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石 油 学 会 誌 Sekiyu Gakkaishi, 34, (3), 267-272 (1991) 267

固 体 超 強 酸 (SO42-/ZrO2) 触 媒 に よる

イ ソ ブ タ ン とブ テ ンの ア ル キ ル 化 反 応

畠 山 耕 治, 鈴 鹿 輝 男*, 山 根 守

日本 鉱 業(株)新 材 料 研 究 所, 335埼 玉 県 戸 田 市 新 曽 南3-15-35

(平成2年7月23日 受 理)

ア ル キ レー シ ョン プ ロセ スに お い て, 工 業 的 に実 施 され て い る硫 酸 法 お よ び フ ッ化 水 素 法 は 液体 酸 を用 い る こ とか
ら触 媒 と生 成物 の 分 離, 廃 酸 処 理 等 の 問 題 が あ る た め, ジ ル コ ニ ア固 体 超 強 酸 (SO42-/ZrO2) を触 媒 と した イ ソ ブ タ
ン とブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 を検 討 した。 ジ ル コ ニ ア固 体 超 強 酸 は硫 酸 と比 較 す る と同 等 あ る い は そ れ以 上 の活 性 を
有 して お り, 特 に 硫 酸 お よ び フ ッ化 水 素 で は生 成 しに くい 高 オ ク タ ン価 の2,2,3-ト リメ チ ルペ ン タ ン(RON 109.6)が
多 く生成 し, 極 め て特 徴 の あ る 活性 を示 した。 しか し, 触 媒 寿 命 が 短 く, そ の 原 因 を検 討 した結 果, 副 反 応 生 成 物 に
よる 触媒 表 面 強 酸 点 の 吸 着 被 毒 と推 定 され た。

この よ う に, ア ル キ ル化 反 応 に用 いて い る 固 体 酸触 媒 は超 強
1. 緒 言
酸 型 とゼ オ ラ イ トに 大 別 され, ゼ オ ラ イ トに よる アル キ ル化 に
イ ソ ブ タ ン と低 級 オ レフ ィ ンか ら高 オ ク タ ン価 イ ソパ ラ フ ィ つ い て は多 く報 告 され て い る が, 室 温 以 下 の 低 温 度 で パ ラ フ ィ

ン を製 造 す る ア ル キ レー シ ョ ン プ ロ セ ス は 高 品 質 ガ ソ リ ンの ンに対 して 酸 触 媒作 用 を示 す超 強 酸 を用 い た ア ル キル 化 反応 の

ニ ー ズ に対 応 す べ く, 従 来 か ら あ る東 燃 (和歌 山 工 場) に続 い 研 究 は少 ない。
て, 日本 鉱 業 (水 島 製油 所) お よ び 出光 興 産 (知 多 製 油 所) で そ こで, 本研 究 で は 水酸 化 ジ ル コ ニ ウ ム を硫 酸 で 処 理 し, 空

も導 入 し, 現 在 はそ の装 置 が稼 動 して ア ル キ レー トを生 産 して 気 中高 温 度 で 焼 成 す る こ とに よ っ て容 易 に得 られ, しか も触 媒
い る。 が 固 体 で あ る た め 反応 生成 物 との分 離 も良 好 な ジ ル コニ アの 固
ア ル キ レー シ ョン プ ロセ ス は硫 酸 を触 媒 とす る硫 酸 法, フ ッ 体 超 強 酸 (SO42-/ZrO2) を触 媒 と して イ ソ ブ タ ン とブ テ ンの

化 水素 を触 媒 とす る フ ッ化 水素 法 が あ る が, 両 者 とも完 成 され ア ル キ ル化 反 応 を行 い, 反応 条 件 (温度, 反 応 時 間, イ ソブ タ

た プ ロ セ ス とは い え, 液 体 酸 を用 い る た め反 応 生 成 物 と触 媒 の ン/オ レ フ ィ ン比, オ レ フ ィ ン種), 活 性 の経 時 変 化 (寿 命),

分 離工 程 が必 要 で あ る こ と, また廃 酸 処 理 等 の問 題 が あ る こ と 劣 化・ 失 活 原 因 な どに つ い て検 討 した ので その 結 果 につ い て報
か ら まだ改 善 す べ き点 を有 して い る。 告 す る。

