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指導教官:岡崎敏雄先生

文字体系としての日本語漢字に関する研究
―日本の漢字二字熟語のからくり―

                ハファエレ・ジャファー・ソアレス・デ・リマ(ブラジル)

序論 問題 と目的
去年行われた Japan Times 新聞の調査によると、日々新しい漢字熟語が作り出されている
ことが報告された(例:爆睡や家電など)。そのことから、漢字は生産的な要素を含むこと
が伺える。
日本語を第二言語として学んでいる人たちが、未知の漢字熟語に遭遇した際、その熟語の
意味を理解することは容易なことではないだろう。
そこで、本研究では、漢字熟語が無限に作り出されていく過程において、その生成に何ら
かの規則があるのではないかという問題意識の下、漢字二字熟語を対象とした漢字の組み
合わせの構成を明らかにしていく。また、漢字の二字熟語の中で、その熟語の意味をどちら
の漢字がより多く担っているのかを検討する。それに関連して、現在の漢字教育研究では、
漢字を組み合わす際に、何らかの構造がその裏に存在していると指摘された。
(Kageyama1982; Nomura1988)

第 1 章.は じめに
 筆者は日本語の単語を勉強している中で語彙を習得するためにどのような方法を用いる
べきかを考えていた。言葉を一つ一つで覚えていく以外にも別の方法があるのではないか
考える。
我々はすべての言葉を覚えられるほど優れた記憶力がないので、自分の知っている語彙
をすべて意識的に覚えたわけではない(小野 2005)。単語を記憶にためておくということ
より、言語の造語法のプロセスを獲得するであれば、その言語の単語も分かるようになるし、
自分で新たな単語を作り出せるようになると思われる。例えば、日本人は子供のころからは、
言語の獲得をしているうちに言葉や文などを個々で覚えるのではなく、だんだん語順を覚
え、いろいろな文を自分で作れるようになったと思われる。例えば、

「わたしはーーです」、「あなたはーーです 」
「うどんを食べた」、「花をもらった 」

こうような文を一つずつ覚えるより、

1
主語+名詞+動詞

という構成を覚えるだろうと考えられる。その公式のような言語の構成は子供が獲得し、そ
の構成が分かり、文を作れるようになるのである。人間は無限個の文を作り出し、無限個の
文を理解する能力を持っている1 。更に、今まで聞いたことがある文だけではなく、今まで聞
いたこともない文も理解することができるし、また、今まで一度も発話したことがない文も
発話することができる。
 ここまで述べたことは、言語の獲得の研究では知られているが、言葉の場合もそうである
のではないかと考えられる。語の場合は子供や学者がどのように覚えられるかについてあ
まり述べられていない。語の場合は個々で学習しており、一つずつ覚えていくのが当然であ
るととられているが、果たして単語を覚える際に、人間が意識的に、あるいは、無意識的に、
何らかの構成に基づいて覚えるのではないかと考えられる。
一般的な視点で言語の獲得について述べてきたが、第二言語または外国語の学習につい
て考えてみよう。大人は、小さいときから母語を自然に獲得していくのに対し、英語やフラ
ンス語など、第二言語を学ぶには、母語のように自然に獲得するのと異なり、文法、語彙、文
字など、その言語の体系を意識して学習するからである。このため、言語のからくり(仕組
み)を理解できれば、うまくその言語を話すことができるとともに未知の語を理解できる
ことに役に立つのではないかと考えられる。
語がどのように組み立てられているかということ(語形成)は、文法のようにルールを立
てて説明することの難しいものと考えられてきた。しかし近年になって、個々の言語の語形
成がある程度ルール化できるばかりではなく、それが普遍的な原理によって規定されてい
るのだという考え方が一般的になってきた。そうした理論を日本語を題材にしてわかりや
すく説明しながら、語形成の普遍性がどのような形であるのか。それに関して、本研究では、
単語のからくり(仕組み)を探求するために、日本語の単語-とりわけ、二字熟語―漢字の組
み合わせの構成を論じる。また、漢字二字熟語において、その熟語の意味がどちらの漢字に
比重をおいているのか考察する。

