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航空装備システム

アビオニクス概要 レポート

機会航空工学科 航空宇宙工学コース
3年生 学籍番号:081640597
氏名:Jang H.G.

本レポートでは、航空装備システム、特にアビオニクスの技術の未来について述べる。その題材とし
て、ADS-B をはじめとする将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)を選択し、航
空交通システムの未来について概観することを目的とする。

1. なぜ ADS-B 及び CARATS なのか(選択した背景)1)

航空機交通産業は日々、その規模が拡大していき、また複雑化されている。これに対して、航空機交通システム
の技術は交通産業の進展速度に追いつくことができず、その結果、旅客機の出発遅延・渋滞などの問題がしばし
ば発生している。この問題は、航空機を利用する側である乗客における不便さの元となっている。実際、筆者自身も
帰国(韓国)する際に旅客機を利用しているが、航空機が定時に出発することは稀にあると感じるほどだ。一方、
空港及び航空社側は遅延により、多くのコストが発生している。
なぜ、上記の問題に航空交通システムは対処できてないだろうか。その理由としては、地上ではなく、空を飛ぶ航
空機産業特性上、万が一飛行中問題が発生すると、大惨事になるため、安全が非常に重要である。その結果、
問題を起こすような要因はあらかじめ排除しており、故に誤解・誤用を招くような新技術の導入は非常に難しいた
め、保守的である。一例で、航空機産業では未だに国際単位系(SI 単位系)を採択しておらず、米国慣用単位(ヤ
ード・ポンド法)を使っている。
さて、この問題を解決すべく、登場したのが CARATS であり、その一環として誕生した新技術が ADS-B である。ま
ず ADS-B(Automatic Dependent Surveillance - Broadcast)とは何かについて簡単に述べたい。ADS-B とは、
地上管制の補助、及び空中衝突防止のため用いられる技術で、その仕組みは、次の通りである。
次に、CARATS について簡単に説明する。CARATS(キャラッツ)とは、Collaborative Actions for Renovation
of Air Traffic Systems: 航空交通システムの変革に向けた協調的行動の略語で、

