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JP 2011-115118 A 2011.6.

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(57)【要約】 【課題】全体的に桃やトロピカルフルーツを思わせる、甘酸っぱいフルーティーな香りの 芳香豊なものである完熟香を放つ梅酒を、短期間で製造できる方法、及び該方法で製造さ れた新規梅酒を提供することを課題とする。 【解決手段】本発明者等は、完熟梅または追熟梅を凍結して、アルコール水溶液又は糖を 含有するアルコール水溶液に浸漬することにより、顕著に高いレベルで完熟香気成分を含 む梅酒を製造する方法を開発した。 【選択図】なし

(2) 【特許請求の範囲】 【請求項1】

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 梅酒の製造方法において、完熟梅及び/又は追熟梅を凍結処理し、果皮及び/又は果肉 からなる部分のみが直接アルコール水溶液に接触した状態で、アルコール水溶液に浸漬す ることを特徴とする、顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法。 【請求項2】  浸漬期間が6日∼2ヶ月であることを特徴とする、請求項1記載の顕著な完熟香を有する 梅酒の製造方法。 【請求項3】  浸漬するアルコール水溶液のアルコール度数が20∼50V/V%であることを特徴とする、 請求項1又は2記載の顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法。 【請求項4】  浸漬開始以前又は浸漬中に糖類を添加することを特徴とする、請求項1∼3いずれか1項 記載の顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法。 【請求項5】  浸漬開始以前又は浸漬開始から0∼7日以内に糖類を添加することを特徴とする、請求項 1∼4いずれか1項記載の顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法。 【請求項6】  アルコール水溶液中のγ−デカラクトンが200μg/L以上であることを特徴とする、請 求項1∼5いずれか1項記載の顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法。 【請求項7】  請求項1∼6のいずれか1項記載の方法で製造された顕著な完熟香を有する梅酒。 【請求項8】  γ−デカラクトンを200μg/L以上含有することを特徴とする、顕著な完熟香を有する 梅酒。 20 10

【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】  本願発明は、梅酒及びその製造の技術分野に属する。本願発明は、特に、完熟香が強く 感じられる新規な梅酒及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】  梅酒は、従来から家庭でも作られており、家庭での梅酒製造では、一般的には、梅を焼 酎のような高アルコール飲料に砂糖と共に数ヶ月漬け込むことが良く行われている。また 、近年では、醸造メーカーによっても、手軽に飲める梅酒が開発・生産され、更に、趣向 の凝らした新しい梅酒が開発・製造されている。最近では、フルーティーな香りのするも のの人気から、フルーティーな梅酒開発に力が注がれている。 【0003】  例えば、フルーティーな梅酒を得るために、追熟梅を用いて梅酒を製造する方法が提案 されている(特許文献1)。また、短い熟成期間で、フレッシュな香味を有する梅酒の製造 のために、梅を急速凍結し、種(核)ごと粉砕した後、浸漬する梅酒の製造方法も開発され ている(特許文献2)。更に、熟成した梅酒には、深みとコクは出るものの、青梅本来のフ レッシュ感が失われるので、青梅果汁を添加することも行われている(特許文献3)。また 、フルーティーな香味を出させるため香料成分を添加した市販品もある。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2004-57036 50 40 30

(3) 【特許文献2】特開2007-195435 【特許文献3】特開2004-337039 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】

