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僕はミサが嫌いだ。

あの場で奏でられる音楽、そして単調な祈りの言葉を前にすると、

どうしても眠たくなってしまう。

だけど、いけない!こんな時に居眠りなんてしてしまったら、

また神父さまにお小言を言われてしまう。

「お前は主の御言葉を前にして、そんな失礼をするのですか?

その態度を悔い改めなくては、この家から追い出され、いつか罰を受けますよ。」

生まれて間もなく両親を亡くし、

幼い頃、兄さんと一緒にこのノートルダム寺院へと引き取られた。

そして、物心がつく前、本当に小さい頃から、こんな風に神父さまに

すりこまれてきたのだ。

幼い頃の僕は、今よりずっと素直だったから、その言葉に怯えて、

次のミサでは今度こそ、同じ間違いはせまい、と心に誓っていた。

けれどもいざ気を引き締めてミサへ向かうと、やはり眠たくなってしまうのだ。

悪魔の誘惑には、到底かなわない。

そうして居眠りをしてしまうたびに、たとえその場に神父さまが居なくても、

あの時の言葉が思い出されて、罪悪感ばかりが募ってゆく。
そんな日々を繰り返すうち、僕も大きくなり、

そもそもが兄さんとは真逆で、自分には信仰心そのものがかけらもないのだと、

気づいてしまった。

なぜ信じてさえいない教えを前に、罪悪感ばかりに苦しまねばならないのだろう?

次第に、大嫌いなミサに出ることをやめ、

日ごと夜ごと、

外の世界へと遊び歩くようになった僕。

もちろん、神父さまも、そして兄さんさえ、黙ったままのはずがない。

そうしてとうとう言い渡された破門。

大聖堂から追い出され、僕と彼女は二人、あの町からさえも離れて、

遠く遠くの未知なる世界へと、夢と安らぎを求めて踏み出した。

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