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金融危機を理解する 第 2 章

フランクリン・アレン ダグラス・ゲイル

2007 年
第 2 章 時間、不確実性、流動性

金融経済学は不確実性を伴い時間経過の中で行われる資源の配分を扱う分野である。このような状況で
の資源配分を分析するために「現在価値」や「自然の状態」、「状態依存財」といった用語を使うが、基本
的な概念は通常のミクロ経済学における消費者行動や企業行動の分析で使われるものと同じである。この
章では選好、予算制約、技術といった既になじみ深いと思われる概念について概説するが、これらは異時
点間の資源配分とリスクの配分を理解するために使えるような形式で再構築する。我々は単純な例を用い
て説明していくが、読者は徐々に拡張され、一般化されていくのを見るであろう。

2.1 異時点間の効率的資源配分
異時点間の資源配分についてから始めよう。いくつかの新しい用語を導入するが、鍵となる概念は静的
な環境での効率的な資源配分を分析する時に使われるものと同等である。ここでは「現在」と「将来」か
らなる二つの期間を考える。現在を t = 0 とし、将来を t = 1 と表現する。

2.1.1 消費と貯蓄
0 期に消費財 Y0 単位、1 期に同じ消費財 Y1 単位の所得流列を持つ消費者を考える。C0 を 0 期の消費量、
C1 を 1 期の消費量として、消費者の効用関数は消費流列 (C0 , C1 ) の関数 U (C0 , C1 ) で表す。消費者は予算
集合に属する消費流列 (C0 , C1 )、すなわち消費者にとって到達可能な流列から効用を最大にするものを選
択したい。この問題を考えるにはいくつかの道があるがどれも同じところに辿り着く。しかし、それぞれ
について考えてみることには価値があるだろう。

貸借

この問題を考察する一つの方法は貸し借りを通じて所得流列 (Y0 , Y1 ) を消費流列 (C0 , C1 ) へと転形する


と考えるものである。簡単のために期間あたり i > 0 の利子率で銀行がいくらでも貸してくれると仮定す
る。銀行が現在に消費財を 1 単位貸し出せば、未来に (1 + i) 単位を返すものとするのである。ここで消費
者が C0 > Y0 なる量の消費財を消費することに決めたとすると、B = C0 − Y0 を借りる必要がある。1 期
には iB の利子を支払わなければならない。この貸し借りを可能になるのは、1 期の所得が 1 期の消費を返
済と利子の合計の分だけ上回る時であり、またその時に限る。つまり、

(1 + i)B ≤ Y1 − C1 .

これを次のように消費と所得の流列の不等式として書き換えることが出来る。
1
C0 − Y0 ≤ (Y1 − C1 ).
1+i

1
2

逆に消費者が C0 ≤ Y0 を消費することにしたならば、消費者は S = Y0 − C0 だけ貯蓄することになり、銀


行の預金となる。我々は銀行が個の預金に対して i > 0 の利子を支払うものと仮定する。つまり、現在の 1
単位を銀行に預けると次期に (1 + i) 受け取ることが出来るということである。

C1 − Y1 ≤ (1 + i)S.

これを次のように消費と所得の流列の不等式として書き換えることが出来る。
1
C0 − Y0 ≤ (Y1 − C1 ).
1+i
これは先ほど導いたものと同じ不等式である。よって貯蓄であれ借入であれ到達可能な流列は同じ制約を
満たさなければならないのである。この不等式を異時点間の予算制約 (intertemporal budget constraint )
と呼び、今後のために若干表現を変えたものに書き換える。

1 1
C0 + C1 ≤ Y0 + Yi . (2.1)
1+i 1+i

C₁

(1+ i )Y₀ + Y₁

Y₀ + Y₁/(1+ i ) C₀

図 2.1: 異時点間の予算制約

図 2.1 は異時点間の予算制約を満たす消費流列 (C0 , C1 ) を表す1 。所得流列 (Y0 , Y1 ) が予算制約を満たさ


ねばならないことは明らかである。1 期に貸し借りが起こらないとすれば、C0 = Y0 , C1 = Y1 である。予
算制約線の端点はそれぞれ現在と未来の可能な最大の消費量を表している。例えば 0 期(現在)に最大の
消費をしたいと望むならば、0 期の所得 Y0 と 1 期の所得から B = Y1 /(1 + i) 借り入れることが出来る。
1 期に元本 B と利子 iB 、合計 (1 + i)B を支払わなければならないから、0 期では最大で借りられるのは
B = Y1 /(1 + i) ということになる。よって、0 期に消費できる最大量は次のように表される。

Y1
C0 = Y0 + B = Y0 + .
1+i
1 訳注:
「消費流列が満たすべき予算制約を表している」が真意か?