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 本願発明は、完熟梅に特徴的な香気成分を持つ梅酒の開発を主要な課題としている。従 来、青梅を使用した梅酒には熟した果実のフルーティーな香りはなかった。最近ではフル ーツのような良好な香気を持つ完熟梅を原料としたプレミアム商品も市販されている。し かし、フルーツ様香気を持つ香りの優れた完熟梅を用いても、その香りの良さを梅酒に十 分に引き出すことはできなかった。従来、完熟梅や追熟梅を用いて常法で梅酒を製造して も、熟成した梅本来の優れたフルーティー感を引き出すには及ばなかった。香料を添加す ることでフルーティー感の一部を補うことも考えられるが、熟成した梅本来の優れたフル ーティー感はなく、人工的な香味の域を出なかった。 【0006】  そこで、本願発明は、完熟梅・追熟梅が本来持つ自然で優れた完熟香気成分を引き出し た、従来にない梅酒の製造方法を提供することを第1の課題とする。香味バランスの優れ た完熟香を有する梅酒の製造方法を提供することを第2の課題とする。更に、本願発明は 、そのための、最適の製造条件を確立することを第3の課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 1.はじめに  梅酒は、古くは、主として家庭で製造されてきたが、近年では、醸造メーカーから、非 常に多様な種類が製造されており、各メーカーは個性あふれる梅酒の生産にしのぎを削っ ている。梅酒のテイスティングでは、甘み、酸味等の味に加え、香りが重要な要素となっ ている。そして、梅酒は現在、嗜好の多様化、高級化に伴い、香りの高い梅酒、梅の中で も完熟梅の持つフルーティーな香り、特に桃やトロピカルフルーツ様の甘い香りを放つ梅 酒が求められるようになってきている。 【0008】  本発明者等は、梅酒の調製条件を種々検討した結果、昨今求められる桃やトロピカルフ ルーツ様の甘い香りの完熟香気成分を持つ梅酒を、安定して調製する条件の確立に成功し 、本願発明を完成させたものである。 【0009】 2.梅酒の製造 2-1.概要  本願発明者等は、多岐にわたる種々の試行錯誤の結果、完熟梅又は追熟梅を凍結して、 糖類及びアルコール水溶液又はアルコール水溶液に浸漬することにより、慣例法に比較し 顕著に高いレベルで完熟香気成分を含む梅酒が製造できることを見出した。この成功後も 、完熟香成分のより高い抽出条件を求めて研究を続け、梅の熟度/浸漬期間/浸漬するア ルコール水溶液のアルコール度数/砂糖添加の有無/糖の添加タイミング等を検討するこ とにより、梅酒としての香味を確保しつつ、完熟香を最も引き出す条件をついに見出し本 願発明を完成させた。 【0010】  より具体的には、本発明の梅酒製造方法は、通常の梅酒製造において、青梅に代えて完 熟梅又は追熟梅を用い、これら完熟梅又は追熟梅を凍結して糖類およびアルコール水溶液 またはアルコール水溶液に浸漬することを特徴としている。アルコール水溶液に浸漬抽出 させ、その後、梅を分離除去することにより本発明の梅酒を製造できる。 【0011】 2-2.梅酒製造用の梅  本発明の梅酒製造に用いる梅としては、通常梅酒製造に用いられているいずれの品種で あっても用いることができるが、例えば、南高、長束、藤五郎、白加賀等を挙げることが 50 40 30 20 10