そ こで, こ れ ら液 体 酸 の か わ りに 固体 酸 触 媒 を用 い て ア ル キ
2. 実 験
ル化 反 応 を行 わ せ る こ とが 試 み られ て お り, 例 え ば Hung ら1)
は イ オ ン交換 樹 脂/BF3の 触 媒 を用 い て イ ソブ タ ン と2-ブ テ ン 2.1 試薬
の ア ル キ ル化 反 応 を行 い, Amberlyst XN 1010/BF3触 媒 が高 本 実 験 の 試 薬 と して, 触 媒 調 製 で は水 酸 化 ジ ル コニ ウ ム (三
品 位 の ア ル キ レー トを与 え, 選 択性 お よ び収 率 は硫 酸 法 や フ ッ 津 和 化 学 薬 品, ZrO2・xH2O, ZrO2含 有 率: 87.5%, 特 級) お
化 水 素 法 よ りす ぐれ て いる こ と を報告 して い る。 よ び硫 酸 (関東 化 学, 濃 度: 96%以 上, 特 級, 1規 定 溶 液 に し

Minachev ら2)は, HYゼ オ ラ イ ト/Ca2+, Re3+触 媒 を用 い て使 用) を用 い, ア ル キ ル化 反 応 実験 で は イ ソブ タ ン (東京 化

て イ ソ ブ タ ン と種 々 の オ レ フ ィ ン (C2=-C5=) の アルキル化 成 工 業, 純 度99.0%) お よ び ブ テ ン (東京 化 成 工 業, 純 度1-

反 応 を検 討 し, イ ソ ブ タ ン と オ レ フ ィ ンの アル キ ル化 は カ ル ボ ブ テ ン98.5%, trans-2-ブ テ ン 99.0%, cis-2- ブ テ ン


ニ ウ ム イ オ ン機 構 に よ る もの で あ り, ゼ オ ラ イ ト中 のNa+を 97.8%, イ ソ ブチ レ ン 99.0%) を用 い た。

Ca2+お よ びRe3+で 置 換 した もの は アル キ レー ト収 率 お よ び性 2.2 触媒

状 が よい こ とを報 告 して い る。 触 媒 の ジ ル コ ニ ウ ム 固 体 超 強 酸 (以 下SO42-/ZrO2と 記
ま た, Gardos ら3)はNH4LaYゼ オ ラ イ ト触 媒 を 用 い て イ す) は荒 田 らの 方 法5)に準 じて調 製 した。

ソ ブ タ ン と1-ブ テ ンの ア ル キ ル 化 反 応 を行 い, 反 応 温 度 な ら 水 酸 化 ジ ル コ ニ ウ ム を 所 定 量 ビー カー に と り, そ れ に 約15

び に イ ソ ブ タ ン と1-ブ テ ン の モ ル比 の影 響 を検 討 し, 30bar 倍 量 の1規 定 溶 液 の 硫 酸 を加 え て か く は ん し, ろ過 後風 乾 し

に お い て70℃で イ ソ ブ タ ン と1-ブ テ ン の モ ル 比 が7.6の と き て 空 気 中600℃で3時 間 焼 成 した。 触 媒 は使 用 す る まで 封 管

に最 も高 い アル キ レー ト収 率 が 得 られ る こ と を報 告 して い る。 して保 存 した。

そ の 他, Che ら4)は 二つ の異 なる タ イプのゼ オ ライ ト 調 製 した触 媒 の 酸 強 度 は一 連 の ハ メ ッ ト指 示 薬 と接 触 させ て

(ZSM-5, REHY) を用 い て ア ル キ ル 化 反 応 を行 い そ の 活性 を 触 媒 粒 子 表 面 の色 の変 化 か ら測 定 した。 ハ メ ッ ト指 示 薬 の 溶 媒

検 討 して い る。 に は無 機 溶 媒 で あ る塩 化 ス リ フ リ ル を蒸 留 して用 い た。 この よ
うに して 調 製 したSO42-/ZrO2触 媒 の 性 状 をTable 1に 示 し
* 連絡先
た。

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Table 1 Properties of SO42-/ZrO2 Catalyst した。


実 験 結 果 をFig. 1に 示 した。Fig. 1か ら, C8炭 化 水 素 生 成
物 は 反応 温 度-5℃で 最 も高 い収 率 で 得 られ る こ とが 明 ら か と
な っ た。
3.1.2 反応時間の影響

