You are on page 1of 5

別紙

日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所に係る通報に関する
調査結果について

平成22年10月15日
文 部 科 学 省
科学技術・学術政策局
調 査 チ ー ム

1.通報内容
平成22年7月2日(金曜日)、文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課あてに
郵便による通報があった。通報の内容のうち原子炉等規制法又は安全上の問題に関係す
る可能性がある部分は、次の通りである。

・日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所の「核燃料物質による汚染の可能性
が否定できない管理区域(エリアーⅠ)」の中で使用したものを処分する場合、核燃料サ
イクル工学研究所の所内規則では、汚染検査で汚染なしと判定されたものでも基本的に
所内保管することとなっています。このルールに違反してエリアⅠで使用したものを一
般廃棄物として所外へ搬出し処分しています。
・このルールは約10年前に改定された所内規則に反映され、今でも運用されています。
改定当時に国にも説明し、了解を得ています。
・ルールを遵守するよう核燃料サイクル工学研究所を指導して頂きたいと思います。

なお、通報を行った者の氏名及び連絡先の記載はなく、これまでのところ、更なる情報
提供はない。

2.調査方針
本通報を受け、原子力安全情報通報等調査委員会に諮った上で調査を次の方針で進め
た。

(1)調査の目的
「核燃料物質による汚染の可能性が否定できない管理区域」(以下、「エリアⅠ」※
という。)の中で使用したものを一般廃棄物として所外へ搬出し処分しているとの通報
者の指摘に関連して、核燃料サイクル工学研究所(以下「核サ研」という。)の核燃料
物質使用施設における法令違反又は安全上の問題の有無について調査するとともに、
所内規則の遵守状況を調査することを目的とした。

※エリアⅠ:汚染の可能性が否定できない管理区域
エリアⅡ:汚染の可能性のない管理区域

1
(2)調査の内容
①原子炉等規制法並びに関係法令及び核サ研の保安規定への適合性を確認する観点か
ら、管理区域からの物品の持ち出し及び固体状の放射性廃棄物の管理について、法
令や保安規定で定める安全管理が適切に行われているかを調査した。
②管理区域内で使用された器材の管理や処分に係る核サ研の所内規則の記載内容及び
所内規則が遵守されているかを調査した。

(3)調査の方法
当省に保管している保安検査報告書等の記録から、法令や保安規定で定める安全管
理が適切に行われていたかを調査した。
また、当省保管の記録からは、所内規則に関連する情報を収集することが困難であ
るため、核サ研への説明聴取及び現地調査を行うこととした。

(4)調査対象施設
通報の内容が、核サ研の全施設に及ぶことから、核サ研の核燃料物質使用の許可を
有する施設を対象とした。

3.調査結果概要

(1)当省保管の記録による調査
保安検査報告書(平成12年度第2四半期から現在まで)等を調査したところ、法
令、保安規定に違反する事項は見当たらなかった。

(2)現地調査
現地調査を平成22年7月27日(火)∼29日(木)の期間で実施した。管理区
域内で使用された器材の管理や処分に係る核サ研の所内規則の記載内容(改訂履歴を
含む)及び所内規則の遵守状況について、説明聴取、事業所内での管理状況の確認や
保管されている記録の確認を行った。

①所内規則関係の調査
ⅰ)所内規則について
管理区域内で使用された器材の管理や処分に係る所内規則については、事業所通
達「使用器材の処置について」があり、各部・センターでは、事業所通達に基づき
下部要領が制定されていることを確認した。

ⅱ)事業所通達の内容について
上記の事業所通達は、当初「使用器材等廃棄の場合の処置について」として昭和
58年に制定されたことを確認した。その後、平成10年11月6日付けで「使用
器材の処置について」と改題され、以下に示すア、イ、ウ等の改訂がなされたこと
を確認した。

2
この改訂は、平成10年11月6日付けの法令報告「動力炉・核燃料開発事業団
東海事業所プルトニウム燃料工場屋外器材ピットにおける放射性廃棄物の混在及び
作業者の作業衣等の汚染について(第3報)」における改善方策を反映した改訂であ
ることを聴取した。

ア.管理区域を「汚染の可能性を否定できないエリア」
(エリアⅠ)、
「汚染の可能性
のないエリア」(エリアⅡ)に区分する。

イ.エリアⅠで使用された器材は「放射性器材」または「管理器材Ⅰ」に、エリア
Ⅱで使用された器材は「管理器材Ⅱ」または「一般器材」に区分される。ただし、
センター長等の許可を得た場合は、上記以外の区分で処置することができる。

ウ.
「管理器材Ⅰ」及び「管理器材Ⅱ」として管理区域外に搬出したものは、研究所
敷地内で保管管理する。また、
「一般器材」については所外処分又は所外リサイク
ルとして研究所外へ搬出することができる。