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できる。また外国産であってもよい。本発明で言う完熟梅とは、通常梅酒製造に用いる青 梅とは異なり、実が黄変し、フルーティー様の香り(ラクトン類、エステル類)を放つ状態 の梅のことであり、樹上のもの、完熟して落下したもの、それらを採取後に追熟した実を 含む。また追熟梅とは、青梅を木から収穫後、15∼35℃で約2∼6日間保管熟成させたもの が挙げられる。適当な保管熟成の期間は梅の実の熟度によって異なるが、約2∼6日で最適 熟度に達する。またその際には、密閉条件下よりも開放系で適度に空気に触れさせる方が より良好に追熟できる。  この状態での梅の実の香りは、全体的に桃やトロピカルフルーツを思わせる、甘酸っぱ いフルーティーな香りの芳香豊なものである。 【0012】 2-3.梅酒製造の各工程 (1) 完熟梅又は追熟梅の凍結  まず、通常は、完熟又は追熟した梅の実を水又は適宜洗浄用水溶液で洗浄後、水分をふ き取るか、或いは、梅を洗浄することなく、砂や塵を除去或いは拭き清める等する。次に 完熟又は追熟した梅の実を凍結させる。凍結方法は、特に限定されず任意の冷凍方法を採 用できる。例えば、空気凍結法、エア・ブラスト凍結法、接触式凍結法、ブライン凍結法 、液体窒素を用いる凍結法等、食品製造において通常用いられている冷凍手段であればい ずれの冷凍手段でも良いが、好適には、-20℃の冷凍庫で24時間以上経過させることで凍 結することができる。 【0013】 (2) 浸漬  凍結した完熟梅又は追熟梅は、凍結状態のままアルコール水溶液に浸漬するが、場合に よっては、解凍中或いは解凍後に、アルコール水溶液に浸漬しても良い。凍結した完熟梅 又は追熟梅は、粉砕することなくそのまま、言い換えれば、果皮及び/又は果肉からなる 部分のみが直接アルコール水溶液に接触した状態で、アルコール水溶液に浸漬することが 好ましい。 【0014】  なお、アルコール水溶液としては、エタノール水溶液、具体的には、蒸留酒、例えば、 焼酎、泡盛、ブランディー、白酒、ウォッカ、ジン、ラム酒、アクアビットを用いること ができる。また、アルコール水溶液には糖を添加して、糖含有アルコール水溶液とするこ とができる。アルコール水溶液に添加する糖類としては、適宜の糖、例えば、氷砂糖、砂 糖、異性化糖、単糖類(果糖、ブドウ糖)、二糖類(ショ糖、乳糖)、多糖類、液糖、三温糖 等を加えたものが挙げられる。 【0015】  そしてアルコール水溶液のアルコール濃度(アルコール度数)としては、20∼50%(V/V% )、香味の観点でより好ましくは20∼35%(V/V%)の範囲とすることができ、30%前後、例 えば28∼32%(V/V%)、具体的には30%(V/V%)とすることが望ましい。凍結梅を浸漬させ る場合の、梅(kg):アルコール含有水溶液(L):糖(kg)の比は、通常、1:(1.0∼3.0):(0 .0∼2.0)の範囲内とすることができる。香味の抽出の観点から、糖が添加された条件であ る梅(kg):アルコール含有水溶液(L):糖(kg)の比が1:(1.0∼3.0):(0.1∼2.0)がより好 ましい。 【0016】  また、糖類のアルコール水溶液への添加時期としては、凍結梅浸漬と同時、又は、凍結 梅をアルコール水溶液に浸漬した後0∼7日以内、好適には24時間後に添加することが望ま しい。また、予め糖とアルコールを混ぜて溶解したものを添加しても良い。 【0017】  凍結完熟梅又は凍結追熟梅の糖類及びアルコール水溶液、又はアルコール水溶液への浸 漬期間としては、6日から6ヶ月、或いは、2週間から6ヶ月、好適には香味の観点から6日 から2ヶ月、或いは2週間から2ヶ月、例えば2週間から1ヶ月、浸漬することが望ましい。 浸漬期間後には、梅実を分離して、梅酒として提供することができる。 50 40 30 20 10

(5) 【0018】

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 更に、例えば、下記3.の梅酒評価方法によりラクトン類又はγ−デカラクトンを分析し 、ラクトン類又はγ−デカラクトンを指標として凍結梅を糖類及びアルコール水溶液、又 はアルコール水溶液に浸漬させることもできる。 【0019】 3.梅酒の評価方法  完熟の実を用いた梅酒の香気成分としてはラクトン類及びエステル類に分けられるが、 完熟香の香気はγ−デカラクトンによるところが大きい。そこで、梅酒の完熟香の評価は 、γ−デカラクトンの分析によることが好ましい。γ−デカラクトンは、例えば、ガスク ロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーや、ガスクロ・質量分析装置(GC/MS)、又は 液クロ・質量分析装置(LC/MS)で測定することができる。 【0020】  更に、梅酒の味覚成分としては、アミノ酸、及び有機酸の含量が重要であり、梅酒の味 覚は、アミノ酸、及び有機酸を測定することにより評価することができる。アミノ酸、有 機酸の定量も、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーや、ガスクロ・質量分 析装置(GC/MS)、或いは液クロ・質量分析装置(LC/MS)、またはキャピラリー電気泳動装置 で測定することにより分析することができる。 【0021】  また、香り、味両者とも、官能評価により従来の梅酒と比較することで評価することも できる。なお、官能評価及び分析機器による評価を綜合すると、50∼200μg/Lのγ−デカ ラクトンを含む梅酒は「良好な完熟香」を持つものと言え、200μg/L以上のγ−デカラク トンを含む梅酒は「顕著な完熟香」を持つ梅酒と言える。 【0022】 4.新規梅酒  本願発明の方法で製造した新規梅酒は、桃やトロピカルフルーツを思わせる甘酸っぱい フルーティーな香りの芳香豊なものであり、更に梅酒としての酸味やアミノ酸味、梅酒と しての味も充分備えたものである。即ち、本願発明の製造方法で製造された新規梅酒は、 200μg/L以上γ−デカラクトンを含む「顕著な完熟香」を有するもの、好ましくは300μg /L以上、さらに好ましくは400μg/L以上のγ−デカラクトンを含むものである。更に、本 願発明の新規な梅酒は、充分な有機酸、アミノ酸を含有し、官能評価においても優れた性 質を示すもので、梅酒としての味も従来のものと同じか、それ以上に味わい深く、優れた ものであり、例えば、えぐ味も少ない。これらの特徴を兼ね備えた梅酒は、従前の公知の 製造方法では達成し得なかったものである。 【発明の効果】 【0023】  本願発明の方法により、従来の梅酒製造に比べて短期間の、約1ヶ月程度で、200μg/L 以上のγ−デカラクトンを含む、桃やトロピカルフルーツを思わせる甘酸っぱいフルーテ ィーな香りの芳香豊な、完熟梅・追熟梅が本来持つ自然で優れた完熟香気成分を引き出し た梅酒を提供することができるという極めて優れた効果を奏する。 【0024】  また、本願発明は、完熟梅・追熟梅が本来持つ自然で優れた完熟香気成分を引き出した 、従来にない梅酒の製造方法を提供するという格別の効果を奏する。 【0025】  更に、本願発明は、香味バランスの優れた完熟香を有する梅酒の製造方法を提供できる という優れた効果を奏する。また、本願発明は、そのための、最適の製造条件を確立でき たという極めて優れた効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 【0026】 【図1】市販品と本法の比較:市販品と本発明方法による梅酒との香気成分(γ−デカラ クトン)分析の比較 50 40 30 20 10