第 2 章.先 行研究
 まず、本研究を進める上で、今までの日本語の漢字二字熟語の仕組みに関する用語、及び
漢字二字塾語の構成を見た研究を参考にする必要があると思われる。したがって、まず、漢
字二字熟語の仕組みの用語の扱い方を整理し、そして、漢字二字塾語の構成を検討した先行
研究を取り上げることにする。

第 2 章1節  用語の 定義 
<語・語彙>英語でいうと “word”、単語、複合など、語として扱っていく。
<複合語> 二字またはそれ以上の漢字で書かれる言葉。

2
<語構成> 語とその成分との関係、および語の成り立ちを考える際の用語である。造語法
と違い、語の静態的解剖学的な捉え方といえる。たとえば、
「頭」や「目」はこれ以上分解で き
ないから一つの自立成分から成る語(単純語)であるが、
「人差し指」は「人」
「指し」
「指」 の
三つの自立成分から成る語(合成語)である。合成語は更に「複合語」
「畳語」
「派生語」に 分
けられる。
<造語> 語彙における造語。
<形態素> 意味を持つ最小の言語単位。おおまかにいえば単語。単独で一語になる自由形
態素と、常に自由形態素に付いて生ずる拘束形態素とに分れる。

第 2 章 2 節 これま での研究
これまで、漢字二字塾語の構成についての先行研究はいくつかがあった。
まず、玉村(1985)2 によると、語は 2 種類に分かれている。まず、「手」「目」「役」「番」のように、
自立成分 1 個で出来ているのが<単純語> “simple word”である。そして、単純語と違っ
て「春風」のように<合成語>である。便に言うと、合成語の中に複合があり、複合には:
<統語構造>syntactical composition: 複数の自立成分の間に主語述語の関係、修飾語
被修飾語の関係などの統語的な関係が認められるもの(省略)「革靴」「川上 」
<並列構造>(<等位構造>)juxtapositional composition: 複数の自立成分が対等の資
格で結合していて、成分間に統語的な関係の見られないもの(省略)「手足」「親子 」
以上をまとめると、次のようになる。

図1
    単純語

語 a-1 統語構造 X+Y(川上、目白)
         a 複合語  
a-2 並列構造 X・Y(ちちはは、生き死に)

合成語   b 畳語 

c 派生語
 
         (『語彙の研究と教育(下)』.国立国語研究所.pp.9)

また、これに関連し、Joyce(2002)(2004)によると、熟語は、漢字 2 字熟語の造語原則に基
づき、修飾語+被修飾語(M+M)、動詞+補足語(V+C)、補足語+動詞(C+V)類義語(SP)の 4 種類の
いずれかで構成された; 熟語の処理において、形態構造(morphological structure)に

3
関する知識が活性化されることを示す。
なお、野村(1988)によると、単語の数が、必要に応じていくらでも増えていくのは、単純な
構造の基本的な語をいくつか組み合わせて、多種多様な語の組み合わせができるからであ
る。また、辞書に頼らないで人々が多くの語を理解することができるのは言語の学習過程に
おいて、無意識の裏に語の組み合わせのルールに関する知識を獲得していくからである。
以上の先行研究で漢字の語構成の分析は以下のようにまとめられる。

図 2 野村(1988)、Joyce (2005)
構成 語例
1 修飾語 + 被修飾語 山桜     国道     高値

Yamazakura kokudou takaatai
2 動詞 + 補足 登山     殺人    投球

Touzan satsujin toukyuu
3 補足 + 動詞 外食     毒殺   夜勤

Gaishoku dokusatsu yakin
4 対立 親子     生死    左右

Oyako seishi sayuu
5 並列 変化     苦痛   

Henka kutsuu
6 重複 段々   個々   然々

Dandan koko zenzen
7 派生語 不明    以上   史的

Fumei ijou shiteki
8 省略 農協    教祖   春闘

Noukyou kyouso shuntou
9 音借 葡萄    面倒   

Budou   mendou

以上、これまでの先行研究では、漢字は形態文字として見なされ、漢字熟語は形態素が組
み合わされ、生成されたものであると考えられている。そこで、漢字熟語の構成を理解、把握
することによって、その意味を理解することが容易となり、また新たな熟語を作り出すこと
が可能となるのではないかと考える。

