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〈原 著〉

超高齢地域における高齢者心房細動の疫学

今中 俊爾

要 約 目的:日本の心房細動の疫学に関する報告は少ない.罹患率は,加齢によって増加するが,超高齢
地域を対象に,高齢者心房細動の罹患率を検討した.方法:京都府北端に位置する超高齢町を対象とした.
当診療所の診療圏内高齢化率は, 39.9% である. 65 歳以上を対象に, 平成 18 年 3 月から 1 年 10 カ月間に,
診療所に受診歴のある外来患者(診療所患者群)
,老人保健法により健康診断を受けた住民(心電図により
診断;健診群)
,およびインフルエンザ予防接種時に来院した住民(検脈により診断;検脈群)の 3 群を対
象とし,心房細動罹患者を抽出した.結果:診療圏内 65 歳以上の 81.2%(550 名)をスクリーニングでき
た.心房細動患者は,診療所患者群 419 名から 42 名,健診群 97 名から 2 名および検脈群 34 名からは見つ
からなかった.計 44 名,罹病率 8.0% であり,65 歳以上住民数に対しては 6.5% であった.年齢は 65∼94
歳,男性は 36.4%,慢性心房細動は 52.3%,であった.診療所患者群 42 名を対象に詳細に検討すると,非
弁膜性心房細動は 88.1%,高血圧は 71.4% に認めた.一過性脳虚血発作を含む脳梗塞は 8 例,19.0%,無症
候性心房細動は 10 例,23.8% であった.CHADS2 スコアーは,3 点以上に 37.8% が分布した.抗凝固療法
は 23 例,54.8%,抗不整脈療法は 15 例,35.7% に施行されていた.結論:超高齢地域の 65 歳以上高齢者
心房細動の罹患率は 8.0% と高率であり,脳梗塞などの高リスク群に属している.無症候性心房細動の存在
を念頭におき,高齢者心房細動患者の ADL,QOL を維持するために,適切な薬物療法を行うことは重要な
課題である.
Key words:心房細動,疫学,高齢者,無症候性心房細動
(日老医誌 2008;45:634―639)

各診療圏は地域的にもほぼ 2 分されている.その 1 つで
緒 言
ある伊根診療所の診療圏の人口構成は,町人口全体の
心房細動患者は,全死亡率が高く,医療費も高額であ 61.3%,65 歳以上比率は 39.9% である(表 1)
.この地
り,その治療法は,不整脈学の分野で最も重要かつ興味 域の人口移動は極めて少なく,この診療圏内の患者およ
あるテーマのひとつである.そのため,心房細動罹患率 び一般住民を対象として検討した.
の推計は,その治療のあり方を決める上で重要な課題で
方 法
あるが,わが国での疫学統計は極めて少ない.加えて,
無症候性心房細動の存在は,その推計をいっそう困難な 伊根診療所において,その診療圏内の平成 18 年 3 月
ものにしている.罹患率は,加齢によって増加するが, から平成 19 年 12 月の 1 年 10 カ月間に受診歴のある患
今回は超高齢地域を対象に,65 歳以上の高齢者心房細 者(継続的および一時的を問わない.他院との併診例を
動の罹患率および臨床的特徴を検討した. 含む.身体診察および心電図により診断.以下,診療所
患者群とする.
)および当診療所の受診歴はなく,老人
対 象
保健法により平成 18 年 6 月の健康診断を受けた住民(健
京都府北端に位置する伊根町を対象地域とした.伊根 康診断時の心電図により診断.以下,健診群.
),さらに,
町人口は 2,768 名,65 歳以上の高齢化率 40.9%(平成 19 インフルエンザ予防接種時(平成 19 年 11 月,12 月に
年 3 月末)の超高齢地域である.町内の医療施設は 2 つ 当診療所で施行)に来院した住民(前 2 群と重複せず,
の国民健康保険診療所のみであり,この 2 つの診療所の 接種の際の検脈により診断.以下,検脈群.
)の 3 群を
対象とし,心房細動罹患者を抽出した.心房細動症例の
S. Imanaka:伊根町国民健康保険伊根診療所 背景や合併症などの詳細な検討は,診療情報の十分な診
受付日:2008. 4. 17,採用日:2008. 6. 30 療所患者群(結果 2∼6)を対象とした.
高齢者心房細動の疫学 45 : 635

