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, 2010)
〔総 合 論 文〕
量子化学計算を用いたポリペプチドの精密な二次構造解析
になってきた10)~23).
1 緒 言
このように,多種の測定方法の特性を生かし,必要に
タンパク質は 20 種類の標準アミノ酸が連なることで 応じてモデルペプチドを用いる手法は,タンパク質の構
ペプチド鎖を形成し,そのペプチド鎖の折りたたみに 造解析において今でも盛んに行われている.現在のタン
よってその立体構造が決定されている.その立体構造は パク質の構造解析技術がかなり進歩したことにより,新
タンパク質の機能と密接に関わっているため,タンパク たに理論的な解析方法を導入することでそれらの解析方
質の立体構造の解明は生体の機能を解明する上で非常に 法が飛躍的に進展することが期待できる.このような理
重要な意義を持っている.タンパク質の立体構造に関す 由から,本研究では,高分子モデルペプチドに対し従来
る実験的研究は,タンパク質全体の構造解析を行うため 全く行われていなかった精密な量子化学計算を適用し,
の基礎情報を得る手段として,化学合成した部分ペプチ その詳細な二次構造解析を行うことを目的とする.
ドセグメントを用いる手法が以前から行われ,その方法 これまでのタンパク質における計算化学の適用は,分
が有益であることが証明されている. 子力学,分子動力学,そして量子化学計算の半経験的方
一方,これまで,タンパク質の立体構造を決定する手 法で多数行われ,多くの有用な結果が与えられてきた
1),2) 3) 4)
段として, X 線回折 ,中性子線回折 ,溶液 NMR が,非経験的量子化学計算での研究例は近年までそれほ
や固体高分解能 NMR5)~9)などさまざまな手法が用いら ど多くはなかった.これは,タンパク質という分子が巨
れ,それぞれ多大な成果が得られてきたが,それぞれの 大であるため,その計算コストを抑えるために実験的
測定法・解析法は万能ではなく,一つの測定法のみで構 なパラメーターが必要であったことが最も大きな原因で
造解析を完成させるには当然のことながら困難を伴う場 あった.しかし,近年の計算機の急速な進歩により,
合が多い.近年,この中の固体高分解能 NMR による研 ab initio 法や密度汎関数法の適用も徐々に増加してい
究が盛んに行われるようになり,その固体 NMR 化学シ る.ただし,これまでの精密計算はアミノ酸 1 ~3 残基
フト値とタンパク質の二次構造との関係もある程度明確 程度の小さな分子に限られる場合が多かった24)~29).し
かし,その局所的な分子モデルから得られた情報には,
1 群馬大学大学院工学研究科応用化学・生物化学専攻( これまでに明らかにされていなかった有益な情報が存在
3768515 桐生市天神町 151)
2 奈良女子大学大学院人間文化研究科共生自然科学専攻( することが明らかになりつつある.
6308506 奈良市北魚屋西町) 先に述べた通り,タンパク質の構造解析に対する計算
10
量子化学計算を用いたポリペプチドの精密な二次構造解析
化学の適用はこれまで分子力学,分子動力学,そして量 が,その最大確率分布値(q=-62°
, c=-41°
)はアミノ
子化学計算の半経験的方法が主流であったが,その精密 酸残基の種類(ただしグリシン残基とプロリン残基を除
な構造を解明するためには量子化学の原理に基づき,さ く)によらず一定である.このように,実測と Pauling
らに電子相関を考慮した密度汎関数法の適用が望ましい らの提唱した a R へリックスの二面角との間で約 5°
の差
のは明らかである.これまでに密度汎関数法を用いた局 が見られる.これら実測二面角の微妙なずれは,天然タ
所的な構造解析は行われているが,高分子量モデルペプ ンパク質は単結晶状態において結晶水によってとり囲ま
チドを分子設計して,その最適化構造計算を適用する研 れている(水溶液中の環境と似ている)ために生じると解
究は行われていない. 釈されている39).すなわち,タンパク質の主鎖カルボニ
一方,これまで,固体高分解能 NMR による 1H, 13C, ル酸素(Oi)は,4 残基離れたアミドプロトン(Ni+4-Hi+4)
15
N および 17O 核の等方性化学シフト値および化学シ と水素結合を形成し a R へリックスの安定化に寄与する
フトテンソル主値が合成ポリペプチドや天然タンパク ほか,主鎖カルボニル酸素と水分子や他の極性側鎖との
質 の局所 的二 次構 造に 依存 する こと が証 明さ れて い 相互作用のため,水素結合の方向が Pauling のモデルよ
12),13),16)~23),30)~33)
る .したがって,実測の化学シフト値 り離れた構造をとりやすくなり,その結果,実際の主鎖
と計算化学シフト値を比較することにより,タンパク質 二面角(-62°
, -41°
)が古典的な二面角(-57°
, -47°
)と
の二次構造と電子構造との関連性を解明する研究は非常 異なっていると説明されている.
