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アクティベート ・ リーフ No.

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んの 7 歳の時に行った手術
のことを、私は決して忘れ
ない。それは、私が宦官 1 となっ
て、エチオピアの王と王妃に仕え
ることが運命づけられた日だった。
もはや、家族を持つことも、 「普通」
の人として見られることもない。常
に特別な決まりに従わねばならな
いし、普通の人にはできても、私
には許されないこともあった。
 それから長い年月をかけて、私
は王室に仕えるすべを身につけ
た。 計 算、読 み 書 き、地 理 を 教
わって、他の民族や地域への興味
がそそられた。また、エジプトの
パロや中国の皇帝、インドのラー
ジャにも、彼らに仕える宦官がい
たことを知った。宦官に会いたけ

THE ETHIOPIAN
れば、権力者のもとへ行けばいい
ということだ。いつもその近くに
いるのだから。

EUNUCH  女王カンダケが外国との貿易を
監督する者を必要とした時、他文
化に関する知識ゆえに、私がその
役に選ばれた。そのような職につ

エチオピアの宦官 けることは嬉しかったが、本当に
欲しかったのは家族だった。私が
― 使徒行伝 8:26-40 を元に創作 くつろげる場所、ありのままで受
け入れてくれる場所があるはずだ
と思っていたのだ。
 国事でエルサレムへ出かけた
ダニエル・ベンジャミン 際、ユダヤ教に興味があったので、
実際に必要とされているよりも長
く滞在した。そして、できるだけ
の情報を集め、経典の巻物もなん
とか手に入れることができた。神
殿にも入りたかったのだが、入り えた。「誰かが手びきをしてくれ で、わが契約を堅く守る宦官には、
口で止められてしまった。 なければ、どうして分かりましょ わが家のうちで、わが垣のうちで、
 守衛に尋ねた。 「入れない理由 う。お乗せしますから、教えてい むすこにも娘にもまさる記念のし
は何ですか。私が王室の高官であ ただけませんか。 」 るしと名を・・・与える。
』」3

り、重要な外交上の任務で来てい  私が読んでいた箇所は、これ  私は喜びでいっぱいになった。


ることを知らないのですか。」 だった。「彼は、ほふり場に引か 私を受け入れてくれる仲間を、あ
 返ってきたのは、 「去勢された れて行く羊のように、また、黙々 りのままの私で愛される場所を、
宦官が入ることは許されていな として、毛を刈る者の前に立つ小 ついに見つけたのだ。
い」という冷たい答えだった。 羊のように、口を開かない。彼は、  ちょうどその時、小さな池のあ
 
「いったい誰がそんなことを命 いやしめられて、そのさばきも行 るオアシスを通りかかったので、
じたのですか。」 われなかった。だれが、彼の子孫 すかさず、私の新しい先生に尋ね
 
「我々の律法がそう命じている のことを語ることができようか、 てみた。「私が今ここでバプテス
のです。」
2
彼の命が地上から取り去られて マを受けるのに、何か差し支えが
 自分がこれほど不当な扱いを受 いるからには。 」 
「取り去られて」 ありますか。」バプテスマという
けることに衝撃を覚えた。あの手 子孫ができないとは、まるで私自 清めの儀式をぜひとも受けたかっ
術は私に選択の余地のないもの 身の運命のようだった。 「教えて たのだ。
だったというのに、こうして入場 ください。ここで預言者は誰のこ  ピリポはこう答えた。 「あなた
を拒否されたのだ。私がこの宗教 とを語っているのでしょうか。自 が真心から信じるなら、受けて差
共同体の仲間として受け入れても 分のことですか。それとも、誰か し支えありません。」
らえないことはよく分かった。 他の人のことですか。 」  ピリポが私のために祈り、バプ
 それでもなお、私はイスラエル  ピリポは、この巻物に書かれた テスマを授けてくれた時、私は生
の神に好奇心をそそられていた。 予言がいかに成就したか、また、 まれ変わって感じた。造り変えら
そこで、馬車に乗って帰途につい 彼がいかにナザレのイエスと出会 れたのだ。お礼を言おうと思った
た際、私は経典を読み進め、そこ い、彼に付き従ったかを説明し始 が、ピリポはいつの間にか消えて
に書いてある意味を悟ろうとし めた。ほんの数週間前、イエスは いた。どこに行ったのだろう。
た。エルサレムを出て荒野の道を 十字架にかかってまでも、すべて  ピリポに何が起きたのかは分か
進んでいると、ひげ面のユダヤ人 の人のために死ぬことをいとわ らないが、自分に何が起きたのか
が近づいてきた。 ず、その 3 日目には死からよみが はよく分かる。私の人生の旅路は、
 経典を声に出して読んでいたの えったというのだ。 新たな方向へと向かい始めた。も
で、それがユダヤ人の預言者であ  それはすごいことだと思った はや孤独ではない。やっと自分の
るイザヤの教えだと気づいたのだ が、同時にためらいもあった。先 家族を見つけたのだ。神の家族を。
ろう。「読んでいることがお分か に聞いた、あの私を責める言葉が
りになりますか」と聞いてきたの 忘れられなかったからだ。すると  1. 宦官:去勢手術を施されて宮廷などに

で、馬車を止め、いったい何者だ ピリポは、同じ巻物から別の箇所 仕えた者

ろうと思いつつ、相手を見た。 を見せてくれた。 「主はこう言わ  2. 参照:申命記 23:1

 そして、切実な気持ちでこう答 れる、『・・・わが喜ぶことを選ん  3. イザヤ 56:4- 5

「アクティベート・リーフ」は、英語の「Activated」誌からの記事を翻訳したものです。その他の記事は、ホームページでご覧頂けます。 http://www.activate.jp
© 2020 Aurora Production, Ltd. All Rights Reserved Translated from English Activated Magazine Vol.21-2 p8-9 http://www.activated.org

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