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諭 図 るIE(Industrial

在 庫 低 減 を 目指 したJIT(Just
て い る1).し

***正

260精

製 造 コス ト展 開法 に関 す る研究(第1報)*

Engineering),生
In Time)生

科 学 的 ・組 織 的 に製 造 コス ト低 減 を 図 るた め の 具 体 的 な手 法 が
開 発 され て い な い た め で あ る.
そ こで,本 論 文 の 目的 は,こ

の は,以 下 の 点 で あ る 。

(1)設 備,人 お よ び原 単位 に関 す る 各 種 ロス の把 握.
(2)各 種 ロス の 製 造 コ ス トへ の 変 換.
(3)各 種 ロス を改 善 す る 方 法 の 検 討.

*原 稿受付
**正 会 員
会 員(株)デ
平成10年8月12日
京都大学 工学研究科(京 都市左京 区吉 田本 町)
ン ソー(刈 谷 市昭和町1-1)
† 京都大学大 学院(現,野 村総合研究 所;東京都 中央区 日本橋1-10-1)

密 工 学 会 誌Vol .65,No.2,1999
元**久

各 企 業 が 繁 栄 ・存 続 して い く た め に は,適 正 な利 益 を永 続 的
に 生 み 出 す 必 要 が あ る.し た が って,製
目 的 を 達成 す るた め に,製 造 原 価 の低 減 が 主 要 な 目標 の 一つ で
あ り,い つ い か な る時 で も 問 題 と な る永 遠 の 課 題 とい え る.
そ れ ゆ え に,多
ロ ス を徹 底 的 に 排 除 し,製 造 コ ス ト低 減 を 図 る活 動 を 展 開 して
い る,例 え ば,各 部 門 にお い て,設 備 の効 率化 を追 求 す るTPM
(Total Productive
す るTQM(Total
Maintenance),徹
Quality Management)活
造 現 場 で は,こ の 経 営

くの企 業 は,製 造 現 場 に お い て発 生 す る各 種

底 した 品 質 管 理 を 中 心 と
動,作 業の効率化 を
産 の 平 準 化 や 効 率 化,

か し,各 活 動 が,必 ず し も コス ト低 減 との 関 係 を
明 確 に と ら え た上 で 実 施 され て い るわ けで は な く,適 正 な効 果
を あげ る には 至 らな い 場 合 も存 在 す る.こ れ は,今 の と こ ろ,
産 な どが 実 践 され

の よ うな 現 状 に鑑 み,合 理 的 な
コ ス ト低 減 の 手 法 を提 案 す る こ と で あ る.こ こ で,問 題 に な る
保 崇***岡

Manufacturing Cost Deployment

Hajime YAMASHINA, Takashi KUBO and Keiichi OKAZAKI

2.1対

調 整,刃
崎 啓

象 とす る 生 産 シス テム の 前 提
対 象 とす る生 産 シ ス テ ム の構 成 を図1に
一 †

One of the major problems in manufacturing is obviously to reduce cost. In order to do so, various activities such as TQM, TPM and
JIT, etc. are often carried out. But many companies recognizethat these activitiesdo not necessarily guarantee cost reduction even if they
have successfully been implemented. In the worst case, manufacturing cost rises with the introduction of such activities.This is such an
important issue in manufacturing, but strangely in the literature, there have been no papers which have addressed themselves directly to
the methodologyof manufacturing cost reduction. The purpose of this paper is to develop a good method that establishes a cost reduction
program scientificallyand systematically, first, by investigating various production losses and classifying them into causal losses and
resultant losses, secondly, by looking for the relationship among the losses, processes generating cost and the cost factors and finding
connection between various kinds of loss reduction and their possible cost reduction, thirdly, by clarifyingif the know-how on each loss
reduction is available and obtaining it if not available, and finally by estimating the cost of reducing or eliminating each identified loss
and putting priority to the loss items for total cost reduction from the viewpoint of cost and benefit. This method has been coined as cost
deployment. This is a very powerful tool to identify right losses to reduce cost. A simple algorithm to establish a cost reduction program
based on the cost deployment is presented and one case study is given at the end of the paper.
Key words: cost deployment,

