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ア ル ・キ ン デ イ ー の 音 楽 論

新 井 裕 子
本 稿 は、 イ ス ラ ム 世 界 最 初 の哲 学 者 で あ る ア ル ・キ ン 礎 は、フ ァー マー に よ って 築 か れ た こと にな る。フ ァー マー
デ ィー (al-Kind0
i1,-8c6a
ラ6.
テ,ン
8名 Alkind
のu音s
楽) は、﹃ア ラブ 音 楽 の諸 資 料 ﹄と 題 す る 著 書 の中 で、キ ン デ ィー
論 を、 現存 す る ア ラ ビ ア 語 の原 典 に依 拠 し な が ら、 可 能 な が書 いた 音 楽 に 関 す る 論 文 と し て 十 三点 を 挙 げ、 そ れ ら の
か ぎ り 再 構 成 し よ う とす る 試 み であ る。 う ち 現 在 にま で伝 来 し た テ ク スト 四 点 を リ スト ・ア ップ し
(
注 3)
て いる。 そ れ は、 註 1 に挙 げ た 四 種 類 の テク ス ト のう ち、
I 資料 と研究史

-1-
テ ク ス ト L と テ ク ス ト B に 含 ま れ る も の で あ る。 フ ァー
ま ず、 現 在 にま で伝 来 さ れ て き た、 キ ン デ ィ ー のも のだ マー は、 十 世 紀 及 び 十 三 世 紀 のア ラ ブ の書 誌 学 者 が 著 し た
と さ れ る ア ラ ビ ア 語 の論 文 と、 そ れ ら を 利 用 し た 研 究 の現 図 書 目 録 の中 に 挙 げ ら れ た、 キ ンデ ィー の論 文 名 の中 か ら
状 に つ いて 述 べ て お こう。 適 当 な も のを 選 び出 し て、 そ れ ら テ ク スト の題 名 と し て い
キ ン デ ィ ー の論 文 は、 現在、 四 種 類 の テ ク ス ト が 確 認 さ る。 そ のた め 二 つの テ ク スト 内 に 四 つ の論 文 が 含 ま れ る こ
(
注 1)
れ て い る に す ぎ な い。 と にな った が、 実 際 に は、 そ れ ぞ れ のテ ク スト す べ て に 題
ア ラ ブ音 楽 の研 究 で 必 ず 言 及 さ れ る の が デ ル ラ ンジ ェと 名 が付 い て いる わ け で は な い。 さ ら に、 後 の ロー ゼ ン タ ー
フ ァー マー で あ る が、 し かし デ ルラ ン ジ ェは そ の浩 潮 な 著 ル の研 究 によ って、 テ ク スト B は フ ォリ オ の順 序 が 混 乱 し
(
注 4)
作 を フ ァー ラ ー ビ ー か ら 説 き 起 こ し て い て、 キ ンデ ィー に て いる こ と も 明 ら か に な った。そ こ で本 稿 で は、フ ァー マー
(
注 2)
つ いて は 触 れ て いな い。 し た が って、 キ ンデ ィ ー 研究 の基 のよ う に、 現 在 にま で 伝 来 し た テ ク スト に、 適 当 な 論 文 名
を 当 て は め る こ と を や め、 そ れら の テ ク ス ト を 含 む 写本 を さ て次 に、 こ れ ら の テ ク スト に つ い てど のよ う な 研 究 が
所 蔵 し て いる 図 書 館 の所 在 地 (
す な わ ち ロ ンド ン " L、 ベ 行 わ れ て きた のか を 見 て お こう。 フ ァー マーは、 ま ず 一九
ル リ ン= B、 マ ニサ ー1 M、 オ ック ス フ ォー ド ー10) によ っ 二 六年 に 刊行 さ れ た 著 書 に お いて、 ア ラブ の音 楽 論 が 西 洋
て識 別 す る こ と にし た い。 音 楽 に 与 え た 影 響 に つ いて 論 じ た が、 そ の中 で キ ン デ ィ ー
テ ク スト M は、 テ ク ス ト B のう ち、 第 二 十 五 葉 の表 か ら も、 占 星 術 と ウ ー ド の弦 と の結 び 付 き と いう 観 点 か ら、 プ
(
注12)
第 三 十 一葉 の表 ま で の部 分 の異版 であ る (
な お マ ニサ はト ト レ マイ オ スと の対 比 で触 れ ら れ て いる。 さ ら に 後 に は、
ル コ西 南 部 の町)。
テ ク ス ト 0 に つ い て は、 ザ カ リ ヤ ・ユー 十 世 紀 の ユダ ヤ 人 学 者 に つ いて の モ ノ グ ラ フ の中 で、 そ の
(
注 5)
ス フが そ のテ ク スト を 刊 本 に し た だ け で、 これ ま で 本 格 的 人 物 の音 楽 論 にキ ンデ ィー の そ れ と よく 似 た 部 分 があ る と
な 研 究 は さ れ て いな い。 さ れ、 テク スト B の第 三 十 二 葉 表 と 第 三 十 三 葉 裏 の英 訳 と
(
注12)
続 いて、 こ れ ら の テ ク スト の研究 状 況 に触 れ て お こう。 コメ ント と が 付 け ら れ た。 こ の部 分 の英 訳 は、 後 に、 先 述
現 在 ま で に、 先 述 の ユー ス フ が四 種 の テク スト のほ と ん ど した (
註 9 の) 論 文 の中 に再 録 さ れ て いる。 こ のよ う に、

-2-
を 校 訂、 出 版 し て お り、 現 在 キ ンデ ィー の論 文 は (一部 分 フ ァー マー の研 究 は、 ギ リ シ ア 音 楽 か ら 西 洋 音 楽 への流 れ
(
注 6)
を 除 いて) す べ て 刊 本 で 読 む こと が 出 来 る。 ま た、 ラ ッ ハ の中 で ア ラブ 音 楽 が 果 た し た 役 割 を、 全 体 とし て 強 調 す る
(
注 7)
マ ンと ヘフ ニー は、 テ ク スト Lを ド イ ツ語 に 訳 し、 カ ウ ル こと に主 眼 が 置 か れ て お り、 キ ン デ ィー の音 楽 論 を 総 合 的
(
注 8)
は テ ク スト L を 英 訳 し た。 フ ァー マー も、 抄 訳 を 試 み て い に描 こう とす る 視 点 は 見 ら れ な い の であ る。
る。 そ れ は、 テ ク スト B 第 三 十 一葉 の裏 か ら第 三 十 五 葉 裏 マ ニク は、 中 世 ア ラ ブ の音 組 織 に関 す る優 れ た 研 究 の中
(
注 9)
ま で であ る。 さ ら に シ ロ アは、 テク スト M の フ ラ ン ス語 訳 で、 キ ンデ ィー を、 九 世 紀 の段 階 で 十 二音 音 階 を 考 え 出 し
(注14)
(
注10)
を 発 表 し て い る。 こう し て、 キ ン デ ィ ー の著 作 は 現 在 す べ た 人 物 と し て 扱 って いる。 た だ こ こ で注 意 し て お き た い こ
て刊 本 化 さ れ、 し か も そ のか な り の部 分 が 翻 訳 さ れ て いる。 と は、 マ ニク がキ ンデ ィー の 音 組 織を 扱う 際 に、 ラ ッ ハ マ
た だ し、 テ ク ス ト M と テ ク スト B に関 し て は、 いま だ に決 ンと ヘフ ニー によ る テ ク スト L のド イ ツ語 訳 の み に依 拠 し.
(
注11)
定 的 な テ ク スト は 出 来 て いな い状 況 にあ る。 て いる ことで あ る。 実 は、 こ の テ ク スト L は、 ア ラ ビ ア語
で書 かれ た 音 楽 理論 書 と し て、 今 日 に伝 わ る最 古 のも のと エー ト ス論) が 見 ら れ る こ と な ど が あ る の も 事 実 だ が、
さ れ て いる こと も あ り、 キ ンデ ィー の音 楽 論 と 言 え ば テ ク 全 般 に キ ン デ ィ ー は、 そ れ ぞ れ の テ ク ス ト で言 いた いこ と
スト L に含 ま れ る内 容 の み が 取 り 上 げ ら れ る、 と いう 結 果 を 書 き 散 ら し て いる 観 が 強 く、 テ ク スト の内 容 を 順 番 に 紹
が生 じ て いるよ う に思 わ れ る ので あ る。 介 し て い った ので は、 彼 の音 楽 論 の全 体 像 は、 余 り は っき
(
注15)
先 に触 れ た ロー ゼ ンタ ー ルや シ ロア の 論 文 は、 テク スト り し て こな いと 思 わ れ る。 そ こ で 本 稿 で は、 ﹁ウ ー ド ﹂ ﹁音
M と テ ク スト B を 問 題 に し て は い る が、 これ ら は いず れ も 楽 の 諸 要 素 ﹂ ﹁作 曲 法 ﹂、
﹁音 楽 家 に 求 め ら れ るも の﹂ ﹁タ ー
文 献 学 的 な 仕 事 で、 キ ン デ ィー の音 楽 論 自 体 を 正 面 か ら 扱 シ ー ル論 ﹂ と いう 枠 組 み に再 編 し て、 キ ン デ ィ ー の音 楽 論
(
注16)
う と こ ろ にま で は踏 み 込 ん で いな い。 を 概 観 し て ゆ く こと に し た い。
要 す る に、 キ ンデ ィ ー の 音 楽 論 研 究 が 抱 え る 問 題 点 と し な お、 本 文 中 [ ]に 入れ て 記 し た の は 出典 で あ り、 キ
て、 テク スト L の偏 重 と、 テ ク スト 自 体 の文 献 学 的 研 究 の ンデ ィ ー の当 該 部 分 の言 葉 が ど の テ ク スト の第 何 フ ォ リ オ
遅 れ、 と いう 二点 を 指 摘 す る こと が 出 来 る よ う に思 わ れ る。 に あ る か を 示 し て いる。 例 え ば -冨 ヒ 1<]と あ れ ば、 テ ク

