現地の顧問弁護士
(iii)ほとんどの国において大規模建設プロジェクトを進める前に必要とされる環境コンサ
ルタント
(iv)会計および税務に関する問題に対処するための会計士
4. 商業・財務ストラクチャリング。IFC は価値評価を行い、いくつかある取引構造の選択肢
のうち、経済的利益率が最も高い選択肢の判定を支援します。価値評価に用いられる最
も重要なツールは財務モデルであり、このモデルは経済的なインプットだけでなく、デュー・
ディリジェンスの結果も反映します。

国際金融公社(IFC)
の取引アドバイザリー業務

図 A5 サービスの範囲
マンデート・
レターの締結

第1段階
(プロジェク
ト開発)

• 戦略を立てる
• 承認を得る

契約アドバイ
ザー

内部デュー・
ディリジェンス

規制の枠組み

• 弁護士、
エンジニ • 法律、財務、規制、• 規 制 当 局 および • 宣伝
アその他のアドバ

技術に関するデュ

基 本 的 規 制を創 • デ ータル ームの

イザーを特定・選

ー・ディリジェンス

設 する法 令を作

任する

• 是 正 措 置を実 施

書を作成する

落札業者の
選択

資金調達

融資の
クロージング

• 入 札 内 容を評 価• プロジェクトの資 • 契約の締結

第2段階
金調達のため、
ス • 支払い
する
(プロジェク
• プロジェクト契約を ポンサーがローン • 正式な移譲
トの完成)
締結する

開放
• 事前資格審査

成する

• プロジェクト契 約 • バイサイドのデュ

する

• 最終交渉

入札プロセス
の立ち上げ

ー・ディリジェンス

建設

操業

• プロジェクト資 金 • 利用者がインフラに
を引き出す

アクセス

• インフラの建築̶ • 利用料 金によって

また は 債 券を発

このプロセスの終

行する

了日を商 業 運 転
開始日と呼ぶ

投資家は債務を返
済し、
配当金を得る
• 継続的保守

出典:国際金融公社

5. デュー・ディリジェンスの実施。見込み投資家による投資の評価を支援するため、IFC は
以下に関するデュー・ディリジェンス資料を作成します。
(i) エンジニアリング調査、利用料金の分析、操業と保守の技術仕様などの技術的項目、
契約違反に対する罰則一覧、および契約の監督・モニタリング計画
(ii)コンセッション契約書の条件および規制環境などの法的問題
(iii)債券または株式証券の発行にかかる資金源、および予想される投資収益などの財
務的な考慮事項
6. プロジェクトの市場調査。IFC は、以下のツールを用いて案件の市場調査を行います。
(i) ティーザー(プロジェクトの経済的側面と投資機会について説明した簡単な資料)
(ii)インフォメーション・メモランダム、趣意書(コンセッションの内容を詳細に説明した
販促資料)
(iii)主要金融市場の投資家に取引を紹介するロードショー(営業活動)
(iv)事前に選ばれた入札業者向けに電子データルームに掲載されるデュー・ディリジェン
ス資料
(v)入札業者会議(投資家は現地を視察し、規制当局と面談することが可能)

59

60

付録5

7. 調達プロセスの管理。IFC は以下の 4 つのステップを実施します。
(i) 入札業者の事前資格審査(関心を示している関係者に対し、以下の提示を求める)
(a)プロジェクトを実施するための技術力
(b)資格と過去の実績
(c)プロジェクトを実施するための資金力
(ii)以下を明記した提案書の要求
(a)市場、交通量・流などに関するデータ
(b)アベイラビリティ、サービス、その他の成果要件
(c)価格計算式の提案
(d)コンセッション契約書の草案
(iii)入札期限、入札形式、評価基準の決定
(iv)望ましい入札業者が選定できたら、最終的な契約締結に向けた第一歩として基本合
意書(LOI)を締結します。
8. 融資のクロージングの支援。IFC は通常、プロジェクト契約の締結に至るまでの交渉プ
ロセスを監督し、すべての前提条件が満たされていることも含め、クロージング時点で法
的要件が順守されていることを確認します。