に重要である. しかし,この説明は本当に正しいのだろうか この
本報では,密度汎関数法を用いて,モデルホモポリペ 問題は a R へリックスの本性を解明する上で極めて重要
プチド H-(Ala)18-OH に関して精密な構造計算を行い, である.そこでこの問題を解決するために,本研究では
aR ヘリックスの詳細な構造パラメータを導き,ポリ(L- 精密な量子化学計算を行い, a R へリックス形ホモポリ
アラニン)の実測値と比較して,計算で得られた二次構 ペプチドの最適化構造を得ることを目的とした.このた
造パラメーターの信頼性を検討する.ここで分子モデル め,(1)計算に用いるモデル分子として,分子一本鎖で安
として用いた H-(Ala)18-OH は,密度汎関数法で計算す 定な a R ヘリックスを形成する残基数を有する高分子量
る分子としてはかなり大きな分子であり,この大きさの ポリペプチドを分子設計し,(2 )できる限り精密な量子
分子の精密な構造計算が可能であることを証明する意味 化学計算法を採用して,最適化構造計算を行い,その構
でも重要な研究である. 造パラメーターの精確度・信頼性を実験結果と比較した.
このような大きさの分子の二次構造計算を密度汎関数 そこで本章では第一に,(1 ) a R へリックス形ポリ( L-
法で行うためには,計算機の性能の向上が必要不可欠で アラニン)に着目し,L-アラニン 18 量体を計算モデルと
あったが,近年の計算機性能の著しい進歩により予想を した.L-アラニンは,不斉炭素を有する最小の標準アミ
超える大きな分子の計算も可能になり,信頼性の高い構 ノ酸であり, a R へリックス形成能が高く,ここで得ら
造解析が可能となった.本報では,筆者らが最近行った れる結果はグリシンとプロリンを除く他の標準アミノ酸
研究成果34)~36)をまとめて報告する. についても共通して適用できることが期待できる.本章
では,a R へリックス構造の一般的な各種パラメーターを
2 量子化学計算を用いた a へリックス形
導くことが目的なので,このような特徴を持つ L- アラ
ポリ(L-アラニン),H-(Ala)18-OH,の
ニン残基を用いることは非常に有効であると考える.a R
構造最適化計算と遮蔽値計算34)
へリックス形 H-(Ala)18-OH は分子内水素結合によって
2.1 緒言 安定化された分子であることは特に重要である.この分
37)
1951 年に L. Pauling ら によって提唱された右巻き 子内水素結合によって,外部の影響に左右されにくく,
a R へリックスは非常に重要なタンパク質の二次構造の 内部の構造に依存する傾向が強い分子となっており,
一つであり,彼らが提唱した主鎖二面角(q=-57°
, c= a R へリックスは一本鎖で安定化される点に着目する.
)が a R へリックスパラメーターとして今でも広く
- 47 ° 第二に,近年の計算機器の著しい性能向上により,量
用いられている. 子化学計算によって比較的大きな分子の精密な構造計算
一方,これまで中性子線回折法や X 線回折法による が可能となり,これにより a R へリックスなどのより詳
タンパク質の結晶構造解析が盛んに行われ,タンパク質 細な二次構造パラメーターの算出が可能となった.本章
の一次構造(アミノ酸配列)および二次構造(主鎖コンホ では密度汎関数法を用いモデルポリペプチド H-(Ala)18-
メーション)に関する精密な実験データが集積されてき OH に関して精密な構造計算を行い,量子化学計算に基
た.プロテインデータバンク( PDB )38) に登録されてい づく詳細な a R へリックスの構造パラメーターを導き,さ
る種々の天然タンパク質の aR へリックス部分の主鎖二 らにこの結果をポリ(L-アラニン)の実測値と比較する.
面角( q, c )は,その内部と末端部位等により変動する ここでモデルとして用いた H-(Ala)18-OH は,密度汎関
Residue q (°
) c (°
) v (°
)
1
Ala -11.5 -165.8
2
Ala -59.4 -37.0 -179.4
3
Ala -62.5 -35.3 177.4
4
Ala -67.2 -40.4 174.8
5
Ala -61.0 -42.3 178.2
6
Ala -61.7 -43.3 178.1
7
Ala -60.9 -43.2 178.3
8
Ala -61.7 -42.5 178.0
9
Ala -62.0 -41.7 177.7
10
Ala -62.1 -42.8 177.4
11
Ala -61.3 -42.5 177.8
12
Ala -61.5 -42.7 177.9
13
Ala -61.6 -42.0 177.6
14
Ala -61.7 -42.9 177.5
15
Ala -60.6 -44.1 179.4
16
Ala -61.2 -36.6 177.2 Figure 2. The relation between the Oi…H i+4 distance [RO…H]
17
Ala -70.2 -27.2 -175.3 and the Oi…Ni+4 distance [RO…N] in the optimized structure of
18
Ala -97.6 -18.5 a R-helical H-(Ala)18-OH (●). The triangle (▲) indicates the
relation between RO1…H4 and RO…N in the 310-helix region.
