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自然保護助成基金 目代邦康
ジオパークの制度の根底にあるのは,地域の自然の保護である.ジオパークの活動を,長期間にわたって維持,発展させていくため には,それぞれのジオサイトが何らかの形での保護の方策が設定されていく必要がある. 保護担保措置としてどのような制度,考え方が存在するのか概観し,それらの,ジオパークの活動との親和性について検討する.
ナショナルトラスト制度
1895年イギリスに設立された非営利団体「 英国ナショ ナル・トラスト」 の活動が起源. 国民( ナショナル) のために,国民自身の手で,大切 な自然環境を寄付や買い取りで入手し保護. 日本では,法制度化されていない.日本各地にトラス ト団体があるが,土地取得に関する税制優遇措置を うけるためのハードルは高い. 日本の法制度下では,土地所有の権利は最も優先 される権利であるため,ナショナルトラストは,保護の 方策としては強力である.
文化財保護法
史跡名勝天然記念物の保護.現代の地球科学の 知見を必ずしも反映したものではない.
世界遺産条約
傑出した文化遺産・自然遺産を保護するための 国際条約.保護担保措置として,国内の環境保 全制度が必要. しばしば,オ−バーユースの問題を引き起こす.
法制度化を 目指す
自然環境保全法
包括的な自然の保護.利用は考えない.
種の保存法 森林生態系保護地域
ラムサール条約
湿地の生態学的,動植物学的な重要性に基 づいて,保全をする制度.水鳥の生育地の保 全が中心課題であるが,現在は湿地における 様々な問題を取り扱う.NGOが議論をリード. 湿地登録に際して,世界遺産のような保護担 保措置は必要ない.
保 護 制 度 と し て の 強 さ
自然公園法
すぐれた自然の風景地の保護と利用の増進を目 的.名勝地が選ばれる.景観を維持するため,国 立公園内には,特別保護地区が指定される.
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特定自然観光資源 の制度の運用方法 による
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公共信託理論
海岸,公有地,大気・水,野生動物などは,公共的な 財産であり,に鳶とはそれを通行,レクリエーションな どのために利用することができる.行政は,人々の信 託をうけた者として,それを人々の利用を妨げるよう な方法で扱ってはならない( 畠山,2001) . 入浜権( 入会権) がこれに該当する.日本の実定法 ではこれは定められていない.慣習権として欧米で は認められている.
景観法 エコツーリズム推進法
理論的な 研究
問題点
・地球科学的事象,地理学・文化的事象に関しては,国内法では,文化財保護法しか保護の法律はない.一方で,生物多 様性を保護する保護地区( Protected Area) の必要性は認識されつつあり,制度として確立されつつある. ・地球科学的事象の評価とその保護の必要性についての理論構築が必要. ・そもそも何が重要であるのかという地球科学者同士の議論が不足.それに伴い,情報発信も不足. ・人文地理学の研究は,公共信託理論の深化に貢献できるのではないか?