Professional Documents
Culture Documents
Ehon28 PDF
Ehon28 PDF
うた
まき
三日月の歌の巻
まいにち うた
うた
少 女 のアンは、病気のために 一 日 中 ベッドの上。
あそ い うた いちばん たの
びょうき
いちにちじゅう
うえ
どこにも遊びに行くことが できません。 だから、ピオの歌が 一番の楽しみでした。 アンがねむりにつく時、ピオは とっておきの歌を 歌いました。 その歌を聞くと アンは、いつも すてきな夢を見ました。 そして、病気の苦しみを 忘 れることができたのです。 「ピオの歌があるから アンは病気と 戦 えるの。ピオ、ありがとう」
うた びょうき たたか びょうき くる わす うた き ゆめ み とき うた うた
もり
きょぼく
びょうき
巨木の根もとに おきました。 「巨木さんは、この森の神様なんでチュ? ボクのこの羽を あげるチュ……。 だから、アンの病気を なおしてチュ!」 ピオは、また羽を むしりとりました。 「アンは、巣からおちて けがをしたボクを
たす す そだ はね びょうき はね きょぼく もり かみさま
こえ
まえ
きょぼく
おお
きょじん
犬も、やさしく ほほえんでいます。 ボノロンとゴンは、ピオの願いは アンの病気を なおすことだと思ってい ます。 だから、ゴンは ちょっと悲しい顔をして 言いました。 「でもね…人を生きかえらせたり 病気 をなおすことは できないワン! それいがいなら、ひとつだけ かなえるワン!」
ひと い びょうき かな かお い ねが びょうき おも
でも、ピオの願いは ちがいました。 「だったら、アンを三日月の船に 乗せてあげてチュ!」 おどろいたボノロンは 空を指さしました。 「もしかして 三日月って……空の?」 「そうだチュ」 「そんな むちゃだワン!」 ボノロンとゴンは、こまってしまいまいた。
み か づ き そら そら ゆび み か づ き ふね の
ねが
うみべ
み か づ き
雲のすきまから 月がぽっかりと 顔をのぞかせています。 その月を見て ボノロンはポツリと 言いました。 「たしかに、三日月は 空にうかぶ 船みたいだロン」 「ああ、でも……月の船だワン。 乗るのはむりだワン……」 「どこにも行けないアンが 一番好きだったのは、部屋の窓から見える あの三日月だったチュ。
いちばんす へ や まど み み か づ き い の つき ふね み か づ き そら ふね つき み い
つき
かお
ゆめ
なか
み か づ き
ふね
すると、ボノロンは立ち上がり ゴンとピオを 背中に乗せて 空にまい上がりました。 「ピオ、もう歌を 思い出さなくていいロン!」 ボノロンは、なにをする気なのでしょう? ゴンもピオも 心配になりました。 ボノロンは 高く高く まい上がります。 そして、とうとう 空の雲を つきぬけました。
そら くも たか たか あ しんぱい き うた おも だ せなか の そら あ
「ああっ! す…すごいチュ!」 そこには ピオもゴンも見たこともない けしきが ひろがっています。 そこから見える三日月は、まるで 雲の海に うかぶ船。 それも さらにかがやきがました 黄金の船だったのです。
おうごん ふね み み か づ き くも うみ ふね み
「さあ、このけしきを 歌にするロン!」 「チュチュ?」 ピオには 意味が わかりません。 「ピオは、アンが大好きロン! だから、オメは アンが大好きな 三日月を 歌にしたんだロン! その歌を聞いて アンは夢の中で 三日月の船に 乗っていたんだロン!」 その言葉に ピオの顔が 明るくなりました。 「だから、 新 しい三日月の歌を つくるロン!」 ゴンも ピオをはげまします。 「今度の三日月は、雲にうかぶ 黄金の船だワン!」 「わかったチュ! ボクの 新 しい歌で アンを 三日月の船に 乗せてあげる チュ!」 ピオの顔は、三日月とおなじ 黄金色に かがやいています。
かお み か づ き こがねいろ あたら うた み か づ き ふね の こんど み か づ き くも おうごん ふね あたら み か づ き うた ことば かお あか うた き ゆめ なか み か づ き ふね の だいす み か づ き うた だいす い み
うた
アンは、もう何日も ねむりつづけています。
むらびと
なんにち
まど
帰って来たので おどろきました。
ピオは、アンのまくらもとに まい下りると 歌いはじめました。 それは、 美 しく 夢をさそうような 歌です。 ピオは 心 に強く 思いうかべました。 あの ボノロンたちと見た 雲にうかぶ 三日月を……。 ピオは、いっしょけんめい 歌いました。 あの 黄金の 三日月の船の歌を……。 その船には、大好きなアンが 乗っているのです。 でも、アンはもうほほえんではくれません。 アンのからだは つめたくなりはじめています。 それでも、ピオは歌いつづけます。 パパの目から 涙 が こぼれてきました。 「アンのために、また 歌いに来てくれたのか……。 わしは……わしは、おまえを 森にすてたのに……」
もり うた き め なみだ うた ふね だいす の おうごん み か づ き ふね うた うた み くも み か づ き こころ つよ おも うつく ゆめ うた
うた
かお
すると、なんとアンの目から 涙 が こぼれおちました。 「アン!!」 それを見たママは おどろきました。 さらに、アンは ゆっくりと 目をひらきました。 「ただいま……ママ……」 お医者さんは、アンの手首をにぎると さけびました。 「きせきじゃ!! アンの 命 が帰って来た!!」
ゆび いのち かえ き いしゃ てくび め み
なみだ
おうごん
み か づ き
ふね
おお