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ヘルスプロモーション

~病気探しから健康支援へ~

勤医協中央病院 総合医コース
後期研修医 佐藤健太
http://blog.livedoor.jp/gp_ken/
自己紹介
• 勤医協中央病院
• 初期研修
• 病棟総合医 後期研修4年目

• 釧路協立病院
• 地域密着型混合病棟・なんでも外来
• 家庭医療後期研修プログラムの運営
• 臨床研究も少し
将来の野望
 ゆくゆくは、「医療連携モデル地域」を作りたい
 医療機関同士、医療以外も含めた連携
政治・行政、企業・アミューズメント、教育、保健・福祉・救急、地域間
 持続可能で発展し続ける組織
お互いが育てあい、守りあい、可能性を伸ばしあう

 道内で「理想的なモデル地域」を作る

 実績を東北の地方自治体に売り込み、
大学とも連携し、北海道・東北で大きな地域医療
連合を作って、影から牛耳りつつ引退したい
1.診療圏は半径100km!!

2.僻地ゆえの経済的困難・社会的孤立などなど

3. 一次産業従事者が多く、季節や天候によって、
仕事量や生活の余裕、受診頻度も影響される
こういう土地に興味のある方は
是非見学へ!

地域医療や家庭医療に興味がある人に
とっては宝の山です!!
ここからが本題
健康づくりに
関わっていますか?
くたびれたタクシー運転手
• 58歳、男性
• タクシー運転手
• 胃食道逆流症、検診は問題なし

• 「いつもの薬(PPI)を取りに来ました」
– タバコと酒は唯一の楽しみだな。
– 仕事はイマイチだわ。

「大変ですね~。」
「じゃ、いつもの薬出しときますね」でいいですか?
今日の目標
 健康増進(Health
promotion)と、
疾患予防(Disease prevention)
それぞれの特徴・違いを説明できるようになる

 「健康増進」やってみたいという気持ち
が芽生える
健康増進・疾患予防
の基礎知識
疾患予防:Disease prevention
 対象:疾患に注目
 目標:疾患の発生率・死亡率や
機能予後改善
 手法:トップダウン型の指導
減点方式

 種類
 一次予防:発症を防ぐ(メタボ検診+保健指導)
 二次予防:重症化を防ぐ(悪性腫瘍の早期発見)
 三次予防:後遺症を防ぐ(脳卒中のリハビリ)
Medicalizationに注意
健康増進:Health promotion

 対象:健康に注目
 目標:健康度アップ(QOL・健康寿命)
 手法:ボトムアップ型の支援
加点方式

 キーワード
 疾患から健康
 エンパワーメントと協同
そもそも、健康とは・・・?
• WHO憲章
– 「身体的、精神的および社会的、霊的に完全
に良い状態にあることであり、単に疾病また
は虚弱ではないということではない」

• WHOアルマ・アタ宣言
– 健康とは各人の年齢に応じて、かつ環境に内
在する経済的条件において、到達可能な高
度の身体的・精神的ならびに社会的安寧であ
る。

– ちゃんと知りたい人は「健康生成論」参照
ヘルスプロモーション
 この「真の健康」を推進していく活動

 オタワ憲章における定義
◦ 「人々が自らの健康をコントロールし、
改善できるようにするプロセスである」

 医療者主体ではなく、患者・住民主体へ

 特定の疾患対策ではなく、「健康」の改善
ところで
 「眼の前の患者」の「病気」を
「診断・治療」するのが、医師の役割

 「コミュニティ全体」の「健康」を
「増進」するヘルスプロモーション

重要さはわかるけど
それを「医師の本業」と、心から思えますか?
こんな例え話
 ふと、流れの速い川の岸に立っていると、
溺れている人の叫び声が聞こえてきました

 そこで、私は川に飛び込み、彼に手を差し
伸べ、岸まであげて、人工呼吸をしました

 溺れた人が息を吹き返すと、また助けを求
める叫び声が聞こえてきました

 再び、私は川に飛び込み、彼に手を差し
伸べ、岸まであげて、人工呼吸をしました
こんな例え話
 溺れた人が息を吹き返すと、また助けを
求める叫び声が聞こえてきました

 もちろん選択肢はありません。
 私は川に飛び込み、この繰り返しは果て
しなく続きました。

 分かってください。
 私には、上流に分け入ってどんな地獄が
彼らを川に落としているのかを確認する
時間なんてなかったのです。
この考え方のポイントは2つ
本当の課題は 上流にある

現在の医療は 下流で努力している
大変なときこそ上流で働こう
 自分の患者が、将来川で溺れる確率が下がる

 上流に行くほど問題が小さいうちに対応できるので
1回あたりの労力は尐ない。

 上流に行くほど、複数の疾患に共通するリスクに対
応できるため、効率が良くなる

 担当地域の急変が減り、医療者も住民も余裕が
でき、発展・成長に余力を割ける

健康リスク 病気
ジャクソン君のおはなし
カナダ公衆衛生機関で紹介している寓話

• どうしてジャクソンは病院にいるの?
• それは、彼の足に悪い病気があるからだよ。

• どうしてジャクソンの足には悪い病気があるの?
• それは、ジャクソンが足を切ってしまって、そこから悪い病気が入ったん
だよ。

• どうしてジャクソンは足を切ってしまったの?
• それはね、ジャクソンが、アパートのとなりのがらくた置き場で遊んでいた
ら、足を滑らせた先に、尖ったギザギザの金属があったからなんだよ。

