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161 the Bühler Magazine

食料安全保障
新しい連携体制の構築

パキスタンからポルトガルまで お客様事例
パスタ乾燥 新たな完成度を目指して
目次 ご挨拶

読者の皆様へ
2012年最初のダイアグラムとなる第161号ですが、ページを
開く前から見た目の新しさにお気づきになった方も多いかと
思います。より興味深く読みやすい構成となるよう、本号より
レイアウトとデザインが変わりましたが、当社の製品・サービス
についてご紹介するという本誌の骨子に変わりはありません。

誌面の主な変 更として、今回から各 号に主要テーマを設け、

ETHチューリッヒ校のワールドフードシステム・コンピタンスセンター:8ページ インスタントメイズミール:13ページ ビューラー のお 客 様やパートナー 企 業 の 皆 様 が 関 心を寄 せ


る分野について、より踏み込 んだ情 報を提 供して参ります。
私 たちの 長 期 的 なビジョンにつながる日常的な 業 務とそ の
背景、各 分 野 で 蓄 積され たビューラー の 専 門 知 識を 皆 様に
ご紹介するうえで、これが最善の手法であると確信しています。

本号のテーマは、
「食料安全保障」です。安全な食品、または
健康的な食品はもとより、多くの人々にとって「食料」が不足
している現代、食料安全保障の問題は人類の生存にかかる重
要な課題であると言えます。そしてこの課題こそ、当社が貢献
セレアリス:16ページ ファイブスター:20ページ ギャリブソンズ:24ページ ラビーナ:28ページ できる分野でもあるのです。食料安全保障の背景(4ページ)、
IFRC会長からのコメント(6ページ)、ビューラーが協力する
スイス連邦工科大学チューリッヒ校に新設されたワールドフー
ドシステム・コンピタンスセンターの専門家による座談会(8ペ
2 ニュース
ージ)のレポートをぜひご覧ください。
フォーカス お客様事例 イノベーション

16 セレアリス(ポルトガル) 32 ソーテックスA
5 食料安全保障 リスボンにある最新の製粉工場は、ポルトガル最大の大変
他にももちろん、お客様の事例や世界各地の拠点からのレポー
安全で栄養価の高い食料を、増加し続ける世界人口
美しい工場施設です。 ソリューション トについても取り上げています。本号では、ポルトガル、エジプ
に供給すること。これは、現代における世界最 大の
課題かもしれません。学術および産業界は、ETHの
34 パスタ乾燥機 ト、パキスタンのお客様のプロジェクトについてご紹介します。
20 ファイブスター(エジプト) 36 Cenomic™ およびTrinomic™
ワールドフードシステム・コンピタンスセンターを拠
長年にわたるパートナーシップが 実現した最高品質の
点として連 携 体制を築いています。ビューラーが蓄 皆様からのご感想やご提案もお待ちしております。それでは、
小 麦 粉。 マーケット
積する知識をこの難題の解決にどう役立てていくこ
どうぞお楽しみください。
とができるでしょうか? 38 西安市とザンビアのサービスステーション
24 ギャリブソンズ(パキスタン)
13 インスタントメイズミール ビューラーとの連携が、パキスタンにおける精米事業を
支えています。
40 市場観望
調理に多くの燃料を要する人 気食品の「インスタン
41 研修およびイベント
ト」版を開発できれば、大幅な省エネを実現するこ
28 ラビーナ(ポルトガル)
とができます。「インスタント」が理想的な解決策と 41 刊記 カルビン・グリーダー(Calvin Grieder)、CEO
経済危機の影響をまったく受けなかった理由は?    
なるか、ビューラーの取り組みをご紹介します。
リオ・ミーニョに拠点を置くダイカスト工場の効率性と信頼
性がその背景にありました。

2
ニュース ニュース
NEWS

ビューラー 2011年度も業績好調 ベーカリーイノベーションセンター:お客様のお客様にフォーカス


ビューラーテクノロジーグループの業績は、2011年も着実な した。また、フードプロセシング事業部の受注高は前年度と同 ウッツヴィル(Uzwil)のビューラー本社

伸びを示しました。受注高は前年度比3%増の22億3,300万 水準でしたが、売上高は10%増を達成しました。 に新設されたベーカリーイノベーション

スイスフラン超、売上高は同12%増の21億3,100万スイスフ センター(BIC)では、製品やプロセス

ランと著しい成果を遂げました。ドイツのプラントメーカーで のソリューション開発のみならず、研修

あるシュミット・ゼーガー(Schmidt-Seeger)の買収が、欧 コースや、製粉コースの補完としてパン

州市場における業績増の約半分に寄与しました。 製 造を専門とする科目も開講してきま

2011年度の実績には、グループ全部門の貢献が反映されて した。そしてついに、製粉工場やパン工
売上高(単位:100万スイスフラン)
➜➜
います。世界的に好調な自動車業 界とダイカスト部門の目覚 場からの盛んな要望を受け、新コースが

ましい業績を背景に、アドバンストマテリアルズ事業部の売上
高は28%増を記録。グレインプロセシング事業部の売上高は
2011 2,131 + 12 % 新設されました。粉の機能性や用途な
ど、具体的なノウハウを教えて欲しいと

8%増でした。両事業部の売上拡大は主にアジア市場におけ 2010 1,907 いう業界からの強い要望に応え、新コー

るものですが、欧州市場や南米市場も堅調な売上を記録しま スでは複雑なパン製造方法についてき
め細かな講 習を行います。粉の製 造や ビューラーのベーカリーイノベーションセンターで粉の効果的な活用方法について学ぶ。
品質に関する徹 底した専門知識のみな
らず、バゲット、クッキー(ビスケット)、
ピザなどの特定用途における粉の最適 として役 立てていただけるものと期待
ビューラーの新取締役員にルース・メッツラーが就任 化についても講 習があり、原材料 の品 しています。
質評価、粉の分析や是 正 処理に関する
2 011年12 月、ル ース・メッツラ ー- ルインナーローデン準州(Canton of
科目を受講することもできます。最終製
アルノルト(Ruth Metzler-Arnold)が Appenzell I. Rh.)の財務担当を務めま
品の評価、標準検査も行います。受講者 詳細はこちらまで:
ビューラーの新取締役 員に選出されま した。連邦政府での職 務を終えた後は、
は、業 界の動向や今後の穀物加工に対 マティアス・フラー(Matthias Furrer)
した。同 氏は、スイス 連 邦 参 事 会 参 事 バーゼ ル(Basel)に拠 点を 置く製 薬 ベーカリーイノベーションセンター長
する影響なども学ぶこともでき、各市場
および 司法相を務めた経 歴を持ち、弁 会社ノバルティス・フランス(Novartis T +41 (0)71 955 42 03
Bild ist angefragt での新たなビジネスチャンスのきっかけ matthias.furrer@buhlergroup.com
護士および 会計監査 人としての専門知 France)の経営幹部を務めながら、5
識で、取 締役 会を一層 強 化していきま 年間法務部長として従事し、後に投資家
す。スイス連邦政府に加わる以前は、会 向け広報情報の総責任者も務めました。
計 監 査 人 お よ び コ ン サル タ ント とし 現在は独 立してコンサルタント会 社を
てプライスウォーターハウスクーパース 経営しています。
(PricewaterhouseCoopers)に8年 オマーン:ビューラーの顧客が国王より表彰される
政界およびビジネス業界で長い経歴を持つ、
間勤務しました。その後、アッペンツェ
ルース・メッツラー-アルノルト 12 月末 、オ マーン のパ スタ 製 造 会 社「サ ラ ーラ・マカロ ニ
(Salalah Macaroni C o.S. A .O.C.)」が、同国 首 都 マス
カットにてス ルタン・カブース・ビン・サイード国王(Sultan
Q a b o o s b i n S a id)より、「2 011年 最 優 秀 工 場 国 王杯
(Majesty’s Cup for Best Factories 2011)」を受賞しま
キリンビール仙台工場より復旧支援の感謝状 した。1911年に始まった同賞は5部門に分かれており、優れた
キリンビールは日本有数のビールメーカーです。2011年3月 しており、復旧にあたりビューラーのエンジニアリングチーム 品質の製品で現地、地域、国際市場にて成功を収め、政府の経
11日、東北地方で発生した地震と津波は、地域や産業に甚大 が 設備 点検・修 理を 無 償 で行 いました。完 全 稼 働に向けた 済目標に対して卓越した取組みを行った最優秀企業に毎年授
な被害をもたらし、多くの人命が失われました。この震災によ 復旧工事は続いていますが、キリンビール仙台工場はこの度、 与されています。サラーラ・マカロニは、2007年に設立され、
り同社の仙台および取手工場が被災、仙台工場ではビールタ 復 旧 作 業 を支 援した協 力 会 社に感 謝 状を授与、そ の中には 同国南部サラーラ(Salalah)にある工場には、生産能力3トン
ンクを含む製造設備が多岐にわたり損傷し、倉庫や設備の一 ビューラーも含まれていました。キリンビールは1907年に /時のビューラー製ショートパスタ製造機1ラインが配備され
部が浸水しました。数か月におよぶ復旧作業が従業員、そして 設立、東北地方初のビール工場である仙台工場は1923年に ており、最新鋭のパスタプレス機「Polymatik」、新世代乾燥機
協力会社も一丸となっておこなわれ、2011年11月、震災後に 操業を開始。同工場は32万m²の敷地を有し、200名以上の 「C-Line Turbothermatik」が装備されています。ビューラー
仙台工場で製 造したビールが初出荷されました。ビューラー 従業員が働いています。 製設備の導入により、サラーラ・マカロニは、国内で最も近代
は、仙台工場を含めキリンビールに複数台のモルトミルを納入 オマーンの最も近代的なパスタメーカーに授与される国王杯。  的なパスタメーカーとなりました。

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食料安全保障の4つの焦点

供給・備蓄 入手手段
• 国内生産や輸入を通じ、適切な品質の食料を十分に確保する。 • 消費者行動や消費パターンが急速に変化し、物理的にも経済的に
• 技術、投資、希少化が進む天然資源(土地、土壌、水、化石資源由 も食料需要と供給の不均衡が大陸間で拡大する中、増加し続ける
来 肥料、エネルギーなど)を効果的に利用し、かつ環境への影響 全世界の人口に十分な食料を供給していく。
を最小限に留めながら、手頃な価格で、栄養価が高く、安全な食料 • 個人が十分な食料資源(食料を入手する権利)を入手でき、栄養価
を持続的に生産および加工する。 の高い食生活を実現するための適切な食料が確保できる。

増加の一途をたどる世界人口への食料安全保障確保という課題には、学術界、産業界、政策立案
者の連携が肝要となります。ビューラーは、スイス連邦工科大学に設立されたワールドフードシステ
ム・コンピタンスセンターのパートナーシップ会議設立メンバーとして、食料安全保障に関する議論
や解決策の模索を行っています。

ヘイグ・シモニアン(Haig Simonian)

世界の食料供給に
貢献
70億人を突破した 地球人口は、一貫して増加の一途を とはいえ、食料安全保障の中核となるのは、食料の十分
たどっています。土地や水などの限りある資源を背景に、 な供給です。近年、植物学や遺伝学の進歩を受け、作物
食料安全保障の問題が世界的な課題となったのは必然 の 生 産性が 想像 以 上に改善されてきました。害虫や病
といえます。食料安全保障とは、食品汚染の防止や安全 気に対する作物の耐性も大幅に改良されています。また、
衛生基準を満たすことに限ったことではありません。真 気候や土壌に対する見識が深まったことで収穫量が大幅
の課題は、地球の食料自給力を確保していくことです。 に拡大し、世界中の非常に貧しい農家が肥料や農薬を入
この全体像の一部を占めるのが、食料廃棄の回避です。 手できるようになりました。しかし、こうした前進にも関
先進国では、購入された食品の約3分の1が廃棄されて わらず、食料安全保障は依然として主要課題として残っ
います。バナナ生産者のジョークに「常連さんはゴミ箱」 ています。この課題は、一集団のみの努力によって解決
利用 安定性 というのがありますが、これは購入されたバナナの多く できるものではありません。研究所の植物学者は、作物