revised at 11:23am on Jan. 14, 2010


3

今度は 1 期に可能な最大の消費量は、0 期に所得のすべてを貯蓄することで得られる。消費者は貯蓄によっ


て得られる (1 + i)Y0 と 1 期の所得 Y1 を消費できる。よって 1 期に消費できる最大量は次のように与えら
れる。
C1 = (1 + i)Y0 + Y1 .
さて、ここで 1 期において消費が ∆C0 だけ増えた状況を考える。このときどれだけ将来の消費を減らさな
ければならないのだろうか?0 期に借りた消費財 1 単位のコストは利子を払わなければならないため 1 期
に (1 + i) の支払という形で現れる。よって、1 期の消費の減少は ∆C1 = −(1 + i)∆C0 である。図 2.1 の
予算制約線の傾きは −(1 + i) であり、この予算制約線上のどの点も消費者によって消費可能であることが
分かる。
我々は貸し借りによって達成できるあらゆる消費流列は異時点間の予算制約を満たさなければならない
ことを見てきた。逆に異時点間の予算制約を満たす消費流列は全ての可能な貸し借りによって達成できる
ことを示すことも出来る。これを見るために予算制約を満たす消費流列 (C0 , C1 ) を考える。もし C0 > Y0
ならば消費者は B = C0 − Y0 を借りると考える。消費者は 1 期に利子を付けて返済しなければならないか
ら、1 期には Y1 − (1 + i)B しか消費に向けることが出来ない。しかしながら異時点間の予算制約は、この
1 期の消費 C1 が次の不等式を満たすことを保障する。

C1 = (1 + i)(Y0 − C0 ) + Y1
= Y1 − (1 + i)(C0 − Y0 ).

よって、消費者は 0 期に B 借りて 1 期に利子をつけて返済してもなお、消費者が計画した 1 期の消費を賄


うことが出来るのである。C0 ≤ Y0 のケースも同様である。こうして所得流列 (Y0 , Y1 ) が利子率 i での貸
し借りを通じて (C0 , C1 ) へと転形されることが異時点間の予算制約式 2.1 を満たす時、そしてその時に限
り実現されることが示された2 。

富および現在価値

到達可能な消費流列を考える別の方法に現在価値の概念を使うものがある。ある財の現在価値とはその
ために交換しても良いと考えられる現在の消費量のことである3 。現在の財 1 単位の現在価値は 1 である。
1 期の消費財 1 単位の現在価値は 1/(1 + i) である。なぜなら貸し借りを通じて現在の消費 1 単位は将来の
消費 1 + i 単位と交換することが可能であり、逆もまた同様だからである。よって、所得流列 (Y0 , Y1 ) の現
在価値は、すなわち現在の消費量として表される流列 (Y0 , Y1 ) の価値は、
1
P V (Y0 , Y1 ) = Y0 + Y1
1+i
であり、消費流列 (C0 , C1 ) の現在価値は
1
P V (C0 , C1 ) = C0 + C1
1+i
である。異時点間の予算制約は消費流列 (C0 , C1 ) が (Y0 , Y1 ) と等しいかそれ以下でなくてはならないこと
を主張している。
1
所得流列の現在価値は消費者の em 富とも呼ばれ W Y0 + 1+i Y1 で表される。異時点間の予算制約は消費
者の持つ富を超えない範囲でいかなる消費流列 (C0 , C1 ) の選択も許す。よって,
C1
C0 + ≤ W. (2.2)
1+i
2 訳注: 命題 A と B があって、それらが同値 A ⇐⇒ B であることを示すには A ⇒ B と A ⇐ B の両方を示さなければなら

ない。ここでの説明はまわりくどいように思えるが、同値命題を証明しているのである。
3 訳注:ここでは財が一種類しか存在せず、消費、支払などあらゆる取引に使用されていることに注意されたい。

revised at 11:23am on Jan. 14, 2010


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期日財と先物市場

異時点間の予算制約 2.1 には 3 つ目の解釈もある。我々は例えばビールとピザといった 2 つの財に所得を


振り分けるようなタイプの予算制約にはよく馴染んでいる。そこではそれぞれの財を購入できる価格が設
定され、消費の価値はそれぞれの財の購入量をその価格で乗じ、その 2 つを合計したものに等しい。予算制
約はこの消費の価値が所得以下であることを要求する。異時点間の予算制約 2.1 もこのように解釈するこ
とが出来る。現在の消費財と将来の消費財をそれぞれ別の現在の財として捉えよう。そしてそれらを交換
できる市場があるものと考えよう。この市場は完全競争であるとすると、消費者は相場価格で好きな量を
売り買いすることが出来る。通常の予算制約は購入した財の価値と二つの財への支出が釣り合うことを要
求する。p0 を現在の財の価格とし、p1 を将来の財の価格とすれば通常の予算制約は次のように表される。

p0 C0 + p1 C1 ≤ p0 Y0 + p1 Y1 .

1 期の消費財を基準財として扱う。基準財とはそれによって他の財の価値を計る財のことである4 。0 期
の消費財の価格 p0 は 1 である。0 期の財 1 単位の価値は丁度 1 だからである。1 期の財を 0 期の財で評価
するとどうであろうか。金利 i で好きなだけ貸し借りが可能ならば 1 期の財の価格は裁定(arbitrage)に
1 1
よって決定されるであろう。もし、p1 > 1+i ならば、1 期の財 1 単位を p1 で売り、その利益で 1+i 単位の
1 1
0 期の財を買い、さらにその を利子率 i で投資して (1 +
1+i i) 1+i を得ることでリスクのない裁定によっ
て利益を上げることが出来る。

2.1.2 生産

2.2 不確実性
2.2.1 状態依存財およびリスク分担

2.2.2 リスクへの態度

2.2.3 保険とリスク共有

2.2.4 ポートフォリオの選択

2.3 流動性

2.4 結語

4 訳注:つまり 1 期の消費財を「貨幣」として使用するというわけである。

revised at 11:23am on Jan. 14, 2010