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オバマ米大統領の演説

2009年11月14日
>>(英文の全文はこちら)
 オバマ米大統領が14日、東京都内でアジアの基本政策に関して演説した。日米同
盟を基盤にアジアへの関与を強める方針を表明。米国を「太平洋国家」と位置付
け、経済、外交、安全保障など様々な分野で協力する意向を明らかにした。演説の
全文は次の通り。

 ありがとう。(日本語で)アリガトウ。(再び英語で)ありがとう。

 おはよう。東京に来られてとても光栄だ。米大統領としての初のアジア訪問で最
初の訪問地が日本だ。日本人も米国人も、2国間のきずなを強めようと日々努めて
いる多くの方々にお集まりいただいているのは喜ばしい。その中には私の長年の友
人で新しい駐日大使のジョン・ルースもいる。

 また日本に来られるなんて、素晴らしいことだ。私がまだ少年のころ、母が鎌倉
に連れて行ってくれたことをご存じの方もいるだろう。そこで平和と平穏の象徴で
あるとても古い大仏を見上げたが、子供だったので抹茶アイスクリームの方に気を
取られていた。昨晩の鳩山(由紀夫)首相との夕食会でたくさんアイスを食べ、思
い出話を共有できたことを首相に感謝したい。どうもありがとう。日本の人々が、
故郷を遠く離れた一人の若い米国人に示してくれた温かさともてなしの心を決して
忘れることはできない。

 今回の訪日でも同じ温かいもてなしの心を感じている。鳩山首相が丁重に迎えて
くれた。即位20周年を迎えられた天皇、皇后両陛下とお会いするのも大変光栄なこ
とだ。また日本の人々ももてなしの心を示してくれた。そしてもちろん、ここに来
たからには、日本の(福井県)小浜市民へのあいさつと感謝の気持ちを表さずには
いられない。

 日本で外遊を始めた理由は簡単だ。大統領になってから、私は米国の指導力を一
新しようとし、相互の利益と敬意に基づく新しい時代の世界へのかかわり方を模索
してきた。そしてアジア太平洋地域での我々の努力はかなりの部分、新しい活力を
与えられた不朽の日米同盟を通じてなされていくことになろう。

 大統領就任の直後から、私は日米を結んでいるきずなを強くしようとしてきた。
ホワイトハウスに迎えた最初の外国の指導者は日本の首相だ。ほぼ50年間で初めて
のことだが、米国務長官として、ヒラリー・クリントンが初の外国訪問にアジアを
選び、それは日本から始まった。

 2カ月後にはこの日米同盟も50周年を迎える。当時、アイゼンハワー大統領が日
本の首相の隣に立ち、我々の国の関係は「不滅のパートナーシップ」であり「対等
と相互理解」に基づいていると述べた。

 それから半世紀の間、この同盟は安全保障と繁栄の礎となってきた。同盟のおか
げで日米は世界の二大経済国となり、日本は米国にとって北米以外で第2の貿易相
手国となった。同盟は進化し、日本は国際舞台でより大きな役割を果たすように
なった。イラクの復興から東アフリカ沖での海賊対策、アフガニスタンやパキスタ
ンの人々への支援まで、日本は世界の安定のため重要な貢献をしてきた。最近でも
アフガン、パキスタンへの追加の国際的な開発支援を約束して目覚ましい指導力を
発揮した。

 日米同盟が継続してきたのは、我々の共通の価値観を反映しているからだ。それ
は両国の自由な国民が自分たちの指導者を選挙を通じて選び、自身の夢を実現でき
るという民主的な権利への信念である。それは変革を約束した鳩山首相と私の2人
を選ぶことを可能にした信念だ。われわれはともに、両国の国民と同盟のために新
しい世代のリーダーシップをもたらすと約束する。

 だからこそわれわれ2人はこの歴史の重大な瞬間に同盟を再確認するだけでな
く、深化させることで合意した。沖縄の米軍再編で両国政府が達した合意を履行す
べく合同の作業グループを通じて迅速に行動することで合意した。