• 適切な食生活、浄水、公衆衛生、保健医療を通して食料を摂取・利 • 環境条件(気候 変動など)や社会経済の状況(ガバナンスや世界 がごみ箱に捨てられる運命にあるからです。食料廃棄の の耐性強化で収穫量の改善に寄与することはできます


用し、人体が必要とする健全な栄養状態を確保する。食料安 全保 市場)が変化する中でも、食料の安定供給を確保する。地域およ 問題は、発展途上国にも存在します。毎年、早すぎる段 が、貧しい農家の収穫増に役立つ農業機械を提供するこ
障の 確保に必要な、食料品 以 外 の 物 資や要件も重要となりつつ び世界規模で食料の生産や流通に影響を及ぼす環境、金融、社会
ある。 面のリスクや危機に左右されることなく、食料の安全保障が確保
階での誤った加工や、ずさんな保存方法によって大量の とはできません。
されなければならない。 収穫された食料が消費者の手に届く前に廃棄されてい
るのです。

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食料不安と赤十字・赤新月社

ロジェクトを実施してきました。しかし、各国政府、援助
「ワールドフードシステム・コンピタンスセンターのような
団体、慈善団体、市民社会が連携して資金援助を拡大す
るまで、食料安全保障の問題が解決されることはありま プログラムは他に類を見ません。設立当初から関与できた
せん。
ことを私達は誇りに思っています。」
イアン・ロバーツ
食料確保の問題はどのように改善していくことができるで
しょうか?
1960年代から、高収穫種、肥料、小規模 灌 漑が食料生
産の急増に寄与してきました。しかし、この緑の改革は、
基本的なインフラの欠如、紛争による飢餓拡大、援助不
足、水不足、人口増加の問題が台頭するアフリカ大陸で根 語ります。「センター設 立により、専門知識を集 約する への知識を深め、単に優れたエンジニアリンググループ

付くことはありませんでした。一方、発展途上国では、貯 プラットフォームが実現しました。学際的かつ組織的な を超えた企業をめざしてきたことがあげられます。」最


蔵、保存、流通の不備や設備投資の不足により、収穫後損 アプローチを採用しながら、この世界的な難題に取り組 近では、新分野の開拓も共同で行っています。センター
失が総生 産量の30%を占め、気候 変動がこうした生 産 んでいきます。」 の学際的な基本理念は、学内のみならず高い実績を持つ
力の低下に一層の拍車をかけていくこととなります。人口 大きな野望であることには間違いありません。持続可能 外部組織も含め、多様な部門から優秀な才能を集約する
増加に見合った生産量と援助体制を確保していかなけれ
世界飢餓問題への団結を指揮する な世界の食料安全保障という目標の道標として、同セン こと。食品処理加工設備のリーダー的存在として世界中
国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)会長の近衞忠煇氏 ば、移民の流入圧 力が一層悪化するばかりです。食料援
ターでは、1.適切な品質の食料供給・備蓄を改善する、 に拠点を持つビューラーが、ETHのパートナーとなった
助よりも資 金援助のほうが、商品やサービスの購入で雇
2.急増する世界人口がこうした食料を入手できるように ことは自然の流れといえます。その他にも、非常に優れ
用や所得を創出できるため効果的です。食料価格に資金
する、3.食料を適切に利用する、4.温暖化による環境 たパートナー企業に恵まれており、世界最大の売上高を
国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)とその187ヶ国の赤十 を注ぎ込む投機家への厳しい規制も推進していく必要が
字・赤新月社の代表は、公衆衛生の非常事態や自然災害に あります。資本集約型の企業よりも小規模自作農家によ
変化や社会経済の変容など、変化する状況下でも食料供 誇る食品メーカーのネスレ(Nestlè)、バーゼルに本社

直面し、食料不安に見舞われた脆弱なコミュニティの支援 る収穫量の方が高いというケースが多いため、こうした農 給を保障する、という4つの側面に焦点を当てています。 を置き、農業科学と種子技術で最先端を行くシンジェン


に従事しています。IFRC会長の近衞忠煇氏にお話を伺いま 家への支援が重要となります。 ビューラーのチーフテクノロジーオフィサー(CTO)で同 タ(Syngenta)などの企業とも密に連携しています。セ
した。 プログラムの主要メンバーであるイアン・ロバーツ(Ian ンターのパートナーシップカウンシルには、産業界のみ
民間部門ができることは何でしょうか? Roberts)はこう語ります。
「無理難題のように聞こえる ならず、財団や慈善団体も参加しており、低投入型や有
IFRCにとって、食料安全保障が果たす役割とは何でしょう 食料不足に対する民間企業の新しい取組みが増えてきて かもしれません。しかし、同センターのようなプログラム 機農業の役割に関する研究、教育、アウトリーチプログ
か? います。たとえば、バングラデシュのマイクロファイナンス
は他に類を見ません。設立当初から関与できたことを私 ラムの当初の出資者であるスイスメルカトル財団なども
世界中の約10億人が空腹のまま毎晩眠りについていま 機関であるグラミン銀行(Grameen Bank)とフランス
達は誇りに思っています。」 含まれています。
す。災害や急騰する食料価格で十分な栄養を摂取できな の企業グループ、ダノン(Danone)は、2006年にグラミ
イアン・ロバーツはこう語ります。「世界の約3分の2の
い人々を抱える脆弱なコミュニティにとって、自給自足や ン・ダノン・フーズ(Grameen Danone Foods)を設立し、
長年にわたるパートナーシップ 小麦が、ビューラーの設備で加工されています。言い換
自然災害への備えは不可能です。IFRCは、災害前後の食 競合製品よりも低価格の栄養強化ヨーグルトを開発しま
料供給を確保するため、種子銀行の設置や小規模灌漑プ した。 スイス最高峰の工学・自然科学の大学であるETHチュー えると、世界の3分の2のパンにビューラー製品が関与し
リッヒ校とビューラーグループの連携は、今に始まった ているのです。パスタやチョコレートにも同じことが言
事ではありません。プロセスエンジニアリングを専門と えます。」
するビューラーは、長年にわたりETHの卒業生にとって 「業界における当社の位置づけから考えると、私たちは
食料農業科学関連の多国籍企業は、優れた処理加工技 このような背景のもと、ビューラーは、スイス連邦工科 主な進路先の一つとなっています。現在のグループ最高 多くを提供することができます。そして得るものも多い
術への投資、さらには素晴らしい企業市民活動を通して 大学(ETHチューリッヒ校)で設立された画期的なプロ 経営責任者もETHの卒業生です。研究分野でも、ビュー のです。応用可能で実践的な知識、そして、グローバルに
貧困地域の状況改善に資することが可能ですが、市場へ グラム、ワールドフードシステム・コンピタンスセンター ラーとETHは長年にわたり協力関係を維持してきました。 事業展開する企業として各地域に根差した真のノウハウ
の迅速な製品輸送に必要な道路を建設することはでき の設立 パートナーとなりました。食品処理 加工ソリュー 常に世界のトップレベルの大学に位置づけられるETHは、 を提供することができます。こうした観点からも、当社
ません。政治家や政府の取組みは、国内農家に対する助 ション で 世 界 をリード するビューラー は 、同 センター ビューラーのみならず、工作機械、マイクロマシン工学、 はETHの学術的な蓄積に貢献していくことが可能です。
成金やインセンティブの提供など近視眼的なアプローチ が、食料安 全保障に関する議 論の 促 進や解決 策の創出 医療技術分野の国際的なスイス企業に高度な専門知識 一方で、私たちが得ることもあります。機械を作るだけ
にとどまりがちで、世界規模の変化を起こすには至りま を推し進めてくれることに期 待を寄せています。
「 E TH を提供し続けています。 でなく、産業を揺るがす世界規模の問題にも対応する企
せん。 チューリッヒ校は、農業投入物から製造方法、食品処理 近年、ビューラーと同校は、エンジニアリング、農業科学、 業としてのビューラーをお客様にご理解いただけるので
加工、消費者行動、栄養摂取および健康に至る、食品サ 食 品 科 学などのプロジェクトを 通じた 連 携( 大 学レベ す。」▪
豊富な専門知識 プライチェーン全体を網羅する豊富な専門知識が集約さ ルまたは教授レベル)により、ますますその関係を深め
食 料安 全 保 障という課 題は、主 要組 織 が連 携し、学 際 れた機関です。」と、新センターのエグゼクティブディレ てきました。ロバーツはこう語ります。「その背景として、
ヘイグ・シモニアンは、ファイナンシャル・タイムズのスイス特派員
的なプロセスを通してのみ、適切な取り組みが可能です。 クターであるミシェル・グラント氏(Michelle Grant)は ビューラーが、過去10年間にわたり自社で取り扱う材料 です。

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(左から)エマニュエル・フロサール氏(ETH)、イアン・ロバーツ(ビューラーCTO)、ヘイグ・シモニアン(ファイナンシャル・タイムズ)、
ミシェル・グラント氏(ETHワールドフードシステム・コンピタンスセンターCEO)が、食料安全保障に対するコミットメントを共有しました。

「食料安全保障は最優先課題」
世界の各市場の消費者には、現地の状況に最も適した
食料生産の重要性について理解してもらう必要がありま
す。」 「水をはじめとする希少な資源は、
ETHチューリッヒ校での専門家による座談会 食料生産において慎重に利用して
ビューラーに出来ることは何ですか?