1.緒
losses, manufacturing


cost, cost reduction program

(4)各 種 ロス の 改 善活 動 に 要 す る 費 用 と期 間 を 考慮 した 上 で
最 小 費 用 で 最 大 の 成果 を あ げ る 改 善 計 画 の策 定.
こ の よ うに,各 種 ロ ス を 的確 に と らえ て 製 造 コス トへ 変 換 す る
こ とに よ り,コ ス ト増 大 の 発 生 要 因 とそ の 箇 所 を 明確 に した 上
で,そ れ らを 科 学 的 ・組 織 的 に低 減 す る 方 法 を特 定 し,コ ス ト
低 減 の計 画 を 策 定 す る手 法 を,本 論 文 で は,製 造 コス ト展 開 法
と名 付 け る.
今 回,第1段 階 と して,複 数 の設 備 か ら構 成 され る 生 産 シ ス
テ ム を対 象 に製 造 コス ト展 開 法 を提 案 す る,ま ず,対 象 とす る
生 産 シ ス テ ム につ い て 定 義 した 後,(1)∼(4)の
解 決 を 与 え,最 後 に 具 体 的 な 問 題 へ の 適 用 例 を 示 す 。

2.生 産 シス テ ム に お け る各 種 ロス の 把 握

はJ台 の 設 備 で 構 成 され,各 設 備 で は,一 般 的 に,故 障,段 取


具 交 換,立
ロ ス が 発 生 す る2).各

ま た,原 単 位 に 関 して,歩
ち 上 が り,小 停 止,速 度 低 下,不

ギー の 各 種 ロス が 発 生 す る2).こ

に 余裕 が あ る 場合,生
2,2Aマ
問 題 点 につ い て

示 す.生 産 シ ス テ ム

設 備 の 間 に は バ ッフ ァ を設 置 して お り,
小 停 止 に よ る設 備 干 渉 は,こ れ で 回 避 で き る.生 産 シ ス テ ム の
直 接 作 業 者 はP人 で あ り,作 業 者 に 関 して,一 般 的 に,管 理,

動作,編 成,自 動 化 置 換,測 定 調 整 の 各種ロス が 発 生 す る.


留 り,副 資 材,型

り,便 宜 上,単 位 期 間 あ た りの 負 荷 時 間 と してh(時

産 数 は 計 画 数 に等 しい もの とす る.
トリク ス に よ る各 種 ロス の 把 握
各 種 ロス を 分析 す る に あ た り,ま ず,生
どの ロ ス が,ど の 工程 で,ど の 程 度 発 生 して い る の か を 明 確 に
・治 工 具,エ

こで,各 種 ロス の 把 握 に あた

し,期 間 内 の 実 際 の 生 産 数 をdと す る.計 画 に 対 して 生 産 能 力


良の 各 種

間 〉を想 定

産 シ ス テ ム にお い て,
ネル
山品 ・久保 ・岡崎:製 造コス ト展開法 に関す る研究(第1報)

