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中国と米国は本当に接近したのか? JBpress 10-01-25 3:28 PM

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中国と米国は本当に接近したのか?
G2・米中戦略対話という幻想 中国株式会社の研究∼その19
2009年08月07日(Fri) 宮家 邦彦

 「米中頭越し外交」というトラウマが最近再び日本で蔓延し始めた。7月下旬ワシントンで開かれた米中戦
略・経済対話に関する本邦各紙の報道がそれを証明している。今回のトラウマはかなり重症のようで、第一線
の経済・外交専門記者ですら例外ではない。今流行の米中「G2」論の実態を検証してみよう。

報じられた「深化する米中関係」

 最近の本邦主要紙に見られる最近の「米中関係の進展」に関する報道を
要約すれば、次のようになる。

(1)最重要の2国間関係
オバマ大統領の「米中関係は世界のどの2国間関係よりも重要」とする発
言は「G2時代」の到来を予感させる。

(2)米中協力・対話の深化
今回米中が議論した分野は金融・経済問題だけでなく、気候変動、核不拡
散、中東和平、イラン、北朝鮮など広範にわたり、両国の戦略的な対話・
協力関係は急速に深化している。

米ワシントンD.C.での米中共同記
(3)米中関係の対等化 者会見中、バラク・オバマ米大統
今回の対話では大量の米国債を握る中国が主導権を握り、米国が「強気」 領のサイン入りバスケットボール
の中国に対し「配慮」をにじませるなど、米中の攻守が逆転しつつある。 を掲げる中国の王岐山副首相
(2009年7月28日)〔AFPBB
News〕
 こういったところだろう。しかし、本当にそうだったのだろうか。これ
らを一つひとつ検証してみよう。

オバマは「最重要の2国間関係」と言ったのか

 答えは否である。今回オバマ大統領は米中関係について「as important as any bilateral relationship in


the world」と述べただけだ。「誤訳」というよりは、むしろ「誤報」に近い。不幸にも配信元が有力通信社
だったこともあり、日本では誰もが信じて疑わなかったのだと思う。

 恐らく、このオバマ発言を聞いて最も落胆したのは出席していた中国側
要人たちである。当然だろう。これまで中国国営メディアは、昨年11月の
当選直後の電話会談と4月のG20での会談の機会にオバマ大統領が胡錦濤
総書記に対し「米中関係は最も重要な関係だ」と述べた旨繰り返し報じて
きたからだ。

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きたからだ。

 中国にしてみれば、今回のオバマの発言は明らかに「トーンダウン」
だった。しかも、大統領就任以降のどの公式文書を見ても、オバマが対中
関係を「最重要の2国間関係」と明言した記録はない。今頃、中国外務省 「米中戦略・経済対話」の開幕式
で演説を行うバラク・オバマ米大
の対米外交関係者は大目玉を喰らっているかもしれない。 統領(2009年7月27日)〔AFPBB
News〕
 それにもかかわらず、日本だけでなく、欧州、韓国、インドなどのメ
ディアは米中関係が緊密化したと大々的に報じていた。そうだとすれば、
米中関係の実態はともかく、今回中国側のプロパガンダ、イメージキャンペーンは予想以上の成功を収めたと
言うべきだろう。

「G2時代」は始動したのか

 そもそもG2とは何か。世界が直面する諸問題の解決には「米中間の協力
が不可欠」とするこのアイデアは、昨年の金融危機以降一般にも知られる
ようになった。

 その提唱者を調べてみると、フレッド・バーグスタイン、ヘンリー・
キッシンジャー、ズビグネフ・ブレジンスキー、ロバート・ゼーリックと
いった多くのパンダハガー(親中派)たちの名前が並ぶ。

 これだけ親中派が揃えば、当然反対者も多い。中国との関係を格上げし 中国・北京での会談時に握手する
ても問題の解決にはならない。米中間には基本的利益、価値、能力に相違 故毛沢東国家主席とヘンリー・
があり過ぎ、現実問題としてG2は機能しない。今の米中がG2なら、冷戦 キッシンジャー米大統領補佐官
(当時、1973年11月24日撮影)
末期の米ソもG2ではないか。こう主張する有力意見も少なくないのだ。 〔AFPBB News〕

 各種報道によれば、今回の米中戦略・経済対話では一定の成果があった
とされている。具体的には、米中両国は今回の戦略・経済対話を新たな関
係発展に向けた主要な一歩と位置づけたうえで、