ワールドフードシステム・コンピタンスセンターのパートナー企業であるビューラーの主催で、食料 IR:「グローバル企業である当社は、現地市場や国際市 いかなければなりません。」


場を理解しています。現地拠点から、どこで何が起こって イアン・ロバーツ
安全保障の実現に向けた食料不足の回避や消費パターンの持続可能性の対応策について座談会
いるのかを知ることができるのです。これはセンターに
が開催されました。
とって不可欠な情報となります。もちろん、スイスから対
策を提案することもできますが、それをうまく機能させ
るためには、インド、中国、ブラジル、アフリカといった現 とは、競 争上の決 定的な優 位性につながると考えてい
地市場についての深い知識が必要です。」 ます。ワールドフードシステム・コンピタンスセンターの
プログラムに参加することは、当社の将来を支えること

世界の食料問題が抱える最大の課題は何だと思われますか? イアン・ロバーツ(以下IR):「食料安全保障の問題は間 ビューラーが得られることは何でしょうか? にもつながるのです。これは、製粉設備やコンチェ等の

ミシェル・グラント氏(以下MG):「人々の健康、環境、 違いなく最優先課題です。東アフリカの飢餓のような危 IR:「ビューラーは 食 品 加 工 処 理・貯 蔵 搬 送 設備 のグ 技術改良やそれによる生産プロセスの改善に限ったこと

社会的福祉に配慮しながら、世界人口への食料をどのよ 機を再発させてはなりません。食 料生 産における持 続 ローバルメーカーであり、世界の穀物の6割が当社の機 ではありません。人口や気候の変 動などの環 境要因が

うに確保していくかということだと思います。これは現 可能 な 技 術 の 導入も徹 底 する必要があります。たとえ 械を通して加工されています。パスタやチョコレート分 食料生産に与える影響を理解することにもつながります。

代において決 定的かつ恐らく最も複雑な課題であると ば、多くの地 域において、水は希少な資源であり、食料 野においても同様にリーダー的な存在です。しかし、食 ETHチューリッヒ校や他の企業と連携することは、この

言えます。」 生産に慎重に利用していかなければなりません。最後に、 料生産のバリューチェーン全体に対する理解を深めるこ 目標を達成するうえで不可欠なのです。」

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センターの構成について教えてください。 専門家の紹介
エマニュエル・フロサール氏(Emmanuel Frossard):
「背景からご説明しましょう。2006年、ETHの農業食
料 科 学部は、食料関連の問題を研究するためのより包
括的な方法がないかを検討していました。作物の栽培や
加 工を専 門とする学 者だけでは なく、もっと幅 広 い 分
野、たとえば環境や経済の分野まで網羅した人材を誘致
したいと考えていたのです。ETHチューリッヒ校の組織
改編により、2012年に農業食料科学部が2つの部門に
分割されました。環境システム科学(環境システム科学
部)と健康科学および技術(健康科学技術部)を専門と
する部門です。ワールドフードシステム・コンピテンスセ
ンターは、大学内の様々な部門との連携を図り、外部の
パートナー企業や政策立案者の参画を促すことのできる エマニュエル・フロサール氏 ミシェル・グラント氏 イアン・ロバーツ
プラットフォームを構築するために新設されました。」 ETHチューリッヒ校の植物栄養学教授 ワールドフードシステム・コンピタンスセ 英国生まれで、2011年にチーフテクノ

IR:「ビューラーは長年にわたりETHチューリッヒ校と連 で、ワールドフードシステム・コンピタン ンターのエグゼクティブディレクター。 ロジーオフィサー(CTO)としてビュー


スセンター執行委員会副議長を務めま 化学プロセスと環境エンジニアリング ラーに入社。化学工学と食品加工を専
携してきましたが、これまでとの違いは、多岐にわたる専
す。スイスとフランスの二重国籍を持つ が専門。オーストラリア生まれで、独立 攻した後、19 97年に博士課程修了者
門分野が1つ屋根の下に集結されるという点です。これ
51歳の同氏は、センター設立に重要な コンサルタントの経験を持つ同氏は、 として、スイス食品大手ネスレのローザ
にはネットワーキングと相互の連携がキーワードとなり 役割を果たしました。作付けおよび 草 持続可能性や食料システムに関連する ンヌ(Lausanne)研究所に入社しまし

ETHチューリッヒ校のワールドフードシステム・コンピタンス
ます。こうした連携は、イノベーションを興す上で不可欠 原システムにおける栄養サイクルに関す 研究、教育、アウトリーチにおいて、長 た。ビューラー入社前は、ネスレに新設
センターには、学術界や産業界の専門家が集まります。 で、単独の機関や部門だけで実現するのは非常に困難で る研究を行っています。 年にわたりETHチューリッヒ校と協力し されたチョコレートセンター・オブ・エク
てきました。 セレンスにおいてディレクターを務めま
す。ワールドフードシステムのプロジェクトで構想された
した。
とおり、学術界と産業界の団結が実現したことも嬉しい
成果でした。期待に応えるためにも、こうした体制を当
初から整備しておくことは非常に重要でした。私たちが
設定した目標は非常に野心的なものでしたから。」
MG:「中核となるのが執行委員会で、選出されたETH
教授10名で構成されています。パートナーシップカウン
別の企業も歓迎ということですか? シルや学術界、産業界、公的部門の代表8名で構成され
MG:「ワールドフードシステム・コンピタンスセンターに る科学諮問委員会からの見識を取り入れる役割を果たし
とって不可欠な存在となるのがパートナーシップカウン ます。ETHの監督下にある執行委員会は、センターの取
シルで、学術界、産業界、慈善団体からの代表者で構成 締役員やスタッフを指揮します。」
されます。同カウンシルは、重要な課題に向けた連携を
促し、ソリューションを開発および実行していくための まだ設立初期の段階ですが、これまでの成果について教え
プラットフォームとなります。研究成果を意思決定者に てください。 スイスミルの代表者とETHおよびスイス政府からの選
「『現実世界』との緊密なつながり
伝達するという重要な役割を果たすとともに、
『現実世 MG:「まだ設立して間もないですが、研究、教育、アウト 出者で構成される技術委員会が設立されており、
「どの
界』との緊密なつながりを維持しながら、協力的なネット リーチの主要分野をどのように展開していくかという点 作物が最も深刻な圧力を受けるか?またそれにより土地
を維持しながら、研究成果を意思
ワークを構築することができます。ビューラーと並び、シ で明確なビジョンがすでに確立されています。」 利用にどのような影響が及ぼされるか」、といった課題 決定者に伝達していきます。」
ンジェンタとスイスメルカトル財団もすでに同プログラ IR:「すでに2つのプロジェクトの構想が進んでいます。 への回答を模索していきます。2つ目の確定プロジェク ミシェル・グラント氏
ムに参加しており、その他企業の参加も検討されていま 1つ目は、主要な5作物に焦 点を当てた穀物のバリュー トは、ほんの初期段階ですが、肉中心の食生活への世界
す。」 チェーンの研究です。人口変動、経済、都市化、グローバ 的な移行がもたらす影響に関する研究です。肉の代替原
IR:「企業間で互いの理解を深めることもできますし、 リゼーション等の要因が需要に与える影響について調査 料としての植物性タンパク質の可能性を探り、代替製品
互恵的な体制だと言えます。プログラムが進展するにつ します。もちろん実際の研究は、土地の利用性、気候の の製造方法や構成について研究していく予定です。」▪
れ、参加 組 織も明らかにオープ ン な姿 勢を取るように 検 討、供給の経 済 性などの要素を考慮した綿密なもの
なってきています。」 となります。すでに、ビューラー、ネスレ、シンジェンタ、

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より短い調理時間で
同じおいしさを
「インスタントメイズミール」は、ビューラーのプロセス革新から生み出された好事例です。このメイズ(トウモロ
コシ)を使用した即席乾燥食品は、アフリカ南部の市場向けに開発されました。従来品とまったく同じおいしさ
のまま、調理時間を30分から2~5分に短縮することができます。

デイビッド・サイナー(David Signer)

ステップ1: トウモロコシの調理には多くの時間と労力が必要です。
需要を特定し、初期試験を実施 高度な 製粉工場で粗挽きにされたトウモロコシの調理
トウモロコシは、世界中で最も広範に栽培されている穀 には、これまで最低でも30分が必要でした。発展 途上
物で、全世界で年間8億トンが生産されています。大半が にある郊外や農村地帯ではパラフィンや木が調理に使用
飼料として使用されますが、アフリカ広域に住む人々に されます。労力や時間のみならず、非常に希少で入手困
とっては主食でもあります。1日3食、食されることもあ 難な薪、高価なガスや電気も大量に消費しなければなり
り、塩味や甘味のある粥やポレンタとして調理され、ウガ ません。また、急速な成長過程にあるアフリカの都市で
リ、ミーリーミール、ミーリーパップなど、地方によって は、簡単ですぐに作れる食事(コンビニエンスフード)へ
その呼び名は様々です。アフリカではこのような多様な の需要が増加しています。新興市場であるアフリカでは、
調理方法で、1人当たり年間85キロのトウモロコシが消 2025年までに都市人口が総人口の半分を占めると予
費されています。 測されており、こうした都市化には生活スタイルの全般

12 13
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トウモロコシからインスタントメイズミールができるまで

インスタントメイズミールの
➜➜
生産工程は7段階:

1 準備
精選、脱胚芽、
サイズ縮小、穀粒の粉砕
2 調質
水分や添加剤の追加

既存の加工技術を採用:オート麦の破砕に
使用されていたローラーミルをトウモロコシ
の加工に使用。

同じ味

7 より短い
調理時間
粉砕
タンパク質、ビタミン、
ミネラル等の
栄養素の追加。

6 5 4 3 生産に使用されるローラーミルをトウモロコシ加工用に 分の調理時間に対する耐性があれば良いので、生産者の
改造するなど、既存の加工技術を駆使して、理想的な最 コスト削減および添加剤の効果増大につながります。

冷却 フレーキング テンパリング
終製品の品質を得ることが試験の目標でした。広範囲に エコロジーの観点からも、廃水を出さず、乾燥時に排水
=10–12%
フレークを氷片で覆い、 フレークの厚さがゲル化の度合 蒸気によるデンプン 質の わたる試験の中で、生産工程が商業規模でテストされま される水の量も比較的少量ですむため、テスト結果は支
乾燥 水分吸収力を上げる。 い、つまり最終製品の調理時間 部分 的なゲル 化 、微 生物
10 ~12%の水分含 量に を決定する。 のほぼ完全な死滅 した。サンプルを各種少量で生産するのではなく、実際 持されました。
まで乾燥させる。 の生産工程さながらに数トンもの製品が製造されたの
です。こうして生産された最終製品では、従来品と同じ ステップ3:
見た目、味、食感、口当たりが実現されました。 アフリカ市場での販売
この新製品を試食するべく、プロジェクトに関与したス 特許取得後の2011年半ば、インスタントメイズは、プロ
イスおよびアフリカの顧客、エンジニア、従業員がウッ セス革新の成果として市場に展開されました。長期にわ
ツヴィル本社のキッチンに集まりました。日常会話で耳 たる意見交換や修正により、現地の工場に適合した技術
にするような内容(「僕の妻は普通もっと水を入れるけ の最終調節を実施。温度、湿度、原材料の性質など、最
的な近代化が伴います。今後もコンビニエンスフードの ニーズ」というビューラーの企業理念を反映したチャレ どね。」「子どもの頃は、少し砂 糖をかけて食べたもの 終 製品の品質に影 響を与えうる数々の要因は、現 地で
普及は拡大が見込まれています。 ンジとなったのです。2000年以降、短時間で調理可能 だ。」)で盛り上がった会合ですが、技術者にとっては正 しか検証することができないからです。新製品の生産は
これらを背景として、トウモロコシを短時間で調理でき なひき割りトウモロコシの試作品テストが徹底的に行わ 念場となるイベントでした。生産工程表、ネジやボルトか 2012年末を目途に開始される予定です。
る新製品、インスタントメイズミールの研究開発がここ れました。2008年にはアフリカの消費 者の具体的な ら始まったプロジェクトが、試食会の段階にまでに辿り ビューラーは先頃、このインスタントメイズの開発に対
数年で進められてきました。しかし、問題となったのは、 ニーズとその技術的な実現性を照らし合わせ、さらに正 ついたのです。 し、ドイツ農業協会(German Agricultural Society)
製品の味、色、固さを従来品と同じにできなかったこと、 確な分析が行われ、ウッツヴィルでインスタントメイズの 研究結果によれば、調理時間が2分以下となる製品の生 より2012年インターナショナル・フードテック・アワード
そして製品が手に付着してしまうことでした(一般的に、 パイロット試 験 が 実 施されました。初 期 段 階において 産も可能でしたが、衛生面と世界保健機関(WHO)の推 (International FoodTec Award 2012)の金賞を受
アフリカではトウモロコシは手で食されます)。食に関し 有望な結果が得られた後、現地の穀物加工企業に提携 奨で、最終的に最低2分ということで決定しました。この 賞しました。主食の最適化に潜むビジネスチャンスが実
て伝統が重んじられる土地柄であるため、これまでに開 へ向けたアプローチが行われました。 調理時間でインスタントメイズは最適の食感を生み出す 証された受賞と言えるでしょう。▪
発されたインスタント製品は市場で受け入れられません ことができます。
でした。 ステップ2: 新しい生産プロセスにより、保存可能期間が数か月から
現地のビューラーのスタッフは、こうした問題を把握し、 ウッツヴィルでの顧客テスト 10~12か月に拡大可能となり、ビタミンや栄養素を添
デイビッド・サイナー
新しいトウモロコシ食品の開発は、「イノベーションの 2010年からビューラーは、アフリカ南部の顧客とともに、 加することもできます。従来品にも栄養素の添加は施さ
民俗学者。フリーランス・ライターとしてスイスの日曜紙
基盤となるのは、既存の技術ではなく、地域に特化した ウッツヴィルでの試験を開始しました。オートフレークの れていますが、インスタントメイズの場合、添加剤は数 「NZZ日曜版(NZZ am Sonntag)」に記事を執筆。

