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2017 12 14
2017 12 14
あの場で奏でられる音楽、そして単調な祈りの言葉を前にすると、
どうしても眠たくなってしまう。
だけど、いけない!こんな時に居眠りなんてしてしまったら、
また神父さまにお小言を言われてしまう。
「お前は主の御言葉を前にして、そんな失礼をするのですか?
その態度を悔い改めなくては、この家から追い出され、いつか罰を受けますよ。」
生まれて間もなく両親を亡くし、
幼い頃、兄さんと一緒にこのノートルダム寺院へと引き取られた。
そして、物心がつく前、本当に小さい頃から、こんな風に神父さまに
すりこまれてきたのだ。
幼い頃の僕は、今よりずっと素直だったから、その言葉に怯えて、
次のミサでは今度こそ、同じ間違いはせまい、と心に誓っていた。
けれどもいざ気を引き締めてミサへ向かうと、やはり眠たくなってしまうのだ。
悪魔の誘惑には、到底かなわない。
そうして居眠りをしてしまうたびに、たとえその場に神父さまが居なくても、
あの時の言葉が思い出されて、罪悪感ばかりが募ってゆく。
そんな日々を繰り返すうち、僕も大きくなり、
そもそもが兄さんとは真逆で、自分には信仰心そのものがかけらもないのだと、
気づいてしまった。
なぜ信じてさえいない教えを前に、罪悪感ばかりに苦しまねばならないのだろう?
次第に、大嫌いなミサに出ることをやめ、
日ごと夜ごと、
外の世界へと遊び歩くようになった僕。
もちろん、神父さまも、そして兄さんさえ、黙ったままのはずがない。
そうしてとうとう言い渡された破門。
大聖堂から追い出され、僕と彼女は二人、あの町からさえも離れて、
遠く遠くの未知なる世界へと、夢と安らぎを求めて踏み出した。