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JP 2013-188176 A 2013.9.

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(57)【要約】 【課題】安全性の高い有用な多糖類の生産に用いられる新規微生物およびその変異株並び にそれを用いた多糖類の製造方法を提供する。 【解決手段】コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号FERM P-21297として寄託されてい る新規微生物およびその変異株。 【選択図】なし

(2) 【特許請求の範囲】 【請求項1】

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 コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号FERM P-21297として寄託されていることを特 徴する新規微生物またはその変異株。 【請求項2】  以下の菌学的性質を有することを特徴とする請求項1に記載の新規微生物またはその変 異株。 < 形態 > 細胞の形態:桿菌 運動性:有り 胞子形成:無し <生育状態> コロニーの形態:円形 コロニーの色調:クリーム色 コロニーの表面:スムーズ 生育温度:10℃、37℃および45℃で生育する。 生育pH:5.5∼9.5(至適生育pH:6.5∼7.5) 酸素要求性:好気性 <生理学的性質> グラム染色性:陰性 カタラーゼ反応:陽性 オキシダーゼ反応:陰性 グルコースからの酸/ガス産生:陰性/陰性 O/Fテスト(酸化/発酵) :陰性/陰性 β−ガラクトシダーゼ活性:陽性 インドール産生:陰性 硝酸塩還元:陰性 でんぷん加水分解:陰性 ゼラチン加水分解:陰性 エスクリン加水分解:陰性 ウレアーゼ:陰性 アルギニンジヒドロラーゼ:陰性 資化性(D-グルコース、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、 こはく酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、L-アラニン、):有り (L-アラビノース、マルトース、D-マンノース、D-マンニトール、ラクトース、サッカロ ース、N-アセチル-D-グルコサミン、n-カプリン酸、アジピン酸、dl-リンゴ酸、酢酸フェ ニル、L-ヒスチジン、L-セリン):無し 【請求項3】  16S rDNA塩基配列がコベティア マリナ(Cobetia marina) DSM 4741のそれと99.5%の相 同率を有し、かつ100%は一致しない配列番号1の塩基配列を有する請求項1または2に記 載の新規微生物またはその変異株。 【請求項4】  コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号がFERM P-21297として寄託されている新規微 生物またはその変異株を培地中で培養し多糖類を産生させて培養物を得る工程と、先記培 養物から多糖類を単離する工程と、を含むことを特徴とする多糖類の製造方法。 【請求項5】  前記培養物を得る工程においてコベティア(Cobetia)属に属し寄託番号がFERM P-2129 7として寄託されている新規微生物またはその変異株を炭素源、窒素源および鉱物塩を含 む培養培地を用いて固形培地、液体静置、振とう(または撹拌)条件で22℃から28℃の 範囲で2日から5日間の培養することを特徴とする請求項4に記載の多糖類の製造方法。 50 40 30 20 10

(3) 【請求項6】

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 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコベティア(Cobetia)属微生物を培養して培 地中で下記式(1)の構造式で示される多糖類を産生させ培養物を得る工程、および該多 糖類を培養物から単離する工程を含む多糖類の製造方法。 【化4】

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(上記の構造式において、GlcNAcpはピラノース型N-アセチルグルコサミン残基を、GlcUAp はピラノース型グルクロン酸残基を、Gluはグルタミン酸を、DはD型を、LはL型を、nはゲ ルろ過クロマトグラフィーで測定した平均分子量がプルランを標準として100万∼15 0万であることを示す繰り返しの数をそれぞれ表す。) 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】  本発明は新規微生物およびその変異株並びにそれを用いた多糖類の製造方法に関する。 より詳しくは、本発明は後述の構造式(1)で示される多糖類を産生しうるコベティア( Cobetia)属微生物の新規菌株(FERM P-21297)の提供および新規菌株を使用した該多糖 類の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】  本発明における多糖類は、すでに公知の物質であり、後述の構造式(1)で示される化 合物である(非特許文献1)。以後の記述においては、単に「本多糖類」と表現する。本 多糖類に関してはこれまで、その誘導体の抗ウイルス活性効果が報告されている(非特許 文献2)。 【0003】  本多糖類の産生にあたり、従来の微生物にない夾雑物の少ない多糖類を産生する微生物 が求められていた。また新規の微生物を用いて本多糖類を効率的にかつ安価に生産する方 法が求められていた。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0004】 【非特許文献1】エー.シャムスジンら、フィッシャリーズサイエンス(A.Shamsuddin et c., Fisheries Science),64,469-473,1998 【非特許文献2】エー.シャムスジンら、マリンバイオテクノロジー(A.Shamsuddin etc. , Marine Biotechnology), 1, 102-106,1999. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】  本発明は、本多糖類産生にあたり従来の微生物にない夾雑物の少ない多糖類を産生する 50 40 30 20