Table 2. Mean values of 1H, 13C, 15N, and 17O nuclear shielding constants of typical optimized aR-helical H-(Ala)18-OH polypeptides,
their transformed chemical shifts and tensor principal values from the standard materials, and experimental chemical shift (tensor) values
for aR-helical poly(L-alanine) measured in the solid state
Nuclear shieldings (ppm ) Chemical Shifts (Calculated) Chemical Shifts (Measured) d (ppm)
d (ppm)
siso s11 s22 s33 diso d11 d22 d33 diso d11 d22 d33
N a)
H 24.19 17.92 24.27 30.37 7.84 14.11 7.76 1.66 8.0
Ha 27.87 25.4 26.12 32.09 4.16 6.63 5.91 -0.06 4.0a),b)
Hb 30.39 25.69 29.6 35.89 1.64 6.33 2.43 -3.78 1.4a),b)
C′ 1.62 -75.38 -6.48 86.72 176.15 253.15 184.25 91.05 177 241.3 189.2 100.4
176.8c) 243c) 194c) 94c)
176.6d) 251.8d) 185.2d) 92.8d)
Ca 24.48 102.65 126.58 144.21 53.29 75.12 51.19 33.56 53.2
53.3d) 72.0d) 51.9d) 36.0d)
b
C 65.63 152.73 160.8 183.36 12.14 25.04 16.97 -5.58 15.6
15.8d) 26.7d) 18.4d) -2.3d)
N 114.41 2.32 152.84 188.08 98.8 210.89 60.37 25.13 98.8e) 204e) 54.4e) 38e)
O -65.67 -335.03 -178.62 316.63 303 572.4 416 -79.3 303f) 595f) 435f) -121f)
a) b) c) d) e) f)
Ref. 17). Refs. 18) and 30). Ref. 19). Ref. 31). Refs. 12) and 13). Ref. 16).
Residue q (°
) c (°
) v (°
)
1
Ala -11.5 -165.4
2
Gly -61.2 -31.8 177.0
3
Ala -56.5 -32.5 177.8
4
Gly -65.1 -39.7 174.4
5
Ala -64.2 -40.7 175.6
6
Gly -60.3 -45.0 177.8
7
Ala -61.5 -43.4 178.2
8
Gly -61.2 -43.7 177.0
9
Ala -61.8 -42.3 177.8
10
Gly -62.2 -43.1 176.5
11
Ala -62.1 -42.0 177.8
12
Gly -61.8 -44.0 176.1
13
Ala -61.4 -43.1 178.2
14
Gly -60.2 -43.9 176.3 Figure 5. The relation between the Oi…H i+4 distances
15
Ala -63.9 -39.1 177.6 [RO…H] and the Oi…Ni+4 distances [RO… N] in the optimized
16
Gly -58.7 -31.9 174.7 structure of a R-helical H-(Ala-Gly)9-OH. (○) and (□) indi-
17
Ala -85.1 -33.9 -168.2 cate the Ala residue (Ala…Ala hydrogen-bond) and Gly
18
Gly -151.1 19.1 residue (Gly…Gly hydrogen-bond), respectively; (△) indi-
cates the 310-helix of the 1Ala…4Gly hydrogen-bond; (◇) indi-
cates the a R-helix-like hydrogen-bond of the 15Ala(C′
=O)…
18
Gly(OH ).
鎖二面角を Table 3 に示す.a R ヘリックスの中央部の主
鎖二面角(q, c の平均値)は Ala 残基が(-62°
, -43 °
),
Gly 残基が(- 62 °
, - 44 °
)で,両残基間で明確な違いは
見られなかった.この結果は aR ヘリックス形コポリペ
プチドの主鎖二面角は構成するアミノ酸残基の種類によ
らず基本的には一定であることを示唆している.これに
対し, H- (Ala-Gly )9 -OH の両末端部の主鎖二面角は H-
( Ala )18 -OH の値と比べ微妙に異なり,両末端部では構
成アミノ酸残基の性質により異なる二面角をとることが
示唆された.
次に,主鎖の原子間距離を比較すると, Ala 残基と
Gly 残基との間で違いは全く見られなかった.さらに,
結合角∠N-C a-C ′に着目すると,Ala 残基(約 111.9°
)と
Gly 残基(約 113.4°
)の間に僅かではあるが差が確認され
た.また, H- ( Ala-Gly )9 -OH の Ala 残基の∠ N-C a-C ′ Figure 6. Plots of angle Ci′ =O…H i+ 4 against angle Oi…
値は, H-(Ala )18-OH の値と一致し,隣接アミノ酸残基 H-Ni+4 in the most probable hydrogen-bond angles of the
optimized structure of a R-helical H-(Ala-Gly)9-OH. (○) and
による相違は見られなかった.