第 3 章.文 字体系と しての漢 字
本章では、日本語の漢字という文字体系について、今までの漢字研究の中で漢字がどのような

4
定義されるのか、また、どのように扱われているのか、文字体系としての漢字の位置づけを述べる。
そして、今までの研究を再考し、筆者による漢字の定義を論じることを試みる。
従来の研究において、文字体系の分類における漢字の扱い方の妥当性が議論されていた。多く
の場合は文字体系としての漢字は次ぎのように位置づけられた。
―象形文字 pictographic
―表意文字 ideographic
―表語文字 logographic
しかし、漢字は象形文字であれ、表意文字であれ、表語文字であるというより、むしろ、意
味を持つ語句の最小単位であり、形態素文字として考えられる(Joyce,1999)。
また、漢字は3つの日本の文字体系の一種である。

図 3 日本の文字体系
               日本の文字体系

漢字 ひらがな カタカナ

だいたい文法的情報表す文字 外来語と言葉をイメージアップさ
である。
「しかし」
「の」
「―た」 な せるのに使われている表音記号で
どのような助詞や過去マーク ある。
語 彙 的 意 味 を 持 つ 語 を 表 を表す文字。
す文字であり、その文字
では直接意味処理が行わ
れる 。

(国立国語研究所、1985;Kess & Miyamoto,1999)

筆者は Joyce(1999)が述べたように漢字が意味だけを持つ最小単位の形態素文字とみな
し、その形態素文字が他の形態素文字と結合することは統語的な構成があるからであると
考えられる(Marantz1997、小野 2005)。
意味だけを持つ最小単位の形態素文字は語形成において統語的な結合するということは
非常に面白い部分。

第 4 章.日 本語の造 語法
熟語における統語的な結合は文の生成と類似していると考えられるため、本章では日本
語文法の構成を概観しる。また、次の章でもう少し詳しく述べることになる。
まず、日本語の典型的な関係節の文を見てみよう。
青い家

5
私の本
太郎からもらったカメラ
ご飯を食べられないこと
以上の文の統語構成として見れば、

a.
N

a n
青い      家

b.
 N

n n
私の     本

c. 
        N

   v        n
太郎からもらった  カメラ

d.
 N

v   n
ご飯を食べられない こと

ここで、様々な説明をすることができるが、文の構成については日本語の関係節は主要部
が右側に来ることと補部は左側に来ると重視しておきたい。日本語はその特徴があり、英語
で言うと、head-final construction phrase という日本語の文の構成はよく知られている。
それについては Gunji,1987;辻村、2004 に指摘された。このように、以上の例文を見ると、後
ろに来る最終の単語は文全体の意味に対して一番重要なインフォメーションであろう。
その意味で、「青い家」の中で 、[青い]は家の修飾語(a)であり、[家]は被修飾語の名詞

6
(n)であるが、この文は「家」について説明する文であると考えられている。よって、例
b、c、d も同じような説明をすることが出来るのである。
次の章は文の構成より、小さい単位、つまり、語彙のレベルを見てみたい。第 4 章を踏まえ
ながら第 5 章を記述していく。

第 5 章.二 字漢字熟 語の語構 成
以上、これまでの先行研究をいくつか紹介した。今までの分析は漢字二字熟語の言葉の成
分が文法的な機能(動詞+補足、補足+動詞など、名詞+名詞)であった。しかし、ここで筆
者は、二字熟語の中に Y、X という二つ要素があり、そこに一般的な原理があるのではないか
と考える3 。また、語形成が統語部門で行われ、その形態、意味の派生は統語の原理に従うと
いう仮説が含まれている。以下の語形成の骨組みはその統語部門を現す構成であろう。