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新規の微生物を提供することを目的とする。また新規の微生物を用いて本多糖類を効率的 にかつ安価に生産する方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】  本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、コベティア(Cobetia)属に する微生物の中に本多糖類を産生する微生物を見出し、本発明を完成した。 【0007】  本発明の第1の特徴は、コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号FERM P-21297として 寄託されている新規微生物及びその変異株を要旨とする。  本発明の第2の特徴は、コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号FERM P-21297として 寄託されている新規微生物またはその変異株を培地中で培養し多糖類を産生させて培養物 を得る工程と、培養物から多糖類を単離する工程と、を含む多糖類の製造方法を要旨とす る。  本発明の第3の特徴は、多糖類が下記式(1)の構造式で示される多糖類を要旨とする 。 【化1】 10

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(上記の構造式において、GlcNAcpはピラノース型N-アセチルグルコサミン残基を、GlcUAp はピラノース型グルクロン酸残基を、Gluはグルタミン酸を、DはD型を、LはL型を、nはゲ ルろ過クロマトグラフィーで測定した平均分子量がプルランを標準として100万∼15 0万であることを示す繰り返しの数をそれぞれ表す。) 【発明の効果】 【0008】  本発明によれば、本多糖類産生にあたり従来の微生物にない夾雑物の少ない多糖類を産 生する微生物が提供される。また該微生物を用いることで、本多糖類を効率的にかつ安価 に生産する方法が提供される。 【発明を実施するための形態】 【0009】  本発明者は、瀬戸内海で採取した海水をスクリーニング源として窒素源、炭素源及び海 水で調製し、寒天で固めた寒天平板培地で、22∼28℃にて2日∼5日間培養し、生育 した粘稠性を示すコロニーを釣菌して純粋分離した。この菌株を上記と同じ組成の液体培 地で培養し、多糖類を産生することを確認して選別した。 【0010】  得られた本菌株の16S rDNA塩基配列、さらには培養学的及び生化学的特性を調べること により、該菌株の同定を試み、コベティア(Cobetia)属に属する新規な微生物であること を明らかにした。次いで本新規菌株の培養物を分析し、本多糖類が産生されていることを 確認し、多糖類の製造方法を発明した。 【0011】

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 上記知見に基づく本発明について、以下実施形態を挙げて説明するが、本発明は以下の 実施形態に限定されないことはいうまでもない。 【0012】  前記した培地と微生物を用いて従来法で微生物を培養することにより、本発明の有効成 分である本多糖類が効率的に生産されることとなる。 【0013】  本発明に用いられる多糖類は、式(1)の構造式で示される多糖類またはその生理学的 に許容される塩もしくは誘導体であることが好ましい。 【化2】 10

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(上記の構造式において、GlcNAcpはピラノース型N-アセチルグルコサミン残基を、GlcUAp はピラノース型グルクロン酸残基を、Gluはグルタミン酸を、DはD型を、LはL型を、nはゲ ルろ過クロマトグラフィーで測定した平均分子量がプルランを標準として100万∼15 0万であることを示す繰り返しの数をそれぞれ表す。)  構成成分の分析には、セルロースアセテート膜電気泳動、高速液体クロマトグラフィー またはアミノ酸自動分析装置を用いることができる。この構成成分の分析には、多糖類を 2Mのトリフルオロ酢酸(TFA)、または4N-HClで100℃、12時間加水分解し、ロー タリーエバポレイターでTFAまたはHClを除いたものを検体とし、各種標品との比較によっ て中性糖、ウロン酸、有機酸、アミノ糖またはアミノ酸の分析を行う。構成有機酸の分析 にはこの他に酵素法またはNMR分析装置を用いて解析することができる。 【0014】  本多糖類の分子量の測定は、ゲルろ過クロマトグラフィー法を用いることができる。具 体的には、Asahipak GFA-7M(昭和電工製)をカラムとする高速液体クロマトグラフィー (島津製)を使用し、0.1M-NaClを移動相とし、分子量既知のプルラン(Shodex STANDAR D KIT P-82、昭和電工製)を標準サンプルとして作成した分子量保持時間標準曲線を使用 して測定することができる。 【0015】  本多糖類はカルバゾール硫酸法で陽性を示し、ウロン酸の存在が推測される。また上記 の条件で加水分解した検体はエルソン−モルガン法で陽性を示すことからヘキソサミンが 含まれていると判断できる。また塩の存在下において第4級アンモニウム塩により沈殿を 生じることからも、本発明の多糖類は酸性多糖であると認められる。 【0016】  本発明の多糖類の製造方法について説明する。本発明の多糖類の製造方法はコベティア (Cobetia)属に属し、式(1)の構造式で示される多糖類またはその生理学的に許容され る塩もしくは誘導体を産生する微生物を用いて培養を行い、その培養物から該多糖類を抽 出することを特徴としている。本発明の製造方法における好ましい微生物として、コベテ ィア(Cobetia)属に属する微生物が使用され、更に好ましくはコベティア(Cobetia)属に 属し寄託番号FERM P-21297として寄託されている新規微生物株が使用される。 50 40 30