61

付録 6

ADB の各部門による活動の統合

計画立案
部門名

地域局

国別支援戦略
(CPS)以前

国別支
援戦略
(CPS)

国別業務計画

実行

モニタリング

C P S の前 段 階 の C P S 期 間 中 に 当 該 国 の PPPとセクター専門家が 品質保証と品質管理、初
PPPに対する提言 PPP・PSPプロジェクトの体系を 案件のコンセプト作り、 期支援
設計、実行を支援
整える
支援
案件が及ぼ す影 響と結
需要、リソースお 年間のPPP案件を特定(局内の 特定プロジェクトにPDF 果について相手国と協

よび実行可能なソ 各セクターおよびPPPのリソース 資金を割り当てる
リューションにつ と協議)
予想されるプロジェクト 案件設計に含まれる結
いて相手国と協議
各部門にリソースを割り当て、そ の財務構造を設計し、協 果のモニタリングに積極
PSPまたはPPPの の国のニーズを反映させた予算 調融資、民間部門業務局 的に関与
による参画の必 要性を
ソリューションを を立てる
プロジェクト完成報告書
促す
優先
からのフィードバック
各セクター部門とPPP専門家が
先行スキル支援と資金調
共同でPPP・PSP案件を設計
達も含め、PPPプロジェ
PPP専門家が地域局の部門およ
クトを実行
び駐在員事務所によるプロジェク
トのコンセプト作りを支援(構想
書の前段階)
PDFの設計および相手国との交
渉(地域局の部門、駐在員事務
所およびPPP専門家との合同協
議)
民間部門業務局の
融資および/また
は商業融資を受け
るために地域局が
提案したプロジェ
商業的融資者の市場での地位、
クトを審査
資本市場について助言し、融資
ソブリン融資に頼
条件に関する情報を提供
らずプロジェクト
リスク管理商品の可用性と適用
入札業者の支援に
可能性を確認
参加
民間セクターの投資家や融資者
と連携し、最新の市場の要件や
選好についてADB地域局や相
手国に助言

民間部門
業務局

出資要件を早い段階で PPP案件、商業的な協調
特定し、直接投資と出資 融資、および市場全般の
パフォーマンスをモニタ
を行う
リング
商業的な協調融資と、ソ
ブリン/ノンソブリン融
資保証の取り決めを行

62

付録6

ADB の各部門による活動の統合(続き)

計画立案
部門名

国別支援戦略
(CPS)以前

国別支
援戦略
(CPS)

実行

モニタリング

プロジェクト案の設計の
質、影響、リスクについて
入念なピア・レビューを
行う

DBのPPP案件とアジア
全体のPPP案件のパフ
ォーマンスと実行状況を
モニタリング

国別業務計画

PPP実務
委員会

知 識 管 理 、ブ レインストーミ 地 域 局 は P P P コ
ング、最 新 の 開 発 動 向 の 共 ンセプトについて
有、PPPコンセプトの調整
PPP 実務委員会
と協議し、プロジ
ェクト設計の改善
に関する経験を共
有し、早期に支援
を表明

協調融資
業務部

当該国の信用状況に関する開発融資機関や輸出信用 開発金融機関によるソブ
機関の意見、融資条件に関する情報を調べる
リン協調融資の出資要
件と出資機 会を早 期に
特定