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【図2】生梅と凍結梅の比較(香気成分):生梅又は凍結梅(それぞれ青梅、完熟梅)を用い た場合について、製造された梅酒中のγ−デカラクトン含量の比較 【図3】生梅と凍結梅の比較(総有機酸):生梅又は凍結梅(それぞれ青梅又は完熟梅)を 用いて梅酒を製造した場合、製造された梅酒中の有機酸濃度の比較 【図4】生梅と凍結梅の比較(総アミノ酸):生梅又は凍結梅(それぞれ青梅又は完熟梅)を 用いて梅酒を製造した場合、製造された梅酒中のアミノ酸濃度の比較 【図5】浸漬期間の比較:生梅又は凍結梅(完熟梅)を用いて、浸漬期間を変えて梅酒を製 造した場合、製造された梅酒中のγ−デカラクトン含量の比較 【図6】アルコール度数の比較:生梅又は凍結梅(完熟梅)を用いて、浸漬するアルコール 水溶液のアルコール度数を変えて梅酒を製造した場合、製造された梅酒中のγ−デカラク トン含量の比較 【図7】糖の有無の比較:生梅又は凍結梅(完熟梅)を用いて、浸漬するアルコール水溶液 に糖を添加してあるいは添加せずに梅酒を製造した場合、製造された梅酒中のγ−デカラ クトン含量の比較 【図8】糖の添加タイミングの比較:生梅と凍結梅(完熟梅)を用いて、浸漬するアルコー ル水溶液に添加する時期を変えて糖を添加して梅酒を製造した場合、製造された梅酒中の γ−デカラクトン含量の比較 【図9】生梅、凍結粉砕梅および凍結梅の比較:生梅(青梅、完熟梅)、凍結粉砕梅(完熟 梅)又は凍結梅(完熟梅)を用いた場合について、製造された梅酒中のγ−デカラクトン含 量の比較 【発明を実施するための形態】 【0027】  本願発明の一態様として、以下に実施例を示すが、本願発明は、以下の実施例に限定さ れるものではない。 【実施例】 【0028】 以下の実施例中における、香気成分分析、有機酸分析、アミノ酸分析及び官能評価は、次 のようにして行った。 【0029】 I.香気成分分析  γ-デカラクトンを、本発明の桃やトロピカルフルーツを思わせる甘酸っぱいフルーテ ィーな香りの芳香豊な梅完熟香気成分の指標とし、以下のように測定した。 【0030】 1.サンプルの前処理 (i)分液ロートに塩化ナトリウム11g、サンプル40mL、100mg/L内部標準溶液(シクロヘキ サノール)0.2mL、n-ペンタン2mLを加え、振とう機で10分間振とうした。 (ii)上層を採取し、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水する。 (iii)フィルター(0.45μm)濾過した試験液をGC/MS(内部標準法)にて測定した。 【0031】 2.GC/MSの測定は、次の装置を用いて、以下の条件でおこなった。 40 30 20 10