(□) indicate the Ala residue (Ala…Ala hydrogen-bond) and
3.3.3 a R へリックス形 H-(Ala-Gly)9-OH の水素結合 Gly residue (Gly…Gly hydrogen-bond), respectively; (△)
パラメーター indicates the 310-helix of the 1Ala…4Gly hydrogen-bond; (◇)
a R へリックス形 H-(Ala-Gly )9 -OH の最適化構造にお indicates the a R-helix-like hydrogen-bond of the 15Ala(Ci′
=O)
…18Gly(OH).
ける各水素結合パラメーターについて考察する,水素結
合距離(RO…H と RO…N の関係)を Figure 5 に,水素結合
角(∠N-H…O と∠C′
=O…H の関係)を Figure 6 にそれ 適化構造と異なる点は両末端の水素結合である. N 末
ぞれ示す. 端 に 着 目 す る と , H- ( Ala )18 -OH で は 1Ala C ′
=O と
4
第一に, H- ( Ala-Gly )9 -OH の最適化構造の全体的な Ala N-H で水素結合した 310 へリックス,および 1Ala
水素結合部位を見る限り,末端の一部を除いて, H- = O と 5Ala N-H で水素結合した a R へリックスを共
C′
(Ala )18 -OH と基本的に一致しており,a R へリックス構 有する部位が存在するが, H- ( Ala-Gly )9 -OH の最適化
造が維持されていることがわかる.H- (Ala )18 -OH の最 構造では 1Ala C ′
= O と 4Gly N-H の水素結合による 310
Table 4. Mean values of 1H, 13C and 15N isotropic chemical shifts of typical optimized aR-helical H-(Ala-Gly)9-OH polypeptide, and ex-
perimental chemical shift values measured using high-resolution solid-state NMR
H-(Ala-Gly)9-OH 176.30 53.50 12.23 101.15 4.22 1.61 8.04 171.56 43.87 84.45 3.88 3.67 8.09
Calculated
H-(Ala)18-OH 176.15 53.29 12.14 98.80 4.16 1.64 7.84
(Ala)n 177.0 53.2 15.6
19)
176.8 171.7
31)
176.6 53.3 15.8
11)~ 14)
98.8
17)~ 19),30)
Measured 176.4 52.4 14.9 98.6 3.9 1.4
N a) 17),18),31)
(Ala )n 4.0 1.4 8.0
(Ala, GlyN)nb) 177.2 53.5 16.1 172.0 45.0 84.2 15)
へリックスが存在するのみで,1Ala C ′
=O と 5Ala N-H このように, H- ( Ala-Gly )9 -OH では Ala 残基と Gly
での水素結合は形成していない.また,C 末端に着目す 残基の主鎖二面角に明確な違いは見られなかったが,水
ると, H- ( Ala )18 -OH では 15Ala C ′
= O は水素結合を形 素結合角と水素結合二面角など水素結合パラメーターに
成していないのに対し, H- ( Ala-Gly )9 -OH においては おいては残基の種類により明確な違いが現れた.今後さ
15 18
Ala C′
= O は Gly O-H と水素結合を形成する.以上 らに種々のアミノ酸残基に対する水素結合パラメーター
の結果は,H-(Ala)18-OH と H-(Ala-Gly)9-OH の両者の の特性を明らかにする必要がある.
構造特性の違いと考えられるが,この詳細については現 3.3.4 aR へリックス形 H-(Ala-Gly )9-OH の計算化学
在検討中である. シフト値
第二に,水素結合距離を見ると,aR へリックス形 H- コポリペプチド H- ( Ala-Gly )9 -OH の最適化構造にお
( Ala-Gly )9 -OH で は Ala 残 基 間 水 素 結 合 距 離 (2i-1 Ala ける 1H, 13C, 15N の各計算化学シフト値と,過去の研究
= O と 2i+3Ala N-H ,ただし i ≧ 1 )と Gly 残基間水素
C′ における実測値を Table 4 にまとめた.これらの計算化
2i 2i+4
結合距離( Gly C ′
=O と Gly N-H ,ただし i ≧ 1 )の 学シフト値は,先述のように GIAO-CHF 法により算出
みで構成され,両者の間に差は見られなかった.また, した遮蔽値を基準に補正したものである.さらに,以下
この場合には,Ala と Gly 残基間の水素結合は存在しな の考察で用いる化学シフト値は,典型的な aR へリック
いことがわかる.そして Figure 5 に示すように,水素 ス構造を形成している最適化構造の中心部分 7 番目 Ala
結合距離 RO…H と RO…N の間には直線関係が成り立つこ 残基から 12 番目 Gly 残基までの平均値である.
