Q:漢方って何？

漢方とは厳密には中国から伝わった医学を元に日本で発展した医学の事を言い、生薬と言われる漢方
薬を用いて治療するのが特徴です。実際は多少の違いはあれ、中国医学の考え方に基づいており、カナ
ダでは Chinese Herbal Medicine というのが一般的です。

Q:中国医学は西洋医学とどう違うの？
西洋医学は基本的には体をひとつひとつの独立した部品を集めた精密機械のように考え、病気をその
機械が故障したもののように捉えます。よってその壊れた部分を治す事に主眼が置かれます。それに対し
中国医学では、身体をそれぞれの部分が影響しあい相互依存したひとつのものとして全体的に捉え、そ
の依存関係のバランスが壊れると病気になると考えます。よって、治療の中心はそのバランスを正常な状
態に戻す事です。

Q:漢方薬と西洋医学の薬は何が違うの？

西洋薬は、基本的には直接的な症状を抑える薬を処方します。例えば、胃酸が出すぎている場合は胃
酸分泌を抑制する薬を出したり、頭痛がある場合頭痛薬を出すという具合です。中国医学では、胃酸
過多の例では胃酸が過度に出るに至った原因となる体全体のバランスの崩れを突き止め、そのバランス
を回復させるために役に立つ漢方薬を処方します。

Q:漢方薬って、何でできているの？
漢方薬は元々自然に存在するものを使っており、多くのものは一般の食材としても用いられています。例
えば、生姜やハッカなどは漢方薬なんです。その他動植物や鉱物なども使われています。本来はこれらを
煮出したものを摂取するのですが、それは不便なため、粉末化したものを摂取できるようになっており、そ
れをエキス製剤といいます。エキス製剤の見た目はほとんど西洋薬の粉薬と変わりません。
Q:どんな病気に使えるの？
どのような病気にでもほぼ使えます。ただ、漢方を使えば全ての病気が治る、という意味ではありません
し、得意不得意があります。例えば外科手術をした方が良い病気もあるし、西洋医学の薬で対応した
方が良い病気もあります。漢方が得意とするのは、西洋医学で長期間治療しているのになかなか治らな
いケースや症状はあるのに西洋医学では病名がつかないようなケースですが、風邪などにもよく効きます
よ。また西洋医学での治療と併用する事も出来ます。

Q: 私は偏頭痛を持っているけど、偏頭痛に効く漢方薬はあるの？
実は「偏頭痛」に効く漢方薬はありません。というと驚かせたりがっかりさせたりするかも知れませんが、漢
方薬であなたの偏頭痛を治療できない、という意味ではありません！実は、漢方では一般的に用いられ
る意味での「病気・症状」に対して薬を処方するのではないのです。偏頭痛の場合だと、偏頭痛を起こし
ている体のバランスの崩れの原因を突き止め、それに対して漢方薬を処方します。同じ偏頭痛という症状
が現れていても、それに至るバランスの崩れ方は色々あるので、山田さんの偏頭痛への処方と、同じ偏頭
痛持ちのジェームズさんへの処方が違う、という事も多いのです。

Q：例えば「風邪には葛根湯」というのも間違いなの？
その通りです。風邪でも様々なタイプがありますよね。例えば、ゾクゾクと寒気がして、首筋が痛くなるも
の、喉が痛くなって最初から暑くて熱がでるもの、汗をかいたりかかなかったり・・・それぞれのタイプで効く漢
方薬が違うだけでなく、間違った漢方薬を飲めば症状を悪化させる事もあるのです。日本で一般に普及
している「葛根湯」は、寒気がして汗はなく、さらに首筋が痛い、というようなタイプにはよく効きますが、他
のタイプには効かなかったり、悪化させる事もあるので注意が必要です。

Q: どのように自分の病気に合う漢方薬を見つければ良いの？
漢方や中学医学に興味があるのであれば、ご自分で基本的な知識を勉強されてみるのも良いかも知れ
ません。英語圏ではまだ一般向けの漢方に関する書籍などは少ないですが、日本の書籍には基本的な
事をわかりやすく説明したものもあります。でも、一番良いのは我々専門家・専門士に任せてもらう事で
す。私たちは学校で最低 3 年以上に渡り専門的に教育を受けており、様々なサインから体のバランスの
崩れを知り、一番合う漢方薬を処方する事ができます。是非専門士にご相談ください。

Q : 特に体調は悪くないのですが・・・？
身体症状が出たり、西洋医学で病名がつくような状態でなくとも、体が完全にバランスの取れた状態に
あるとは限りません。もしもバランスが崩れている場合、症状が出る前の早い段階で対応する事で、大き
な病気になったり、ひどい症状が出るのを防ぐことができます。特に体調に問題が無くても、健康診断のよ
うなつもりで自分の体の状態を知るために専門士に相談されてみるのも良いと思います。

Q：漢方薬に副作用はないの？
漢方薬は西洋薬と比べ重篤な副作用が出る事は少ないです。でも、食べ物に合うあわないがあったり、
アレルギーがあったりするのと同じように、ある漢方薬に体が合わなかったり、アレルギー症状が出るという
事もあります。また、正確に診断して体の状態に合った漢方薬でなければ、症状を悪化させてしまう事も
あります。このような点からも、ご自分で選ぶのではなく専門士にしっかり処方をしてもらう事をお勧めしま
す。

Q:どれくらい飲み続ける必要がありますか？
完全にバランスの取れた体の状態に戻るために必要な期間は、現在のバランスの崩れに至った期間とも
関連するので一概には言えません。ただ効果という面では、数週間から一か月程度飲めば体調の変化
を実感して頂けるはずです。徐々にバランスを戻し、最終的には漢方薬を必要としない体にするのが目標
です。これはあくまで慢性疾患の場合で、急性疾患の場合は正しく処方されれば、飲んで数時間程度
で効果が出ます。

Q:漢方薬を飲むにはどれくらいの値段がかかるの？
漢方に関してはクリニックや専門士によって値段が大きく異なります。漢方薬そのものが種類によって値
段が大きく異なる事も相まって、非常に分かりにくくなっています。参考の為に私が勤めるクリニックを例に
取ると、平均的な価格帯の漢方薬を飲み続ける場合、1 か月に大体＄150 程度とお考え下さい。月
単位で見ると少し高く感じるかも知れませんが、 一日当たりにすると＄５ですから、有名コーヒー店のカフ
ェラテを飲むのと同じ程度です。

Q: 保険は使えますか？
残念ながら OHIP は使えません。民間の保険では鍼灸には適応されるところが多くなってきています。同
じ中国医学として、将来的には漢方にも適応されるように期待しています。
Q：同じ中国医学という事は、漢方は鍼灸とも関係あるの？
はい、漢方も鍼灸も基本的には同じ考え方を元に発展した医学です。北米では多くの漢方専門家が
鍼灸治療も行います。もちろん漢方だけ、鍼灸だけでも効果はありますが、併用する事で効果が高まりま
す。

Q：専門家に見てもらうにはどうすれば良いの？
オンタリオ州では漢方や鍼灸を行うには免許が必要で、免許を発行し管理している団体があり、College
of Traditional Chinese Medicine Practitioners and Acupuncturists of Ontario(CTCMPAO) と言いま
す。CTCMPAO のウエブサイトには、免許を持った専門士のリストと、その専門士が働いているクリニックの
情報が記載されていますので、是非調べてみて下さい。また、ご自分で漢方専門士や鍼灸師を見つけた
場合、必ずその人たちが CTCMPAO に所属しているか上記ウエブサイトで確認してください。