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【0032】 II.有機酸分析 1.サンプルの前処理  試料を、超純水で200倍に希釈する。希釈した試料を限外濾過フィルターに入れ10℃前 後、9,000rpmで12分間遠心分離を行った。 【0033】 2.分析条件 キャピラリー電気泳動による測定は、次の装置を用いて、以下の条件で行っ た。 20

30

【0034】 III.アミノ酸分析  総アミノ酸の分析は、日立製作所製L-8800アミノ酸分析計を用いて行った。メインカラ ムは#2622〔日立ハイテクノロジーズ〕、ガードカラムは#2619〔日立ハイテクノロジー ズ〕を用い、プロリンは440nm、プロリン以外のアミノ酸はニンヒドリンで発色させ570nm で検出し、予め作成した検量線より濃度を算出した。 【0035】 IV. 官能評価  官能評価は、専門パネル4名により、香り(フルーティー)、味(梅酒としての調和感、え ぐ味−収斂味)において比較に必要な項目の評価を行い、以下のように定義付けした。な お、「梅酒としての調和感」は、梅酒として遜色がない香味の調和が図られているかを評 価した。 【0036】 50 40

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 味(梅酒としての調和感)については、(1:非常に悪い 2:悪い 3:コントロールと同 じ 4:良い 5:非常に良い)と区分した。 【0037】  香り(フルーティー)、味(えぐ味−収斂味)については、(1:非常に弱い 2:弱い 3:コ ントロールと同じ 4:強い 5:非常に強い)と区分した。 【0038】 [実施例1] 本願発明品及び市販品中の梅酒完熟香気成分の比較、並びに完熟香の定義  まず、完熟香を特徴として一般的に市販されている無香料および香料を含む商品(市販 品)と本発明の方法による梅酒中の香気分析を行った。 【0039】  本願発明の方法による梅酒を次のように調製した。南高梅(完熟梅)を-20℃の冷凍庫で2 4時間以上静置することにより凍結させた。凍結をさせた梅を、まず、梅(kg):30%アル コール(L)=1:1.8の浸漬比率となるように、30%アルコールに浸漬した。梅を浸漬した後 、24時間後に上白糖を、梅(kg):30%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比となるよう に添加した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0040】  また、比較対象として、生青梅を従来法で漬けた梅酒を以下のように調製した。南高梅 (青梅)を、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比となるように浸漬した。 なお糖としては、上白糖を使用し、梅に糖とアルコールを混ぜて溶解したものを添加した 。そして室温で6ヶ月浸漬した。 【0041】  更に、無香料完熟タイプ(市販品A、市販品B)及び香料が添加された市販品Cを比較対象 として用いた。 【0042】  上記梅酒の、香気分析及び官能評価を行った。結果を以下の表1及び2並びに図1に示す 。 【0043】 【表1】 30 20 10

【0044】 【表2】

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【0045】  上に示されるように本願発明の方法で製造した梅酒には、市販品の数倍∼20倍程度のγ −デカラクトンを含有し、官能評価の結果からも強い完熟香を有することが示された。 【0046】  市販品の分析データ、官能評価の結果をもとにして、完熟香の強さをγ−デカラクトン の含有濃度で以下のように定義した。 50

(9) 0∼20μg/L  「完熟香なし」 20∼50μg/L  「完熟香あり」 50∼200μg/L  「良好な完熟香」 200μg/L以上  「顕著な完熟香」