に,原 因 系 ロ ス,結 果 系 ロス お よ び 各 コス ト費 目 との 関係 を 表
す 図 を 作 成 し,各 種 ロ ス と コス トとの 関係 を分 析 す る.こ の 図
で は,原 因 系 ロ ス お よ び 連 鎖 的 に発 生 す る結 果 系 ロ ス を 発 生 箇
所 と と もに 整 理 し,そ れ らが,ど の コ ス ト費 目 を押 し上 げ る の
か を 明確 に す る.こ こ で,結 果 系 ロ ス は,設 備 の 停 止 な ど時 間
で 計 測 で き る時間 的 ロス と,不 良 の発 生 な ど数 量 で 計測 で き る
Fig.1 The model of the production system 物 量 ロ ス に 分 類 して,各 種 ロ ス と各 コ ス ト費 目 との 関係 を記 述
す る.例 え ば,図5に 示 す 故 障 ロス で は,時 間 的 ロ ス と して,
しな けれ ば な らな い.そ こで,図2に 示 す よ うなAマ トリク ス 計 画 数 に対 して 生 産 能 力 が不 足 して い る場 合,生 産 数 の 減 少 に
の 使 用 を提 案 す る.こ の マ ト リク ス で は,縦 軸 要 素 に 各 種 ロ ス, よ っ て 減 価 償 却 費 の 増加 につ な が り,生 産 能 力 に 余 裕 が あ る場
横 軸 要 素 に発 生 箇 所 を配 置 し,各 種 ロス の 発 生 状 況 を,工 程 別 合,計 画 生 産 数 を確 保 で き るた め 減価 償 却 費 は変 わ らな い が,
に 把 握 で き る場 合 は各 工 程 の 欄 に,生 産 シ ス テ ム 全 体 で 把 握 す 稼 働 時 間 の 延 長 に よ り直 接 労 務 費 や設 備 動 力 費 を押 し上 げ る.
る 場 合 は シス テ ム の欄 に,定 性 的 に◎,○,△ の3段 階に分 け ま た,物 量 ロス と して,投 入 した 直接 材 料 費,な らび に 前 工程
て記 入 す る.こ れ に よ り,生 産 シス テ ム に お い て,各 種 ロス の で の加 工 に 要 した,間 接 材 料 費,刃 具 費,型 ・治 工 具 費 お よ び
発 生 箇 所 お よび 頻 度 が お お よ そ 明 確 に な り,改 善 の 対 象 を 絞 り 設 備 動 力 費 の 増 加 を招 く,重 要 な の は,結 果 系 ロス に よ り
込む こ とが で き る. 生 じる コ ス トの 増 加 は,そ の 要 因 で あ る原 因 系 ロス に よ る もの
と して 把 握 しな け れ ばな らな い と い う点 で あ る.
3.各 種 ロ ス 聞 の 因 果 関 係 の整 理 4.3各 種 ロス の 製 造コ ス ト変 換 式 の展 開
製 造 現 場 に お い て 生 じる 各 種 ロ ス は,表1に 示 す 指標 で把 握
3,1原 因 系 ロ ス と 結 果 系 ロス で き る.こ れ らの 指 標 を 用 い る こ と に よ っ て,表2に 示す よ う
生 産 シ ス テ ム の あ る工 程 で ロ ス が 生 じ る と,そ の ロス が原 因 に,各 種 ロス を製 造 コス トに変 換 す る こ とが 可 能 に な る.一 例
で 他 の ロス を発 生 させ る こ とが 多 い.例 え ば,あ る 工程 で 故 瞳 と して,故 障 ロ ス の コス トへ の変 換 方 法 を示 す.
が発 生 した 場 合,他 工程 に お い て,強 制 停 止 に よ る ロ ス や 不 良 通 常 の ロス ー コ ス ト計 算 で は,便 宜 上,減 価 償 却 費 な どか ら
に よ る ロス が 生 じる.こ の よ うに,そ れ ぞ れ が独 立 して い る と 計 算 した マ シ ン ・チ ャ ー ジ(円/時 間)を 用 い て,"故 障 ロス の
考 え られ て い た 各 種 ロス の 間 に は,実 は因 果 関係 が 存 在 す る. 削 減 時 間(時 間)× マ シ ン ・チ ャー ジ(円/時 間)"を コス トの
本 論 文 で は,あ る ロ ス の 結 果 と して 引 き 起 こ され る ロ ス を 結 改 善 額 と して 計 算 す る が,こ の よ うな 計 算 方 法 は 間 違 った 結 論
果 系 ロス,そ の 要 因 と な っ て い る ロス を原 因 系 ロス と定 義 す る. に至 らし め る.こ の よ うな 計 算 方 法 に よ った コ ス ト改 善 額 は,

結 果 系 ロス に 注 目 して も具 体 的 な 対 策 は存 在 しな い た め,常 に, 実 際 に実 現 され る こ とは な い と言 って い い.計 画 に 対 して 生 産
そ の原 因 系 ロス に 着 目 して対 策 を 施 して い か な け れ ば な らな い 能 力 に余 裕 が あ る場 合,故 障 ロス の削 減 に か か った 改 善 費 用 の
とい う こ とで あ る. た め に,か え って コス トが 上 昇 す る こ と もあ る.正 確 に は,次
3,2Bマ トリ クス に よ る因 果 関 係 の 整 理 の よ うに して 計 算 す る必 要 が あ る.
各 種 ロス 間 の 因 果 関係 に つ い て 整 理 す る た め に,図3に 示す 故 障 ロス は,図5に 示 す よ うに,時 間 的 ロ ス と物 量 的 ロス に
よ うなBマ トリク ス を用 い る.こ の マ ト リクス で は,縦 軸 要 素 よ る各 費 用,な らび に設 備 の 修 復 時 に お け る保 全 員 の 間接 労務
に原 因 系 ロス お よ び 発 生 箇 所,横 軸 要 素 に 結 果 系 ロス お よ び発 費 と保 全 費 を発 生 させ る.こ れ ら の費 用 は,各 設 備jの 故障 率
生 箇 所 を配 置 し,あ る工 程 の 原 因 系 ロス に よ って 生 じる 結 果 系 λj
(1/時 間),修 復 率 μj(1/時 間)お よび 故 障 発 生 時 の 不 良 数
ロス とそ の 発 生 箇 所 を ○ で 記 入 す る,こ れ に よ り,原 因 系 ロス qj(個数)の3つ の 指 標 を用 い て 計 算 で き る.そ して,計 画 に
と結 果 系 ロス の 関 係 を 明確 に す る こ とが で き る. 対 して 生 産 能 力 に余 裕 が な い 場 合(Case1)と あ る 場 合(Case2)に
応 じて,表2に 示 す よ うな 形 で製 造 コス トを 押 し上 げ る.し た
4.各 種 ロス の 製 造 コ ス トへ の 変 換 が っ て,故 障 ロ ス の 削減 は,そ れ ぞ れ の 場 合 に応 じて,こ れ ら
の製 造 コス ト低 減 を もた らす.な お,紙 面 の都 合 上,他 の ロス
4.1製 造原価の構成 要素 の場 合 に つ い て は省 略 す る(詳 細 は 文 献7)を 参 照 の こ と).