図4
X`

Y  X

図 4 から見て取れるように、Y は修飾語、X は被修飾語とすると X`は語義を示す。この構成
の上で、熟語の語彙は生産的な語形成である言えるのではないだろうか。その構造は日本語
の文を比較すれば、似通った構成があるのではないかと考えられる。その構造は統語的な構
造、つまり、熟語の漢字の組み合わせは統語部門で行われる( Halle & Marantz,1993;
Marantz,1997,2001)4 ととらえられる。
 以下の例で日本語の文と語彙の構成を比べてみる。
図 5 
     家       睡
  
  
青い  家   爆  睡

以上の二つの構成を見て、この仕組みは語彙の形象であり、これが文の構成にも反映する
ことが伺えられる。
また、人間は意識的に言葉を造るとみなすことによると、語彙の成立の前に何らかの構成
があり、その構成の制約にて無限に語彙を作ると言えるであろう。それは日本語を学習して
いる人には面白いことであろう。
 Japan Times 新聞の報告によれば、近年新しい二字漢字熟語が作り出されているという。

7
(「爆睡」ばくすい、
「家電」いえでん(いえの電話番号)、
「空弁」そらべん、
「駅弁」えきべ ん

など) 。このことから語彙の漢字の組み合わせは独断的なものではなく、語義とその語彙
の成分との関係が深いから、意識的な造語があると推論するのである。  

第 5 章 1 節 熟語の 意味は特 定の場所 にあるの か。
以前述べたように熟語に構成があるとすれば、その統語の上で語彙の意味が出てくるは
ずである。その意味をどちらの漢字がより多く担っているのか。ここに主な問いは、熟語の
意味は特定の場所にあるだろうかという点である。前章でに説明した構成における仮説を
検証するため、アンケート調査を行った。アンケート調査についての評細は次節で行い、本
節では前章に振りもう一度仮説をみていきたい。
語義は右側の漢字に含まれているとした場合の例。

食 事

a. 外食
外  食 食  事
食事

日 休

b. 休日
連休 休  日 連  休

人 殺

c. 殺人
毒殺 殺  人 毒  殺

生 物
ara

d. 学生
学  生 生  物
生物

前述のとおり、漢字二字熟語の構造は上の例を見ると分かるように同じようなメカニズ
ムがあるように思われる。
次の例は、字順の逆になった複合の言葉である。

火 花
a. 花火
火花
花  火

8
火  花

重い 体

b. 体重
重体 体  重 重  体

学い 科い

c. 科学
学科 科  学 学  科

力い 学い

d. 学力
力学 学  力 力  学

長い 波い

e. 波長
長波 波  長 長  波

これらの例を見ても分かるように、意味の変わった言葉の例は漢字二字熟語の語に後ろ
の漢字が言葉の意味の一番重要なインフォメーションを持つことに注目したい。意味を変
わらせる漢字は最後に来る漢字はずからである。
 漢字の位置によって、意味が変化することから、前述した構成がよりあきらかになるので
はないだろうか。我々は新たな言葉を読むときにそのモデルの下で理解しているはずであ
ろう。

第 5 章 2 節 調査内 容と結果 分析
本節では、アンケートの結果を述べる。アンケートでは、前節で述べた仮設の検証を行っ
た。
対象は、日本語母語話者である筑波大学の学生 30 人で、年齢は 18-25 歳であった。調査方
法は、この研究に使われている漢字二字熟語のコーパスから 47 語を取り出し、それらを被験
者に見せ、どちらの漢字がその語彙をより説明するか、選択させた。
その結果、回答の過半数以上を後の漢字と選んだのは 30 人中 19 人で、残りの 11 人は過半
数以上の答えで前の漢字を選択した。この結果から、前節で立てた仮説の実証をなし得る可

