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【軍事情勢】「実績」が国益を左右する
04/19 02:18

�軍事同盟の目的は「国益の担保」である。従って、同盟の決定が自国益に沿わなければ翻意させなければなら
ない。それでも国益を損なう方針が改まらないのなら、同盟に留まる意味は減じられる。集団安全保障が進む欧州
では、同盟の本義にかかわるこの種の問題に幾度も直面している。合従連衡を繰り返し、血を流してまで国境を獲
得してきた古豪たちは同盟を利用し、生き残ってきた。特に多国間同盟では「実績」とそれに伴う「発言権」が「国
益」を左右する。実績の極めて少ない日本の民主党は「対等の日米同盟」を強調するが、欧州の安全保障と向き
合うと、いかに厚顔無恥な発言であるかがよくわかる。
■スペインのコソボ撤兵
�コソボ西部のアルバニア国境付近に国際治安部隊�600人を派遣していたNATO(北大西洋条約機構)加盟国の
スペインは3月に突如、撤兵を表明した。ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ首相(48)が「1年前にコソボが表明し
た独立にスペインは反対しており、派兵の意味がなくなった」と説明した通り、独立したコソボには協力しない姿勢
を、軍事面で示した格好だ。その動機は分かりやすい。国内にバスクやカタルーニャなどの独立運動を抱えている
からで、セルビアから独立宣言したコソボをEU(欧州連合)加盟国の多くが承認する中、反対を繰り返してきた。
�米国、フランス、ドイツ、イタリアを主力としてコソボに1万5000人を派兵しているNATO諸国は撤兵を一斉に批判
したが、特に不快感を示した米国を含め、外交関係の極端な悪化を懸念する関係者は少ない。スペインはイラク
からは撤退したものの、警察・司法関係者の訓練を国内で実施。NATOの枠組みでアフガニスタンに�800人を派
兵している他、EUの枠組みのソマリア沖海賊対策にもフリゲート艦など2隻と哨戒機部隊の計�470人を派遣してい
る。コンゴやレバノンでも1200人が展開。海外駐留軍は3000人を上限とすることが閣議決定されたとはいえ1989
年以来、平和維持・人道支援に向けた52の作戦に7万2000人もの将兵を投入している実績があるのだ。米西防
衛協定により、国内の海空軍基地への米軍駐留を認めていることもあり、その 国際協力度 は米国などNATO諸
国も認めざるを得ない。
■仏の43年ぶり復帰
�一方、フランスの国益に対する判断も大胆不敵だ。欧州がソ連の核攻撃・威嚇を受けたとき、米国は自国への報
復攻撃覚悟で反撃をするのか 。シャルル・ド・ゴール大統領(1890 1970年)は米国の覚悟に疑念を持った。結
局、核保有にかじを切り、NATOの統合軍事機構も脱退した。核保有決断は大統領側近ピエール・ガロワの存在
なしには語れない。ガロワの核戦略論は、米ソだけでなく、西側の複数国が核を持った方がソ連に戦略的混乱をも
たらせ、その軍事行動を抑止する−というもの。ガロワ理論は当初、フランスの核保有に強硬に反対した米国を軍
事と政治双方の戦略において満足させ、仏国内からの米軍撤兵まで求めたにもかかわらず、米国から核技術まで
引き出している。
�そのフランスが43年ぶりにNATO軍事機構に復帰した。背景にはNATOの作戦に5000人を派兵、予算の15%以
上を拠出している「列強」に見合った「発言権」がないことへの反発がある。復帰に際し、仏将軍にNATO内での主
要司令官ポストが割り当てられ、NATO内の仏軍将校も7 8倍の�800人規模に増強される。
■「拡大ドゴール主義」
�仏国内では、米国に頼らない独自路線を主唱するドゴール主義者の復帰反対があったが、ニコラ・サルコジ仏大
統領(54)の描く方針は「拡大ドゴール主義」と言えなくもない。NATOの核計画グループには帰属せず「独立した
核抑止力」は堅持し、国外派兵も自国の判断を確保。「独立した欧州防衛確立」も突き付け、EU軍3000人の強化
も狙っているからだ。米国はNATOとの競合を警戒したが、フランスの核保有時と同様に「強い欧州の必要性」を
理解し始めている。
�フランスは、核保有やNATO軍事機構復帰に際して米国と堂々渡り合い、逆に米国から国益を引き出した。アフガ
ンやボスニア、コソボなどでNATO主導の軍事行動に参加してきた実績がモノ言っているからでもある。スペイン

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/print/world/europe/244435/
も、実績を示しながら、他のNATO加盟国と「けんか」をしてまで国益を守ろうとしている。
�ところで、集団的自衛権行使の反対者は「実績は軍事でなくても積み上げられる」と反論するだろう。シンガポー
ルにミサイル・フリゲート6隻、インドネシアに装甲兵員輸送車32両の売り込みに成功したフランスも、マレーシアと
潜水艦2隻を成約したスペインも天安門事件以来、EUが決めた対中兵器禁輸措置の解禁を策動している。だが、
国際社会の安定に向けた軍事的実績をフランスやスペインなどと積み上げていれば、解禁に「待った」をかけやす
い−これが軍事世界の現実なのである。
(政治部編集委員�野口裕之)

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