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JP 2011-125256 A 2011.6.

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(57)【要約】 【課題】S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンから生物学的変換によってS −3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを製造する方法を提供する。 【解決手段】以下の工程を含むS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS −3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを製造する方法。 (A)ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物から選ばれる菌 株またはその培養菌体の調製物の存在下においてS−3−(ヘキサン−1−オール)−グ ルタチオンをインキュベーション処理する工程、(B)インキュベーション処理液からS −3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを単離する工程 【選択図】    なし 10

(2) 【特許請求の範囲】 【請求項1】

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S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンのS−3−(ヘキサン−1−オール) −L−システインへの生物学的変換方法によるS−3−(ヘキサン−1−オール)−L− システインの製造方法であって、 (A) 前記生物学的変換を行いうるものであり、かつラクトバチルス(Lactoba cillus)属に属する微生物から選ばれる菌株またはその培養菌体の調製物の存在下 においてS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンをインキュベーション処理す る工程、および (B) インキュベーション処理液からS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システ インを単離する工程、 を包含することを特徴とするS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインの製造 方法。 【請求項2】 工程(A)においてインキュベーション処理液のpHが3∼9の範囲、変換温度が10∼ 40℃の範囲、および変換時間が12∼144時間の範囲である請求項1に記載の製造方 法。 【請求項3】 工程(A)においてインキュベーション処理液のpHが5∼9の範囲である請求項1また は請求項2に記載の製造方法。 【請求項4】 工程(A)においてインキュベーション処理液の温度が20∼30℃の範囲である請求項 1∼3のいずれかに記載の製造方法。 【請求項5】 工程(A)においてインキュベーション処理液の時間が48∼96時間の範囲である請求 項1∼4のいずれかに記載の製造方法。 【請求項6】 前記ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物がラクトバチルス  プランタム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス  ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス マリ ー(Lactobacillus mali)またはラクトバチルス ヒルガルデイ(L actobacillus hilgardii)に属する微生物である請求項1∼5の いずれかに記載の製造方法。 【請求項7】 請求項1∼6のいずれかに記載の製造方法で製造したS−3−(ヘキサン−1−オール) −L−システイン。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオン[以下、3MH-S-GSHと略記す ることがある]から生物学的変換によってS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−シス テイン[以下、3MH-S-Cysと略記することがある]を製造する方法に関する。 【背景技術】 【0002】 S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインは、S−3−(ヘキサン−1−オー ル)−グルタチオンとともに、ワインの重要な香気物質の一つである3−メルカプトヘキ サン−1−オール[以下、3MHと略記することがある]の前駆体物質として知られている。 3−メルカプトヘキサン−1−オールは、ソーヴィニヨンブラン種などのブドウを原料に して醸造されたワインに含まれることが報告されており、ワイン中に微量に存在するだけ でグレープフルーツやパッションフルーツなどのニュアンスを与える重要な成分である。 50 40 30 20 10