リスク
管理部
独立評価
局、
特別評価
研究

法務局

PPPの実行に関する当該国のリスク管理能力評価に ノンソブリン取引のリス ノンソブリン勘定の管理
あたり、必要に応じて地域局を支援
クを評価
を支援
過去のPPP・PSPプロジェクトの成功事例と失敗事例 プロジェクトのコンセプ ADBのPPPプロジェクト
についてパフォーマンスのフィードバックを提供。強化 トをチェックし、過去の 全般をレビューし、プロ
や改善が必要な点については勧告
教訓が一貫して適用され ジェクトの計画立案と銀
行リソース開発にフィー
ているか確認
ドバックを提供
PPPアドバイザリー活動が予定される国の規制・法的 PPP契 約書の作成とレ 必要に応じ、地域局や民
ビューに関して地域局の 間部門業務局に法的支
環境のレビューに関して地域局を支援
PPPアドバイザリー・チ 援を提供
途上国においてPPPを実施するうえで求められる規
ームを支援
制・法的環境改善について、地域局の改革提案や実
必要な法的契約書およ
行を支援
び合意書の作成と締結
において地域 局や民間
部門業務局を支援する

中央業務
サービス部

PPP活動をより良く、より堅固なものにするために、当 PPPプロジェクトの適切 PPPプロセスに沿って教
該国における過去の経験を活かして改善余地のある な調達について助言を 訓と得られた成果を特定
し、計画立案、コンセプ
領域を特定
提供する
ト、執行段階へのフィー
堅固な調達環境を実現
ドバックを提供すること
するためプロジェクト・チ
で成果のモニタリングを
ームに助言する
支援

地域協力・
持続的開
発局

当該国においてADB以外の開発金融機関が行った
プロジェクトやPPPモデル、各国でのパフォーマンス
知識普及
に関する情報などを管理することでPPP実務委員会
の知識管理を事務局として支援

戦略・
政策局

知識管理の成果物作成
と知識共有のため、各案
件へのフィードバックを
収集

予想される出資要件に関する、実施部門からのフィー 融資商品、量、融資支援 当該国の開発目標に照
ドバックをチェック
の性質に対 する需要を らしてパフォーマンスを
モニタリング
評価

PPP実務委員会や民間部門業務局の支援を得て、プロジェクト・ファイナンスや
予算・人事・ PPPに必要なスキルを教える研修プログラムを作成
経営システ
PPP実務委員会と協力し、人材育成計画を見直し、適切なスキルを備えた専門的
ム局
人材の最低必要量を確保

予算要件を予想

ADBの支援に伴う成果の数値化

結果指標(2011年をベースラインとし、それ以降
の期間の目標)

所管

次ページに続く

おけるPPPの準備態勢によって (ii) 国別PPP戦略や業務計画を実行するため
異なる。ここに記載されている
の途上国側イニシアティブに含まれる能力
活動範囲は、4つの柱すべての
育成関連項目の件数と予算額
ニーズに対応している
(iii) ADB職員の勤務時間、コンサルタントの人
(ii) 第一の柱の中間結果は、第二・
月、およびそのために割り当てられた価値
第三の柱を達成するためのイ P1.2:地域・地区への提唱、能力育成プログラム、 P1.2:(ADBが支援および能力育成を行ったことによ 地方単位での活動・
ンプットとなるものであること
イベントの実施(実績としてはP1.1と同様)
り)PPPの準備態勢が改善された国の数
イベントは、地 域 局
から、最終的なものではないと
が担当
目標:2011年末時点の数を基準に、毎年増やしていく
認識する必要がある
複数国を含む地域単
(iii) 大規模なPPP活動が実施され
位のイベントは、地
る国では、地方自治体やセクタ
域協力・持続的開発
ー単位でPPPを準備する例が
局が担当
増えていく可能性があるが、国
全体としてのカウントは変わら
ない。その場合、ADB地域局
は内部参考用に、個別のモニタ
リング・報告メカニズムを導入
することも可(付録6の表)

P1:途上国におけるPPPの準備態勢 P1.1:ADBの提唱、能力育成プログラムやイベン P1.1:(ADBの提唱や能力育成によって)PPPの運用 国・地方単位でのセ
を整えるための、ADBによる支援
ト実施。その実績を数値化する例としては以
基盤が強化した国の数
クター・イベントは、
下の方法がある。
地域局が担当
を強化する
目標:2011年末時点の数を基準に、毎年増やしていく
(i) 承認された融資・グラントのうち、能力育
注:
成に関する部分の数と価値(コスト表)
(i) 能力育成の内容は、当該国に

a
第1の柱(P1) PPP 活用に関する国別支援と能力育成に対するADBの提言支援強化

主要成果領域と結果

(2020 年まで PPP 関連のパフォーマンスの進捗をチェックするテンプレート)