(6) 【化3】

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(上記の構造式において、GlcNAcpはピラノース型N-アセチルグルコサミン残基を、GlcUAp はピラノース型グルクロン酸残基を、Gluはグルタミン酸を、DはD型を、LはL型を、nはゲ ルろ過クロマトグラフィーで測定した平均分子量がプルランを標準として100万∼15 0万であることを示す繰り返しの数をそれぞれ表す。) 【0017】  コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号FERM P-21297として寄託されている新規微生 物株は本発明の多糖類を産生する能力があり、瀬戸内海の海水より、本発明者らによって 純粋分離されたものである。次にこの菌株の菌学的性質について述べる。 【0018】 (新規微生物)  実施形態にかかる新規微生物は、コベティア(Cobetia)属に属し、寄託番号FERM P-21 297として寄託されている微生物である。新規微生物は以下の菌学的性質を有する。 <形態> 細胞の形態:桿菌 運動性:有り 胞子形成:無し <生育状態> コロニーの形態:円形 コロニーの色調:クリーム色 コロニーの表面:スムーズ 生育温度:10℃、37℃及び45℃で生育する。 生育pH:5.5∼9.5(至適生育pH:6.5∼7.5) 酸素要求性:好気性 <生理学的性質> グラム染色性:陰性 カタラーゼ反応:陽性 オキシダーゼ反応:陰性 グルコースからの酸/ガス産生:陰性/陰性 O/Fテスト(酸化/発酵) :陰性/陰性 β−ガラクトシダーゼ活性:陽性 インドール産生:陰性 硝酸塩還元:陰性 でんぷん加水分解:陰性 ゼラチン加水分解:陰性 エスクリン加水分解:陰性 ウレアーゼ:陰性 50 40 30 20