-3-
こ の二 点 を 踏 ま え、 本 稿 で は、 ま ず 現 存 す る ア ラ ビ ア 語 の スト M (マ ニサ 図 書 館 所 蔵 写 本 中 の テ ク スト) 第 百 十 一葉
テク スト 全 て に目 配 り を し て、 キ ンデ ィー の音 楽 論 の全 体 裏 を 意 味 す る。
像 を 再 構 成 し、 さ ら に、 出 来 れ ば ロー ゼ ンタ ー ル や シ ロア
II ウード
に学 び な がら、 テ ク スト 研 究 の観 点 か ら の問 題 点 も 提 起 し
(
注17)
て み た いと 思 う。 最 初 に ウ ー ド の構 造ど 大 き さ に つ いて。 キ ン デ ィ ー は、
も ち ろ ん、 キ ンデ ィー 自 身 が音 楽 論 を 体 系 的 に 組 み 立 て、 ウ ード の大 き さ を 指 1 本 の 幅 を 基 に 説 明 し て い る [M,
論 じ て いた わ け で はな い。 現 存 す る 写 本 に 収 め ら れ た テ ク 111v
]。そ れ によ ると、 ま ず ウ ー ド 全 体 の長 さ は、 指 一本 の
スト の 全 体 に共 通 す る 特 色、 例 え ば 何 を 論 ず る に し て も 幅 が 三 十 六 集 ま った も のと いう こと に な る。 仮 に 指 一本 の
ウ ー ド を 基 盤 と し て いる こ と、 ま た、 テ ク スト L 以 外 のす 幅 を ニ セ ンチ と す る と、 凡 そ 七 十 ニ セ ンチ であ る。 さ ら に
べて の テク スト で占 星 術 と タ ー シ ー ル論 (ギ リ シ ア で いう 同 じ 仮 定 で計 算 す る と、 ウ ー ド の幅 は 三 十 セ ンチ、 奥 行 は
十 五 セ ンチ、 弦 の長 さ が 六 十 セ ンチ、 共鳴 胴 が四 十 セ ンチ て いる 以 外 は、 す べ て の テ ク スト で四 本 の弦 があ る と 言 っ
と いう こと に な る。 そ し て、 響 き の点 か ら し て、 奥 行 は幅 て いる。 一番 低 い弦 は び鋤ヨ∋ と 呼 ば れ、 四 本 の ガ ット。 次
の半 分、 弦 の長 さ の四 分 の 一と し、 樟 は 弦 の長 さ の三 分 の がmathlげaとt呼
hば れ る第 二 弦、これ は 三 本 の ガ ット。第 三
一、四 つ の フ レ ット は 奥 行 に等 し く、 弦 の長 さ の四 分 の 一 弦 はmathlaこ
tれhは
、 テク ス ト B で は 二本 の 絹 糸 と な って
のと こ ろ に置 か れ る のが よ いと書 か れ て いる[M, 1
]1。も
2r い る が [B, 2テ
5rク]
ス、ト M では 二本 の ガ ット と な って いる
し も 奥 行 を 縮 め ると、 響 き の空 間 が 狭 く な る の で、 音 が出 [M, ]
1。1一
4番r高 い弦 は Niで
r、 一本 の絹 糸 で 出 来 て い る、
な く な る。 反 対 に広 げ る と 音 が は っき り し なく な る の で、 と 書 か れ て いる。ち な み に、こ の、げbamm mathlath
奥 行 の長 さ と フレ ット の距 離 とを 等 し く し な け れ ば な ら な na,
織﹃と いう 名 称 は、 順 に、﹁太 い﹂ ﹁第 三 ﹂ ﹁第 二﹂ ﹁下 の﹂
い、 と も 述 べら れ て いる[M, 1]
1。2v と い う 意 味 で あ る。 そ し て テ ク ス ト B 第 二 十 二 葉 表 で
ま た キ ンデ ィー は、 ウ ー ド の構 造 と 占 星 術 と の関 係 に つ は、 両 側、 つま り びbamと
mxir
と は完 全 な も の で、 真 ん 中
いて も 触 れ て いる。彼 は 次 の よ う に 言 って いる。 ﹁ウ ー ド に の 二 つは 不 完 全 な も の であ る、 と いう 記 述 が さ れ て いる。

-4-
(注 19)
あ る 十 二 の装 置、 つま り 四 つ の弦、 四 つの フレ ット、 四 つ 続 いて 調 弦 に 移 る。 キ ン デ ィ ー は 通 常 の 調 弦 と し て、 す
の 糸 巻 き に十 二宮 を あ て は め る と、 四 本 の弦 は 二 組ず つ の べ て の 開 放 弦 を 隣 接 す る 弦 と 四 度 の関 係 に 調 弦 し た も の、
似 たも のを持 った四 つの星 座 - 双 子座、 乙女 座、射 手 さ ら に 別 の調 弦 と し てbammをmathlの
a開th
放 弦 の音よ
座、 魚 座- に例 え ら れ、 四 つ の糸 巻 き は 逆 を 向 いた 四 つ り 一オ ク タ ー ヴ低 く 調 弦 し た も の、お よ びbamm をmath-
の星座- 雄牛座、蟹 座、天秤座、山羊座 1 に例え られ naの薬 指 の フ レ ット ま で高 く 上 げ て 調 弦 し た も の、bamm
る ﹂ [B, 26な
rお]、
。 テ ク ス ト B に は 四 つ の フ レ ット に つ い て をmathlの
a小th
指 の フ レ ット ま で高 く 上 げ て 調 弦 し た も の
の 記 述 は な い が、 テ ク ス ト M に は ﹁四 つ の フ レ ット は、 動 を 挙 げ て いる。 ラ ッ ハマ ンと カ ウ ル の著 作 を 参 考 に し な が
かな い四 つの星座 - 獅子座、 雄羊座、 水瓶座、 蝋座- ら、 これ ら を 五 線 上 に表 し て みた のが 表 1 で あ る。 奏 法 に
(
注 20)
に例 え ら れ る ﹂ と 書 か れ て い る [M, 120r]。 関 し て は、キ ン デ ィー は次 のよ う に言 って いる。﹁す べ て の
(
住18)
続 い て 弦 に つい て。 キ ン デ ィー は テ ク スト L で五 弦 と し 民 族 は、 こ の楽 器 に関 し て そ れ ぞ れ の方 法 を 持 って いる。
そ し て こ の点 に お け る 違 い は、 他 のも のに お け る違 いと 同
様 で あ る。 ア ラ ビ ア、 ビ ザ ン テ ィ ン、 ペ ルシ ア、 カ スピ 海、
ア ビ シ ニア、 そ の他 の 人 々 の性 質、 知 性、 意 見、 習 慣 の違
いを 知 ら な いと いう の か ﹂ [B, 2さ
6らv]
に。、ウ ー ド の奏 法

