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Summary of ”Assessing the Functioning of Land Rental Markets

in Ethiopia
後藤 潤∗

2010 年 6 月 28 日

1 背景と問題意識
1.1 社会的背景

• 飢餓と食糧援助への依存に悩むエチオピアにとって、「農地の生産的利用」は喫緊の課題。
• 農業所得への依存度が高い地域における「農地貸借市場の活発化」は、農業への比較優位を持たない家
計の非農業雇用機会への就業を促し、農村部の発展と所得源の多様化に貢献。
• エチオピアにおける貸借市場での取引形態は、農業生産リスクを反映して分益小作制度*1 が多い。

1.2 問題意識:エチオピアの農地貸借市場における二つの非効率性

1.3 分益小作制度

• エチオピアに限らず途上国では貸借取引として分益小作制度が広くみられるにもかかわらず、この制度
下における農地耕作が非効率を生むのか*2 、あるいはそうでないのか結論がでていない。
• 契約形態における選択のセレクションバイアスの克服を前提に、大量の個票データを用いたミクロ計量
分析が必要とされている。

1.4 農地貸借市場における摩擦
• 農地貸借市場は農工間の労働移動を促進し、より生産的な農家へ農地を集約するといわれる。したがっ
て理論的には perfect informatioin, complete markets, zero transaction costs という条件下では農家
の耕作面積は最適水準であるはず。しかし、現実には不確実性、耕作者の能力、労働・信用市場の不完
全性などが原因で農地貸借市場が機能せず流動性が阻害されてしまう。
• そこで、農地貸借市場が社会的に最適な保有規模を実現するのか、その機能を規定する要因は何かの解

∗ 東京大学 農学生命科学研究科
*1 地主が土地を小作に貸す代償として収穫の一定比率 α を受け取り、小作が収穫の残りを手元に残す契約。
*2 マーシャルの非効率仮説とよばれる。分益小作制度下では小作の生産意欲が損なわれ、自作農の場合と比べ、投入財の使用量が小

さくなり、社会的に非効率な資源配分となりうる。

1
明が重要となる。
• しかし、エチオピアでは貸借市場の効率性に関して frictionless adjustment(Pender and Fafchamps
2006)や partial adjustment (Tekluand Lemi 2004 etc.) など矛盾する結果がでており、未だにコンセ
ンサスは得られていない。

2 課題と方法
2.1 仮説
• 仮説 1:分益小作は非効率的か(マーシャルの非効率仮説の検証)
• 仮説 2:貸借取引によって最適な農地保有規模を達成しているか。

2.2 データと識別戦略

2.3 仮説 1

• 先行研究では利用されていない大規模なパネルデータ(99、01、04)用いて検証。圃場ごとのデータ
あり。
• 家計特有の特徴が分益・自作の契約選択に影響するという「セレクション・バイアス」が存在。これに
対処するため、同一家計内で分益と自作の圃場を同時に保有しているサンプルを対象に、単収や投入量
を比較し非効率性を検証。

2.4 仮説 2

• 借入面積を被説明変数とした回帰で保有農地面積の係数が −1 ならば、最適保有規模を達成していると
仮定。
• また、家計の固有効果を経営能力として変数に使う → より生産的な家計に農地が集約されているかど
うかで貸借市場の効率性を評価。
• 要素市場の不完全性や規制の存在から、家計の factor endowments をすべて外生とみなす。

3 結論
• 分益小作制下の圃場における input と output の水準は自作の場合に比べて低く、農地の保有形態は生
産者の意思決定に影響を与えないという仮説が棄却された。 
• 「マーシャルの非効率の影響はない」という仮説を棄却。
• 摩擦の存在:地主による貸借市場を通じた最適な農地保有規模の実現を阻害 → より生産的な耕作者の
農地取得を阻み、生産性を減少させている

2
4 コメント
4.1 お持ち帰りポイント:「背景」、「問題意識」から「仮説」への流れ
• 飢餓 → 農地の生産的利用が喫緊の課題 → 耕作形態は分益小作が主流 → 分益小作の効率性検証
• 経済発展と所得源多様化 → 農工間労働移動の必要性 → 農地貸借市場の活発化 → 最適な調整

4.2 お持ち帰りポイント:「識別戦略」のうまさ
• 同一家計内における契約形態の異なる圃場に着目することで、セレクション・バイアスを克服。分益小
作に出される農地が観測不可能な質的変数に関して極端に悪いという代替仮説も棄却。

4.3 改善ポイント

• 分益小作の効率性検証と市場における摩擦分析の間の関係が不明瞭。前者は貸借市場における契約形態
の選択と締結後の非効率性に関する問題。後者は貸借市場を通じて最適な農地規模を実現するに当たっ
て存在する障壁の分析である(契約形態は直接関係ない)。
• 「農地貸借市場の機能解明」という共通の問題意識から、必ずしも密接に関連しない複数のリサーチクエ
スチョンと仮説を導出して、ひとつの論文で検証するというのも実は効果的な publication strategy?
• 結果の解釈が不十分。たとえば分益小作で非効率性が生じるメカニズムは household specific charac-
teristics をすべてコントロールする識別戦略がゆえに不問(リスク?市場の不完全性?取引費用?) →
なぜプリンシパルがエージェントの optimal effort を引き出せないのかを検証するのは事例研究の腕の
見せ所か。プリンシパル・エージェントの dyadic な関係にまで踏み込んで非効率性の原因を探ると、
より現実的な改善策が考えられないだろうか。
• 肥料価格データがないため、仮説 1 の検証で prifot function を推計できていない。農家は単収の最大
化ではなく利益の最大化をしているのではないだろうか。