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世界不況下の韓国経済

ソウル事務所 川口 淳一郎

世界経済の不況を招いたリーマン・ブラザーズ
の破綻から約 9 ヶ月が経った。この間、韓国も為
替レートの大幅な変動(ウォン安)をはじめ、経
済面で大きな打撃を受けている。ここでは、韓国
経済の現況をレポートする。

1.金融業界動向
韓国銀行(日本の日銀に相当)総裁は、今月
(2009 年 6 月)、「景気後退はほぼ終わったもの
と見られる」との談話を発表した。2 月の時点で
は、3 月に金融危機が来るといういわゆる「3 月
危機説」が話題となっていた。
政府は、通貨スワップ*1の期限の延長、金額の
拡大に努める一方、3 月危機説のうわさの火種に ソウル市内の様子。中心部では不況
なったブログの管理者である通称ミネルバ* 2 を の影は全く見られない
逮捕(後に無罪で釈放)するなど、なりふりかまわぬ対応を採った。それが実
ったのか、3 月危機説は単なる風説にとどまった。
為替レートはこの間、100 円=1,100 ウォン∼1,600 ウォンの間を乱高下した
が、5 月中頃から 1,200 ウォン∼1,300 ウォンで安定を見せてきている。KOSPI
(韓国の総合株価指数)は先月 1,400 ポイントまで回復し、リーマンショック
直前の 1,477.90 ポイントまであと少しの水準まで戻している。

2.各業界動向
金融面での不安は落ち着きを見せているものの、実物経済となるとまだまだ
これからという感が否めない。
自動車業界では、GM の破綻で GM 本社は米政府の支援を受けることとなっ
たものの、韓国の GM 大宇については GM 本社や米国政府からの支援は一切行
われないため、韓国内での資金調達および韓国政府の支援を必要としている。
現在のところは、地方自治体や政府の信用保証によって流動性資金を確保して

*1 通貨市場の混乱を回避するために、各国の中央銀行が協定を結び、自国の通貨と引き換えに相手国の通貨を融通し
てもらうこと。
*2 政府の経済政策等についてインターネット上で虚偽情報を流布したとして、2009 年 1 月に電気通信基本法違反の罪
で逮捕された。
いるものの、根本的な解決になっておらず、未だ出口が見えていない状況であ
る。また、上海汽車傘下の双竜自動車は法定管理(日本の会社更生手続きの相
当)となり、再建計画で雇用調整を行うことが必要となったが、これに反対す
る労働組合側は無期限ストライキに突入し、会社側はロックアウトで対抗して
おり、予断を許さない状況が続いている。
一方、電子・電機業界は急速に回復に向かっている。サムソン電子、LG 電子
の今年第 2 四半期(4 月∼6 月)の営業利益はそれぞれ 1 兆 8 千億ウォン、8 千
億ウォンとなり、サムソン電子は昨年第 3 四半期、LG 電子は昨年第 2 四半期レ
ベルまで戻している。携帯電話や液晶 TV の欧米への輸出が回復を主導している。
また、鉄鋼業界も回復を見せている。最大手の浦項製鉄所(ポスコ)の熱延
工場稼働率は 3 月が 65%、4 月が 72%、5 月には 82%と着実な伸びを見せてい
る。

3.雇用動向
今月統計庁が発表した 5 月の雇用状況によると、就業者数は 2,372 万人、前
年同月比で 21 万 9 千人の減となっている。統計庁ではその原因を、輸出の減少
と内需の低迷によるものと分析している。
前回のレポート時(2009 年 3 月)、日本で派遣切りやリストラが続く中、、韓
国では、全国経済人連合会(日本の経団連に相当)がワークシェアリングを推
進することで、不況期にもかかわらずリストラを行わずに雇用を安定させよう
という決議をしたことを紹介したが、単なる掛け声に過ぎなかったことがたっ
た 3 ヶ月で明らかになった。

4.今後の動向
経常収支が 3 ヶ月連続で黒字になるなど回復勢を見せる韓国経済だが、今後
も引き続きこの勢いを保つことができるかということについては、政府、マス
コミでは慎重論が主流である。
その理由は、輸出が回復を主導しているという点である。ウォン安が有利に
働き、輸出企業を中心に景気の回復を見せているものの、為替レートが安定し
てきたことによりこの間の優位性を失うこと。また、国際原油価格がここに来
て再上昇し始めていることである。
輸出依存度*3が 50%以上である韓国にとって、輸出の不振は、即、経済不況
につながっていく。短期的には輸出産業へのてこ入れで回復を図っていくしか
ないが、韓国経済の本格的回復を図るのであれば、内需の活性化を高める体質
改善が必要である。

*3 輸出額÷名目 GDP×100%

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