9
能性がいくらか伺える。しかし、このアンケート調査を行ったのは 30 人のみで、その結果か
ら論じられることは少ないように思われる。よって、次回は規模を拡大した調査を行う予定
である。
また、調査結果で新たに分かったことがあった。それは、二字熟語の漢字の位置を逆にし
た際、その意味も変わり、語彙を説明する漢字も変わる。しかし、
「花火」と「火花」の組み合 わ
せの場合は、両方「火」の漢字が語彙説明をしていると答えた人が多かった。

第 6 章.結 論と今後 の課題
―結論
本研究では漢字の二字熟語の内部構成を明らかにする試みをした。また、統語論の制約に
よって、語彙意味の生成がおこなわれるとした。その語彙の語義、または、意味は二字熟語の
中の、どちらの漢字に比重を置いているのかを検討した。仮説では最後の漢字にその比重が
置かれているとし、それを検証するため日本人とアンケート調査を行った。そして、64%の
回答は予測した結果であった。
 さらに、熟語そのものは語彙を説明すると想定し、その意味は日本人の視点で事情や条件
や世界などの読み方と取れられる。そして、日本語を第二言語として学んでいる人は語彙の
語形成を論理的に理解をすれば、語彙と言語表現力が高くなるのではないだろうか。
 本論文を執筆するにあたり、いくつかの問題をみつけたが、気づいたこと、考えたことを
ご紹介した。

―今後の課題
本研究では、主に先行研究で指摘されたことと母語話者を対象としたアンケート調査を
通して、漢字二字熟語の構成を明らかにした。しかし、アンケート調査では、二字漢字熟語と
その逆の組み合わせを見せたときに、一部の被調査者は意味の比重ではなく、語彙説明をし
ていたため、問題に関する指示の不足と問題の形式に問題があった。今後の研究では、明確
な 説 明 を し 、 問 題 の 形 式 を 工 夫 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。
 また、今後の研究では語彙の意味論についての勉強を続けたいと思っている。二字熟語で
は な く 、 二 字 以 上 の 熟 語 に お け る 統 語 構 成 を 見 て い き た い 。
 そして、人間は世界をどのように切り取るかという問いは言葉の構造で見られるもので
はないかと考える。たとえば、
「飛行機」というものは飛・行・機と3字で構造された言葉 で
あり、その言葉の意味を説明する組み合わせである。しかし、英語で「 airplane」という言葉
は air・plane(空気・平らな面)のような意味を示す言葉である。それらは同じものを示
しているが、言語によって違う語義があるのであろう。すなわち、同じ言語を話す人間の集
団は周囲の世界に対して、同じ認識を持つ(小野、2005 )。したがって、日本人の聴覚障害
をもつ子供たちは、音声が聞こえないにもかかわらず、新語に遭遇する際、どのように意味
を解釈するのか非常に興味深い。

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【注】

(1) 柴田、1980 に「人間は(省略)無限この文が、その間の形で脳に記録されているとい
うことはありえない。人間は脳の中に記録されている有限個の規則で、無限個の文を作り出
し、理解しているに違いない」と記載している。

(2) 野村は「見せ物」
「高飛び」
「飲み食い」のような漢字とひらがなで書かれる言葉も 検
討したけど、本研究では二字熟語だけに焦点する。この研究では野村(1985)による熟語の
統語構造(X+Y)と並列構造(X・Y)の概念を参考し、X+Y の形である熟語に中心する。並列、
X・Y の形である熟語は、たとえば、
「生死」
「親子」のような言葉は統語的な関係がないので 本
研究に入らない。

(3)Halle&Marantz(1993)、いわゆる語彙範疇(V,N,A...)は、もともと指定されているの
ではなく、Syntax における環境にとって決定されると指摘した。