表 A7.1 PPP業務計画2012∼2013年

成果とモニタリングの枠組み

付録 7

63

次ページに続く

(ADBの支援による)成果

結果指標(2011年をベースラインとし、それ以降
の期間の目標)

注:民間セクターに関しては、ADBが相手国に民
間セクター育成全般の立ち上げや強化(例:全
体的な投資環境、金融/資本市場、会計/与
信基準および健全なコーポレート・ガバナンス
の改善、改良および強化)を目的とした、技術
協力および金融支援を提供することが望まし
いが、ここに盛り込むことは意図していない

所管

次ページに続く

P2:途上国におけるPPP環境整備の P2:対象国が、ほぼADBの助言に沿って、PPPに P2:ADBの支援によりPPP環境整備の枠組みが改善 地域局
した国の増加
関する政策、法律、規制、セクターおよび組織
枠組み改善
改革
(国レベルまたは国内の半公営企業レベ
目標:2011年末時点の数を基準に、毎年増やしていく
注:
ル)を採用。実績を数値化する例としては以下
(i) 政策上、法律上、規制上、およ
の方法がある
び組織上の枠組みを対象とす
(i) 当該国においてPPPに関する政策、法令が

新規に導入されたり既存の規定が強化・改
(ii) 第三・第四の柱の結果実現のイ
善された場合(セクター別のガイドラインや
ンプットとしてリンクする
ツールキット、基準の文書化、PPP調達実
(iii)大規模なPPP活動が実施され
務など)、その実現に貢献したADBのプロ
る国では、地方自治体やセクタ
ジェクト・TAの件数や金額
ー単位でPPPの枠組みが増え
(ii) PPPの組織インフラの新設や改良(例:民
ていく可能性があるが、国全体
間セクターのPPP参画を奨励するPPP部門
としてのカウントは変わらない。
やセンターなどの機関の設立)
その場合、ADB地域局は内部
(iii)
ADB職員の勤務時間、コンサルタントとし
参考用に個別のモニタリング・
ての人月、およびそのために割り当てられ
報告メカニズムを採用すること
た価値
も可(付録6の表)

第2の柱 PPP環境整備のための枠組み作りに対するADBの支援強化

主要成果領域と結果

表 A7.1(続き)

64
付録7

(ADBの支援による)成果

結果指標
(2011年を基準に、それ以降の期間の目標)

目標:2011年末時点のプロジェクト数を基準として、毎
年増やしていく

P3.1.2:ADBの支援を受けて開発が始まったPPPプロ 地域局
ジェクトの件数

P3.1.3.3:クライアントによるPPPプロジェクトとし
ての入札が終了した(が未発注の)プロジェク
トの数

P3.1.3.2:クライアント主導による入札が始まった
プロジェクトの数

所管

次ページに続く

注:上記P3.1.2.1およびP3.1.2.2に示された結果指 P3.1.3.2:ADBの支援を受けて官民の両セクター、ま 地域局
標の達成に向けた進捗状況は、以下のような
たは民間セクターのみからの融資に基づく実行契
e
事項の途中段階での成果とみなすこともでき
約を締結したPPPプロジェクト の数
る。
目標:2011年末時点の数を基準に、毎年増やしていく
P3.1.3.1:PPPプロジェクトとしての開発が完成し 注:結果指標P3.2.1とリンク
たプロジェクトの数