図4に 示 す よ うに,製 造 原 価 は,生 産 量 に関 係 な く発 生 す る 4.4.Cマ ト リク ス に よ る ロス と コ ス トの 関係 の 明 確 化


一定の固定費 表2の 式 に 基 づ い て 各 種 ロ ス を 製 造 コ ス トへ 変 換 し,そ れ ら
,お よ び生 産 量 に 比 例 して 生 じ る変 動 費 か ら構 成
され る.こ の うち,固 定 費 は 設 備 の減 価 償 却 費 で あ る.変 動 費 を詳 細 に 分 析 す るた め,図6に 示 す よ うなCマ トリ クス を適 用
は,製 品 の 原 材 料 や 購 入 部 品 の 費 用 で あ る 直 接 材 料 費,切 削油 す る.こ の マ トリク ス で は,縦 軸 要 素 に 原 因 系 ロス お よび 発 生
や 潤 滑 油 な どの 間 接 材 料 費,ラ イ ン作 業 者 の 直 接 労 務 費 と保 全 箇 所,横 軸 要 素 に各 コ ス ト費 目 を配 置 す る.各 成 分 に は,ロ ス

員 の 間 接 労 務 費,加 工時 に 必 要 で あ る,刃 具 費,型 ・治 工 具 費 1,工 程jお よび 費 目k別 に,該 当す る金 額Cljkを 記 入 し,

お よび 設 備 動 力 費,そ して設 備 の 保 守 部 品 の 費 用 で あ る保 全 費 費 目 に 関す る総 和 ΣKcljk,ロ スlと 工程jに 関 す る総 和


か ら構 成 され る.こ の製 造原 価 に 販 売 費 と管 理 費 を加 え た もの ΣlΣjCljk鳶 お よ び 全 成 分 の 合 計 で あ る ΣiΣjΣkCljkを 計算

が総 原 価 で あ る3)4). す る.こ の結 果,ΣKCljkに よ り,各 ロス が,工程別 に,ど の


4.2各 種 ロス と製 造 コ ス トと の 関 係 の 分 析 程 度 コス トを 押 し上 げ て い る の か を把 握 で き,ΣiΣjCljkに
Aマ トリク ス とBマ トリク ス に よ り,各 種 ロ ス の 発 生 状 況 と よ り,生 産 シ ス テ ム の 各 種 ロ ス に よ る製 造 コ ス トの 増 加 が費 目
それ らの 因果 関係 が 把 握 で き た が,科 学 的 ・組 織 的 に 製 造 原 価 別 に と ら え る こ とが で き る.Aマ トリク ス で は,定 性 的 に ロ ス
の低 減 を 図 る に は,各 種 ロス が い か に コス トを押 し上 げ る の か の 把 握 を行 っ た が,Cマ トリク ス で は,ロ ス,コ ス トお よび 発

を 明確 に す る必 要 が あ る,こ の 目的 の た め に,図5に 示す よ う 生 箇 所 と の 関係 が 定 量 的 につ か め る こ と に な る.