とを明らかにした.これにより H-(Ala)18-OH の場合と 初めに,13 C 計算化学シフト値は Ala 残基と Gly 残基
同様に, RO…H と RO…N の相関関係が得られる.一方, で明確な違いを示し, aR へリックス構造におけるアミ
その水素結合角と水素結合二面角は Ala … Ala 残基と ノ酸残基の特性値が得られた.カルボニル C ′
= O の計
Gly … Gly 残基との間で僅かな差が観察された( Figure 算値では, Ala 残基 176.30 ppm と Gly 残基 171.56 ppm
6 ).安定な aR へリックスの中心部分における水素結合 が得られた.これらを aR へリックス形ポリペプチドの
角を見ると,∠ N-H … O は Ala … Ala 残基で約 163.6 °
, 実測値, Ala 残基の C ′
= O ( 176.9 ppm )および Gly 残基
Gly … Gly 残基では約 160.7 °
となり,∠ C ′
= O … H では =O(172.0 ppm15)),と非常に良く一致する.また,
の C′
Ala…Ala 残基で約 151.0°
であるのに対して Gly…Gly 残 C a の 計 算 値 , Ala 残 基 の 53.50 ppm, Gly 残 基 の 43.87
基 で は 148.3 °
となリ,両者の差はいずれも約 3°
あっ ppm は, a R へリックス形ポリペプチドの実測値すなわ
た.一方,N 末端の 310 ヘリックス部分における∠N-H ち Ala 残基( 53.1 ppm )および Gly 残基( 45.0 ppm15) )と
… O = 129 °
, ∠C′ は aR ヘリックス部分と
= O …H =160 ° ほぼ一致する.一方,Ala 残基の側鎖 Cb の計算値 12.23
は明らかに異なり,二次構造を反映していると考えられ ppm は, H- ( Ala )18 -OH の最適化構造の Cb 計算化学シ
る.また,水素結合二面角∠ C ′
= O … H-N は Ala … Ala フト値( 12.1 ppm )とよく一致する.以上の結果から,
残基で 150 °
付近であるのに対して Gly … Gly 残基では ホモポリペプチドとコポリペプチド間における 13C 化学
160°
付近と差が見られた. シフトは着目するアミノ酸残基の種類とコンホメーショ
ンに依存し,隣接アミノ酸残基の種類にはほとんど依存 まなアミノ酸残基が連なる天然タンパク質に対してもこ
しないことが量子化学の計算結果でも明らかになった. の一連の研究は適用できることが示された.したがっ
ただし,C b 化学シフト値は aR へリックス鎖の外側に位 て,今後のタンパク質構造解析における量子化学計算の
置し分子間の影響を受けやすい部分であるので,厳密に 信頼性と有効性の一端を証明できたと言えよう.
評価するためには分子間の影響を考慮したさらなる研究
4 量子化学計算による aR ヘリックス形 Pro 残基
を行う必要がある.
含有ポリペプチドの構造最適化と遮蔽値計算35)
次に,アミド窒素 N の化学シフト値に着目すると,
これは主鎖コンホメーション,アミノ酸残基の種類およ 4.1 緒言
び隣接アミノ酸残基の影響が強く反映されることが過去 2 および 3 章において,精密な量子化学計算を用いて
の研究で判明している11)~16).したがってここでは,前 aR へリックス形ポリペプチド H- ( Ala )18 -OH および H-
章のホモポリペプチドでは明らかにできなかった Ala (Ala-Gly)9-OH の最適化構造を算出し,それぞれの二次
残基が Gly 残基から受ける影響や Gly 残基が Ala 残基 構造パラメーターを解析し,その有効性を明らかにした.
から受ける影響を評価する. 本章では, 20 種類の標準アミノ酸の中で極めて特異的
まず,Ala 残基の 15N 計算化学シフト値は平均 101.15 な構造を有する L-プロリン(Pro)残基の特性について検
ppm で , こ れ は ホ モ ポ リ ペ プ チ ド H- ( Ala )18 -OH の 証する.L-プロリンは第二級アミノ酸(イミノ酸)である
98.80 ppm と比べ明らかに異なる.両者の相違は,主鎖 ため,Pro 残基は他のアミノ酸残基とは異なり水素結合
コンホメーションはいずれも aR へリックス形 Ala 残基 に関与するアミド基を持たない.さらに,主鎖と側鎖が
15
の N 計算化学シフト値であることから,隣接するアミ ピロリジン環によって固定され61)~67),このため,主鎖
ノ酸残基の違いによる効果であると考えられる.そこで 二面角 q がかなり制限され,立体障害も大きい.した
Table 4 に 示 し た -Gly-Ala- 配 列 を有 す る H- ( Phe-Leu- がって,タンパク質の中では Pro 残基はこれまで扱っ
Ala )2 -Phe-LeuC-Ala-Phe-Gly-AlaN- ( Phe-Leu-Ala )2 -OH てきた系とは異なり,むしろ aR へリックス構造を壊す
の 15N CP-MAS NMR スペクトルを測定した結果, Gly 傾向が強く,Pro 残基で途切れてしまうことになる68).