「ア」のエリアの区分については、平成12年8月1日の改訂により、エリアの
区分の変更が明記された。エリアⅠをエリアⅡに区分変更する場合の手続きとして、
各部・センター長が放射線管理担当課長と協議の上、エリアⅡへの適合性を確認し、
当該エリアの汚染チェックを行い、汚染のないことを確認することが定められた。

また、「イ」のただし書きについては、平成10年に規定が整備されたものの、
しばらくの間は具体的な運用手順が定められておらず、使用器材の区分変更は行わ
れなかった。平成16年以降、各部・センターでは、下部要領に使用器材の区分を
変更する場合の具体的な運用手順の一環として、平成13年7月の原子力安全委員
会報告「原子力施設におけるクリアランスレベル検認のあり方について」の中で定
義されている「使用履歴、設置状況から、放射性物質の付着、浸透等による二次的
汚染がないことが明らかであること」の判断基準を取り入れている。

以上、事業所通達及び下部要領の改訂に際しては、所定の所内手続きを経て実施
していることを確認した。

②事業所通達の運用実績の調査
(一)平成16年以降改訂した各部・センターの要領に基づき、エリアⅠの使用器
材を一般器材に区分変更した事例
・エリアⅠの使用器材を区分変更して一般器材とした事例があることを確認した。
なお、区分変更に際しては、事業所通達に基づき各部・センター長の許可を得た
上で処置していることを聴取した。

(二)平成12年8月に改訂した事業所通達に基づき、汚染がないことを確認した

3
上でエリアⅠをエリアⅡにエリア区分変更した後、エリアⅠでの使用履歴がある
使用器材を一般器材とした事例
・エリアⅠをエリアⅡに区分変更した事例があることを確認した。
なお、エリアⅠをエリアⅡに区分変更した後、エリアⅠにあった使用器材を一
般器材として管理区域外に搬出した事例があったことが、現地調査の後に核サ研
より当省に報告された。

(3)追加調査
平成10年11月6日以降、エリアⅠで使用した履歴のあるものを一般器材として
所外へ搬出し処分したものの全数を把握するため、平成22年8月17日(火)に日
本原子力研究開発機構に対して報告を求める文書を発出したところ、同機構より当省
に平成22年8月31日付けで回答があり、平成22年10月13日付けで一部訂正
があった。
回答及び訂正文書によれば区分変更等の実績(平成10年11月6日∼平成22年
7月26日)は以下の通りである。

・平成16年以降改訂した各部・センターの要領に基づき、エリアⅠの使用器材を一
般器材に区分変更した件数・・・・・・・・・・・・・・・・・・31件
(うち、所外搬出22件、分解して一部搬出9件)

・平成12年8月に改訂した事業所通達に基づき、汚染がないことを確認した上でエ
リアⅠをエリアⅡにエリア区分変更した後、エリアⅠでの使用履歴がある使用器材
を一般器材とした件数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96件
(うち、所外搬出73件)

回答文書によれば、以上の手続きは事業所通達及び下部要領に従って行われ、放射
線測定によって汚染がないことを確認していたと報告されている。

上記の回答文書に基づき当省は平成22年9月13日(月)から9月15日(水)
まで再度の現地調査を行い、上記の事例について、使用器材の区分変更、エリアの変
更、これらに伴う汚染チェックの実施等は、事業所通達及び下部要領に従って手続き
が行われていることを確認した。

4.結論
現地調査等の結果、核燃料物質による汚染の可能性が否定できない管理区域(エリア
Ⅰ)の中で使用した器材を一般廃棄物として所外へ搬出し処分しているとの通報者の指
摘については、エリアⅠの使用器材を所外へ搬出している事例があることが確認された。
しかし、この行為については、調査した範囲では、事業所通達及びその下部要領に従っ
て、エリアⅠでの使用履歴がある使用器材を一般器材に区分変更できるものとして手続
きが適切に行われていた。

4
また、管理器材Ⅰを一般器材に区分変更する場合は、以下の点を踏まえて行われてお
り、問題とするにはあたらない。

○エリアⅠ(汚染の可能性の否定できないエリア)で使用した器材を一般器材に区分変
更できるものは、対象機器が平成13年7月の原子力安全委員会報告「原子力施設に
おけるクリアランスレベル検認のあり方について」の中で定義されている「使用履歴、
設置状況から、放射性物質の付着、浸透等による二次的汚染がないことが明らかであ
ること」の判断基準に合致しているものに限られる。

○エリア変更及び区分変更に伴って一般器材として管理区域から搬出される器材は、汚
染の有無を測定により評価を行っており、測定の結果からは、放射性物質による汚染
は検出されていないこと。

以上のことから、原子炉等規制法上の法令違反及び安全上の問題に該当するものでは
ないと判断する。

You might also like