精 密 工 学 会 誌Vol.65,No.2,1999 261
山品 ・久保 ・岡崎:製 造コス ト展 開法に関する研究(第1報)

Fig.2 Amatrix Fig.4 Factors of Manufacturing Cost

Fig.3 Bmatrix (Matrix of causallossesand theirresultantlosses)

Fig.5 The relationshipof causalloss(ex:Breakdown loss)and itsresultant


losses

262 精 密 工 学 会 誌Vol .65,No.2,1999


山品 ・久保 ・岡崎:製 造 コスト展開 法に関する研 究(第1報)

Table 1 Indicators of causal losses for calculating cost

Table 2 Calculation method for impact of loss on cost

•¦1 Casel:d>Capacity of the production system

Case2:d < Capacity of the production system •¦ 2 Facility b : Bottleneck in the production system

•¦3 C .:Depreciation cost of the production system (yen/period) Cr: Direct material cost (yen/unit)

Csj*,Csj:Theoretical and actual indirect material costs of facility j (yen/unit) CL: Direct labor cost (yer/hour) CI: Indirect labor cost (yen/hour)

Cij:Tool cost of facility j (yen) Cdj:Die and jig costs of facility j (yen) Cvj*,Cvj: Theoretical and actual energy costs of facility j (yen/unit)

C r :Energy costs of the production system (yen/hour) Cpji: Repair cost of item of facility j (yen/unit) a : Broken part

精 密 工 学 会 誌Vol,65,No.2,1999 263
・久保 ・岡崎:製 造コス ト展開法 に関する研究(第1報)

Fig. 6 C matrix (Matrix of causal losses and cost elements)

Fig. 7 D matrix (Matrix of causal losses and their improvement techniques)

Fig. 8 E matrix (Matrix of estimated cost to improve loss and expected cost reduction)

264精 密 工 学 会 誌Vol.65,No .2,1999

山品
山品 ・久保 ・岡崎:製 造コス ト展開法に関す る研究(第1報)

5.各 種 ロ ス の 改善 方 法 の 検 討 そ の 所 要 期 間 をYjθ とす る,活 動Xjθ の 着 手 後,y



(yjθ=1,2,・・・,Yjθ)期 目 の投 資 額 をz(yjθ)と す る.
5.1 Dマ トリク ス に よ る改 善 方 針 の 明 確 化 (3)各 活 動 の 着 手 後 は,最 後 ま で継 続 して行 う.ま た,活 動

各 種 ロス を 低 減 また は撲 滅 す るた め に は,そ の ロ ス に応 じた 期 間 中,ロ ス状 況 は 変 化 せ ず,完 了後 初 め て,ロ ス 低 減

適 切 な 改 善 方 法 を と る必 要 が あ る.改 善 に は,発 生 原 因 が 明 確 効 果 が 現 れ,不 具 合 は 再 発 しな い も の とす る.

な 特 定 の ロス に 対 して,通 常,短 期 間 で 取 り組 む 個 別 改 善 と, 6.2問 題 の定式化

自主 保 全 や 計 画 保 全 な ど長 期 間 にわ た っ て継 続 的 な 活 動 が 必 要 本 論 文 で は,各 種 ロス の 製 造 コ ス トへ の変 換 式 を 考 案 した.

と され るシ ス テ マ テ ィ ック な ア プ ロー チ が あ る.こ こ で,各 種 全 体 計 画 を考 え る 場合,期 間 を考 慮 しな け れ ば な らな い た め,


ロス に対 して,過 去 の事 例 な ど を参 考 に 有 効 な 施 策 を検 討 す る 目的 関 数 と して,単 位 製 造 コ ス トの 最 小 化 で は 不 十 分 で あ る.

こ とに よ り,図7に 示 す よ うなDマ トリク ス を 作 成 す る.こ の そ こ で,製 造 コ ス ト低 減 額 と生 産 数 との 積 で得 られ る効 果 額 の


マ ト リクス の 縦 軸 要 素 に原 因 系 ロス お よ び発 生 箇 所,横 軸要素 期 間 全 体 にわ た る 累積 を 最 大 化 す る こ と を 考 え る必 要 が あ る.
に 改 善 方 法 を 配 置 し,実 施 す べ き活 動 を ○ で 記 入 す る.こ れ に 上 記 の 仮 定 の も とで,各 期 に お い て,活 動Xjθ のyjθ 期目

よ り,生 産 シ ス テ ム の各 工程 で 発 生 して い る各 種 ロ ス に 対 し, の ロ ス 低 減(yjθ<Yjθ の 時 は 効 果 な し)に 伴 う製 造 コ ス トの

どの よ うな 改 善 を 施 す こ とが 必 要 か,ま た,ど の よ うな 改 善 の 低 減 額 を 算 出 し,そ れ と生 産 数dと の積 に よ っ て 得 られ る金 額


ノ ウハ ウが 不 足 して い る の か を 明 ら か に す る こ と が で き る. をEw(Yjθ)と 表 す.活 動Xjθ の効 果 額 は,投 資 額 を 引 い た も
5.2各 種 ロス の 改 善 の で あ り,Ew(Yjθ)-z(yjθ)と な る.