bamm mathlth mathnna zir


に は次 のよ う な 種 類 が あ る と 述 べ て い る。 す な わ ち、 一つ
の動 き で 二 つ の音 を 同 時 に 奏 す る 方 法、 三 つ の動 き で 三 つ
の音 を 連 続 し て 奏 す る 方 法、例 え ばmath
愚nの
a開n放
a 弦 と 職同
の人 差 し 指 の フ レ ット と 日 象冨 鋤 の開 放 弦 で 三 つ の 動 き、

通常の調弦
さ ら に、 あ る 弦 の小 指 の フ レ ット と あ る 弦 の 開 放 弦 と によ
り 同 時 に三 つ の ユ ニゾ ンを 奏 す る 方 法 等 々で あ る。 これ ら
を 五 線 上 で表 し た の が 表 2 で あ る。

-5-
(
注21)
で は ウ ー ド の最 後 に、 練 習 方 法 に つ い て見 て み よ う。 こ
れ に つ い てキ ンデ ィー は、 かな り具 体 的 に説 明を し て いる。
弦 か ら 人差 指 を 離 し、mathn上
nのa小 指 の フ レ ット を 押 さ

(3)
mathna zir
え、そ し て僅 か な 休 止 の後、mathn
とnN
aixによ って 三 つ弾
く。 こう し た 説 明 が 延 々と 続 く が、 そ の中 で、 特 に 奏 法 の

mathath
と ころ で述 べら れ て い た、 二 つの音 を 同 時 に 弾 く 練 習 方 法

(2)
に 多 く が割 か れ て いる。

bamm

(1)
通常の調弦

表2
表1
III
音楽 の諸要素
一 音 (naghm)
ま ず 音 の数 に 関 し て、 キ ンデ ィー が、 ウ ー ド 上 に 三 十 一
の音 の場 所 を 示 し て い る こと が、 テ ク スト L か ら 理解 で き
(
注22)
る。 し か し、 こ れ ら の音 す べ て が実 際 に 使 用 さ れ て いた わ
け で はな い こと も ま た、 キ ン デ ィ- 自 身 の記 述 か ら 理 解 で
き る。 そ れ を ま と め た の が、 表 3 で あ る。 た だ し こ こ で は、
フ レ ット は等 間 隔 に し てあ る。 ア ラ ビ ア語 の ア ル フ ァ ベ ッ
ト のう ち、 表 の 下 に並 べた 十 二 の文 字 が 使 わ れ て いる が、

表3
こ れ ら は ア ラ ビ ア 語 の ア ル フ ァ ベ ット 順 に はな って いな い。

-6-
こ れ は、 ヘブ ライ 語 の ア ル フ ァ ベ ット の順 序 に ア ラ ビ ア 文
字を あ て は め た も のと 考 え ら れ る。
音 の名 称 に つ いて は、 キ ン デ ィ ー は、 十 六 の音 の名 称 を、
テト ラ コル ド (ガ吾 鋤げ)に 関す る 説 明 と 共 に 記 し て いる。こ
れ ら を ま と め て み る と 表 4 のよ う に な る。
(
注23)
次 に 完 全 な 音 に 移 る。 キ ンデ ィ ー に よ れ ば、 も つと も 完
全 な 音 は 七 つあ り、 そ れ よ り 多 く な った り 少 な く な った り
す る こ と は な い。 何 故 七 つな の か。 こ こ に は占 星 術 の影 響
が み ら れ る の で あ る。 つま り、 七 つ の流 れ る 星- 土 星、
木星、火 星、太 陽、金 星、水星、月 1 に似 た七 つの音 が
表4

テトラコルド の 単 位 テトラコルド の 開 始 音

1 1....先 行音
(2)乙...先 行す る単 位の先行 音
3J(o)… 先 行す る単 位の先行 音の隣 接音 先 行す る単位]
(4)3...先 行す る単 位の第3音
(5)こ...中 間の単位 の第1音
6J(5)...中 間の単位 の第1音 の隣 接音 中間 の単 位
(7)g… … 中間 の単位 の第3音]
(8)1...中 心音
9(J(三)… 中心 音 の 隣 接 音] 中心 の単位
(10)」 … … 中心 音 の 第3音
(11)り...高 い単位の 第1音
12J(で)… 高 い単位 の第1音 の隣接音 高い単位
(13)レ...高 い単位 の第3音
(14)J...最 高音
15JG)… …最 高 音 の 隣 接 音] 最高 の単位
(16)...最 高音 の第3音

* ○ で 囲 ん だ もの は 固 定 音 を表 す。

ま た、3の 」(6)は、 次 の よ うな
記 述 内 容 を示 して い る。 「第1と
第2の タ ニ ー ンの 時 はbammの 」、
第3の 時 はbammの6を 用 いる」
[L,165]
6の レ(ジ)は 「そ の 単 位 の 中 で
ど ち らか が使 わ れ … 」 [L,165]
9、12、15に つ い て は 記 述 が な い。

-7-
あ る、 と いう の であ る。 七 つ の音 と は ま ず 第 一にbamm の 二 音 程 (bu'a)
開 放 弦 の音、 そ れ は 最 初 であ り、 一番 低 い音 であ る が、 こ 表 5 は、 音 程 を 表 3 の フ レ ット の音 と 共 に 記 し た も ので
れ は 七 つの中 で 一番 高 く、 一番 ゆ っく り した 土 星 に似 て い あ る。 四 度 に関 し て は調 弦 と 音 の名 称 の箇 所 で述 べ た ので、
(
注24)
る。第 二 にbammの人 差 指 の フ レ ット の音、そ れ は木 星 に 次 に 五 度 に つ いて の記 述 を 見 て み よ う。 キ ン デ ィ ー は、
似 て いる。 それ は 高 さ の点 で 土 星 に続 く。第 三 にbamm の bammの開 放 弦 の音 か らmathalの
t人h差 指 の フ レ ット の
中 指 あ る いは 薬 指 の フ レ ット の 音、 そ れ は火 星 に似 て いる。 音 ま で は 五 度、bammの人 差 指 の フ レ ット の音 からmath-
第 四 にbammの小 指 の フ レ ット の音 は 太 陽 に似 て いる。そ l
ath
の薬 指 の フ レ ット の音 ま で も 五 度 と いう よ う に、 表 に
し て 第 五 にmatha
げlのt人
h差 指 の フ レ ット の 音 は 金 星 に、 挙 げ た 五 度 を 次 々と説 明 し て いる。
第 六 のmathl
ゴaのt
中h指 あ る いは 薬 指 の フ レ ット の音 は 水 オ ク タ ー ヴと ニ オ ク タ ー ヴ に 関す る 記 述 が あ る の は、 テ
(
注25)
星 に、 第 七 にmathlaのt小
h指 の フ レ ット の音 は 月 に 似 て ク スト L であ る。 キ ンデ ィー に よ れ ば、 オ ク タ ー ヴ は 五 度
い る、 と キ ン デ ィ ー は 述 べ て い る。 な お、 中 指 と 楽 指 の と 四度 と で構 成 さ れ、bammの 開 放 弦 の音 か らmathlの
ath