(3) 【0003】

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ワイン中に含まれる3−メルカプトヘキサン−1−オールの生成経路は、S−3−(ヘキ サン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システ インの変換まではブドウ自身の内在性酵素によって行われ、S−3−(ヘキサン−1−オ ール)−L−システインから3−メルカプトヘキサン−1−オールへの変換はアルコール 発酵中に酵母によって行なわれていると報告されている(非特許文献1)。 【0004】 しかしながら、近年S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンが酵母に直接取り 込まれ、3−メルカプトヘキサン−1−オールに変換されているという学説も発表された (非特許文献2)。酵母によるこれらの前駆体物質の変換については、S−3−(ヘキサ ン−1−オール)−グルタチオンから3−メルカプトヘキサン−1−オールへの経路、ま たはS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインから3−メルカプトヘキサン− 1−オールへの経路のいずれが主要経路であるかについては未だ定説が確立されていない 。 【0005】 一方、酵母のモデル培地を用いた試験においては、酵母によってアルコール発酵中に起こ るS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンから3−メルカプトヘキサン−1− オールへの変換率はS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインから3−メルカ プトヘキサン−1−オールへの変換率と比較して1/30∼1/20以下であることが報 告されている(非特許文献1)。しかし、酵母がS−3−(ヘキサン−1−オール)−グ ルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換を行うとい う報告はない。 【0006】 S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール )−L−システインへの変換は、前述のようにブドウの内在性酵素によって行われている 可能性が示唆されている。しかし、この反応は、主にブドウが樹上で成熟する過程に起こ るため、人為的にコントロールすることは困難である。 【0007】 また、ブドウに含有するS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを増加させ る方法として貴腐菌(Botrytix cinerea)を利用する方法がある(非特 許文献3および4)。ブドウに貴腐菌を感染させると、S−3−(ヘキサン−1−オール )−L−システインの量が増加するが、ブドウに貴腐菌を感染させるには、湿度の高い朝 と乾燥した日照のある午後という自然条件が必要であること、さらに果皮が薄めのブドウ 品種であること等の条件が必要であり、そのような自然条件を人為的にコントロールする ことは困難であり、かつブドウ品種が制限されるという問題点がある。 【0008】 S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール )−L−システインへの生物学的変換については、前述の他、In vitro反応系で γ−glutamyltranspeptidase(シグマアルドリッチ社製)が変換 を行うと報告されている(非特許文献5)。しかしながら、該変換能を有する微生物につ いての報告例はない。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0009】 【非特許文献1】Handbook of Enology volume2:The  Chemistry of wine and Stabilization and  treatments 2006,p222. 【非特許文献2】J.Agric.Food Chem.2008,56,9230−9 235. 【非特許文献3】J.Agric.Food Chem.2007,55,1437−1 50 40 30 20 10

(4) 444.

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【非特許文献4】J.ChromatogrA 2008,1183,150−157 【非特許文献5】J.Agric.Food Chem.2002,50,4076−4 079. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明の第一の目的は、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3− (ヘキサン−1−オール)−L−システインを効率的な生物学的変換によって製造する方 法を提供することである。第二の目的は該方法により製造し、単離精製したS−3−(ヘ キサン−1−オール)−L−システインを提供するものである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、ブドウの果皮中に3−メ ルカプトヘキサン−1−オールの前駆体物質であるS−3−(ヘキサン−1−オール)− グルタチオンおよびS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインが存在し、その 含有量はS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンの方が上回って存在する場合 が多いことを見出した。また、特定の乳酸菌がS−3−(ヘキサン−1−オール)−グル タチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換する能力を有 していることを見出し、本発明に至った。 【0012】 すなわち、本発明は、以下の〔1〕∼〔7〕に関する。 〔1〕S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンのS−3−(ヘキサン−1−オ ール)−L−システインへの生物学的変換方法によるS−3−(ヘキサン−1−オール) −L−システインの製造方法であって、 (A)前記生物学的変換を行いうるものであり、かつラクトバチルス(Lactobac illus)属に属する微生物から選ばれる菌株またはその培養菌体の調製物の存在下に おいてS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンをインキュベーション処理する 工程、および (B)インキュベーション処理液からS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイ ンを単離する工程、 を包含することを特徴とするS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインの製造 方法。 〔2〕工程(A)においてインキュベーション処理液のpHが3∼9の範囲、変換温度が 10∼40℃の範囲、および変換時間が12∼144時間の範囲である〔1〕に記載の製 造方法。 〔3〕工程(A)においてインキュベーション処理液のpHが5∼9の範囲である〔1〕 または〔2〕に記載の製造方法。 〔4〕工程(A)においてインキュベーション処理液の温度が20∼30℃の範囲である 〔1〕∼〔3〕のいずれかに記載の製造方法。 〔5〕工程(A)においてインキュベーション処理液の時間が48∼96時間の範囲であ る〔1〕∼〔4〕のいずれかに記載の製造方法。 〔6〕前記ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物がラクトバ チルス プランタム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチ ルス ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス  マリー(Lactobacillus mali)またはラクトバチルス ヒルガルデ イ(Lactobacillus hilgardii)に属する微生物である〔1〕∼ 〔5〕のいずれかに記載の製造方法。 〔7〕〔1〕∼〔6〕のいずれかに記載の製造方法で製造したS−3−(ヘキサン−1− オール)−L−システイン。 50 40 30 20 10