設 備 に関 す る各 種 ロス の 改 善 の 一例 と して,故 障 ロス の 改 善 以 上 よ り,各 期 に 実 施 す る 活 動 の集 合 をXwと す る と,改 善

方 法 を示 す,ま ず 第1ス テ ップ と して,自 主 保 全 の実 施 に よ り の 費 用 と期 間 を考 慮 した 上 で,対 象 期 間全 体 の 累 積 効 果 を最 大

強 制 劣 化 を防 止 す る.続 く第2ス テ ップ で は,故 障 解 析 に よ る 化 す る改 善 計 画 の 策 定 問 題 は,次 の よ うに 定 式 化 で き る.

不 具 合 の個 別 改 善 を行 い,第3ス テ ップ で は,計 画 保 全 を展 開
目的 関数:〓
し定 期 的 に設 備 を修 復 す る.最 後 に,第4ス テ ッ プ で は,設 備
診 断 技 術 を適 用 し予 知 保 全 を実 施 す る.こ れ らの 活 動 に 加 え,
制 約 条件:if〓
保 全 員 の技 能 向上 な どに 取 り組 み,故 障 率 お よび 修 復 率 の低 減
を 図 る.こ の よ うに,ロ ス の 改 善 に は,い くつ か の ス テ ップ と
ア プ ロー チ が 存 在 し,設 備 の 状 態 に応 じた適 切 な 方 法 を と ら な

けれ ば な らな い.な お,紙 面 の 都 合 上,設 備 に関 す る他 の ロ ス


の 改 善 につ い て は省 略す る(詳 細 は,文 献7)を 参 照 の こ と).

人 に 関す る各 種 ロス で は,個 別 改 善 に よ る ア プ ロー チ 炉 主 体 問 題 は,以 上 の 制 約 条 件 の 下 で,目 的 関数 を 最 大 化 す る よ うな

とな り,例 え ば,作 業 方 法 や レイ ア ウ トの 改 善,ロ ボ ッ トの 導 各 期 にお け る活 動 の 集 合Xwを 決 定 し,対 象 期 間 全 体 にわ た る

入 な どに よ る 自動 化 を行 い,ロ ス 工数 を 低 減 す る. 集 合(Xl,X2,…,Xw)を 同 定 す る こ とで あ る.こ の 問題 は,

原 単位 に 関す る 各 種 ロス に お い て も,個 別 改 善 の ア プ ロー チ 各 期 にお い て,制 約 条 件 の 範 囲 で 活 動xjθ を 実施 す るか 否 か,

が主 体 とな る.歩 留 り ロス の改 善 で は,例 え ば,設 計 変 更 な ど ωjθω=0,1を 決 定 す る 整 数 計 画 問 題 で あ る.問 題 の規 模 は,

に よ り歩 留 りの 向 上 を 図 る.副 資 材 ロス の 改 善で は,一 例 と し 設 備 台 数J,ロ ス の 種 類θ,対 象 期 間Wで 決 ま り,実 際 の 生 産

て,切 削油 や 潤 滑 油 な どの 使 用 量 を 削 減 し,間 接 材 料 費 の 単価 シ ス テ ム で は,一 般 的 に,こ の 問 題 はNP完 全 で あ る.

を低 減 す る こ とな どが あ る,型 ・治 工 具 ロス の改 善 で は,例 え 6.3Eマ トリク ス に よ る 効 果 の 把 握 と改 善 計 画 の 策 定

ば,仕 様 の再 検 討 に よ り寿 命 を延 長 す る こ とな どが 考 え られ る. NP完 全 で あ る問 題 に 対 して,小 規 模 な問 題 で は,分 岐 限 定

最 後 に,エ ネ ル ギ ー ロス の改 善 で は,設 備 の 非稼 働 時 間 の 削 減 法 や バ ック トラ ック法 に よ り最 適 解 を探 索 す る こ とが で き る.

