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( The Sout h Sea

Bubbl e)
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( Anne Gol dgar )

( pr oj ect or )

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バブル崩壊後、南海会社は 「悪徳プロジェクト」として新聞等のメディアによって批判されたこ
とが申請者のこれまでの調査で明らかになった。国内外の先行研究は、この「悪徳プロジェクト」
のイメージと、バブル崩壊に至る実際の過程を混同してきた。本研究が解明するのは、社会貢献
の強調とそれへの不信の噴出が、南海会社をバブルへと導いて行った社会過程である。そこで重
要な史料となるのが、イギリス全土46か所の資料館に散在する400を超える手紙とビジネス
の記録である。先行研究はこれらの史料を包括的に分析してこなかったので、社会貢献を謳った
南海会社への不信の実態を調査する為には、この史料群の調査が不可欠である。
調査を行うにあたっては 1)バブル崩壊以前の南海会社の宣伝、2)投資家の反応、3)バブ
ル崩壊のメカニズムの三段階に分けて事件の顛末を調査・分析する。南海会社の宣伝(1)につい
ては、既に調査中で、他の起業家と同様に南海会社の重役達も株主を募るために不信の緩和を試
みていたことが明らかになった。よって今後検証されるべきことは、南海会社が自己利益に立脚
した企業家であることを否定するあまりに、実現の見通しのない国家利益と株主への利益還元の
約束をし、さらには不正な手段にまで手を染めていった詳細な過程である。かかる分析のために
は南海会社が出版した88冊の関連出版物を分析することが不可欠である。
次に上述した400の未刊行史料群を分析することで、(2)潜在株主の反応と(3)バブル
崩壊のメカニズムについての新たな知見をもたらす。近年の研究によって、近世の信用貸付(credit)
や正貨(specie)には現代にはないような文化的・道徳的意味合いが込められていたことが明らかに
なったが、株券の売買にも同様のダイナミズムがあったのではないか。本研究はこの仮説に基づ
いて南海会社株の売買を巡る書簡を子細に分析する。それによって、国家・社会への利益という
公共的契機が、短期的な損得の判断と並んでどの程度投資の是非を巡る潜在株主の判断材料にな
っていたかが明らかになる。

会社の宣伝戦略と株主の反応を詳細に分析することが、バブル崩壊のメカニズムを理解
する新たな手がかりとなる。従来の研究では南海会社は君主支持の王党派からの支持を得ていた
とされてきた。しかし申請者のこれまでの調査で、株主は超党派的に集まっていたことが明らか
になった。そこで前述の手紙と出版物を統合的に分析することで、会社の不正および約束された
「社会貢献」の非現実性が王党派とホイッグ党間の争いの文脈において利用され、「悪徳プロジ
ェクト」の名の下で糾弾されたことを明らかにする。さらに、新聞と出版社がそれを一大スキャ
ンダルとして報道することで市場にパニックを引き起こし、株価暴落を招いた過程を検討する。
本研究に対する助成は、以上の分析において決定的な役割を果たす400以上の史料群
を本年10月から1年間かけて各地の史料館から収集し、煩雑な手書きの史料を転記する為の研
究補助者採用に使用する。

現代的関心から歴史を扱う研究は、現今の考え方やその諸前提をそのまま過去に投影するものが
多く、厳密な史料分析が現代の諸問題に新たな視点を提供することは少なかった。 そこでこれま
での申請者の研究を活かし、南海泡沫事件を近世イギリスの起業家不信と企業の社会的責任の文
化に新たに位置づけるのが当研究の第一の特色である。さらに、推薦人で著名な歴史家であるゴ
ルガー教授との綿密な連携の下で研究を行えるのも、申請者の強みである。当研究は、事件のよ
り豊かな理解を促すと同時に、現代の問題を徹底した史料の分析を通して捉え直すような歴史学
の新たな手法を発展させる一助にもなり、存在意義が問われる人文学が今必要とする方法論的独
創性をもった研究である。

Economi c Hi s t or y Revi ew
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Distrust, Innovation, and Public Service: ‘Projecting’ in Seventeenth- and
Eighteenth-Century England)

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