N
残 基 に 隣 接 す る Ala 残 基 の 実 測 値 は 101.8 ppm で あ このような特異性を有する Pro 残基が aR へリックス
り,この値は計算化学シフト値と非常によく一致した. に巻き込まれた構造が安定に存在するかどうかは興味深
続 い て , Gly 残 基 の 15N 計 算 化 学 シ フ ト 値 は 平 均 い問題であり,この問題を理論計算と実験の両面から検
84.45 ppm で,これは Ala 残基の影響を受けた Gly 残基 証することは意義深い.
の 15N 化学シフト値である.Ala 残基の場合と同様に, 本章では,第一に,この特異な環構造を持つ Pro 残
隣接 Ala 残基の影響を受けた Gly 残基の NMR 実測値 基 が aR へ リ ッ ク ス 形 中 に 導 入 さ れ た H- ( Ala )8 -Pro-
15)
は 84.2 ppm であり,ここでも計算値と実測値が一致 ( Ala )9 -OH のとりうる安定構造とその周囲残基の二次
する結果が得られた. 構造特性を量子化学計算により解明する.同時に得られ
最後にアミドプロトン HN に関して計算化学シフト値 た最適化構造における遮蔽値計算を行い,13C, 15N 核の
を Gly 残基と Ala 残基で比較してみると,両者の間で 計算化学シフト値を得る.第二に,安定な aR へリック
ほとんど差が見られなかった.ペプチド結合を形成する ス構造をとる H-(Phe-Leu-Ala)6-OH(ただし,Phe :L-
カルボニル炭素やアミド窒素が明確な変化を示す中,ア フェニルアラニン残基Leu : L-ロイシン残基Ala : L-
ミドプロトンがほとんど変化しないのは特徴的である. アラニン残基)の中央部に Pro 残基を導入した試料 H-
以上のように本章では,コポリペプチド H-(Ala-Gly)9- ( Phe-Leu-Ala )3 -PheC-Pro-AlaN- ( Phe-Leu-Ala )2 -OH
OH の最適化構造を計算し,それぞれのアミノ酸残基に ( FLA-11P と略す.ただし, PheC : ( 1-13C )標識 L- フェ
特徴的な二次構造特性を明らかにすることができた.ま ニルアラニン残基AlaN : (2-15N)標識 L-アラニン残基)
た,典型的な aR へリックス部分における主鎖二面角 を合成し,その安定構造を固体高分解能 13C および 15N
は,Ala 残基と Gly 残基の間でほぼ一致したのに対し, NMR 測定により検証する.
化学シフト値は明確に異なることが明らかになった.こ 4.2 実験
の結果は NMR による主鎖部の実測の化学シフト値とも 4.2.1 計算方法
よく一致することから,今回の計算の信頼性が二次構造 計算に用いる aR ヘリックス形モデルポリペプチドと
に関して非常に高いことが強く示唆された.また,2 章 して H- (Ala )8 -Pro- (Ala )9 -OH を分子設計し,初期構造
におけるホモポリペプチド H-(Ala)18-OH に続き,コポ パラメータとして Ala 残基については( q, c )=(- 57 °
,
リペプチドに対して密度汎関数法を導入し,最適化構造 - 47 °
) , Pro 残基についてはあらかじめエネルギー計
を計算し,構造パラメーターや計算化学シフト値の算出 算によって得た値( q, c )=(- 61 °
, 150 °
)および(- 61 °
,
に成功し,実測値と良い一致を示したことから,さまざ -30°
)を採用し,ピロリジン環の環構造と組合せて,次
Figure 9. The optimized structure of No. 3 H-(Ala)8-Pro-(Ala)9-OH (Included a R-helix structure). (Proc=
-35.7° , ring conformation: Up).
二種類に大別されることを見出した.ここではそれら最 ), (-77.1 °
75.4 ° , 80.1 °
)であるのに対し,巻き込まれた
適化構造の詳細について考察する. 構造( No. 3 と No. 4 )ではそれぞれ(- 62.4 °
, - 35.7 °
),
4.3.2 H-(Ala)8-Pro-(Ala)9-OH のコンホメーション (-64.6°
, -33.1°
)が得られた.
H- ( Ala )8 -Pro- ( Ala )9 -OH の最適化構造の主鎖二面角 この結果から,折れ曲がり構造と巻き込まれた構造で
(q, c)について見ると,「折れ曲がり構造」と「巻き込ま は Pro 残 基 の 二 面 角 c が 大 き く 異 な り , こ の 角 度 が
れた構造」との間で Pro 残基周辺の構造に特徴的な変化 Pro 残基の二次構造を決定し,分子全体の構造を大きく
が現れている.すなわち,Pro 残基の二面角(q, c)は, 変化させる重要な部分であることがわかった.この二面
折れ曲がり構造(No. 1 と No. 2 )ではそれぞれ(-79.0 °
, 角 c の変化によって主鎖の方向が大きく変わり, c が
Figure 10. The optimized structure of No. 4 H-(Ala)8-Pro-(Ala)9-OH (Included a R-helix structure). (Proc=
-33.1° , ring conformation: Down).