-8-
フ レ ット の音 の違 い に つ い て は、 次 の よう な 記 述 があ る。 人 差 指 の フ レ ット の音 ま でが オ ク タ ー ヴ であ る。bammの
﹁中 指 の フ レ ット の音 は 湿 った、弱 く て柔 ら か い女 性 的 な 音 開 放 弦 の音 とmathlの
a人t差
h 指 の フ レ ット の音 と の比 は 二
であ り、 薬 指 の フ レ ット の音 は、 乾 い た、 荒 い男 性 的 な 音 対 一で あ る。さ ら に続 け て、mathl
のa人t差h指 の フ レ ット の
であ る﹂ [B, ]2
。6v 音 が 必 然 的 に げbamの
m開 放 弦 の性 質 を も って く る と 説 明
こ のよ う に、も っと も 完 全 な 音 は 一番 低 い げbamと
m第 二 し て いる [L, ]
1。6表56
rは、 テ ク スト L 第 百 六 十 七 葉 裏 の
弦mathlげa上tに
hあ る こ と に な る。 こ れ に 加 え て キ ン 記 述 中 の、 オ ク タ ー ヴ の単 位 と し て書 か れ た 図 の コピ ー で
デ ィー は、 これ ら 七 つ の音 の ほ か に、 そ れ に似 た 別 の七 つ あ る。 こ こ から は、 キ ン デ ィ ー が、 上 下 オ ク タ ー ヴ のそ れ
の音 が あ る、 と 述 べ て いて、 そ れ は、mathl
とaN
tih
上rにあ に相 当 す る 音 に、 同 じ 文 字 を 用 い て名 前 を 付 け て いる こと
る こ と にな って いる。 が 分 か る。
表5

Oで 囲ん だの は 「
使 川 されて い ない 」 [1,.1655r】もの を衷 す.

表6

-9
(注26)
ニ オ ク タ ー ヴ は ﹁使 用 さ れ る中 で も っと も 大 き い単 位 ﹂ 三 タ ニ ー ン (tanin)
と し て説 明 さ れ て い る。 キ ンデ ィー は 次 のよ う に 言 って い こ れ に関 す る 記 述 が あ る の は テ ク スト L と テ ク ス ト B で
(注 27)
る。 ﹁こ の オ ク タ ー ヴ内 の音 に つ い て 論 じ な け れ ば な ら な あ る。 ま ず テ ク スト L の ほう から 見 て ゆ く と、 こ こ で は 七
い。 二 十 の音 が あ る。 な ぜな ら、 各 弦 に は 四 つの音 があ り、 つ の タ ニー ン が 説 明 さ れ て い る。 第 一か ら 第 七 ま で の タ
四度 に調 弦さ れ た 弦 が五 つあ る か ら で あ る。 そ こ へさ ら に ニー ン の開 始 音 を 表 5 に矢 印 で記 し て あ る。 ﹁七 つ﹂で あ る
第 二 の Nurの小 指 の フ レ ット の音 が加 わ る。 こ の 二 十 一の こ と に つ いて キ ンデ ィー は ﹁な ぜ 七 つ ー これ以上 でも こ
音 に よ って、オ ク タ ー ヴ 音 域 の全 体 が 完 成 さ れ る ﹂[L, 165れ]以
。下 で も な く ー の タ ニー ンが あ る のか。 こ こ で は、 そ
さ ら に、 ﹁ニオ ク タ ー ヴ は 二 種 類 あ る。 一つは 結 合 し た も れ に 対 し て あ り のま ま の報 告 を す る こ と が 課 題 で あ る。
の。 そ れ は 第 一のオ ク タ ー ヴ の終 わ り と、 第 二 のオ ク タ ー 我 々 が 三、 四、 六、 十 三、 あ る いは 十 五 のタ ニー ン が あ る
ヴ の始 め が、mathnの
a人差 指 の フ レ ット の 音 で 結 び 付 け と 主 張 す る よ う な 教 義 に従 え ば、 それ は、 悪 い、 有 害 な 目
ら れ て い る。 も う 一つ は、 第 一の オ ク タ ー ヴ の 始 め が 的 を 持 つ こと に な る﹂[L, ]
1と6述
6べvて いる。

-10-
ぴ鋤ヨ ヨ の 開 放 弦 で あ り、 終 わ り がmatthの
a人n差 指 の フ し か し 一方 で は、 テ ク スト B に次 のよう な 記 述 も あ る。
レ ット の 音。 第 二 の始 め はmathnの
n薬a指 の フレ ット の音 ﹁十 二 のタ ニー ン があ り、そ れ に つ いて 知 る こ と は、弦 楽 器
で、 そ の 終、
わ り は 第 二 Niの
r外 の フ レ ット の音 であ る ﹂ ﹁
炉 の構 造 に つ いて 知 る こ と から 始 ま る﹂[B, ]2
。4こr
う した相
165r-1
]6。
な5お
v、彼 が ﹁各 弦 に は 四 つ の音 が あ り ﹂と 言 っ 反 す る 記 述 の存 在 を いか に解 釈 す べき か に つ い て は、 本 稿
て い る のは、 表 6 よ り、 開 放 弦 の音、 人 差 指 の フ レ ット の の最 後 に 改 め て触 れ て み た い。
音、 中 指 の フ レ ット の音、 小 指 の フ レ ット の音 か と 思 わ れ
る。 そ し て、 こ の後 さ ら に続 け て、﹁そ れ ぞ れ の弦 の小 指 の
フ レ ット の音 と 次 の弦 の開 放 弦 の音 と は 同 じ であ る か ら 十
六 の音 が 残 る ﹂と 述 べ ﹁L, ]
1、6先5述
vし た 十 六 の音 の名 称
が出 てく る こ と にな る。
(
注28
)
四 イ ン テ ィ カ ー ル ('intiqal) 次 に集 合 体 のイ ン テ ィカ ー ルだ が、キ ン デ ィ ー は、 ﹁イ ン
キ ンデ ィー は ﹁イ ンテ ィカ ー ルは 全 体 に 対 し て 調 和 し て テ ィ カ ー ル が起 こ る 両 方 に共 通 の音 がな け れ ば な ら な い。
いな け れ ば な ら な い﹂ [L, 1
と6し6、c次
] のよ う な イ ン テ ィ あ る いは 第 二 の出 発 が第 一の出 発 に対 し て、 例 え ば 五 度 や、
(
注29
)
カ ー ルに つ いて 述 べて いる。 あ る 音 程 か ら あ る 音 程 へ、あ そ れ に 似 た よう な 簡 単 で調 和 的 な 関 係 に な け れ ば な ら な い。
(
注 30) (
注 31)
る 類 (jin
かsら)あ る 類 へ、あ る集 合 体 (janか
'ら) あ る集 そ し て、 第 二 の終 わ り は 第 一の始 め に戻 ら な け れ ば な ら な
合 体 へ、 そ し てあ る タ ニー ン から あ る タ ニー ン へであ る。 い﹂ と 述 べ て いる ﹁L, 167r]。
ま ず 音 程 のイ ンテ ィカ ー ル に つ いて、 彼 は 次 のよ う に述 べ 最 後 に タ ニー ン のイ ン テ ィ カ ー ル だ が、 これ に つ いて は
て い る。 ﹁大 き く 開 いて い る 音 程- そ の端 が 互 い に遠 く ﹁こ のイ ン テ ィ カ ー ル は、 そ の主 音 (matrabか
aらh)
五度
離 れ て いる 音 1 か ら、そ の端 が互 い に近 い音 程 に 移 る な 音 程 で 上 へ、下 へと 生 じ る。 例 え ば、 第 一の タ ニー ンか ら
ら、 耳 に 分 裂 が 生 じ る。 ⋮ ⋮音 程 間 のイ ンテ ィカ ー ルは、 第 三 の タ ニー ン へ のイ ンテ ィ カ ー ル のよ う に。 タ ニー ン の
あ る 音 程 か ら そ れ に 似 た 音 程 へのイ ン テ ィ カ ー ル で な け れ 主 音 以 外 の音 か ら イ ン テ ィカ ー ルが 生 じ る とす る な ら、 そ