●今年中にオバマ大統領訪中、両国軍の交流拡大、人権対話開催を実現す

●米国は貯蓄率向上に、中国は内需拡大にそれぞれ努力する
●米中は金融システム改善で協力し、保護貿易に反対する
●両国は気候変動対策、クリーンエネルギー開発などで利益を共有する
●政治問題を長時間議論し、テロ反対の立場を再確認するとともに、核不
拡散などでも協力する

大気汚染でかすむ中国の首都北京
ことなどにつき合意したという。それぞれ大変結構な話で、特に異論はな の車道と歩道橋(2009年6月29日
い。しかし、米中が発表した膨大な関連文書を読んでみても、両国間の 撮影)〔AFPBB News〕
様々な分野で「対話と協力の拡大」に合意した以外、貿易黒字、温室効果
ガス排出、人権、チベット、ウイグルなどの諸懸案について具体的な進展
はほとんどなかったのではないか。

G2など中国にとっては迷惑な話?
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 中国側もその点は織り込み済みだったと思う。最近ごく親しい中国の友人とじっくり話す機会があったが、
今回の米中戦略対話に関する彼の評価は日本のマスコミ報道とは大きく異なっていた。要約すれば次の通り
だ。

(1)米中間に広範な対話が必要なのは、両者が信頼し合っているからではなく、あまりに多くの意見の相違
があるからに過ぎない。

(2)米中間の見解の相違は非常に大きく、1回や2回の会合で両者の溝が埋まることは決してない。

(3)米国は中国に聞こえの良いことばかり言うが、最後は、中国よりも日本を尊重することは間違いない。

(4)「G2」論など中国にとっては有難迷惑な話であり、むしろ、中国に特定の政策を押し付ける陰謀だとす
ら思っている。

 実に現実的で醒めた見方ではないか。それだけではない。ヒラリー・
クリントン、ティモシー・ガイトナー両長官も、27日付ウォールスト
リート・ジャーナル紙への共同寄稿文の最後で次のようにわざわざ釘を
刺している。

 「米中が常に解決策に合意できるとは限らず、我々は米中間の意見の
相違を率直に認めなければならない」

「米中戦略・経済対話」の開幕式
 「米国は中国が重要なパートナーとなるよう働きかけるが、同時にア
に出席したヒラリー・クリントン
ジアおよび世界の長年の同盟国・友好国と引き続き緊密に協力してい 米国務長官(左)とティモシー・
く」 ガイトナー米財務長官(2009年7
月27日)〔AFPBB News〕

 筆者もこれが今回の米中戦略・経済対話の実態だったと思っている。

米国は中国に配慮したのか

 それでは最後に、今回の戦略・経済対話で実際に米中の「攻守」が逆転したか否かを検証しよう。

 確かに現在中国の米国債保有高は1兆5000億ドルもあり、今回中国は米国の金融・経済政策にかなり「注
文」をつけたと言われる。これまでの米中対話が、どちらかといえば中国の経済政策や人権問題で「攻め
る」米国と「逃げる」中国の鬩(せめ)ぎ合いであったことを考えれば、真に隔世の感がある。

 しかし、ドル暴落の最大の被害者は中国自身であり、中国が本気で金融・経済問題につき米国を追い詰
めるとは到底思えない。しかも、経済以外の分野では、中国は引き続き注文をつけられる側である。今回
米側に一定の「配慮」があったとしても、それはレトリック以上のものではなかろう。

 「配慮」といえば、今回印象深かったのは中国側の米国マスコミに対する
異常なほどの「気配り」だ。

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 中国側には苦い思い出がある。3年前の胡錦濤訪米では、ホワイトハウス
での式典で米国メディア関係者の不規則発言に大いに悩まされたからだ。

 今回、中国代表団を率いた王岐山副首相と戴秉国国務委員は共同記者会見
における謝辞の中でそれぞれ、「特に、我々のメディアの友人に感謝した
い、皆さんの支援で米中の対話は進展した」とか、「プレスの友人を含むす
べての関係者に感謝する、メディアは米中友好関係を増進させることができ
る」などと繰り返し述べていた。

 涙ぐましいほどのマスコミ対策だが、これこそ今回中国側が、米国との対 今から3年前、コンドリー
話の中身以上に、米国メディアの報道ぶりに気を使っていたことを示すもの ザ・ライス米国務長官(当
時)と握手する胡錦濤国家主
だ。こんな小細工で欧米のマスコミをコントロールできるとでも思っている 席〔AFPBB News〕
のだろうか。もしそうであれば、「G2」などまだまだ先の話である。

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