耐圧 ガ ラ ス製 オー トク レー プ を用 い て, 反 応温 度-5℃で イ
ソ ブ タ ン と1-ブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 を行 い, C8炭 化 水 素 生
2.3 実験方法 成 物 収 率 に 及 ぼ す 反応 時 間 の影 響 をFig. 2に 示 した。
実 験 装 置 に は か くは ん 機 付 き耐 圧 ガ ラ ス製 オ ー トク レー プ Fig. 2のC8炭 化 水 素 生 成 物 収 率 の経 時 変化 か ら, イ ソブ タ
(反 応 器 容 積100ml) と流 通 式 固定 床 反応 装 置 (SUS304製, ン と1-ブ テ ンの ア ル キ ル化 反応 は 短時 間 (約5分) で十分に
内 径20mm, 長 さ40cm) を使 用 し, 液 相 系 で イ ソ ブ タ ン と 進 行 す る こ とが わ か った。
ブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 を行 っ た。 3.1.3 イ ソ ブ タン/オ レフ ィン比 の影 響
耐 圧 ガ ラ ス製 オ ー トク レー プ を用 い た実 験 は, 反 応 容 器 を ア ル キ ル反 応 で は イ ソブ タ ン とオ レフ ィンが 理 論 的 に は等 モ
-50∼-70℃の 温 度 に した ドラ イ ア イ ス-エ タ ノー ル 浴槽 内 に ル消 費 され るが, オ レ フ ィ ンの重 合 な ど副 反 応 を抑 制 す る た め
浸 し, この 反応 器 内 に所 定 の割 合 で イ ソ ブ タ ン と ブテ ン を注 入 に, 硫 酸 法 お よ び フ ッ化 水素 法 で は オ レフ ィン に対 して イ ソブ
して液 状 で 充 て ん し, 次 に 触 媒 を20g投 入 して 反 応 温 度 まで タ ンを過 剰 に使 用 して い る。
昇 温 した 後 に所 定 の時 間懸 濁 層 で反 応 を行 った。 そ こ で, 本 実 験 のSO42-/ZrO2を 触 媒 とす る ア ル キ ル化 反
流 通 式 固定 反 応 装 置 を用 い た 実 験 は 反応 管 に触 媒 を20g充 応 で も イ ソ ブ タ ン を過 剰 に 使 用 して, そ の 比 率 を種 々変 え,
て ん し, 系 内 を窒 素 で7kg/cm2Gに 昇 圧 後, 原 料 を反 応 管 上 C8お よ びC5-C11炭 化 水 素 生 成 物 収 率 に及 ぼ す イ ソ ブ タ ン/
部 よ り供 給 して 固 定層 で所 定 の時 間反 応 を行 った。 オ レフ ィン比 の 影 響 を検 討 した。 実 験 は耐 圧 ガ ラ ス製 オー トク
反 応 生 成 物 は シ リ カ キ ャ ピ ラ リー カ ラ ム (FS-WCOT, レー プ を用 い て 行 った。 そ の結 果 をFig. 3に 示 す。
OV-101, 0.25φ×35m) を 取 り付 け た ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ
(FID, 日立163型) を用 い て 分析 した。

3. 実 験 結 果 お よび 考 察

3.1 反応 条件 の検 討
3.1.1 反 応 温 度 の検 討
ア ル キ レー シ ョン プ ロセ ス で は反 応 温 度 の 低 い方 が オ ク タ ン

価 が 高 く, 品 位 のす ぐれ た アル キ レー トが 得 ら れ る た め6),7),
硫 酸 法 で は4-10℃, フ ッ化 水 素 法 で は30-40℃の 反応温度
で行 っ て い る。
SO42-/ZrO2触 媒 は硫 酸 よ り さ らに強 い酸 強 度 を有 して い る
こ とを考 え て, 0℃以 下 の 反応 温度 で実 験 を行 い, イ ソ ブ タ ン

と1-ブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 に及 ぼ す 反 応 温 度 の影 響 を検 討 Isobutane/1-butene=27vol/vol, 1.2kg/cm2G, -5℃.

Fig. 2 Effect of Reaction Time on C8-Hydrocarbons Yield

Isobutane/1-butene=27vol/vol, 0.6-1.6kg/cm2G, 30 -5℃, 1.2kg/cm2G, 30min, 1 -butene/catalyst=0.04

min. g/g.