表 1 伊根町および伊根診療所診療圏内人口,対象者および心房細動罹患者

人口 6
5歳以上 検討対象 心房細動罹患者
伊根町 2
,76
8 1
,13
1 ― ―
伊根診療所
1
,69
7 6
77 5
50 4
4
診療圏
診療所患者群 4
19 4
2
健診群 97 2
検脈群 34 0

表 2 心房細動患者の内容

発作性 慢性 計
心房細動 2
1 2
3 4
4
年齢
65歳以上 7
5歳未満 8 7 1
5
75歳以上 8
5歳未満 9 1
1 2
0
85歳以上 4 5 9

男性 6 1
0 1
6
女性 1
5 1
3 2
8

図 1 心房細動患者の年齢別罹患率

心房細動は,発作性心房細動(発症し,停止を確認し
た.
)と慢性心房細動(1 年 10 カ月の期間に停止を確認
できない.厳密には,持続性心房細動を含む.
)に分類 以下の検討は,44 例中健診群の 2 例を除いて,診療
した.尚,健診群の心房細動は慢性と判定した. 所患者群 42 例を対象に行った.発作性 21 例(年齢 65∼
94 歳,男性 6 名,女性 15 名)
,慢性 21 例(年齢 66∼90
結 果
歳,男性 9 名,女性 12 名)である.
1.伊根診療所診療圏の人口概要および心房細動罹患 2.心房細動患者の特徴および基礎疾患(表 3)
者の内容 1 年 10 カ月の検討期間における新規発症は 42 名中 7
当診療所診療圏内の 65 歳以上人口は 677 名で,今回 名(16.7)男性 4 名,女性 3 名;発作性 5 名,慢性 2 名)
検討しえた 3 群の対象者数は 550 名であり,81.2% をス であり,年 3.8 人となった.非弁膜性心房細動(NVAF)
クリーニングできた.これら 3 群からの心房細動罹患者 と診断したのは 37 例(88.1%)であった.基礎疾患は,
数は 44 例であった.この罹患率は 8.0%,65 歳以上住 高血圧 30 例(71.4%)
,糖尿病 6 例(14.3%)
,心不全(病
民数 677 名に対しては 6.5% となった.対象の 3 群の内 歴から心不全が先行したと思われた症例)6 例(14.3%)

訳は,診療所患者群 419 名中 42 名(10.0%)
,健診群 97 虚血性心疾患 8 例(19.0%)
,甲状腺機能亢進症の既往 2
名中 2 名(2.1%)
,検脈群 34 名には見つからなかった 例(4.8%)
,BMI25 以上の肥満 12 例(28.6%)
,脂質異
(表 1)
. 常症 10 例(23.8%)であった.嗜好では,現在の飲酒
44 名の心房細動の分類(発作性,慢性)
,年齢,性を および喫煙は,それぞれ 8 例(19.0%)
,2 例(4.8%)で
表 2 に示した.年齢は 65 歳から 94 歳に分布し,男性は あった.
16 名,36.4%,慢性心房細動は 23 名,52.3% を占めた. 3.合併症,転帰(死亡)および日常生活動作(ADL)
年齢別の罹患者数および罹患率(
( )内はスクリーニン 一過性脳虚血発作(TIA)3 例,TIA を除く脳梗塞は
グ対象者数)は,65 歳以上 75 歳未満 15 例,6.2%(241 5 例の計 8 例(19.0%)
,心房細動発症後の心不全と思わ
名)
,75 歳 以 上 85 歳 未 満 20 名,8.6%(232 名)
,85 歳 れた症例は 3 例(7.1%)であった.観察期間内の死亡
以上 9 名,11.7%(77 名)であった(図 1,75 歳以上全 例は 3 例(脳出血例(男性,74 歳,発作性;抗凝固療
体では 10.0%)
. 法施行例,発症時 PT-INR データなし)
,脳梗塞後長期
45 : 636 日本老年医学会雑誌 45巻 6 号(2008:11)

