ラーニング・カーブ

2013年5月

Independent

Evaluation

ポストMDG時代のアジア・太平洋地域にお
ける開発アジェンダの設定
ADBの開発途上加盟国の全
体的なパフォーマンスは、所
得貧困に関するMDGについ
ては非常に良好であった。

かし、妊産婦の健康の改善
や環境の持続可能性といっ
た、所得以外の人間開発目
標の進展は遅く、いくつかの
重要な点においては逆に悪
化した。

ミレニアム開発目標(MDG)の終わりが近づきつつある今、実務者らは、2015年以後の
開発アジェンダの参考とするためにMDGの経験と成果を振り返りつつあるが、
このトピ
ックは既に、世界規模で激しい議論の対象となっている。
アジア・太平洋地域では全ての国がMDGを採択し、同地域は、世界全体で極度の貧困
を削減する上で応分以上の貢献を行った。
アジアのパフォーマンスはこの点では特に
良好だが、人間開発指数や環境の持続可能性の進展はそれに及ばず、特に乳児と妊産
婦の健康、飢餓の削減、基本的衛生および二酸化炭素排出傾向反転の各分野では特
に遅れている。
MDG時代のアジア・太平洋地域における最大の成果は、疑いなく、第1のミレニアム目
標である極度の貧困の半減を達成したことである。それにも関わらず、
アジア・太平洋
地域は今も世界の最貧困層の3分の2を抱えており、その多くは南アジアに集中してい
る。
これを乗り越えることが、
この地域の新しいアジェンダにおける最大の課題のひと
つになるだろう。

全体評価

独立評価局の調査報告書「ミレニアム開発目標の達成に向けたADBの支援」
では、

ジア・太平洋地域におけるMDGの進展、MDG達成に向けたADBの開発途上加盟国
に対する支援の効果、そして同地域の新たな開発ロードマップにおける新たな課題
が検討された。
またこの調査では、
そのアジェンダにとって極めて重要な「目標を定め
ることで開発の成果に違いが出るのか?」
という問いに対する回答を試みている。
この調査の対象期間である2002~2011年に行われたADBのソブリン(対政府)投融
資のうち、約320億ドルはMDGを直接的に支援するものであった。所得貧困の削減お
よび環境の持続可能性の改善を目的としたプロジェクトおよびプログラムがこのポー
トフォリオの大部分を占めた一方、人間開発に関するMDGに向けた支援はあまり目
立たなかった。
これらの案件の4分の1は既に完了し、評価済みである。MDGを直接的
に支援する案件の成功率は75%で、ADBのこれまでの全体的な成功率である63%を
上回っていることが、今回の調査で判明した。貧困層を直接対象として所得または雇
用の増加を目指したMDG関連の57案件については、その68%が成功と判断された。

目標設定の影響

関連リンク

ミレニアム開発目標の達成に向けたADB
支援のテーマ別評価(主報告書)
www.adb.org/documents/thematicevaluation-study-adb-s-supportachieving-millennium-developmentgoals

Download the
Full Report

証拠を総合的に見ると、目標の設定はプラスの効果をもたらすと考えられる。いくつ
かの国はMDGに向けて政策を調整し、いくつかの指標に関するパフォーマンスの改
善に貢献した。目標設定の分析から浮かび上がってきた2つの主な懸念は、各国の出
発点が違うことと、データの質および収集状況が悪いことである。データ問題が原因
となり、開発途上国の多くはMDGの進展を適切に追跡できなかった。2015年以後の
アジェンダの枠組みを設定するに当たっては、
この2つの問題を解決しなければなら
ない。

2015年以後の枠組みにおけるADBの役割

MDG時代が進むにつれて、
アジアの経済成長パターンは力強いものだったにもかか
わらず、不平等の拡大と環境の持続可能性という問題に対応できないことが明らか
になった。新しい枠組みが有意義かつ効果的なものとなるには、成長、人間開発およ