Fig. 1 Effect of Reaction Temperature on C8-Hydro- Fig. 3 Effect of Isobutane-1-butene Volume Ratio on
carbons Yield Product Yields

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C8お よ びC5-C11炭 化 水 素 生 成 物 収 率 は イ ソ ブ タ ン/オ レ イ ソブ タ ン と1-ブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 を行 い, 両 者 の 活性


フ ィ ン比 の 増 加 に と もな って高 くな る傾 向 を示 した。 図 か ら高 を比 較 した。 そ の 実験 結 果 をTable 3に 示 した。
い ア ル キ レー ト収 率 を得 る た め に は イ ソ ブ タ ン/オ レ フ ィ ン比 Table 3に お い て, C8炭 化 水 素 (ト リ メ チ ル ペ ン タ ン類)
を50vol/vol以 上 とす る必 要 が あ る と考 え られ る。 と一 般 に モ ー ター ア ル キ レー トと言 わ れ て い るC5-C11炭 化
3.1.4 オ レ フ ィ ン種 の影 響 水 素 の 収 率 で 両 者 の ア ル キ ル 化 活 性 を 比 較 す る と,
前 述 の 反 応 温 度 の 検 討, 反 応 時 間 お よ び イ ソ ブ タ ン/オ レ フ SO42-/ZrO2触 媒 の方 が硫 酸 よ り もC8炭 化 水 素 (ト リ メチ ル
ィ ン比 の 影響 の 検 討 結 果 か ら得 ら れ た 最 適 反 応 条 件 (-5℃, ペ ン タ ン類) お よ びC5-C11炭 化 水 素 が 多 く生 成 し, 高 い 活

5分 以 上, 50vol/vol) 下 で, オ レ フ ィ ンの 種 類 を変 え た ア ル 性 を示 した。 またSO42-/ZrO2触 媒 で は 硫 酸 と比 較 して, イ


キ ル化 反 応 を行 い, 各 種 反応 生 成 物 に及 ぼす オ レフ ィン種 の 影 ソペ ン タ ン, メ チ ルペ ン タ ンお よ び メチ ル ヘ キ サ ン類 が 非 常 に

響 につ いて 検 討 した。Table 2に その 実 験 結 果 を示 した。 多 く生 成 し, 特 に トリ メチ ルペ ン タ ン類 の 中 で は オ ク タ ン価 の
SO42-/ZrO2を 触 媒 す る とア ル キ ル化 反 応 で は, オ レ フ ィ ン 最 も高 い2・2・3-ト リメ チ ルペ ンタ ン (RON 109.6) が 多 く生
の 種 類 に よ り, C8炭 化 水 素 生 成 物 収 率 は trans-2-ブ テ ン>1- 成 す る な ど硫 酸 と比 較 して 極 め て特 徴 の あ る活 性 を示 した。
ブ テ ン>イ ソ ブ テ ン>cis-2-ブ テ ンの 順 で あ った。 酸触 媒 ア ル キ ル化 反 応 で は, カル ボ ニ ウム イ オ ンに よ る連 鎖
反 応 後 の触 媒 上 に 吸 着 して い る 物 質 の 炭 素 分 析 を行 っ た 結 反 応 機 構8)が広 く一般 的 に認 め られ て い る。 本 反 応 の 場 合, オ
果, 特 にcis-2-ブ テ ン に お い て そ の 値 が 最 も 高 か っ た (23 レ フ ィ ンへ の プ ロ トンの 付 加 に よ っ て 生 成 したt-ブ チ ル カチ
wt%)。 こ の こ とか ら cis-2-ブテ ンの 場 合 は他 の オ レフ ィ ン と オ ン と1-ブ テ ンの 反 応 に よ っ て生 成 した2,2,3-ト リメ チ ルペ

比 較 して触 媒 の 吸 着 生 成物 とな りやす く, その ため に触 媒 上 の ン タ ン型 第2級 カ ル ボ ニ ウム イ オ ンが, 硫 酸 の 場 合 は メ チ ル

活性 点 を被 毒 して 反 応 性 が悪 くな っ た もの と考 え られ る。 基 転 移 を起 こ しや す い の に対 して, SO42-/ZrO2触 媒 ではハイ


3.2 硫 酸 法 との比 較 ドラ イ ド転 移 を起 こ しや す いた め に2,2,3-ト リメ チ ル ペ ン タ ン
オ レ フ ィ ン/触 媒 比 (=0.04g/g) を一 定 と して, 硫 酸 の 場 が 多 く生 成 した もの と考 え ら れ る (1-ブ テ ンの場 合 は, トリメ
合 は7℃で, SO42-/ZrO2触 媒 の場 合 は-5℃の 反応温 度で チ ルペ ン タ ン生成 物 と して予 測 が で きない こ とか ら, 1-ブ テ ン

Table 2 Alkylation of Isobutane with Various Olefin Using SO42-/ZrO2 Catalyst

*) (g-products/g-olefin charged) 100.

Table 3 Comparison of Product Yields in the Alkylation Reaction Using Sulfuric Acid and SO42-/ZrO2 Catalyst

*) (g-products/g-olefin charged) 100.