表 3 心房細動患者の背景

虚血性 甲状腺機
患者数 新規発症 NVAF 高血圧 糖尿病 心不全
心疾患 能亢進症
心房細動 4
2 7 3
7 3
0 6 6 8 2
発作性 2
1 5 1
9 1
4 2 2 5 0
慢性 2
1 2 1
8 1
6 4 4 3 2
(平成 1
8年 3月~平成 1
9年 1
2月)(人)

表 4 心房細動患者の合併症および臨床的特徴

脳梗塞 転帰
心不全 無症候性
[TI
A] (死亡)
心房細動 8
[3] 3 1
0 3
発作性 3
[1] 1 5 2
慢性 5
[2] 2 5 1
(人)

臥床例(女性,93 歳,発作性)
,食道癌例(男性,85 歳,
慢性)
)であった(表 4)
.この 3 例を含む 42 例の ADL
は,いわゆる寝たきり状態は死亡例 93 歳の 1 例のみで
あった.他は,障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)
の判定基準で,J1 から A1 に属した.
4.CHADS2 スコアー(図 2)
NVAF37 例の CHADS2 スコアーは,発作性は 2 点,
慢性は 2 点および 3 点をピークとして分布した.3 点以
上は,発作性,慢性それぞれ 4 例,10 例,計 14 例(37.8%) 図 2 CHADS2スコアー((A)発作性(B)慢性)

であった.
5.無症候性心房細動の検討(表 4) 康診断を受けた住民群,さらにインフルエンザ予防接種
病歴から治療前において,無症候例は発作性 5 例,慢 のため来院した住民群を加え,診療圏内の 65 歳以上高
性 5 例,計 10 例(23.8%)であった.著者自身が 1 年 10 齢者の 81.2%,550 名をスクリーニングしたものである.
カ月間に確認した症例は,発作性 2 例,慢性 3 例,計 5 この規模の疫学的研究の場合,一般高齢者からのランダ
例(11.9%)であった. ムサンプリングであることの妥当性を示すことが必要で
6.治療内容(表 5) ある.つまり,例えば高血圧,糖尿病などの有病率を示
抗 凝 固 療 法 は,発 作 性 8 例,慢 性 15 例,計 23 例 すことが求められる.今回の検討では健康診断群,イン
(54.8%)
,抗血小板療法は,発作性 9 例,慢性 6 例,計 フルエンザ予防接種群をあわせて約 24% 含み,このよ
15 例(35.7%)で行われていた.抗不整脈剤は,発作性 うな情報を得ることができなかったが,今後考慮すべき
では 21 例中 14 例(66.7%)であった(慢性の 1 例は, 問題である.
ICD 挿入例)
.ARB!
ACEI は,発作性 8 例,慢性 13 例, 健診群では,97 名から 2 名が抽出された.1 名は,他
計 21 例(50.0%)
,スタチンは計 2 例(4.8%)で処方さ の医療機関に通院中であったが,もう 1 名は受診歴がな
れていた. かった.健康診断の受診者であり,保健師に対し指導を
要請した.健診者に対する教育,受診の指導は重要であ
考 察
り,その適切な指導法は今後の検討課題と思われた.ま
今回の検討は,環境および生活歴が比較的均一な一地 た,インフルエンザ予防接種のために来院し,検脈によ
域を対象に,診療所に受診歴のある外来患者群および健 りスクリーニングした群からは今回見つからなかった.
高齢者心房細動の疫学 45 : 637

表 5 心房細動患者の治療内容

抗凝固療法 抗血小板療法 抗不整脈剤 ARB/


ACE スタチン
心房細動 2
3 1
5 1
5 2
1 2
発作性 8 9 1
4 8 0
慢性 1
5 6 1 1
3 2
(人)