上に示す図を目標として掲げている。この CARATS がどのように進まれ、また、ADS-B が今後どのような役割を果た


すかについて知るためには、CARATS のはしりとなったアメリカの NextGen プロジェクトについて知らなければならな
い。

2. NextGenとはどんなものであるか(航空交通システムの未来) 2) 3) 4)

Next Generation Air Transportation System (NextGen)とは、アメリカの FAA により現在開発の最中の航


空交通システムの現代化プロジェクトである。2007 に発足し、プロジェクトで考案された主要な要素を 2025 までに
全面実施を目安としている。その目標として掲げているのは、上図(CARATS)と同様である。FAA は国際的に航
空交通管理システムを確立させようとしており、実際 2010 年には、欧州の SESAR 連合し、共同開発・研究計画
を立てた。この巨大な流れを把握することで、今後の航空交通システムの未来及び、アビオニクスの未来技術が分か
ると考えられる。具体的に NextGen はどのように構成されているのだろうか。NextGen を構成している要素について
調べ、まとめていきたい。
まず、要素全般的に共通する特徴を述べたい。NextGen は、従来の地上をベースする航空管制システムから、
衛星通信をベースとする管制システムへの移行で特徴づけられる。よって、それを構成している要素もその特徴を受け
持っており、すべての要素が統合されてはじめて上述したシステムの移行が果たされるのである。以下に NextGen を
構成している要素を並べる。本レポートでは、要素4まで簡単に説明することにしたい。
 要素1:通信
 要素2:航法
 要素3:サーベイランス(管制)
 要素4:オートメーション(自動化)
 要素5:統合と情報管理
 要素6:多重滑走路運営と分離管理
 要素7:発展した着陸システム
 要素8:エアポートマッピング
 要素9:環境とエネルギー
 要素10:安全
 要素11:企業と連携
が NextGen を構成している。
要素1:通信から簡単に説明していきたい。通信要素はさらにデータコミュニケーションと NAS ボイスシステムとい
う技術で構成されている。
データコミュニケーションは従来のパイロットと管制室との音声による通信を補助するためのもので、文字化されたデ
ジタルメッセージを用いる。音声通信とは異なり、意図した特定の航空機としかコミュニケーションを行わず、音声通
信における不具合(混雑によるものや人為的なもの)を解消してくれる。データコミュニケーションから、より正確でか
つ迅速な対応が可能となる(滑走路変更による離陸の遅延をなくす)。
NAS ボイスシステムはイントラネットプロトコル上、音声通信を行う技術である。この技術は従来の地上の管制室
による音声通信部分をデジタルに FAA 通信インフラで処理できるようにし、より低コストかつ信頼性のある管制が可
能となる。
要素2:航法は PBN(Performance Based Navigation)の技術により構成されており、PBN は一つの計
器飛行方式(IFR)であり、また RNAV と RNP を含む。PBN は主に衛星対応技術を使用し、従来の地上ベース
航法における物理的な制約から解放された、正確で再現可能で予測可能な 3 次元飛行経路を構築する。
要素3:サーベイランス(管制)は上述した ADS-B で構成されており、アメリカでは自国内の領空を飛行する
航空機について、2020 年1月までに ADS-B 装置を装備することを要求している。ADS-B は自動化システムにも
関わっている。ADS-B を用いることによって、機体同士の空中衝突を防止できるため、飛行経路をよりぎっしり詰め
ることができる。その結果より効率的な管制が可能である。また、その応用として、複数の機体の同時離着陸を実
現できる。
最後に、要素4:オートメーション(自動化)についても簡単に触れることにしたい。この要素はいろんな技術で
構成されているが、その中でも特に Air Traffic Control Computer Stations について述べたい。この技術は、En
Route Automation Modernization (ERAM)という飛行経路自動管理システムで実装されている。この技術は同
時に 1900 余台の航空機を同時に追跡し、巡航高度を調整することで衝突を防止し、最適な飛行経路マップを作
る。これにより気象変化・渋滞などにより柔軟に対処できる。
上述の要素4まで調べる中、何か共通するパターンがあるように思える。それは現航空交通システムとの融合であ
る。つまり、新技術は、従来の技術を代替するというよりは、より有益であろうと考えられる機能を追加し、補助する
といった程度である。航空機産業の特性上、最初に述べた通り、非常に保守的であるため従来のシステムを丸ごと
新システムに革新することはできない。よって、上述の NextGen は現システムを収容する形で長期的な移行を測って
いると思われる。実際 FAA の The Future of NAS という文書を見るとその旨が書かれている。
3. まとめ
前述まで、航空交通システムの未来について調べあげ、特に NextGen プロジェクトを構成する要素とは何があ
り、それがもたらす効果について簡単にまとめたのである。本レポートでは航空交通システムの未来について概観であっ
たため、NextGen の詳細までは触れず、概略したのである。 NextGen プロジェクトは従来の地上ベースの航空交
通システムを最終的に衛星ベースに移行することが大きな目標であり、まずは従来のシステムを収容でき、将来開発
される新技術を既存のシステムと衝突することなく、容易に受け入れられるよう新しいシステムプラットフォームを作るこ
とから始まる。その根本となった考え方は、基本的に従来までハードウェアをベースとする管制システムから、ソフトウェ
ア(プログラミング)への移行することで、より柔軟な対応及び自動化を図っているものである。それに伴って、航空
機産業界もソフトウェア中心へと移行し、アビオニクスに対する重要性はこれまでとは愕然と異なる様相になりうると
考えられる。それは上述のシステムが一旦完成されると、これからは、進歩した技術がどんどん実業界に活かされて、
従来の人間の判断に依存する航空システムでは追いきれなくなるからである。

アビオニクス概要講義に関する感想
筆者は、つい2週間前まであるソフトウェアベンチャー企業でバイトとして働いていたのであるが、楽しんでいたバイトを
やめ、学業に集中することを選択したのである。その理由としては、もともと航空機にそれほど大きな関心を持たず、
大学 2 年次まで基礎数学や論理学に興味を持っていた。その繋がりで、プログラミングにも関心を持つようになり、ソ
フトウェアベンチャー企業で働くようになった次第であるが、3年になってからは航空宇宙工学コースの専門科目が本
格的に始まり、航空機に関する講義はよくわからないという状況に出くわしてしまった。自分がやりたいこととやらなけ
ればならないことの間で散々悩まされた挙句、自分が今よりわからないことをやって見ようと思い、航空工学の勉強
に励もうと決心した。決心はしたものの、勉強をしようとしても、なかなか興味が湧かず、今までも悩んでばっかりして
いた。しかし、本講義を受け、レポートを書くため色々調べる中で、自分が今までやってきたものが決して無駄な時間
ではなく、自分の専門である航空工学と統合されていくのだなと感じた。航空工学に対する新しいアプローチ方法を
知ったのである。これからも多方面にわたり、いろんなものを接し、それが今勉強している航空宇宙工学とどのようにつ
ながるのか想像しながら勉強を進めていくことで、自分がやりたかった形の勉強ができるのではないかと感じる。
参考文献
1) 国土交通省 「CARATS」 http://www.mlit.go.jp/common/000124208.pdf
2) FAA(2018) https://www.faa.gov/nextgen/
3) FAA (2016)「Future of The NAS」
https://www.faa.gov/nextgen/media/futureOfTheNAS.pdf
4) FAA (2016) 「NextGen Implementation」
https://www.faa.gov/nextgen/media/NextGen_Implementation_Plan-2016.pdf

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