-11-
ば な ら な い﹂ [L,166b]。 の場 合、 耳 は そ のタ ニー ン の変 化 を あ ま り 知 覚 す る こ と が
類 のイ ン テ ィ カ ー ル に関 し て、 キ ンデ ィ ー は 三 つ の類 に で きな いだ ろう。 人 は、 タ ニー ン の主 音 に 戻 って 初 め て、
つい て 述 べ て いる。 す な わ ち、 タ ニー ニー (taninラiウ)、 は っき り と イ ンテ ィ カ ー ルを 知 覚 す る の で あ り、 そ れ か ら
二ー (lawnn
タiア)
リ、ー フィ ー (
冨、一
餅) (そ れ ぞ れ ギ リ シ 別 の タ ニー ン の 主 音 に 移 る の で あ る ﹂ と 述 べ て い る [L,
ア音 階 に お け る デ ィ アト ニ ック 類、 ク ロ マテ ィ ック 類、 そ 167r]。
し て エ ン ハー モ ニ ック 類 に相 当 す る) であ る。 キ ン デ ィー
の言 葉 を 引 用す れ ば、﹁そ れ は、あ る 類 か ら そ れ と 音 程 間 隔
の近 い他 の類 の間 に生 じ る。 例 え ば、 タ ニー ニー か ら ラ ウ
ニー へ、ラ ウ ニー か ら タ ア リ ー フ ィー へと いう よ う に﹂[炉
166vで
]あ る。
五 リズ ム (iqa')
キ ン デ ィー が リ ズ ム を ど のよ う に定 義 し て いる か は 、 テ
ク スト B に欠 落 があ り 、 残 念 な がら 知 る こ と は 出 来 な い。
し か し 、 テク スト 0 に は 、 ア ラ ビ ア 語 の長 音 節 と 短 音 節 と
の組 み合 わ せ か ら 詩 の韻 律 法 が でき 、 そ れ は 音 楽 にも 当 て
は ま る と いう 記 述 があ る [O,3]。
23
(
注31
)
ま ず リ ズ ム の種 類 か ら 見 て ゆ こう 。 キ ンデ ィー は 、 八 種
類 のリ ズ ム型 があ る と 述 べ て いる が、 テ ク スト 0 に は 、 八
と いう 数 字 が四 の倍 数 で、 重 要 な 数 理的 発 展 の基 にな る も
の であ る 、 と いう 記 述 が あ る 。 八 つ のリ ズ ム型 に つ いて の
記述を まと めた のが表 7 であ る。次 にリズ ム のイ ンテ ィ

-12-
表8
表7
カ ー ルだ が 、 これ に 関 す る 記 述 が 二 つ の テク スト の中 に あ
(
注33
)
り、 そ れ ぞ れ 音 楽 家 の 実 践 に お い て 必 要 な リ ズ ム の イ ン
テ ィカ ー ル の方 法 が 説 明 さ れ て いる 。 し か し 、 テク スト B
と テ ク スト 0 と で は 記 述 内 容 が 異 な って いる の で、 こ れ も
煩雑 さ を 避 け る た め に 表 8 に ま と め て み た 。 な お、 番 号 は
前 のリ ズ ム 型 に対 応 し て いる 。
(
注34)
続 いて、 一日 のう ち で 適 す る リ ズ ム に移 る。 キ ンデ ィー
テ キ ス ト0
は、﹁一日 のす べて の時 間 に、そ れ に 適 す る リ ズ ムを 用 い る
べき であ る﹂ と 述 べ [B, ]3
、2朝b
、 昼、 夜、 眠 り の と き、

[ ]1は
そ れ ぞ れ に つ い て適 す る リ ズ ムを 述 べ て いる。 これ も 表 に
し て みる と、 表 9 のよ う に な る。 こ れ か ら、 先 にあ げ た 八
種 類 のリ ズ ム型 以 外 に、 そ れ ら の 亜 種 と も 言 う べき幾 つか
の リ ズ ム 型 が あ った こと が 理 解 でき よ う。 最 後 に詩 と リ ズ
ム に 関 し て は、キ ンデ ィー は次 のよ う に 言 って いる。 ﹁壮 大
な意 味 があ る詩 に は al-thaqil aと
l-a
a;w-
wtah
la
al-tha
つqまi
りl重 い リ ズ ム が適 し て い る。大 胆 で意 気 盛 ん
な、 力 強 い詩 に は、al -thaqiそ
lれ、に類 す るも のが 適

-13-
し て いる﹂ ﹁B, ]3
。2v

表9
W 作曲法
キ ン デ ィー は、﹁作 曲 の熟 達 は、こ の芸 術 の究 極 目 的 であ
る。 そ し て、 作 曲 技 法 は 調 和 し た 音 を 目 指 す も の であ る と
言 お う ﹂と 述 べて いる [L.1﹂
6。7こrこ で はま ず、 作 曲 の種
類 を 検 討す る こと から 始 め た い。 こ れ に 関 し て は テク スト
L と テ ク スト 0 と の間 に違 いが 見 ら れ る の で、 ま ず、 テク
(注 35)
スト L から 見 て ゆく こと にす る。
キ ン デ ィー は、 二種 類 の作 曲 技 法 を 記 し て いる。 つま り
﹁連 続 す るも の﹂と ﹁し な いも の﹂で あ る [L, ]
1。6こ
7れrら
を、 ラ ッ ハマ ンと カ ウ ル の著 作 を 参 考 に し つ つ図 解 し た の

-14-
が表 10 で あ る。 ア ラ ビ ア語 は キ ンデ ィ ー の記 述 の通 り に 記
し てあ る。 そ し て キ ンデ ィー は、 ﹁今 度 は、 連 続 し な い、網

衷10
目 状 の、 結 合 さ れ たも のを 正 し く 理 解 で き る よ う、 す べて
の 音 の 表 を 与 え よ う ﹂ と 述 べ て、 図 を 示 し て い る [
い℃
167
]v(
表 11 がそ の コピ ー で あ る)。 そ こ に は 二 十 四 の音 が

連続す るもの
記 さ れ て いる。
と こ ろ で、 先 に 音 の数 と し て三 十 一と 紹 介 し た が、 し か
し こ こ で の記 述 は 二 十 四 と な って いる。 これ を ど う 解 釈 す
べき だ ろう か。 小 指 の フ レ ット の音 と 次 の弦 の開 放 弦 の音
と は 同 じ な の で、 三 十 一-四 で二 十 七。 す る と、 問 題 と し
て残 る の はあ と 三 つと いう こ と に な る。 つま り、 表 5 で ○
印を 付 け た げ簿ヨヨ と 8簿巨 鋤些 の隣 接 フ レ ット の音、 第 二
xiの
r外 の フ レ ット の 音 であ る。 二 つ の隣 接 フ レ ット の音
は、 ど ち ら も ﹁
使 用 さ れ て いな い﹂と いう 記 述 があ る が [

165
]r、外 フ レ ット の音 は、 お そ ら く ニ オ ク タ ー ヴ を 引 き 出
す た め に フ レ ット 上 で生 み出 し た 音 で あ ろ う と解 釈 す る の
が妥 当 であ ろ う。

