2011 年 7 月 25 日(月)

環境エネルギー政策研究所 ブリーフィングペーパー
自然エネルギー全量買取制度による電気料金への影響

■ 概要
衆議院で 7 月 14 日より審議がはじまった自然エネルギーによる電力の全量買取制度に関する
法案については、各方面から電気料金への影響など、将来のコスト負担に関する議論が多く聞か
れる。しかしながら、この電気料金への影響を気にするあまりに、「自然エネルギーを日本国内
に本格的に普及させる」という本来の目的を見失いがちにも見える。いまこそ、2020 年までの
自然エネルギーの中期導入目標を欧州各国並みの 30%以上に高く設定し、それに向けた議論を
はじめるべきではないだろうか。そもそも日本の様に自然エネルギーの普及があまり進んでいな
い国にとって、この自然エネルギーによる電力の固定価格買取制度(Feed-in Tariffs, FIT)は、
民間投資により自然エネルギー普及を進める画期的な制度であり、すでに世界中の多くの国や地
域で実績がある(下記関連資料を参照)。
そこで、このペーパーでは FIT 制度に対する一般的な質問である電気料金への影響について、
その疑問に答える。

■ FIT 制 度 に お い て 、 ど の よ う に 金 額 が 電 気 料 金 に 付 加 さ れ る の で す か ?
電気料金に付加される金額は、制度開始時から導入される自然エネルギー発電設備による発電
量と、発電事業者からの買取価格により決まりますが、この買取費用から化石燃料を減らしたメ
リットを差し引いて、全電力需要家の電気料金に均等に付加されます。この様な電気料金への付
加はすでに始まっており、今年 4 月から開始された「太陽光促進付加金」が東京電力で kWh あ
たり 3 銭となっています。太陽光発電以外の風力、地熱、小水力およびバイオマスによる発電を
含む FIT 制度が始まると、kWh あたり数 10 銭のレベルからスタートして、標準的な一般家庭
で 1 カ月あたり数百円が電気料金に付加されます。それ以外に石油や天然ガス等の化石燃料の価
格が反映される燃料費調整制度があり、昨年よりもすでに kWh あたり 1 円以上電気料金が増え
ています。今後、化石燃料の価格上昇に伴いこちらは 1 カ月あたり数百円から数千円の電気料金
の上昇が予想されます。

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■ 将来、電気料金へ付加される金額はどの程度になるのでしょうか?
最初の数年間は、kWh あたり数 10 銭のレベルですが、新規の自然エネルギーによる発電量が
全発電量の 4%を超えるあたりで kWh あたり 0.5 円程度、現在のドイツなみの 10 数%程度で 1
∼2 円程度、2020 年に 30%を超えた場合でも 3 円程度となる試算をしています(図 1)。一方、
もしこの FIT 制度により自然エネルギーの導入を行わなかった場合、化石燃料の高騰に伴い、将
来、10 円/kWh 以上の電気料金の上昇も考えられます。これに対して FIT 制度により自然エネ
ルギーを導入した場合には、化石燃料による電気料金の上昇を大幅に抑制することができます。
なお、経済産業大臣などからのコメントで、付加金額の上限を 0.5 円/kWh 程度に想定するとい
うものが最近ありましたが、自然エネルギーの導入目標をより低く想定しているものであり、化
石燃料に対する現在の燃料調整費制度により想定される最大 7 円/kWh の電気料金の上昇と比較
しても、あまりにも低い想定と言わざるを得ません。
図 1: FIT 制度および化石燃料による電気料金への付加金額の試算(ISEP)

(2020 年自然エネルギー38%、化石燃料価格は IEA 予想の 2 倍の場合)

■ FIT 制 度 に よ り 電 気 料 金 は 上 が り ま す が 、 逆 に ど の 様 な メ リ ッ ト が あ る の で し ょ う
か?
FIT 制度では、いわゆる財政(税金)による負担を伴わず、補助金に頼らない民間主導の制度と
して様々なメリットを期待することができます。そのひとつが、経済や雇用への効果です。ドイ
ツではすでに年間 3∼5 兆円規模の自然エネルギー事業への投資がこの制度により生まれていま
すが、日本においても毎年 6 兆円規模の事業への投資が期待できます(図 2)。電気料金への付
加金による自然エネルギーに関する負担を最大で年間 2 兆円以下に抑えながら、化石燃料に対す
る負担も最大で年間 7 兆円程度抑制すると試算しています。FIT 制度による雇用効果も各国の実
績から数十万人規模生まれると期待されます。特に自然エネルギー事業では、資源の豊富な地域

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での経済・雇用効果が期待され、エネルギー自給率の向上や CO2 削減といった他の効果と合わ
せて、多くのメリットを各地域にもたらします。さらに、本格的な導入に合わせて導入コストの
低減が進むことも期待できます。合わせて、太陽光発電、洋上風力発電、地熱発電、水力発電、
送配電技術(スマートグリッド)など日本の優れた技術を国内で普及させると共に、急成長する
海外市場へのさらなる展開も期待できます。
図 2: FIT 制度における設備投資額と負担金額の試算(ISEP)

(2020 年自然エネルギー38%、化石燃料価格は IEA 予想の 2 倍の場合)

■ 関連資料

ISEP プレスリリース(2011 年 5 月 23 日):「与野党は全量買取法案を最優先して可決
すべき ∼法案可決の上で、自然エネルギーの本格的な普及に向けて、政省令レベルでの
改善が必要」 http://www.isep.or.jp/images/press/110523ISEPpress-FIT.pdf

エネルギーシフト勉強会資料(2011 年 6 月 14 日)「どうなる固定価格買取制度」
http://www.isep.or.jp/images/press/Eneshift-ISEP20110614.pdf

自然エネルギー政策ポータルサイト「固定価格買取制度特集ページ」
http://www.re-policy.jp/jrepp/FIT-portal.html

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■ このブリーフィングペーパーに関するお問い合わせ
特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
E-mail: info01@isep.or.jp
URL: http://www.isep.or.jp/
TEL: 03-6382-6061
FAX: 03-6382-6062
担当: 飯田、松原

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