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 以下の実施例では、「顕著な完熟香」の実現を目標として、各浸漬条件を検討した。 【0047】 [実施例2] 凍結させた青梅、凍結させた完熟梅、生青梅および生完熟梅を用いた梅酒製 造における完熟香気成分および味に関する成分の比較  実の熟度(青梅・完熟梅)、凍結処理の有無の比較(凍結処理あり;凍結梅、凍結処理な し;生梅)により、製造された梅酒の完熟香の顕著度合いを比較し、更に梅酒としての香 味成分が確保できているかを確認するため、完熟香気成分、有機酸、アミノ酸の含有量を 分析した。 【0048】  本願発明の方法により梅酒を次のように調製した。南高梅(完熟梅)及び青梅を-20℃の 冷凍庫で24時間以上静置することにより凍結させた。凍結をさせた完熟梅及び青梅を、そ れぞれ、梅(kg):30%アルコール(L)=1:1.8の浸漬比率で、30%アルコールに浸漬した。 梅を浸漬した後、24時間後に上白糖を、梅(kg):30%アルコール(L):糖=1:1.8:0.5の比 となるように添加した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0049】  また、比較対象として、生青梅又は生完熟梅を従来法で漬けた梅酒を以下のように調製 した。南高梅(青梅及び完熟梅)を、それぞれ、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1. 8:0.5の比となるように浸漬した。糖としては、上白糖を使用し、梅は、糖とアルコール を混ぜて溶解したものに浸漬した。そして室温で6ヶ月浸漬した。  結果を以下の表3,4及び5、並びに図2,3及び4に示す。 【0050】 【表3】 20 10

30

【0051】 【表4】

40 【0052】 【表5】

【0053】

(10) 【表6】

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【0054】  生の完熟梅を使用した試験では、完熟香を特徴として販売されている市販酒と同等レベ ルのγ−デカラクトンを含有し、実施例1で定義した「良好な完熟香」の梅酒が得られた 。 【0055】  一方、本発明の方法(冷凍させた完熟梅を用いた試験区)では、その3倍以上のγ−デカ ラクトンを含有すると共に、実施例1で定義した200μg/Lを超える、「顕著な完熟香」の 梅酒が得られた(表3、図2)。 【0056】  以上の結果から、完熟梅を凍結させて用いることにより特異的に完熟香気の高い梅酒を 得られることがわかる。 【0057】  また、凍結した完熟梅を使用すると、短期間(1ヶ月)の浸漬でも生梅と同等レベルの 有機酸、アミノ酸等の味に関する成分が得られる事が確認された(表4、5および図3、4)。 【0058】  さらに、本法では官能評価からえぐ味が低減された梅酒であることが示された(表6)。 よって、本法では味の総合バランスと香りが良く、香味バランスが優れた梅酒を製造する ことができるといえる。 【0059】 [実施例3] 浸漬期間の違いによる完熟香気への影響確認  浸漬期間の違いによる完熟香への影響を確認するため、6日∼6ヶ月まで浸漬期間を変え て設定し、生成した完熟香を分析比較した。 【0060】  本願発明の梅酒は、次のように、糖を含めず、種々の異なる浸漬期間により調製した。 具体的には、南高梅(完熟梅)を-20℃の冷凍庫にて24時間以上静置することにより凍結さ せた。凍結をさせた梅を、まず、梅(kg):30%アルコール(L)=1:2.1の浸漬比率で、30% アルコールに浸漬した(なお、砂糖が梅の重量比で0.5溶解しているときの容積比が0.3と なるので、梅の実の量と溶媒の量を一定にするために、無糖の場合は溶媒量として0.3を 加算して、梅(kg):アルコール(L)=1:2.1とした。(砂糖1kgは溶解すると0.6L容量とな る)。そして室温で6日から6ヶ月浸漬した。 【0061】  生梅を用いた梅酒は次のように調製した。実施例2と同様に凍結することなく、南高梅( 青梅及び完熟梅)を、それぞれ、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比と なるように浸漬した。なお糖としては、上白糖を使用し、梅に糖とアルコールを混ぜて溶 解したものを添加した。そして室温で6ヶ月浸漬した。  結果を以下表7及び8並びに図5に示す。 【0062】 40 30 20 10