心房細動の検出に関しては,積極的なスクリーニングは, 心房細動の新規発症率については,久山町研究があ
6)
ルーチンより検出率を高くするという報告があるが,有 る .第 1 集団 1,610 人について 1961 年 か ら 1983 年 に
1)
益であるかの結論はでていないようである . かけて調査したもので,1,000 人年あたり 70 代男性で
日本の心房細動の疫学に関する報告は少ない.また, 約 7,女性約 3,80 代男性で約 16,女性約 4 であった.
わが国の罹患率は欧米に比し少ないと報告されており, Framingham 研究7)では,1,000 人年あたり 70 歳代男性
欧米の成績をそのまま採用することはできない.心房細 は 12.8,女性約 8 であり,欧米のデータがはるかに高い.
動の罹患率は,高齢になるほど高率であり,また発生頻 今回の 1 年 10 カ月間の検討では,65 歳以上全体では,
度が経年的に増加していることが知られている2).高齢 7 人(発作性 5 人,慢性 2 人)
,対象者を 419 人として
社会が進行するわが国において,心房細動の臨床統計は, 算出すると,1,000 人年あたり男女合わせ,9.1 という結
予後や医療費の面から,治療のあり方を決める上で重要 果であった.
な課題である.今回の 65 歳以上の年齢別罹患率の検討 心房細動の基礎疾患は,リウマチ性弁膜症の罹患率が
では,これまでの報告と同様に年齢とともに増加し,65 減少しており,基礎疾患の内容は変化している.我々の
歳以上では 8.0% であり,診療圏内では,少なくとも 検討では,非弁膜性心房細動(NVAF)の割合は 88.1%
6.5% の罹患率となる.罹患率は,検討対象者の選択に であった.一般的に基礎疾患として,弁膜症,加齢以外
よって異なるが,Ohsawa ら3)は,日本の一般住民を対 に,高血圧,糖尿病,うっ血性心不全があげられるが,
象に,2000 年に全国 300 地域の 30 歳以上を検討してい 今回の検討では高血圧の合併は 71.4% と高かった.ま
る.そのなかで,60∼69 歳および 70 歳以上の罹患率は, た,病歴上心不全が先行したと思われる症例は 6 例で,
それぞれ 0.9%,2.7% であった.また,高齢者を対象と 心不全が強く関与したと考えられ る 頻 度 は 14.3% で
したものではないが,1995 年に北海道大学を中心とす あった.喫煙,飲酒習慣に関しては,従来関与は少ない
る循環器外来 13 施設の約 20,000 例,平均年齢 63 歳の といわれていたが,久山町研究の第 2 集団をもとにした
4)
報告では,14% であった .今回の対象者は,診療所の 検討では,飲酒は男性において独立した危険因子として
外来受診者と一般住民からなるが,診療所患者群が一時 抽出されている6).今回の検討では,飲酒習慣者は少な
的な受診者を含んでいるものの全体の 76.2%(419!
550) く,その関与を疑わせる例はなかったが,多量の飲酒の
を占めることから,高齢であることとともに高い罹患率 翌日に心房細動発作が生じることは日常よく経験するこ
になった原因と思われた. とであり,危険因子として把握しておく必要がある.ま
一般に,心房細動では男性が多いとされるが,今回の た,最近では,メタボリック症候群自体が新規の心房細
検討では女性が 63.6% を占めた.母集団の女性の比率 動の発症リスクを高めることが報告されている8).
は 60.2% であったが,高齢者のなかでも後期高齢者を 心房細動追跡経過中の脳梗塞の発症に関しては,多く
多く含む年齢構成になれば,平均寿命を反映して女性罹 の報告がある.今回検討した 1 年 10 カ月の間では,新
患者が増えるものと思われた. たな虚血性脳血管障害の発症はなかった.心房細動は,
心房細動を分類して検討することは,多数例では容易 心原性脳塞栓症の最大の危険因子であるが,高齢社会に
でなく,また高齢者で検討したものは少ない.今回の検 伴って,NVAF の占める割合が増加している.NVAF
討では発作性,慢性ほぼ半数ずつであったが,上記の循 患者の脳梗塞発症率は平均年 5% であり,これは日本で
環器外来を中心とした報告では,発作性 36%,
慢性 64%, のデータでも AF のない人々の約 5 倍高い9).脳梗塞の
また不整脈薬物療法研究会(1991∼1993 年)の 1,819 例 リスクは,年齢,合併する心血管系疾患に大きく左右さ
の検討では,発作性 40.7%,慢性 59.3% といずれも慢 れるが,今回の検討では,脳梗塞の合併頻度は計 8 例,
5)
性が多いという結果であった . 19.0% であった.今回の心房細動罹患者の ADL を検討
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すると,ほぼ寝たきり状態の症例は 1 例であり,ほとん 心房細動は,年齢とともに増加し,超高齢地域を対象


