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犬山市東部にある農業用ため池「大洞池」の水質(その2)

○大屋 渡・ぶちょう・しゅにん
(株式会社 某 社)

1.はじめに 濃度(TOC)と UV 吸光光度法による全窒素濃度(T-N)を、通常


犬山市東部の丘陵地域には「ため池」が多い。この地域 業務の検体と同様に測定した。
周辺でも近年急激な住宅開発が進んだものの、山麓部では、 降雨試料の採取はため池から直線距離 1km 程度に位置す
まだ昔ながらの里山風景が残っており、その一角に「大洞 る個人宅で行い、ガラス容器等に雨を直接受け、降雨イベ
池」がある。池の周辺は森や林に囲まれ、土壌流出水や細 ント終了後に採水した。なお、降水量についてはため池か
流による流入の他に、直接降雨により涵養される堰堤部水 ら直線距離 6km 程度に位置するアメダス美濃加茂のデータ
深4m程度の半渓谷的な農業用ため池である。築造されて を利用した。
から既に80年程度経過している。 3.調査結果
このため池は、水質の年間変動が激しく、また一時的な 観測結果の概要をまとめて図に示す。
降雨による短期の影響も大きく受けている。本研究は、週1 1.大洞池における水質変化の特徴
回の頻度でも可能な比較的簡易な水質モニタリングを通し 観測の結果、次のような特徴があると考えられた。
て、水質変動の支配要因について考察することを主な目的 ・ 目視でわかる変化として透明度は夏期に低下し冬期
としている。 に回復し、夏期には有機膜が生成することがある。
2.調査方法 なお透明度はむしろ降雨が少ないと低下する。
本調査では、ため池の水質変動の要因として、降雨等の ・ TOC、T-N は短期の変動が激しいが、9 月頃には TOC
気象条件との関係を炭素及び窒素に注目して分析を行って が上昇して高めで安定する傾向がある。その程度は
いる。これは、降雨の表面流出によって流出する懸濁物質 昨年に比べると今年の方がより顕著であった。
や、いっぽう地表面を浸透した中間流出や基底流出によっ ・ 9 月頃の TOC の上昇は降水量の減少を受けるような
て流出する溶存物質(DOC や NO3-N)
、さらには特に停滞期に 形で生じ、初期には T-N の低下と透明度の低下と大
は堆積物から溶出してくる植物遺体の分解物等が、直接の 局的に連動するように見えるが、その後は崩れる。
降雨等に加えて、重要な要因になると考えるためである。 ・ pH は降水量に応じて低下する。
ため池の水質測定は、森林や林から流出した直後の水質 2.水質変化の支配要因
変動の多い流出水がある程度平準化され、その後の水系内 現地観測と分析結果を合わせて検討すると、水質変化の
で生じる変化を含めて把握できる地点として、小規模なダ 重要な要因として、次の 2 点が考えられた。
ムのような堤で堰き止められている池の流出部付近で行っ ・ 直接的な降雨とそれに付随する森林の表面流出、中
た。そこで週 1 回の現地水質測定及び持ち帰りによる分析 間流出及び基底流出のそれぞれの質及び割合の変動
を 2 年強に亘って継続している。現地水質測定は、当初、 ・ 池の水の停滞(長い滞留)時に相対的に大きな要因
校正機能を有する中では極力安価な pH・EC メーターを用い となる、堆積物からの DOC や懸濁物質の供給
て実施していたが、pH については極希薄溶液の測定となる 大洞池の水質は、雨が降ると濁るというような単純な因
ため、安価な装置では信頼性のある測定ができないことが 果関係ではなく、森林生態系としての炭素・窒素ストックや
判明したため、昨年 5 月から計量法に基づく形式承認され 池に堆積した炭素・窒素ストックが、降雨の状況に応じて池
たものに切り替えた。また最初の半年程度を除いて透明度 の水への寄与状態を変化させることで複雑に変動すると考
の測定も行っている。持ち帰りによる分析は 50ml ポリエチ えられる。本報告では、関連するその他のデータも紹介し
レンビンに入れた試料について、燃焼法による全有機炭素 つつ、会員諸兄と議論したい。

1.8 350
1.6
300
1.4
250
1.2 週間雨量
1 200 TN
TOC
0.8 150 透明度cm
0.6 有機褐色膜
100
0.4
50
0.2
0 0
10- 1
10- 5
11- 4
12-4
1-4
8-2
9-1
10- 1
11- 1
11- 5
12-4

4-3
5-3
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7-2
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3-3
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図 犬山市東部にある農業用ため池「大洞池」の水質及び降雨量の季節変化(2008年12月∼2011年1月)