に よ りエネ ル ギー 効 率 の 向 上 を 図 り,設 備 動 力 費 の 単 価 を 低 減 し か し,実 際 の 製 造 現 場 の よ うな大 規模 な 問 題 で は,こ れ らの

す る こ とな ど,そ の 一 例 で あ る. 手 法 の適 用 が 困 難 で あ る.そ こで,本 論 文 で は,問 題 を解 くに


あた り,便 宜 上,次 式 で 定 義 す る投 資 効 率 の 大 き い順 に 各 改 善
6,改 善 活動計画の 策定 活 動 の優 先 順位 付 け を行 い,そ の結 果 に 基 づ い て解 を探 索 す る
ヒ ュ ー リス テ ィ ック な 方 法 で 十 分 で あ る と考 え る.

6.1改 善活 動 に 関 す る仮 定
生 産 現 場 で 発 生 す る各 種 ロス を改 善 す る際,そ の た め の費 用
活 動〓
が 必 要 で あ り,時 に は,適 正 な 効 果 を あ げ る に至 らな い 場 合 が
あ る.こ れ は,各 活 動 が 必 ず し も製 造 原 価 との トレー ドオ フ を
明 確 に と らえ た 上 で 実施 され て い る わ け で は ない か らで あ り
,この 問 題 を解 決 す る 方 法 が 必 要 で あ る. 各 改 善活 動 に よ る投 資 効 率 を 整 理 す る た め,図8に 示す よ う

そ こ で,本 論 文 で は,改 善 活 動 計 画 を科 学 的 に 策 定 す る問 題 なEマ トリク ス の使 用 を提 案 す る.こ の マ ト リクス の縦 軸 要 素

を定 式 化 す る上 で,便 宜 上,次 の仮 定 を 設 け る. に 原 因 系 ロス お よび 発 生 箇 所,横 軸 要 素 に 改 善 方 法 を配 置 し,

(1)各 期w(W=1,2,….W)に お け る改 善活 動 の 投 資 額 に は 各 成 分 に は,ロ ス1,工 程jお よび 改 善 方 法m別 に,該 当す る

制 限 が あ り,Zwと す る. 累 積 効 果 額G(l,j,m)と 総 投 資 額E(l,j,m)を 記 入 す る.こ れ

(2)ロ ス の 種 類 をθ(θ=1,2,…,θ)で 表 す.例 え ば,故 障 に よ り,各 改 善 活 動 の 優 先 順 位 を 的 確 に と らえ る こ と がで き る.

ロ ス をθ=1,段 取 調 整 ロ ス をθ=2,以 下,定 義 した順 と 本 論 文 で は,Eマ トリク ス に よ る優 先 順位 付 け に基 づ いて,

す る.設 備jに お け る ロ スθ の 改 善 活 動 をXjθ と表 し, 以 下 の要 領 で 改 善 計 画 を策 定 す る.

精 密 工 学 会 誌vol.65,No.2,1999 265
山品 ・久保 ・岡崎:製 造 コス ト展 開法 に関する研究(第1報)

Flg.9 The production system of the case study

Table3 Parametersoffacility
lossesofthecasestudy

(1)各 期 に お い て,ま ず,継 続 中 で あ る活 動 は 優 先 的 に計 画


に 組 み 込 み,投 資 残 額 を算 出す る.

(2)残 る活 動 に つ い て,投 資 効 率 に よ る優 先 順 位 に 基 づ き,
投 資 残 額 内 で選 択 す る.

7.適 用 例 Fig.11 Comparisons of the totaleconomic effectamong the approaches

提 案 した 製 造 コ ス ト展 開 法 を 具 体 的 事 例 に適 用 し,そ の有 効 (2)各 種 ロ ス の 製 造 コ ス トへ 変 換 す る 考 え 方 と算 出 式 を 展 開

性 を検 討 した.図9に 示 す 生 産 シス テ ム を 対 象 に,各 設 備 で の し,詳 細 に 分 析 す る た め のCマ ト リ ク ス を 提 案 し た.

故 障,段 取 調 整,刃 具 交 換,立 ち上 が り,小 停 止,速 度 低 下, (3)各 種 ロ ス の 改 善 方 法 を 整 理 す るDマ ト リ ク ス,お よび各

不 良 の 各 種 ロス の 改 善 活 動 を 考 え る.各 パ ラ メ ー タの 値 を表3 施 策 の 投 資 効 果 を 分 析 す るEマ ト リ ク ス を 提 案 し た.