(11) 【表7】

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【0063】 【表8】

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【0064】  何れの浸漬期間においても、完熟の生梅を使用した梅酒を上回る完熟香を含有する梅酒 が得られると共に、実施例1で定義した「顕著な完熟香」となった。 【0065】  浸漬期間の異なるものの比較では、浸漬1ヶ月の試験区で最も高いγ−デカラクトンを 含有する梅酒が得られた。6日∼2ヶ月浸漬では、常法よりえぐ味は低下したか、ほぼ変わ らなかった。 【0066】 [実施例4] アルコール度数の違いによる完熟香気への影響確認  アルコール度数の違いによる完熟香気への影響を確認するため、20∼50%までのアルコ ール濃度を設定し、完熟香を比較した。 【0067】  本願発明の梅酒は、次のように、糖を含めず、種々のアルコール濃度で調製した。具体 的には、南高梅(完熟梅)を-20℃の冷凍庫にて24時間以上で静置することにより凍結させ た。凍結をさせた梅を、まず、梅(kg):20∼50%アルコール(L)=1:2.1の浸漬比率で、20 ∼50%アルコールにそれぞれ浸漬した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0068】  生梅を用いた梅酒は次のように調製した。実施例2と同様に凍結することなく、南高梅( 青梅及び完熟梅)を、それぞれ、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比と なるように浸漬した。なお糖としては、上白糖を使用し、梅に糖とアルコールを混ぜて溶 解したものを添加した。そして室温で6ヶ月浸漬した。  結果を表9及び10並びに図6に示す。 【0069】 【表9】 40 30 20

【0070】

(12) 【表10】

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【0071】  全ての試験区で完熟の生梅を使用した梅酒を上回るγ−デカラクトンが得られると共に 、実施例1で定義した「良好な完熟香」または「顕著な完熟香」となった。 【0072】  また、γ−デカラクトンはアルコール20%の試験区で最大となったが、官能評価におけ る梅酒の味(梅酒としての調和感)はアルコール30%の試験区が最も高かった。 【0073】 [実施例5] 糖の有無の違いによる完熟香気への影響  糖の有無の違いによる完熟香気への影響を確認するため以下の試験をした。 【0074】  本願発明の梅酒は、次のように、調製した。具体的には、南高梅(完熟梅)を-20℃の冷 凍庫で24時間以上で静置することにより凍結させた。(1)無糖の場合は、凍結をさせた梅 を、梅(kg):30%アルコール(L)=1:2.1の浸漬比率で、30%アルコールに1ヶ月浸漬した 。(2)加糖の場合は、凍結をさせた梅を、梅(kg):30%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8 :0.5の比となるように浸漬した。なお糖としては、上白糖を使用し、凍結梅に糖とアルコ ールを混ぜて溶解したものを添加した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0075】  生梅を用いた梅酒は次のように調製した。実施例2と同様に凍結することなく、南高梅( 青梅及び完熟梅)を、それぞれ、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比と なるように浸漬した。なお糖としては、上白糖を使用し、梅に糖とアルコールを混ぜて溶 解したものを添加した。そして室温で6ヶ月浸漬した。  結果を表11及び図7に示す。 【0076】 【表11】 30 20 10

【0077】  糖あり、糖なしの何れの区分でも、凍結完熟梅を用いた場合には、完熟の生梅を使用し た梅酒を上回るγ−デカラクトンを含有する梅酒が得られると共に、実施例1で定義した 「顕著な完熟香」となった。 【0078】  また、糖あり、糖なしの比較では、糖ありの区分で糖なしに比べ、約20%多くのγ−デ カラクトンを含有する梅酒が得られた。 【0079】 [実施例6] 糖の添加時期の違いによる完熟香気への影響  糖の添加時期による完熟香気への影響を確認するため、同時添加(0時間)、24時間後、7 日後、14日後、30日後に添加時期を設定し、完熟香を比較した。 【0080】  本願発明の方法による梅酒は、次のように調製した。南高梅(完熟梅)を-20℃の冷凍庫 で24時間以上静置することにより凍結させた。凍結をさせた完熟梅を、梅(kg):30%アル 50 40

(13)

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コール(L)=1:1.8の浸漬比率で、30%アルコールに浸漬した。梅を浸漬した後、設定時間 後(0時間、24時間後、7日後、14日後、30日後)に上白糖を、梅(kg):30%アルコール(L) :糖(kg)=1:1.8:0.5の比となるように添加した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0081】  また、比較対象として、生青梅及び生完熟梅を従来法で漬けた梅酒を以下のように調製 した。南高梅(青梅及び完熟梅)を、それぞれ、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1 .8:0.5の比となるように浸漬した。なお糖としては、上白糖を使用し、梅に糖とアルコー ルを混ぜて溶解したものを添加した。そして室温で6ヶ月浸漬した。  結果を表12及び図8に示す。 【0082】 【表12】 10

