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中国はなぜ核軍縮に冷淡なのか JBpress 10-01-25 3:06 PM

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中国はなぜ核軍縮に冷淡なのか
中国の核技術は60年代の米国レベル
2009年08月17日(Mon) 阿部 純一

 今年も広島、長崎で原爆犠牲者を悼む平和式典が行われた。

 64回目になる今年の式典に米国代表の姿はなかった。米国は原爆の投下を「戦争の早期終結のため」と正当
化してきた手前、平和式典への出席に極めて消極的だった。

 オバマ大統領は2009年4月のプラハ演説で原爆投下の「道義的責任」に言
及し、「核兵器の廃絶」を訴えた。米国内の保守派はオバマ大統領の演説
を批判したが、今年の広島、長崎での平和式典では、この画期的なオバマ
演説を支持する言及がなされたのはむしろ当然であった。

 広島市の秋葉忠利市長に至っては、核廃絶を支持する自分たちを「オバ
マジョリティー」と表現し、その主張が多数派であることを強調した。確
かに、今年7月に開催されたラクイラ・サミットでも核兵器廃絶への支持
声明が出されていたから、核兵器廃絶の主張は「多数派」を形成している
のかもしれない。

 しかし、現実の世界は核兵器の廃絶どころか、核軍縮でさえ容易ではな
64回目の「原爆の日」、2020年
い。 までの核兵器廃絶を訴え〔AFPBB
News〕
 ラクイラ・サミットの直前、ロシアを訪問したオバマ大統領は、ロシア
のメドベージェフ大統領と会談。2009年12月5日に期限が切れる第1次戦
略兵器削減条約(START1)に代わる、戦略核の新たな包括的削減条約の年内締結を目指し、米ロ双方の戦略
核弾頭を1500∼1675発に制限することで合意した。

 2002年5月に米ロが締結したモスクワ条約では、2012年までに双方の配備する核弾頭を1700∼2200発ま
で削減することが取り決められていたから、核軍縮の若干の進展があったと評価できるかもしれない。だが、
削減はごくわずかであり、核兵器廃絶までの道のりが果てしなく遠いことが分かる。

虎視眈々と核戦力の近代化を進める中国

 米ロが他の核保有国を圧倒する核戦力を持ち、そのバランスの中で核軍縮を進めている一方で、虎視眈々と
核戦力の近代化を進めているのが中国だ。

 2009年6月、中曽根弘文外相はG8外相会議で「中国だけが戦略核兵器を増強している」と名指しで批判し
た。確かに中国は日本を射程に収める核ミサイルを多数配備しており、日本にとっては北朝鮮以上の脅威であ
るのは紛れもない事実である。

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中国はなぜ核軍縮に冷淡なのか JBpress 10-01-25 3:06 PM

 核軍縮への国際圧力が高まる中で、なぜ中国は核戦力の近代化を進めているのか。

 中国の核兵器に対する考え方は複雑だ。毛沢東は米国の原爆を「張子の虎」だと軽視を装いつつも、米国の
核の威嚇に対抗するためには中国も核武装が必要だと自覚していた。中ソ対立によって、中国は自力で核兵器
開発を進めざるを得なかったが、1964年10月、最初の核実験に成功し、核保有国として名乗りを上げた。

 しかし、その時点ですでに米ソの核戦力は巨大化しており、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾
道ミサイル(SLBM)、そのプラットフォームとなる原子力潜水艦(SSBN)の配備を開始していた。中国は米
ソの核戦力と比較し、絶望的なまでに大きく水をあけられていた。

 中国は経済的に極めて貧しい中で、「ズボンを穿かなくても核兵器を作ってみせる」(当時の陳毅外相)と
いう意地で核兵器を保有した。そんな中国にとって、米ソのような核超大国を目指す意図はもともと持ち得
ず、いわばマイペースで核戦力の近代化を進めてきたのである。

秘密のベールに閉ざされた核戦力

 孫子の兵法に「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という一節がある。中国はそれを肝に銘じているの
か、軍事にかかわる数量データは秘密にしたがる伝統があり、通常戦力においても総兵力さえ明らかにしてい
ない。

 中国の軍事にかかわる不透明性は今に始まった話ではない。小規模な核戦力を効果的に見せるためには、核
戦力を秘匿することが有効だと中国は考えたのだろう。核拡散防止条約(NPT)で定義されている核保有国5
カ国のうち、中国の核戦力だけが秘密のベールに閉ざされている。

