You are on page 1of 2

【「イソップ」からの伝言】「空理空論」だけでは困るが - MSN産経ニュース 29/06/09 9:17 PM

【「イソップ」からの伝言】「空理空論」だけでは困る

2009.6.16 09:16

 動物中心が多い中で「天文学者」を主人公にした珍しい寓話(ぐうわ)がある。これ
も中務哲郎氏訳の岩波文庫『イソップ寓話集』から要約する。

 夜ごと外に出て、星を観察する天文学者がある時、心がすっかり空にあったので井戸
にはまってしまった。通りがかりの者がうめき声を聞きつけて、寄ってきて訳を知り、
天文学者に言うには「ねえ先生、空のものは見ようとなさるのに、地上のものは見ない
んですかい」。

 最後にイソップは「大層な空理空論を吐くくせに、人間としてあたり前のことができ
ないような連中に、この話は適用できる」とさとす。

 確かに政治や経済の世界では、理想論や何世紀も前の理論ばかりをふりかざし、現実
的政策や対応がまったく打ち出せないという困った人物も多い。特に空想的平和論者な
どはその類(たぐい)だといえるだろう。

 だが、国家とか社会とかの「百年の計」を考えると「空ばかり見ている」天文学者の
ような存在も必要だ。

 例えば、昨年ノーベル物理学賞を受賞した小林誠さんらの研究「対称性の破れ」な
ど、現実社会にすぐ役に立つなど考えられない。

 また、ハワイ島に大型望遠鏡「すばる」を設置するとき、推進に当たった天文学者た
ちも、予算獲得のため陳情に行った役所で「一体何の役に立つんですか」と聞かれて
困った。

 現実は大切だ。しかし一方で、何十年も何百年も先をみすえた研究は必要である。そ
うした知的探究心が国や社会の活力となることも事実である。この寓話は、そうしたこ
とも教えてくれているような気もする。(皿木喜久)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090616/acd0906160918002-c.htm Page 1 of 2
【「イソップ」からの伝言】「空理空論」だけでは困るが - MSN産経ニュース 29/06/09 9:17 PM

Copyright 2009 The Sankei Shimbun & Sankei Digital

© 2009 Microsoft

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090616/acd0906160918002-c.htm Page 2 of 2

You might also like