 そして、日米同盟は進化して未来に適応し、アイゼンハワー大統領がはるか昔に
述べた、対等と相互の敬意に基づくパートナーシップの精神を常に堅持しようと努
力していく。 地域への我々の関与は日本から始まるが、ここで終わるものではな
い。米国は大西洋沿岸の港や街から始まったかもしれないが、何世代にもわたり太
平洋の国家でもあった。アジアと米国は太平洋によって分け隔てられているのでは
なく、それによって結びついている。

 我々は歴史でつながっている。アジアからの移民は米国の国造りに貢献し、米国
の兵士は世代を超えて地域の安全と自由のために尽くしてきた。我々は相互の繁栄
によって運命を共にしている。貿易と通商は何百万人もの仕事と生活を支えてい
る。人々のつながりもある。アジア系米国人はあらゆる分野で米国社会に貢献して
いる。日米両国のようにこの地域に住むすべての人々は切っても切り離せない関係
にある。

 私自身の人生もそうした物語の一部だ。私はハワイ生まれの米国大統領で、少年
時代はインドネシアで過ごした。私の妹、マヤはジャカルタ生まれで、中国系カナ
ダ人と結婚した。私の母は10年近く東南アジアの村々で働き、女性がミシンを手に
入れたり、教育を受けたりするのを手助けしてきた。それは彼女たちが世界経済の
中で生活の基盤を築く足がかりになっただろう。環太平洋は私の世界観の形成に影
響を与えてきた。

 そのころと比べ、アジア太平洋地域ほど劇的に変わった地域はおそらくないだろ
う。統制された経済は市場経済に取って代わられ、独裁体制は民主主義に変わって
きている。生活水準は向上し、貧困地域が急減した。

 米国とアジア太平洋の運命はかつてないほど密接にかかわっている。

 だから私はこの地域の将来が我々米国の利害に関係があることをすべての人々、
とりわけすべての米国人に知ってもらいたい。ここで起きることは我々の母国での
生活に直接の影響を与えている。この地域は米国の通商関係の大きな部分を占め、
我々は多くの製品をここで買うのだ。さらに多くの製品の輸出が可能であり、この
過程を通じて米国の雇用も生み出されている。
 この地域での核兵器開発競争がより広範な地域を脅かすリスクがある。偉大な宗
教を冒涜(ぼうとく)する過激派が太平洋の2つの大陸を攻撃する恐れもある。エ
ネルギー安全保障や気候変動に関する問題もアジア太平洋の新興国と途上国抜きで
は解決できない。

 こうした共通の課題に対処するために、米国はこの地域の国々との既存の同盟を
強め、新たなパートナーシップを築く。そのため我々は日本、韓国、オーストラリ
ア、タイ、フィリピンとの同盟関係に目を向ける。これらの同盟は過去の歴史的文
書ではなく、我々が共有する安全保障にとって基礎的な、相互の約束であり続けて
いる。

 これらの同盟は引き続き安全保障と安定の基盤になっており、私が子供時代に初
めて日本を訪れたころには想像もできなかった機会と繁栄の追求をこの地域の国と
人々に可能にした。米軍が世界で2つの戦争をしている時でも、日本やアジアの安
全保障に対する我々の約束は揺るがない。それはこの地域への部隊配備、とりわけ
私が誇りとする若い男女の兵士ら(の存在)に見て取れる。

 現在、我々は新興国が同様にアジア太平洋地域や広い世界でより大きな役割を担
おうとしていることに目を向ける。インドネシアやマレーシアなどの国は民主主義
を受け入れ、経済を発展させ、人々の大きな潜在力を生かしてきた。

 我々は台頭しつつある国々に目を向ける。21世紀においては、ある国の安全保障
と経済成長が必ずしも他の国の損失にならないとみている。米国が中国の台頭をど
う受け止めるか質問する人が多いことを私は知っている。すでに申し上げているよ
うに、相互につながった世界で国力は必ずしもゼロサムゲームではなく、国々は他
国の成功を恐れる必要はない。影響力の領域を競うのではなく、協力の領域を培う
ことがアジア太平洋の前進につながる。