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リスボンのベアトにあるセレアリス・モアジェンスの外観

輝かしい功績:
リスボン、ポルト(Porto)、コインブラ(Coimbra)にあ です。プロジェクトが完了すれば、セレアリスの競争力の
る3つの大規模な製粉工場を運営するセレアリスは、ポ 強化と粉品質の向上が実現します。ビューラーに課せら

セレアリスの新工場
ルトガル最大の製粉会社です。2007年、セレアリスの監 れた課題は、
「1950年代に建設された既存の建屋内で
査役会は、小麦粉およびセモリナ粉の全生産設備をアッ の、最高級のコンポーネントを使用し、製粉技術の最新
プグレードするとともに、その生産活動を再編する決定 の知見に基づいた工場設備の設計および建設」でした。
を下しました。デュラム小麦の加工施設は、ポルトにある ビューラーにとって、セレアリスでのプロジェクトは非常
粉品質の改善、最高クラスの衛生基準と製品安全性、生産コストの削減:リスボンのセレアリス・モアジェンス 2つのパスタ工場に統合し、軟質小麦の加工施設は、リ に大きなチャレンジとなりました。プロジェクトマネー

(Cerealis Moagens S.A.)が誇る生産能力720トン/24時の新設備は、最新鋭の製粉設備に課せられ スボンのベアト(Beato)に移転することとなりました。 ジャーのペドロ・ウィルムセン(Pedro Willumsen)は

るあらゆる要件を満たしています。新設備の導入により、セレアリスは、ポルトガル最大の製粉設備、そして、 2009年の初期段階で、デュラム小麦の加工用に生産能 次のように語っています。


「新設備の稼働開始まで、従来
力370トン/24時のビューラー製ミルが導入されました。 の精選設備と500トン/24時の製粉設備を変わらず連
ショーケースにふさわしいプラント施設を手にしました。
続操業させるというのは、大変な責務でした。それだけ
ヘルベルト・ボスハルト(Herbert Bosshart)
最高品質の保証 ではなく、建屋の築年数や材質の面でも驚くべき問題が
その後まもなく、第2段階が実施されました。ベアトを 発生したのです。」事実、設備の建設過程で建屋関連の
拠点とする生産能力720トン/24時の製粉設備の建設 問題が頻発し、そのたびに慎重な対応と徹底的な修正が

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お客様事例
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新工場には、ビューラーの「新しい製粉技術」の理念が、
体系的かつ妥協のない形で採用されています。製粉設備
セレアリス
には、ビューラーの主力製品「アンタレス」、
「シリウス」、
「ポラリス」が完備されており、これらのマシンが最高

187 
グループ:セレアリスSGPS
➜➜ グループ売上高:
➜➜

所有者:アモリンおよびラジェ一家(Amorim and Lage)


➜➜ 級の 粉品 質を保 証します。ローラーフロアには、全27

会社:セレアリス・モアジェンスは、ポルトのフレイショ(Fleixo)、コインブラ
➜➜ EUR 基(8本ローラーミル8基と4本ローラーミル19基)の

のアデーミア(Ademia)、リスボンのベアトに3つの大規模な工場を保有。セ million (2011) ローラーミル「アンタレス」が稼働。粉のふるい分けに

レアリス・プロドウトス・アリメンタレス(Cerealis Produtos Alimentares 1億8,700万ユーロ(2011年) は、シフター「シリウス」5基(コンパートメント10室が4


S.A.)は、
マイア(Maia)に1つのデュラム工場と2つのパスタ工場(9本の生 基、コンパートメント4室が1基)が使用されます。全44

19 
産ライン)、トロファ(Trofa)に朝食用シリアルの工場、
マイアにビスケットの 輸出売上高:
➜➜
室のコンパートメントには、NovaPurシーブフレームと
工場を保有。セレアリス・インターナショナル(Cerealis International S.A.)
シーブが装備されています。セモリナ粉の精選と粒度分
は、輸出入事業を担当。
EUR けには、ピューリファイヤー「ポラリス」4基が使用され
原材料:穀物の取扱量は年間40万トン。
➜➜ million ます。
1,900万ユーロ
新工場の稼働にはセレアリスも満足しており、
「新設備
社歴:
➜➜
従業員数: の稼働で、小麦粉の品質が一層改善されました。新しい

633
1919年 アモリン・ラジェ製粉(Amorim Lage – Milling)の社名で設立 ➜➜
1933年 パスタの製造を開始 小麦粉は市場でも評価が高いです。」と、同社CEOのル
1978年 ビスケットの製造を開始 イ・アモリン氏(Rui Amorim)はプロジェクトの成果を
1991年 シア・モアジェンス・ハルモニア(Cia Moagens Harmonia)の大株主となる 語っています。
633人
1998年 ISO9001:2000を取得
1999年 リスボンのナシオナル(Nacional)を買収
カスタマイズされた制御システム
2002年 ハルモニアとコインブラのモアシル(Moacir)と合併
新 設 備 の 中 枢 部 と な る の は 、カ ス タ ム メ イ ド の
2005年 グループ再編で3社を新設
• セレアリス・プロドウトス・アリメンタレス:パスタ、ビスケット、朝食用シリアル 「WinCos」集中制御システムです。全フロアにタッチパ

• セレアリス・モアジェンス:製粉事業 ネルが完備されており、メンテナンスや清掃後のマシン
• セレアリス・インターナショナル:輸出入事業 の状況を現場で直接確認することができます。タッチパ
2005年 ISO22000を取得 ネルを設置したことで、電気系統の設置要件が削減され、
2006年 BRC規格を取得
手作業で操作するスイッチが排除されました。現在のエ
ラーメッセージやマシンのステータスについては、いつで
も簡単にパネル上で確認することができます。
セレアリスの生産工場はISO22000を取得しており、
高性能の光学式選別機「ソーテックスA5」
適切なツールで生産工程のトレーサビリティを徹底する
必 要とされました。プ ロジェクト の 遅 延 は不 可 避 でし カスタマイズされた生産工程 ことができます。また、この制御システムには2つの重要
たが、こうした苦労がプロジェクト成 功のカギともなっ セレアリスが操業する720トン/24時の新施設は、数々 な機能が追加されました。
「エネルギー管理」と「KPI工
たのも事実です。セレアリスの社 員の献 身ぶりも、プロ の特性を持つ卓越した設備です。たとえば、工場には原 場稼働時間分析」です。
「エネルギー管理」機能では、使
ジェクト の成 功にとって 不 可欠 な 要 素 でした 。インダ 料受入設備がありますが、あまり使われておらず、大半 用されるエネルギーの正確な制御と監視を通して、エネ
ストリアルディレクターであるルイ・アゼヴェド氏(Rui の穀物は、隣接した港にある国有のばら荷貯蔵施設から ルギー消費を最小限に留めることが可能です。「KPI工
Azevedo)、技術主任のパトリック・ボイル氏(Patrick 精 選 セ ク ション ま で、チェーン コ ン ベ ア で 搬 送 さ れ 場稼働時間分析」機能では、工場のダウンタイムと問題
セレアリス・プロジェクト(Cerealis project)の詳細は、
Boyle)およびティアゴ・シルバ氏(Tiago Silva)は、プ ます。リニューアルされた中間貯蔵サイロは、総貯蔵量が の原因となるコンポーネントやその理由をパネルに表示 以下までお問い合わせください。
ロジェクトに素晴らしい貢献をもたらしてくれました。 約26,000トン、10 4個のビンが 配 備されています。 することができます。このようにして、設備の弱点の発見、
アヴェリノ・カルネイロ(Avelino Carneiro)
2010年9月まで続いた準備作業では、旧建屋の補強工 2点目の特徴は精選設備です。スペースの制約とプロセ 高い生産性の確保、稼働率の最適化を実現することがで
グレインミリング部門エリアセールスマネージャー
事が行われ、電気・ガス・水道設備が設置されました。さ スの 最 適化に配 慮し、各種 機 器は通常とは異なる形で きるのです。▪ ビューラー(ポルトガル、リスボン)
らに、既存の大型小麦保管サイロにも大規模な改修作業 1次精選と2次精選に配備されています。1次精 選段階 T +351 964 055 814
avelino.carneiro@buhlergroup.com
が施されました。2010年9月に機器設置作業が始まり、 にはセパレーターのみが設置されており、材料は1次加
2011年6月に新工場が稼働開始、その1か月後に正式な 水段階を経て、テンパリングビンに中間保存されます。 ペドロ・ウィルムセン(Pedro Willumsen)
操業を迎えました。500トン/24時の旧製粉設備を解 そ の 後、2 次 精 選 段 階 でコンビクリーナー、ス カラー グレインミリング部門プロジェクトマネージャー
T +41 71 955 13 97
体し、建屋構造に最後の仕上げを加える瞬間が訪れたの マシン、最新の光学式色彩選別機「ソーテックスA5」に
F +41 71 955 37 01
です。 かけ、製粉の準備を整えます。 pedro.willumsen@buhlergroup.com

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ビューラーの世界最新の製粉技術を駆使したエジプト最大の製粉工場

良質の小麦を
マフムード・M・エル・ショーバギー氏の息子で、同社の るものもありますが、同じように私たちの経験もビュー
ゼネラルマネージャーを 務めるナビル・エル・ショーバ ラーは共有しています。私たちは互いから学び合える関
ギー氏(Nabil El Shorbagi)は、貯蔵、出荷、製粉設備 係なのです。ビューラーは、常に私たちの意見に耳を傾

良質の工場に
の「100%」に、ビューラーの製品、設計、メンテナンス けてくれますし、常に品質を重視しながら、当社のプラス
サービスを利用していると語ります。その設備には、穀物 になるように懸命に取り組んでくれています。」
貯蔵サイロ、出荷設備、小麦の総加工能力が約2,000ト
ン/日の製粉ライン4本、生産能力1,500トン/日の飼 ビューラーとの35年間

ファイブスターフラワーミルズ(Five Star Flour Mills)は、高品質小麦粉の生産で国内市場を 料ライン、さらに、近隣のスエズ運河に建設された穀物 ビューラーとファイブ スター の 協 力関 係は、同 社 設 立

リードするエジプト最大の製粉会社です。ビューラーの製粉ライン4本を駆使し、顧客の厳しい要 出荷用の港湾施設などが含まれます。 よりも以前にさかのぼり、35年以上の歴史があります。