表11

-15-
さ て本 題 に戻 る と、 作 曲 に 関 し て は 次 のよ う な 記 述 も あ
る。 ﹁作 曲 に は 拡 張 (
げ鋤2)、集 約 (
毬 び匹)、
直 線 (mu'tadii)
と いう 技 法 が あ る。 集 約 は悲 し さ を、 拡 張 は 楽 し さ を 引 き
起 こし、 直 線 は 尊 厳、 寛 容、 そ し て美 し く 気 高 い賞 賛 の感
情 を かき た て る ﹂ ﹁炉 1零 く]。
彼 は、こ の 三 つに各 々適 し た メ
ロデ ィ- (lahn
詩)、、リ ズ ム があ り、 そ れ ら が 組 み合 わ さ
れ る こと に よ って音 楽 活 動 の完 成 がも た ら さ れ る と 考 え て
いた よ う に 思 わ れ る。
次 は テク スト 0 だ が、こ れ は テク スト ﹂ と 比 べ て よ り 抽 象
(
注36
)
的な 記 述 にな って い る。 ま ず 作 曲 法 に 二 種 類 あ る と 述 べ、
そ れ ら は弦 楽 器 と 歌 のた め のも の であ る と 述 べら れ る。 そ て いる ﹁O, ]2
。2一6
番 記 述 の多 い のは 四 弦 に つ い てだ が、
し て さ ら にそ れ ら が 三 つず つに 分 け ら れ て いる。 す な わ ち、 これ に は、 ビ ザ ン テ ィ ン、 バ ビ ロ ニア、 ギ リ シ ア、 そ れ に
弦 楽 器 のた め の作 曲 法 の第 一は、 歓喜 や 豪 華 さ、 名 誉 を 表 ア ラ ブ のウ ー ド が 含 ま れ る と 言 い、 四 と いう 数 字 の重 要 性
現 す る た め のも の であ り、 第 二 は勇 気 や 前 進 を 表 現す る た に つ いて議 論 し て も いる [O, 22]
6。-彼2に
3よ3れ ば、 人 間
め、 第 三 が悲 し み を 表 現 す る た め のも の であ る。 次 に歌 の に四 つ の感 覚、 つま り 聴 覚、 視 覚、 味 覚、 臭 覚 が あ る よ う
た め のも のと し て は、 第 一に 神 への感 謝 を 表 現 す る た め、 に、 光 にも 四 種 類 が あ る。 す な わ ち 火 と 太 陽 と 月 と 星。 さ
第 二 は 喜 びを 表 す た め、 そ し て 第 三 が悲 し み を 表 現 す る た ら に 人 間 の か ら だ の主 な 要 素 は 頭、 心 臓、 肝臓、 腎 臓 の 四
め で あ る。 つ。 四 つの 体液、 黄 胆 汁、 黒 胆 汁、 粘 液、 血 液 があ り、 四
つ の目 の色、 黒、 青、 赤 み が か った色、 灰 色 があ る。 さ ら
V 音 楽 家 に要 求 さ れ るも の
に 髪 の色 も 黒、 臼、 赤、 明 る い赤 の 四 つだ と 述 べる。 そ し
(
注 37)
こ の 問 題 に 関 し て は 三 つ の テ ク スト に 記 述 があ る が、 ま て 音 楽 家 は、 こう し た 各 民 族 の特 色 や 固 有 の楽 器を 前 も つ

-16-
ず テ ク スト M と テク ス ト B から 見 て ゆ く こ と にす る。 そ こ て 知 ってお く こと に よ って、 自 分 の 音 楽、 演 奏 を 様 々な 状
では キ ンデ ィ ー は、 音 楽 シ ス テ ム の多様 性、 例 え ば ペ ル シ 況 に 合 わ せ る こと が 出 来 る と 言 う の で あ る。 音 楽 家 は声 域、
ア の モ ード と か、 ビ ザ ンテ ィ ン の 八 つ の モ ード、 ア ラブ の 声 量、 声 の質 を 周 囲 の状 況 に 調 和 さ せ ね ば な ら な い、 つ ま
八 つ の リズ ム モ ー ド な ど が、 大 気 や占 星 術 上 の 理 由 によ っ り、 そ こ に感 じ ら れ る 雰 囲 気 に メ ロデ ィー を 合 わ せ、 演 奏
て形 成 さ れ た も ので あ る こ と、 そ し て そ れ ら がそ こ に住 む 法 を 聴 衆 の年 齢 や 時、 地 理 上 の 状 況 に合 わ せ な けれ ば な ら
人 間 の 性 質、 行 動、 好 み、 習 慣、 考 え を 反 映 し た も の であ な い、 と 言 って いる。 最 終 的 に は、 彼 は、 タ ニー ンか ら タ
る こと を 音 楽 家 が知 ってお か ね ば な ら な い、 と 述 べて い る ニー ン への正 し いイ ンテ ィカ ー ル、 お よ び リ ズ ム型 と 詩 と
[B, ]
2。9れ
こ b に 対 し て テ ク スト 0 では、ま ず 各 民 族 の考 え の関 係 を 習 得 す べき であ る と 述 べる の で あ る。
方 の違 いか ら そ れ ら 民 族 に 固 有 の弦 の数 が 生 じ た と 述 べ、
例え ば 一弦 は イ ンド、 二 弦 は ホ ラ ー サ ン、 な ど と 例 を 挙 げ
(
注38) スミ レ、 ジ ャ ス ミ ン、 花 は っか は、 楽 し さ、 誇 り、 寛 大 さ、
W タ ー シー ル (ta'th
論ir)
高 潔 さ を 呼 び 起 こ す。 そ れ は 男 の 香 り であ る。
キ ン デ ィー は、 ウー ド の弦、 色、 香 り に当 て は め な が ら、
おわ りに
彼 の タ ー シー ル論 を 展 開 し て いる。 ま ず、 ウ ー ド の弦 から
(
注39)
見 て ゆ こう。 彼 は、 ウ ー ド の四 つの弦 を 宇 宙 論 に 結 び付 け、 以 上、 今 日 にま で 伝 わ った、 キ ン デ ィ ー のも のと さ れ る
魂 へ の作 用等 を 考 え て いる。 これ に関 す る 記 述 を ま と め た ア ラ ビ ア 語 論 文 に 依 拠 し つ つ、彼 の音 楽 論 を 再 構 成 し よ う
の が表 12 で あ る。 タ ー シ ー ル論 は、 キ ンデ ィ i 以 後 十 世 紀 と努 め てき た が、 そ の過 程 で、 依 拠 し てき た ア ラ ビ ア 語 テ
頃 ま で は ウ ー ド の弦 と 関 連 付 け て 論 じ ら れ る が、 十 一世 紀 ク スト 自 体 の性 格、 な いし 価 値 そ のも の に関 わ る 幾 つか の
頃 か ら 変 化 が 起 こ り、 例 え ば イ ブ ン ・シ ー ナ ー が 旋 法 間 題 も ま た、 浮 か び 上 が ってき た。 た と え ば テ ク スト 0 で
(
鋤血芝霞)と 一日 のう ち の時 間 とを 結 び 付 け た よ う に、 旋 法 は タ ニー ン の数 が 七 つと な って いる の に対 し、 テク ス ト B
と は 何 か、 と いう こ と と の関 連 で論 じ ら れ る よ う に な る。 で は 十 二と あ った。 こ れ は ど のよ う に 解 釈 す べき な の で あ

-17-
次 に、 色 の混 ぜ合 わ せ に つ いて、 二、 三 の例 を 挙 げ て み ろう か。 お そ ら く こう し た 問 題 は、 写 本 研 究 に よ る テ ク ス
よ う ﹁B, ]。34v ト 決 定 と いう 方 向 か ら し か、 解 決 の つか な いも の であ る よ
黄 色 と 黒 と が混 ぜ合 わ さ れ る と、 屈 辱 の気 持 ち が 刺 激 さ う に 思 わ れ る。
れ る。黄 色 味 が か った 臼- り ん ご の色 I が赤 と 混 ぜ 合 ま ず タ ニー ン の 数 十 二 を ど う 考 え る か だ が、 これ を 考 察
わ さ れ る と、 熱 情 的 な 愛 への刺 激 と と も に喜 び の感 情 が 起 す る前 提 と し て、 こ れ が 書 か れ て いる テ ク スト B の第 二 十
こ ってく る。 二葉 表 か ら 第 二 十 四葉 裏 ま で の部 分 に つ いて、 写 本 の性 格
ま た、 香 り に つ い て の記 述 も あ る の で若 干 例 を 挙 げ て お を 把 握 し て お か な け れ ば な ら な い。 こ の写 本 は、 最 初 の何
く [B, 3]
4。b-35r 枚 か が 欠 落 し て い る が、 第 二十 二葉 表 の上 の部 分 に、 判 読
バ ラ、 水 仙、 黄 あ ら せ いと う は、 恋 の喜 び、 燃 え る よ う し づら い タイ ト ルら し き も の が書 か れ て い る。 メ Pデ ィ ー
な 愛 を 生 み だす。 そ れ は女 の香 り であ る。 伽 羅、 天 人 花、 を 意 味 す る 冨葱 コと いう 単 語 と、 ア ル ・ムー タ シ ムと いう
表12