 ほかの国に対する場合と同様に、米国は国益を考えつつ中国に接するだろう。こ
の理由により中国とお互いの関心事項について現実的な協力を追求することが大事
だ。どの国も独力では21世紀の課題に対処できないからだ。米中が協力して課題に
取り組むことができれば双方の利益になる。中国が世界でより大きな役割を果たそ
うとするのを歓迎するのはこのためだ。この役割において中国の成長は責任の増大
を伴う。中国の協力は経済を急回復させるうえで不可欠だ。中国はアフガニスタン
やパキスタンで治安回復と安定を促進してきた。世界的な核不拡散体制にも関与し
ており、朝鮮半島の非核化への取り組みも支援している。

 だから米国は中国を封じ込めようとは思わないし、中国との関係強化が他の2国
間関係を弱めることもない。むしろ、強く繁栄した中国の台頭は(アジアの)国々
の国際社会での強さの源になりうる。北京やそのほかの場所で、中国との戦略・経
済対話を深めるよう努め、軍同士の交流を改善するつもりだ。もちろん米中はすべ
ての案件では合意できないだろうし、米国はすべての人々の宗教や文化の尊重と
いった、我々が大切に思う基本的な価値観に言及することをためらわない。人権と
人間の尊厳への支持は米国に深く染み込んだものだからだ。だが我々は憎しみより
も協力の精神で議論を進めていける。

 2国間関係に加え、多国間の組織の発展もこの地域の安全保障と繁栄を前進させ
ると信じる。米国は近年、多くのこうした組織に関与しなかった。はっきりさせよ
う。そうした日々は終わった。アジア太平洋の国家として、米国はこの地域の将来
を形づくる議論に加わり、そのための組織が設立され発展する際は全面的に参画し
ていく。

 今回の歴訪でその作業を始めたい。アジア太平洋経済協力会議(APEC)は引
き続き地域の通商と繁栄を促進するだろうし、今夜からの会議に参加することを楽
しみにしている。東南アジア諸国連合(ASEAN)は地域の対話、協力、安全保
障の触媒となり続ける。その10カ国すべての首脳と最初に会談する米国大統領とな
ることを楽しみにしている。東アジア首脳会議が現代の課題に対処する役割を担う
につれ、米国はさらに公式な形で関与していく。

 もっと深く幅広い関与を求めるのは、私たちの共通の将来がかかっているから
だ。その将来がどのような形となり、私たちが繁栄と安全保障、普遍的な価値観や
願望を前へ進めるために何をすべきかを少し話したい。
 まず、景気回復を確かなものとし、バランスのとれた持続的な成長を追求しなけ
ればいけない。

 アジア太平洋の国家などがとった迅速で前例のない協調的な行動は経済危機を防
ぎ、この数世代で最もひどい景気後退から私たちが立ち上がるのを助けてくれた。
私たちは国際的な経済構造を改革する歴史的な歩みをたどり、20カ国・地域(G
20)首脳会議は今や国際的な経済協力のための第一の議論の場だ。

 さて、このG20へのシフト、および国際金融機関におけるアジア諸国の発言権の
拡大は米国が21世紀に目指す、より広い、より包含的な取り組みの明確な表れだ。
G8の主要国として日本はこれまでも国際金融の枠組みづくりで主導的で不可欠な
役割を担ってきたし、これからも担う。

 景気回復が間近に迫るなか、その回復を維持しなければならない。世界的な景気
後退を引き起こしたバブルとその崩壊のサイクルに戻るわけにはいかない。不均衡
な成長をもたらした政策を繰り返すことはできない。今回の景気後退の重要な教訓
の一つは、主に米国の消費者とアジアの輸出に依存した成長の限界だ。なぜなら米
国人が重すぎる負債を抱えたり、仕事を失ったりすると、アジアの商品への需要も
急落するからだ。需要が急落すると、この地域からの輸出も急落した。アジアの各
国経済は輸出に強く依存するため、成長が止まった。世界的な景気後退はより深
まった。