(iii)プロジェクトの入札評価報告書

(ii) コンサルタントの人月・価値という形で提供
されたADBによる金融支援

c
P3.1.3:PPPプロジェクト組成・実施 サイクルに P3.1.3.1:ADBの支援を受けて政府のみからの融資に 地域局
おいて締結されたPPPプロジェクトの発注。
基づく実行契約を締結したPPPプロジェクトd の数
その実績としては、クライアントとの間に合意 目標:2011年末時点の数を基準に、毎年増やしていく
された以下のような事項が挙げられる。
注:結果指標P3.2.1とリンク
(i) 職員の勤務時間中に提供された技術上の
助言サービス

P3.1.2:策定・実施がスタートした案件

(ii) 上記リストのうち実現した案件に対する事
前実行可能性の調査実施件数

(i) プ ロジェクトや セクター別 基 準 に 沿 っ
た、PPPの候補案件リスト

P3.1:何らかのPPPアプローチbに基 P3.1.1:途上国が、開発の優先セクターにおいて、 P3.1.1:ADBの支援を受けてPPPプロジェクトの開発 地域局
づいて開発されたPPPプロジェク
国別PPPロードマップやADBの国別支援戦
を行っている国数
ト数の増加
略・業務計画に基づいたPPPプロジェクト実 目標:2011年末時点の数を基準に、毎年増やしていく
施に同意。その実績の数値化としては以下の
方法がある。

第3の柱 プロジェクト候補の発掘とプロジェクト策定に対するADBの支援を強化

主要成果領域と結果

表 A7.1(続き)

成果とモニタリングの枠組み
65

(ADBの支援による)成果

結果指標
(2011年を基準とした、それ以降の期間の目標)

P4:当該プロジェクトに対してADBが P4.1:プロジェクトが結果指標P3.1.2.2に基づい P4.1.1:ADBの支援によって創出されたプロジェクトの
価値総額
融資支援を行うことにより民間投
て開発され、ADBから融資を受けたか否か
資を呼び込み、プロジェクトの価
に関わらず、PPP合意書の締結後、融資のク 注:結果指標P4.2とリンク 目標:2011年末を基準とし
ロージングまで到達
値を向上
て、プロジェクトの価値総増額を毎年増やしていく
注:レバレッジ倍率の推定は、政府と
P4.1.2:ADBが提供したプロジェクト・ファイナンス総
ADBから融資を受けたプロジェク

トに民間セクターの投資を呼び込
んだ場合のみ行う。ADBの支援し
注:結果指標P4.2とリンク
か受けていない公的融資プロジェ
目標:2012年末を基準とした、PPPプロジェクトを対象
クトはカウントしない
とするADB融資の年間利用額

第4の柱 ADBは、PPPプロジェクト候補を対象としたプロジェクト・ファイナンスのレバレッジを支援

目標:2012年末を基準に、プロジェクト開発融資の回
転額を毎年増やしていく

所管

次ページに続く

民間部門業務局

地域局、

民間部門業務局

地域局、

P3.2.2:ADBのプロジェクト開発融資のうち、継続的 地域局
なプロジェクト開発に用いられた回転資金の金額と
シェア(%)

注:結果指標 P3.2.2およびP4.2とリンク

P3.2:何らかのPPPアプローチに基づ P3.2:ADB財源の利用、および合意に基づく民 P3.2.1:プロジェクト開発を目的とするADBからの資金 地域局
提供額(通常資本財源、グラント、その他のリソース
間セクターの入札業者からの資金回収(民間
くPPPプロジェクト開発を目的とし
(分割を伴う))
セクター融資を伴うプロジェクトに適用)、ま
たADB財源の利用額と回収額が
たは政府からの払戻し(公的融資のみを利用 目標:2012年末を基準に、プロジェクト開発融資額を
増加
するプロジェクトの場合)に関する合意
毎年増やしていく

主要成果領域と結果

表 A7.1(続き)

66
付録7

P4.2:ADBの財源を利用したレバレッジ

ADBの支援による成果

(案件開発に対するADBからの融資
  + 案件に対するADBからの融資)