(4)その熟語の構成のモデルは Halle&Marantz の前に、Noam Chomsky、Aspects of the
Theory of Syntax, The MIT Press, 1965 の X バー理論(X-bar theory)というモデルモデ
ルと近いものである。X バー理論は普遍文法の原理。X'→αX で示され、ある句構造(名詞句な
ど)X は、その投射 X'と、補部あるいは指定部といわれる α を持つという原理。日本語では、
「名詞句(窓からの眺め)→後置詞句(窓から)+名詞(眺め)」
「動詞 句(りんごを食べる)→名詞
句(りんご)+動詞(食べる)」
「動詞 句(駅から歩く)→後置詞句(駅から)+動詞(歩く)」
「後置 詞
句(駅から)→名詞(駅)+後置詞(から)」など。しかし、チョムスキーは語彙のレベルで検討し
なかった。

(5)Kanji Clinic のホームページ http://www.kanjiclinic.com/preart.htm を照会

参考文献
1. Chomsky, Noam (1975). Aspects of Theory of Syntax. Cambridge, MA: The MIT

Press.

2. Chomsky, Noam(1994). Bare Phrase Structure. in Gert Webelhuth (ed) Government

and Binding Theory and The Minimalist Program.Oxford: Blackwell

Publishing. Pp. 385-439

3. Crain, Stephen and Thornton, Rosalid. Acquisition of Syntax an d Semantics.

11
In: M. Traxler and M. Gernsbacher (eds), Handbook of

Psycholinguistics, Elsevier.

4. Gunji, T. (1987). Japanese Phrase Structure Grammar. Dordrecht: Reidel

5. Hirose, Hitoshi. (1992). Jukugo no nichi katei ni kan suru kenkyū: Puraimingu

hō ni yoru kentō [An investigation of the recognition process for

jukugo by use of priming paradigms]. Shinrigaku Kenkyū, 63, 303-309.

6. Joyce, T. (1999). Lexical access and the mental lexicon for two-kanji

compound words: A priming paradigm study. Proceedings of the 2nd

International Conference on Cognitive Sciences and 16th Annual Meeting

of the Japanese Cognitive Science Society Joint Conference, 27-30 July,

Tokyo, Japan, 511-514.

7. Joyce, Terry. (2002). The Japanese mental Lexicon: The lexical retrieval and

representation of two-kanji compound words from a morphological

perspective. Unpublished doctoral thesis. University of Tsukuba,

Japan.

8.   Kess, Joseph F (1991). Psycholinguistics: Psychology, Linguistics and the

Study of Natural Language, John Benjamins Company, pp. 69-139.

9. Kess, Joseph F. & Miyamoto Tadao (1994). Japanese Psycholinguistics – a

Classified an annoted research bibliography, John Benjamins Publishing

Company.

10. Kess, Joseph F. & Miyamoto Tadao.(1997) Accessing the Japanese Mental

Dictionary Through the Japanese Writing System. Victoria University.

11. Marantz, Alec. No Escape from Syntax: Don`t try a Morphological analysis in

12
the Privacy of your own Lexicon. In "Proceedings of the 1998 Penn

Linguistics Colloqium", ed. by Alexis Dimitriadis, available from Penn

Working Papers in Linguistics.

12. Shibatani, Masayoshi. (1990). The languages of Japan. Cambridge, England:

Cambridge University Press.

13. Tamamura, F (1985). Go no kousei to zougohou [The structure of word and

principles of word formation] In Kokuritsu Kokugo Kenkyuujo. Go no

Kenkyuu to kyouiku (shita)

Tsujimura, Natsuko (1996). An Introduction to Japanese Linguistics. Blackwell

Publishers Ltd.