 我々はこれまでとは違った道をとる機会となる歴史上まれな転換点を迎えてい
る。それには、米ピッツバーグで開いたG20首脳会議で宣言したとおり、バランス
の取れた経済成長を追求しなければならない。

 これについてはシンガポールでより詳しく触れるが、米国にとっては貯蓄を増や
して消費を減らし、金融システムを改革して長期の赤字や借り入れを減らすことを
意味する。我々が製造し、世界中で販売する輸出商品に力点を置くことも意味す
る。これは米国にとって雇用戦略である。給与の良い、非常に多くの職は輸出に支
えられている。その輸出を少しでも増やせば何百万人の雇用を創出する潜在力があ
る。風力発電タービンや太陽光発電パネルから、日常的な技術まで生み出す職だ。

 アジアの労働者や消費者は、この不均衡の是正によって驚異的な生産性の改善が
もたらした生活水準の向上をより享受できるようになる。住宅、インフラ、サービ
ス分野でより大きな投資を呼び込む。バランスの取れた世界経済は繁栄を前進さ
せ、深化させる。

 何十年にもわたり、米国は世界で最も開かれた市場の一つだった。その開放性は
20世紀に、この地域やほかの地域の多くの国の経済的成功を支援してきた。新しい
時代において、地球上のほかの市場を開くことは米国の繁栄だけでなく、世界の繁
栄にとっても不可欠となる。

 新戦略の欠かせない要素は世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・
ラウンド)の合意に向けて前進することだ。単なる合意ではなく、市場を開放し、
世界中の輸出を拡大する合意を得ることだ。

 我々はアジアの仲間と迅速に目的を達成するため協力する用意があり、この地域
の貿易相手にも交渉のテーブルにつくよう招きたい。

 この地域の経済統合の持続はすべての国の労働者、消費者、企業に寄与すると信
じる。韓国の友人とは貿易協定に向け前進するため課題を処理していく。環太平洋
のパートナー諸国とも広範なメンバーが参加する21世紀にふさわしい高い水準の地
域協定を目指し取り組んでいく。

 協力体制による取り組みこそ世界経済の回復を持続させ共通の繁栄を深める手段
だ。ただ、バランスのとれた成長の追求だけでは不十分だ。地球とそこに住む将来
世代のため、持続可能な成長も必要だ。

 すでに米国は気候変動問題に関して、最新の科学を採り入れ、新エネルギーに投
資し、省エネ基準を引き上げ、新たな連携を築き国際交渉に参加するなど、過去10
カ月で近年よりも多くの対策を講じた。米国はさらにやるべきことがあると認識し
ている。しかし我々は責任を果たそうとしており、今後もそうし続ける。
 それにはコペンハーゲン(第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議=COP
15)の成功への努力も含まれる。簡単なことだと幻想を抱いているわけではない
が、進むべき道の輪郭は明らかだ。すべての国が責任を受け入れる必要がある。米
国のような(温暖化ガスの)主要排出国は明確な削減目標を示さなければいけな
い。途上国は資金・技術援助を受けて排出抑制に向けた相当な行動をとる必要があ
る。国内対策にも透明性と説明責任が求められる。

 地球を危険にさらさずに経済成長するため我々全員ができることをすべきだ。一
緒にやらなければならない。ただ、朗報もある。まっとうなルールづくりと動機づ
けさえできれば、最高の科学者や技術者、起業家の創造的な力が解き放たれるだろ
う。新たな雇用、新たなビジネス、そして新たな産業そのものにつながる。日本は
この分野で最先端だ。我々はこの重大な世界的目標の達成に向けて日本の重要な
パートナーになれることを楽しみにしている。