どの症例の ADL は保たれていた.しかし,ADL の支 にすれば当然罹患率は高くなり,さらに脳梗塞,心不全
障をきたし,予後の悪かった症例は今回の検討には含ま などの高リスク群に属することになる.高齢社会となっ
れなかった可能性がある. て,高い ADL,QOL を維持していくために,心房細動
脳梗塞のリスクを評価するスコアリングシステムに を見逃さず管理することは重要な課題である.
10)
CHADS2 があり ,NVAF を対象に検討されている.J- 最後に,今回検討の場とした超高齢地域は,高齢化の
RHYTHM(わが国初の大規模前向き臨床試験,心房細 進む日本の将来のモデル地域ともいえる.このような地
動の薬物療法に関する多施設共同無作為化比較試験)に 域で保健,医療,福祉を担当するスタッフが,疫学調査
も採用されている.今回,NVAF と診断した 37 例で検 を主とするエビデンスを提供することも重要な使命であ
討してみると,そのスコアーは,2 点をピークとし,3 る.
点以上の高リスクに,14 例,37.8% が分布した.今回
文 献
は,高齢者を対象にしているため 75 歳以上に 1 点が与
えられるスコアーは高くなり,また合併症を有すること 1)Fitzmaurice DA, Hobbs FDR, Jowett S, Mant J, Murry
ET, Holder R, et al.: Screening versus routine practice in
も多いことから,高齢者は高スコアー,すなわち高リス detection of atrial fibrillation in patients aged 65 or over:
クになる. cluster randomized controlled trial. BMJ 2007; 335: 383―
心房細動の臨床統計および治療を困難にしているもの 386.
2)橋場邦武:老年者の不整脈.日老医誌 1989; 26: 101―110.
に無症候性心房細動の存在があり,今回の 1 年 10 カ月 3)Ohsawa M, Okayama A, Sakata K, Kato K, Itai K, Onoda
間の経過中 11.9% が偶然に発見されている.自覚症状 T, et al.: Rapid increase in estimated number of persons
を有した発作性心房細動患者でも,すべての頻拍発作を with atrial fibrillation in Japan: An analysis from national
surveys cardiovascular diseases in 1980, 1990 and 2000. J
自覚していないことを経験しており,これまでにも同様
Epidemiol 2005; 15: 194―196.
な報告がされている11).心房細動によって起こる胸部症 4)Tomita F, Kohya T, Sakurai M, Kaji T, Yokoshiki H, Sato
状は,一般に“動悸”ということになっているが,実際 M, et al.: Prevalence and clinical characteristics of
patints with atrial fibrillation-Analysis of 20000 cases in
に患者の口から出る表現は必ずしもそのようなものばか
Japan. Jpn Circ J 2000; 64: 653―658.
りでない.また,心房細動と気づかないようなほぼ規則 5)不整脈薬物療法研究会:心房細動と血栓塞栓症:多施設
正しい脈拍に思われる場合も経験され,注意深い身体診 共同調査.J Cardiol 1998; 31: 227―238.
6)藤島正敏:脳血管障害のリスクファクターとしての心疾
察が重要である.そして,無症候性心房細動の存在は,
患.循環器医 1998; 6: 19―26.
臨床統計を過小評価していることを念頭におかなければ 7)Kannel WB, Abbott RD, Savage DD: Coronary heart dis-
ならない. eases and atrial fibrillation: The Framingham study. Am
心房細動の治療法は,現在不整脈学の分野では最も重 Heart J 1983; 106: 389―396.
8)Watanabe H, Tanabe N, Watanabe T, Darbar D, Roden
要かつ興味あるテーマのひとつである.抗凝固療法に加 DM, Sasaki S, et al.: Metabolic syndrome and risk of de-
えて,従来からの抗不整脈治療,リモデリング予防の概 velopment of atrial fibrillation The Niigata preventive
念を応用したアップストリーム治療が検討されている. medicine study. Circulation 2008; 117: 1255―1260.
9)Tanaka H, Hayashi M, Date C, Imai K, Asada M, Shoji H,
今回の検討では,抗凝固療法は 54.8% にとどまった.
et al.: Epidemiologic studies of stroke in Shibata, Japa-
高齢者であるから,抗血小板剤でよいという考え方は支 nese provincial city. Preliminary report on risk factors
持されず,抗凝固療法が推奨されている.今回の症例は, for cerebral infarction. Stroke 1985; 16: 773―780.
10)Gage BF, Waterman AD, Shannon W, Boechler M, Ridh
患者紹介時に既に抗血小板剤が処方され,それを継続し
MM, Radford MJ: Validation of clinical classification
てきたという経緯があるが,現在は積極的に変更,導入 schemas for predicting stroke. Results from the national
している.また,抗不整脈治療は発作性の 66.7% で実 registry of atrial fibrillation. JAMA 2001; 285: 2864―2870.
11)Page RL, Wilkinson WE, Clair WK, McCarthy EA,
施されていた.一方,ARB!
ACEI はアップストリーム
Pritchett ELC: Asymptomatic arrhythmias in patients
治療であり,また新規発症予防薬の代表的薬剤であるが, with symptomatic paroxysmal atrial fibrillation and par-
今回の検討では 50% に処方されていた.スタチンは, oxysmal supraventricular tachycardia. Circulation 1994;
89: 224―227.
今回の検討では 4.5% のみであったが,これもリモデリ
ングに有効である可能性が指摘されている.
高齢者心房細動の疫学 45 : 639