14. 小野、尚之(2005). 『生成語彙意味論』. pp.4,14. くるしお出版社

15.影山太郎(1993)『文法と語形成』ひつじ書

16. 柴田、武編(1980).『言葉の構造』「講座言語・第1巻 」pp.137 大修館書店

17. 中 川 正 之 ( 2005 ) . 『漢語から見える世界と世間』岩波書店

13
付録

付録1 ―  コーパ ス―漢字
―辞書引用
1. 末端 2. 端末
3. 社会 4. 会社
5. 習慣 6. 慣習
7. 中心 8. 心中
9. 栄光 10. 光栄
11. 波長 12. 長波
13. 花火 14. 火花
15. 学科 16. 科学
17. 重体 18. 体重
19. 力学 20. 学力
21. 理論 22. 論理
23. 法律 24. 律法
25. 分節 26. 節分
27. 在所 28. 所在
29. 情熱 30. 熱情

ー Joyce(1999)
1. 胃弱 2. 地震
3. 薬品 4. 牛乳
5. 食事 6. 肉食
7. 花粉 8. 投球
9. 化石 10. 外食
11. 広告 12. 強打
13. 冬眠 14. 建設
15. 超過 16. 募集
17. 死亡 18. 撮影
19. 夜勤 20. 未知
21. 救助 22. 外食
23. 休日 24. 連休
25. 毒殺 26. 起床
27. 下記 28. 削除
29. 児童 30. 苦痛
31. 回転 32. 飲酒
33. 殺人 34. 水泳
35. 急増 36. 専用
37. 生物 38. 人形

14
39. 乗車 40. 学生
41. 美術 42. 今回
43. 豚肉 44. 預金
45. 逆転 46. 敬語
47. 私語 48. 夕飯
49. 作文 50. 黒板
51. 軽視 52. 公認
53. 旅館 54. 住所
55. 共感 56. 多数
57. 老人 58. 丸顔
59. 寝室 60. 視力
61. 同時 62. 恋人
63. 美術 64. 変色
65. 古本 66. 水泳
67. 移動 68. 予想
69. 止血 70. 自信
71. 返答 72. 失恋

付録2 ―  アンケ ート調査
アンケート
☆ 私は日本語・日本文化研修生のハファエレ ジャファー ソアレス デ リマです。
現在、終了論文のために、漢字の構成に関する研究調査を行っています。お忙しいと思いま
すが、ご協力を下さいますよう、お願い致します。
☆☆ このアンケートでやって頂きたいことは、漢字二字熟語の中でその語彙をもっとも
よく説明する漢字がどの漢字にあるかを判断し、なるべく速く一つの漢字を選択すること
です。
たとえば、次の言葉を見て、どちらの意味を持っているだろう。
花火 花のことについて?    火のことについて?
花のことについてと思ったら 花 に ○ を 書いてください。
火のことについてと思ったら 火 に ○ を 書いてください
☆ 指示についてご質問がありましたら、気軽にお聞きください。
☆ ご協力、ありがとうございます。
名前:
所属:
年齢:
1. 体重 体 重
2. 火花 火 花
3. 胃弱 弱 胃
4. 慣習 習 慣
5. 地震 地 震

15
6. 重体 体 重
7. 波長 波 長
8. 論理 論 理
9. 牛乳 乳 牛
10. 食事 食 事
11. 科学 学 科
12. 花火 花 火
13. 肉食 肉 食
14. 花粉 花 粉
15. 投球 投 球
16. 化石 石 化
17. 乗車 乗 車
18. 起床 起 床
19. 社会 社 会
20. 栄光 栄 光
21. 飲酒 飲 酒
22. 殺人 殺 人
23. 水泳 水 泳
24. 急増 急 増
25. 未知 未 知
26. 下記 下 記
27. 力学 学 力
28. 夜勤 夜 勤
29. 広告 告 広
30. 中心 中 心
31. 強打 強 打
32. 冬眠 冬 眠
33. 学科 学 科
34. 建設 建 設
35. 超過 超 過
36. 募集 募 集
37. 心中 中 心
38. 削除 削 除
39. 児童 児 童
40. 会社 会 社
41. 苦痛 痛 苦
42. 救助 助 救
43. 理論 理 論
44. 学力 力 学
45. 習慣 習 慣
46. 長波 波 長
47. 光栄 栄 光

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