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Table 4 Composition of Alkylates of Isobutane with Various C4 Olefins Using H2SO4 and SO42-/ZrO2 [wt%]

が ア ル キ ル 化 に 先 立 っ て2-ブ テ ンへ 異 性 化 す る と さ れ て い 成 物 収 率 の 低 下 は 触 媒 活性 点 の被 毒 に よ る劣 化 が 原 因 と考 え ら
る9),10))。 れ る。
これ ま で 報 告 され て い る 硫 酸 法 ア ル キ レー ト組 成 分 析 例11) 前 に述 べ た通 り, SO42-/ZrO2触 媒 は イ ソブ タ ン とブ テ ンの
とSO42-/ZrO2触 媒 を 用 い て得 ら れ た実 験 結 果 の組 成 を ア ル キ ル 化 反 応 に お い て 高 い 活 性 を 示 す。 しか し な が ら,
Table 4 に比 較 した。 SO42-/ZrO2触 媒 は この よ うに短 時 間 で失 活 す る た め活 性 の 維

主 反応 生 成 物 で あ る トリメチ ルペ ン タ ン類 の組 成 で 両者 を比 持 に問 題 が あ る と判 明 した。

較 す る と, オ レフ ィ ンの種 類 に よ って 多 少 異 な る が ほ ぼ 同 じ値 3.4 劣化 ・失 活原 因 の検 討

を示 した。 や は り, SO42-/ZrO2触 媒 の 場 合 は 硫 酸 法 と比 較 し SO42-/ZrO2触 媒 は ア ルキ ル化 反 応 時 間 の経 過 に とも な って


て, イ ソペ ン タ ン (RON 92.3) お よ び2,2,3-ト リ メチ ル ペ ン 短 時 間 にて 劣 化 ・失 活 した。 そ こで そ の 原 因 を明 らか にす る た
タ ン (RON 109.6) の 組 成 割 合 が 高 く, 特 に オ ク タ ン価 の 高 め に, ア ル キ ル化 反 応 後 の 劣 化 ・失 活 した触 媒 に つ い て種 々物

い2,2,3-ト リ メチ ルペ ン タ ン に富 む ア ル キ レー トが 得 られ る こ 性 試 験 (比 表 面 積, 細 孔 容 積, 細 孔 分 布, ア ンモ ニ ア微 分 吸 着
とは ガ ソ リ ン用 混 合 基 材 と して好 ま しい こ と と考 える。 熱, SEM, FI-MS, オ ー ジ ェ電 子 分 光) を行 っ た。
3.3 アル キル 化 活 性 の 経 時 変化 1) 比 表 面 積, 細 孔 容 積, 細 孔 分 布

流 通 式 固 定 床 反 応 装 置 を用 い てSO42-/ZrO2を 触 媒 とす る イ ソ ブ タ ン と ブ テ ンの ア ルキ ル化 反応 後触 媒 は反 応 前 の新 触
イ ソ ブ タ ン と1-ブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 を液 相 系 で行 い, ア 媒 と比 較 して, 表 面 積 が56%, 細 孔 容 積 が39%も 低 下 した。
ル キ ル化 活 性 の 経 時 変 化 を調 べ た。 実 験 結 果 をFig. 4 に示 し 細 孔 分 布 で は 新 触 媒 に見 られ た32Å の 極 大 ピー クが ア ル キ ル
た。Fig. 4 は供 給 した原 料 オ レフ ィ ンに対 す るC8炭 化水素生 化 反 応 後 は42Å の 極 大 ピー クへ 変 化 した。
成 物 の収 率 を示 した もの で あ る。 こ の測 定 結 果 か ら, ア ルキ ル化 反 応 の 進行 に と もな っ て生 成

図 に 示 す よ うに, C8炭 化 水 素 生 成 物 収 率 は約25分 まで 通 した あ る種 の 反 応 生 成 物 が 被 毒 物 質 とな って触 媒 活 性 点 に吸 着


油 時 間 に と もな って 増 加 し, そ の後 約35分 過 ぎか ら大 き く低 下 し, 被 覆 や細 孔 狭 さ く化 また は閉 そ くな ど を起 こ させ る ため に

してSO42-/ZrO2触 媒 の活 性 は通 油 時 間 約45分 で失 活 した。 表 面 積 お よ び細 孔 容 積 が 低 下 して 細 孔 分 布 も変化 した もの と考