「当社の成 功のカギは、製品について、一定した品質を 1970年代後半、マフムード・M・エル・ショーバギー氏は、
求基準を満たす高品質な製品を安定して生産しています。
守り続けていることです。これこそ、パン業者の皆さんが ペルシア湾沿いのバーレーンとオマーンで製粉および飼
ワード・ピンカス(Ward Pincus)
望んでいることなのです。ファイブスターの品質は信頼 料工場の運営に携わっていました。この時にビューラー
できるため、標準的なレシピにそのまま当社の製品をご の製粉設備について理解を深め、国内の高品質小麦粉市
使用いただけます。少し値段は高めですが、国内事業は 場への進出を考えていた同氏は、エジプトに設置する初
ファイブスターの会長兼取締役を務めるマフムード・M・ 国で総人口が8,000万人を超えるエジプトにおいて、国
拡大を続けており、また高級小麦粉の需要が高いアフリ の製粉ラインにはビューラーが最高のパートナーだと確
エル・ショーバギー氏(Mahmoud M.EL Shorbagi)の 内最大の製粉会社へと進化したファイブスター。この成
カ隣国への輸出も目標としています。」と、マフムード・ 信しました。以来、ファイブスターはビューラーの大口顧
経営戦略は極めてシンプルです:それは、厳しい目で製 功を築き上げたのが、エル・ショーバギー氏です。最高の
M・エル・ショーバギー氏が語ります。「高品質小麦粉と 客の一社となり、スイスのウッツヴィル本社からサービ
品を見極める国内の顧客に、最高級の粉を提供し続けて 設備、最高の小麦、継続的な品質管理試験の3つを軸に、
いうニッチ市場の獲得に向け、ビューラーは当社を支え スが提供されるようになりました。
いくこと。エジプトで製粉事業の民営化が始まった1995 国内高級小麦粉市場の8割以上のシェアを獲得してきま
てくれています。」さらに同氏は、両社間の互恵的な関係 同社が最近購入した4ライン目となるビューラー製製粉
年に初の製粉ラインを導入してからというもの、同氏は した。
についても説明しています。「ビューラーの経験から得 ラインには、世界でも最 新鋭の製粉技 術が 採用されて
この戦略を守り通してきました。世界最大の小麦粉輸入

20 21
お客様事例
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ファイブスターの成功の理由

ファイブスター・フラワーミルズの経営者であるマフムード・エル・ なぜファイブスターの小麦粉は人気が高いのでしょうか?
ショーバギー氏とナビル・エル・ショーバギー氏にお話を伺いま 小麦粉の高品質を堅持し続けていることが、当社の成功の大き
した。 なカギとなっています。これこそ、パン業者の皆様の望みなので
す。当社は製品品質に自信を持っていますので、業者の方々は
1995年のファイブスター設立当初の企業理念は? 当社の製品をそのまま標準的なレシピとして使用することがで
エジプトで製粉事業が民営化されたとき、多くの製粉工場が立 きます。少し値段は高めですが、国内事業は拡大を続けており、
ち上げられました。この中で当社は、エジプト初となる純粋で また高品質小麦粉の需要が高いアフリカ隣国への輸出も行っ
高品質な白い小麦粉を生産するという理念を掲げました。それ ています。
までエジプトでは、色の濃い小麦粉しかありませんでしたから、
国内で高品質小麦粉市場のみに絞るのは難しいだろうと考えて ファイブスターとその顧客にとって、ビューラー製設備はどのよう
いました。しかし、最初の1ライン目を導入してから僅か4~5か なメリットをもたらしていますか?
月後に、2ライン目を発注しなければならないほどの成果を上 サプライヤーとして、常に新しいことにチャレンジし、新たな付
ファイブスターでは、ビューラーの製粉ミルが安定した品質を保証
げることができました。 加価値の開拓に精進するということは非常に重要です。これは、
私たちの顧客がファイブスターに求めることでもあります。で
ファイブスターの事業戦略は? すから、私たちは、事業の拡大や最新技術への投資を継続的に
ファイブスター
当社は、高品質のパンを生産、または高品質の粉を使用する顧 実施しています。もちろん、当社にとって「最新技術」とは、工
客やパン業者のみをターゲットとしています。高品質小麦粉の 場の効率性やより能率的な労働環境、高水準のオートメーショ

80 - 85 %
1995年:ファイブスターが最初の製粉ラインを
➜➜ エジプトの高品質小麦粉市場におけるファイブスターのシェア:
➜➜
生産においてかなりの経験を有していますが、生産工場の設備 ン化を意味します。ファイブスターの工場見学をされるお客様
ビューラーに発注
はすべてスイスのビューラーから取り寄せています。また、純白 の大半は、最新の4ライン目となる製粉ラインを見学し、当社
の色目で非常に優れた特性を備える小麦粉を生産するために、 の製品に満足・納得してくださいます。」 1997年:工場建設が完了し、最初の小麦粉が
➜➜
高品質のオーストラリア産小麦を原材料として使用しています。 生産される
主な製品:
➜➜
品質管理部門も高い品質の維持に貢献しています。 2011年5月:4本目の製粉ラインによる生産を開始
➜➜ 業務用の高品質小麦粉、飼料、小売向け小麦粉、専用粉
(例:ピザ、だんご、パンケーキ)、ケーキミックス各種

2,000 tons
小麦粉の平均日産能力:
➜➜
主な顧客:
➜➜
2,000トン ゴールデン・ステート・フーズ(GSF Foods)

(マクドナルドの
ハンバーガー用バンズの生産)、
リッチ・ベイク
(Rich Bake)

います。2011年5月に完了したプロジェクトは、ビュー て全粒粉を作ることができます。ビューラーが設計した
(バーガーキングのハンバーガー用バンズの生産)、アメリカー

1,500 tons
飼料の平均日産能力:
➜➜
ラーのプロジェクトリーダーであるブル ーノ・センティ フローシートに基づき構築された同社4本目となる最新 :{ピザハット
ナ(Americana) (Pizza Hut)、ケンタッキーフラ
(Bruno Senti)が統括しました。工場内部は、メンテナ 製粉ラインでは、様々な小麦を混合する第1段階、そして イドチキン(KFC)、ハーディーズ(Hardees)のパン製品 } 、
クラ
1,500トン
ンスと衛生面を考慮して清潔に保たれています。今後の 精選段階、加水段階が設けられています。その後に続く フトフーズ(Kraft Foods)

(ビスケットとケーキ)

増築や新しいマシンの導入を念頭に、広々としたスペー 製粉段階では、5段階の粉砕セクションと10段階のリダ
スも確保。全9階の各フロアと3つのセクションは、複雑 クションを経て、業界をリードする生産量および品質特
に配置された空気式チューブ、コンベアベルト、配管、そ 性を誇る小麦粉の生産が可能となります。
してビューラーの「WinCos」工場制御システムによって 具体的には、ビューラーの減算計量式スケールを使用し
結ばれています。業界で150年以上の経験を持つビュー て適切な混合小麦が作られた後、アスピレーション、石
ラーは、作業効率や生産率の改善、土地やスペースの最 取り機、ふるい分け、光学式選別機を使用して小麦が精 使用した空気はフィルターにかけ、工場から排気しなけ ファイブスターの国内外の事業展開に対する明るい未来
適利用を実現するうえで必須となる専門知識を有してい 選されます。そして、2回の加水でふすまを最適な強度に ればなりません。また、工場にはWinCosプラント制御シ を考慮すれば、両社の35年の絆が今後も末長く続いて
ます。こうしたビューラーの価値は、フローシート(ダイ してから、粉砕、ふるい分け、純化というプロセスにより、 ステムが完備されているため、安全かつ便利で正確な操 いくことは間違いないでしょう。▪
アグラム)に見事に反映されています。 ふすまから少しずつ胚乳が分離されていきます。そして、 業管理、測定器からの情報収集、製造する小麦粉の種類
袋詰めの前に改良剤が追加されます。 に応じた迅速かつ効率的な設定変更が実現されていま
旧プロセスの最適化 工場内の気圧を一定にし、清浄な空気を保つため、施設 す。工場全体で手作業による設定変更は一切必要ありま
風力および水力で動く石臼が発明されてからというもの、 にはエアインテイクファンとフィルターを備えた優れた空 せん。同システムは設備の監視も可能で、特定の設備に
ふすまからできるだけ多くの胚乳を分離することが製粉 気清浄装置が完備されています。工場 外部の空 気は埃 メンテナンスが必要な場合は警告が表示されます。この
会社の目標となりました。白い小麦粉とセモリナ粉を生 だらけであることが多いため、こうしたシステムは特に 結果、設備機器や部品の寿命を最大化することができる
ワード・ピンカス(ドバイ)は、北米、欧州、中東の各紙に、科学、
産するためには、この白い胚乳のデンプン質が必要とな 重要となります。空気は小麦や小麦粉の精選に使用され のです。
技術、健康、ビジネス関連の記事を執筆している中東専門家です。
るからです。ふすまからは、飼料以外にも、小麦粉と混ぜ るだけではなく、工場内を自由に流れるものです。よって、 ファイブスターとビューラーの強固なパートナーシップ、 アラブ首長国連邦のAP通信特派員として勤務した経験を持ちます。

22 23
お客様事例
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先駆的な
パートナーシップ
ビューラーの精米設備が初めてパキスタンに輸出された1996年、現在も続くビューラーとギャリ
ブソンズ(Garibsons(Pvt.)Ltd.)の協力関係が始まりました。同社取締役を務めるフアド・ハミッ
ド・ギャリブ氏(Fuad Hamid Garib)は、一番重要なのは品質、競争力、一貫性だと語ります。

イリアーヌ・エンゲラー(Eliane Engeler)

ギャリブソンズは、ビューラーの精米設備を15年前に購入 ン2本は、より多くの玄米を、見た目も良い、ツヤツヤと
したパキスタン初の企業です。以後、ビューラーの設備を継 した砕米率5%の精米に加工する事業戦略に基づき導入
続的に追加購入していますが、最近では、処理能力10トン されました。
/時の加工ライン2本を新たに導入しました。新しい加工ラ
インを購入した理由は? 精米事業を開始してから、ビューラーを選び続けている理
新しい加工ラインは昨年夏に建設が完了しました。購入 由は?
の理由は、当社の精米能力を拡大していく必要があった 1996年の事業開始当初、私たちは1号機としてビュー
からです。1996年の精米事業の開始当初、私たちは長 ラーの製粉ミルを導入しました。当時、パキスタンの精
粒米の加工で先駆的な取組みを行いました。それまでパ 米業界は成長が始まったばかりで、大半のサプライヤー
キスタンで精米されていたのはバスマティライスのみで、 が 現 地 生 産の設備を購入していましたが、私 たちは最
長粒米はすべて砕米率25%の低品質米として輸出され 高の設備を導入したいと考えたのです。工場 の試 運 転
ていました。そこで、ベトナムやタイのサプライヤーと競 に向け、ビューラーのタイ支社から米の専門家として当
合できる、高品質で砕米率5%のツヤツヤした長粒米を 社に来てくれたのがイエ・アウン博士(Dr. Ye Aung)で、
生産すべく、当社初の精米設備を導入することにしたの 当社とビューラーとの橋渡し役を果たしてくれました。
です。当時、私たちを笑った人もいますが、今では競合他 試運 転時にマシンの一つに問題があることが分かった
社で占められる全市場に砕米率5%のパキスタン産精米 時には、マシンの交換を迅速に行ってくれました。すぐに
を供給しており、良好な業績を収めています。新しいライ 新しいマシンをスイスから取り寄せ、通関業務を完了し 最高の設備を使用したパキスタンの精米工場

24 25
お客様事例
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ギャリブソンズ

年間売上高:

200 million
家族経営:パキスタン最大の精米会社で、
➜➜ ➜➜
従業員は250人
一貫した高い性能 ビューラーの精米設備で、競争力の高い品質を保証 パキスタン産米の10%を精米し、
➜➜ 「ムガル
(Mughal)」ブランドとして販売 2億米ドル
US dollars