*右 側 の 欄にOと あ るの は
テ クス ト0に のみ 紀述 の
あ るこ と を、Bと あ るの
は テク ス トBに の み記 述
の ある こ とを示 して い る。

(1)テ ク ス トOで は 東。
(2)テ ク ス ト0で は 北。
(3)テ ク ス トB, 33rに よ
る。 (テ ク ス トOと
テ ク ス トB,29vで は
土。)
(4)テ ク ス トB, 33rに よ
る。 (テ ク ス トOと
テ ク ス トB, 29vで は
水。)
(5)テ クス トOで は真 夜
中か ら日の 出 まで
(6)テ クス ト0で は 日没
か ら真夜 中 まで
(7)記 述 なし。

-18-
人名 が辛 う じ て確 認 で き る の で、 フ ァー マー と、 こ の写 本 さ て、 写 本 研 究 と いう 観 点 に 立 つと、 今 述 べた テ ク スト
の校 訂 者 ユー ス フ は、 こ の写 本 のテ ク スト がキ ンデ ィー の L に も 問 題 が 出 て く る ので あ る。 こ の写 本 に は、 や は り 最
著作 であ ると 判 断 し た。 ア ル ・ム ー タ シ ム は、 ア ッバー ス 初 の部 分 に欠 落 が あ る が、 次 のよ う な コピ イ ス ト の奥 書 が
朝第 八 代 カリ フと 同 じ 名 で、 キ ンデ ィー は、 そ の息 子 ア フ つい て いる。 ﹁ヤ ー ク ー ブ ・イ ブ ン ・イ ス ハー ク ・ア ル ・キ
マド ・イ ブ ン ・ムー タ シ ム の た め に 多 く の著 作 を 書 い て い ン デ ィ ー の ﹃旋 律 の作 曲 法 に つ いて ﹄ の論 説 を 終 え る。 一
る の で あ る。と こ ろ が、 一九 五 八 年 に ア フメ ット ・ア テ シ ュ 〇 七 三 年 ラ ビ ー ・ア ッサ ー ニー 月 十 七 日 に書 き 終 え た。 こ
が、 ア ナ ト リ ア にあ る 種 々 の図 書 館 に 所 蔵 さ れ て いる 写 本 れ の原 本 は、 ダ マス カ ス で六 一二 年 シ ヤ ッワ ー ル月 の終 わ
の概 要 を 公 表 し、そ の中 で、マ ニサ 図 書 館 の コ レク シ ョン の り に、 不 完 全 で信 頼 で き な い写 本 に基 づ いて書 か れ た も の
(
注40)
重 要 性 を 指 摘 し た。 こ れ を 受 け て、 ロー ゼ ンタ ー ル は、 ベ であ る ﹂ [L, 1つ6ま8り
]、。こ の写 字 生 は、西暦 に 直 す と 一六
ルリ ン、 マニサ 両 写 本 を 比 較 し、 そ の結 果、 テ ク スト B の 六 二年 の十 一月 二十 九 日 に、 こ れ も 西 暦 に直 す と 二 一二 四
コピ イ スト が、 内 容 や 意 味 な ど に 注 意 を 払 わ ず に 写 本 を 筆 年 に ダ マスカ ス で書 か れ た 不 完 全 で信 頼 で き な い写 本 か ら

-19-
写 し た た め、 偽 ユー ク リ ッド と キ ンデ ィ ー の 著作 が混 ぜ合 写 しを 作 った、 と いう こと に な る。
(
注41
)
わ さ れ て し ま った、 と いう 説 を 提 起 し た の で あ る。 そう す テ ク スト L は、 ア ラ ビ ア 語 で書 か れ た 音 楽 理 論 書 と し て
る と、 本 稿 で も 引 用 し た テ ク ス ト L の記 述 ﹁な ぜ 七 つ ー は今 日 にま で伝 来 す る も っと も 古 いも の であ る と 言 わ れ て
これ 以 上 でも こ れ 以 下 で も な く ー の タ ニー ン が あ る の いる。 と ころ が、 十 世 紀 お よ び 十 三 世 紀 のア ラブ の書 誌 学
か ﹂ と 合 わ せ て み る と、 タ ニー ン の数 が十 二 で あ る と いう、 者 た ち が 著 し た 図書 目 録 の中 に挙 げ ら れ て いる キ ンデ ィー
テキ スト B のこ の部 分 は、 偽 ユー ク リ ッド の も の であ る、 の論 文 名 の中 に、 こ の テ ク スト の タ イ ト ルは 載 って いな い
(
注42
)
とも 考 え ら れ る の であ る。 な お、 キ ン デ ィ- 単 独 のも の で ので あ る。 カ ウ ルは、 キ ンデ ィ ー が こ の論 文 を 書 く 前 に著
あ る こと に疑 い の出 て き た、 こ のテ ク スト B第 二 十 二葉 表 し た ﹁大 作 曲 法 ﹂ と いう 論 説 (こ れ は テ ク スト L の中 で そ
(
注43
)
から 第 二十 四葉 裏 ま で の部 分 は、 本 稿 で は、 ウ ー ド の弦 と、 の名 前 が引 かれ て いる)の要 約 な のだ と 述 べて いる。も ち ろ
タ ニー ンに つ いて の箇 所 で引 用 さ れ て いる。 ん、 ア ラブ の書 誌 学 者 た ち が 著 し た 図 書 目 録 の中 に タイ ト
ルが 見 え な い から と 言 って、 そ れ が キ ン デ ィー のも の で は < 注>
(
1) 以下 の 四点 で あ る。
な いと 断 定 し てし ま う こ と は で き な い。 題 名 が違 う だ け で
(1)MS Lond
:nBritish Museum, Oriental Ma,
内 容 は 同 じ であ る別 の著 作 の 異 版 であ る 可 能 性 も あ ろ う か
2361, fols-
.16186r5
(.
本r稿 で は ﹁テ ク ス ト ﹂ ﹂ と 略 称 す
と思 わ れ る。 た だ し か し、 こ の テ ク スト Lは、 音 楽 の理 論 る。)
を 図 入 り で説 明 し た り、 他 の テ ク スト と 比 べ て抽 象 的、 哲 (2)MS Berlin: Staatsbiiothe, Wetzstein
-35v.
(本 稿 で は ﹁テ ク ス ト B ﹂ と 略 称 す る。)
学 的 記 述 が あ ま り な い、 と い った 際 立 った 特 色 を 持 って い
(3)MD Manisa: II Halk Kutuprhanesi. Ms.
る。 筆 者 が こ の テク ス ト Lを 後 世 の偽 作 であ る、 と 断 定 す -109v, 110v-(
1本2稿
3rで.は ﹁テ ク ス ト M ﹂ と 略 称 す る。)
る に は、筆 者 自 身 の文 献 学 的 能力 は あ ま り に低 いが、そ れ で (4)MS Oxo: frB
dodleian Library, Marsh 233,
NO3-20(
4本.稿 で は ﹁テ ク ス ト 0 ﹂ と 略 称 す る。)
も な お、コピイ スト が 写 本 を 作 る こと と 新 た な 作 品 を 書 く
(2)
こ と と を ほ と ん ど 識 別 し て いな か った と す ら 言 わ れ る 西 ア
(
注44)
ジ ア ・イ ス ラ ム 世 界 で、 十 七 世 紀 に作 成 さ れ た こ の テ ク ス (3)