反 応 初 期 に はC5∼C7炭 化 水 素 生 成 物 が 多 く, い っ た ん生 成 し え ら れ る。
たC8炭 化 水 素生 成 物 の 分 解 等 に よ り, 副 反 応 生 成 物 が 多 く生 2) ア ンモ ニ ア微 分 吸 着 熱

成 した と考 え ら れ る。 通 油 時 間約35分 過 ぎ のC8炭 化水素生 新 触 媒 お よ び ア ル キ ル化 反 応 後 触 媒 の ア ンモ ニ ア微 分 吸 着 熱


曲線 をFig. 5 に示 した。 図 で 示 した縦 軸 の ア ンモ ニ ア吸 着 熱

q (kl/mol) は 触 媒 の 酸 強 度 に, 横 軸 の ア ン モ ニ ア 吸 着 量V
(mmol/g) は触 媒 酸 量 に対 応 す る。
SO42-/ZrO2触 媒 で は新 触 媒 とア ル キ ル化 反 応 後 触 媒 と を比
較 して, 約105kJ/mol以 上 の 吸 着 熱 を 与 える 強 酸 点 の酸 サ イ
トが 消 失 した。 これ は 反応 の進 行 に と も な って, ア ルキ ル化 反
応 に有 効 な 酸 サ イ トの 強酸 点 が被 毒 さ れて 消 失 した もの と考 え
られ る。

Isobutane/1-butene=62vol/vol, WHSV=4h-1, -5℃,


3) SEM (走査 電 子 顕 微 鏡)

7kg/cm2G. SEMに よ る触 媒 粒 子 外 表 面 の 観 察 を行 っ た。SO42-/ZrO2

Fig. 4 Alkylation of Isobutane with 1-Butene Using 触 媒 表 面 は凹 凸 で 粗 く, 10μmの もの や70μmの もの が 観 察


SO
42-/ZrO2 Catalyst され, 粒 度 は か な り分 布 して い る こ とが わ か った。 しか しな が

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Table 5 Composition of Alkylates in the Reaction of Iso-


butane with 1-Butene Using Fresh SO42-/ZrO2
Catalyst and Regenerated SO42-/ZrO2 Catalyst
[wt%]

i-C4/1-C4=volume ratio=62, WHSV=4h-1, -5℃,

7kg/cm2G, 0-30min.

Fig.5 Heats of Adsorption of Ammonia Using

SO42-/ZrO2 Catalyst at 25℃ キ ル ベ ンゼ ンあ る い は ア ルキ ル ナ フ タ レ ン等 の反 応 生 成 物 が 触


媒粒 子 表 面 付 近 の 活 性 点 に吸 着 し, 細 孔 が狭 さ く化 ま た は閉 そ
く され た た め と考 え られ る。
以 上 の検 討 結 果 か ら, SO42-/ZrO2触 媒 が ア ル キ ル化 反 応 に
お い て, 短 時 間 にて 劣 化 ・失 活 す る原 因 は, 反 応 の進 行 に と も
な って生 成 した オ レ フ ィン, ア ル キ ル ベ ンゼ ンお よ び ア ルキ ル
ナ フ タ レ ン類 等 の 副 反 応 生 成物 が触 媒 粒 子 表 面 付 近 の 強 酸 点 に
吸着 し, そ の被 毒 に よる もの と推 定 され た。
一般 に, 固 体 触 媒 を 用 い た 反 応 で は, (1)反 応 物 質 が 流体 本

体 か ら触 媒 表 面 へ の 移 動, (2)反 応 物 質 が触 媒 表 面 に吸 着, (3)
触媒 表 面 で の化 学 反 応, (4)生 成 物 が触 媒 表 面 か ら脱 着, (5)生
成物 が触 媒 表 面 か ら流 体 本 体 へ 移動 の過 程 を経 て反 応 は進 行 す
る と考 え られ て い る。

Fig. 6 FI-MS Spectra of Deactivated SO42-/ZrO2 本 実 験 の ア ル キ ル化 反 応 で は, 以 上 の 検 討 結 果 で 述 べ た 通


Catalyst り, 上 記(3)の 過 程 で生 成 した 副 反 応 生 成 物 が触 媒粒 子 表 面 付
近 の 活 性 点 (ア ンモ ニ ア微 分 吸 着 熱 約105kJ/mol以 上の強酸