330,000 t 穀物、小麦粉、油糧種子の年間販売量

500,000 tons
➜➜
米輸出:
➜➜
33万トン

50万トン

長年にわたるパートナーシップ たのです。こうしたところに、ビューラーの献身的な姿勢
11,000 t 1万1千トン
を見て取ることができました。ビューラーの設備を選択 www.garibsons.com
➜➜
◦ギャリブソンズは、ビューラーの精米設備を1996年
1996 2011
(パキスタン初)、1999年、2003年に購入 した理由として、保証も含め、設備の設計および供給を
格安で実現できたことも挙げられます。新ラインは、昨
◦2011年夏、ビューラー製の完全精米施設を建設
年からフル稼 働で操業しています。ビューラーとはさら
◦多目的加工ライン(処理能力:10トン/時) に新しくライン2本の購入についても交渉を進めており、 すべての国際的な食品安全基準を満たすことが可能とな パキスタンにおいてビューラーが改善できる点は?
2012年9月までに導入したいと考えています。ビュー りました。高品質の設備、プロセスおよび生産の全側面 顧客の設備に問題が発生したときに備え、摩耗部品やス
◦精米機や「ソーテックスZ」12基など、ビューラーの
設備を追加導入 ラー製設備の優れた性能は、当社にとって非常に重要な に対応可能なこと、サプライヤーとしての高い知名度な ペアマシンの在庫を確保してくれると助かります。たと
要素です。ビューラーの精米設備によって、競争力の高 どが、ビューラーを採用するうえでの大きなメリットです。 えば、精米機の1基に問題があれば、人材を含め、私たち
◦総精米能力:100トン/時
い品質確保や連続操業が可能となりました。特に、ソー 当社は、小売包装以外にも、米に付加価値を与え続けた が必要とするものすべてをビューラーは提供してくれま
テックス色 彩選 別 機はアフターサービ スも充 実してい いと考えています。パキスタンの米生産量は年間500万 す。ですが、スペアのマシンがあれば、工場のダウンタイ
ます。 ~650万トンですが、パキスタンでは米は主食ではない ムを発生させることなく、故障の修理やパーツ交換を効
ため、国内消費は200万トン程度です。おおよそ350万 率的に実施することが可能です。▪
米の輸出事業戦略について教えてください。その目標達成 トンから450万トンが常に輸出対象となります。このう
にビューラーはどのように貢献していますか? ち、約150万トンが玄米やパーボイルド米として輸出さ
輸出用の25キロと50キロ詰めに加え、小売包 装 の 生 れます。当社は、こうした玄米を見た目も良い砕米率5%
産も計画しており、ビューラーとは小型包装設備の購入 イリアーヌ・エンゲラーは、パキスタンのイスラマバードで活躍するフリーラ
のツヤツヤとした精白米に加工する事業を継続していき
ンスのジャーナリストです。NZZ日曜版(NZZ am Sonntag)、スイスWOZ紙
についても現在検討を進めています。ビューラー製設備 ます。そうすることによって、かつてはタイ、ベトナム、ウ (Wochenzeitung)、ファイナンシャル・タイムズ紙ドイツ(Financial Times
を導入したことで、BRC国際規格認証の取得のみならず、 ルグアイ、米国が占有していた市場に進出していくこと Deutschland)など、ドイツおよびスイスの各紙に記事を執筆しています。また、
スイスのテレビ局SFチャンネルのレポーターを務めたほか、AP通信の海外特派
スーパーなどの小売店への製品供給で必要となる、その他 が可能となるのです。 員として勤務した経験を持ちます。

26 27
お客様事例
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リオ・ミーニョにて
新境地を開拓
ダイカスト企業「ラビーナ(Labina)」は、ビューラーの最新鋭のテクノロジー導入により、ポルト
ガルの経済危機を乗り切るだけでなく、市場における同社の位置付けを一層強化することができ
ました。

マヌエル・マイヤー(Manuel Meyer)

「ポルトの人々が働くときに、リスボンの人々は遊ぶ」と けに、車のハンドル、車体部品、エンジンやサスペンショ
いう格言があるように、ポルトガル北部に位置するポル ン部品を生産しています。
トは産業 の 拠 点として有名です。しかし、ダイカスト専 ブラガに生産拠点を置く同工場では、トラックメーカー
業企業である「ラビーナ・フンジソン・インジェクターダ 向けにアルミニウム製の昇降用はしご、2社の大手航空
(Labina Fundição Injectada)」の生産工場を一目見 機メーカー向けに座席テーブル用の軽合金部品も生産し
れば、ポルトガルで3番目に大きい都市ブラガ(Braga) ています。電子機器、自動車、航空機産業向けの小型で
にも、このポ ルト の 格言 が 当てはまることがわかるで シンプルなダイカスト部品のみならず、最近では、照明用
しょう。 部品といった複雑かつ投影面積の大きなのある部品の
人口15万人、ポルトから北56キロに位置する工業団地 生産も増えています。
に、この家族経営の会社はあります。1968年に設立さ ドイツ、スペイン、米国、フランスなどに拠点を置く海外
れた同社を経営するのは、ホルヘとホセのピメンタ兄弟。 顧客は全体の約75%を占め、オーストリア、イタリア、ハ
リオ・ミーニョ(Rio Minho)近くにある4つの工場は、フ ンガリー、ポーランド、スイスにも同社の製品が輸出され
ル稼動する機械類の駆動音や蒸気で満ち溢れ、数秒間 ています。ポルトガル国内の顧客も、国際企業がポルト
隔で自動車のハンドル、ルーフラックなどのアルミニウム ガルに関連企業を置いているというケースが大半です。
部品が製造されています。
「設備が停止するのは午前2時~午前6時の毎日4時間 経済危機を超えた成長
のみです。」と、工場見学中に、共同経営者兼技術マネー こうしたことから、ラビーナはポルトガルを含むEU諸国
ジャーのホルヘ・ピメンタ氏(Jorge Pimenta)
(52 における経済危機からほとんど影響を受けることがあり
歳)は解説します。敷地面積5,000平方メートルの同工 ませんでした。
「多くの同業他社が重大な損失を被り、倒
場では、ダイカストセル19基が稼動し、カーオーディオ 産を余儀なくされる所もありましたが、当社は生産量と
やGPSナビゲーションシステムの金属フレームを製造し 売上高を過去数年と同水準に維持するだけでなく、業績
ています。その他にも、世界の様々な自動車メーカー向 増までも実現しました。実際のところ、当社は経済危機 ポルトガル、ブラガで生産されるラビーナのダイカスト部品は様々な業種で使用されています。

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お客様事例
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からの影響をほとんど受けていません。」と、CFOで共
同 経営 者 のホセ・ピメンタ氏(Jose Pimenta)
( 48
歳)は語ります。
ピメンタ兄弟の事業成功のカギとなったのは、
「新しい
技術や最新鋭の設備に対する継続的な投資」です。彼ら
は2008年から、年間約200万ユーロの設備投資を行っ
てきました。顧客にとっては、ラビーナのようなベンダー
が、常に最 新の技 術 水準で生 産 活動を行っていると把
握することが重要なのだと、ホセ・ピメンタ氏は語りま
す。このような取組みにおいて、約50人の従業員を抱え
るラビーナは、ビューラーに多大な信頼を寄せてきまし
た。ラビーナのダイカストマシン19基のうち、すでに9基
がビューラーから供給されており、今後も多くのビュー
ラー製設備が導入されていくことでしょう。

ポルトガル 国内に設 置された最 大クラスのダイカスト


マシン
ホセ・ピメンタ氏にとって重要なのは、信頼性の高い生産
リオ・ミーニョに拠 点を置くラビーナ・フンジソン・イン
ジェクターダでは、すでにビューラー製ダイカストマシン
ダイカスト事業に精力的に取り組むホルヘとホセのピメンタ兄弟
「Evolution」シリーズ7基と「CARAT130」1基が稼働
しています。最近導入されたのは、最新鋭の2プラテン
型締機構技術およびリアルタイムショット技術が備わっ
た「CARAT180」。この設備投資によりラビーナは、製 維持、市場での主導的な位置付けにつながるのだと付け
造技術の大幅な改善のみならず、複雑薄肉で投影面積の 加えます。
ラビーナ

大きなダイカスト部品を求める新しい市場や顧客にアプ 「さらに、ビューラーの設備は直感的な操作が可能です。
ファミリー企業「ラビーナ・フンジソン・インジェクターダ」
➜➜
ローチすることが可能となりました。 マシンの信頼性は高く、生産性の向上、メンテナンス費
として1968年に設立
4月の「CARAT180」稼働開始後には、非常に高度な技 用の削減を実現することができます。」と、ホセ・ピメン
ホルヘとホセのピメンタ兄弟による共同経営
➜➜
術要件を満たす部品を鋳造可能な、ポルトガル国内で最 タ氏。また、ビューラーが提供するプロフェッショナルな
大クラスのダイカストセルが、同社に設置されることとな 設備設置サービス、卓越したカスタマーサービスも同様 従業員50人
➜➜
ります。嬉しいことに、こうした部品に対する需要は増加 に重要だと、両者は口を揃えて語ります。
「ビューラーは 顧客は主に電子機器、自動車、航空機、照明関連の企業
➜➜
の途にあります。 新しい金型方案設計でも支援してくれます。この業界で
輸出シェア

75 %
➜➜
大手照明メーカーとの交渉はすでに開始しており、他社 は唯一ビューラーが実施しているサービスです。」
とも新しい契約が結ばれています。こうしたことからも、 これらの理由から、2006年から同社は新設備をすべて
既存の発注に応じるため、2013年にはホセ・ピメンタ ビューラーに発注しています。そして、継続的なイノベー

ラビーナ・フンジソン・インジェクターダでは、約50人の従業員の
大半がビューラー製ダイカストセルを使用
氏が型締力1,800~2,200kNのビューラー製ダイカス
トマシンを最大8基購入する可能性が濃厚だと言えます。
ション、投影面積の大きい薄型のダイカスト製品の強化を
目指すラビーナは、ビューラーにとってポルトガル国内最
25 %
ポルトガルに関連企業を
同氏によると、新しい工場の建設に向け、15,000平方 大の顧客となりました。ビューラーでポルトガルのセール 置く国際企業

メートルの土地をすでに購入済みとのことです。 スマネージャーを務めるマルクス・シャーラー(Marcus
Scherler)は、ビューラーの設備に投資を実施したことで、
高度な技術が企業の成長を約束 同社はイベリア半島で大手のダイカスト企業に成長する
同社を経営するピメンタ兄弟は、ビューラー製ダイカスト ことができたのだと自信を持って語ります。▪
マシンの購入に迷いはありません。「市場で最高かつ最 ダイカスト機19基のうち、
➜➜
9基がビューラー製
も高度な技術を提供するのがビューラーです。」とホセ・
ピメンタ氏は説明します。そして兄のホルヘ・ピメンタ氏 www.labina.com
➜➜
マヌエル・マイヤーは、APA通信(Austria Presse Agentur)の
が、こうした設備 投 資 が 新 規 顧 客 の 獲 得、既 存 顧 客 の
スペインおよびポルトガル特派員です。

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イノベーション
TEMPLATES イノベーション
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ビール産業からも認められた
ソーテックス
ソーテックスの新たな可能性:大麦の真菌汚染に悩まされていたスカンジナビアのビール産業に、解決策を
提供したのはビューラーの光学式選別機でした。試験結果からも、ソーテックスが穀物加工業者にとって
優れた設備投資であることが明らかとなっています。