【0083】  何れの糖添加時期においても、完熟の生梅を使用した梅酒を上回るγ−デカラクトンを 含有する梅酒が得られると共に、実施例1で定義した「顕著な完熟香」となった。 【0084】  添加時期の比較では、浸漬24時間後に糖を添加する試験区で最も高いγ−デカラクトン を含有する梅酒が得られた。 【0085】 [比較例1]  本発明の方法と類似する先行技術である凍結粉砕した梅の実を用いる方法(以下、凍結 粉砕法)との比較を行った。 【0086】  凍結粉砕法は、凍結粉砕した梅の実を用いて、慣例法と同等以上の有機酸、アミノ酸等 の成分を含有する梅酒を短期間に製造することを目的に開発されたものである。本発明の 方法と凍結粉砕法により製造した梅酒について、完熟香気成分を比較検討した。 【0087】  (1)本願発明の梅酒は、上記実施例1と同様に調製した。具体的には、南高梅(完熟梅)を -20℃の冷凍庫で24時間以上静置することにより凍結させた。凍結をさせた梅を、まず、 梅(kg):30%アルコール(L)=1:1.8の浸漬比率で、30%アルコールに浸漬し、梅を浸漬し た後、24時間後に上白糖を、梅(kg):30%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比となる ように添加した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0088】  (2)凍結粉砕梅を用いた梅酒は、次のように調整した。南高梅(完熟梅)を液体窒素(-196 ℃)で凍結させた。凍結をさせた梅を、凍結粉砕機で凍結したまま粉砕した。凍結粉砕物 をまず、梅(kg):30%アルコール(L)=1:1.8の浸漬比率で、30%アルコールに浸漬し、梅 を浸漬した後、24時間後に上白糖を、梅(kg):30%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の 比となるように添加した。そして室温で1ヶ月浸漬した。 【0089】  (3)生梅を用いた梅酒は次のように調製した。実施例2と同様に凍結することなく、南高 梅(青梅及び完熟梅)を、それぞれ、梅(kg):35%アルコール(L):糖(kg)=1:1.8:0.5の比 となるように浸漬した。なお糖としては、上白糖を使用し、梅に糖とアルコールを混ぜて 溶解したものを添加した。そして室温で6ヶ月浸漬した。  結果を表13及び図9に示す。 50 40 30 20

(14) 【0090】 【表13】

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【0091】  本発明の方法と同じ完熟の梅実を用いて試験を行ったが、先行類似技術である凍結粉砕 法では完熟香気成分を高める効果はなく、むしろ生の完熟梅を使用する梅酒よりも著しく γ−デカラクトン含量が低く、実施例1で定義した区分では、「完熟香なし」となること が示された。一方、凍結した完熟梅を使用した本法では、生の完熟梅を使用する場合の約 3.5倍のγ−デカラクトンを含有する梅酒が得られると共に、実施例1で定義した「顕著な 完熟香」となることが示された。 【0092】 [比較例2]  比較例1に準じて本発明の方法と凍結粉砕法との比較を行った。  (1)本願発明の梅酒は、浸漬期間を6日間又は14日間とした点以外は上記比較例1と同じ 条件で調製した。  (2)凍結粉砕梅を用いた梅酒は、浸漬期間を6日間又は14日間とした点以外は上記比較例 1と同じ条件で調製した。  (3)生梅を用いた梅酒は上記比較例1と同じ条件で調製した。  結果を以下に示す。 【0093】 【表14】 20 10

30

【0094】 結果  凍結粉砕梅は後味の完熟感が全くないが、凍結梅(本法)は完熟の余韻が残り非常に良 い印象を受けた。また、凍結粉砕梅は生梅同様のえぐ味が感じられるものの、凍結梅は収 斂味・えぐ味が非常に少なかった。 【産業上の利用可能性】 【0095】  本願発明は、食品産業、醸造業、酒造業等の産業分野で利用することができる。 40

(15) 【図1】 【図3】

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【図2】

【図4】

【図5】

【図7】

【図8】 【図6】

(16) 【図9】

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(17) フロントページの続き (72)発明者 山崎 哲弘 東京都中央区新川二丁目10番1号 麒麟麦酒株式会社内 (72)発明者 山崎 大樹 東京都中央区新川二丁目10番1号 麒麟麦酒株式会社内 (72)発明者 金野 知典 東京都中央区京橋一丁目5番8号 メルシャン株式会社内

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