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ボトルネック
特集
株式会社デジタル・アド・サービス 松田 孝 http://www.dascorp.co.jp/
中心とした商業印刷物のデザインと制作を行って がある。普通カタログと言うと、発行部数も多い
いる制作会社である。木造住宅と高層ビルの建築 流通系 B 2 C カタログが想像されるが、日本では
手法が異なるように、大型カタログの制作は小規 メーカー系 B2B カタログの種類の数は相当多い。
模な商業印刷物とは根本的に異なるポイントがあ また、型番単位の情報をどう表現するのかとい
り、対処方法やツールも異なる。本稿では、大型 う形式でも分類可能である。一つの型番を一個ず
カタログ特有の問題点とその原因を考察し、弊社 つ表現する「単品型」、型番間の商品情報を比較
が使ってきたツールや方法論を一部紹介したい。 させるための「比較表型」、型番間の組み合わせ
併せて、今後の課題についても触れる。 パターンを見せることを主目的とした「関連表型」
などがある。単品型は、ファッション通販カタロ
大型カタログの定義と分類 グなどで多く、文具や事務機カタログなどでは「比
まず「大型カタログ」とは何かはっきりさせて 較表型」が多い。建材やバイク・車の部品などの
おこう。 カタログでは、関連表型が使われることが多い。
型番で管理された商品の、「( 1 )商品を説明す 当然、利用目的に応じた表現形式が取られてい
るための文字による基礎情報、
( 2 )商品写真、
(3) るべきなのだが、実際には適切な表現形式が取ら
商品の購買意欲を促すためのマーケティングコ れていないこともある。これは、情報発信側の視
ピー」などがまとめて大量に掲載された印刷物、 点のみでカタログが作られているケースでよく見
という定義になるだろう。「大量」に対して定量 られる現象であり、当然受信側の視点をもって改
的な値を与えることは難しいが、ページ数で数百 善していく余地がある。商品群の「分類」や「掲
ページ以上、商品点数で数千点クラスのものが「大 載順序」も、情報受信側の視点をもつことで、カ
型カタログ」と呼ばれる。また、商品情報の管理 タログのユーザビリティを大幅に改善可能なので
自体は型番単位で行われていても、共通する情報 ある。
はまとめて表現されることが多い。これは、冗長 いずれにしても、制作受注側として意識するべ
な情報でカタログ利用者を混乱させないためであ きは、これらの分類によって制作体制や利用ツー
り、カタログのユーザビリティの基本となってい ルが違ってくるということである。特に利用ツー
る。
次にカタログを分類してみよう。まず、通販カ B2C
タログに代表される「流通系カタログ(買うため
のカタログ)」と、主として代理店で使われる「メー メーカー 流通
カー系カタログ(売るためのカタログ)」という
分類軸がある。次に、一般消費者が直接使う商品 B2B
を掲載した「 B 2 C カタログ」と、部品などの生 図 1 カタログ分類図
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カタログ作りの再発見―「 Web、電子メディア、紙」
活用度の高いカタログとは―
11.2006 2
カタログコンポーザーは、発注側の商品情報 という古くて新しい問題に触れておきたい。
データベースを基に、型番を軸にした台割指定を 「商品固有情報」から「台割情報・レイアウト
デジタルで行い、その台割情報を DTP ソフト側 情報」が自動で生成されるなら自動組版も可能で
カタログ作りの再発見 ︱﹁Web、電子メデ ィア、紙﹂活用度の高いカタログとは ︱
で利用し、表組を中心として組版を行う、という ある、というのが結論である。もし生成(変換)
ツールである。メリットは 2 点ある。一度レイア が可能なら、それを使って DTP ソフトを制御す
ウトされた商品の情報は常に商品情報データベー るツールは多く市販されている。
スを参照する「リフレッシュ」という仕組みをもっ しかし、紙の物理的な面積の制限などさまざま
ており、ある程度不完全な段階で制作を始めても、 な理由で、「台割情報・レイアウト情報」の自動
デザインを含む DTP 作業は生きるという点が一 生成は簡単ではない。別途システムを開発して「台
つである。もう一つは、レイアウト作業は手動で 割情報・レイアウト情報」を用意する方法もある
行うため、ビジュアルデザインの自由度は確保さ だろうが、これが、「実際に DTP ソフト上でレイ
れるという点である。 アウトする作業」と等価であるなら、同様の作業
ただ実際に制作を行ってみると、発注側で商品 を別のやり方でやっているのに過ぎないことにな
情報やカタログの原稿情報が管理されているケー る。生産性の面で WYSIWYG に軍配が上がるだ
スは少ないという点に改めて気づくことになっ ろう。
た。基本的な商品情報は基幹システムで管理され もちろん「台割情報・レイアウト情報」が自動
ているので入手は容易だが、商品画像や商品仕様、 で生成できるカタログもあるし、システムを開発
キャッチコピーなどの情報は、一元的に管理され しても採算に合うぐらい頻繁に発行される印刷物
ていないのである。「一元管理」という言葉が何 もある。そのような場合には、自動組版手法を採
を意味しているのにもよるが、複数の商品担当者 用するのがベストである。
が、バラバラのアプリケーション(主としてエク
セル)で、いろいろなフォーマットで、バージョ 今後の課題
ンが分岐した複数のファイルで管理しているとい さて、
「カタログから始める商品情報データベー
うケースが多い。 ス構築手法」にも問題があると先ほど述べたが、
つまり、受け側をいくら合理化しても情報の入 これはどういうことか解説しておきたい。
り口が合理化されないなら、ボトルネック問題は これは、カタログが完成した時点で用意された
解決されないのである。 データベースを発注側に戻しても、メンテナンス
商品情報データベースがないという状況を逆手 を日常的に行ってもらうことは難しい、というこ
に取るというやり方にもトライしている。初年度 とに尽きる。結局、メンテナンスが完全に行われ
はカタログコンポーザーを適用しながらカタログ たかどうかは、次のカタログを作ってみて初めて
を制作し、副産物として完成した商品情報データ 確認されるような状況もある。
ベースとして発注側にフィードバックし、次のカ 商品情報データベースの運用を日常的に行うに
タログまで日常的にデータベースを運用してもら は、カタログ制作の効率化というメリットだけで
う。そして、次のカタログ制作にメンテナンスさ はなく、そのほかの要素、例えば「 Web の商品
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カタログ作りの再発見―「 Web、電子メディア、紙」
活用度の高いカタログとは―
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