び環境という3つの側面を同時に追求することが必要である。ADBがインクルーシブ
な(全ての人々に恩恵をもたらす)成長および環境の持続可能性を重視していること
は、基本的にこの流れに合致している。大きな成果を上げるためにADBができること
として、以下が考えられる。
重点戦略の拡充:ADBは環境の持続可能性の推進を重視している。主なインフラ投
資をさらにこの方向に誘導していけば、域内の環境改善におけるADBの役割が強化
されるだろう。
シナジー効果の実現:各目標間のシナジー効果を最大化するため、ADBは所得の創
出に向けて行っている多大な支援を、所得以外の人間開発目標、特に保健と教育分
野における支援とバランスさせることを検討すべきである。
協力関係の構築:ADBは非中核セクターを支援するためにパートナーシップを構築
する戦略を見直し、特に進展が見られず、
もしくは遅れているMDGについて、
これら
のパートナーシップが十分な支援を提供しているかどうかを判断すべきである。
進展が遅れている指標への取り組み:衛生や二酸化炭素排出など、域内で進展が見
られず、
もしくは遅れている指標に取り組むことは、ADBのMDGおよび長期戦略の枠
組みである
「ストラテジー2020」に対するコミットメントに沿う行動である。

Read the full report at
www.adb.org/documents/thematicevaluation-study-adb-s-support-achievingmillennium-development-goals

最低基準の達成:基本目標について最低基準を最も大きく下回っている開発途上加
盟国に的を絞ることが必要と思われる。ADBは、特に所得、飢餓の防止、教育および
保健等の分野において最低基準を達成するためのニーズが最も大きい国に、
より多
くの譲許的資金(低利融資)を配分し得る。
2015年以後のアジェンダについては新たなテーマが既に浮上しているが、
アジア・太
平洋地域において、MDGは重要かつ未達成のアジェンダである。
これらの目標はほ
ぼ間違いなく、何らかの形で新たな枠組みに持ち越されるだろう。基本目標の最低基
準を設定する方法のひとつは、ニーズの共通性が最も高い分野を特定することだろ
う。ADBの「アジア・太平洋地域主要指標集2012」によれば、大半の開発途上加盟国
において進展が最も遅く、基準を下回り、あるいは逆に悪化しているターゲットは、二
酸化炭素排出、森林保護、近代的衛生施設が利用できる人口の比率、熟練した医療
従事者が立ち会う出産の比率、妊産婦死亡率、乳児死亡率および5歳未満幼児の死
亡率、HIV有病率、初等教育修了率、および飢餓人口の比率である。

新たな開発アジェンダとして浮上しつつあるトレンドと課題

2015年以後に関する議論においては、貧困削減を加速し人間開発を促進する上で、
以下の特定の傾向と課題が注目されている。
不平等の拡大によって、所得目標を達成した国においてすら、貧困削減の成果が損な
われる懸念がある。
アジア開発途上国のジニ係数は1990年代前半の39%から46%に
上昇している
(この上昇がなければ、
さらに2億4,000万人が貧困を脱していたはずで
ある)。不平等は所得の貧困にとどまらない。貧しい人々はそうでない人と比べて幼時
に死亡する確率が高く、中等教育を受ける確率が低く、大学等の高等教育を受ける確
率はさらに低い。
人口構成の変化は2015年以後の開発に大きな影響を及ぼす。人口の高齢化によって
医療システムにかかる圧力が高まっている。急速な都市化により、インフラには既に限
界を超えた過度の負担がかかっている。都市が引き続き成長、革新および技術のエン
ジンとしての役割を果たし国全体の開発を促進できるよう、2015年以後のアジェンダ
においては、基本的都市サービスに対するアクセスの改善が優先課題になるだろう。
環境の持続可能性は開発課題としてますます重要性を増している。経済の急成長を達
成し増加する人口の需要を満たすために天然資源が無節制に利用され、おびただし
い環境破壊につながっている。その一方で、災害危険地域における人口の増加、環境
の悪化、災害対策の不備、そして気候変動によって、自然災害の頻度と激しさが増して
いる。2015年以後のアジェンダにおいては、国および地方レベルの環境改善能力を強
化するため、世界、地域および国レベルの対応に優先順位をつける必要がある。自然
災害への対応能力を、
これも国および地方レベルで強化することも同じく重要である。

チームリーダー:Linda Arthur
メール:evaluation@adb.org
連絡先
独立評価局
アジア開発銀行
6 ADB Avenue, Mandaluyong City
1550 Metro Manila, Philippines
電話番号 +63 2 632 4100
Fax番号 +63 2 636 2161
メール:evaluation@adb.org
www.adb.org/evaluation
「ラーニング・カーブ」は評価報告書の
結論と勧告をクライアントに広く提供す
ることを目的として2ページにまとめた
要約である。

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