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中国の狙いは「中華帝国」の復活? JBpress 10-01-25 2:59 PM

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中国の狙いは「中華帝国」の復活?
「中台統一」の日に備えよ(前篇)
2009年07月15日(Wed) 阿部 純一

 「Never say never」という箴言(しんげん)がある。「絶対ないとは言うな」の意だが、台湾が「中国」


に取り込まれること、つまり「中台統一」の実現にもこの言葉が当てはまる。

 中台統一はこれまで「限りなく不可能に近い」と考えられてきた。民主体制下にある台湾の人々が「共産党
の独裁下にあり言論の自由もない中国」との「統一」など、望むはずがないからだ。

 よって、もし「統一」があり得るとするなら、それは中国による「武力統一」ということになるのだが、そ
の場合、中国に十分な揚陸作戦能力がないこと、台湾空域で台湾側が航空優勢を確保していること、さらに
「台湾関係法」に基づき、米国が台湾の安全保障にコミットしていることを勘案すれば、中国による「武力統
一」も、限りなく不可能に近いのが現実だと考えられてきた。

 だが、経済面に限って言えば、中国と台湾は急速に緊密な関係を築きつつある。経済面での接近が政治面に
も波及していくことは十分に予測できる。仮に中台統一が実現されたら、東アジアの安全保障環境は大きな変
化に見舞われ、日本も対応を迫られることになる。

 今回は、前篇と後篇に分けて、中台統一の現実性と日本への影響を考えてみたい。前篇では、中台統一を巡
る中国の思惑を明らかにする。後篇では、中台統一が実現された場合、東アジアの安全保障環境がどのように
変化するのか、そして日本がどのような対応を迫られるのかを検討する。

経済面で大陸への依存度を高める台湾

 2000年以降、中国と台湾は経済関係を急速に強化している。李登輝総統時代の1990年代は、台湾は大陸と
の経済関係において「戒急用忍」政策を取り、大陸への依存度が過度に高まることを警戒していた。しかし、
2000年に台湾で陳水扁政権が誕生すると、アジア通貨危機以来の不況下にあった台湾経済を活性化させるた
めに、大陸への積極的な投資を奨励する「積極開放、有効管理」政策を取った。

 その結果、台湾は、貿易における大陸への依存度が2007年に40%を超えるまでになってしまった。もちろ
ん中国が最大の貿易相手国であり、大陸に台湾のビジネスマンが100万人以上駐在するという事態となったの
だ。

 陳水扁政権は、2006年には政策を「積極管理、有効開放」に切り替えたが、台湾経済の大陸依存への流れ
を変えることはできなくなってしまっていた。

 2008年3月の総統選挙で馬英九が「中台共同市場」を選挙公約に掲げ、地すべり的勝利を収めた背景には、
こうした経済的な「中台一体化」という人心にとって抗し難い現実があった。

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 その馬英九政権の成立から早くも1年が経過したが、中台の懸案であった「三通(通商、通航、通郵)」が
2008年末に実現し、当初週末限定のチャーター便だけだったのが、2009年7月から週に270便の航空定期便
が両岸を結ぶこととなった。

 馬英九政権下で、いわば「政経分離」の形で急速に両岸が接近したことにより、結果的に中国側の台湾「独
立」懸念が大きく緩和されることとなったのは、むしろ当然のことであった。

 中国と台湾は次の議題として、事実上の自由貿易協定を目指す「両岸経済合作架構協議(ECFA)」まで踏
み込もうとしている。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に自由貿易協定のネットワーク化が進む東アジアの中で、台湾は経済
的孤立化を恐れている。中国とのECFAはそのネットワークへの参加を可能にするものとして、台湾内部で支
持されている。

 だが、経済の文脈だけでECFAを捉える台湾に対し、中国はこれを将来の「統一」への政治的布石と考えて
いるのは間違いない。

中国も台湾も「統一」の可能性を示唆

 今年1月に公表された中国の国防白書『2008年 中国の国防』では、台湾問題を巡る環境の好転ぶりが強調
された。

 白書には次のように記述されている。「『台湾独立』分裂勢力の『台湾の法理的独立』の企みが粉砕され、
台湾海峡の情勢には重要かつ積極的な変化が生じており、両岸双方は、『九二共通認識』という共同の政治的
基盤を踏まえて協議を回復し、それが進展を遂げ、両岸関係には改善と発展が見られるようになった」

 若干説明を追加すれば、「法理的独立」とは、中国全土を領土と規定した中華民国憲法を破棄して、台湾の
実効支配地域に統治を限定した新憲法を公布することによって、中華民国体制を「台湾化」しようとすること
を指す。

 「九二共通認識」とは、中国側も台湾側も、それぞれが「中華人民共和国」あるいは「中華民国」を念頭に
置きつつも、「1つの中国」として共通の認識に立つことを意味する。

 中台の経済的接近と比べ、政治関係にまだ大きな動きは見られない。ただし、馬英九総統はこれまで「不
統、不独、不武(統一せず、独立せず、武力行使せず)」を政策として掲げてきたが、台湾の『天下雑誌』
(424期)のインタビューで、「不統は統一という選択肢を排除するものではない」と述べ、将来の「統一」
への可能性に言及した。

 ここで含意される「統一」とは、中台合意の下での平和的「統一」である。そのことは経済の中台一体化が
もたらす1つの帰結ということになる。

 もとより、中台の交渉による平和「統一」がそう簡単に実現するとは思えない。しかしながら、それ以前の
もっと早い段階で軍事的対峙の関係が緩和され、中台双方の軍事交流が活発に行われる可能性はあり得る。そ
うした事態の展開こそ、東アジアの安全保障環境を大きく変容させることになる。