 しかし、21世紀の課題に直面する一方で我々は20世紀の遺物である安全保障への
脅威、つまり核兵器の危険への対策も倍加しなければいけない。プラハで私は核兵
器廃絶への米国の関与を確認し、実現に向けた包括的計画を示した。日本の協力を
喜んでいる。地球上で日米2カ国ほどこの兵器がもたらすものを知る国はなく、
我々は一緒に「核のない世界」を追求しなければならない。これは我々に共通する
安全保障の基礎であり、共通の人間性を試すものだ。我々の将来はどちらに転ぶか
分からない不安定な状況だ。

 はっきりさせよう。核兵器が存在する限り、米国は韓国や日本を含む同盟国の防
衛を保証する強力で有効な核抑止力を維持する。

 だが、この地域での核武装競争は数十年の成長と繁栄を阻害しかねない。だから
我々は核拡散防止条約(NPT)の基本的な取り決めを支持するよう呼びかける。
すべての国は原子力の平和利用の権利を持ち、核兵器保有国は核軍縮に向かう責任
がある。核兵器を持たない国は断念する義務を負う。その道を進めば真の平和と力
強さがもたらされる。日本は実にその好例だ。数十年にわたり日本は核兵器開発を
拒絶する一方で原子力の平和利用の恩恵を享受してきた。そしてそれは日本の安全
保障と地位を高めた。

 我々が責任を果たし、私がプラハで示した計画を前進させるため、我々は日本の
支援も得て、国連安全保障理事会決議を満場一致で採択した。我々はロシアと核兵
器保有量削減の新たな合意を探る。核実験禁止条約の批准・発効に向け努力する。
そして来年、「核安全保障サミット」では、悪用されかねない核物質の安全を4年
以内に確保する目標を前進させる。

 以前にも言ったとおり、グローバルな核不拡散体制の強化は特定の国家を名指し
することではない。すべての国が自らの義務を守ることがカギになる。それはイラ
ンも含む。北朝鮮も含む。

 何十年にもわたり北朝鮮は対立と挑発の道を選んできた。核兵器の追求もその一
環だ。その道が、どこに向かうかをはっきりさせなければならない。我々は平壌に
対する制裁を強化してきた。彼らの大量破壊兵器に関する活動を制限するため、こ
れまでで最も広範囲な国連安保理決議を採択した。我々は脅迫に屈しないし、言葉
だけでなく行動で明確なメッセージを送り続ける。つまり、北朝鮮が国際的な公約
を履行しなければ、北朝鮮の安全保障は強化されるのではなく、弱体化する、と
(伝える)。

 だが、別の道を取ることもできる。仲間と連携しながら、同時に直接対話で補完
しながら、米国は北朝鮮に異なる未来を提供する用意がある。自国民への恐るべき
抑圧をもたらした孤立ではなく、北朝鮮は国際社会への仲間入りという将来を選ぶ
ことができる。

 逃げ道のない貧困ではなく、経済的な機会に満ちた将来を選ぶことが可能なの
だ。それは貿易や投資、観光によって、北朝鮮の人々により良い生活をもたらすこ
とができる。不安定が増幅する代わりに、より安定と尊敬を集める未来が実現可能
になる。
 この尊敬は好戦的な態度では獲得できない。それは国際的な義務を果たし、国際
社会の一員となることで、手に入れなければならない。

 北朝鮮が、この未来を実現するための道ははっきりしている。6カ国協議に復帰
することだ。過去の合意を順守し、核拡散防止条約(NPT)に戻り、朝鮮半島を
完全で検証可能な形で非核化することだ。

 そして隣国との完全な関係正常化は、日本の拉致被害者について、被害者の家族
に完全な形で説明することによってしか実現しない。これらは北朝鮮政府が自国民
の生活を改善し、国際社会に加わる意志があれば、すべて可能な措置だ。

 この課題には用心深く立ち向かう。同時に21世紀の国境を越えた脅威と対峙(た
いじ)するため、我々はアジアのすべての仲間と足並みをそろえる。罪のない人々
を殺りくする過激派を根絶し、シーレーンを脅かす海賊を阻止し、感染症を食い止
める取り組みを強化し、我々の時代のうちに極端な貧困を撲滅するべく努力する。
現代の奴隷制度といえる人身売買を永久にできないようにするため、女性、子供、
移民を食い物にする業者を封じる。