80 °
付近の場合,主鎖は Pro 残基付近で方向を変え,折 曲がり構造では aR-へリックスから大きく外れた二面角
れ曲がる方向に伸びることになる.一方, c が- 35 °
付 が多く見られ,しかもそれらは残基番号によってさまざ
近の場合,主鎖は aR へリックス鎖と同じ方向に伸びる. まな二面角をとることが明らかとなった.
このことによって Pro 残基が aR へリックスに巻き込ま 次に,各最適化構造の全エネルギーについて考察する
れた構造が安定化されると考えられる. と,折れ曲がり構造と巻き込まれた構造との間でエネル
また,最適化構造の環コンホメーションは次のような ギー値に明確な違いが見られた.エネルギー値が最も低
結果を示した. い最適化構造は巻き込まれた構造 No. 3 ( 0 kcal / mol と
No. 1Up 型(-10°
, 29°
, -37°
, 33°
) する)であるが,もう一つの巻き込まれた構造 No. 4(+
No. 2Down 型(28°
, -37°
, 31°
, -14°
) 0.6 kcal / mol )と エ ネ ル ギ ー 値 の 差 は 非 常 に 小 さ か っ
No. 3Up 型(-25°
, 38°
, -36°
, 21°
) た.しかし,折れ曲がり構造である No. 1 (+ 9.4 kcal /
No. 4Down 型(20°
, -35°
, 36°
, -24°
) mol )と No. 2 (+ 9.3 kcal / mol )は最安定構造 No. 3 との
この結果は,Pro 残基の環コンホメーションは Up 型, エネルギー差が大きく,この結果から折れ曲り構造は巻
Down 型のそれぞれが安定であり,環コンホメーション き込まれた構造よりかなり不安定であることが明らかと
の違いが主鎖コンホメーションに大きく依存するもので なった.ここで,No. 3 と No. 4 の巻き込まれた構造に
はないことを示している.このように,分子全体の二次 ついて詳しく調べてみると,両者はエネルギー的には僅
構造が大きく変化しても, Pro 残基の環構造における 差であるが,水素結合部位に若干の相違が見られ,この
Up と Down 型の変化は見られず,側鎖二面角をわずか 違いは Pro 残基の環構造の違いに起因すると考えられ
に変化させることで安定化していることは興味深い結果 る.また,折れ曲がり構造について詳しく調べてみる
といえる.また,Pro 残基はピロリジン環によって q 角 と,両者間で環型の違いに伴う水素結合部位およびへ
が制限されているにも関らず,その主鎖二面角 q, c の リックス軸方向の折れ曲がりの度合いにわずかな違いが
安定領域が aR ヘリックス領域に存在し,Pro 残基が aR 生じていることがわかる.このように,環コンホメー
ヘリックスに巻き込まれた安定構造をとり得るという計 ションの違いでこれらのような特徴が出ることは非常に
算結果は驚くに値する. 興味深い結果である.
ここまでは Pro 残基に注目し,その部分の構造特性 4.3.3 H- (Ala )8 -Pro- ( Ala )9 -OH の水素結合パラメー
と全体構造の相関を見てきたが,次に,分子全体の構成 ター
アミノ酸残基毎の主鎖二面角(q, c)について考察する. H- ( Ala )8 -Pro- (Ala )9 -OH の最適化構造におけるそれ
巻き込まれた構造では 2 章で述べた aR へリックス形 H- ぞれの水素結合様式を見ると,折れ曲がり構造では,全
( Ala )18 -OH における各 Ala 残基の( q, c )とほぼ同様な 体的に aR へリックスの水素結合が切断され,数か所の
値を示すことから,規則的 aR へリックス構造特有の(q, み残存する程度となっていることがわかる. aR へリッ
c )を維持していることが明らかとなった.一方,折れ クスに代わって 310 へリックスが大部分を占め,特に
Table 5. Calculated 13C and 15N chemical shifts of 8Ala, 9Pro and 10Ala residues in various optimized models and observed 13C and 15N
chemical shift values of FLA-11P, Poly(Ala), and Poly(Phe) by CP-MAS NMR measurements
10
PheC 残基の実測値 171.4 ppm について考察する.一 隣接する 10Ala N の計算化学シフト値と比較する必要が
般にグリシン残基と L- プロリン残基を除く典型的な aR ある.このように,15N CP-MAS NMR の測定結果は,
へリックス形の C ′
= O 化学シフト値は, 176 177 ppm H- (Ala )8 -Pro- (Ala )9 -OH の Pro 残基が巻き込まれた構
10)
に現れることが知られている .しかし, Table 5 に示 造,しかも Down 環構造 No. 4 である可能性が最も高
すように,典型的な aR へリックス形ポリ(L-フェニルア いことを示唆している.