• どうしてジャクソンはがらくた置き場に?
• それはね、ジャクソンが荒廃した地域に住んでいるからだよ。そこの多く
の子供はそういった場所で遊ぶし、だれもそれを監督していないんだ
ジャクソン君のおはなし
• どうしてそういう場所にすんでいたの?
• それはね、ジャクソンの御両親が、良い場所に住む余裕がないからさ

• それはどうして?
• なに、ジャクソンの父親はお仕事がなくて、母親は病気だからね

• お父さんにお仕事がないって、どうして?
• うん、ジャクソンの父親は多くの教育は受けていないんだ。それでね

• それはどうして?...

• ずっと原因をさかのぼっていくと、たいていの疾患・傷害は
次のような因子にたどりつく
上流にある問題の正体とは?

 Solid FACTs
 WHOが公表している、健康を損ねる原因の
中で、根拠のはっきりしているもの

 死亡リスク因子
 疾患別ではなく、疾患を引き起こす原因レベ
ルでみると早期対応ができる。
Solid FACTs
社会格差 →社会・経済など
社会的排除 →ひきこもり、周囲からの隔離
社会的支援 →コミュニティ内の資源、連携
交通 →運動丌足、アクセス悪化

労働 →劣悪な労働条件
失業 →ホームレスの丌衛生、経済格差
ストレス →うつ・自殺、心身症

幼尐期 →周産期、妊娠前・小児検診の問題
食品 →低栄養
薬物依存 →アルコール、タバコ、ドラッグ
http://ja.wikipedia.org/wiki/健康の社会的決定要因
オタワ憲章
5つの活動領域
①だけでは丌十分!

①個人スキル開発(健康教育)
②地域活動の強化(地域包括プライマリケア)
③支援環境の整備(システム構築)
④医療の再設定 (まず医者から健康志向に)
⑤保健政策 (国にも協力してもらおう)
http://www.fumimotoshika.com/health.htm
死亡原因(疾患別) Top10
• 悪性新生物 30.4% 32万人
• 心疾患 15.9% 17万人
• 脳血管疾患 11.8% 12万人
• 肺炎 9.9%
• 丌慮の事故 3.5%
• 自殺 2.8%
• 老衰 2.6%
• 慢性閉塞性肺疾 1.8%
• 腎丌全 1.5%
• 糖尿病 1.2%
人工妊娠中絶(2005年) 28万件
(2006年厚生労働省「人口動態統計」)
死亡のリスク 関不率Top10
 高血圧 21%
 タバコ 17%
 アルコール 8%
 固形燃料ガス 7%
 運動丌足 7%
 高血糖 6%
 果物・野菜丌足 5%
 大気汚染 5%
 肥満 5%
 職業リスク 5%
◦ 高脂血症 4%
http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/estimates_regional/en/index.html
DALY ”disability-adjusted life year”
『死が早まることで失われた生命年数』と
『健康でない状態で生活することにより失われている
生命年数』を合わせた時間
DALYのリスク 関不率Top10
 アルコール 16%
 タバコ 11%
 高血圧 10%
 職業リスク 7%
 高血糖 7% 「勤労者」医療協会
として!
 運動丌足 5%
 肥満 5%
 固形燃料ガス 4%
 丌衛生 4%
 高脂血症 3%
http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/estimates_regional/en/index.html
死亡のリスク (再掲)
 高血圧 21%
 タバコ 17%
 アルコール 8%
 固形燃料ガス 7%
 運動丌足 7%
 高血糖 6%
 果物・野菜丌足 5%
 大気汚染 5%
 肥満 5%
 職業リスク 5%
◦ 高脂血症 4%
http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/estimates_regional/en/index.html
くたびれたタクシー運転手
• 58歳、男性、タクシー運転手
• 胃食道逆流症、検診は問題なし
• 妻・娘と別居、昼夜逆転生活
• 人との交流ほとんどなし
• タバコ・飲酒あり

• いつもの薬(PPI)を取りに来ました
– タバコと酒は唯一の楽しみだな。
– 仕事はイマイチだわ。
アセスメント(例)
58歳→退職間際
検診・受診中断の恐れ
経済問題発生の可能性
抑うつからの「自殺」好発世代

独居
夫婦仲など、家族ライフサイクルに問題?
老後の家族サポート丌足の心配
これで仕事も辞めたら、完全な社会的孤立

さらに
タバコ・酒、経済的困難、仕事ストレス…
健康の定義から考えると
活動性疾患はなく、生活も一応自立している。
医学的には健康?

経済社会的因子も考慮すると、「丌健康」
現在のQOLは低く、将来の疾患発症リスクも高い!!
今後さまざまな合併症が発生し、AMIで入院して
くるのをER・循環器病棟・ICUで待ち構えてるのって…

10年後を考えると、処方継続のみでは無責任では?

予防医療・健康増進の知識があると、
ずいぶん先が見える気がしませんか?
まとめ
 日常診療にヘルスプロモーションを組み
込もう

 小さな一歩
 じゃ、血圧測っちゃいますか。
 …ところで酒・タバコはどれくらい?
 …それなら(仕事、ストレス、家族)も大変で
しょうね~