 もちろん、戦略核ミサイルは軍事パレードでは公開されてきたが、保有する核弾頭数、ミサイル配備数など
核戦力のデータは一度も明らかにされたことがない。

 だから、西側の偵察衛星から得られたデータなどによると思われる、一般に流布している中国の核戦力に関
するデータにはばらつきがある。しかし、そのばらつきは大きなものではなく大同小異であることから考え
て、概ね正しい情報と見なしてもよいだろう。

中国の核戦力は40年以上前の米国の技術水準

 その前提に立って中国の核兵器を評価してみよう。まず規模の点で言えば、保有する核弾頭は200発前後。
核保有国5カ国の中では英国と同規模で、最も少ない。

 戦力構成は、地上発射弾道ミサイルに圧倒的なウエイトがある。他の核保有国が押しなべて重視するSLBM
に関しては、「巨浪1号(JL-1)」を搭載する「夏(Xia)」級ミサイル原潜がパトロール任務についている形
跡がないことから、戦力として機能していないと判断されている。

 また、新型の「晋(Jin)」級ミサイル原潜2隻が映像情報で確認されているが、それに搭載される見込みの
「巨浪2号(JL-2)」SLBMは依然として開発中であり、発射実験などの情報もない。また、中国は米国のB52
やB1、B2のような戦略爆撃機にカテゴライズされる航空戦力は保有していない。

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 現在の中国の核戦力が約130基の地上配備弾道ミサイルにほぼ集約できること、またそのミサイルも単弾頭
でMIRV(複数個別目標再突入弾頭)化されておらず、「東風5号」ICBMなど中・長距離の弾道ミサイルが即
応性に劣る液体燃料ミサイルであることなどを勘案すれば、その技術水準は1960年代前半の米国のレベル程
度であろう。つまり中国は、米国から40年以上の遅れで核戦力の近代化を進めていることになる。

 しかも中国は96年7月に45回目の核実験を実施して以来、核実験をしばらく停止したままである。同年9月
に国連で包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択され、中国も署名国に名を連ねた以上、いまだ批准していな
いとはいえ、核実験を再開するわけにはいかない。CTBTは未発効であり、発効のめどは立っていないが、署
名国は条約の発効いかんにかかわらず条約を順守することが求められているからだ。

 中国の45回という核実験の回数は、米国の1030回、ソ連の715回と比べ、圧倒的に少ない。これは核弾頭
の開発、とりわけ小型化を進める上で絶望的である。

 中国の保有する核弾頭で最も小型のものは「東風21号」(前述の「巨浪1号」の地上配備型中距離弾道ミサ
イル)に搭載されている600キログラムである。米国のトライデントSLBM(MIRV)が搭載しているW88弾頭
(360キログラム未満)やトマホーク巡航ミサイル用W84弾頭(176キログラム)のような小型弾頭を開発す
るためには、核実験の再開が必要不可欠だろう。

 最近、中国が開発した巡航ミサイル「東海10号(DH-10)」を米国防省の「中国軍事力レポート」では射
程距離を1500キロメートル以上とし、核搭載可能と推定している。しかし、トマホークと同様のサイズな
ら、同様に小型化した核弾頭を搭載しなければならない。核実験を停止している中国に、巡航ミサイルに搭載
し得る核弾頭製造の技術はない。

だから核軍縮どころではない

 中国の核戦力の現状がこの程度であるとすれば、現在の米国やロシアの核戦力に比肩すべくもない。よって
「核軍縮は中国が関与する以前に、核大国である米ロが進める責務がある」というのが中国の主張である。

 先に挙げた米ロ間で合意された、双方の核弾頭を1500∼1675個程度に削減するSTART1の後継条約案を見
ても、中国の現有核戦力と比べれば両国の保有数ははるかに大きい。

 ただし中国は、オバマ大統領の核兵器廃絶提案については、その理念や思想に同調するふりはするだろう。
核廃絶は、中国自身も一貫して主張してきたからだ。

 しかし、ありそうにない話だが、もし核保有国がすべて横並びで一斉に核を廃絶するということが議論され
るようなことがあれば、中国はそれに強硬に反対するだろう。なぜなら、核兵器の存在しない世界が実現すれ
ば、通常戦力でダントツの米国が絶対的優位を占めるからだ。

 中国にとって、基本的に確保しなければならないのは対米抑止力であり、核兵器の保有はまさにそのためな
のだ。

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