Epidemiological study on atrial fibrillation among aged members of a Japanese community

Shunji Imanaka

Abstract
Aim: Epidemiological studies on atrial fibrillation (AF) in Japanese is scarce. As aging is one of the contributing factors to
AF, we investigated the prevalence of AF among aged members of a Japanese community.
Methods: Samples were community residents who were aged 65 years or older from town I, which is located at the north
end of Kyoto Prefecture, Japan, and 39.9% of the population is over age 65 years old. For a period of 22 months starting in
March, 2006, three groups of residents were evaluated: out-patients of the community clinic (the patients group); those who
participated in annual residents check up including ECG (the check-up group) and residents who visited clinics for influenza
vaccinations (the pulse-examination group).
Results: This study screened 550 patients (81.2% of residents more than 65 years old) in the jurisdiction of the town clinic. A
total of 44 residents were diagnosed as having AF, that is 8.0% of residents screened over 65 years old in town. This resulted
in a prevalence of 6.5% among all residents over 65 years old. Patient s age ranged from 65 to 94 years old. The male to fe-
male ratio was 0.58: 1 and chronic AF was 52.3%. There were 42 subjects with AF out of 419 in the patients group, 2 sub-
jects with AF out of 97 in the check-up group, and no subjects with AF in the pulse-examination group. Among the 42 sub-
jects with AF in the patients group, 88.1% had non-valvular AF and 71.4% had hypertension. Eight patients (19%) suffered
from brain infarction and transient ischemic attack, and ten had non-symptomatic AF (23.8%). Among this group, 37.8% had
a CHADS2 score above 3. Twenty-three patients (54.8%) received anti-coagulation medication and 15 (35.7%) received anti-
arrhythmic medication.
Conclusion: The prevalence of atrial fibrillation among elderly patients in a community in Japan was 8.0%. This group has a
high risk of brain infarction. As nearly 24% of patients had non-symptomatic AF, it is important to keep non-symptomatic
AF in mind in the treatment of the elderly in order to improve their ADL and QOL.
Key words: Atrial fibrillation, Epidemiology, Elderly people, Asymptomatic atrial fibrillation
(Nippon Ronen Igakkai Zasshi 2008; 45: 634―639)

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