目標:2011年末時点を基準として、ADBからの融資
のレバレッジを毎年高めていく

(ADBによって創出された案件の価値)

P4.2:ADBによる融資のレバレッジ倍率

結果指標
(2011年を基準とした、それ以降の期間の目標)
民間部門業務局

地域局、

所管

e 本業務計画に記載のとおり、通常、リース、建築―操業―移転、およびコンセッション(およびその派生型)を指す。

d PPP 業務計画に記載のとおり、通常、パフォーマンス・ベースのサービス契約、管理契約またはアフェルマージュ契約(コンセッション契約とは異なり、施設等に関する追加
投資を政府機関が負担し、追加投資分も含め政府機関の所有となる)を指す。

c PPP の案件リストは、政府または民間セクターのプロジェクトリストとは明確に区別される。本業務計画に記載された、事前実行可能性のスクリーニングは、公的融資のみ、
および公的融資と民間融資の両方を用いた PPP プロジェクトの候補について、その適性を事前チェックする判断基準となる。パフォーマンス・ベースのサービス契約や、リス
ク分担を伴う管理契約といったプロジェクトは公的融資を受けることに適しているが、リース、建築―操業―移転、およびコンセッション方式といった高度なタイプの PPP で
は、そのプロジェクトの融資可能性に基づいて、公的融資と民間融資の両方を合わせることが想定される。

b ADB の本業務計画 2012 ∼ 2020 年は、「PPP とは、政府(国、州、省または地方)と民間企業の間の契約上の取り決めを指し、それを通じて政府および民間セクターそれぞれ
のスキル、資産および/または財源を補完的に割り当てることでリスクとリターンを共有し、市民に最適なサービスと価値を提供することを目指す」と定義している。

a PPP の準備態勢があまり整っておらず、国・セクター内の PPP の可能性が認識されていない途上国に対しては、より多くの支援が必要となる。PPP の準備水準が中∼上程度
である国に関しては、4 つすべての柱にわたって、国・セクター別ニーズに応じた能力育成が実施可能。

主要成果領域と結果

表 A7.1(続き)

成果とモニタリングの枠組み
67

ADBの支援による成果

内一部地域を対象としたイベントの件数(ADBが
提唱と能力育成を提供)

結果指標
(2011年を基準とした、それ以降の期間の目標)
所管

P2.1.2:ADBの支援を受けてPPP環境整備の枠組み
を見直したり、組織としての取り決めを承認・容認
したセクター別事業体の数

P2:途上国におけるPPP環境整備の P2:対象国が、ADBの助言に沿ってPPPに関す オプションの下位指標(地域局がP2.1だけでは国内の 地域局
枠組みの改善
る方針、法律、セクター、規制および組織改革 取り組みを十分に説明できないと考える場合に利用)
(国レベルまたは国内の半公営企業レベル) P2.1.1:ADBの支援を受けてPPP環境整備の枠組み
を採用
を見直したり、組織としての取り決めを承認・容認
した地域的事業体の数

第2の柱 PPP環境整備のための枠組み作りに対するADBの支援を強化

P1.1.2:PPPの準備態勢を整えることを目的とした、セ
クターを対象としたイベントの件数(ADBが提唱と
能力育成を提供)

P1:PPPというしくみの利用を推進す P1.1:ADBが援助する国・セクターへの政策提 オプションの下位指標P1.1.1∼P1.1.2(地域局がP1.1だ 国別、または同地域
るため、ADBの支援を強化
言、または能力育成プログラムやイベントの実 けでは国内の取り組みを十分に説明できないと考える の複数国におけるセ