(5) 【発明の効果】 【0013】

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本発明の製造方法を用いると、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS −3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを効率良く生産することができる。 【発明を実施するための形態】 【0014】 本発明の生物学的変換方法では、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属 する微生物であって、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンをS−3−(ヘ キサン−1−オール)−L−システインに変換する能力を有する微生物、またはそれらの 培養菌体調製物であれば、種および株の種類を問うことなく使用できる。好ましい微生物 としては、上記変換能を有するラクトバチルス プランタラム(Lactobacill us plantarum)、ラクトバチルス ペントサス(Lactobacillu s pentosus)、ラクトバチルス マリー(Lactobacillus ma li)およびラクトバチルス ヒルガルデイ(Lactobacillus hilga rdii)を挙げることができる。また、上記微生物の変換能に比べて、変換能が劣るも のの、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラク トバチルス デルブルウエスキー サブスピーシーズ デルブルウエスキー (Lact obacillus delbrueckii subsp.delbrueckii) 、ラクトバチルス デルブルウエスキー サブスピーシーズ ブルガリカス(Lacto bacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)、ラ クトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidopHilus )、ラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus) 、ラクトバチルス ケフィリ(Lactobacillus kefiri)、ラクトバ チルス フルクトサス(Lactobacillus fructosus)、ラクトバ チルス アシディピスチス(Lactobacillus acidipiscis)、 ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) 、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ トレランス(Lactobacil lus paracasei subsp.tolerans)、ラクトバチルス サケ イ サブスピーシーズ サケイ(Lactobacillus sakei subsp .sakei)も使用することができる。接種する乳酸菌は1種類を単独で使用してもよ いし、複数を混合して使用してもよい。 【0015】 本発明によれば、これらのいずれかの菌株またはその培養菌体の存在下で出発原料(また は基質)であるS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンがインキュベーション 処理される。この処理は、前記菌株を培養する際に、その培養液中に基質を添加して行う かあるいは、場合により前記菌株の培養菌体を、例えばそのままもしくはホモジェナイズ 等の処理をした培養菌体調製物の懸濁液中に基質を添加し、インキュベーションして行う こともできる。培養液への基質の添加は、培養前または培養後一定期間経過したときのい ずれで行ってもよい。上記菌体は、上記いずれかの菌株を栄養源含有培地に接種し、培養 することにより製造することができる。 【0016】 このような培養菌体の調製物を用意するための菌株の培養または基質が添加された状態で 行われる菌株の培養は、原則的には通性嫌気性菌の培養方法に準じて行うことができる。 培養に用いられる培地としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属 する微生物が利用できる栄養源を含有する培地であればよく、各種の合成、半合成培地、 天然培地、などいずれも利用可能である。培地組成としては、炭素源としてのグルコース 、果糖などの単糖類、ショ糖、麦芽糖などのオリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、グリセ ロール、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、モルト 等の炭水化物を単独または組み合わせて用いることができる。窒素源としては、アミノ酸 、たんぱく質、尿素、大豆、大豆フレーク、ピーナッツミール、綿花ミール、カゼイン水 50 40 30 20 10