 そして、もう一つ協力しなければならない分野は人間の基本的な人権と尊厳を守
ることだ。

 アジア太平洋地域は多くの文化に恵まれている。驚くべき伝統と、しっかりとし
た歴史がある。この地域の人々の才能と活力により人類が進歩した例は枚挙にいと
まがない。一方、固有の文化や経済成長にとって人権の尊重が障害にならないこと
も明白である。むしろ人権の尊重により、それらは強化される。人権を支持するこ
とは、どのような方法でも買えない持続的な安定をもたらす。日本の民主主義も、
米国の民主主義もその例である。

 自由と尊厳の切望はどの国民にとっても共通だ。自由な意見表明、指導者を選ぶ
権利、情報へのアクセス、信教の自由、公平な裁判は人類共有の願望だ。これらは
安定への障害ではなく、礎である。我々は常にこれらの権利を求める人の側に立
つ。

 我々のビルマ(ミャンマー)に関する新しい政策にも当てはまる。善意に基づく
長年の米国の制裁も、他国の関与も、ビルマの人々の生活を改善させてこなかっ
た。このため我々はビルマの指導部に対して、民主化に向けて確固たる措置がなけ
れば既存の制裁は外さないと直接伝えている。統一され、平和で繁栄し民主的なビ
ルマを支持する。ビルマがその方向に動けば米国との良好な関係が実現可能だ。

 取らなければならない措置は明確だ。(民主化運動活動家の)アウン・サン・
スー・チー氏を含むすべての政治犯は無条件で解放されなければならない。少数派
との対立を終わらせなければならない。政府、民主野党、少数派による将来に向け
た誠実な対話も必要だ。そうすることによりビルマの政府は人々の願いに応えられ
るようになる。ビルマに真の安全保障と繁栄をもたらす道だ。

 アジア太平洋の繁栄、安全、人間の尊重を改善するために米国が取る措置もあ
る。それは我々の地域の要石である日本との密接な友情を通じて実行する。本日お
話ししたようにパートナーとして取り組む。地球上のこの地域で一時期育った大統
領が率いる「太平洋国家」として、取り組んでいく。過去50年間、我々と日本の
人々を結びつけてきたのと同じ目的意識のもとで実行する。

 日本との結びつきが生まれた物語は20世紀の半ばまでさかのぼる。太平洋戦争の
戦火がやんだ後、日本の安全と安定に向けた米国の関与と、日本の人々の粘り強く
勤勉な精神により「日本の奇跡」と呼ばれる経済成長が実現したのはこのころだっ
た。当時としては世界のどこよりも速く力強い成長だった。

 その後の数年、数十年で奇跡は地域全体に広がり、たった1世代で何百万人もの
生活と運命が永久に好転した。その進歩は苦労して手にした平和によって支えら
れ、この広く横たわる地域の国々を結びつける相互理解の新しい架け橋によって強
化されてきた。

 だが、まだ残された仕事はある。科学技術の革新が太平洋両岸で雇用を生み出
し、温暖化する地球を守るようにしなければならない。殺人的な兵器の拡大を止
め、分断された(朝鮮)半島では南の人が恐怖から解き放たれて暮らせるよう、北
の人が欠乏から解き放たれて暮らせるようにしなければならない。

 若い女性が身体ではなく、精神によって評価されるように、若い人が各自の才能
と活力と選択が許す限り、どこまでも行けるようにしなければならない。

 これらは容易には実現しない。後戻りや苦闘なしでは済まないだろう。しかし、
この再生の時に、この奇跡の国で、歴史は我々にそれが可能だと教えてくれる。こ
れが米国の指針だ。これが日本との、そしてこの地域の国や人々とのパートナー
シップの目的だ。

 疑う余地はない。米国初の太平洋(出身の)大統領として、太平洋国家・米国は
この極めて重要な地域で指導力を強化し、持続すると約束する。ありがとう。