ビール愛好者は自分の好みを知っており、製品が変わら を活用すべくビューラーに相談を持ちかけました。細菌
ぬままでいて欲しいと思っています。ビール醸 造 所、麦 汚染で最大の被害を受けるのはサプライチェーンの末端
芽製造者、穀物生産者は、不良な大麦を生産工程で排除 にいる生産者ですが、評判の維持や欧 州の食品安全基
することにより、製品の一貫した品質と味を守っていま 準を満たすために、麦 芽 製 造 業 者やビール醸 造 業 者も
す。従来の方法では、麦芽製造前に大麦から不純物が排 ビューラーに支援を求めました。ビール醸造業者の中に
除されていたため、シーブや風力選別機等の機械的な方 は英国、オーストラリア、南米から大麦を輸入する所もあ
法で選別作業が行われていました。 り、取引を行う業者はより良い品質の大麦を供給すると
しかし、大麦から除去しなければならないのは、土、異 いう点で非常に切迫した状況にありました。
物、異種の穀物に限りません。2011年に欧州北部で発 既存そして潜 在的な顧客がロンドンにあるビューラー
生した大雨の後、多くの生産者がフサリウム菌による汚 の応用研究施設に招かれ、各社製品の選 別が実演され 「ソーテックスZプラス」は、色、形状、その他の光学的性質に基づき、
高い精度で汚染された穀物や異物を識別します。最近では、ビール醸造
染被害への対処に苦労しています。フサリウム菌は人体 ました。ビール食品品質研究所ヴァイエンシュテファン
業者が細菌汚染された大麦の選別に使用するようになっています。
に害を及ぼさないというのが通説ですが、経 験の長い (Research Center Weihenstephan for Brewing
ビール醸造所は、麦芽の中心部が赤く細菌汚染されると、 and Food Quality)
(ドイツ、ミュンヘン工科大学の附
開栓時にビールが噴き出す原因となり、全バッチが販売 属機関)で実施された単独試験において、ソーテックス
不可能となる危険性があると考えています。この問題は、 のバイクロマティック色彩選別機で選別された大麦は、
売上損失や評判を悪くするといったダメージに留まりま 安定して噴出試験に合格となることが実証されましたが、
せん。急速に繁殖するフサリウム菌で汚染された大麦か それ以外のサンプルは不合格でした。適切に精選された
ら、有害なマイコトキシンが生成される可能性もあるの 大麦は、安全性が高くビール醸造に適しており、喉が渇
です。 いたお客様に向かって泡を吹き出すことも防止できます。
ソーテックスで選別した大麦は、最高品質の大麦として
ビューラーなら選別可能 販売することができるのです。そして、ビール愛好者は一
欠陥のある麦芽は赤く変色しますが、これまでの機械式 貫した高い水準のビールをこれからも楽しむことができ
フサリウムによる汚染を示すピンクの変色 オレンジ色のカビは細菌による腐敗の証拠 汚染されていない大麦
選別機では検知は不可能でした。そこでスカンジナビア ます。▪
の複数の企業は、昨年、品質維持のために光学式選別機

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TEMPLATES ソリューション
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これにどのように対処すべきか?乾燥のための空気の温 この 4 0 % の 省エ ネ は 、2 つ の 利 点 をもたらして いま
度を下げ、時間をかけて、パスタをゆっくりと乾燥させ す。第1に、環境に優しいということ。イタリアでのロン
ることもできるでしょう。しかし、ビューラーの専門家は、 グパスタ製造全てにEcothermatik™が使用された場合、
豊富な科 学知 識とノウハウを基 盤に、優れた均一 性の CO²排出量を28,000トン削減することができます。第
パスタ乾燥を実現するため、新たな乾燥プロセス工程を 2に、収益増に苦心する多くのパスタ生産者に、製造マー
開発しました。 ジンの改善をもたらすことができます。乾燥設備に要す
るエネルギーを大幅に削減することで最終利益1%増が
ゆるやかな乾燥 達成可能となり、生産性を大きく向上させることができ
ビューラーの新しいパスタ乾燥機「Ecothermatik™」 るのです。▪
では、水分を含んだ限定された量の空気を乾燥に使用す
るため、パスタの水分を緩やかに低下させていくことが 専門家の意見
できます。水分を均一かつ安定して除去することで、パス
科学の応用
タ乾燥プロセスを通して、表面の硬化を防ぎながら、乾
Ecothermatik™の開発には、本格的な物理化学および工学
燥させることが可能になりました。これは水分の均一化
の知識が活用されました。利用可能な最高レベルの科学を
と構造の安定化には理想的な方法です。このようにして、 利用して、効率的なプロセスで最高レベルの食品を製造する
グルテン組織を最適な状態にし、卓越した品質を実現す という、ビューラーの強みが活かされた製品となっています。
ることができます。ゆっくり乾燥させることによってグル アンドレアス・クラッツァー博士(Dr. Andreas Kratzer)

テンの緊張を抑制し、安定に要する時間を半減させるこ パスタ&エクストルージョンシステム事業部門
マーケットセグメントパスタ主任
とができるのです。パスタが硬化した状態は冷却ゾーン
に入ってから得られます。
偶然の発見
そ れ で は 、ビ ュ ー ラ ー の 顧 客 は ど の よ う な メ リッ 素晴らしい研究開発:Ecothermatik™の成功は、必ずしも
ト を 享 受 す る こ と が で き た で しょうか?新 設 備 の 綿密に計画して実現されたものではありませんでした。本プ
Ecothermatik™では、少ない乾燥時間で高品質のロ ロジェクトは、米の乾燥の研究から始まり、その成果をパスタ
乾燥に応用しました。当初、私たちが焦点を当てていたのは、
ングパスタが製造できるだけでなく、省エネを実現する
ひび割れを防ぐために弾力を維持することでしたが、研究を
こともできます。従来の乾燥設備と比べ、消費する熱エ
進めるにつれ、この他に2つのことを発見することができまし
ネルギーを40%、冷却エネルギーを20%、電 力消費 た。1点目は、乾燥時に弾力性を維持することで、理想的なタ
を10%削減することが可能。さらに、省エネのみならず、 ンパク質の凝固や網目状組織の形成を促し、最終製品に適し
洗浄とメンテナンスが簡単な設計となっており、顧客に た硬度と調理時の安定性を実現できるということ。2点目は、
処理能力1,250キロ/時を誇るパスタ乾燥機「Ecothermatik™」を装備したビューラーのロングパスタ製造ライン 熱の再利用によって、エネルギー消費を大幅に削減できると
二重のメリットをもたらします。競争の激しいパスタ製
いうことです。
造業界において、このような新設備は著しい改善につな
ウルス・ケラー(Urs Keller)
がります。ビューラーは、省燃費によるコスト削減で、大
パスタ&エクストルージョンシステム事業部門
幅な製造マージンの改善を顧客に提供できると考えてい 研究開発主任

完璧なパスタ
パスタの製造は、数千年前に、世界各地でほぼ同時期に ます。
開発された文化的な技術です。人々からこよなく愛され さらなる改善
当初の開発時から、Ecothermatik™には継続的な改良がなさ
る食品であるパスタ。この昔ながらの製造方法を進化さ 地球を守るために
乾燥プロセスの最適化が、ビューラーの顧客に嬉しい れています。2つの特許で保護されている同設備は2010年、
せた、優れた最新技術がスイスで生み出されました。 従 来の乾燥設備では、排気が暖 房に再 利用されること
成果をもたらしました。 ドイツのデモ工場で業務用生産を開始。スパゲティを量産す
従来のパスタ乾燥プロセスに改善の余地があると考え もありましたが、Ecothermatik™の場合、マシンから排 るだけでなく、潜在的な顧客に様々な操作データについて紹
たビューラーのエンジニアは、プロセスを抜本的に見直 出される高温の湿 気をプロセスに再 利用することが可 介することができました。設備の処理能力は1,750キロ/時
すことを決断しました。従来の手法では、乾燥機に成型 能です(すでに実施中)。排気は設備上部の熱交換装置 ですが、より高い生産能力を持つEcothermatik™のアップグ
レード機に関する開発も進められています。
後のパスタを送り込み、乾燥した強い空気を吹きかけて に送り込まれ、水分が凝縮され、そのエネルギーを内蔵
ユライ・バルタヌス(Juraj Bartanus)
いました。この手法では、パスタの水分量を急速に低下 された加熱装置に再利用することができます。その結果、
パスタ&エクストルージョンシステム事業部門
させることが可能でしたが、パスタの表面が「硬化」しや パスタ1トン当たりの電力消費量を毎時250キロワット プロダクトマネージャー
すくなるため、構造に加わった緊張を低下させなくては から150キロワット程度に削減することが可能となりま
ならず、長時間かけて「安定化」を行う必要がありました。 した。

34 35
ソリューション
TEMPLATES ソリューション
TEMPLATES

新興市場向けの 幅広い応用分野
ビュー ラ ー・チャイナ は 、2 011年 よ は個別に交換が可能なため、設備の寿

開発
り、多様な粘度の製品の粉砕 分散を可 命およびチャンバーユニットの柔軟性を
能にするビーズミル の 製 造を行ってい 向上させることができます。ビーズミル
ます。このビーズミルは、特にグラビア 「Cenomic™ 3」は手動操作式です。
昨年、ビューラーは、アジアの新興市場向けに、3本ローラーミル「Trinomic™ 600」とビーズミル 印刷インク、シンクや 浴 槽 などの 衛 生

「 C e n o m i c ™ 3 」という2 つ の 新 製 品を販 売しました 。アジ ア の 顧 客 の 基 本 的なニ ー ズを重 視し セラミック製 品の塗 装 用セラミック懸


濁液や、自動車や船舶製 造 用の耐 食性
つつ、両製品はビューラー品質が徹底された中国の拠点で製造されています。
コーティング などの 製 造に適していま
す。耐摩 耗 性 の 部 品を 使 用し、効 率 的
な粉砕を行う「DraisResist™」
(特殊
鋼)を使用したディスク「EcoMizer™」
を搭載。粉砕ディスクとチャンバーには
「DraisElast™」(ポリウレタン)も用
意しており、粉砕時における金属不純物
(たとえば、電子産業ではセラミック懸
濁液などへの金属 混入)の混入を防止
します。さらに、粉砕チャンバーの部品
高性能な3本ローラーミルが、
高い生産性を実現
3 本 ローラーミ ル「Trinomic™ 6 0 0」は、
ビューラー・チャイナで製造されています。
手 動 制 御が 可能 な 同マシンは、雑 誌や
新聞に使用する印刷用インク、口紅、潤
滑剤用粘着ペースト、電子機器や太陽
光製品に使用する金属やガラスペース
トなどの分散が可能です。操作性能に
優れた油圧ロールプレスが、粉砕エリア
における一貫性かつ再現可能な圧力状態
と高い生産性を保証します。さらにマシン
には、個別に調整が可能な冷却装置が装備
されています。

両製品ともに操作要員保護に関する国際的な安全基準に準拠。
「Trinomic™ 600」と「Cenomic™ 3」は、アジア市場向けとして初めて作られたマシンサイズで、発売から好調な出だしをみせています。
その他のサイズや仕様についてもすでに計画中であり、グローバル市場での展開が近々予定されています。

36 37
マーケット
TEMPLATES マーケット
TEMPLATES

対面式のサービスをより近く、より早く
サービス内容の拡充に加え、中国国内やそれ 以 外の地 今後の成長
域にもサービスステーションが増設されました。現在、 顧客からの好意的な反応を踏まえ、ビューラーはサービ
ビューラーは21のサービスステーションを世界中に設 スステーションの理念をさらに推し進めていきます。今
世界中のビューラーの顧客は、工場の全操業期間にわたり、パートナーであるビューラーに信頼を 置しており、その数は増え続けています。ロールの再研 年だけでも、6つのサービスステーションが新設されま
寄せています。こうしたニーズに応えるべく、ビューラーは現地のサービスステーションから世界 磨および再目立て、頻繁に依頼のあるスペア部品や摩耗 す。顧客の本当に欲しいもの、必要としているものを、正