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解物、ペプトン、肉エキス、コーン・スチープリカー、魚粉、乾燥酵母、酵母エキス等の 有機窒素源、アンモニウム塩、硝酸塩等の無機窒素源を、単独または組み合わせて用いる ことができる。その他、例えばパントテン酸カルシウム、ビオチン、ビタミンB1等のビ タミン類、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、塩化コバルト、硫酸銅、 塩化鉄、塩化マンガン、モリブデン酸ナトリウム、硫酸亜鉛等の塩類、重金属塩類も必要 に応じ添加使用することができる。また、緩衝作用を持たせるためにリン酸塩等を添加し てもよい。天然培地としては、例えばS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオン を含むブドウ果皮抽出液が挙げられる。ブドウ果皮抽出液は、そのまま培地として用いて もよいし、さらに前記炭素源、窒素源等を添加してもよい。 【0017】 培養条件は、前記乳酸菌が良好に生育し得る範囲内で適宜選択することができる。通常、 pH3∼9、10℃∼40℃で12∼144時間程度培養する。上述した各種の培養条件 は、使用微生物の種類や特性、外部条件等に応じて適宜変更でき、当業者であれば容易に 最適条件を選択できるであろう。 【0018】  培養液の初発pHは、例えば、pH3∼9の範囲が適当であり、好ましくはpH4∼9 、さらに好ましくはpH5∼9の範囲が望ましい。pHが3を下回った場合、またはpH が9を上回った場合には乳酸菌の生育が極端に遅くなるためである。pH調整にはpH調 整剤を用いることができ、pH調整剤は特に限定されず、公知のpH調整剤を使用するこ とができる。 【0019】  培養温度は、乳酸菌の増殖に適した温度であればよく、例えば、10℃∼40℃の範囲 が適当であり、好ましくは15℃∼35℃の範囲、さらに好ましくは20℃∼30℃の範 囲が望ましい。培養温度が10℃を下回った場合、または培養温度が40℃を上回った場 合には乳酸菌の生育が極端に遅くなるためである。 【0020】 培養期間は、培養液の初発pH、培養温度等の条件にもよるが、乳酸菌を接種後12∼1 44時間の範囲が適当であり、好ましくは24∼120時間の範囲、より好ましくは48 ∼96時間の範囲である。また、培養方法としては、静置培養、振とう培養、深部通気攪 拌培養などが挙げられる。 【0021】 また、培養菌体調製物は、培養終了後、遠心分離または濾過により分離した菌体または予 めホモジェナイズ等した菌体を適当な溶液に懸濁して調製する。菌体の懸濁に使用できる 溶液は、前記した培地であるか、あるいは水、Good緩衝液(例えば、MOPS緩衝液 等)、グリシン‐塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸‐リン酸緩衝液、 リン酸緩衝液、トリス‐塩酸緩衝液、グリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液などの緩衝液を 単独または混合したものである。緩衝液のpHは、好ましくはpH3∼9、さらに好まし くはpH4∼9を挙げることができる。 【0022】 本発明の出発原料(または基質)とは、天然原料由来のS−3−(ヘキサン−1−オール )−グルタチオンを含有する天然原料抽出液、天然原料から単離精製されたS−3−(ヘ キサン−1−オール)−グルタチオンまたは有機合成で得たS−3−(ヘキサン−1−オ ール)−グルタチオンのいずれでも良い。天然原料抽出液としては、例えば、ブドウ果皮 由来のS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンを含有するブドウ果皮抽出液が 挙げられる。 【0023】 こうして生成した目的のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを反応混合 物から単離するには、種々の既知精製手段を選択、組み合わせて行うことができる。例え ば、遠心分離により固形物を除いた後、反応液上清をイオン交換吸着樹脂へ吸着、溶出、 シリカゲル等によるカラム法あるいは薄層クロマトグラフィー、逆相カラムを用いた分取 50 40 30 20 10

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用高速液体クロマトグラフィー等を、単独あるいは適宜組み合わせ、場合により反復使用 することにより分離精製することができる。 【0024】 試料中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンおよびS−3−(ヘキサン− 1−オール)−L−システインの量は以下の分析法を用いて測定することができる。 【0025】 (分析法) 試料を0.1%(v/v)蟻酸を含む10%(v/v)メタノール水溶液を用いて適当な 倍率で希釈し、0.45μmのフィルターでろ過したものをLC/MS/MSシステムを 用いて定量する。検量線を引くために用いた標品については、S−3−(ヘキサン−1− オール)−グルタチオンはC.P.des Gachons、T.Tminagaらの方 法(J.Agric.Food Chem.2002,50,4076−4079.)に 従い、またS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインはC.Thibon、S .Shinkarukらの方法(J.ChromatogrA2008,1183,15 0−157.)に従い、有機合成することで得た。 【0026】 [使用機器] 3200QTRAP LC/MS/MSシステム (Apllied Biosyste ms社) [LC/MS/MS条件] インターフェース:Turbo V source イオン化モード:ESI(positiveモード) イオン源パラメーター:curtain gas 15psi、collision g as 3psi、inospray voltage 5500V、temperatu re700℃、ion source gas1 70psi、ion source  gas2 70psi、interface heater ON 測定モード:MRMモード 選択イオン:S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオン m/z 408.2→ 162.1(collision energy 27V)、S−3−(ヘキサン−1− オール)−L−システイン m/z 222.2→83.2 (collision e nergy 19V) 【0027】 [LC条件] カラム:アトランティス(Atlantis) T3、3μm、2.1×150 mm(W aters社) カラム温度:40℃ 注入量:10μl 移動相A:0.1%(v/v)蟻酸を含む水 移動相B:0.1%(v/v)蟻酸を含むアセトニトリル 流速:0.2ml/min グラジェント:移動相Aと移動相Bの混合率を移動相A:移動相B=90:10から移動 相A:移動相B=0:100まで10分かけて上げ、その後移動相A:移動相B=90: 10に戻し、5分間キープした。 【実施例】 【0028】 以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限 定されるものではない。 【0029】 実施例1 各種ブドウの果汁および果皮(果汁搾汁粕)中の3−メルカプトヘキサン−1 −オール前駆体物質の含有量の測定 50 40 30 20 10