(7) アルギニンジヒドロラーゼ:陰性

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資化性 (D-グルコース、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウ ム、こはく酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、L-アラニン): 有り 資化性 (L-アラビノース、マルトース、D-マンノース、D-マンニトール、ラクトース 、サッカロース、N-アセチル-D-グルコサミン、n-カプリン酸、アジピン酸、dl-リン ゴ酸、酢酸フェニル、L-ヒスチジン、L-セリン):無し  実施形態にかかる新規微生物は、16S rDNA塩基配列がCobetia marina DSM 4741のそれ と99.5%の相同率を有し、かつ100%は一致しない配列番号1の塩基配列を有する。 【0019】  実施形態にかかる新規微生物は、コベティア(Cobetia)属微生物に適した培養条件での 培養にて培養物を得、次に培養物から多糖類を分離することにより回収可能なコベティア (Cobetia)属微生物である。より詳細には、実施形態にかかる新規微生物は、Cobetia mar ina DSM 4741(文献1,VALIDATION LIST No 88. Int.J.Syst.Evol.Microbiol., 52, 1915 -1916, 2002、文献2,DR. Arahalら: System. Appl. Microbiol., 25, 207-211, 2002) と99.5%の相同な16S rDNA塩基配列(配列番号1)を有し、かつ、100%の相同率は有しない 微生物であり本多糖類を産生する微生物である。  尚、Cobetia marina DSM4741株は、Cobetia marina の標準株として位置付けられてい る。寄託番号と公の寄託先は、下記のとおりである。 1.ATCC253741(American Type Culture Collection, Manassas, VA. USA) 2.DSM4741(DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH. Br aunschweig, Germany) 3.NCIMB1877(National Collection of Industrial and Marine Bacteria, Aberdeen, U K)  コベティア(Cobetia)属も海洋微生物で、海洋資源開発の進展の中で興味が持たれてい るものの一つであり、DSM4741株は、Arahalら(上記文献2)によって命名され、承認され ているものである(上記文献1)。  実施形態にかかる新規微生物は、後に実施例の欄で説明するように、コベティア(Cobet ia)属に属することが、16S rDNA塩基配列分析などの分類学的調査を通じて決定されたこ とより、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566  日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託し、平成19年5月16日、寄託 番号 FERM P-21297として受託された。本菌株は本発明者が瀬戸内海において海水より分 離した海洋性微生物であり、その分類学的特性は、後に説明する実施例に記載した。 【0020】 (多糖類の製造方法)  実施形態にかかる多糖類の製造方法は、(ア)コベティア(Cobetia)属に属し寄託番 号FERM P-21297として寄託されている新規微生物を培地中で培養し多糖類を産生させて培 養物を得る工程と、(イ)培養物から多糖類を単離する工程と、を含む。以下詳細に説明 する。 【0021】 (ア)微生物を培養し多糖類を産生する工程  多糖類を得るためには、上記実施形態にかかる微生物(FERM P-21297)またはその変異 株を用いる。微生物として本菌株またはその変異株を用いることで、多糖類を効率的に産 生することができる。液体培養は静置、振とう(攪拌)、通気培養法、および固形培養には 寒天平板法を用いることができる。  基本培地としては、多糖類を産生しうる微生物が生育できるものであって、少なくとも 炭素源と、窒素源と、各種無機塩とおよび微量元素とを適量含有するものが用いられる。 さらに好ましくは、上記基本培地として、コベティア(Cobetia)属に属する微生物が生育 できるものが用いられる。炭素源としては、グルコース等の糖、あるいは糖蜜や廃糖蜜が 挙げられる。炭素源として1種または2種以上を単独でまたは組み合わせて用いることが 50 40 30 20 10

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できる。窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩等の化合物やペプトン、酵母エキス、 アミノ酸などの天然物が挙げられる。窒素源として1種または2種以上を単独でまたは組 み合わせて用いることができる。無機塩としては、例えば、リン酸塩、マグネシウム塩、 カリウム塩等が挙げられる。無機塩として1種または2種以上を単独でまたは組み合わせ て用いることができる。固体培地の場合は寒天を用いる。 【0022】  培養条件は使用する培地、培地のpH、培地への添加物、培養温度などは通常微生物の 培養の際に用いられている条件をそのまま用いることができる。培養時のpHは微生物が 生育し、かつ多糖類を産生する範囲(pH5.5∼9.5)であれば制限されないが、通常 は6.5から7.5の範囲のpHが好ましい。培養温度については微生物が生育し、かつ 多糖類を産生する範囲であれば制限されないが、22℃から28℃の範囲が多糖類の産生 には良好である。培養期間は培養のpHや温度により変化するが、通常2日から5日が適 切である。 【0023】  コベティア(Cobetia)属に属し寄託番号FERM P-21297として寄託されている新規微生 物を、炭素源、窒素源および鉱物塩を含む培養培地で静置、振とう(または撹拌)培養し、 通気条件で22℃から28℃の範囲で2日から5日間培養することが好ましい。 【0024】  上記した培地と微生物を用いて微生物を培養することにより、目的とする多糖類が効率 的に産生されることとなる。上記により得られた多糖画分は、糖分析反応(フェノール硫 酸法、カルバゾール硫酸法など)および加水分解後HPLC分析によりアミノ糖、アミノ酸ま たは有機酸を分析することができる。さらに、以下に説明する抽出・回収工程を経ること により高純度の多糖類を高収率で得ることが可能となる。 【0025】 (イ)産生された多糖類を分離・回収する工程  上記製造方法で得られた培養物から多糖類を抽出、分離する方法としては、多糖類の分 離回収に用いられる種々の方法を用いることができる。例えば、液体培養の場合は培養物 をそのまま、あるいは高温で殺菌した後で、遠心分離により菌体を除去し、これをそのま ま、あるいは濃縮してから、2∼3倍量のエタノール、イソプロパノール、あるいはアセ トン等を加え、沈殿を生じさせる。この沈殿物を再度、水あるいは1∼15重量%塩化ナ トリウム溶液に溶解させた後で、アルコール等による沈殿を2∼3回繰り返し、水で透析 を行い、噴霧乾燥や凍結乾燥機等を用いて乾燥させることにより、多糖類を得る。これ以 外にも電気透析法や限外濾過法も利用することができる。さらに精製するためには、イオ ン交換、ゲル濾過等の各種クロマトグラフィーや塩析および活性炭処理法などを用いるこ とができる。 【0026】  培養液から菌体の除去に際しては、孔径が0.1∼0.45μmの中空糸膜モジュール を備えた膜分離装置を用いることができる。 【0027】  以上の工程により多糖類が産生および回収される。本実施形態により得られる多糖類は 特に制限なく種々の用途に使用されうるものであるが、本多糖類には本明細書に記載のと おり抗ウイルス効果のあることから、健康食品分野および医薬分野に有用な素材を提供す ることができる。 【0028】  多糖類の調製方法としては、各種の方法が使用されうるが、用途の制限を受けないとい う観点からは、医薬として使用できる程度に精製しうるものが好ましい。例えば、本新規 菌株を炭素源として蔗糖、窒素源としてペプトン、酵母エキスを含有する海水または人工 海水を寒天で固めた培地または寒天を加えない液体培地で培養して多糖類を産生し、採取 、精製して得ることができる。より具体的には、例えば液体培養では、炭素源として蔗糖 、窒素源としてペプトン、酵母エキスを含有する多糖類産生用海水培地において本菌株ま 50 40 30 20 10