に 示 す.こ の 事 例 に対 して,設 備 総 合 効 率*の 最 大 化 を 目標 に (4)効 率 的 な原 価 低 減 に つ な が る改 善 計 画 を策 定 す る方 法 を

各 活 動 を 展 開 す る従 来 のTPMに よ る成 果 と,製 造 コス ト展 開 展 開 し,具 体 的 な 事 例 に よ り,そ の 有 効 性 を 検 証 し た.

法 に 基 づ い て 各 活 動 を 展 開 した 場 合 の 成 果 を 比 較 した. 製 造 コ ス ト展 開 法 で は,5つ の マ ト リクス を展 開 す る こ とに

図10に,従 来 方 法 と製 造 コ ス ト展 開 法 に よ る コス ト低 減 の よ り,製 造 原 価 の 低 減 に つ な が る プ ロセ ス を 明 確 にす る こ とが

推 移 を示 す.図 の横 軸 は 活 動 期 間,縦 軸 は 活 動 前 の 製 造 コス ト 可 能 に な り,こ れ に よ り,最 小 費 用で 最 大 の 成 果 を あ げ る 改 善

に 対 す る割 合 を表 す.図11に,2つ の 方 法 に よ る累 積 効 果 の 計 画 を 策 定 で き る.し た が っ て,提 案 手 法 は,経 営 目的 に 合 致

推 移 を示 す.図 の 横 軸 は 活 動 期間,縦 軸 は 従 来 方 法 に よ る期 間 し た 活 動 の 展 開 に 非 常 に 有 効 で あ る.

全 体 の 累 積 効 果 に対 す る割 合 を表 す.こ れ らの結 果 か ら,製 造


コス ト展 開 法 に よ っ て,合 理 的 に コ ス トを低 減 で き,対 象 期 間 謝 辞

で 大 きな 累 積 効 果 を獲 得 で き る こ とが わ か る.こ れ は,従 来 の
方 法 が,必 ず しも効 率 的 な コス トの低 減 に 至 らな い こ と を示 し 本 研 究 は,日 本 プ ラ ン トメ ン テ ナ ンス 協 会 の委 託 研 究 と して

て お り,製 造 コス ト展 開 法 を用 い る こ と に よ り初 めて,最 小 費 行 わ れ た も の で あ る.

用 で 最 大 の成 果 を あ げ る活 動 計 画 を 策 定 で き る こ とが わ か る.

参 考 文 献
8.結 言
1)P. Y. Huang: World-classManufacturing in thel990s,IhtegratingTQC, JIT,

本 論 文 で は,製 造 現 場 にお け る 改 善 活 動 が,必 ず しも コ ス ト FA and TPM with Worker Participation,


Manufacturing Rev, 4,2(1991)87.

低 減 との 関係 を明 確 に した 上 で 実施 され て お らず,適 正な効果 2)大 島 榮 次,師 岡孝 次:設 備 管理 工 学入 門,日 本規格 協 会,(1992).

を あ げ る に 至 らな い場 合 が 多 く存在 す る現 状 に鑑 み て,コ ス ト. 3)石 松 康夫:設 計 ・製 造 部 門 の ため の原 価 管理 と原価 改 善,日 刊 工 業新

の低 減 を科 学 的 ・組 織 的 に 図 る製 造 コス ト展 開 法 を 提 案 した. 聞社,(1987)。

(1)製 造 現 場 に お け る各 種 ロ ス の 発 生 状 況 と因 果 関係 をA, 4)Young K. Son:A Cost EstimationModel of Advanced Manufacturing Systems, Int,

B両 マ トリク ス に よ り的 確 に把 握 す る 方 法 を 提 案 した. .J.Prod. Res., 28,6(1991)441.

5),6)千 住 鎮雄:経 済性 工学 の 基礎(応 用),日 本 能 率 協会,(1982).


*設 備 総合効率=時 間稼働 率 ×性能稼 働率 ×良品率 7)岡 崎 啓 一:コ ス ト展 開 法 に 関す る研 究,京 都 大 学 工学 研 究科,(1996).

266精 密 工 学会 誌Vol .65,No.2,1999

Fig.10 Comparisons of the manufacturing cost among the approaches

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