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エイズ対策 ∼ケニアと日本の違いから∼
年 2 月、キバキ新ケニア大統領は選挙公約であった初等学校教育の無料化を実行した。現
在、施設や物品不足により十分な教育体制が整っているとは言い難いが、今後この政策を
継続した場合のエイズ患者数や、HIV感染者数がどう変化するかは大変興味深く、期待
されるところである。日本が行える支援としては、この初等学校教育の無料化を支援する
と共に、ネガティブキャンペーンではないエイズ教育の助成が挙げられるであろう。
他方、日本ではどうであろうか。日本は、エイズの感染率それ自体は世界諸国と比較して
小さい。その理由として、高い教育レベルや、コンドーム等の高使用率(エイズ感染防止
というよりは避妊具としての使用であるが)などが挙げられている。今後もこの低い感染
率であることが望ましいが、残念ながら日本においてもHIV感染者およびエイズ患者報
告数は増加の一途を辿っている。厚生労働省によると 2004 年のHIV感染者、エイズ患者
のそれぞれの報告者は 780 人、385 人に上り 4)、累計数もそれぞれ 3257 人、6527 人にの
ぼっている。その増加要因はいくつか存在するが、日本においては「同性間の」性的接触
が主な感染経路であり、突出して「男性の感染が多い」にもかかわらず、それに対する社
会的認知が成熟していないことはあまり知られていない原因であろう。ちなみにアフリカ
では「異性間の」性的接触が主な感染経路である。日本において、同性愛者への偏見が未
だ存在することは認識されている方も多いと思う。今後、日本においてエイズの広がりを
防ぐためには、同性愛者に対する寛容な心を育むことも重要な視点といえる。
このように、一概にエイズ問題といえども、国々によってその背景は異なる。ケニアと
日本についてのみ例を挙げたが、他にも各国における感染経路はその社会的背景によって
異なり、例えば東欧では薬物注射のまわし打ちによる感染が多い。つまり、必要とされる
対策が異なることは言うまでもない。
現在、世界中でエイズ問題は深刻化しているが、この問題は数年単位で解決される問題で
はない。むしろ人類が永遠に共に歩んでいかなければならない病気であるとさえ私は考え
ている。正直いって、根絶への道は絶望的である。しかし、それでも我々は忍耐強く対処
してゆかねばならない。闇の中に一筋の光があるとすれば、感情的にならず、それぞれの
国の実態を分析し、それに見合った対策を効果的に行うことのみであろう。
参考文献
1)横森健治, ケニアにおけるエイズ問題―希望を持って生きるためにー, AMDA Journal
2002 年 12 月号
http://www.amda.or.jp/journal/kenya/0212-06.html
2)ワールドビジョンジャパン, http://www.worldvision.jp/child/world/kenya.html.
3)山野峰, トーマス・ジェイン, エイズと子供の就学率―ケニア農村の事例, 教育と経済発
展, 丸井工文社, p151-172 (2003)
4)社会実情データ図録, http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2250.html