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たはその変異株を培養し、培養液から多糖類を分離、精製して得ることができる。 【0029】  尚、多糖類を産生する新規菌株を分離する方法としては、寒天平板培養で粘稠性を示す コロニーを作る菌株として保存中の菌株についてこれをペプトン、酵母エキス、蔗糖から なり海水または人工海水で調製した培地で振とう培養して得られた培養物から多糖画分を エタノールによる沈殿により分離精製する方法が挙げられる。 【0030】  次に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例になんら 制約されるものではない。尚、特記しない限り、百分率(%)は重量基準である。 【0031】 (実施例1) 〈多糖類産生菌の分離〉  ペプトン0.5%、 酵母エキス0.1%、蔗糖3%及び寒天1.5%の組成を有し海 水で調製した培地を、温度121℃としたオートクレーブ中で15分間滅菌し平板培地と した。瀬戸内海の海水サンプルを探索源としてこの寒天平板培地に画線し、粘稠性を示し て生育したコロニーを2∼3回植え継いで純粋分離し、多糖類産生菌候補として寒天斜面 培養に画線培養し保存した。保存培養から、1白金耳を試験管中の上記組成より寒天を除 いた滅菌培地(10ml)に接種し、25℃の温度で24時間振とう培養を行い、次いでこ の前培養液を500ml容の三角フラスコ中に上記組成の液体培地200ml(121℃ 、15分間滅菌)に接種し、25℃の温度で3日間の振とう培養を行った。培養後培養液 を遠心分離した後濾過助剤(ラヂオライト#500)を用いてGF−75濾紙(Advantec)で濾 過し菌体を除いた上澄液にエタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後再度エタ ノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後透析し凍結乾燥により多糖画分を得た。 【0032】  その結果、多糖類を産生する菌株を取得し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生 物寄託センター 〒305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6に寄託 し、平成19年5月16日 寄託番号 FERM P-21297として受託されている。尚、かかる 寄託番号 FERM P-21297として受託された菌株を実施例2∼5において用いた。 【0033】 (実施例2) 〈新規菌株の分類学的位置〉  新たに単離した多糖類産生菌株(FERM P-21297)を16S rDNA塩基配列の分析によって同定 した。この新たに単離された本菌株(FERM P-21297)の16S rDNA塩基配列は、Cobetia mari na DMS4741株の16S rDNA塩基配列と99.5%の相同性を示しコベティア(Cobetia)属に属す ると決定された。しかし、この菌株は、コベティア(Cobetia)属の基準株であるCobetia m arina  DSM4741とは以下に記載されるいくつかの培養特性および生化学的特性によって 明らかに区別される。 【0034】  本菌株 (FERM P-21297)の16S rDNA-Full塩基配列による相同性検索を以下のようにし て行った (表1:16S rDNA(16S rRNA遺伝子)塩基配列解析)。ゲノムの抽出操作はBIO RA D社のプロトコールに従った。抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PCRにより16S ribosomal R NA遺伝子(16S rDNA)の全塩基配列1500∼1600bpの領域を増幅した。その後、増幅された 16S rDNAをシーケンシングし16S rDNAの塩基配列(配列番号1)を決定した。 【0035】 40 30 20 10