ら, 被毒 に よ る触 媒 粒 子 の 外 表 面状 態 の 変化 に つ い て は十 分 に 点) に 吸 着 し, (4)の 過 程 で 十 分 に脱 着 しな い た め に 触 媒 被 毒
観 察 で きな か っ た。 物 質 とな っ て触 媒 を劣 化 お よ び失 活 させ た もの と考 え ら れ る。
4) FI-MS した が って, 触 媒 粒 子 表 面 か ら脱 着 で きれ ば, 触 媒 の劣 化 お よ
ア ル キ ル 化 反 応 後 触 媒 上 に 吸 着 して い る 反 応 生 成 物 をFI び失 活 は 防止 され, 長 時 間 の ア ルキ ル化 反応 が可 能 と考 え ら れ

(Field Ionization)-MSに よ り分 析 し, そ の ス ペ ク トル をFig. る。 そ の方 法, 例 え ば, 反 応 系 内 へ 溶 剤 な どの添 加 に よ る触 媒

6に 示 した。 被 毒 物 質 の洗 浄 除 去, 触 媒 粒 子 表 面 か ら被 毒 物 質 が 脱 着 しや す
スペ ク トルか ら, ア ル キ ル化 反 応 後 のSO42-/ZrO2触 媒上 い温 度 での 反 応, 副 反 応 抑 制 の た め の最 適 触 媒 酸 強 度 の 検 討 等

に は オ レ フ ィ ン, ア ル キ ルベ ン ゼ ンお よ び アル キ ル ナ フ タ レ ン が今 後 の検 討 課 題 と考 え られ る。

類 等 の 副 反応 生 成 物 が 多 く吸 着 さ れて い る こ とが 判 明 した。 3.5 触媒の再生

分 析 に用 い た 触 媒 は,測 定 の 前 に減圧 乾燥 (80℃, 3時 間, 触 媒 は失 活 して も容 易 に 再 生 で きれ ば反 応 と再 生 を繰 り返 す


1-5mmHg) して お り, そ れ に もか か わ らずFI-MSで これ こ とで相 対 的 な寿 命 を長 くす る こ とが で きる。 そ こで, 空 気 中

ら副 反 応 生 成物 が検 出 され た こ と は副 反 応 生 成 物 が 触 媒 活性 点 の焼 成 方 法 に よ る触 媒 の 再 生 に つ い て検 討 した。

(酸点) との 相 互作 用 に よ り強 固 に吸 着 して い る も の と考 え ら Table 5 に は イ ソ ブ タ ン と1-ブ テ ンの ア ル キ ル化 反 応 後 触

れ る。 そ の こ とが活 性 点 を被 毒 す る結 果 と な って 触 媒 は 劣 化 さ 媒 を空 気 中, 600℃で 焼 成 し, 再 生 して再 び ア ル キ ル化 反 応 を

れ, 最 後 には 失 活 す る もの と推 測 され る。 行 った結 果 と新 触 媒 との 活 性 の 比 較 を示 した。 再 生 した触 媒 は

5) オー ジ ェ電 子 分光 新 触 媒 の活 性 と ほ と ん ど変 わ らず, 空 気 中 で の焼 成 に よ り容 易
オー ジ ェ電 子 分 光 に よ り, ア ル キ ル化 反 応 後 触 媒 のC元 素 に触 媒 上 に付 着 して い る生 成 物 は 除 去 され て, 触 媒 の再 生 は可

濃 度 を測 定 した。 そ の結 果, C元 素 濃 度 は 触 媒 粒 子 外 表 面 か 能 と判 明 した。
ら内 部 へ 入 る に した が っ て低 下 し, 触 媒 粒 子 外 表 面 か ら内 部 の
4. 結 論
お よ そ200Åま で しかC元 素 は 分 布 して い な い。 お そ ら く,
ア ル キ ル化 反 応 の進 行 に とも な っ て生 成 した分 子 の 大 きい ア ル 固体 超 強 酸 (SO42-/ZrO2) を触 媒 とす る イ ソ ブ タ ン と ブ テ

石 油 学 会 誌 Sekiyu Gakkaishi, Vol. 34, No. 3, 1991


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ン (1-ブ テ ン, trans-2-ブ テ ン, cis-2-ブテ ン, イ ソブ チ レ ン) に て発 表 した。)