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表1に記載した各種ブドウを手動の圧搾式ジューサーで搾汁し、果汁と果皮(果汁搾汁粕 )を得た。果皮からの3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質の抽出は、果皮2 0gに対して2.5倍量の水(50g)を加え、10℃で24時間浸漬することにより行 った。各種ブドウの果汁、果皮100g当たりに含有する3−メルカプトヘキサン−1− オール前駆体物質の含有量(μg)を上記分析方法で測定した。結果を表1に示す。 【0030】 【表1】

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【0031】 実施例2 MRS培地を用いた各種乳酸菌のS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタ チオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換能力の評価(1 ) Difco社製Lactobacilli MRS Brothを1Lのイオン交換水に 55g混合し、オートクレーブにより滅菌することでMRS培地(pH6.5)を作成し 、クリーンベンチ内でC.P.des Gachons、T.Tminagaらの方法で 調製したS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンを1250nMとなるように 混合した。これを滅菌済15ml ファルコンチューブに約10mlずつ分注し、そこに 各種乳酸菌を最終濃度106∼109 cfu/mlの範囲で接種し、30℃で72時間培 養後、培養混合物中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインを測定した。 結果を表2に示す。 【0032】 【表2】 20

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【0033】  結果、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantar um)、ラクトバチルス ペントサス(Lactobacillus pentosus )、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenter oides)、ぺディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pent osaceus)がS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘ キサン−1−オール)−L−システインへの変換能力を有していた。なかでもラクトバチ ルス ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス  プランタラム(Lactobacillus plantarum)が高い変換能力を 有していた。 【0034】 実施例3 MRS培地を用いた各種乳酸菌のS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタ チオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換能力の評価(2 ) 実施例2と同様にMRS培地(pH6.5)を作成し、有機合成により調製したS−3− (ヘキサン−1−オール)−グルタチオンを1000nMになるように溶解させ、次いで 50 40

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滅菌済15mlファルコンチューブに約10mlずつ分注した。これに表3記載の各種乳 酸菌を最終濃度1.0×106cfu/mlで接種し、30℃で72時間静置培養した後 、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンとS−3−(ヘキサン−1−オール )−L−システインの濃度を実施例1と同様の分析方法で測定した。結果を表3に示す。 【0035】 【表3】