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中国はこのままでは「貧しい経済大国」に

 中台が「統一」ないしはそれに近い状態になった場合の影響を考えるにあたり、まず中国自身がどのような
将来像を構想しているかが明らかにされなければならない。

 なぜなら、その将来像の性格によって、日本にとっての中台統一の意味が大きく異なってくるからだ。

 中国は1978年末の「第11期 三中全会(中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議)」以来、経済建設を
国家の最優先課題に位置づけ、「改革開放」政策を推進し、市場経済化を進めてきた。以来30年間、平均して
毎年10%近い成長を続け、2007年にはドイツを抜いてGDP規模で世界3位にまで躍進した。ここ1∼2年のう
ちに日本を抜き、世界2位になることは間違いない。

 しかし、その成長の勢いが今後も長く続くかといえば、そうはならない可能性が高い。

 というのも、中国は2015年をピークに、生産年齢人口が下降局面に入るとともに、社会の急速な高齢化が
進むからである。そこから導けることは、中国の高度成長が持続するのは、せいぜい2020年頃までであっ
て、それ以降はほぼ確実に成長が鈍化することになる。

 中国は長期目標として、2020年までに「全面的な小康社会を実現」しようとしている。その目標値は1人当
たりGDP4000ドルである。現在すでに3000ドルをクリアしているから、かなり前倒しで4000ドルの目標値
に到達できるだろう。

 しかし、2020年までに達成できるのはせいぜい6000ドル程度だろう。もちろん為替を操作して元高にすれ
ば、この数字はもっと高くできるだろうが、その分、中国の国際競争力は削がれ、成長率を押し下げることに
なる。

 ここで言わんとするところを簡潔に述べれば、中国は貧しいまま高齢化社会を迎えると同時に、世界は「貧
しい経済大国・中国」に対処しなければならなくなる、ということである。「貧しい経済大国」は、権益の拡
大を貪欲に求め続けるだろう。

「中華民族の偉大な復興」を急ぐ中国

 2002年の中国共産党16回党大会において、退任を控えた江沢民総書記は大会報告の中で「中華民族の偉大
な復興」を提起した。これが具体的に何を意味するかが問題である。

 「復興」という表現から理解できることは、中国の過去の栄光を再現することが目指されているということ
であり、欧米列強に浸食された屈辱の近代史以前の「栄光ある中華帝国」を再現することが含意されているの
かもしれない。

 米ソ冷戦時代から、中国は「世界は多極化の趨勢にある」という認識を示してきた。これは国際社会の構造
変化を中国から見た分析であるとともに、「願望」の提示でもあった。

 冷戦終結後、中国は世界の構造を「一超多強」と表現し、米国の突出した存在を認めてきたが、自らも「多
強」の中に含め、超大国・米国を「覇権主義、強権政治」として牽制することで「多極化世界」を望ましい世
界像としてきた。

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 また中国は、1980年代末には「公正で合理的な国際政治経済新秩序」を提唱し始めた。その頃、中国は南
シナ海の南沙諸島の実効支配に乗りだしてきたことから見ても、中国の海洋権益の確保に絡めた中国中心の地
域秩序形成の試みと考えられた。

 1990年代に入ると、安保対話の場であるASEAN地域フォーラムや、中国が中心になって組織した上海協力
機構(SCO)を高く評価し、多国間の協調的安全保障を重視する姿勢を「新安全保障観」と位置づけて称揚す
るようになる。同時に、東アジアの安全保障秩序を支えてきた日米同盟のような2国間の軍事同盟を「冷戦の
残滓」として排斥する姿勢を鮮明にしてきた。

 このような中国の国際秩序観、安全保障観から導き出されるものは、「中国が米国中心の国際秩序を嫌い、
自国中心の新たな国際秩序形成に意欲的である」という事実だろう。

 その願望を実現するために必要なのは、米国に対抗し、その影響力を排除し得る軍事力の整備ということに
なる。

経済成長あっての「富国強兵」

 中国は1989年から毎年10%以上の伸びで国防予算を拡大してきた。21年連続して拡大してきた結果、ス
トックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、中国の国防費は米国に次ぐ世界第2位であると評価するまでになっ
た。

 2007年、胡錦濤総書記は党17回大会報告で、「国の安全保障と発展の戦略的全局の見地に立って、経済建
設と国防整備を統一的に考え、富国と強軍の統一を実現しなければならない」という「富国強兵」政策を言明
した。中国がまさに米国に対抗し得る軍事力の整備に取り組んでいるということが分かる。

 ただし、国防費を急速に拡大できたのは、それを支える経済成長があったからで、そう考えると「富国強
兵」政策を推進することができる時間的猶予はあまりない。

 2015年から2020年までに、中国がどれほどの軍事的実力を手にすることができるかが問われることにな
る。その意味で、2020年頃を目標に中国が空母を戦力化しようとしているのは示唆的である。

 台湾が中国に取り込まれた時のことを予測する場合は、以上のような中国の思惑を理解しておく必要があ
る。

 後篇ではそれを踏まえて、中国が台湾を取り込んだら東アジアの安全保障環境はどうなるのか、そして日本
はどのように対応すべきなのかを考えてみたい。

(後篇は7月22日に掲載します)

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