(10) 【表1】

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【0036】  BLASTを用いた細菌基準株データベースに対する相同性検索の結果、本菌株(FERM P-212 97)の16S rDNA塩基配列はコベティア(Cobetia)属由来の16S rDNA塩基配列に対して高い相 同性を示し、相同率99.5%でコベティア(Cobetia)属の基準株C. marina DSM4741株の16S r DNA塩基配列に対し最も高い相同性を示した。 【0037】  GenBank/DDBJ/EMBLに対する相同性検索の結果においても、本菌株(FERM P-21297)の16S rDNA塩基配列はC. marina由来の16S rDNA塩基配列に対し高い相同性を示し、基準株では C. marina DSM4741株の16S rDNA塩基配列に対し相同率99.5%の相同性を示した。しかし、 両者の16S rDNA塩基配列間には8塩基の相違点があり、その内の5塩基は混合塩基による もの、あるいはプライマー領域内と考えられることから、両者の明確な差として捉えるこ とは不適切と考えられるが、残りの3塩基は明らかに異なった。このことから、本菌株と C. marinaの16S rDNA塩基配列は完全には一致しておらず、今回の16S rDNA塩基配列の結 果からは、本菌株をC .marinaに近縁なCobetia sp.とすることが妥当と判断した。 【0038】  本菌株(FERM P-21297)の培養学的および生化学的特性についてMB2216培地(Becton Dick inson, MD, USA)を用い、25℃、24時間培養により試験した。光学顕微鏡による観察およ びBarrowら(Barrow,G.I.ら:Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Me dical Bacteria. 3 rd ed., Cambridge Press, 1993) の方法に基づき、カタラーゼ反応 、オキシダーゼ反応、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/発酵(OF)について 試験した。培養学的および生化学的特性についてはさらに試験用キットAP120NE  (bioMe rieux, Lyon, France)を用い当該キットのプロトコールに基づき実施した。表2(培養学 的及び生化学的試験)および表3(資化性試験)にその結果を示す。 【0039】 40 30

(11) 【表2】

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(12) 【表3】

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30 【0041】  本菌株 (FERM P-21297)は、運動性を有するグラム陰性桿菌で、グルコースを酸化せず 、カタラーゼ反応は陽性、オキシダーゼ反応は陰性を示した。またβ-ガラクトシダーゼ 活性を示した。本菌株は、10℃および45℃で生育し、でんぷんを加水分解せず、資化性試 験ではD-グルコース、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよびL−アラニン等を資 化し、L-アラビノース、ラクトースおよびサッカロース等を資化しなかった。これらの 性状は16S rDNA塩基配列解析の結果において近縁性が示唆されたC. marinaの性状にほぼ 一致すると考えられる。しかし、45℃で生育する点およびセリンを資化しない点、はC. marinaの基準株の性状と異なった。よって今回の試験結果から、本菌株をC. marinaに近 縁なCobetia sp.と推定した。 【0042】 (実施例3)  ペプトン0.5%、酵母エキス0.1%、蔗糖3%の組成を有し海水で調製した培地を 、温度121℃としたオートクレーブ中で15分間滅菌し、本菌株(FERM P-21297)の斜面 培養から、1白金耳を試験管中の上記滅菌培地(10ml)に接種し、25℃の温度で24 時間静置培養を行い、次いでこの前培養液を500ml容の三角フラスコ中に上記組成の 培地100ml(121℃、15分間滅菌)に接種し、25℃の温度で3日間の静置培養を 行った。培養後培養液を遠心分離した後濾過助剤(ラヂオライト#500)を用いてGF−75 濾紙(Advantec)で濾過し、菌体を除いた上澄液にエタノールを加えて沈殿する画分を集 50 40