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【0036】 結果、表3に記載の全てのラクトバチルス(Lactobacillus)属乳酸菌がS −3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール) −L−システインへの変換能力を有していた。なかでもラクトバチルス デルブルウエス キー サブスピーシーズ デルブルウエスキー (Lactobacillus del brueckii subsp.delbrueckii)、ラクトバチルス デルブル ウエスキー サブスピーシーズ ブルガリカス(Lactobacillus delb rueckii subsp.bulgaricus)、ラクトバチルス マリー(La ctobacillus mali)、ラクトバチルス プランタラム(Lactoba cillus plantarum)が高い変換能力を有していた。 【0037】 実施例4 果皮抽出液を用いた各種乳酸菌のS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタ チオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換能力の評価(1 ) ブドウ(シャルドネ種)をメンブランプレス(ブーハー・バスラン社製)で搾汁して得た 水分含量66.8%(w/w)のブドウ果皮を1ヶ月間冷凍保存した。冷凍状態のブドウ 果皮1.5kgに対して、3.0kg(2倍量)の水を加え、20℃で24時間浸漬後、 手動の圧搾式ジューサーで圧搾し、Brix5%のブドウ果皮抽出液を得た。得られたブ ドウ果皮抽出液にベントナイトを500ppm添加後30分攪拌し、5℃で24時間静置 した。上澄みを珪藻土濾過した後、フラッシュエバポレーターにて品温60℃で減圧濃縮 し、Brix50%まで濃縮した。ブドウ果皮抽出液の3−メルカプトヘキサン−1−オ ール前駆体物質濃度を測定し、Brix20%換算で算出したところ、ブドウ果皮抽出液 中に含まれる3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質濃度は、9014.2nM {S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン:2895.8nM、S−3−(ヘ キサン−1−オール)−グルタチオン:6118.4nM}であった。 【0038】 このブドウ果皮抽出液をBrix20%に調整し、出発原料とした。このとき、出発原料 中に含まれる3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質濃度は、9014.2nM {S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン:2895.8nM、S−3−(ヘ キサン−1−オール)−グルタチオン:6118.4nM}であった。これに発酵助成剤F ermaidK(Lallemand社)100mg/l、リン酸二水素アンモニウム1 g/lを加え、100mlずつ180ml容のガラス容器に分注した。このとき、pHは 4.4であった。表4記載の乳酸菌をそれぞれ最終濃度1.0×107cfu/mlで接 種し、20℃で24時間静置培養した。培養した後、S−3−(ヘキサン−1−オール) −グルタチオンとS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインの濃度を実施例1 と同様の分析方法で測定した。また、S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイ 50 40 30 20

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ン生成量は培養後の培養液中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン濃度 から培養前の出発原料中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン濃度を引 くことで求めた。結果を表4に示す。 【0039】 【表4】

【0040】 結果、表4に記載の全てのラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus  plantarum)がS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3 −(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換能力を有していた。 【0041】 実施例5 果皮抽出液を用いた各種乳酸菌のS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタ チオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインへの変換能力の評価(2 ) ブドウ(シャルドネ種)をメンブランプレス(ブーハー・バスラン社製)で搾汁して得た 水分含量66.8%(w/w)のブドウ果皮を30∼50日間冷凍保存した。冷凍状態の ブドウ果皮8tに対して16t(2倍量)の水を加え、15∼20℃でメンブランプレス (ブーハー・バスラン社製)内で回転させながら3時間浸漬した後、圧搾し、Brix4 .6%のブドウ果皮抽出液を得た。得られたブドウ果皮抽出液に混濁成分の沈降促進のた め、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)1000ppmとベントナイト500ppm 添加後30分攪拌し、5℃で24時間静置した。上澄みを遠心(4000rpm)し、9 5℃で加熱殺菌した後、真空薄膜式循環濃縮機にて品温30∼40℃で減圧濃縮し、Br ix50%まで濃縮した。ブドウ果皮抽出液の3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆 体物質濃度を測定し、Brix20%換算で算出したところ、ブドウ果皮抽出液中に含ま れるS−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンが1960.8nM(800pp b)(A)、S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインが5203.6nM( 1150ppb)(B)であり、3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質濃度{ (A)+(B)}は7164.4nM(1950ppb)であった。 【0042】 このブドウ果皮抽出液をおよそBrix20%(pH4.2)に調整し、これを出発原料 とした。このとき、出発原料中に含まれる3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物 質濃度は7165nM{S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン:5204n M、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオン:1961nM}であった。この出 発原料を300mlずつ360ml容のガラス容器に分注し、表5記載の乳酸菌を最終濃 度1.0×107cfu/mlで接種し、30℃で48時間静置培養した。培養した後、 S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンとS−3−(ヘキサン−1−オール) −L−システインの濃度を実施例1と同様の分析方法で測定した。また、S−3−(ヘキ サン−1−オール)−L−システイン生成量は培養後の培養液中のS−3−(ヘキサン− 1−オール)−L−システイン濃度から培養前の出発原料中のS−3−(ヘキサン−1− オール)−L−システイン濃度を引くことで求めた。結果を表5に示す。 【0043】 【表5】

