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【「イソップ」からの伝言】「名声」の陰に危険が潜む - MSN産経ニュース 29/06/09 9:27 PM

【「イソップ」からの伝言】「名声」の陰に危険が潜む
2009.5.19 08:36

 モミの木と言えば、クリスマスツリーを連想する人は多いだろう。マツ科の常緑樹
で、冬でも青々としていることから、ヨーロッパでは古くから崇拝されていたらしい。
高さ40メートルに達することもある立派な姿で、木材としても広く使われる。

 そのモミの木が地をはうようなイバラに対し自慢する話が、イソップにある。「モミ
の木とイバラ」だ。

 モミが言うには「私は美しいし、背が高い。すくすくと育って頭は雲の中だ。神殿の
屋根にもなれば、船の竜骨にもなる。これほどの木と、どうして肩を並べられるかね」

 これに対しイバラが皮肉をこめて反論する。「いつも君を伐(き)り倒す斧(おの)
のことを思い出すなら、君だってイバラになる方を選ぶだろう」

 塚崎幹夫氏訳の『新訳イソップ寓話集』には次のような教訓がつけられている。

 「名声を誇るのは間違っている。目立たない人たちの生活の方が、危険がないから
だ」

 確かに現代のエリートサラリーマンたちは、カッコよくて、有用、有能であり、モミ
の木を髣髴(ほうふつ)させる。

 だが、そうした人たちは有能であるがゆえに、使い捨てにされることだってある。時
代の急激な変化に対応しきれず、ドロップアウトする危険も秘めている。ことに米国・
ウォール街のエリートたちには、そんな悲哀を味わった人も多いかもしれない。

 かといって、みんながみんな、イバラのように目立たない生き方を選んでいたら、社
会の発展もないだろう。結局は、モミの木とイバラが上手に共存する、バランスの良い
社会をつくっていくしかない。(皿木喜久)

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