ラニン)の C′
=O 化学シフト値は,ポリ(L-アラニン)の 今回の実験では行わなかったが, Table 5 に示した量
シフト値よりもおよそ 2 ppm 高磁場に現れることがわ 子化学計算の結果を見ると,本来は H-(Phe-Leu-Ala )3-
かる.この理由は Phe 残基の側鎖コンホメーションに Phe-Pro-Ala- ( Phe-Leu-Ala )2 -OH の Pro 残基の Ca ある
起因するものと考えられる.また,ここで最も注目すべ いは Cb を 13C 標識した試料を合成し NMR 構造解析を
き点は H-(Ala)8-Pro-(Ala )9-OH モデルの巻き込まれた 行うことにより,さらに確実な構造決定を行うことがで
8 C
構造をとる Ala の計算値( 174 ppm )は典型的な aR へ きることがわかる.
リックス形 Ala 残基の計算値(176 177 ppm )よりも約 2 このように, H- ( Ala )8 -Pro- ( Ala )9 -OH のような Pro
~ 3 ppm 高磁場側にシフトしていることである.した 残基を含む単純かつ大きな単分子モデルを分子設計し,
がって, FLA-11P の Pro 隣接 10Phe C ′
= O 化学シフト 精密な量子化学計算を行い,精密な最適化構造と計算遮
値( 171.4 ppm )が典型的な aR へリックス形 Ala C ′
=O 蔽値を得ることが可能になったことは,今後の量子化学
より 4~5 ppm 高磁場シフトする実験結果は Pro 残基が 計算および高分子化合物の詳細な二次構造解析に大きな
巻き込まれた構造をとることによるシフト差および Phe 成果をもたらすものと考える.本研究では,構造が未知
残基と Ala 残基の違いによるシフト差の両方を考慮す であった試料の構造予測も,モデル化合物の量子化学計
ることにより無理なく説明できる.続いて, Figure 12 算と固体高分解能 NMR の実測とを併用することで可能
15
に示した FLA-11P の N CP-MAS NMR スペクトルに になる実例を示した.今後のペプチド,タンパク質の構
ついて考察する.実測の 12AlaN 残基の 15N 化学シフト 造研究の新しい指標になる結果であると考えている.
値( 99.1 ppm )は aR へリックス形ポリ( L- アラニン)の値
5 おわりに
( 98.8 ppm ) と ほ ぼ 一 致 す る . し か し , N 化 学 シ フ ト
は,その N 側隣接残基の影響を受けることが明らかに 本研究では,高分子量ポリペプチドの単純なモデル分
なっているので11)~15) , FLA-11P の 12AlaN 化学シフト 子を設計し,精密な量子化学計算を行い,最適化構造を
値は H- ( Ala )8 -Pro- ( Ala )9 -OH の最適化構造の 9Pro に 得ることによって,精密な二次構造パラメーターを得る
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Precise Structural Analysis of Polypeptides by Quantum Chemical Calculation
Hiroyuki SOUMA1, Hiromichi KUROSU2, and Akira SHOJI1
1
Department of Chemistry and Chemical Biology, Graduate School of Engineering, Gunma University (151, Tenjin-cho, Kiryu 376
8515, Japan)
2Graduate School of Humanities and Sciences, Nara Women's University (Kitauoya-Nishimachi, Nara 6308506, Japan)
We computed the optimized structure of aR-helical polypeptides, H-(Ala)18-OH and H-(Ala-Gly)9-OH, based on the molecular orbital
calculation with density functional theory (DFT/6-31G(d)), and then the 1H, 13C, 15N and 17O nuclear shieldings of those optimized struc-
tures based on the GIAO-CHF method with B3LYP/6-311G(d, p). In conclusion, we demonstrated that the precise quantum chemical cal-
culation is extremely useful for the secondary and tertiary structural analysis of some proteins and polypeptides. We demonstrated con-
cretely that the precise secondary structural parameters (q=-62° , c=-43° ), hydrogen bond parameters and the calculated isotropic 13C
and 15N chemical shifts of the main-chain for the optimized structures were greatly in good agreement with the data by X-ray (or neutron)
diffraction analysis and the chemical shifts by high-resolution solid-state NMR. Furthermore, we successfully demonstrated that the L-pro-
line residue is certainly included in the aR-helix conformation by the quantum chemical calculation and by the 13C and 15N NMR chemical
shifts.
KEY WORDS Quantum Chemical Calculation / Density Functional Theory / High-Resolution Solid-State NMR / aR-Helix /
Polypeptide / Copolypeptide / L-Alanine / Glycine / L-Proline /
(Received September 3, 2009: Accepted October 13, 2009) [Kobunshi Ronbunshu, 67, 10―27 (2010)]
2010, The Society of Polymer Science, Japan