10

20

30

40

【0044】

50

(11)

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結果、表5に記載の全てのラクトバチルス(Lactobacillus)属乳酸菌がS −3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール) −L−システインへの変換能力を有していた。なかでもラクトバチルス ヒルガルデイ( Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス プランタラム( Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス マリー(Lac tobacillus mali)が高い変換能力を有していた。 【0045】 実施例6 S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン− 1−オール)−L−システインへの変換(反応時間の変動が及ぼす影響) 実施例4と同様に、ブドウ果皮を水で抽出し、濃縮することで得たブドウ果皮抽出液をお よそBrix22%(pH4.2)に調整し、これを出発原料とした。このとき、出発原 料中に含まれる3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質濃度は8028.1nM {S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン:6244.3nM、 S−3−( ヘキサン−1−オール)−グルタチオン:1783.8nM}であった。出発原料500 mlを750ml容のガラス容器に分注し、乳酸菌(ラクトバチルス プランタラム(L actobacillus plantarum):viniflora planta rum(クリスチャンハンセン社製)を最終濃度3.5×106cfu/mlで接種し、 20℃で144時間静置培養した。経時的にサンプリングを行い、乳酸菌によるS−3− (ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン−1−オール)−L− システインへの変換推移を調べた。サンプリングした培養液中のS−3−(ヘキサン−1 −オール)−グルタチオンとS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインの濃度 を実施例1と同様の方法で分析した。また、S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−シ ステイン生成量は培養後の培養液中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイ ン濃度から培養前の出発原料中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン濃 度を引くことで求めた。結果を表6に示す。 【0046】 【表6】 20 10

30

【0047】 実施例7 S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン− 1−オール)−L−システインへの変換(培養時のpHが及ぼす影響) 実施例4と同様に、ブドウ果皮を水で抽出し、濃縮することで得たブドウ果皮抽出液をお よそBrix20%に調整し、これを出発原料とした。このとき、出発原料中に含まれる 3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質濃度は5669.4nM{S−3−(ヘ キサン−1−オール)−L−システイン:4416.3nM、S−3−(ヘキサン−1− オール)−グルタチオン:1253.1nM}であった。この出発原料各500mlを水酸 化ナトリウム、塩酸を用いて初発pHをpH2∼9のいずれかに調整した後、750ml 容のガラス容器に分注し、培養温度20℃で乳酸菌ラクトバチルス プランタラム(La ctobacillus plantarum):viniflora plantar um(クリスチャンハンセン社製)を最終濃度6.0×107cfu/mlで接種し、4 8時間静置培養した。培養した後、S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンと S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインの濃度を実施例1と同様の方法で分 析した。また、S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン生成量は培養後の培 50 40

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養液中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン濃度から培養前の出発原料 中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン濃度を引くことで求めた。結果 を表7に示す。 【0048】 【表7】

10 【0049】 実施例8 S−3−(ヘキサン−1−オール)−グルタチオンからS−3−(ヘキサン− 1−オール)−L−システインへの変換(培養温度の変動が及ぼす影響) 実施例4と同様に、ブドウ果皮を水で抽出し、濃縮することで得たブドウ果皮抽出液をお よそBrix22%(pH4.2)に調整し、これを出発原料とした。このとき、出発原 料中に含まれる3−メルカプトヘキサン−1−オール前駆体物質濃度は6216.5nM {S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン:4796.4nM、S−3−(ヘ キサン−1−オール)−グルタチオン:1420.1nM}であった。この出発原料各50 0mlを750ml容のガラス容器に分注し、10∼40℃の各培養温度で乳酸菌ラクト バチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum):vin iflora plantarum(クリスチャンハンセン社製)を最終濃度6.0×1 07cfu/mlで接種し、48時間静置培養した。培養後、S−3−(ヘキサン−1− オール)−グルタチオンとS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システインの濃度を 実施例1に記載した方法で分析した。また、S−3−(ヘキサン−1−オール)−L−シ ステイン生成量は培養後の培養液中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイ ン濃度から培養前の出発原料中のS−3−(ヘキサン−1−オール)−L−システイン濃 度を引くことで求めた。結果を表8に示す。 【0050】 【表8】 30 20