You are on page 1of 4

ひ と

僕はあの女性の、一体何を欲しいというのだろうか?

僕は君のことが欲しい。

あの時は、思いのままを口にしたはずなのに、

冷静になってよくよく考えてみると、

それはとても可笑しな話で、

僕は一体あのひとの何を求めているのだろうか?

何かを欲しいと言った時、

それはまるで物を欲しているようで、

けれども君はものなどではない、

生身の躰を持ったひと。

君を欲しいと言ったところで、

君もそうとは限らない。

君はとても魅力的だ。

その魅力にひきつけられて、

数多の男が言い寄るだろう。

彼らはきっと甘い言葉を

君に浴びせて、君を酔わせて、
密かに隠したその本心を

決して君に気づかせぬまま、

大きくひろい腕の中に

君の躰を抱くだろう。

けれども君よ気をつけたまえ。

君に見せない腹の奥底

奴らが真に欲しがるものは、

君の躰だけなのだから。

まるで物を欲するように、

僕は君を欲しいと言った。

けれども僕が求めるものは、

君のモノでも何でもない。

僕が欲しいただ一つのもの、

それは君の高貴な魂。

君がまばゆく輝く由来は、

その躰ではなく心にある。

初めて君に出会ったあの時、
僕は見事に射抜かれた。

その刹那から今この時まで、

そしておそらくこの先ずっと、

君こそ僕の心のあるじ。

どんなに遠く旅立とうとも、

いえ
帰る宇はいつでも変わらず、

僕の心は君のものだ。

僕は君の心が欲しい。

今なら迷わずこう言うだろう。

けれどもやっぱり言えないわけで、

だから僕はこう願うのだ。

あぁ、その心に触れられたのなら

せめて一瞬、ほんのひと時、

君の美しい瞳と心が、

僕のことだけじっと見つめて、

僕のことだけ思ってくれたというのなら、

僕は君に約束しよう。

どんなに永い時を経ようと、
僕の全ては君のものだと。

You might also like