-20-
ト L が、 九 世 紀 に ア ル ・キ ン デ ィ ー が書 いた そ のま ま を す
(4)
べ て 正 し く 伝 え て いる と 考 え る に は、 や や無 理 が あ る よう
に思 え てな ら な い。 し た が って 本 稿 も、 あ く ま で、 多 く の
コピ イ スト た ち を 通 し て、 キ ン デ ィー のも のと し て 現 在 に (5)
ま で伝 え ら れ てき たも の の全 容 を 提 示 し て、 現段 階 で のキ
(6) テ ク ス ト L に つ い て は 、ibid.;Yusuf Shawqi, Kinal-
ンデ ィ ー の音 楽 論 を 紹 介 し た にす ぎ な いも の と考 え て いる。 fi Khubr Sima'ah al-Tai'lif. Cairo:テ Dar
そ し て実 は、 今 後 新 た な テ ク スト が発 見 さ れ る度 に、 そ し ク ス ト B と テ ク ス ト O に つ い て は 、 Nakarya Yusuf,. op.
(た だ しpp.203-2
に0つ
4 い て は 校 訂 さ れ て いな い。) テ ク ス ト
て そ れ ら に 関 す る 文 献 学 的 研 究 が 進 む 度 に、 こ の 音 楽 論 を
M に つ い て は Nakariya Yusuf, Risala al-luhun
書 き 換 え て ゆ く こと がも っと も 大 切 な こと だ ろう と 思 わ れ
る の で あ る。 (7 )
(
16) こ の枠 組 み は、各 テク スト の内 容 を す べて抽 出、 検 討、 分 類 し
た 結 果考 案 した。
(
17) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v; B,
(
18) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v
(8) (
19) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v.
(
20) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v
(
21) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v
(9) (
22) 音 の数 と、 次 に扱 う そ の名 称 と に つ いて は、L, 165r-168r.
(
23) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v.
(
24) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v
(10) (25) これ に つ いて は、M, 111v-114r, 120r-120v.
(26)taniは
nア ラ ビ ア語 で ﹁鳴 り響 く音 ﹂ の意 で、 日本 語 で ﹁
音階
法 ﹂、﹁調 ﹂な ど と 訳 さ れ る ギ リ シ ア 語 の ト ノ ス (tonoに
sあ)た
(11)
写本 の状態 に留 ま って いる、音 楽 に 関す る ア ラ ビ ア語 文 献 に つ る 語 で あ る。

-21-
いて は、 さ しあ た り シ ロア によ る 以 下 の著 作 が 参 考 にな る。 (27) こ れ に つ い て は、M, 111v-114r, 120r-120v
(28). intiは
qaアlラ ビ ア 語 で ﹁移 す こ と ﹂ の 意 で、 日 本 語 で ﹁転
調 ﹂、 ﹁移 行 ﹂ な ど と 訳 さ れ る ギ リ シ ア 語 の メ タ ボ レ ー
(mettaboにlあ
eた) る 語 で あ る。
(29) こ れ に つ い て は、M, 111v-114r, 120r-120v
(12) (30) jins
は ギ リ シ ア 語 ゲ ノ ス (gempが
sア) ラビ ア 語 化さ れ た も ので
あ る。
(13) (31) 冨 ヨ "は ア ラ ビ ア 語 で ﹁集 め る こ と、 集 ま り ﹂だ が、 キ ン デ ィ ー
は こ れ に つ い て 具 体 的 な 説 明 を 加 え て いな い。 フ ァ ー ラ ー ビ ー
(14) は、 ス ケ ー ル を 作 る た め の 11 つあ る い は そ れ 以 上 の音 の 集 ま り
Leiden: E. J. Bril
なlお
,本 書
1に9お
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るマSニ
.ク の
24-33. と し て お り、 サ フ ィ ー ・ア ッ デ ィ ー ン は 三 つ あ る い は そ れ 以 上
問題 関 心 は フ レ ット 分割 にあ る。 の 音 の集 ま り で あ る と し て い る。
(15) 注 4及 び 注 10を 参 照。 (32) こ れ に つ い て は、M, 111v-114r, 120r-120v;O, 22
(33) こ れ に つ い て は、B, 32r-32v;O, 235.
(34) こ れ に つ い て はB, 32r-32v;O, 235
(35) こ れ に つ い て はB, 32r-32v;O, 235
(36) こ れ に つ い て はO,234.
(37) こ れ に つ い て はO,226-236, 203;M, 120r; B, 29v.
(38) 冨 導け寓﹃は ア ラ ビ ア 語 で ﹁影 響 力、 作 用 ﹂ の 意 で、 ギ リ シ ア 証
の エート ス (etheに
osあ)た る 語 で あ る。
(39) こ れ に つ い て はO, 236-238, 203, B, 29v, 33r-34r.
(40)
(41) 註 4参 照。
(42) ア ラ ブ の書 誌 学 上 で重 要 な 作 品 と さ れ る 以 下 の 三 冊 に、 キ ン
デ ィー の こ の テ ク スト が 記 録 さ れ て いな い。Ibn al-Nadim,

-22-
こ のう ち、 第 一のも のに関 し ては Uod
qgeに よ る 英 訳 が あ る。
(43)
(44)
Al-Kind-i's musical theory

ARAI Hiroko

Al-Kindi (Alkindus in Latin, ca. 801-866), the first philosopher of the Islamic
world, was a man of encyclopedic knowledge and wrote many treatises under the
influence of ancient Greek philosophers. Thereby he built up a sound foundation
of Islamic philosophy, which would be succeeded and developed by muslim philosopers
such as al-Farabi (Alfarabius in Latin, ca. 870-950) and Ibn Sina (Avicennna in
Latin, 980-1038), and by European scholars after the twelfth century. Music was
regarded as a science adjacent to philosophy in ancient Greece and the Islamic
world as well. Al-Kind's musical theory must hence not be neglected from such
viewpoints.
I have tried, in the course of the present paper, to give the full picture of
al-Kindi's musical theory through analyzing all his extant treatises on music.
These are the following four texts: 1) MS London: British Museum, Oriental
Manuscript 2361, fols. 165r-168r; 2) MS Berlin: Staatsbibliothek, Wetzstein II,
1240, fols. 22r-35v; 3) MS Manisa: Il Halk Kutuphanesi, Ms. 1705, fols. 107r-109v;
4) MS Oxford: Bodleian Library, Marsh 663, pp. 203-204, 226-238.
The paper is divided into five parts dealing with lute (ad in Arabic), various
elements of music, compositional technique, the perfecting of musicianship, and
theory of ethos. The first part describes al-Kindi's explanations on the strings,
the method of tuning the strings, execution, the method of practice of 'ad as well
as the size and the construction of this instrument. The second part deals with
musical tone, interval, tune, transposition, and rhythm. The focus of the third part
lies in types of composition; that of the fourth does in what is required to
composers. The last part is divided into three sections: the strings of 'ad, colour,
and smell.
Throwing light upon the musical theory of al-Kindi, the paper have demon-
strated that al-Kindi was not only an introducer of the Greek musical theory to the
Islamic world but also an original theorist. He connected, for example, the four
strings of 'ad with cosmology, and thought about the influence each string exerted
upon the soul.
Another grave issue have come up in the course of the paper: the importance
of studying manuscripts and text critique. F. Rosenthal had already pointed out,
in his article (1966), the possibility of the mixture of a work of al-Kindi and that
of false-Euclid in some folios of MS Berlin. A newly discovered text, MS Manisa,
was proved to be a different edition of some parts of MS Berlin. In addition,
according to my opinion, MS London, the text being most popular among researchers,
has some problems too.
Certainly, MS London deals with various topics of music, but it is much
different from the other texts in its contents. The number of strings of 'ad, for
example, is five, like the later philosophers such as al-Farabi and Ibn Sina,
according to MS London, whereas the number is four in the other texts; diagrams
are included only in MS London; unlike the other texts, no idea of astrology is
found in MS London.

(1)
To settle this problem, the date of copying MS London may yield some clues.
The manuscript was copied on November 29, 1662 from a manuscript written at
Damascus in the middle of November 1224 based on "an imperfect and undependa-
ble" manuscript according to the copyist of MS London. It may therefore well be
that there are some interpolations of copyists in MS London. One must hence be
careful in citing this text for arguing al-Kindi's theory; the full picture of his
musical theory described in the present paper must also be renewed whenever the
text critique is advanced and a new text is discovered.

(2)

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