中の顧客にサービス提供を行っています。 部品の在庫販売、シーブの張替え、その他工場付属部品 確にサービスに反映させていることが実証されていると


の製造など、各ステーションが提供する基本サービスは 言えるでしょう。
ほぼ同じですが、現地ニーズに合わせて追加作業を行う より一層充実したサービス提供を目指し、特にサービス
場合もあります。しかし、緊密で身近な存在、万全の受付 ステーションのプロセス強化を図るため、継続的な努力
世界中の顧客にとって、稼働中のロール機の状態維持は 供するため、カスタマーサービスのスタッフは2007年、 体制による素早い対応、短い輸送距離による輸送コスト が続けられています。アドバイスの提供や複雑な顧客の
重要な基準となります。ロール機は穀物の粉砕プロセス ビューラー・チャイナの経営幹部と連携してサービスス の節約、さらには1つの窓口を通して提供される高品質 要望に対する直接対応を可能にするため、優れたサービ
において中核的な設備です。ローラーは摩耗部品である テーションモデルを開発しました。現地に拠点を置くこ なサービス等、顧客はどのステーションからでも同じメ ス技術士のみならずプロセス技術士の増員も実施され
ため、ある時点で必然的に、目立ての山が減ったり、ス とで、いつでも迅速かつ効率的にビューラーの高品質な リットを享受できます。 ています。▪
ムースロールの表面の摩耗により、最終製品の高い品質 サービスを提供することができます。 また、周辺800キロ以内に多くの顧客が集中する地域
を一貫して保証することができなくなります。結果として、 には必ずサービスステーションが設置されているため、 サービスステーションの詳細は、以下までお問い合わせください。
全工場の収益性に影響が及びます。適時にサービスを受 世界中に21か所のサービスステーション クリスティアン・ハイニガー(Christian Heiniger)
顧客は気軽に依頼することができます。
グレインプロセシング部門カスタマーサービス
けることができれば、高額な修理や交換、または工場の 初のビューラー・サービスステーションは、2008年、中
事業開発プロダクトマネージャー
ダウンタイムを回避することが可能です。その他の重要 国の西安市に開設しました。開設後間もなく、満足した T +41 71 955 3863
なサービスも含め、世界の顧客により良いサービスを提 顧客から追 加のサービス依 頼を受けました。継 続的な christian.heiniger@buhlergroup.com

西安市(中国)のサービスステーション ルサカ(Lusaka)
(ザンビア)のサービスステーション

開設: 開設:

2008 2008年 2011 2011年

従業員: 従業員:

5 5人 5 5人

顧客数: 顧客数:

20 20社 25 25社

ロール調整の ロール調整の
取扱い件数(毎月) 取扱い件数(毎月)

150 150件 22-28


22~28件

事例1 事例2 Foxcroft)は、午前8時過ぎに同社工場に到着。「お客

製 粉 会 社 の ピ ン リャン・チ ャン フェン( P i n g l i a n g オーバーホール の日程を調 整します。迅 速 で 効 率 的 な ムシュ・ミリング(Mushe Milling)は、ルサカにある 様が見逃していたドライブの設定がわずかにありました。

Changfeng)は、ロールのスペア在庫を持たない小規 サービスを提供するため、フェン・ガオシェンは、発注や サービスステーションのお客様です。先頃、同社工場で これが判明したことで、午前9時22分に工場を再稼働す

模な企業です。ロールの調整が必要な際は、西安市にあ 業務の優先順位付けを行います。ビューラーの迅速な対 はファンドライブの交換が必要になりましたが、ドライ ることができました。」メンテナンスマネージャーである

るビューラー・サービスステーションのマネージャーで 応と効率的な協力姿勢に同社は非常に感謝していると ブの再始動ができず、工場が18日間の閉鎖状態に陥り アシュ・マーサー氏(Ashu Mathur)は、満足そうにこう

あるフェン・ガオシェン(Feng Gaoshen)に連絡して、 言います。 ました。連 絡を 受けたサービ スステーションのマネー 語ります。「だからこそ、ビューラーがザンビアに拠点を


ジャーであるアルバート・フォックスクロフト(Alber t 置いてくれたことを非常に嬉しく思っているのです!」

38 39
市場観望
TEMPLATES 研修およびイベント
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2012年5月から7月までの研修およびコース

今年の収穫 ビューラーは、お客様の現地工場または自社研修センターにて、多種多様な研修およびコースを提供して
います。今後の予定は下記の通りです。

「悪いことは天気のせいに」。よく聞く言い回しですが、事実、悪天候は小麦市場に被害を及ぼし
ます。収穫量やタンパク質の品質を安定化させるために様々な措置が講じられていますが、食料 穀物加工&製粉
k
製粉技術Ⅰ・Ⅱコースでは、製粉工場での実践指導を中心に行います。
安全保障は価格や適切な貯蔵などのその他の要因にも左右されます。
エキスパート製粉コースでは、フローシートの検討とともに、その微調
エド・ターゲット(Ed Targett) 整 方法などについて学びます。オート麦の加工に関するコースでは、
オート麦の加工に必 要となる設備の操作方法とフローシートについて
学びます。

チョコレート、カカオ、コーヒー
k
アルゼンチンやブラジルの干ばつ、カナダや北米で長期 の質も気になります。収穫量とタンパク質が良好である
チョコレートラボ、デポジット・成型コースでは、主に様々な原材料の性
化する乾燥気象は、今季の小麦の収穫量や品質を脅かす ことは、製品の品質を大まかに測定する上で役立ちます
質がチョコレート生産に与える影響、レオロジー測定によるチョコレート
懸 念 材料となっています。しかし、世界における小麦の から、こういった観点からも天候は常に懸念材料となり の流動性最適化の方法、OneShotアプリケーションの長所や良しあし、
栽培面積の伸び、ならびに、米国のトウモロコシ作付面 ます。収穫は遅れていないか、窒素を十分に吸収してい コーヒーロースト、コーヒー粉砕アプリケーションなどについて学ぶことが
積が1944年以来で最大の9,500万エーカー近くに達 るか、小麦粉の補強にどの程度の高タンパク質製品を購 できます。

することもあり、気象による影響はある程度緩和されて 入する必要があるかなども確認する必要があります。」
います。 それでも、国際穀物理事会(IGC)のアナリストであるエ
パスタ、エクストルージョン
k
それでも、国際連合食糧農業機関(FAO)は、2008年 イミー・レイノルズ氏(Amy Reynolds)は自信を持っ
スイスにあるビューラー本社のエクストルージョン研究所で実施される実
と2011年の価格高騰が引き起こした食品価格の上昇・ て次のように述べています。「自然に起因する変動は予
践重視のエクストルーダー食品製造技術ワークショップでは、ビューラー
変動に懸念の色を見せています。こうした価格高騰は、 測不可能ですが、小麦不足が発生する恐れはないでしょ の2軸エクストルージョン技術と乾燥技術に焦点を当てた指導を実施しま
過去の問題として片付けることはできません。 う。オーストラリアには十分な備蓄があり、ロシアは大豊 す。パスタ技術セミナーでは、最先端のパスタ設備とパスタ製造プロセス
「急成長する国々での食料需要の拡大、世界人口の増加 作です。ウクライナでは、生産業者に輸出抑制の要請が 技術に対して、幅広く理解することができます。

やバイオ燃料の成長により食料システムの需要は一層増 あったとのことですが、市場は製品で潤っています。」
大していくでしょう。供給面では、特定地域でますます このような予測にかかわらず、慎重姿勢を見せる生産者
ダイカスト
k
希少となる天然資源、複数の農産物の収穫高低下といっ は一時的に小麦価格の値下げを行いましたが、食品価格
プロセス最適化コースでは、主に冶金学の基本、鋳造設定方法、金型の
た問題があります。また、農業とエネルギー市場の関連 の継続的な高値は、農業部門に対する長 期投資のイン
摩耗や損傷を軽減する鋳造手法について学ぶことができます。CARAT
性が強まり、悪天候の頻度が増すことで、食品価格の変 センティブとなり、長い目で見た場合には、食料安全保 メンテナンスコースでは、2プラテンダイカストマシン「CARAT」の設計
動が激化する可能性があります。」と、同機関は「世界の 障の改善につながると考えられています。 および動作原理について学びます。合金処理・実験コースでは、個々の
食料不安の現状」における年次報告書で報告しています。 2008年の価格高騰による生産量の増加(米国における ダイカスト部品の金属構造などについて学ぶことができます。

食 品 加 工 処 理 業 者 にとって、特 に 後 者 は 深 刻 な 懸 念 今年の記録的なトウモロコシ作付けが良い例)は、価格
と なって い ま す。イギ リス・アイル ランド 国 家 製 粉 連 上昇がもたらした生産者へのインセンティブを裏付けて
盟(National Association of Britisha and Irish います。
Millers)で通商政策マネージャーを務めるマーティン・ それでも、供給に関しては収穫量のみならず品質の面で 各種コースの概要、開催地、日程、費用、オンライン登録、その他詳細は、当社ウェブサイト(www.buhlergroup.com/training-courses)
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サベージ氏(Martin Savage)は、穀物に含まれるタン も懸 念があります。多くの低所得諸国において、不十分 にてご確認いただけます。

パク質の品質変化は予測不可能で、これが長年の問題と な貯蔵、冷蔵、加工設備を原因とする収穫後損失が非常
2012年にビューラーが参加するイベント・展示会について。2012年5月~7月に参加予定のイベント・展示会概要につきましては、当社
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なっている、と述べています。 に高いレベルにある中、投資が加工と収穫の双方に大き ウェブサイト(www.buhlergroup.com/events)をご覧ください。
同氏は次のように説明します。「私たちは機能性に優れ な影響を与えることができるはずです。
たタンパク質が13%という最低基準を設けています。こ 刊記

れは赤外分光法で確認することができますが、加工業者 発行者:Corina Atzil 構想/編集/作成:Primafila AG, Zurich / München


エド・ターゲットは、フリーランスのビジネスライターです。 Corporate Communications、Buhler AG 印刷:galledia AG, Flawil
としては、生地などの最終製品に現れる測定困難な原料 国際情勢や環境問題に長年にわたり関心を寄せています。 CH-9240 Uzwil, Switzerland 写真:
(2ページ目/ニュース)Patric Spahni:ルース・メッツラー –アルノルト、
電話 +41 71 955 24 29 (8ページ/座談会)Marcel Castelberg、
FAX +41 71 955 38 51 (14ページ/インスタントメイズ)Brendon Salzer、 (同/イラスト)Mariela Bontempi、
(16ページ/セレアリス・モアジェンス)Mario Ribeiro、
(28ページ/ポルトガルのラビーナ)Markel Redondo

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世界は単なる市場ではなく、人々が暮らす場所です。ビューラーは、食品処理加工、ケミカル
プロセスエンジニアリング、ダイカスト分野のグローバルテクノロジーパートナーです。環境の
諸問題に取り組み、資源のさらなる有効活用を実現する革新的なソリューションを提供して
います。貴重な資源を最大限に活用することは、貴重な原材料、エネルギー、食料安全保障
等の課題に取り組むお客様にとって、より優れた製品と付加価値を作り出すだけでなく、より
よい世界の実現を支援することにつながります。
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