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め、水に溶解後再度エタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後透析し、活性炭 処理し、凍結乾燥により多糖画分を得た。  尚、実用的な精製レベルとしては、培養濾過液から分子量5万カットの中空糸UF膜モ ジュール(Spectrum社製)を備えた膜濾過装置により得られる高分子画分を短時間のうちに 濃縮、脱塩回収し、活性炭処理し、凍結乾燥により粉末化した。膜濾過装置は東洋紡エン ジニアリング社製SYLS-SB04型を用いた。  このようにして得られた多糖画分については、セルロースアセテート膜電気泳動を用い て均一性を確認すると共に、DEAE−セルロースイオン交換カラムクロマト分析、化学分析 、核磁気共鳴分析により、公知の本多糖類であることを確認した。 【0043】 (実施例4)  前培養までは実施例3と同様に処理し、次いでこの前培養液を500ml容の三角フラ スコ中に上記組成を有する海水から調製した滅菌培地100ml(121℃、15分間)に接 種し、25℃の温度で3日間振とう培養を行った。次いで培養液を遠心分離した後濾過助 剤(ラヂオライト#500)を用いてGF−75濾紙(Advantec)で濾過し、菌体を除いた上澄 液にエタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後再度エタノールを加えて沈殿す る画分を集め、水に溶解後透析し、活性炭処理し、凍結乾燥により多糖画分を得た。尚、 実用的な精製レベルとしては、培養濾液から分子量5万カットの中空糸UF膜モジュール (Spectrum社製)を備えた膜濾過装置により得られる高分子画分を短時間のうちに濃縮、脱 塩回収し、活性炭処理し、凍結乾燥により粉末化した。膜濾過装置は東洋紡エンジニアリ ング社製SYLS-SB04型を用いた。このようにして得られた多糖画分については、セルロー スアセテート膜電気泳動を用いて均一性を確認すると共に、DEAE−セルロースイオン交換 カラムクロマト分析、化学分析、核磁気共鳴分析により、公知の本多糖類であることを確 認した。 【0044】 (実施例5)  前培養までは実施例3と同様に処理し、上記実施例3で述べた培地に寒天を1.5%添 加した寒天平板培地250mlを平板(18×26cm)に広げて前培養液を塗沫し、25 ℃の温度で4日間培養を行った後、寒天平板の表面に生じた粘質物をかきとり、1%フエ ノール液に懸濁させ、遠心分離した後濾過助剤(ラヂオライト#500)を用いてGF−75濾 紙で濾過し、菌体を除いた上澄液にエタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後 再度エタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後透析し、活性炭処理し、凍結乾 燥により多糖画分を得た。尚、実用的な精製レベルとしては、培養濾過液から分子量5万 カットの中空糸UF膜モジュール(Spectrum社製)を備えた膜濾過装置により得られる高分 子画分を短時間のうちに濃縮、脱塩回収し、活性炭処理し、凍結乾燥により粉末化した。 膜濾過装置は東洋紡エンジニアリング社製SYLS-SB04型を用いた。このようにして得られ た多糖画分については、セルロースアセテート膜電気泳動を用いて均一性を確認すると共 に、DEAE−セルロースイオン交換カラムクロマト分析、化学分析、核磁気共鳴分析により 、公知の本多糖類であることを確認した。  以上の実施例により、本多糖類の産生にあたり、新規の微生物を用いることにより、従 来の微生物を用いる場合よりも、夾雑物の少ない多糖類を産生することが確認された。ま た新規の微生物を用いることで、従来の微生物を用いる場合よりも、本多糖類を効率的に かつ安価に生産できることが確認された。 【産業上の利用可能性】 【0045】 本発明の微生物(FERM P-21297)を用いることにより本多糖類を安価に安全に生産すること ができる。 【0046】 【配列表】 2013188176000001.app 50 40 30 20 10

(14) フロントページの続き (51)Int.Cl.      (72)発明者 中部屋 恵造 兵庫県西宮市池田町9番20号 株式会社ピカソ美化学研究所内 (72)発明者 石崎 昭彦 兵庫県西宮市池田町9番20号 株式会社ピカソ美化学研究所内 (72)発明者 奥谷 康一 香川県高松市木太町3738番地35 Fターム(参考) 4B024 AA11 AA20 CA11 CA20 DA05 HA11 FI C12R 1:01     

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テーマコード(参考)      

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        4B064 AF11 BJ10 CA02 CC03 CC08 CD02 CD30 CE03 CE06 CE17         4B065 AA01X AC01 AC12 AC14 BA22 BB03 BC03 BD11 BD14 CA22