の ア ル キ ル化 反 応 に つ い て種 々検 討 した結 果, 次 の こ とが 明 ら
References
か とな った。

(1) 反 応 条 件 につ い て検 討 した結 果, ア ル キ レー ト収 率 は 温 度 1) Huang, T. J., Yurchak, S., ACS Symp.Ser., 55, 75 (1977).
-5℃, イ ソ ブ タ ン/ブ テ ン比50vol/vol以 上, 反 応 時 間5分 2) Minachev, Kh. M., Mortikov, E. S., Zenkovsky, S. M.,
Mostovoy, N. V., Kononov, N. F., Prepr. ACS Div. Pet.
に お い て最 も高 い 値 を示 した。
Chem.,22, (3), 1020 (1977).
(2) SO42-/ZrO2を 触 媒 とす る ア ルキ ル 化 反応 で は, ブ テ ンの
3) Gardos, Gy., Redey, A., Sokorai, I., Hungarian J. Ind.
種 類 に よ っ て 反 応 性 が 異 な り, C8炭 化 水 素 生 成 物収 率 は Chem., 11, 125 (1983); Gardos, Gy., Redey, A., Kovacs,
trans-2-ブ テ ン>1-ブ テ ン≫イ ソ ブ テ ン>cis-2-ブ テ ンの 順 に低 M., Kristof, J., HungarianJ. Ind. Chem., 11, 409 (1983).
下 した。 4) Chu, Y. F., Chester, A. W., Zeolite, 6, (3), 195 (1986).
(3) SO42-/ZrO2触 媒 は硫 酸 と比 較 して 同等 以 上 の ア ル キ ル化 5) Aarata, K., Hino, M., Shokubai,24, (3), 241 (1982).
6) Spiker, P., "7th World Petrol. Congress", PD-17 (5),
活性 を示 し, 硫 酸 お よ び フ ッ化 水 素 で は生 成 しに くい高 オ ク タ
(1967).
ン価 の2,2,3メ チ ルペ ン タ ン (RON 109.6) が 多 く生 成 した。
7) Li, K. W., Eickert, R. E. et al., Ind. Eng. Chem., Process
(4) ア ル キ ル化 反 応 に おい て, SO42-/ZrO2触 媒 は短 時 間 に劣 Des. Dev., 9, (3), 434 (1970).
化 ・失 活 す る が, 反 応 後 触 媒 の 種 々物 性 測定 結 果 か ら そ の原 因 8) Schmerling, L., Ing. Eng. Chem.,45, 1447 (1953); "Friedl
は, 反応 の進 行 に と も な って 生 成 した オ レフ ィ ン, ア ル キ ルベ Crafts and Related Reactions in Alkylation and Related
ンゼ ンお よ び ア ル キ ル ナ フ タ レ ン類等 の 副 反応 生 成 物 に よ る触 Reactions", ed. by Olah, G. A., Interscience Publishers
(1964).
媒 粒 子 表面 付 近 強 酸 点 の吸 着 被 毒 と推 定 され た。
9) Cupit, C. R., Cwyn, J. E., Jernigan, E. C., Petrol. Man-
(5) 劣 化 ・失 活 し たSO42-/ZrO2触 媒 は空 気 中 で 焼 成 す る こ
agement,33, (12), 202 (1961); 34, (1), 207 (1962).
と によ りそ の再 生 は可 能 と判 明 した。 10) Huston Jr., T., Hays, G. E., Preprints of Symposium on
終 わ りに, 本研 究 は軽 質 留 分 新 用 途 開 発技 術研 究 組 合 の補 助 Recent Advances in Alkylation, 22, (2), 325 (1977).
金 を得 て 行 った もの で あ る。 11) Albright, L. F., Chem.Eng., 73, (21), 209 (1966).

(本 報 告 の 一 部 は, 昭 和61年 度 第28回 石 油 学 会研 究 発 表 会

Summary

Alkylation of Isobutane with Butene over Solid Superacid (SO42-/ZrO2) Catalyst

Kozi HATAKEYAMA, Teruo SUZURA, and Mamoru YAMANE

Materials Development Research Lab., Nippon Mining Co., Ltd.,


3-15-35Nizo-Minami, Toda, Saitama 335

There have been some difficulties in the alkylation super acid than with sulfuric acid. Moreover, a
processes using mineral acid; for example separation of significant amount of 2,2,3-trimethyl pentane (RON
the acid from the reaction products and treatment of the 109.6) was found with zirconia solid super acid, but not
spent acid. In order to minimize these difficulties, with mineral acids like sulfuric acid or hydrogen
zirconia solid super acid was used as the catalyst in the fluoride. It is assumed that strong acid sites of the
alkylation reaction of isobutane with butenes. Higher catalyst, zirconia solid super acid, are poisoned by
yields of alkylates were obtained with zirconia solid reaction by-products, shortening its catalytic life.

Keywords
Gasoline, Olefin, Paraffin, Octane number, Alkylation, Solid acid catalyst

石 油 学 会 誌 Sekiyu Gakkaishi, Vol. 34, No. 3, 1991

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