場合に利用)
クター別イベントにつ
P1.1.1:PPPの準備態勢を整えることを目的とした、国 いては地域局

第1の柱 PPP活用促進に向け、国別支援と能力育成に対するADBの支援を強化

主要成果領域と結果

表 A7.2 モニタリングと詳細な取り組みの報告に関する指標

68
付録7

官民連携業務計画 2012 ∼ 2020 年 ストラテジー 2020 年のビジョンの実現に向けて:
 アジア開発銀行の業務における官民連携の変革的役割
『官民連携業務計画 2012 ∼ 2020 年』は、ストラテジー 2020 を支える官民連携(PPP)拡大
のための一貫した分析・運営の枠組みを提供します。アジア開発銀行
(ADB)の PPP 業務は、
(i)
Public–Private
Partnership Operational Plan 2012–2020
提唱と能力育成、
ト開発、
(iv)プロジェク
ト・ファイナンス、という
Realizing
the Vision for (ii)環境整備、
Strategy 2020: (iii)プロジェク
The Transformational
Role
of Public–Private
Partnerships
in Asian Development Bankの原則を
Operations
4 つの柱に基づいています。PPP
ADB の業務に全体的に適用することで、ストラテジー
2020 の掲げる目標を支える PPP プロジェクトの設計と成果の質を大幅に高められる可能性がありま
The Public–Private Partnership Operational Plan 2012–2020 provides a consistent analytical
す。また、それにより
ADB
は、アジア
・太平洋地域の巨大かつ増加の一途をたどるインフラ投資ニー
and operational
framework for
scaling
up public–private
partnerships (PPPs) in support of
Strategyズに応えるために、自身の限られたリソースを大いに活用し、民間セクターによる投資と商業融資を
2020. The PPP operations of the Asian Development Bank (ADB) are based on
four pillars:
(i) advocacy and capacity development, (ii) enabling environment, (iii) project
呼び込むことができます。
development, and (iv) project financing. Applying PPP principles holistically to ADB operations
holds the potential to vastly improve the quality of design and outputs of PPP projects in
support of Strategy 2020 targets. It also provides ADB with an opportunity to significantly
leverageアジア開発銀行について
its limited resources in attracting private sector investments and commercial financing
to meet the Asia and Pacific region’s huge and growing infrastructure investment needs.
ADB は貧困のないアジア・太平洋地域の実現を目指しています。ADB は、開発途上加盟国によ
る貧困の削減と、国民生活の質の改善を支援することを使命としています。経済発展のサクセス・ス
トーリーが脚光を浴びる一方で、アジア・太平洋地域には、世界の貧困層の
3 分の 2 が、また生活
About the
Asian Development Bank
費が一日 2 ドル未満の人々が約 18 億人、そのうち 9 億 300 万人は一日 1.25 ドル未満で暮らしてい
ADB’s vision is an Asia and Pacific region free of poverty. Its mission is to help its developing
るとされています。ADB は、全ての人々に恩恵が行き渡る(インクルーシブな)経済成長、環境に
member countries reduce poverty and improve the quality of life of their people. Despite
調和した持続可能な成長、および地域統合の促進を通じて、途上加盟国の貧困削減を支援していま
the region’s
many successes, it remains home to two-thirds of the world’s poor: 1.8 billion
す。 live on less than $2 a day, with 903 million struggling on less than $1.25 a day.
people who
ADB is committed to reducing poverty through inclusive economic growth, environmentally
sustainable growth, and regional integration.
ADB はマニラに本部を置き、67 の加盟国によって所有され、うち 48 カ国はアジア・太平洋地域
Based in Manila, ADB is owned by 67 members, including 48 from the region. Its main
の国です。開発途上加盟国支援のために
が行う支援の具体的手段は、
政策対話、
instruments
for helping its developing member ADB
countries
are policy dialogue, loans,
equity 融資、出資、
保証、無償援助、技術協力などです。
investments,
guarantees, grants, and technical assistance.

ISBNISBN
978-92-9092-850-8
978-92-9092-850-8

Asian Development Bank
6 ADB Avenue,
Mandaluyong
アジア開発銀行
6 ADB City
Avenue,
1550 Metro
Manila, Philippines
Mandaluyong
City
www.adb.org
1550 Metro Manila, Philippines www.adb.org
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recycled paper

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the:
Philippines
フィリピン

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